しない・させない・させられない

Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.

USA50州・MLB30球場・47都道府県を制覇し,南天・皆既日食・オーロラ,空の3大願望を達成した「不良老人」の日記

カテゴリ:「感想」 > コンサート・美術展の感想

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【Summary】
I attended an NHK Symphony Orchestra concert in Omiya mainly to hear conductor Nodoka Okisawa while traveling. Although the program of Taiga drama music was not very appealing and the ticket was expensive, the second half—especially The Moldau—was excellent. Through many concerts, I have realized that seat, hall, and access matter most.

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 今回の大河ドラマをテーマとする演奏会,取り上げられていた大河ドラマは私があまり興味がなかったものが多かったのでもともとの音楽になじみがなく,残念でした。私が好きだった「国盗り物語」「勝海舟」「家神」などが演奏されたらずいぶん印象が異なっていたことでしょう。
 また,この演奏会の前日には,東京のNHKホールでも同じプログラムの演奏会が行われていたようですが,それにはゲストで高橋英樹さんが登場したりと,比較をすれば,ちょっと損をした感じでした。それにしても,入場料が高過ぎました。京都市交響楽団の定期演奏会の2倍ほどしました。この演奏会に限らず,近ごろのNHK交響楽団の演奏会は高すぎます。

 さて,どうして大宮のソニックシティ大ホールまで聴きにいったかというと,まず第一に,指揮者が沖澤のどかさんだった,ということです。これが最大の理由でした。もし違う指揮者なら行きませんでした。つまり,沖澤のどかさんがNHK響楽団を指揮する演奏会を聴きたい,ということでした。しかし,それならNHKホールでもよかったのですが,第二に,私は,東北旅行を企画していました。東北旅行のことはまた,別に書きますが,そのついで,というか,大宮で聴くほうが都合がよかった,ということにありました。ただし,前回も書きましたが,ソニックシティ大ホールは期待外れでした。
 そんな理由で大宮まで行ったのですが,第1部はともかく,第2部はたいへん楽しめました。特に,最後に演奏した「モルダウ」は最高でした。これを聴けただけで満足しました。これだけの盛り上がりをみせる指揮ができるのだから,やはり,沖澤のどかさんは大したものです。いっそのこと,第1部をやめて,スメタナの「わが祖国」(Má Vlast)全曲をやってもらうだけでよかったように思いました。

 まあ,今回の演奏会はそんなところでしたが,ここ数年,手当たり次第に行きたいと思った多くの演奏会を聴いてみて,私にとって,どういう演奏会なら楽しめるのかがよくわかってきました。
 まずは,座席です。とはいえ,これがもっとも難しい。いい席を取ることも難しいのですが,たとえ取れても,隣に座る人によっては不快になることがあるからです。そこで,定期会員になって,いつも近くに座る人が決まっていれば,そんな不安から解消されるわけですが,逆に,周りに不快な人が決まって座ってしまうと,絶望的にもなります。次が,会場です。これは,アクセスも含めてです。
 私は,20年来のNHK交響楽団の定期会員ですが,サントリーホールならまだしも,NHKホールは本当に情けない。アクセスも最悪です。とはいえ,通いはじめたころは,ああ,これがテレビで見るNHKホールそのものだ,というだけで感激していたこともあります。しかし,今や,ほかの多くのすばらしい会場を知ってしまうと,それと比べたとき,行く気が失せます。
 NHKホールは音もよくない。それがなぜか,会場で聴いた同じ演奏会なのに,FM放送で聴きなおすと,NHK交響楽団の演奏はすばらしいのです。ということで,私の結論は,NHK交響楽団の定期公演は,FM放送で聴くものであって,会場,特にNHKホールに足を運んで聴くものではない,ということです。日本でトップクラスといわれるオーケストラなのに,本拠地がNHKホールでは気の毒というものです。
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【Summary】
On March 6, 2026, I attended the NHK Symphony Orchestra’s “Taiga Drama & Masterpieces” concert at Sonic City Hall in Omiya, conducted by Nodoka Okisawa. The first half featured themes from historical TV dramas, while the second presented river-themed classical works. Although many enjoyed the familiar themes, I personally preferred the classical pieces.

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 2026年3月6日,大宮市のソニックシティ大ホールで,N響大河ドラマ&名曲コンサートを聴きました。指揮は沖澤のどかさん,そして,「秀吉」でピッコロ・トランペットを演奏したのがN響首席トランペット奏者の菊本和昭さん,「源義経」で用いられた薩摩琵琶が友吉鶴心さん,龍笛が稲葉明徳さん,纐纈拓也さん,岩﨑達也さん,シンセサイザーが篠田元一さん,そして,司会が田添菜穂子さんでした。
 どうして大宮まで来たかという話は次回書きます。
 ソニックシティ大ホールははじめてきました。大宮駅からすぐのところで,地の利は最高でした。ソニックという名前はソニーと関係があるのかな,と思ったのですが,調べてみると,「埼玉県(Saitama)」「大宮市(Omiya)」「日本生命(Nihon-seimei)」「産業(Industry)」,もしくは「国際(International)」「文化(Culture)」,もしくは「コンベンション(Convention)」の頭文字から「SONIC」となったそうです。
 中に入って驚きました。客席数はなんと2,505席もあって,巨大な空間でした。以前,座席数は2,336席のアクトシティ浜松大ホールに行ったことがあるのですが,よく似ていました。こんな巨大なホールは,クラシック音楽には不向きです。観客は8割程度の入りでした。

 第1部の曲目は,大河ドラマのテーマ曲から「風林火山」「豊臣兄弟!」「秀吉」「峠の群像」「元禄繚乱」「源義経」,それに,武満徹の作曲ということで,大河ドラマのテーマではないけれど「夢千代日記」,さらに「竜馬がゆく」「利家とまつ~加賀百万石物語~」「天地人」でした。
 そして,第2部の曲目は,「大河」にちなんだクラシック名曲選ということで,まずはライン川からワーグナーの楽劇「神々のたそがれ」(Götterdämmerung)より「夜明けとジークフリートのラインの旅」,次にドナウ川からイヴァノヴィチ(Iosif Ivanovici)のワルツ「ドナウ川のさざ波」(Valurile Dunării),最後に,ヴルタヴァ川(モルダウ川)からスメタナの交響詩「モルダウ」(Vltava)でした。
 司会がいて,曲目の紹介や,沖澤のどかさんをはじめとして,さまざまな人とのインタビューなどを挟みながら進行しました。それはそれで楽しかったのですが,私にとっての違和感は,以前,石田組のコンサートに行ったときに感じたものと同じでした。つまり,クラシック音楽の演奏会とは客層が違う。それとなく聞こえてきた会話は,クラシック音楽は長ったらしくて難しくてよくわからないけれど,大河ドラマのテーマ曲ならなじみがあるし短いからいい,というものでした。そういった人たちは,第1部はうかれて楽しそうでしたが,第2部はかなりつまらなそうでした。
 私には,むしろ第2部のほうがよかったのですが…。
 オーケストラもこうした演奏会をしてクラシックファンを増やす試みが必要だし,オーケストラもいろいろと駆り出されて大変だなあと思いましたが,コンサートが終わって,帰っていく観客の中に,今度はクラシック音楽のコンサートに行こうか,と話している人たちもいて,この演奏会の目的は果たせているようで,うれしくなりました。

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【Summary】
At the 95th subscription concert of the Aichi Chamber Orchestra at Tokai City Arts Theater, Mozart’s Piano Concerto No. 22 and Symphony No. 39 were performed. Pianist Yoko Kikuchi played elegantly and sensitively. However, although the performance was refreshing, it lacked excitement. I wonder how a passionate conductor might have inspired greater joy and unity.

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 今回,愛知室内オーケストラの第95回定期演奏会が行われた東海市芸術劇場大ホールは,もったいないくらいの会場です。
 この地方には,名古屋市にある1,800席の愛知県芸術劇場コンサートホールは別格として,1,025席の東海市芸術劇場大ホール,1,004席の豊田市コンサートホールがあります。東海市芸術劇場大ホールと豊田市コンサートホールはほぼ同じ規模ですが,豊田市コンサートホールはパイプオルガンがありクラシック専用ホールであるのに対して,東海市芸術劇場大ホールはパイプオルガンもなく,多目的ホールです。
 東海市芸術劇場大ホールで何よりもいいのが,名鉄電車の太田川駅から徒歩1分というアクセスのよさです。東海市芸術劇場ができた経緯は,東海太田川駅西地区第一種市街地再開発事業」の一環として,その中核施設として2015年8月に完成し,10月4日にオープンしました。
  ・・
 クラシック音楽を楽しむ土壌は,この地方にはさほど強いものではなく,率直にいって,客層が悪い。悪くいえば,田舎者です。フライングのブラボーを行う一部の常連客が出没していて,もめ事が頻繁に起きます。最後が静かに終わる曲など,いつも,聴きながらハラハラします。私ができれば名古屋を避けて,東京や京都などの演奏会に出かける理由もそこにあります。これが名古屋フィルハーモニー交響楽団の定期会員にならない理由のひとつです。
 今回は,7割程度の入りでその心配は杞憂におわりましたが,このくらいだと,階段状の東海市芸術劇場大ホールでは見晴らしがいいので,最上段で聴くのがもっともよい楽しみ方なのかもしれません。

 さて,演奏会自体に話を戻して。
 コンサートのはじまる前に,広瀬大介さんのプレトークがありました。NHKFMのNHK交響楽団の演奏会中継で解説者のひとりとして出演する人です。このごろは,プレトークを行うコンサートが増えてきて,これはとてもよいことだと思います。私が定期会員である京都市交響楽団の定期演奏会でも行われています。
 曲目は,前回書いた森田泰之進の「音信」(おとづれ)につづいて,モーツァルトのピアノ協奏曲第22番,休憩をはさんで,交響曲第39番でした。
 ピアノ協奏曲でピアノを演奏したのは菊池洋子さん,私は,今回,これが目当てでした。
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 菊池洋子さんは群馬県前橋市出身で,2002年にモーツァルト国際コンクールで日本人として初優勝を果たし注目を浴びました。桐朋学園女子高等学校音楽科を卒業後,イタリアのイモラ音楽院に留学し,フランコ・スカラ氏にピアノを,ステファノ・フィウッツィ氏にフォルテピアノを学びました。
 「モーツァルトをライフワーク」と語り,モーツァルト作品への深い愛情と解釈で知られ,今回の選曲はまさに十八番。繊細で,深い情感に満ちたタッチが特徴で,のびのびとした自然なフレージングと透明感のある音色が際立っているということです。私は手元がよく見える座席だったのですが,気になったのが,右手の小指でした。左手は見えないので知りませんが。

 モーツアルトの2曲,とても爽やかな曲ですが,少し重たくて,強いていえば,楽しさに欠けました。前回聴いたときはよかったのに,どうしてなのでしょう? ということで,いつも楽しそうに指揮をするトゥガン・ソヒエフさんが愛知室内オーケストラを指揮したらどんな演奏をするのかな? と思いました。もっと色彩豊かなものになったに違いありません。
 トゥガン・ソヒエフさんは,音楽に対する情熱が全身からあふれ出ていて,ただ指揮棒を振るだけでなく,体全体で音楽を感じて,オーケストラと一体になって指揮をします。それはまるで音楽の波に乗って踊っているようです。しかも,とても表情豊かで,音楽のドラマや感情を視覚的にも伝えるので,観客は,音だけでなく視覚的にも引き込まれます。演奏者もとても楽しそうなのです。
 愛知室内オーケストラに欠けているものがあるとすれば,そういう点なのかもしれません。

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【Summary】
On February 28, 2026, I attended the 95th subscription concert of the Aichi Chamber Orchestra at Tokai City Arts Theatre. The highlight was the premiere of Yasuyuki Morita’s “Otozure.” I had expected a gentle spring mood, but felt a powerful spring after a harsh winter. Though intellectually complex, it was impressive, yet contemporary works are rarely heard again.

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 2026年2月28日,東海市芸術劇場大ホールで,愛知室内オーケストラの第95回定期演奏会を聴きました。曲目は,森田泰之進の「音信」(おとづれ),モーツァルトのピアノ協奏曲第22番と交響曲第39番,指揮は,音楽監督の山下一史さん,ピアノは菊池洋子さんでした。
 聴きどころは
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 古典の鮮やかな歓びと,新しく生まれる瑞々しい驚きとの出逢いを!
 いつまでも音楽家を深く刺激してやまない天才・モーツァルトの「三大交響曲」から,円熟を堂々たるスケールに注ぎこんだ傑作・交響曲第39番をお届けします。
 隅々まで満ちる自信と,磨かれぬいた優美と,オーケストラを底から燃やす躍動感と… 音楽監督・山下一史と共に追究してきた「古典美」も眩しく輝くことでしょう。
 さらに,ピアノ協奏曲から(かの「フィガロの結婚」と並行して書かれた)第22番も。柔らかくも豊かな色彩感といい,瞑さゆらめく主題から変奏が美しく広がる緩徐楽章といい,こころうきたつ軽やかさと(ちょっとオペラのような)中間部との対照も絶妙なフィナーレといい,モーツァルト弾きとしても絶賛されてきた菊池洋子を迎えての演奏は至福!
 さらに,時代を拓く新しい作品を併演するのもACOの大切な使命。モーツァルトと新作が出逢うからこそ鮮やかな「いま」を,ぜひ。
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というものでした。

 出かけた理由は,菊池洋子さんの演奏が聴きたかったこと,曲目が気楽でよかったこと,そして,東海市芸術劇場が名鉄電車の太田川駅からすぐのところにあって,とてもいい雰囲気だったこと,でした。
 1曲目は森田泰之進さんの新作「音信」(おとづれ)。この曲は,愛知室内オーケストラが取り組む「オーケストラ・プロジェクト」の一環で,現代作曲家の新作を紹介する試み。ということで,初演に立ち会えました。タイトルの「音信」(おとづれ)には,「音の便り」や「遠くからの知らせ」といった意味が込められていて,言葉や記憶,時間の流れを音で描くような詩的な世界観が想定されています。聴くまでは,私は,ほのかな春の便り,というものを想像したのですが,そうではなく,厳しい冬を乗り越えた力強い春,といった感じでした。ネットに森田泰之進さんの難しい解釈を見つけたのですが,私にはさっぱり。いずれにしても,そういう深き知識の上に立って綿密に作られたもの,ということだけは何となく理解できました。
 演奏会でこうした現代音楽の新作を耳にするのですが,そのほとんどは1回きりの出会いで,おそらく聴きこめばそのよさがわかるのでしょうが,そういう機会がないのをいつも残念に思います。

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【Summary】
On February 23, 2026, I visited the special exhibition “Big Five Mass Extinctions” at the National Museum of Nature and Science in Ueno Park. Although I had prior knowledge of the topic, the exhibition was extremely crowded, making it hard to appreciate. Disappointed, I left early and had lunch at a café in Tokyo Bunka Kaikan instead.

