しない・させない・させられない

Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.

USA50州・MLB30球場を制覇し,南天・皆既日食・オーロラの3大願望を達成した不良老人の日記

カテゴリ:オセアニア > ニュージーランド

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  以前,オーストラリアの天文台を紹介したので,今日はニュージーランドにある天文台の紹介をしましょう。
 ニュージーランドの南島の中央マッケンジー盆地にテカポ湖という星空の美しい場所があります。テカポ湖は世界一星空が美しい場所という触れ込みで,通称・世界遺産ということになっていますが,実際は,そうした名目の世界遺産はありません。実際,とても魅力のあるところですが,観光地化されてしまい,観光客が多すぎです。

 そのテカポ湖のほとりのジョン山海抜1,031メートルの位置に所在するのがマウントジョン天文台(Mount John University Observatory=MJUO)です。
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 マウントジョン天文台には口径0.61メートル望遠鏡が2台,口径1.0メートル望遠鏡が1台,口径1.8メートル「MOA 望遠鏡」が1台,観光用の口径0.4メートル望遠鏡が設置されています。
 1960年,アメリカのペンシルベニア大学が南半球での天体観測を目的とする天文台の設置を決定し,1963年にカンタベリー大学と学術間協定を帰結し天文台の共同利用とニュージーランドでの研究拠点として,1965年開所しました。
 ペンシルベニア大学の研究者が定年退職を迎えたことによりアメリカとニュージーランドの共同研究は終わりを遂げ,1975年からはカンタベリー大学付属研究施設となりました。
 1982年にアメリカ空軍が設置した地上局は閉鎖され、建物はニュージーランド政府へ移譲されました。
 1996年,日本とニュージーランドの共同研究が開始され, 2005年には観光客用の望遠鏡も設置されました。
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 日本の名古屋大学の天文台もあるのですが,聞いてみると,この天文台を使用していた教授が定年で退職してしまったので… という話でした。

 私はテカポ湖には2016年と2018年の2度行って,南半球の星空を見ることができました。
 マウントジョン天文台は,テカポ湖を見下ろす山の上にあって,お昼間は誰でも山頂まで登ることができます。天文台自体は公開されていませんが,山頂にはアストロカフェという名のカフェがあって,コーヒーを飲みながらテカポ湖の姿を見ることができます。
 夜に登るには天体観望ツアーに参加する必要があって,個人で登って星見をすることはできません。 
 テカポ湖畔は夜になると観光客が集まってくるのでけっこう光があって,私は,そこから離れたいい場所がないかと探し回ったのですが,なかなか見つけることができませんでした。
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 現地の人が,どうしてこれだけの好条件なのに,多くの天文台が建設されないのか,といっていましたが,ここは観光地すぎることと,標高が低いので,専門的な高度な天体観測にはいまいちの場所です。そこで,天文台といっても,大学のいち研究者が設立したような設備しかなく,その研究者が退官してしまうと,どうやら,その後は,置き去りにされてしまったようです。
 南半球で本格的な研究をする施設をつくるとなると,標高の高い南アメリカのアンデス山脈がその場所となるのも当然の成り行きですが,一般の人が南半球の星空を一度でいいから眺めてみたい,というときは,テカポ湖畔はよい場所でしょう。

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 2018年,2度目のニュージーランドに行きました。
 今にして思うと贅沢な話ですが,そのころニュージーランドにそれほど行きたいと思っていたわけではないのです。その2年前,はじめて行ったテカポ湖で写した星空の写真にわずかばかりの雲がかかっていたことが満足できず,もう一度挑戦したいとは思っていたのですが,テカポ湖の付近は安価に宿泊できるところが少なく,半ばあきらめていました。安い宿があればまた行ってもいいなあ,となんとなく考えて,そうした宿泊場所があれば通知がくるようにと設定してあったところ,それが見つかったという通知がきたので,急遽行くことにしたのでした。
 そして,せっかく行くのなら,ということで,ミルフォードサウンドまで足をのばすことを考えました。しかし,ミルフォードサウンドは遠く,車で行くのは不可能に近かったので困ったのですが,幸い,クイーンズタウン発の現地ツアーを見つけました。テカポ湖からクイーンズタウンまでは車で行くこともできるのですが,このころはもう,それだけの長距離を運転する気がなくなっていたので,一旦クライストチャーチに引き返して,そこから飛行機を利用することにしました。クライストチャーチからクイーンズタウンまでは距離的には名古屋から山形,という感じだったでしょうか。

