●グレイシャー国立公園(Glacier National Park)
2015年ごろ,私はアメリカの地図を見てため息をついていました。それは,モンタナ州の最も北にあるグレイシャー国立公園に行きたいのだけれど,その場所があまりに遠く,どうしたら行けるか考え込んでいたからです。レンタカーでは遠いし,なるべく近くの空港まで飛行機で行こうとも思ったのですが,なかかなよい便が見つかりませんでした。
結局,シアトルから車で8時間かけて行くことにしました。その結果,ずいぶんとすばらしい思い出ができたのですが,行く前は不安で仕方がありませんでした。
あとで知ったことには,実際は車がなくとも鉄道でも行くことができる唯一の便利な国立公園ということで人気でした。グレイシャー国立公園には西のポートランドから東のシカゴまでを結ぶアムトラックのエンパイアビルダー(Empire Builder)が1日1往復運行されていたのでそれを利用することができたのです。
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グレイシャー国立公園はモンタナ州の北のはずれにあって,人工的な国境で分断されていますが,実際は,カナダのウオータートンレイクス国立公園(Waterton Lakes National Park)につながっています。公園の名前である「グレイシャー」というのは「氷河」という意味ですが,実際,非常に標高が高いので,ものすごく寒いところです。
行ったことがある人から,たいしたことなかったよ,という話を聞いたことがあったので期待していなかったのですが,実際は,何の何の,とてもすばらしいところでした。
これまでに紹介したゴールデンサークルの国立公園が赤茶けた土ばかりなのに対して,ここは湖あり,森あり,氷河ありというところでした。
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グレイシャー国立公園は西のゲートであるウェストグレイシャー(West Glacier)から東のゲートであるセントメリー(St.Mary)までゴーイングトゥザサンロード(Going to the Sun Road)を走って抜けることができます。また,列車できた人のために,園内は観光用のバスが走っています。
ゴーイングトゥザサンロードは分水嶺である海抜2,025メートルのローガンパス(Logan Pass)を越えます。ローガンパスにはビジターセンターがあって,ここが観光の拠点です。ローガンパスの周辺には高山植物の群集が見られ,背後に迫る山は右側が標高2,670メートルのマウントクレメンツ(Mount Clements),左側が標高2,781メートルのマウントレイノルド(Mount Reynolds)です。 ビジターセンターの裏側からトレイルがあって,このトレイルを歩くとヒドゥン湖展望台(Hidden Lake Overlook)へ行くことができます。私も雪道を歩きました。
ゴーイングトゥーザサンロードの南には,セントメリーレイク(Mt. Mary Lake)が広がっていて,ゴーイングトゥーザサンロードの中ほどのビレッジの近くの船着場からこの湖を1周するクルーズがあります。私はそれにも乗りました。湖の途中には Wild Goose Island という小島があります。クルーズは,途中の対岸で降りて15分ほどトレイルを歩きベアリング滝(Baring Falls) まで行きます。
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ゴーイングトゥーザサンロードはローガンパスの西側はヘアピンカーブが頻繁にあり,さらにトンネルもあります。また,いたるところで,滝でもないのに氷河から溶け出した水が道路に降ってきて,まさに滝の下を走るようになります。わざわざこの滝の下を走り,洗車をしている車をみかけました。ローガンパスを越えた東側は直線道路で,ぐんぐんと下って行き,それまでの登り坂の険しさとはすっかり趣がかわって,高原ムード一杯になったころ,公園の東側のゲートに到着します。
東側のゲートを過ぎ,さらに左折して北に行くとメニーグレイシャー(Many Glacier)へ行くことができます。メニーグレイシャーはグレイシャー国立公園で最も遠く静かで最も美しいところです。氷河を抱いた鋭い岩峰に囲まれた谷筋にいくつもの氷河湖が重なって幻想的な雰囲気です。このスイフトカレントレイク(Swiftcurrent Lake)の周りを一周するトレイルは絶品です。
スイフトカレントレイクのほとりには,Many Glacier Hotel と Swiftcurrent Moter Inn というふたつのホテルがこの景色に調和していて,おとぎの世界のようなところです。
メニーグレイシャーからさらに北に進むとカナダ国境に到達します。
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「しない・させない・させられない」とは
「Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.」とは