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 2026年2月23日,東京・上野公園の国立科学博物館で,特別展「大絶滅展―生命史のビッグファイブ」を見ました。
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 生命が誕生してから40億年,地球上では幾度も生命の危機が訪れました。しかし,生命は危機を乗り越え,絶滅したグループに代わるグループが新たに繁栄することを繰り返すことで,多様に進化を遂げてきました。いわば,大量絶滅は生命の繁栄を促した現象だと捉えることもできるのです。
 本展では,その中でも規模の大きかった5回の大量絶滅事変,いわゆる「生命史のビッグファイブ」を,化石や岩石に残された様々な証拠から紐解き,「生き物たち」の生存をかけた進化の歴史を辿ります。
  ・・・・・・
というものですが,私は,招待券をもらったので,何かのついでに東京へ行ったときに,と考えているうちに最終日になってしまい,今回,名古屋フィルハーモニー交響楽団の東京特別公演を聴きに行った折に,やっと行くことができました。

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 「生命史のビッグファイブ」とは,地球の歴史の中で起きた5回の大規模な大量絶滅事変をいいます。
●オルドビス紀(Ordovician period)末の大量絶滅(約4億4,500万年前)
 氷河期の到来と海面の変動が原因で,海洋生物の85パーセントが絶滅。
●デボン紀(Devonian period)後期の大量絶滅(約3億6,000万年前)
 環境の変化や海洋の無酸素化により,魚類の時代が終わる。
●ペルム紀(Permian period)末の大量絶滅(約2億5,200万年前)
 火山活動やメタンガスの放出が原因で,最大規模の絶滅で,海洋生物の96パーセント,陸上生物の70パーセント以上が絶滅。
●三畳紀(Triassic period)末の大量絶滅(約2億年前)
 火山活動や気候変動が影響し,恐竜が台頭するきっかけになった絶滅。
●白亜紀(Cretaceous period)末の大量絶滅(約6,600万年前)
 小惑星の衝突と火山活動が複合的に関与し,恐竜が絶滅。
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 そもそも「生命史のビッグファイブ」といったところで,私はすでに詳しく知っていたことでもあり,特に行ってみたいと思ったわけではありませんでした。招待券をもらわなければ,行くこともなかったと思います。とはいえ,多くの人には「生命史のビッグファイブ」というのは初耳で,驚きのことだったのかもしれません。すごい人気でした。
 当日は,早朝の新幹線で東京駅まで行って,そこから乗り換えて,上野駅に到着したのが午前9時少し前だったのですが,すでに長い行列ができていました。この行列の先に入口があるのではなく,あくまで,入場時間の整理券がもらえるだけで,そこに指定された時間までは,国立科学博物館の通常の展示を見て時間をつぶす,という段取りでした。私がもらった整理券の指定された時間は午前10時30分でした。
 私のような老人は,国立科学博物館の通常の展示は無料です。そこで,これまでにも,何度も行っているわけですが,ここは,さすが首都東京の博物館らしく,なかなか充実しています。今回は祝日だったので多くの人がいましたが,平日の午前中なら,静かな館内でゆっくりした時間が過ごせるので,穴場です。

 やがて,午前10時30分に近くなったので,入場口に並び,ほどなくして中に入りました。
 整理券があるとはいえ,館内はすごい人で,人の頭を見るようなものでした。東京では,美術館も同様,休日に行くものではありません。何となく見て回っていたのですが,多くのものはレプリカで,たまに実物があるという程度でした。アメリカのデンバー自然科学館から貴重な標本が多数来日! とありましたが,私は,すでに,デンバーの自然科学博物館で見ているし…。確かに,「生命史のビッグファイブ」というのは,私もはじめて知ったときは驚きましたが,そんな知識もない多くの人は,ここでそれを知ったにせよ,こんなに混雑した館内では,何が学べるというのでしょうか?
 招待券で入ってこんなことをいうのも失礼なのかもしれませんが,人混みがきらいで落胆した私は,早々に館内から外に出ました。本当にじっくりと見たいのなら,2026年3月20日から6月14日まで,名古屋市科学館で開催するので,平日の午前,それも,学生が遠足や野外授業でやってこない始業式のような日を選んで行くほうがずっといいと思いました。時間はお昼少し前でした。国立科学博物館内にはレストランもあるので,昼食を,と思ったのですが,これもまた,30分待ち。こんな状態なのに,それに耐えてでも休日にやってくる東京の人たちにこそ,私は感動しました。そういうことはすべて承知で,それでも招待券を捨てることができずやってきた私は,まだまだ進化が足りないようです。
 ということで,国立科学博物館内のレストランをあきらめ,これもまた,穴場である東京文化会館のカフェで昼食をとりました。

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【Summary】
Toru Takemitsu’s Family Tree – Musical Poem for Young People (1992) is a late work for narrator and orchestra, based on a text by Shuntaro Tanikawa. Its quiet, spacious sound world reflects Takemitsu’s aesthetic of silence and nature. Listening again, I was reminded of its warm, intimate atmosphere, gently narrated this time by the young actress Noa Goto.

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 サントリーホールは,コンサート開演前にからくり時計が登場,大ホールと同じ素材のパイプオルガン37本が曲を奏でます。これからのときめきにワクワクする瞬間です。
 これまで何度かサントリーホールで聴きましたが,今回,はじめての最前列。まさかサントリーホールの最善列で音楽を聴くことができるとは…。さすがにサントリーホールは品格があります。
 
 さて,1曲目は武満徹の「系図-若い人たちのための音楽詩-」(1992年)でした。珍しい曲をやるんだなあ,と思いました。
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 武満徹の「系図-若い人たちのための音楽詩-」(1992年)は,武満徹の代表作のひとつで,語りとオーケストラのために書かれた作品です。タイトルの「系図」は「家系図」や「血筋」を意味していて,家族や記憶,時間の流れといったテーマが込められています。詩人・谷川俊太郎のテキストをもとに,語り手(ナレーター)が子どもの視点で家族について語り,その語りに寄り添うようにオーケストラが繊細で幻想的な音楽を奏でることで,語りと音楽が対話するような構成となっていて,まるで夢の中を漂っているような感覚になるものです。
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 調べてみると,初演は1992年にNHK交響楽団によって行われ,語りは武満徹の娘である武満真樹さんが務めました。とあるのですが,NHK交響楽団の演奏記録アーカイブを調べてみると,曲名が「 ファミリー・トゥリー (系図)」となっていましたが,1997年6月18日,19日に第1327回定期公演Bプログラムで,指揮がシャルル・デュトワさん,ナレーションが遠野凪子さん,アコーディオンが御喜美江さんで行われたものと,2016年4月22日,23日に第1833回定期公演Cプログラムで,指揮がレナード・スラットキンさん,ナレーションが山口まゆさん,アコーディオンが大田智美さんで行われたものが見つかりました。で,思い出したのですが,私は,2016年に演奏されたものを実際に会場で聴いています。このふたつの公演はYouTubeで見られるのですが,そこで,思い出しました。この曲,よく覚えています。

 武満徹は,1930年に生まれ,1996年に亡くなりましたから,この曲は晩年のものです。
 武満徹の音楽は,メロディックな「わかりやすい音楽」とは違い,静けさや余白,響きの移ろいが基本となっていて
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●間の美学
 音と音のあいだの「沈黙」や「余白」を大事にし,日本庭園の静けさや茶室の空気感のような,音がない時間に意味をもたせる。
 ●自然との共鳴
 風の音,水のさざめき,木々のざわめきといった自然の音を思わせるような響きが多く,聴いているとこころが落ち着いてくる。
●西洋と東洋の融合
 西洋の現代音楽の技法を使いながら,日本的な感性や美意識を大切にしている
 特に有名なのは,尺八や琵琶とオーケストラを組み合わせた「ノヴェンバー・ステップス」はその象徴。
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といった特徴があります。
 今回の「系図-若い人たちのための音楽詩-」(1992年)は,お年寄りが暖かな日差しの入る居間にいて,その姿を見ながら孫が語っている,というような感じがしました。
 語りは五藤希愛(のあ)さんという人で,2010年生まれというからまだ15歳の俳優,声優さんです。この大役をこなす人をさがすのも大変だったことでしょう。

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【Summary】
On February 24, 2026, I attended the Nagoya Philharmonic Orchestra’s special Tokyo concert at Suntory Hall. I especially looked forward to Strauss’s Ein Heldenleben. Sitting in the front row, I was amazed by concertmaster Kyoko Ogawa’s powerful solo. It felt like a violin concerto. However, the string sound seemed stronger than the winds.

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 2026年2月24日,サントリーホールで,名古屋フィルハーモニー交響楽団の東京特別公演を聴きました。曲目は,武満徹の「系図-若い人たちのための音楽詩-」,R・ シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」。指揮は音楽監督の川瀬賢太郎さん,語りが五藤希愛さん,アコーディオンが大田智美さん,そして,コンサートマスターで「英雄の生涯」のソロを弾くのが小川響子さんでした。
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 今シーズンの東京公演はサントリーホールで開催します。
 サントリーホールでの開催は2021年以来4年ぶりとなります。名フィルサウンドが音楽の殿堂であるホールでどのように響くのか,僕も今からとても楽しみにしています。
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ということでした。
 愛知県芸術劇場コンサートホールでも同じプログラムがあるのに,わざわざ東京へ行ったのは,サントリーホールで「名フィル」が聴きたかったことと,地方,というか,東京公演では,定期会員がいないので,上席が手に入ること,そして,この機会を利用して,東京近郊で行きたいところがあったことにあります。このことは,また,後日書きます。

 曲目のうち,武満徹の「系図-若い人たちのための音楽詩-」は次回書きます。
 R・ シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」,これが楽しみでした。私は,何度も書いているように,R・ シュトラウスが苦手です。というか,よさがわからん,ともいえます。であったのですが,このごろになって,やっと何となくわかってきました。特に,「英雄の生涯」はいいです。
 この曲は,以前,NHK交響楽団の桂冠名誉指揮者サヴァリッシュ(Wolfgang Sawallisch)さんが得意としていました。そのころは,コンサートマスターのソロということよりも,サヴァリッシュさんの人生とダブって感じられる,ということがクローズアップされていて,特別な曲でした。
 私が,この曲を再発見したが,2025年3月16日に兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホールで「沖澤のどか指揮 京都市交響楽団〈英雄の生涯〉」と題した演奏会を聴いたときです。このときは,沖澤のどかさんが目当てで,曲目は二の次だったのですが,コンサートマスターの会田莉凡さんのソロがあまりにすばらしく,それ以来,「英雄の生涯」では,コンサートマスターのソロを聴くのが楽しみになりました。今回は,小川響子さん。私は,最前列,コンサートマスターの真ん前の座席をいち早くチケットを入手しました。

 実際に聴いてみて,正直驚きました。小川響子さんはすごい迫力で,まるで,私こそが英雄! とばかりのヴァイオリン協奏曲のような「英雄の生涯」でした。動作が大きく,音楽に合わせて,思わず足音がしたり,さらには,唸り声まで聞こえました。最前列の強みです。
 ちょっと珍しい「英雄の生涯」でした。
 先日聞いたNHK交響楽団の「英雄の生涯」は正反対で,コンサートマスターの長原幸太さんのソロは,影がとても薄かったのですが,今回の演奏では,コンサートマスターの独演会の様相を呈していました。こういう演奏は,賛否両論あるのでしょうが,私は,これはこれでありかな,と思いました。お見事でした。
 ただし,そもそも,サントリーホールの最前列なんてはじめて座ったので,サントリーホールの響きを知らなかったせいか,やたらと弦の音が大きくて,管楽器が少し霞んでいるように思いました。京都コンサートホールでは,最前列でもそういうことはなく,弦と管のバランスがとてもよいので,それだけがちょっと意外でした。

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【Summary】
At the Kyoto Symphony Orchestra’s February subscription concert, Schubert’s “Tragic” Symphony sounded unexpectedly bright and refined, contrasted with the raw, expansive first version of Bruckner’s Third. Its long slow movement, rugged scherzo, and dramatic pauses proved challenging yet compelling, reaffirming the unique power of Bruckner’s symphonic world.

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 京都市交響楽団の2月定期演奏会。
 1曲目はシューベルトの交響曲第4番「悲劇的」(Tragische)。シューベルトにかかると,悲劇的も悲劇的にならず,明るくなってしまう。これが救いです。要するに,あか抜けているのです。2曲目は,それに対比するように,ブルックナーの交響曲第3番。特に第1稿(初稿)。これほどあか抜けていない曲はあるのだろうか。よくいえば素朴。
 ということで,この2曲を並べたのが妙でした。

 ブルックナーの交響曲第3番,第1稿は,第1楽章はともかく,長く,それも通常の長さでない第2楽章。これが退屈でないのがすごいわけですが,このごろやっと,ブルックナーがよくわからない,という人の気持ちがわかるようになりました。あの,行ったり来たり,煮え切らない時間は,そりゃ,そのよさがわかるのは,というか,受け入れることができるのは,並大抵のことではないのかもしれません。悪くいえば,長いだけで中身のないモテない男の話みたいです。私は,第3番に限らず,ブルックナーのほどんどの交響曲に共通するこの緩徐楽章のすばらしさこそがその魅力だと思うのですが。
 そして,第3番の第1稿がさらに魅力的なのは,第3楽章です。ブルックナーの交響曲は,スケルツォが独特で個性的ですが,第1稿と第3稿違いは,劇的な構成の短縮とコーダにおけるブルックナによる41小節におよぶ追記の採用の有無です。第1稿は長大で精緻,それに対して,第3稿では簡潔かつ効果的に改訂されました。そこで,第1稿は,初期の生々しいブルックナーの音響が残されていて,より荒々しいスケルツォの雰囲気をもっているわけです。
 また,特筆すべきは第4楽章のこれでもかこれでもかとやってくる休符。これがブルックナー休符といわれるものですが,この休符はうまく演奏すれば非常にこころに残るし,下手をすれば,めちゃくちゃになってしまうわけで,おそらく,演奏者にとっては正念場でしょう。今回はとてもよかった。
 この第3番は,根底にあるのがワーグナー。そこで,ワーグナー交響曲とよばれる所以ですが,ワーグナーのメロディが時折ひょっこりと顔をだす,それもまた,聴きどころです。

 今回の演奏会に限らず,どの演奏会でも,ブルックナーの交響曲となると,それを好む人が一定数いて,会場にやってくる。そこで,曲が終わると独特なムードになります。今回もそうでした。
 京響の定期演奏会の観客はおとなしいのですが,今回はやたらと「ブラボー」がかかりました。 
 私は,久しぶりにブルックナーの交響曲を聴いて,やはりいいなあ,と思いました。京都市交響楽団の定期演奏会では,今年は10月の第716回で第6番が演奏されます。私の大好きな第6番。これもまた楽しみです。
 なお,下記の写真は,ウィーンにあるシューベルトが実際に使用した眼鏡です。

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「しない・させない・させられない」とは
「Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.」とは

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【Summary】
The February 2026 Kyoto Symphony concert, conducted by Jan Willem de Vriend, paired Schubert’s youthful, dramatic Symphony No. 4 with Bruckner’s rarely heard Third Symphony in its original 1873 version. The performance highlighted contrasts between lyric intensity and raw, expansive writing, emphasizing silence as a vital musical element.