 そのときに利用したクライストチャーチの空港で,今でも不思議に思うことがありました。
  ・・
 クライストチャーチの空港は,それほど大きなものではないのですが,クライストチャーチからクイーンズタウンに向かう飛行機の乗り場は,ローカル線ということもあって,空港の一番奥まったところにありました。空港内をずっと歩いて行くと,広い待合室に出ましたが,その間に,セキュリティは確か,まったくありませんでした。つまり,だれもがそこまで行くことができるわけです。
 待合室には多くのイスが並んでいて,その向こうに,私が乗るプロペラ機が見えました。
 待合室で,隣にいた人と「ここまで来るのにセキュリティはなかったよね。この先にあるのかな?」みたいな話をした記憶がありますから,私の勘違いではないと思うんだけどなあ。
 で,搭乗時間になったという放送があったので,ゲートに行きました。
 それがまあ,飛行機に乗るまで,結局セキュリティがなかったらしいという記憶なのです。これには驚きました。というより,のどかなもんだなあ,と思いました。まるで村のバス乗り場と同じでした。昔は世界中どこもこんな感じでした。
 なのに,タラップに向かう通路から飛行機の写真を写そうとカメラを構えると,ここで写真は写していけません,と言われました。セキュリテイもないのに,飛行機の写真は撮影禁止とは,何かがおかしいので,とても不思議な気がしました。これもまた,他の空港では経験したことがありません。
  ・・
 クイーンズタウンからクライストチャーチへの帰路でのこと。クイーンズタウンの空港はこじんまりしていましたが,それでも,セキュリティはありました。
 ということで,一体,あれは,夢だったのか,幻だったのか,何かの間違いだったのか,私の勘違いだったのか…。
 今でも不思議だなあと思うことでした。
 なお,この旅では,幸いにして,テカポ湖で雲ひとつない星空の写真を写すことができました。今日載せたのはそのうちの1枚で,中央に南十字星が写っています。

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 ニュージーランドは大自然だけが美しいわけではありません。人が住んでいるところもまた,日本のように人口が多いわけでない,というのが理由かもしれませんが,きわめて美しいものです。
 私は南島しか行ったことはないのですが,2016年,ニュージーランドへ行ってはじめて降り立った都会であるクライストチャーチ(Christchurch)には広い公園もあり,快適でした。ただし,私が行ったときは,2011年に起きた大地震の跡がまだ多く残っていて,復興途中でした。そのころの私は,まだ,アメリカ以外にひとりで出かけたのがはじめてだったので,戸惑いだらけでしたが,その後,多くの都会に行くことができた今にして思うに,そのなかでも,すばらしい街のひとつです。

 さて,今日の写真は,クライストチャーチではなく,クイーンズタウン(Queenstown)です。ニュージーランド南島の内陸、ワカティプ湖(Lake Wakatipu)畔に面した町で,周囲の山々に囲まれたその美しさが「ヴィクトリア女王にふさわしい」(Fit for a Queen Victoria)として名づけられたことに由来するといいます。
 1862年,この地方で金脈が発見されて以来,町は急速に発展し,人口も数千人に増えましたが,金脈が尽きると人口は数百人に激減してしました。現在は避暑地のようなたたずまいでバラエティに富んだアクティビティの拠点になっています。

 クイーンズタウンから車で30分程度の距離にある簡素なアロータウン(Arrowtown)はゴールドラッシュ期に栄えた町で人気の観光地,ということなのですが,私は,そんなこととは知らず,偶然,ここに数泊したことがあります。
 私がアロータウンに滞在したのは,世界遺産のミルフォード・サウンドへ行くためでした。クイーンズタウンからミルフォード・サウンドへは車で4時間半もかかるのですが,それでも,最も近い都会なのです。
 これを書いていて,また行きたくなってきました。


