【Summary】
Quantum entanglement challenged classical ideas of locality and realism throughout the twentieth century. Tracing debates from Einstein’s EPR paradox to Bell’s inequality and its experimental tests, this book reconstructs the scientific and human drama behind one of quantum theory’s deepest mysteries, culminating in its modern experimental confirmation and technological implications.
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ブルーバックス「宇宙は「もつれ」でできている-「量子論最大の難問」はどう解き明かされたか-」(Quantum Enigma: Physics Encounters Consciousness )を読みました。
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ひとりの天才の独創が生んだ相対論に対し,量子論は多数の物理学者たちの努力によって構築されてきた。その精緻化のプロセスで,彼らを最も悩ませた奇妙な現象が「量子もつれ」(quantum entanglement)。因果律を破るようにみえる謎の量子状態は,どう理解されてきたのか。
EPRパラドックス,隠れた変数,ベルの不等式…。
当事者たちの論文や書簡,討論などを渉猟し,8年をかけて気鋭の科学ジャーナリストがリアルに再現した,物理学史上最大のドラマ。
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という紹介の本ですが,590ページもあって読むのがたいへんでした。
「量子もつれ」は,2022年に フランスのアラン・アスペ(Alain Aspect)(フランス),アメリカのジョン・クラウザー(John F. Clauser),オーストリアのアントン・ツァイリンガー(Anton Zeilinger)(オーストリア) の3人の物理学者がノーベル賞をとったことで知られました。
「量子もつれ」とは,entangleという,もつれさせる,巻き込むという意味の動詞からきていることばで,複雑な関係といった意味です。
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「量子もつれ」は,ふたつ以上の粒子が強く結びついていて,それがどんなに離れていても一方の状態が決まるともう一方の状態も即座に決まるという現象をいいます。
たとえば,ふたつの電子がもつれているとき,このふたつの電子が地球と月の距離でも,あるいはもっと遠く離れていても,一方のスピンが上向きだとわかった瞬間,もう一方は必ず下向きになるということが成立するというのです。
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一度ふたりの間に契約が成立すれば,このふたりがどんなに離れていてもこころが通じあえる,といったところでしょうか。
アラン・アスペ,ジョン・クラウザー,アントン・ツァイリンガー,この3人は,量子もつれの「実在性」や「非局所性」(non-locality)をめぐるベルの不等式の検証実験で大きな功績を残しました。しかし,「量子もつれ」がなぜ起きるのかということはまだ完全には解明されておらず,物理学では量子力学の基本的な性質として受け入れられているそうです。ただし,どういう条件でもつれが生じるのか,どうやって制御できるのかという点についてはかなり詳しくわかってきていて,量子コンピュータや量子通信の技術にも応用されはじめています。
物理的な影響は光の速さを超えて伝わらない。つまり,遠く離れたもの同士は即座に影響し合えない,という局所性(locality)と,観測する前から物理量には「決まった値」がある,という実在性(realism),これが局所実在論というものですが,1964年に物理学者のジョン・ベル(John Bell)は,「もしこの世界が局所実在論に従っているのなら,観測結果にはある制限(=不等式)があるはずだ」というベル不等式を提唱しました。
しかし,「量子もつれ」では, もつれた粒子は,どんなに距離が離れていても,一方の粒子を観測するとその測定結果がもう一方に(光の速さよりも速く)即座に影響するように見えるから,これは,ベルの不等式を破るという結果となります。そこで,ベルの不等式が破られたということは,この世界は「局所実在論」では説明できないということになるのです。
残念ながら,「宇宙は「もつれ」でできている-「量子論最大の難問」はどう解き明かされたか-」は,「量子もつれ」を説明することが内容の本ではありません。そこで,「量子もつれ」の解説書だと思って手に取ったひとは落胆することになります。
ではなくて,この本は,1909年から2006年まで,物理学者が「量子もつれ」という現象を知るに至るまでの人間ドラマを描いたものです。いわば,幕末の大河ドラマのようなものです。こうした大河ドラマは,もととなる歴史上のできごとを知っていなければ,楽しむことができません。逆に,知っていればのめり込むことができます。それと同じように,この本で語られている人間ドラマも,物理学,ここでは,主に量子力学のことですが,その知識がないと,楽しむことができません。また,そうした知識があっても,登場人物が多すぎ,しかも,そのほとんどは外国人だから,理解することが困難です。私は学生時代に物理学を専攻したから,何とか脈絡はつかめたのですが,それでもずいぶん苦労しました。 映画化でもすれば,本を読むよりは理解できるのでしょうが,そもそも,量子力学を扱うような映画に興味をもつ人はそれほど多くないので,商業ベースにはのりません。
とはいえ,こうした偉大な物理学者たちの偉業を残すことはとても貴重なことなので,この本の意義は高いものだと思います。読み終えるのは大変ですが…。
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