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 京都市交響楽団の2月定期演奏会を聴きました。
 2026年2月13日に行われたこのコンサートは,指揮が首席客演指揮者のヤン・ヴィレム・デ・フリーントさんで,曲目がシューベルトの交響曲第4番「悲劇的」(Tragische)とブルックナーの交響曲第3番第1稿(初稿)でした。
 シューベルトとブルックナー,いつものように,なかなか魅力的な組み合わせです。
 京都市交響楽団のXに
  ・・・・・・
 今回は初稿を演奏しますが,マエストロはこの曲で 「「静寂」を音楽として響かせたい」と語っていました。「信じられないほど多くの休止が打たれていて,こんなにも「静寂」がある交響曲を他に知りません。今回の演奏で,この大胆さ,力強さ,そして静寂を,音楽として響かせることができたらと願っています。
  ・・・・・・
とありました。

 1816年,シューベルトが19歳のときに書かれた交響曲第4番は,シューベルトの交響曲の中では珍しい短調(ハ短調)の作品で,ベートーヴェンの影響を感じさせつつもシューベルトらしい旋律美と和声の豊かさが光ります。
 深い静けさと緊張感をたたえ「悲劇的」な雰囲気をもつ第1楽章の導入部から一気にエネルギッシュな主部へと展開しくので,若きシューベルトの情熱と構成力が感じられ,少し影のある美しさが魅力的な曲です。
 ブルックナーの交響曲第3番は第1稿ということです。私は,かつて,NHK交響楽団の定期公演で,ブロムシュテッドさんが指揮をしたものを聴いたことがありますが,ほとんど演奏されません。
 そもそも,ブルックナーの交響曲は,オーストリアの田舎者が書いた素朴で洗練されていない交響曲と揶揄されますが,だからこそ,多くの人がやんのやんのとケチをつけるので,改訂を経るうちに,それでも,なんとか都会らしさを身につけていきました。そこで,改訂されていないものは,その泥臭さがふんだんに残っています。
 ここで何度も書いているように,私は,交響曲第8番の第1稿を聴いたとき,聴きどころになると変なメロディが出てきて邪魔をし,突然おかしなことになり,こりゃないぜ,と思いました。それは,おそらく,聴きなれた第8番だったので,それと違うものに戸惑いがあったということでしょう。しかし,ほとんど聴くことのない第3番は,そうした先入観がないだけ,第1稿に新鮮さを感じます。
 ということで,1873年に書かれ,後年の改訂版に比べて自由で荒削り。ワーグナー的な響きや長大な構成が残っている「そのままのブルックナー」を感じさせる,なが~い第3番の第1稿を「「静寂」を音楽として響かせたい」と願うマエストロですが,それは,音の間や余白にまで神経を感じるものに違いないものになる,と期待したのでした。

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【Summary】
On February 6, 2026, I attended Naoko Kanazawa’s viola recital at HITOMI Hall in Nagoya, featuring 20th-century British works. With pianist Minatsu Kanazawa, she performed refined and powerful pieces, highlighted by Rebecca Clarke’s impressive Viola Sonata, in the hall’s intimate and engaging atmosphere.

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 2026年2月6日,名古屋市のHITOMIホールで,「叶澤尚子ヴィオラリサイタル ~20世紀に生まれたイギリスのヴィオラ作品を集めて~」が行われたので,聴いてきました。
  ・・・・・・
 ある日,いつも一緒に演奏してくれるピアニストの金澤みなつさんから「レベッカ・クラークのソナタ弾かないの?」という一言。思えばヴィオラの名曲にも関わらず今まで機会がなく演奏したことがありませんでした。
 イギリスの作曲家レベッカ・クラークといえば,女性ヴィオラ奏者として大きな歴史を切り拓いた人物。そのドラマティックな人生に敬意を称してこの度プログラムのメインとすることにしました。レベッカ・クラークの作品と,同じ時代にイギリスに生きた作曲家たちの素晴らしい名曲たちをお届けいたします。
  ・・・・・・

 出演は,叶澤尚子さんのヴィオラ,金澤みなつさんのピアノ。
 プログラムは,ヴォーン・ウィリアムズ(Vaughan Williams)のグリーンスリーヴスによる幻想曲 ( Fantasia on Greensleeves),レベッカ・クラーク(Rebecca Clarke)の古いイギリスの調べによるパッサカリア(Passacaglia on An Old English Tune),エドウィン・ヨーク・ボウエン(Edwin York Bowen)の幻想曲 (Phantasy…intermission…),フランク・ブリッジ(Frank Bridge)のヴィオラとピアノのための4つの小品(Four Pieces for Viola and Piano),レベッカ・クラーク(Rebecca Clarke)のヴィオラソナタ(Sonata for viola and piano)。すべて私にははじめての曲でしたが,グリーンスリーヴスによる幻想曲はなじみのあるグリーンスリーヴスのメロディが流れて,こころが洗われました。
 アンコールはエルガーの「夜の歌」でした。
 先日,叶澤尚子さんがヴィオラの曲は少ない,と話していましたが,何の何の,すばらしい曲があるものだなあ,と思いました。イギリスの曲は品があります。そして,こころが豊かになるとともに,何か誇らしくなります。なかでも,最後に演奏したヴィオラソナタは圧巻でした。力強さとユニークさが加わりました。

 HITOMIホールは,コンタクトレンズ「メニコン」のANNEX内にある110席規模の小さな多目的ホールで,室内楽やリサイタルに向いた「親密さ」が魅力の空間です。
 コンセプトは「視ることから広がる感動を共有する」多目的ホール。
 こうした大きさのホールで室内楽を聴くのはとても楽しいものです。名古屋にも,HITOMIホール以外にも,宗次ホール,再生した三井住友海上しらかわホールなどがあって,身近に音楽を楽しむことができます。いいものです。

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【Summary】
Kyoto Symphony Orchestra’s concert featured returning conductor Junichi Hirokami, pianist Kenji Miura, and a finely curated American program. Bernstein’s Slava!, Bartók’s luminous Piano Concerto No. 3, and Copland’s Symphony No. 3 offered freshness, vitality, and discovery, reaffirming the orchestra’s consistently stimulating programming.

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 京都市交響楽団の定期演奏会は,私が今,最も楽しみにしているもののひとつです。
 今回の指揮者は広上淳一さん。2008年4月から2022年3月まで京都市交響楽団の常任指揮者だったこともあって,里帰りという感じでした。若いころに比べて,角が取れたというか,好々爺のような感じになって,今は,日本のクラシック音楽界の盛り立て役のような役割です。とはいえ,調べてみると,私より若い!
 バルトークのピアノ協奏曲第3番を弾いたのは,現在,ベルリンを拠点に活動している32歳の三浦賢司さん。演奏の特徴は詩的な感性と構築的な明晰さの融合にあるということです。
 また,コンサートマスターは,石田泰尚さんでした。

 1曲目,バーンスタインの「スラヴァ!」(政治的序曲)は,クラシック音楽というより,ミュージカルの序曲のようでした。明るくて楽しくてよかったです。
 2曲目,バルトークのピアノ協奏曲 第3番は,バルトークが晩年に書いたものですが,明るく澄んだ響きと自然への憧れが感じられる救いの曲でした。特に,第2楽章は静謐な祈りのような音楽で,森の中の鳥のさえずりを思わせるパッセージも登場する,というものでした。また,終楽章は,生命力に満ちたエネルギーとともに,切なさを含んだ響きが交錯し,晩年のバルトークの心情を表現していました。
 私は,京都市交響楽団の定期演奏会でピアノ協奏曲をはじめて聴いたように思うのですが,座席が最前列,ということもあって,ピアノの音がとても大きく力強く聴こえて,不思議な体験ができました。
 アンコールは,ワイルド(Earl Wild)の「ガーシュインによる7つの超絶技巧練習曲」(Seven Virtuoso Etudes on Popular Songs by George Gershwin) より「No.4 Embraceable You」という掲示がありました。ガーシュウィンの名曲を,ワイルドが自ら編曲・演奏した超絶技巧ピアノ作品集の中の1曲だそうです。
 3曲目,コープランドの交響曲第3番はなかなかすばらしい曲でした。よく計算された構成で,しかも最後は盛り上がり,こういう曲はいいものです。

 ということで,毎回思うのですが,京都市交響楽団の定期演奏会はプログラム構成がすばらしいです。さまざまな曲を聴くことができるし,ソリストもいい。私は,もう何十年もクラシック音楽の演奏会に出かけているのですが,それでも,はじめての曲が次から次へと出てくるし,刺激的です。
 また,京都市交響楽団は,管楽器セクションがとりわけ上手なので,今回の曲でもそれが引き立ちました。
 さて,次回,第708回は,今回とはうって変わって,シューベルトの交響曲第4番「悲劇的」(Tragishe)とブルックナーの交響曲第3番第1稿。これもまた,私の大好きなドイツ音楽です。

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【Summary】
The Kyoto Symphony Orchestra presented an American-themed program with Bernstein’s Slava!, Bartók’s Piano Concerto No. 3, and Copland’s Symphony No. 3. The concert traced exile, humor, lyricism, and national spirit, revealing how American experience shaped diverse musical voices into a powerful, hopeful artistic statement.

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 2026年1月24日。京都市交響楽団第707回定期演奏会は指揮が広上淳一さん,ピアノ独奏が三浦謙司さんで,バーンスタインの「スラヴァ!」(政治的序曲),バルトークのピアノ協奏曲第3番,コープランドの交響曲第3番でした。
 いずれもアメリカに関わりのある曲ということで,この時期にアメリカンプログラム? というのも意外な感じでしたが,私はアメリカが好きなので,悪くないです。

  ・・・・・・
●バーンスタインの「スラヴァ!」(Slava!)
 バーンスタイン(Leonard Bernstein)が1977年に作曲した吹奏楽曲。「スラヴァ」はロシア語で栄光あれという意味だそうで,バーンスタインの友人でソビエト出身のチェリスト,ロストロポーヴィチ(Mstislav Leopol'dovich Rostropovich=愛称・スラヴァ)がワシントン・ナショナル交響楽団の音楽監督に就任したときのお祝いとして作られたものです。
 バーンスタインらしいジャズっぽいリズム,皮肉っぽいユーモア。途中でラジオのチャンネルを切り替えるような効果音が入ったり,「スラヴァ!」と叫ぶ声が聞こえたり。いかにもバーンスタインという感じです。
  ・・
●バルトークのピアノ協奏曲第3番
 どうしてアメリカンプログラムでバルトーク(Bartók Béla)? と思ったのですが,ハンガリー出身のバルトークはナチス政権の台頭やハンガリーの政治状況に強い危機感を抱き,1940年に妻ディッタ(Pásztory Ditta)とともにアメリカに渡り,ニューヨークに移住したのでした。
 ピアノ協奏曲第3番は遺作ともいえる作品で,終楽章の最後の17小節は未完成で,弟子シェルイ(Serly Tibor)が補筆して完成させたもので,穏やかで透明感があるのが特徴です。
 深い感情とアメリカでの孤独や希望が溶け込み,魂がそっと語りかけてくるような曲です。
  ・・
●コープランドの交響曲第3番
 1944年から1946年に作曲され,第2次世界大戦の勝利を祝う,コープランド(Aaron Copland)の交響曲第3番は,「アメリカの魂」が音になったような広大で希望に満ちた交響曲で,終楽章に「市民のためのファンファーレ」(Fanfare for the Common Man)を組み込んでいます。
 アメリカ音楽の金字塔ともいわれ,開放的な和音,素朴な旋律,リズムの躍動感は,風に揺れるアメリカの大草原や広がる空が広がる,いかにもアメリカ,という音楽です。
  ・・・・・・

 「スラヴァ!」(政治的序曲)ははじめて聴きました。ピアノ協奏曲第3番は,時折,聴いたことがあるような,という旋律がありましたが,おそらくはじめてでした。交響曲第3番もはじめてでしたが,コープランドには,「アパラチアの春」(Appalachian Spring)という私の好きなすてきな曲があって,その面影が垣間見られました。
 感想は次回。

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【Summary】
On January 16, 2026, I attended Nagoya Philharmonic’s 541st concert mainly to hear concertmaster Kyoko Ogawa’s solo debut in Brahms’ Violin Concerto. Although I questioned the program’s conceptual theme, her passionate, dedicated performance proved deeply impressive and unforgettable.

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 2026年1月16日,久しぶりに名古屋フィルハーモニー交響楽団第541回定期演奏会に行きました。
 曲目は,ブラームスのヴァイオリン協奏曲,エルガーの「スルスム・コルダ」(Sursum Corda),そして,エニグマ変奏曲(Variation on an Original Theme for Orchestra "Enigma"=管弦楽のための創作主題による変奏曲「エニグマ」)。指揮は松井慶太さんで,私にははじめての名前でした。ヴァイオリンは,コンサートマスターの小川響子さんでした。松井慶太さんは八戸市出身だそうで,沖澤のどかさんと同郷です。3歳ほど年上で,接点はないみたいですが…。小柄な人が多い日本の指揮者ですが,長身で,なかなかかっこよかったです。
  ・・・・・・ 
 2024シーズン急遽代役として定期デビューを果たした松井慶太が満を持して再登場!
 川瀬音楽監督の友人でありよきライバル。英国の大作曲家エルガーが妻や友人をモチーフに描いた交友録「エニグマ変奏曲」。そして,我らがコンサートマスターの小川響子がソリスト・デビューする〈友人たちの肖像〉は会場を温かく包み込むでしょう。
  ・・・・・・
 私が出かけた理由は,小川響子さんのソロデビューを聴きたかったからで,エルガーの2曲のうち「エニグマ変奏曲」は,以前,NHK交響楽団の定期公演で聴いたことがありますが,特に興味はありませんでした。
  ・・・・・・
 名フィル第541回定期演奏会〈友人たちの肖像〉で,小川響子がついにソリスト・デビュー‼ 葵トリオのヴァイオリニストであり,名フィルのコンサートマスターとして普段はオーケストラを牽引する彼女が,ソリストとしてブラームスのヴァイオリン協奏曲を演奏します。
  ・・・・・・
とありました。
 ブラームスのヴァイオリン協奏曲をコンサートマスターの小川響子さんが演奏する,というのがこの演奏会最大のウリです。で,私もそれが動機で聴きにいったわけです。

 ところで,名古屋フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会はいつも何らかのテーマが提案されます。今回は〈友人たちの肖像〉。
 2曲目エルガーの「スルスム・コルダ」は,ラテン語で「心を上げよ」という意味で,聖別されたパンを高く挙げる「聖体奉挙」というカトリックの儀式を意味します。エルガーはこの作品を亡き友人の追悼のために書いたともいわれ,静謐さと祈りのような雰囲気が全体に漂っている「威風堂々」のような,いかにもイギリス,という曲でした。3曲目の「エニグマ変奏曲」の「エニグマ」は古代ギリシャ語の由来で「謎」という意味です。第1変奏は妻アリス,第14変奏はエルガー自身を描き,第2変奏から第13変奏はすべて友人たちが描かれているということです。そこで,この2曲は〈友人たちの肖像〉のテーマにふさわしい…,とのことです。
 そのような説明から,〈友人たちの肖像〉というテーマでエルガーの2曲が取り上げられているのは納得がいったのですが,そこにどうしてブラームス? と私は思いました。その理由は,この曲がブラームスの親友だったヨーゼフ・ヨアヒムの助言を受けながら作曲されたから,ということでした。とはいえ,何ゆえに,ブラームスとエルガーなの? しかも,これらのことは,Xに書かれていたことで,プログラムには何の説明もない。