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 かつて,次のように書いたことがあります。
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 アメリカ以外で私が何度でも行きたいのはオーストラリア(Australia),オーストリア(Austria),フィンランド(Finland)です。
 以前より私は「2リア(リアズ),3ランド(ランズ)」と言っていましたが,「2リア(リアズ)」というのはオーストラリアとオーストラリアのことであり,「3ランド(ランズ)」というのは,フィンランド,ニュージーランド(New Zealand),アイスランド(Iceland)のことです。
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 はじめのうちは,誰しもがそうであるように,行ってみたいなあ,という想いが募って出かけた海外も,行くたびに新たに行きたいところが生まれてきて,そしてまた,そこに出かけると別の興味が生まれて,…,を繰り返しながら,数年がすぎました。
 そして,しばらく行くことができなくなった今振り返ってみると,結局のところ,私の行きたい場所は上に書いたことに尽きるのです。が,このところ,やはり,ニュージーランドとアイスランドもいいなあ,と思うようになりました。しかし,まだまだ,行くことはままなりません。
 そんなわけで,そうした「2リア(リアズ),3ランド(ランズ)」の想いを行ったときに写した写真とともに振り返ろうというわけです。
 まずはニュージーランドです。

 ニュージーランドは面積が268,000キロメートルです。日本の面積は378,000キロメートルですが,そこから北海道と四国を除くと264,000キロメートルほどになって,ちょうど同じくらいです。人口はニュージーランドが460万人程度で,日本の12,500万人と比べるとなんと3パーセント(約30分の1)でしかありません。信じられないほど少ないのです。というより,日本の人口が異常に多いのです。でありながら日本は山ばかりなので,どうりでどんな場所に行っても人が住んでいるはずです。
 ちなみに,ニュージーランドとよく似た規模のフィンランドは,面積が338,000キロメートルなので日本から九州を除いたくらい,そして人口が550万人だから,ニュージーランドより少し多い程度です。
 そこで,これらの国は,都会を一歩出れば自然ばかり。しかもどこもとても美しいのです。
 …と書いているだけで行きたくなってきました。
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 さて,ニュージーランドです。
 私のまわりにもニュージーランドに憧れて住んだ人がいます。そのほかにもやはり,ニュージーランドに憧れて渡った人を知っています。しかし,なぜかみな帰ってきてしまうのです。想像するに,それは,することなくなって,あるいは,刺激がなくなって,飽きちゃうのではないかと思います。旅するのとは違って,ニュージーランドで生活するためには,大自然を味方にする楽しみが必要なのでしょう。人は贅沢なものです。


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 私は,2016年の秋,2018年の秋の2回,ニュージーランドのテカポ湖(Lake Tekapo)へ行きました。
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 テカポ湖はマッケンジー盆地(Mackenzie Basin)の北端に位置し,プカキ湖(Lake Pukaki)とオハウ湖(Lake Ōhau)と平行する湖です。マッケンジー盆地に位置する3つの湖の中で最大面積の湖で,面積は83平方キロメートルあり,海抜700メートルに位置しています。湖水は氷河が削った岩石の粉が溶け込んでいるために青緑色をしています。
 湖周辺は人気の高い観光保養地であり,湖の南に位置する人口300人程度のテカポ湖村には数軒のリゾートホテルや飲食店があります。長距離バスの停留所が設置され休憩地にもなっているため,外国人観光客も立ち寄る機会が多いところです。
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と,Wikipediaにはありますが,私の目当ては星空でした。

 ここは,本当にすばらしいところです。ただし,有名になりすぎたために観光客が異常に多かったこと,そこで,なかなかホテルが予約できなかったことが難点でした。コロナ禍の現在は,どうなっているのでしょう。また,日本人観光客相手の星空ツアーは存続しているのでしょうか?
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 私は,2度ともクライストチャーチ(Christchurch)から車で行ったので,テカポ湖からさらにマウントクック(Mount Cook)まで足をのばすことができました。
 ニュージーランドは日本と似ていて,地震災害が多く,また,天気もさほどよくありません。私が行ったときは,クライストチャーチの大地震の復興途中でした。幸い奇跡的に天気には恵まれて,目的の星空を見ることができました。

 今にして思うに,テカポ湖へ行く途中ののどかなカントリーロードや,小さな町がとても懐かしく思い出されます。いつか,そんな町でゆっくりしたいものだと…。でも,実現しそうにはありません。
 本当に,行っておいてよかったところです。
 それにしても,同じ島国なのに,どうして,日本には,どこへ行ってもこんな風景がないのでしょう。

