######
今日の写真は,オーストリア・バーデンのベートーヴェンが交響曲第9番の構想を練った散歩道です。
ベートーヴェン作曲交響曲第9番ニ短調作品125「合唱つき」。これを聴かずして年が越せない,という人もあり,お祭り好きの国民性もあり,必ず集客が見込めるのでオーケストラのお金儲けもあり,毎年暮れ,日本中でこの曲が鳴り響きます。
私が交響曲第9番を聴き通したのは,紅白歌合戦とやらが午後9時からはじまっていた子供のころ,その前に午後7時45分から午後9時まで,当時は教育テレビといった現在のEテレで岩城宏之指揮のものを見たのがはじめてでした。そのときは,1時間も越すような曲があることにまず驚きました。
その後,若いころは,毎年,地元名古屋フィルハーモニー交響楽団の第9演奏会に毎年のように行っていたのですが,ある年の外山雄三指揮の第9があまりに退屈で,単にオーケストラがノルマを果たしているだけのコンサートのように思えて,それ以来,行くのをやめました。今は,実際に聴きにいくことはまれです。しかし,NHKFMとNHKEテレで放送される「N響の第9」は,かれこれ50年以上必ず見ています。
このごろは,よほど行きたいと思う指揮者のときにNHK交響楽団の第9演奏会に行こうと毎年思っているのですが,なかなかそういう気になることもなく,最近私が第9演奏会に行ったのは,2015年のパーヴォ・ヤルヴィ指揮と2016年のヘルベルト・ブロムシュテッド指揮でした。
昨年は,井上道義指揮で,行こうかどうしようか迷った結果,都合がつかなくてやめました。
今年の指揮は下野竜也さんでした。ホームページには
・・・・・・
正攻法のアプローチで音楽に無類の生気や躍動感をもたらす日本屈指の実力者。年末の「N響の第9」初出演となる意欲と楽団の厚き信頼度を反映した清新かつ濃密な名演が期待される。
・・・・・・
とありました。N響正指揮者となったことを記念しての抜擢だと思いますが,私は今年もまたその気にならず,足を運びませんでした。ところが…。
下野竜也さんは,去る11月26日に名古屋フィルハーモニー交響楽団と第9を指揮したのですが,そのときのXに「下野マエストロの「第9」解釈はとてもユニーク!(でも思いつきではなくしっかりとした根拠があります)」とあったことで興味をもちはじめました。
そして,12月31日のEテレでの放送。
毎年のように,はじめは何となく見ていたのですが,そのうちに,引き込まれていきました。すべてが特別な策を講じるわけでもなくあえて奇をてらうわけでなく,きちんとしているのです。これがとても小気味いい。そして,第4楽章でソリストがうたいはじめたとき,私は度肝をぬかれました。
特に,ソプラノとメゾ・ソプラノ。
こりゃ,オペラのアリアだ,と思いました。第9でこれほどの独唱を聴いたことがありませんでした。そこで,調べてみると
・・・・・・
●ソプラノ・中村恵理
新国立劇場オペラ研修所を経て,2008年英国ロイヤル・オペラにデビューし注目を浴びる。
2010年から2016年にはバイエルン国立歌劇場のソリストとして専属契約を結び,多くの作品で主要キャストを務める。(中略)様々な公演で絶賛を博している。
●メゾ・ソプラノ・脇園彩
東京藝術大学を経てイタリアに留学し,ミラノ・スカラ座研修所などで研鑽を積む。
2014年ペーザロのロッシーニ・オペラ・フェスティバルで,イタリアでのオペラ・デビューを果たし,以後イタリアを中心に活動。
・・・・・・
とありました。私は,はじめて知る名前でしたが,そういえば,脇田彩さんは,少し前のNHKラジオ深夜便に出演されていました。
それ以来,私は「下野竜也の第9」にハマってしまい,毎日のように何度も録画を見ているのですが,こんなことははじめてです。2011年に「スクロヴァチェフスキーの第9」をよほど聴きにいこうと思ったけれどやめたことを今も後悔していますが,2023年の「下野竜也の第9」もまた,聴きにいかなかったことを,今になって後悔することになりました。
◇◇◇
◆◆◆
「しない・させない・させられない」とは
「Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.」とは