 私は,名古屋フィルハーモニー交響楽団自体は上手だし,地元のオーケストラだから贔屓にしたいし,演奏会にも行きたいと思っているのですが,演奏会のプログラム構成がどうも私には魅力がなくて,それが演奏会に行く気持ちを削いでいます。
 それは,コンサートにこうしたテーマを掲げることが,小難しく理屈っぽく感じるのもひとつの理由です。お前にわかるか,みたいな上から目線に感じるし,何だからこじつけのような気がします。でありながら,テーマについての説明がない。学校のお勉強でないのだから,もっと気楽に,次の演奏会は好きな曲だな,聴きたいソリストだな,この指揮者ならば行ってみよう,という動機で足を運びたいような曲やソリスト,指揮者の選択にならないものか。来年度のプログラムを見ても,何かひとつ物足りない。
 今回も,エルガーがやりたいのなら,エルガーのチェロ協奏曲を1曲目にして人気のチェリストを招聘してプログラムを組みたてればいいのだし,小川響子さんが演奏するブラームスのヴァイオリン協奏曲を目玉にしたいのなら,後半はブラームスの交響曲にすればいい。おそらく,名古屋フィルハーモニー交響楽団のプログラム作成の担当者がそうしたありきたりのプログラム編成にしたくない人なのでしょうが…。また,こうしたテーマを背景にしたいのなら,それを第一に掲げるのではなく,京都市交響楽団の定期演奏会のように,演奏会の前にプレトークをすればいい。私はそう思います。

 何はともあれ,小川響子さんのブラームスは,「正月返上で練習に明け暮れ,演奏者冥利に尽きる」と本人が言っていたように,曲に対する想い入れがこもっていて,圧巻でした。はじめのうち,かなり緊張しているように見えましたが,一生懸命さが伝わってきて感動しました。観客の反応を見ても「我らの地元・名フィルの愛らしきコンマス」という暖かな感じが伝わりました。アンコール曲は定番,バッハの無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番から第3楽章「ラルゴ」でした。
 カーテンコール時の写真撮影もできるし,終演後にお見送りもしてもらえるし,いい意味で「名フィル」も変わったな,と思いました。チケット代だけがうなぎ上りで,開演前のロビー室内楽もやめてしまって観客との接点がなくなり,お高くとまっているNHK交響楽団も少しは見習いなさい。「カーテンコール時の写真撮影可」を最初にはじめたことだけは評価するけれど,これも近ごろは撮影会の様相を呈してしまっているし。

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【Summary】
On January 13, 2026, I visited the Van Gogh exhibition focusing on the family collection. Although the venue was quiet, the number of works was limited. Only a few paintings impressed me, making the exhibition disappointing compared with the excellent 2022 Van Gogh show.

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 2026年1月13日,「ゴッホ展-家族がつないだ画家の夢-」を見てきました。おそらく週末は混んでいるだろうと,平日の,しかも祝日の次の火曜日を選んで,開場時間の午前10時の30分前に並びました。空いていました。聞くところでは,昨日は雪が降る寒い日だったのにもかかわらずすごい人だったそうです。
  ・・・・・・
 フィンセント・ファン・ゴッホの作品は,今日までどのように伝えられてきたのでしょうか。
 本展は,ファン・ゴッホ家が受け継いできたファミリー・コレクションに焦点を当てます。フィンセントの画業を支え,その大部分の作品を保管していた弟テオは兄の死の半年後に生涯を閉じ,テオの妻ヨーが膨大なコレクションを管理することとなります。
 テオとヨーの息子フィンセント・ウィレムは,コレクションを散逸させないためにフィンセント・ファン・ゴッホ財団を設立し,美術館の開館に尽力します。
 本展では,フィンセント・ファン・ゴッホ美術館の作品を中心に,日本初公開となるファン・ゴッホの貴重な手紙4通なども展示します。
  ・・・・・・
というもので,フィンセント・ファン・ゴッホ美術館所蔵の作品を展示したものです。

 見どころとしては
  ・・・・・・
①ファン・ゴッホ家のコレクションから75点を紹介。
② 30点以上のゴッホ作品で初期から晩年までの画業をたどる。
③ フィンセント・ファン・ゴッホの手紙4通を展示。
  ・・・・・・
ですが,正直言って,期待外れでした。
 見てよかったと思った作品は,パンフレットにある1887年の画家としての自画像,1888年の「アルル」,1890年の「オーヴェール・シュル・オワーズ」(Auvers-sur-Oise)くらいのもので,作品の数も少なく,あまり得るものはありませんでした。ということで,ここで書きたいこともこれ以上ありません。
 2022年3月に開催された「ゴッホ展-響きあう魂 ヘレーネとフィンセント-」がよかっただけに残念な展覧会でした。なお,神戸市立博物館で開催されている「大ゴッホ展」とは別物です。「大ゴッホ展」で展示されている「夜のカフェテラス」」(Terrasse du café le soir)は2005年に開催された東京国立近代美術館の「ゴッホ展」で見たことがあります。

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【Summary】
I began 2026 by attending a complete performance of Brahms’s violin sonatas at Munetsugu Hall in Nagoya, featuring violinist Kyoko Ogawa. The refined, deeply expressive music left a strong impression. The concert also highlighted the growing presence of outstanding female concertmasters in Japanese orchestras.

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 2026年1月10日は,コンサートのハシゴをしました。ひとつ目は,叶澤尚子さんの「サタデー・モーニング・コンサート vol.24」,そして,ふたつ目は小川響子さんのヴァイオリン演奏会でした。
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 次に聴いたのが,小川響子さんのヴァイオリン演奏会でした。
 場所は名古屋の宗次ホール。定員310人のホールですが,満席でした。ヴァイオリンが小川響子さんで,ピアノが稲生亜沙紀さん,曲目はブラームスのヴァイオリン・ソナタ全曲,といっても,3曲しかないのですが,それをすべて演奏する,というものでした。

 私はブラームスのヴァイオリン・ソナタはこれまで聴いたことがなかったので,聴く前に予習をしました。
 ブラームスは1833年に生まれ,1897年に63歳で亡くなりました。ピアノ協奏曲第1番の作曲が1858年,ピアノ協奏曲第2番が1881年,ヴァイオリン協奏曲が1878年,交響曲は第1番が1876年,第2番が1877年,第3番が1883年,そして,第4番が1885年なので,ヴァイオリン・ソナタは晩年の作品です。
  ・・・・・・
●ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」
 1879年の作曲で,優しくて抒情的。3楽章構成。
 避暑地で自然に囲まれて作曲した影響で,しっとりとした雨のような雰囲気があります。「雨の歌」とよばれるのは第3楽章に歌曲「雨の歌」(Regenlied)の旋律が使われているからということです。
  ・・
●ヴァイオリン・ソナタ第2番「愛の歌」
 1886年の作曲で,明るくて親しみやすい雰囲気。3楽章構成。
 ブラームスが恋をしていたときに書いたから,といわれ,甘くて優雅な旋律が魅力的です。だそうですが,恋をしていた相手はソプラノ歌手のヘルミーネ・シュピース(Hermine Spies)という人だそうです。ヘルミーネ・シュピースはブラームスのお気に入りの歌手で,彼女のために書かれた歌曲の旋律がこのソナタの中に織り込まれているということです。
  ・・
●ヴァイオリン・ソナタ第3番
 1888年の作曲で,ドラマチックで情熱的。4楽章構成。
 ブラームスのヴァイオリン・ソナタの最高傑作とわれます。第1楽章ではピアノとヴァイオリンがまるで火花を散らすように対話し,第2楽章ではピアノが深い呼吸のように歌いヴァイオリンがそれに寄り添うように奏で,間奏曲のような軽やかな第3楽章に続き,嵐のクライマックス第4楽章ではピアノが怒涛のように駆け抜けヴァイオリンがそれに食らいついていくという,リズムの切迫感ハーモニーの緊張というようにふたつの楽器がせめぎ合うすばらしいものです。
  ・・・・・・

 小川響子さんは,ブラームスが好きということで,ソナタ全曲を弾くのが夢だったそうです。私も,このごろ,渋くてこころに染みるブラームスの作品がどれもがとてもいいと思うようになってきました。とりわけヴァイオリン・ソナタは気品があり,すてきな曲なので,聴くのが楽しみでした。
 小川響子さんはのびやかで張りのある音色がすばらしい奏者です。曲に特別な想いがあるというのがにじみ出ていました。今回,一度に全曲聴くことができて,私もとてもしあわせでした。
 アンコール曲は,ブラームスのF.A.E.ソナタよりスケルツォと,シューマンの3つのロマンスより第2楽章でした。F.A.E.ソナタは,1853年にブラームスがシューマンとその弟子ディートリヒ(Albert Dietrich)と共作したヴァイオリン・ソナタで,ヨアヒム(Joseph Joachim)のために書かれたものです。F.A.E.とは、ヨアヒムのモットーである「Frei aber einsam」(自由にして孤独)の頭文字を取ったもので,音楽的モチーフとしてF-A-Eの音を作品に織り込んでいます。ブラームスがかいた第3楽章のスケルツォは,単独でも演奏されるほどの人気を誇ります。
 今回の演奏会の主役である小川響子さんは名古屋フィルハーモニー交響楽団のコンサートマスターです。1年前に愛知県稲沢市の市民会館で,名古屋フィルハーモニー交響楽団のメンバーによる室内楽の演奏会があって,そのときに出演したのを聴きました。
 何とまあ,美しい音をさらりと簡単そうに奏でる人なのだろう,と思っていたら,このごろはAoiTrio(葵トリオ)というピアノ三重奏団でも活躍しているようです。私は,AoiTrio(葵トリオ)は,まだ聴いたことがないので,一度聴いてみたみたいと思っています。また,来週1月16日と1月17日には,名古屋フィルハーモニー交響楽団でブラームスのヴァイオリン協奏曲を弾くということなので,こちらは聴きに行きます。とても楽しみです。

 ところで,近ごろ,オーケストラのコンサートマスターには多くのすばらしい女性がいます。調べてみると
  ・・・・・・
 京都市交響楽団と札幌交響楽団には会田莉凡さん,読売日本交響楽団には日下紗矢子さん,仙台フィルハーモニー管弦楽団には神谷未穂さん,山形交響楽団には犬伏亜里さん,群馬交響楽団には伊藤文乃さん,新日本フィルハーモニー交響楽団には立上舞さん,日本フィルハーモニー交響楽団には千葉清加さん,富士山静岡交響楽団には大森潤子さん,セントラル愛知交響楽団には島田真千子さん,大阪交響楽団には林七奈さん,関西フィルハーモニー管弦楽団には木村悦子さんと赤松由夏さん,日本センチュリー交響楽団には松浦奈々さん,広島交響楽団には四方恭子さん,北田千尋さん,蔵川瑠美さん,NHK交響楽団にはトゥールーズキャピトル国立管弦楽団から藤江扶紀さんがゲストで。
  ・・・・・・
という具合ですが,女性のコンサートマスター,華やかでいいです。
 ちなみに,以前は,女性の場合,コンサートミストレス(Concertmistress)とよんでいましたが,今では,性別に関わらずコンサートマスター(Concertmaster)とよぶことが多いです。英語圏では「master」が男性名詞であることから「mistress」が使われたものの,近年はポリティカル・コレクトネス(=政治的正しさ)の観点から「concertmaster」に統一する傾向があり,同様にして,日本語でも「女性でもコンマス」というケースが増えているということです。

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【Summary】
On January 10, 2026, I attended two concerts in one day. At a Saturday Morning Concert, former Nagoya Philharmonic principal violist Naoko Kanazawa played and spoke about music, comparing viola and violin. Though lacking musical talent myself, I enjoy sharing the joy of gifted performers through concerts.

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 2026年1月10日は,コンサートのハシゴをしました。ひとつ目は,叶澤尚子さんの「サタデー・モーニング・コンサート vol.24」,そして,ふたつ目は小川響子さんのヴァイオリン演奏会でした。
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 まずは「サタデー・モーニング・コンサート」。
 元名古屋フィルハーモニー交響楽団の首席ヴィオラ奏者だった叶澤尚子さんがヴィオラをひきながら楽しいお話をする,という1時間程度の軽いコンサート。これで3回目でした。場所は,愛知県芸術劇場の中リハーサル室。150人程度入ることができるところです。今回の曲目は,エルガーの「朝の歌」,新年のあいさつを兼ねて,宮城道夫の「春の海」,ドヴォルザークの「ユーモレスク」,そして,エネスコの演奏会用小品でした。そして,アンコールに葉加瀬太朗さんの「情熱大陸」がヴァイオリンで演奏されました。

 今回は,20年以上前ぶりにヴァイオリンを弾くというのがウリで,ドヴォルザークの「ユーモレスク」をヴィオラとヴァイオリンで弾き比べをしました。
 体格の劣る日本人は,ヴィオラ奏者の99パーセントはヴァイオリンから転向組ということで,叶澤尚子さんも高校生まではヴァイオリンだったそうです。体格がよくて,ヴァイオリンを窮屈に感じていたときにヴィオラに出会い,転向したそうです。ヴァイオリンに比べてヴィオラは曲が少ないのが難点で,子供のころからヴィオラを練習すると,大人になるころに弾く曲がなくなってしまうとも言っていました。
 そんな叶澤さんは,今は手元にヴァイオリンがないということで,フリマで9,500円で手に入れたというヴァイオリンを使って,20年ぶりという演奏でした。ヴァイオリンとヴィオラの大きさを比べると,ずいぶん違うものだと思ったのですが,弓はヴァイオリンのものの方が長いのだそうです。楽器の大きいヴィオラではヴァイオリンの弓だと届かないという話でした。こういう話はとてもためになりました。 

 私は,まったく弦楽器は弾けないので,詳しいことはわからないのですが,YouTube に,Yu-ka(新井優香)さんという人がコントラバスで弦楽器のヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ,コントラバスのすべてのパートを弾く,というおもしろい動画を載せています。趣味でチェロを弾く友人に聞くと,オクターブを変えて弾いているということですが,楽しそうで,弾ける人がうらやましいです。
 楽器に限らず,私はこの歳になって,楽器はだめ,語学はだめ,運動はだめ,というだめだめ尽くしの才能のなさが身にしみてとても残念に思うのですが,ならば,せめて,才能のあふれた人からその楽しさだけでも共有しようと,足しげく,コンサートに出かけているわけです。

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「Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.」とは

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【Summary】
On December 27, 2025, inspired by an excellent rehearsal, I attended Beethoven’s Ninth Symphony. The fast yet clear opening movements, a serene and sacred third movement, and a powerful finale under Nodoka Okisawa’s lucid direction created an unforgettable performance—deeply moving, and the finest Ninth I have ever heard.