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 バスは,クイーンズタウン(Queenstown)から快調にワカティブ湖(Lake Wakative)の東湖畔を南下していきました。このあたりまで,あいにく天候がよくなくて,周りは霧,景色はほとんど見えませんでした。先に書いたように,まず無理だといわれていたのですが,私には行けるという確信がありました。それは,この日のミルフォードサウンド(Milford Sound)の天気予報が晴ということだったからです。
 行程の途中, ゲートがあって,このゲートが締まっているとミルフォードサウンドには行くことができず,そこで引き返すことになるということでした。ゲートに来ました。私は,祈る気持ちでいましたが,すんなりと通りすぎて,やった! と思いました。
 さらに進んでいくと,テ・アナウ湖(Lake Te Anau)を過ぎて,今度は険しい山岳地帯になりました。
 途中,氷河で浸食したU字谷の美しい景色が見られたり,「ケア」と鳴くからケア(Kea)と名づけらた鳥に遭遇したりと,ミルフォードサウンドに到着するまでにも,日本では見ることもできない絶景が次から次へと広がっていきました。ケアはマオリ語でのよび名で,ミヤマオウム(Nestor notabilis)のことです。
 こんな風景を見てしまうと,日本で「秘境」といわれる場所がすべてむなしくなってしまいます。
 やがて,最後の難関であるホーマー・トンネル(Homer Tunnel)に差しかかりました。
 ホーマー・トンネルはこの国道94最大の難所で,1935年から1953年まで実に18年を要して作られたそうです。狭いトンネルなので一方通行で,運が悪いとずいぶんと時間待ちをする必要があるのだそうですが,これもまた,運よくすんなりと抜けることができました。 国道94はホーマー・トンネルを抜けるとやがて下りはじめ,ついに,ミルフォードサウンド観光船の出るターミナルに到着しました。

 ミルフォードサウンドは晴れ渡っていました。ここは1年のうちで300日は雨で,年間降水量は6,000ミリメートル以上なのだそうで,こうして晴れていたのは奇跡的だということでした。 やがて観光船が来て,さっそく乗船しました。甲板の上に出ると,そこには写真などでよく見る風景が広がっていました。そのスケールはものすごいものでした。 ミルフォードサウンドは,ラドヤード・キップリング(Rudyard Kipling)という作家が「世界で8番目の不思議」(Eighth Wonder of the World)とよんだ場所です。
 ミルフォードサウンドはフィヨルドランドとよばれる地域にあって,690ヘクタールに及びます。1ヘクタールは100メートル四方なので,690ヘクタールは26キロメートル四方ということになります。ちなみに,東京ドームは4.67ヘクタールです。ミルフォードサウンドは世界遺産ですが,日本にあるようなチンケな世界遺産とは全く違っていて,正真正銘,これぞ世界遺産とよべる場所です。 周辺の地層は古く,一部は4億5,000万年前のものだといいます。4億5,000万年前というのはオルドビス紀(Ordovician)といわれる時代で,地球上に魚類が出現したころになります。また,このあたりのフィヨルドの海は2層に分かれていて,上の部分は山から流れてきた淡水,それより下は海水で,それらは混ざり合うことなく層をなしているそうです。
 船は1時間ほどでタスマン海(Tasman Sea)まで出ました。この先にオーストラリアがあります。船はここでUターンをして再びミルフォードサウンドの波止場に戻ることになります。途中にレディ・ボーエンとスターリング(Lady Bowen and Stirling Falls)というふたつの滝がありました。また,岩の上にはオットセイを目撃することもできました。
 それにしても,何と雄大な景色だったことでしょう。ここを見ずしてニュージーランドを語ることはできないと強く感じました。それとともに,偶然,天気がよい日にこの地を訪れることができた幸運を感謝しました。
 これが,奇跡に奇跡が重なった私の2度目のニュージーランドの旅でした。

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 2020年の春までの2,3年の間に出かけたところのそのひとつでも実現していなかったとしたら,今ごろはずいぶんと後悔していただろうなあと考えると,それらのすべてが実現したのは本当に奇跡的なことに思えます。
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 私は2018年の秋に2度目のニュージーランドに行きましたが,それは,1度目に行ったニュージーランドの南島にあるテカポ湖で写した星の写真の一部に雲がかかっていて満足できず,快晴の星空の写真が写したいという一念で出かけたものでした。
 それにしても,あとで考えると,というか,かなりいい加減な話なのですが,2度目に出かけたら今度は快晴の星空が見られるなどという確信があったのもまったく保障のないことだったわけです。私はそのことを,なぜかうっかりしていました。
 しかしまあ,幸運なことに,2度目の旅では本当に奇跡的に晴れて,雲ひとつない星空の写真を撮りたいという夢は実現してしまったのです。

 さらに,このときの旅ではもうひとつぜひ行ってみたいと思っていた場所がありました。それは,南島のミルフォードサウンド(Milford Sound)でした。
 しかし,調べてみると,ミルフォードサウンドもまた,行くにはかなり困難なところだったのです。近くに町がなく,最寄りの町であるクイーンズタウン(Queenstown)からは車で行くには遠すぎました。
 探しに探して,なんとか現地ツアーを見つけ出すことができたので参加しましたが,前回書いたオーストリアのハルシュタット同様に,今思い出すと,現地ツアーを見つけ出したことも奇跡的な話で,行くことが実現できたのが夢のような話だったのです。それは,遠いだけでなく,ミルフォードサウンドはいつも天気が悪く,気象条件によっては道路が閉鎖されて,途中で引き返さなければならないことが少なくないということだったからです。私が行ったのは10月で,気候が日本とは反対のニュージーランドはまだ初春。観光シーズンは11月だったのです。事実,私が行った日も途中までは雪混じりの天気で,出発するときには,まず無理だといわれていたのです。そんな事情だったのにも関わらず,幸運にも道路は閉鎖されておらず,しかも,到着したらすっかり晴れていました。
 たとえ行くことができたとしても,ミルフォードサウンドが晴れる確率は1割もないということでした。これもまた,オーストラリアのエアーズロックに登ることができたことと同様,奇跡的なことでした。もし,行くことができていなかったら,今ごろ,ずいぶんと後悔していたことでしょう。

 ちなみに,サウンドというのはニュージーランドの英語で「入り江」のことです。
 最寄りの都会であるクィーンズタウンからミルフォードサウンドまでは直接距離は100キロメートルほどとそれほど遠くはないのですが,山また山で最短距離で行く道がなく,道路はクィーンズタウンからUの字に迂回していて,片道,有に4時間以上かかりました。そこで, ツアーは早朝7時出発で帰りは夜の7時到着ということでした。しかしそれでも,バスに乗っている時間が8割で現地の観光が2時間弱しかなかったのです。であっても,行く価値は十分ありました。

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エミュレーツ航空では機長がアラビア語で話すし,機内にはアラビアの音楽がかかっているし,とてもエキゾチックでした。しかし,シュクラン(شكرا)と言われても私は困ります。いずれにせよ,キャセイパシフィック航空の中国語よりは抵抗がなかったのですが…。
やがて,窓にはシドニーの夜景が見えてきました。私には30数年ぶりのシドニーでした。この30年でシドニーは驚異の発展を遂げているということなのですが,今回は単なるトランジットなので,町の様子は機内の窓からしかわかりませんでした。
それにしてもシドニーの空港は巨大でした。空港内にはブランド品の売り場がひしめき合っていて,日本のデパートのようでした。プライオリティパスを持っていると,ラウンジの少ないシドニーではラウンジを利用する代わりに37ドルの食事券がもらえるのですが,私はもはや食事はうんざりだったので,歩き回っていたら,アメックスのラウンジがあったので,そこで休憩をすることにしました。
今回の帰国は,3回の乗り換えで4度飛行機に乗るので,トランジットで利用するのはニュージーランドのクライストチャーチ,オーストラリアのシドニー,そして羽田ですが,そのすべてで私はラウンジを利用しました。つまり,ラウンジのはしごを楽しんでいたのですが,食べ過ぎました。

やがて,日本へ行くカンタス航空の搭乗時間がきました。
私は近距離のフライトでは窓際,長距離のフライトでは通路側を指定します。このフライトでももちろん通路側に座ったのですが,窓際の2席を新婚旅行の人たちが座りました。ツアーの人が海外旅行をするときに座席を指定できるのかどうかは知りませんが,自分で指定しないと,大概,最も不便な席があてがわれていてとても気の毒に感じます。
機内では再び夕食が出ましたが,さすがに私は,この夕食には手が出ませんでした。食事に困ることは多々あれど,逆に食べられないほど何度も出てきたのもまたはじめてのことでした。贅沢なものです。
いつものようにぐたぐたと機内で過ごすうちに,いつの間にか赤道を越え,日本に近づいてきました。着陸の1時間前,フルーツの朝食が出ました。そして,午前5時過ぎ,羽田空港に到着しました。ニュージーランドは時差が4時間あるので,この日は1日が28時間あって,いつ食事をすればいいのかよくわからないまま,なんとなく何度も食事がでて,出されたまま食べたり残したり…。そして,この日の朝食は日本時間では午前4時でした。