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 2025年12月27日。
 リハーサルがすばらしかったので,大いに期待して本番の「第9」を聴きに行きました。前日のリハーサルでは第1楽章と第2楽章しか聴くことができなかったので,果たしてどんな第3楽章と第4楽章になるのだろう,ととても楽しみでした。
 開演前,京都コンサートホールの1階にある「前田珈琲 京都コンサートホール店」で野菜たっぷりカレーという昼食をとりましたが,いつも以上に混み合っていました。このように,「第9」の演奏会では,さまざまなことが,普段のコンサートとは違った雰囲気になります。それは,「第9」に限って聴きに来る観客も多いからでしょう。芸妓さんの姿があったのも京都らしいというか。

 やがて開演。ステージ上に現れた団員さんも「晴れの日」のムードが醸し出されているようで,身に着けていた衣装も一段とゴージャスだったように感じました。
 曲がはじまりました。
 第1楽章と第2楽章は,リハーサルどおり,いい意味で今どきの「第9」で,テンポが速く,とはいえ,速すぎることもなく,しかも,メリハリがあってすばらしいものでした。もう,今は,昔の「第9」,つまり,ゆっくり目のテンポで,重々しく,威厳のあるような演奏は,私には古臭く,受けつけません。
 前半のふたつの楽章が終わり,独唱者も出そろって第3楽章がはじまりました。
 私が思っていたよりもゆったりとした,かつ,神々しいものでした。それがまた,美しかったこと。第3楽章も,第1楽章,第2楽章と同じようにしてものすごいスピードで駆け抜ける演奏もあるのですが,それでは救いがありません。この交響曲は,まさにベートーヴェンの描きたかった「苦悩を乗り越えて歓喜へ」至らなければならないのです。そして,第4楽章で歓喜に到達するには,そのまえに澄みわたるような祈りの音楽が必要なのです。
 今回のコンサートマスターは会田莉凡さんでしたが,第3楽章では,会田莉凡さんのヴァイオリンの音色が引きたって聴こえました。これは,以前聞いた「英雄の生涯」のソロに共通するすてきなものでした。

 第3楽章が終わり,そのままアタッカーのようにして第4楽章に入りました。こうでなければなりません。第3楽章の祈りのあと,奈落に落ちるような,雷を打つような,そんなはじまりが必要なのです。また,この部分のテンポがよかった。
 それにしても,この曲を指揮するのはたいへんだなあ,と思いました。オーケストラは制御できても,ソリストや合唱の人たちはそう簡単にはいかないからです。しかし,沖澤のどかさんの指揮は,聴いている私でも,何を表現したいのかが明確にわかるから,演奏している人たちは,もっとよく理解できると思いました。そうした積み重ねが最後まで持続して,すばらしい演奏になりました。このような「第9」なら,演奏していてとても楽しいだろうな,と嫉妬しました。とりわけ,各楽章の最後の終わり方がよかった。 
 今回,改めて,ベートーヴェンは,何とすごい交響曲をつくったものか,と思いました。こうしたものが存在し,今も演奏が聴けるということに感謝しました。
 私がこれまで聴いた中でも,最高の「第9」でした。
 泣けました。

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【Summary】
In 2025, I became a subscription member of the Kyoto Symphony Orchestra and eagerly anticipated Beethoven’s Ninth Symphony conducted by Nodoka Okisawa. Attending the open rehearsal, I was deeply impressed by how her expressive intentions were shaped through repeated refinement, heightening expectations for the concert.

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 2025年は,私が京都市交響楽団の定期会員になった年。そして,最大の楽しみは,「沖澤のどかさんの指揮する第9」でした。年末恒例となったベートーヴェンの交響曲第9番。京都市交響楽団の演奏会は20205年12月27日と28日ですが,その前日の公開リハーサルにも行くことができました。
 これまでにも何度もブログに書いているように,私は,「第9」の演奏会にはそれほど多く行ったことがありません。近年では,2015年のパーヴォ・ヤルヴィ指揮とその翌年2016年のブロムシュテッド指揮の,ともにNHK交響楽団のものに行ったきりです。しかし,NHKではFMで生放送があって,大みそかにはEテレでも放送されるので,毎年聴いています。というか,唯一,2024年のファビオ・ルイージ指揮のものは,聴くに堪えず,途中でやめてしまいましたが…。

 これだけ多く聴いていると,素人の私にもその演奏の違いがよくわかります。指揮者によって最も異なるのはテンポです。そして,勝負所,というか何というか,つまり,聴かせどころでの味つけ。これらは,私にはこういうものがいい,という一定の基準ができてしまっているので,そこから外れる演奏だと,それもありかな,と肯定的に思うことがあったり,こりゃ受けつけないなあ,と否定的に感じることもあります。だから,あまり知らない指揮者の「第9」演奏会は行くのが怖い。
 近年で,私がよかったと思ったのは,生演奏は聴かなかったのですが,放送で聴いたた2023年の下野竜也指揮・NHK交響楽団のもの。それと,2024年のフランチェスコ・アンジェリコ(Francesco Angelico)指揮・読売日本交響楽団のもの。ともに,ソプラノの中村恵理さんがすばらしかった。ほかにも気に入る演奏はあるのでしょうが,放送されなければ,私には知る由もありません。ちなみに,今年は中村恵理さんが急病で,いくつかのオーケストラの「第9」をキャンセルしたということです。
 はたして,今年,私が生演奏を聴く沖澤のどか指揮の我が愛する京都交響楽団の「第9」は,いかなるものか。絶対に期待をうらぎらないという確信があったので,こころときめかせながら,まずはリハーサルに行きました。

 このごろ,公開リハーサルがさまざまなところで行われているので,私もこれまで何度かさまざまなオーケストラの公開リハーサルを聴いたことがありますが,京都市交響楽団の公開リハーサルははじめてでした。また,「第9」のリハーサルももちろんはじめてでした。プロの演奏家の人たちだから,そして,とりわけ京響が上手だから,技術的にどうの,ということではなくて,リハーサルを通じて,指揮者の描くテンポや表現の仕方がオーケストラにどのように伝わっていくのか,が聴きどころなのでしょう。
 今回聴くことができたのは,第1楽章と第2楽章だけでしたが,聴かせどころで何度も繰り返し,そのポイントを押さえるのが上手というか,私がこうであってほしい,と思っているものになっていくので,とてもうれしかったです。例えていえば,2アウト2,3塁で,ここで打ってほしいと期待した左打者が期待に応えてライトにあざやかなクリーンヒットを放ったときの爽快感。リハーサルなのに感動しました。
 本番の演奏がより楽しみになりました。
  ・・
 今回の「第9」ではないのですが,私も2025年3月16日に沖澤のどか指揮・京都市交響楽団の演奏会に行ったときに聴いた「英雄の生涯」のリハーサル風景を YouTube で見ることができます。それを見るだけでも,今回の公開リハーサルのすばらしさがわかるというものです。


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【Summary】
I attended a members-only concert by the Kyoto Symphony Orchestra on December 23, 2025. In an intimate hall, musicians gave friendly talks, followed by a lottery and Mozart’s Symphony No. 25 conducted by Nodoka Okisawa. The warm atmosphere and festive encore made it a perfect Christmas gift.

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 私の生きがいのひとつ京都市交響楽団で,2025年12月23日に友の会コンサートが開催されたので,行ってきました。京都市交響楽団は,定期会員になると,友の会の会員になれます。その友の会の会員限定のお楽しみ会があったのです。
 開演は午後7時で,午後6時30分開場でした。私は午後6時ころに京都コンサートホールに到着したのですが,会場前の広場が,クリスマスの飾りでとてもきれいでした。見とれて写真を撮っていると,ひとりの女性が同じように写真を撮っていたので,お願いして,私の写真を写してもらいました。私はてっきり,私と同じ観客だともっていたのですが,話をすると,何と,出演者,つまり,京都市交響楽団の団員さんでした。いろいろなお話ができて,とても楽しい時間になりました。

 この日の演奏会は,いつもの大ホールとは違い,ムラタホールという名前の小ホールでした。開場時間まではまだ15分ほどあったのですが,会場の入り口まで行くと,すでに,20人ほどが並んでいました。やがて開場の時間になったので,中に入りました。
 私は,演奏会はできれば最前列,と決めています。それは,CDなどでは聴くのが難しい音が聴けたり,指揮者や団員さんの表情がわかるからです。今回もまた,最前列に座ることができました。
 この日の内容は,はじめに,4人の団員さんのトーク,次が抽選会,そして,最後が,常任指揮者の沖澤のどかさんと京響メンバーによるモーツァルトの交響曲第25番ということでした。

 団員さんのトークは,好きな食べ物とか,好きな作曲家とか,京都でお気に入りの場所とかが話題でした。京都市交響楽団は,団員さんとの精神的な距離が近いと感じるのがとてもいいと私は思っているのですが,まさに,そんな印象を抱くものでした。残念ながら,抽選は当たりませんでした。商品は,「ボレロ」を聴かせたお酒,でした。
  ・・・・・・
 京都市交響楽団が演奏を聴かせたお酒は,佐々木酒造 とオンキヨーのコラボによる「聚楽第 京乃響」(きょうのひびき)シリーズの日本酒で,2025年の第2弾では,第685回京響定期演奏会の沖澤のどか指揮ラヴェル「ボレロ」の演奏を聴かせて醸造されました。
 これは音楽の振動を日本酒の味に活かす「音楽振動熟成」という特別な製法で,京都の文化と酒造りが融合した限定品です。
  ・・・・・・
だそうです。

 そして,最後がモーツァルトの交響曲第25番。こうした小編成のオーケストラ曲は,京都市交響楽団の定期演奏会ではあまり聴く機会がなく,かつ,沖澤のどかさんの指揮するモーツアルトもはじめてだったので,とても興味がありましたが,さすが,という感じでした。
 最後に,クリスマスメドレーのアンコールがありました。聴きなれた曲も優れた指揮者とオーケストラの手にかかると,こうも魅力的になるのか,と思いました。
 最高のクリスマスプレゼントになりました。

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Happy Holodays 2025.

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【Summary】
The workshop “Sound and Calligraphy” was held at Kōshōji Temple in Nishijin, usually closed to the public. Opened specially for autumn, it is known as the “Oribe Temple,” linked to Furuta Oribe. Though the maple leaves had mostly fallen, the quiet atmosphere revealed a refined and memorable beauty.

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 ワークショップ「音と書」が行われたのは,西陣の興聖寺(こうしょうじ)という寺院でした。
 普段一般公開はされておらず,2025年11月15日から12月14日まで,~「織部寺」のもみじ特別公開~として
  ・・・・・・
 茶道織部流の祖でもある武将・古田織部(ふるたおりべ)との関わりから「織部寺」(おりべでら)ともよばれる非公開寺院では,この秋,本堂前や方丈庭園の美しい紅葉の特別公開が行われます。
 本堂天井画「雲龍図」(うんりゅうず)や,青が印象的な「青波の襖」が奉納された方丈(ほうじょう),「降り蹲踞」(つくばい)などがみどころです。
  ・・・・・・
ということです。

 私は,地下鉄烏丸線に乗って,鞍馬口で降り,興聖寺を目指して,西に向かって歩きました。その途中で見つけたのが,京都大学室町寮でした。吉田寮は有名ですが,ここにももうひとつ,昔のままの寮があったんだ,と驚きました。
  ・・・・・・
 室町寮は京都大学の歴史ある男子寮で,設立は戦後間もない1946年。当初は戦災で住む場所を失った学生たちのための仮設住宅としてはじまりました。
 特徴は,何といっても自治と自由の精神で,寮生たちが自分たちで運営し,寮のルールやイベントも自分たちで決めるという,小さな共同体になっています。
 建物自体はかなり年季が入っている「ボロ寮」としても知られていて,それが味わい深いものとなっている「生きた歴史博物館」です。
  ・・・・・・

 次に見つけたのが妙覚寺でした。
  ・・・・・・
 妙覚寺は,1378年(永和4年)に四条大宮に創建し,幾度かの移転ののち,豊臣秀吉の都市計画により現在地へ移ったものです。北竜華具足山と号し,妙顕寺・立本寺とともに「京都日蓮宗名刹三具山」に数えられ,京都16本山のひとつです。
 戦国時代には二条衣棚にあり,斎藤道三の息子が住職を務めたことから織田信長の京都での定宿となり,本能寺の変の際には信長の長男・織田信忠が宿泊していました。大門は、秀吉が建てた聚楽第の裏門で,本堂前の「法姿園」(ほうしえん)は紅葉美しき所として有名です。
  ・・・・・・
 通常は庭園は非公開ですが,この時期だけ特別公開が行われるのですが,今年は紅葉が早く散り,すでに公開は終了していました。

 やがて,堀河通りの向こうに興聖寺が見えてきました。
  ・・・・・・
 興聖寺は臨済宗興聖寺派の本山の寺院で,山号は円通山。本尊は釈迦如来です。
 1603年(慶長8年)に,妙満寺・日重上人の弟子である虚応円耳が,法華宗の教えを広めるために,東隣の大応寺から移って創建したもので,創建時は興正寺といいました。
  ・・・・・・
 茶人・古田織部部の妻センが隠棲した北野天満宮隣りの青霄院が,センの死後移転して同寺の塔頭となり,その後,豊後国岡藩の家老・古田家が織部と子らの墓を建てた関係で,昭和になってから織部寺とよばれるようになったということです。
 ワークショップがはじまる前,時間があったので,境内を散歩しました。
 この寺院もまた,今年は紅葉が早く,すでにほとんど散り紅葉となっていましたが,それはそれで趣がありました。
 京都の寺院は,つねに公開していて観光客いっぱいのところも数多くあるのですが,そうでなく,ひっそりとしたところもまた,すばらしい紅葉を見ることができます。何かの縁で,そうした場所を訪れれる機会があったのは,とても幸運なことでした。

 ワークショップの帰り,再び,鞍馬口まで歩いたのですが,その途中にあった料亭から出てきた舞妓さんと芸妓さんを見ました。観光客の知らない世界。ああ,京都というのは,誠に奥が深いところだと思いました。

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【Summary】
After a Kyoto Symphony Orchestra concert, I joined a workshop titled Sound and Calligraphy at a quiet Nishijin temple. Violinist Tomoko Kinoshita’s intimate performance, combined with live calligraphy inspired by The Tale of Genji and a hands-on writing experience, offered a deeply calming and enriching encounter with Japanese culture.

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 2025年11月29日に行われた京都市交響楽団第706回定期演奏会のあと,「音楽と珈琲と語らいのひととき」という企画があって参加したのですが,このとき,ヴァイオリンの木下知子さんから,12月13日午後5時30分からワークショップを行うという案内があったので,参加してきました。場所は,西陣の興聖寺というところでした。
 チラシによると,感覚・感性を磨く 臨む!ワークショップ「音と書」ということでした。何をするのか,あまりよくわかっておらず,何事も経験だと思って行ってみたのですが,とても楽しい時間となりました。

 まず,木下知子さんのヴァイオリンを楽しみました。曲目は,こころに問いかけるようなものばかりで,静かな寺の空間にとてもふさわしく,すばらしかったです。大音響のオーケストラや,有名な曲もよいですが,それとはうって変わって,こうしたものもまた,すてきです。何よりも,プロのヴァイオリンの音を近くで味わうというのは,何というぜいたくなことなのでしょうか。
 次に,玉雪さんという書道家の描く作品をヴァイオリンの即興演奏とともに鑑賞しました。私は,書道はよくわからないのですが,それでも,何を表現したいのかはわかったような気がします。書かれた作品にある文章は,「源氏物語」の若菜の第五章光る源氏の物語・玉鬘,源氏の四十の賀を祝う から
  ・・・・・・
よろづの物の音調へられたるは妙におもしろくあやしきまで響く
  ・・
すべての楽器の音色がひとつになっていくのは見事に素晴らしく不思議なまでに響き合う
  ・・・・・・
というところだそうです。

 薄茶と菓子をいただいて,最後は,書道を体験しました。私は,書道は50年以上やったことがありません。子供のころ,書道教室に行って,というか,行かされて,墨をするのが嫌でやめたトラウマしかないのです。それが,この歳になると,こころが落ち着く時間となるのが,不思議なことでした。もっと早くこういうことを知っていたら,ずいぶんと違ったかもしれません。
 紅葉も終わりに近づいたこの時期,静かな寺院の方丈で,こうした時間を過ごすことができたのは,とても有意義な時間でした。それにしても,人間の作ってきた文化というのは,何と奥が深いことか,とこのごろつくづく思います。

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【Summary】
I attended the Mayuko Kamio & Mami Hagiwara Duo Recital at Nagoya’s Munetsugu Hall on December 6, 2025. Their program ranged from Sinding and Grieg to Elgar, Rachmaninoff, and a stunning “Zigeunerweisen.” Kamio’s powerful, resonant Stradivarius tone and exceptional technique stood out. Encores were Gluck/Kreisler’s “Melody” and Bazzini’s “Dance of the Goblins.”

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 2025年12月6日,名古屋の宗次ホールで, 神尾真由子&萩原麻未 デュオ・リサイタルを聴きました。
 曲目は,前半がシンディングのヴァイオリンとピアノの組曲「古い様式で」,グリーグのヴァイオリン・ソナタ第3番という技巧的な曲,後半がエルガーの「愛のあいさつ」,クライスラーの「愛の悲しみ/中国の太鼓」,ラフマニノフのヴォカリーズ,リムスキー・コルサコフの「熊蜂の飛行」,マスネのタイスの瞑想曲,そして,最後が特筆すべきすばらしい演奏のサラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」でした。
  ・・・・・・
 ヴァイオリンの神尾真由子さんは,2007年の第13回チャイコフスキー国際コンクール第1位,ニューヨークタイムズ紙で「聴く者を魅了する若手演奏家」「輝くばかりの才能」と絶賛されました。使用楽器は宗次コレクションより貸与された1731年製ストラディヴァリウス「ルビノフ」(Rubinoff)ということです。
 ピアノの萩原麻未さんは,2010年の第65回ジュネーブ国際コンクール第1位だそうです。
 私は,たびたびーケストラの演奏会によく行きますが,こうした小規模の演奏会も好きで,聴きたいものがあるときに出かけます。音楽は,こころを豊かにするので,大好きです。
  ・・・・・・

 これまで,多くのヴァイオリニストの演奏を聴きましたが,気になる存在でありながら,なかなかその機会がなかったのが神尾真由子さんでした。それがやっとかなったのが,2025年1月11日。広上淳一指揮のセントラル愛知交響楽団の定期演奏会で,曲目はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲でした。今回は,狭い会場での室内楽,ということで,また,別の楽しみでした。
 私は,神尾真由子さんのヴァイオリンの特徴は,技巧の冴えと音の存在感にあると思っています。音が太く伸びがすごいのです。
  音の太さと伸びは,神尾真由子さんが1735年製のグァルネリ・デル・ジェス( Giuseppe Guarneri del Gesù)を弾いていたころ,「地響きのようなパワーがある」「太くよく鳴る」と語っていたということで,自覚があるようです。その後は,先に書いたように,「ルビノフ」を使用していて,これもまた,深みのある音色で知られているのだそうです。また, 技巧面では,ザハール・ブロンやドロシー・ディレイといった名教師に学んで身につけた圧倒的なテクニックと情熱的な表現力という裏づけがあり,まさに「火と水を操るヴァイオリン」です。
 なお,アンコールは,グルック作曲クライスラー編曲の「メロディ」とバッツィーニ(Antonio Bazzini)の「妖精の踊り」(La Ronde des Lutins)2曲でした。これがまたよかった。
 楽しい土曜日の午後をすごすことができました。

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Cold Moon 2025.

早朝の伊吹山と「コールドムーン」と新幹線です。
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【Summary】
The 706th Kyoto Symphony Orchestra concert featured lively works by Rossini and Haydn, with Haydn’s “Bear” Symphony humorously shaped by Spinosi’s playful ending. A well-timed “bear” sound from the audience added surprise. Afterward, a JR Tokai–Kyokyo collaboration event with orchestra members offered enjoyable behind-the-scenes stories.

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 京都市交響楽団第706回定期演奏会。前半のロッシーニの歌劇「アルジェのイタリア女」(L'italiana in Algeri)序曲とハイドンの交響曲第82番「熊」(L'Ours)は似た雰囲気の曲です。ロッシーニの歌劇「アルジェのイタリア女」序曲は頻繁に演奏される曲です。ハイドンの交響曲第82番「熊」も,ときどき耳にします。楽しい曲です。
 ハイドンの交響曲第82番「熊」は,1786年に作曲された「パリ交響曲」6曲のうちの1曲です。当時のパリにコンセール・ド・ラ・ロージュ・オランピック(Le Concert de la Loge Olympique)という大編成のオーケストラがあって,このオーケストラの依頼で作曲されました。タイトルの「熊」はハイドン自身がつけたものではなく,第4楽章の冒頭に登場する低音のうなり声のようなモチーフがまるで熊使いの音楽のように聞こえることから自然とそうよばれるようになったそうです。
 私は,ウィーンに行ったとき,ハイドンに関する史跡をずいぶん見て,さらに,ウィーン楽友協会で,パーヴォ・ヤルヴィさんが指揮をしたドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団でハイドンの交響曲を聴いて以来,ハイドンの交響曲を聴くたびにウィーンにいるような気持ちになって,満ち足ります。

 この曲もまた,指揮者ジャン・クリストフ・スピノジさんの味つけで,普段聴いているものとは違いました。特に,曲の最後,わざわざお客さんの拍手のフライングを誘発するような,そんな演出でした。これは,通常の演奏会で不快なるフライングとは全く異なるものでした。一体,いつ終わるのか,そう思うような繰り返しが何度も続き,とても愉快になりました。このときの様子は,探してみると,YouTubeにhr交響楽団(hr-Sinfonieorchester)を演奏したものがありました。まさに同じ感じだったので,これは,指揮者が意図したものでしょう。でも,今回は,それよりも最後の繰り返しが多かった。
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 「熊」の終楽章は,終わりそうで終わらない感じがします。この第4楽章「フィナーレ・ヴィヴァーチェ」は,ソナタ形式で書かれていて,前打音を伴う低音のモチーフがずっと続きます。まるで熊がのっしのっしと踊ってるみたいなリズムで,聴いてると「もう終わるかな?」と思った瞬間に,また元気よく再開します。ハイドンは,ユーモアの達人でもあって,聴き手の予想を裏切るのが得意でした。だから,「終わるぞ〜と思ったらまだだよ〜!」という音楽のいたずらを仕込んでるのかもしれません。
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と,当時のサロンで,貴族が,食事を楽しみながら音楽を適当に聴いていて,エッーと驚くさまが想像できます。だから,これはこれでいいのです。

 それにしても,曲が終わったところで,観客の誰かがクマの鳴き声を,それもまた,いいタイミングで発したのは,これはハプニングだったようです。日本中がクマの出没で慄いているときに,コンサート会場にまでクマが出没するとは…。この叫びはブーイングだったという噂も。

 この演奏会のあと,「音楽と珈琲と語らいのひととき」というJR東海×京都市交響楽団コラボ企画があって,参加しました。これは,前田珈琲京都コンサートホール店で行われたのですが,演奏を終えたばかりの団員さん,宅間斉さん,木下知子さん,黒川冬貴さん,藤本茉奈美さんの4人が出演されました。
 いろいろな裏話を聞くことができて,とても楽しい時間となりました。
 「京響」は最高です。大満足の演奏会でした。

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【Summary】
The Kyoto Symphony Orchestra’s 706th subscription concert featured Spinosi conducting Rossini, Haydn’s “Bear,” and Beethoven’s “Pastoral.” Spinosi’s background in Baroque music was highlighted. I appreciated the standard violin seating, recalling Ashkenazy’s memorable “Pastoral.” Berlin Philharmonic violinist Kotoha Machida served as concertmaster, praised the orchestra’s strong strings and excellent winds.

######
 2025年11月29日に京都市交響楽団第706回定期演奏会を聴きました。
 指揮はジャン・クリストフ・スピノジ(Jean-Christophe Spinosi)さん,曲目はロッシーニの歌劇「アルジェのイタリア女」(L'italiana in Algeri)序曲,ハイドンの交響曲第82番「熊」(L'Ours),ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」(Pastorale)でした。さわやかなとても快適なプログラムです。
  ・・・・・・
 ジャン・クリストフ・スピノジさんは,1964年生まれのフランス・コルシカ出身の指揮者・ヴァイオリニストです。1991年に自ら創設した「アンサンブル・マテウス」を率いて,特にバロック音楽,なかでもヴィヴァルディのオペラ解釈で国際的に高い評価を受けています。
 舞台演出にも積極的で,振付師や演出家とコラボしながら音楽と演劇を融合させた独創的なプロダクションを次々と生み出しています。
  ・・・・・・
ということですが,私はおそらくはじめてでした。楽しく,自由に,というのがモットーのようです。
 ところで,この日,東京では,東京芸術劇場で東京都交響楽団の定期演奏会があって,ここでも,メインプログラムがベートーヴェンの交響曲第6番「田園」だったようです。同じ曲目が同じ日,あるいは,数日後,というのはけっこうあります。
 めずらしい曲だと,楽譜の貸し借りをするために同じ曲が数日の感覚で並ぶということがあるようです。しかし,「田園」では楽譜を楽団がもっているからそういうことではなく,今回は偶然だと思うのですが,秋らしい曲,ということで,たまたまこのような選曲になったのでしょう。

 ということで,今回のメインプログラムである「田園」。大好きな曲のひとつです。
 以前,ウィーンに行ったとき,「田園」のモチーフとなった小川のほとりを歩いてみたことがあります。いい思い出です。こういう経験のもとで曲を聴くと,また,輝きます。
 私は,これまで,「田園」は何度も聴いているのですが,以前,NHK交響楽団で,アシュケナージさんが指揮をしたのが最も印象に残っています。というのは…
  ・・・・・・
 オーケストラの配置は,ステージに向かって左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロが並び,その後にコントラバスというのが,現代の一般的な通常配置((Stokowski shift))とよばれるものです。この場合,第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリンが隣同士なので,オクターブやユニゾンで音程を取りやすく,一体感のある響きが生まれるといわれます。また,第2ヴァイオリンとビオラがまとまっているため,内声のハーモニーも自然に溶けやすくなります。
 それに対して, 対向配置というものがあります。それは,古典派やロマン派の作曲家が想定していた配置のひとつで,ステージに向かって,左側に第1ヴァイオリン,次いで,ビオラ,右側に第2ヴァイオリン,次いで,チェロと並びます。これは,左右対称で音が広がるように聞こえ,弦楽器の掛け合いがはっきり感じられるということです。
  ・・・・・・
 こうした配置は,オーケストラによって決まっているというものではなく,指揮者によって決まるようですが,「田園」では,第1楽章の展開部で,第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロという順に流れるように音階が続くところがあって,これが,対抗配置だと,音階が左から右へと飛びはねるので変なのです。アシュケナージさんが指揮をしたときは,通常配置(ストコフスキー・シフト)だったので,左から右へ流れるように奏でられて,とてもすてきでした。「田園」を対抗配置で演奏するなんて,私には理解できません。今回の京都市交響楽団は,当然のように,通常配置だったので,私は,ホッとしたというか,うれしくなりました。
 ところが,ジャン・クリストフ・スピノジさんの「田園」は,聴きなれたものとはずいぶんと違いました。テンポがある部分で非常にゆっくりとなったり,わずかな休符があったりと,おそらく,賛否両論だったことでしょう。団員さんも出るタイミングを合わせるのが大変そうでした。お客さんにも戸惑いがありました。しかし,NHK交響楽団の某指揮者のように,最初から最後までものすごいスピードで駆け抜けるだけなのとは全く違い,指揮者の主張がはっきり出たもの,と考えると,これはこれでありだと私は思いました。 

 なお,今回の演奏会では,コンサートマスターがベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の第1ヴァイオリン奏者である町田琴和さんが務めました。
 ドイツのバーデン・ヴュルテンベルク州のロイトリンゲンを拠点とするオーケストラであるロイトリンゲン・ヴュルテンベルク・フィルハーモニー管弦楽団(Württembergische Philharmonie Reutlingen)のコンサートマスターを務めたのち,1997年にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の第1ヴァイオリン奏者として正式に加わったという経歴です。演奏は透明感があって芯のある音色が魅力ということです。現在,ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団がジャパンツアーを行っていることから来日しているので,それが縁で起用されたようです。
 「今回初めてご一緒させていただきますが,弦も層が厚くて,管も素晴らしくてびっくりしました」とのことでした。

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【Summary】
I visited the Toyota City Art Museum and the newly opened Toyota City Museum before the NHK Symphony Orchestra concert. The art exhibition explored women artists’ “anti-action” responses in the 1950s–60s, though it felt abstract to me. The museums’ architecture and the deep-space exhibition, including real spacecraft, were impressive and enjoyable.

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 今回,NHK交響楽団の演奏会を聴きにいった豊田市民文化会館の隣に,豊田市美術館と豊田市博物館があります。そこで,演奏会の前に行ってみることにしました。
 現在,豊田市はトヨタ自動車の町として知られますが,江戸時代は挙母藩(ころもはん)でした。挙母藩主の居城は拳母城でしたが,拳母城は別名を七州城(しちしゅうじょう)といい,城が建てられた童子山の高台から,三河,尾張,美濃,信濃,伊賀,伊勢,近江7つの国が望めたことに由来していました。
 七州城跡は,隅櫓(すみやぐら)が復元され,公園として市民の憩いの場になっています。また,豊田市美術館と豊田市博物館の敷地の一部として整備されています。
  ・・・・・・
 譜代である挙母藩の藩主は,三宅家,本多家,内藤家の3家が時代ごとに交代していました。
 初代・三宅康貞は,1604年(慶長9年)に武蔵から入封し,衣藩を開いた人物で,その後,三宅康信,三宅康盛,三宅康勝と続き,1664年に田原藩へ転封され,幕府領となりました。
 1681年(天和元年)本多忠勝の曾孫である本多忠利が石川藩から衣藩に入り,衣藩を拳母藩と表記することを定めました。その後,本多忠次,本多忠央(ただなが)と続き,近江相良に移封されたのち,1749年(寛延2年)に内藤政苗(まさみつ)が上野安中藩から転封されてきました。以後,内藤学文(さとふみ),内藤政峻(まさみち),内藤政成(まさしげ),内藤政優(まさひろ),内藤政文(まさふみ),内藤文成(ふみなり)と続き,明治維新を迎えました。
  ・・・・・・

  豊田市美術館は,1984年(昭和59年)の豊田市総合計画からはじまり, 1993年に着工,1995年に開館しました。以前にも2度ほど美術展を見にいったことがありますが,すばらしいところという印象でした。
 今回は,「アンチ・アクション 彼女たち,それぞれの応答と挑戦」という美術展が行われていましたが,けっこう多くの人が来ていました。
  ・・・・・・
 「アンチ・アクション 彼女たち,それぞれの応答と挑戦」は,1950 から1960 年代の日本の女性美術家による創作を「アンチ・アクション」というキーワードから見直します。
 戦後,「アンフォルメル」(非定形)や「アクション・ペインティング」という力強い制作行為で知られた抽象美術が一世を風靡し,数々の女性美術家が台頭しました。しかし,豪快さや勇壮さといった男性性と親密なアクションが評価の中心になるにつれ,結果的に多くの女性美術家の作品が歴史から見落とされていくこととなりました。
 そこで,本展では「アンチ・アクション」のジェンダー研究の観点を足がかりに,草間彌生,田中敦子,福島秀子をはじめとした14人の美術家による作品およそ120 点を紹介します。
  ・・・・・・
という,私には,わかったようなわからないようなものでした。

 調べてみると,1950年から1960年代ごろ,日本の美術界では「アンフォルメル」(非定形)や「アクション・ペインティング」という,激しく絵の具をぶちまけたり身体を使って描くような表現が流行してたのですが,当時の社会では,それらは,男性的な価値観と結びつけられていました。そこで,女性作家たちは,「アクション」に対して、あえて違うやり方で応答したのです。
 それは,たとえば,草間彌生が,暴力的なアクションではなく,静かな執念で空間を埋め尽くす,繰り返しのドットや網目模様で内面の不安や強迫観念を表現しました。田中敦子は,電気回路を使った衣装「電気服」など,身体とテクノロジーの関係を探る作品で,アクションとは別の方向から「身体」を問い直しました。福島秀子は,布や糸,繊細な素材を使って,柔らかくも強い存在感を放つ作品を制作しました。
 このように,「アンチ・アクション」とは,男らしさが支配的だった表現形式に対する女性たちの静かで鋭いカウンターでした。
 といわれてもねえ…,作品は派手でなく,見せつけるのではなく,問いかけるような表現なので,私には???としか思えませんでした。

 そこで,さらに,そうした美術作品の見方から問い直してみることにしました。
  ・・・・・・
●「わからない」を楽しむ。
 美術には正解がないわけで,「これは何を意味してるのか?」「どう感じればいいのか?」そうした,「わからない」から,作品との対話のはじまります。
●「好き」「気になる」を大事にする。
 「気になる」「この色が落ち着く」「この形変で面白い」そういった感情や直感が鑑賞の入口となります。
●構図や色に注目してみる。
 安定感があって、宗教画や肖像画に多い三角構図,主役が真ん中にドン!とある日の丸構図などのの構図,赤と青,黒と白など,強いコントラストに注目して鑑賞します。
●「なぜこの形?」「なぜこの素材?」と問いかけてみる。
 現代アートは「なぜこれを選んだのか?」を考えると興味が湧きます。たとえば,布や糸を使っていたら「なぜ絵の具じゃなくて?」と考えてみると,作家の意図が見えてくるかもしれません。
  ・・・・・・
 禅問答のようです。
 いずれにしても,豊田市美術館は,建物は鉄とガラスのモダニズム建築で,水平・垂直のラインと自然光の取り入れ方が絶妙であって,展示室同士が少しずつ見えるように設計されていて,空間の中でそうした気配がつながっていくような構造になっていて,すばらしいものです。
 おそらく,この建物自体が最大の傑作のように思えました。

 隣接して,2024年に開館したばかりの豊田市博物館にも行ってみました。
 豊田市博物館は,旧豊田市郷土資料館や「近代の産業とくらし発見館」などの機能を統合し,市民とともに学び未来を考える拠点として構想されたもので,かつての愛知県立豊田東高等学校跡地に造られました。
 博物館というから,古い農機やらが展示されているのかと思っていたのですが,「深宇宙展-人類はどこへ向かうのか-」という特別展をやっていました。内容は,宇宙開発で,実際に帰還したソユーズ宇宙船などが展示されていて,これは,博物館というより科学館でした。
  ・・・・・・
 近年,新たな発見や技術により目覚ましい発展をとげている宇宙探査分野。
 アルテミス計画をはじめとした月面開発,小惑星探査,果ては火星での生活や宇宙旅行まで,最新技術や知見を実物や映像を通して紹介します。
 世界初公開となる有人与圧ローバーの実物大模型,「はやぶさ」と「はやぶさ2」が持ち帰った貴重な小惑星粒子なども公開します。
  ・・・・・・
 思った以上に楽しい時間をすごすことができました。
 最後に,カフェで,「宇宙ソーダ」と「月面着陸」という名前のケーキを楽しみました。

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【Summary】
Emanuel Ax offered a gentle, refined Mozart, though the hall felt too large. Payare’s passionate style suited other repertoire better, and “Ein Heldenleben” impressed less than past performances. Poor balance and the outdated, remote Toyota Civic Center left the concert feeling underwhelming despite the holiday weekend.

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 76歳のエマニュエル・アックスさんは温厚なおじいちゃん,という感じでした。
 エマニュエル・アックスさんは,2002年6月の定期公演Bプログラムでブラームスのピアノ協奏曲第2番を演奏して以来23年ぶりということです。
 2003年2月の定期公演Aプログラムで,イモージェン・クーパー(Dame Imogen Cooper)さんが今回と同じ曲をイギリス人らしく気品漂う上品な演奏をしたのをNHKホールで聴いたのを思い出しました。年齢を重ねたピアニストにモーツアルトの協奏曲第25番はとてもよく似合います。
 今回も,透明感と艶やかさでさわやかな雰囲気が漂いました。こうした室内楽のようなサロン調のものはとてもいいものですが,会場が大きく,それにふさわしいスケールでなかったのが残念でした。Bプログラムが行われたサントリーホールなら,もっとすばらしかったのでしょう。
 アンコールはショパンのワルツ第3番でしたが,これがとてもよかった。

 それに対して,ラファエル・パヤーレさんは,全身を使った情熱的なスタイルで,まさにラテン系でした。R・シュトラウスよりもふさわしい選曲があるのでは…,と思いました。
 「英雄の生涯」の最も注目すべき聴きどころは,コンサートマスターのソロです。長原幸太さんはよかったのですが,私は,コンサートマスターを会田莉凡さんが,指揮を沖澤のどかさんが務めた京都市交響楽団のすばらしい演奏を聴いたときの印象が強すぎて,それに比べたら,というのが率直な感想でした。
 それにしても,NHK交響楽団の演奏を聴くたびに思うのは,弦楽器と管楽器のバランスがよくないなあ,ということです。それはおそらく普段NHKホールのようなだだっ広いところで演奏をしているからなのかも知れません。

 豊田市には,豊田市駅前に1998年開館の豊田市コンサートホールがあります。ここは,クラシック音楽専用の本格ホールとして音響のよさが評判で,座席数は1,010席,パイプオルガンもあります。今回行われたのは,豊田市民文化会館で,1975年に豊田市文化芸術センターとして開館,1981年に大ホール棟を増築して現在の名称に変更されたもので,1,708席あります。
 この日,豊田市コンサートホールで別の演奏会が行われていたわけでないのに,豊田市民文化会館でNHK交響楽団の演奏会が行われたのは,おそらく,今回のプログラムのひとつにR・シュトラウスの「英雄の生涯」の大規模編成の曲であったことや,収容力を優先したもの,あるいは,主催が豊田市文化振興財団ということがあったのでは,ということですが,豊田市民文化会館は,豊田市駅から徒歩で30分程度かかることやホールが古い設計で,客席からステージが見上げるほど高いことなど,魅力のないところでした。それが理由かどうか,連休中にもかかわらず,会場は空席が目立ち,すごくもったいない気がしました。名古屋市の愛知芸術劇場コンサートホールでやれば満席なのに,と思いました。
 正直なところ,行ってよかった,という気持ちにはなりませんでした。せっかくのNHK交響楽団が気の毒でした。

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【Summary】
I attended the NHK Symphony Orchestra’s concert in Toyota on November 23, 2025. Payare conducted a compelling program of Schumann, Mozart, and Strauss. Ax performed the Mozart concerto with refinement, and concertmaster Nagahara delivered impressive solos in Ein Heldenleben. It was a satisfying substitute for missing Nagoya performances.

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 NHK交響楽団がここ数年名古屋公演を行っていません。定期会員が上席を抑えてしまっている東京の定期公演にくらべて,席がとりやすいので,私は重宝していたのですが,残念です。
 名古屋公演を行わない,あるいは,行えない理由が定かでないのですが,AIによると
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 明確な理由は,公開された情報からは確認できませんでした。ただし,いくつかの背景が考えられます。
●地域公演の分散化
  NHK交響楽団は全国各地で公演を行っていますが,愛知県内では名古屋市内ではなく,例えば豊田市など県内の他の都市で公演が予定されることがあります。これは,愛知県内での聴衆の需要や会場の利用可能性を考慮した結果かもしれません。
●他のオーケストラとの兼ね合い
 名古屋市には,東海地方を代表するプロ・オーケストラとして名古屋フィルハーモニー交響楽団が存在し,活発に活動しています。NHK交響楽団の名古屋公演が少ないのは,地域に根ざした名古屋フィルハーモニー交響楽団の活動とのバランスや,興行的な調整の結果である可能性も考えられます。
●会場のスケジュール調整
 名古屋市内の主要なコンサートホール(愛知県芸術劇場コンサートホールなど)は人気が高く,国内外の様々な公演でスケジュールが埋まっています。
 NHK交響楽団の希望する日程と会場側の空き状況が合わない可能性もあります。
  ・・
 結論として,特定のトラブルや名古屋を避けているといった事情ではなく,全国ツアーのスケジュール編成や興行的な判断,地域との調整の結果として,たまたまここ数年名古屋市内での公演が実現していないと考えられます。
  ・・・・・・
 果たして,真相はいかに? 私は,会場の確保ができない,というのが理由だと思います。

 という次第ですが,2025年11月23日,豊田市民文化会館でNHK交響楽団の公演があったので,行ってきました。曲目は,シューマンの「マンフレッド」(Manfred) 序曲,モーツァルトのピアノ協奏曲第25番,R・シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」でした。これは,11月の定期公演Bプログラムをそのままもってきたもので,地方公演にはとてもふさわしい曲目でしょう。
 「英雄の生涯」では,コンサートマスターのソロが圧巻で,聴きごたえがあります。私は,先日,京都市交響楽団で,コンサートマスターを務めた会田莉凡さんに圧倒されたので,これが一番の楽しみでした。今回のコンサートマスターは,長原幸太さんでした。
 指揮はラファエル・パヤーレ(Rafael Payare)さんで,私はおそらくはじめてでした。調べてみると,5年前の2020年2月のCプログラムで,オールショスタコービッチプログラムを指揮したことがあるようです。
  ・・・・・・
 ラファエル・パヤーレさんは1980年にベネズエラのプエルト・ラ・クルス(Puerto La Cruz=十字架の港)で生まれた指揮者で,情熱とダイナミズムにあふれた音楽づくりで世界的に注目されている存在です。もともとはフレンチ・ホルン奏者で,シモン・ボリバル交響楽団の首席奏者として活躍。2004年から指揮の道へ進みました。
 現在はモントリオール交響楽団とサンディエゴ交響楽団の音楽監督を務め,後期ロマン派の作品,特に,R・シュトラウスやマーラーを得意としています。
 演奏はエネルギッシュで,細部まで緻密に作り込まれ,聴く人を引き込みます。
  ・・・・・・
 そして,ピアノはエマニュエル・アックス(Emanuel Ax)さん。こちらもまたはじめてかも。
  ・・・・・・
 エマニュエル・アックスさんは,詩的で知的な深みを持つピアニストとして世界的に高く評価されています。1949年に,現在のウクライナのリヴィウで生まれ,ユダヤ系ポーランド人の家庭で育ちました。6歳でピアノをはじめ,1974年のルービンシュタイン国際ピアノコンクールでの優勝をきっかけに国際的なキャリアが花開きました。
 演奏は繊細なニュアンスと温かみのある音色が特徴で,バッハから現代音楽まで幅広いレパートリーを持っています。特に,ベートーヴェンやブラームス、ハイドンの作品での解釈は,知的でありながら感情豊かで聴く人を魅了します。
  ・・・・・・
 さて,どんな演奏会になったでしょうか。

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【Summary】
I visited the Setuko Migishi Art Museum in Ichinomiya to see the special exhibition marking her 120th birth anniversary, featuring works by her teacher Saburōsuke Okada. His elegant, softly colored portraits of women impressed me, especially those modeled by Migishi. After viewing the artworks, I enjoyed a quiet moment in the museum café.

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 2025年11月13日,一宮市三岸節子記念美術館で「三岸節子生誕120年記念特別展 岡田三郎助,優美な色彩・気品ある女性像」を見ました。
  ・・・・・・
 一宮市三岸節子記念美術館は,1905年に生まれ,1999年に亡くなった洋画家・三岸節子の画業を顕彰するため,1998年(平成10年)に,彼女の生家跡に建てられた美術館です。
 かつての織物工場を思わせる「のこぎり屋根」や現存する土蔵を活かしたアトリエ展示室,ヴェネチアをイメージした水路など,三岸節子の思い出が随所にちりばめられたもので,三岸節子の代表作「自画像」や、晩年に描いた大作が展示されています。
  ・・・・・・
 ここはとても落ち着くところで,広い館内でゆっくりと作品を鑑賞することができます。また,カフェが併設されているのも私が気に入っている点です。

 今年,2025年(令和7年)は,三岸節子の生誕120年,二十歳の「自画像」が描かれてから100年の年にあたります。これを記念して,三岸節子が若きころに師事した洋画界の巨匠・岡田三郎助の画業を紹介する展覧会が行われています。
  ・・・・・・
 1869年(明治2年),佐賀藩士の家に生まれた岡田三郎助(おかださぶろうすけ)は,幼いころに上京し,寄寓した旧藩主の鍋島直大邸にあった百武兼行の油絵を見て洋画に関心をもつようになりました。その後,岡田家の養嗣子となり,曾山幸彦に洋画の指導を受けました。
 1895年(明治28年)に黒田清輝,久米桂一郎が指導する天真道場に入門。翌年,白馬会の創立に参加するとともに,東京美術学校に新設された西洋画科の助教授に就任しました。
 1897年(明治30年),文部省初の留学生としてフランスに渡ると,ラファエル・コランの下で外光派の作風を学び,帰国後,東京美術学校教授。女子美術学校西洋画科の嘱託教授を勤め,三岸節子などのちに女性洋画家の先駆者となる生徒たちを指導しました。
  ・・・・・・
 岡田三郎助の画風は,絹のように柔らかく気品に満ちています。
 繊細な色彩で描かれた女性像は静けさと品格をたたえていて「美人画の岡田」と称されているそうで,私は,とても気に入りました。展覧会では,三岸節子をモデルとした作品がありました。
 室内の光が膝を照らす描写など,光と空気感の扱いが見事で,師ラファエル・コランから学んだ柔らかな色調を日本的な美意識と融合させて独自のスタイルを築きました。

 多くの作品を鑑賞した後,お気に入りのカフェで静かな時間を過ごすことができました。

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【Summary】
The Tokugawa Art Museum’s 90th-anniversary exhibition presents the fully restored 12th-century Tale of Genji picture scrolls. I can view all surviving sections, appreciating their refined Yamato-e style, emotional “hikime-kagibana” expressions, and “fukinuke-yatai” spatial design, which together reveal the characters’ inner feelings and relationships.

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 徳川美術館は,名古屋市にある尾張徳川家の大名文化を今に伝える美術館です。 開館は1935年(昭和10年)で,尾張徳川家19代当主・徳川義親によって設立されました。美術館本館は帝冠様式の建築で,城壁風の外観と緑釉瓦の屋根が特徴的です。最大の所蔵品は国宝「源氏物語絵巻」で,それ以外にも,刀剣,茶道具,能装束,婚礼調度など大名道具約1万件以上を収蔵,また,徳川家康の遺品や初代・徳川義直から代々の遺愛品も多数あります。
 私が高等学校に通っていたころ,徳川美術館にはまだ行ったことがなかったのですが,ここに「源氏物語絵巻」があると授業で聞いて,一度見たいものだと思いました。しかし,「源氏物語絵巻」はいつも見ることができるわけではありません。その「源氏物語絵巻」が,現在,10年ぶりに公開されているので,私も,2025年11月18日,10年ぶりに見てきました。

 今回の特別展は徳川美術館開館90周年記念として行われているものです。 
 平安時代の11世紀,関白藤原道長の娘である中宮彰子に仕えた女房・紫式部は「源氏物語」を著し,主人公光源氏の生涯を軸に平安時代の貴族の世界を描きました。「源氏物語絵巻」は,この「源氏物語」を絵画化した絵巻で,物語が成立してから約150年後の12世紀に誕生した現存する日本の絵巻の中で最も古い作品です。
 「源氏物語」54帖の各帖より1場面から3場面を選び絵画化し,その絵に対応する物語の本文を書写した「詞書」を各図の前に添え,「詞書」と「絵」を交互に繰り返す形式の,当初は10巻程度の絵巻であったと推定されています。「詞書」も「絵」も作者は不明ですが,「詞書」の書風の違いから5つのグループによる分担制作かといわれます。また,「絵」の筆者は,平安時代の優れた宮廷絵師であった藤原隆能と伝えるところから,この絵巻を「隆能源氏」ともよびます。日本独自のやまと絵の技法で,繊細な色使いや優雅な人物描写が特徴です。特に,衣装の文様や色彩が美しいものです。また,吹抜屋台(ふきぬけやたい)という,建物の屋根を取り払ったような構図で,室内の様子を上から覗き見るように描かれています。

 徳川美術館に「源氏物語絵巻」が伝わったのは尾張徳川家の所蔵品として受け継がれてきたというのが経緯です。12世紀前半に制作されたのち,長い年月を経てさまざまな大名家を転々とし,江戸時代初期に,3巻が尾張徳川家に,1巻が阿波蜂須賀家に伝来しました。しかし,蜂須賀家本は江戸時代末期に民間に流出していまい,そのうちの3帖分が,現在,五島美術館が収蔵しているものです。
 このような経緯で,現在,「源氏物語絵巻」は,54帖全体の約4分の1,巻数にすると4巻分,12帖分19場面が現存し,「絵」と「詞書」が揃っているのは,蓬生(よもぎう),関屋(せきや),柏木(かしわぎ),横笛(よこぶえ),鈴虫(すずむし),夕霧(ゆうぎり),御法(みのり),竹河(たけかわ),橋姫(はしひめ),早蕨(さわらび),宿木(やどりぎ),東屋(あずまや)で,このうち「鈴虫」「夕霧」「御法」の3帖が五島美術館にあるものです。さらに,絵が失われて詞書だけが残っている「絵合」(えあわせ)や,断簡として残る「若紫」などを加え,全体では20帖分が確認されています。
 もともと,源氏物語絵巻は巻物(巻子装)でしたが,1932年(昭和7年),巻いたり広げたりするたびに傷むのを防ぐためとして,尾張徳川家19代・徳川義親が絵と詞書を切り離し額装に改装しました。しかし,額装にしたことで逆に劣化が進んでしまい,桐の額が収縮し,しわや縦折れ,絵具の剥落,紙の亀裂などが発生してしまいました。
 そこで,2016年から5年かけて,劣化した部分の補修,絵具の定着処理,紙の補強など 本格的な修復作業が行われました。そして,本来の姿である巻物形式に戻されました。
 今回の展覧会では,徳川美術館が所蔵するものと,五島美術館の所蔵するものを合わせて,全点一挙公開になっています。

 会期は2025年11月15日から12月7日までという短期間で,休日はとんでもなく混雑するだろうから平日なら,ということで,11月17日に行ってきたわけです。午前10時からなので,9時30分ころに着いたのですが,すでに,予想以上に長蛇の列ができていました。しかし,午前10時に開館すると,流れが早く,すぐに入ることができました。
 会場の前半は,常設展で,ここはすでに前回見ているので,通過しました。多くの人たちは,ここで時間をとっていたので,すぐに特別展の会場にたどり着きました。特別展の会場は,前列でじっくりと目の前でみることができるように配慮されていたので,会場に入るのに,けっこうな列ができていました。急ぎの人は並ばずに入れるのですが,ロープの仕切りができていて,後方から人の頭越しに見るようになっていました。
 前回見たときに比べて,私は,歳をとっただけ知識が増していたこともあり,また,現代訳ですが,瀬戸内寂聴さんの書いた「源氏物語」をすべて読んだことがあり,さらに,昨年の大河ドラマ「光る君へ」で,「源氏物語」への興味が増していたので,とても興味深く鑑賞することができました。それにしても,1,000年近くも昔に描かれたものがこうして目の前にあるということに感動しました。

 鑑賞するポイントは
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●詞書と絵の「間」を読む。
 「源氏物語絵巻」は,詞書(ことばがき)を読んでからその内容に対応する絵を見る構成になっています。新聞小説のようなものです。そこで,詞書と絵の「間」にある時間の流れや感情の変化を想像して,詞書では語られていない登場人物のこころの動きや,表情,しぐさを鑑賞すると興味が増します。
●「引目鉤鼻」(ひきめかぎばな)の表情に注目する。
 登場人物の顔は目が細くて鼻が鉤のように描かれています。これを「引目鉤鼻」といい,これは,写実ではなく理想化された美を表現するためのもので,特に貴族階級の人物に使われ,高貴さや内面の情緒を静かににじませるための工夫です。たとえば,うつむく姿勢は悲しみや恥じらい,背を向けるのは拒絶や戸惑いを表しているというように,よく見ると,顔の角度や体の向き,衣のたたずまいで,繊細な感情表現がされています。
●空間の描き方を味わう。
 「吹抜屋台」(ふきぬけやたい)という技法で,建物の屋根を取り払って室内を上からのぞき見るように描かれていますが,この構図によって,登場人物の関係性や距離感,緊張感が視覚的に伝わってくるようになっています。たとえば,同じ部屋にいても,屏風や柱で仕切られていたり,視線が交わらなかったりすることから,こころの距離を感じることができます。
  ・・・・・・

 鑑賞後,ほとんど人のいなかった併設された「ザ・ミュージアム」カフェで,徳川園の庭園を眺めながら軽食を楽しみました。これがまたいい。

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【Summary】
Ravel’s Daphnis et Chloé was performed complete, its shimmering “Dawn” and exuberant final dance creating a dreamlike atmosphere with wordless chorus. Though musically superb, the concert started the second half very late, stretching the evening and diminishing the audience’s ability to enjoy the post-concert mood at NHK Hall.

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 後半はバレエ音楽「ダフニスとクロエ」(全曲)です。
●バレエ音楽「ダフニスとクロエ」(全曲)
 「ダフニスとクロエ」は,ラヴェルがロシア・バレエ団を率いるセルゲイ・ディアギレフの依頼を受けて作曲したバレエ音楽です。
 1909年,ラヴェルはバレエ・ダンサー兼振付師のミハイル・フォーキンが3世紀ごろのギリシアの作家ロンゴスの叙情詩を基に書いた台本によるバレエ「ダフニスとクロエ」に着手しました。しかし,作曲は難航し,初演は1912年にようやく行われました。
 全体は1幕3部からなります。
  ・・・・・・
第1部 パンの神(牧神パン)とニンフの祭壇の前
 若い男女が祭壇に供え物をして礼拝していると,羊飼いのダフニスとクロエが登場します。
 牛飼いのドルコンがクロエに言い寄り,ダフニスは嫉妬します。ダフニスとドルコンは踊りで勝負し,勝った方がクロエの接吻を受けることにします。
 ドルコンのぎこちない踊りに対し,優しく軽やかに踊るダフニス。彼はクロエから約束の熱い接吻を受けて恍惚となります。しかし,その後,海賊が来襲し,クロエはさらわれてしまいます。
 それを知って絶望するダフニス。そこに3人のニンフが現れて倒れているダフニスに気づき,彼を蘇生させ,パンの神に祈らせる。すると,パンの神が姿を現わします。
第2部 海賊ブリュアクシスの陣営
 海賊の首領の前に連れて来られたクロエは,踊りながら脱出の機会をうかがうのですが失敗し,あわやというところで,突然パンの神の巨大な幻影が現れ,海賊たちは逃げ去ってしまいます。
第3部 祭壇の前
 ダフニスとクロエの感動的な再会となります。
 老羊飼いが,パンの神はかつて愛したシリンクスの思い出ゆえに,クロエを助けたのだと説明します。祭壇の前でふたりは愛を誓い,パンの神とニンフを讃えて熱狂的に踊ります。
  ・・・・・・
 第3部の冒頭に登場する「夜明け」(Lever du jour)は,ヴェルのオーケストレーションの妙が光り,朝もやの中で少しずつ光が差し込むような音の移ろいが水面に反射する光のように繊細で美しく,フルートやハープ,弦のさざ波のような響きがします。また,フィナーレを飾る「全員の踊り」(Danse générale)は,エネルギーが爆発するようなリズムと色彩感が魅力で,ラヴェルが「舞踏交響曲」とよんだように,音楽が踊ります。また,今回は合唱がついていましたが,この作品では,歌詞のない合唱を楽器のように使い,音の霧のように幻想的な雰囲気を作り出す役割を果たしました。
 このように,夢の中にいるような時間となりました。

 演奏会自体はよかったのですが,60分に及ぶ大曲なのに,後半のはじまりが遅すぎたのです。休憩時間が30分以上あって,会場にすべての観客が座って待っているのに,なかなかはじまりません。前半が終わったのが午後7時35分ごろで,後半が始動しはじめたのが午後8時10分ごろ。それから合唱団,そしてオーケストラがステージ上いっぱいに入りはじめました。
 そして,やっと曲が終わったのが午後9時10分ごろでした。何かアクシデントがあったのか,と思いました。
 これまでも,シャルル・デュトワさんが指揮をするときは,はじまりが遅かったり,演奏会自体が長かったり,そんなことが頻繁にありました。今はFMでの生放送がなくなったので心配はないのですが,もし,生放送があったら,とても番組枠に入りません。多くの観客は,カーテンコールもそこそこに,演奏会の余韻を楽しむでもなく,足早に会場を後にしました。
 演奏会に足を運ぶというのは,会場に来るときから,曲の終了後の余韻までが楽しくなくては,と私は思うのですが,そもそも,NHKホールは,終了後に騒音だらけの代々木公園を横切るだけでもそれまでの雰囲気がぶち壊しなのに,演奏会自体が長引いて,余韻を楽しむことすらできないようではいただけません。

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【Summary】
The concert featured Ravel works conducted by Charles Dutoit, returning to NHK Symphony’s subscription series after eight years. His refined interpretation highlighted Pavane pour une infante défunte and Le Tombeau de Couperin. Dutoit’s signature elegance and the orchestra’s vivid colors created a nostalgic yet fresh atmosphere, closing the first half memorably.

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 2025年11月14日に行われたNHK交響楽団第2049回Cプログラムを聴きました。
 曲目は,「ラヴェル生誕150年」と銘打って,「亡き王女のためのパヴァーヌ」「Pavane pour une infante défunte」,組曲「クープランの墓」(Le Tombeau de Couperin),バレエ音楽「ダフニスとクロエ」(Daphnis et Chlo)(全曲)でした。それより何より,指揮が名誉音楽監督のシャルル・デュトワ(Charles Édouard Dutoit)さん。実に8年ぶりの定期公演登場でした。
 シャルル・デュトワさんがしばらくNHK交響楽団を指揮しなかったのは,2017年に報じられたセクハラ疑惑がきっかけでした。その影響で,予定されていた定期演奏会の出演がキャンセルされ,それ以降,しばらく日本の楽壇から距離を置くことになりました。その後,2019年に大阪フィルハーモニー交響楽団に登場するようになり,2024年10月30日に行なわれたNHK音楽祭2024で,ラヴェルの組曲「マ・メール・ロワ」(Ma Mère l’Oye),ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番,ストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」(Le Sacre du printemps)を振って復帰し,ついに,NHK交響楽団の定期公演に戻ってきました。
 どうやって復帰させるか考えて,NHK音楽祭にそっと登場させたら観客に抵抗がなかったので,晴れて定期公演に,という段取りだったのでしょう。十八番の「春の祭典」は,やはり,シャルル・デュトワありてこそ,を印象づけました。
 とはいえ,若々しい,というか,もともと年齢不詳? のようなシャルル・デュトワさんもすでに89歳となりました。今から20年以上前,私がNHK交響楽団の定期公演に熱心に通っていたころ,シャルル・デュトワさんの指揮する公演は,いつも,来てよかった,と思ったことでした。この感動を再び味わうことができるということで,期待をもって会場に足を運びました。

 今回のラヴェルプログラムも,シャルル・デュトワさんお得意のものです。
 緻密で洗練されたラヴェルの作風をストラヴィンスキーは「スイスの時計職人」と評しました。「職人」シャルル・デュトワにとって,精巧に作られたラヴェルの作品が,いかなる名品もそれを持っている人次第のように,最も腕の振るい甲斐のある素材といえるでしょう。
 特筆すべきは,「ダフニスとクロエ」が本来の合唱付きで演奏されることで,もともと,ラヴェルはディアギレフの求めに応じて合唱抜きの管弦楽版を作ったものの,合唱が作品の重要な構成要素だと考え,主要な上演においては合唱を加えるよう求めていたということです。このようなスケールの大きな演奏会は,シャルル・デュトワさんが音楽監督のころによく行われたものです。

●亡き王女のためのパヴァーヌ
 原曲は,1899年にラヴェルがパリ音楽院在学中に作曲したピアノ曲で,作曲者自身が意外に感じるほどの好評を得,1910年に管弦楽に編曲されました。パヴァーヌとはスペイン起源の宮廷舞曲です。「亡き王女のための」という題名はフランス語の響きに惹かれて命名したものです。
 管弦楽編曲版は小規模なオーケストラのために書かれ、薄く透けるようなオーケストレーションがなされ,哀愁を帯びた典雅な雰囲気がただよいます。いかにもデュトワサウンド,という感じで,とても懐かしくなりました。

●組曲「クープランの墓」
 原曲はラヴェルが1914年から1917年にかけて作曲した,前奏曲,フーガ,フォルラーヌ,リゴードン,メヌエット,トッカータの全6曲からなるピアノ曲です。6曲それぞれが大戦で戦死した友人,知人たちの思い出に捧げられました。
 ピアノ組曲は1919年に初演され,ラヴェルは曲集から4曲を選び管弦楽用に編曲し,曲順を入れ替えて,前奏曲,フォルラーヌ,メヌエット,リゴードンとしました。管弦楽化によって作品に鮮やかな色彩がほどこされ新たな魅力が生まれました。管弦楽版の初演は1920年でした。
 会場の雰囲気がいつもと違うような…。これがデュトワマジックか?
 前半が終了しました。

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