羽田空港でもラウンジで最後のフライトを待って,やがて,セントレアへの便に乗り込みました。
こうしてこの旅が終わりました。
運が悪ければそのすべては実現せず,運がよければそのすべてが実現するという,運任せの旅,しかも,出発前の,あわや台風直撃騒動からはじまって,現地の天気予報も最悪,ということでまったくテンションがあがりませんでしたが,結局,天候に恵まれて,すべてうまくいきました。
アイスランドもニュージーランドも日本からは同じくらいの時間で行くことができます。アイスランドのほうがずっと人口は少ないのですが,どちらの国も島国で,同じように自然が豊かです。しかし,物価が異常に高いアイスランドに比べればニュージーランドはそういう感じもないのが救いです。また行ってみたい国です。
セントレアでは出発を待つフィンランド航空の機体が停まっていました。私の次の旅は,このフィンランド航空を利用してオーストリア・ウィーンです。

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クイーンタウンに到着して,レンタカーを返しました。
さあ,これから,帰国に向けて昨年のアラスカに匹敵する長い道のりのはじまりです。
この旅では,セントレア・中部国際空港からニュージーランドのクライストチャーチまでの往復とクライストチャーチからクイーンズタウンまでの往復は,まったく別に予約をしました。前者はJALとカンタス航空なのでワンワールド,後者はニュージーランド航空なのでスターアライアンスと,アライアンス自体も異なりました。
そこで,もし,帰りのクイーンズランドからクライストチャーチまでの便に遅れがあっても,クライストチャーチからの便に乗り遅れないようにと,クライストチャーチでの待ち時間を5時間ほどとりました。
クイーンズタウンの空港もクライストチャーチの空港もスターアライアンスとワンワールドではチェックインカウンタが分かれていました。スターアライアンスはキオスクで自動チェックインができるのに対して,ワンワールドはそれができませんでした。そこで私は,クイーンズタウンではキオスクで簡単にチェックインはできたのですが,この先のクライストチャーチでは不便な目にあうことになります。
行きのクライストチャーチからクイーンズタウンのフライトはプロペラ機でしたが,帰りは大型のジェット機でした。また,来るときのクライストチャーチの空港はセキュリティチェックがありませんでしたが,クイーンズタウンではしっかりとセキュリティチェックがありました。

心配は杞憂に終わり,定刻にクイーンズタウンを出発してクライストチャーチに着きました。ひとまず安心です。クライストチャーチに着いたのですが,これから待ち時間が5時間もあるので,日本までの帰国便のチェックインをしてキャリーバッグを預けてしまおうと,とりあえずカンタス航空のカウンタに行ったところ,あなたの乗るのはカンタス航空ではなく,エミュレーツ航空だといわれました。そうだったのです。私がクライストチャーチからシドニーに行く飛行機はエミュレーツ航空のコードシェア便だったのです。そして,キオスクのないワンワールドはチェックインカウンタが開くまでチェックインができませんでした。たとえネットでチェックインをしてもカウンタが開いていなのでキャリーバッグが預けられません。チェックインをしていなければクライストチャーチのラウンジも使えません。しかたなく,空港のフードコートで2時間ほど時間を潰しました。
そして2時間後,エミュレーツ航空のカウンタでチェックインをしてから,クライストチャーチのラウンジで3時間を過ごしました。このあとシドニー便と乗り換える羽田便で合計2回も夕食が出ることは知っていたのですが,おいしそうなケーキが目に留まり,ラウンジで食べきれないほどのケーキを食べてしまったのをあとで後悔することになりました。
エミュレーツ航空というのはアラブ首長国連邦ドバイを本拠地とする航空会社で,私はこれまでに利用したことがありません。一度香港で,この航空会社の客室乗務員と出会って,なんとまあ変わった服装だと度肝を抜かれたことがありましたが,まさか私がこの航空会社を利用するとは思いませんでした。そして,利用する機体はA380という最新式の世界最大のもので,エコノミークラスは横が10席もあってとても広く豪華でした,なんと,ファーストクラスは2階にあるのです。私はエミュレーツ航空どころかA380にも乗るとは思わなかったので,びっくりしました。機内食が出て,豚と羊の肉が選べました。こうなったら羊でも食べてやろうと思っていたところ,あんたは豚でいいだろうといわれてショックを受けました。ここで反対してもいいのですが,なんかまったくテンションが下がってしまったので,それで了承してしまいました。

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クイーンタウンの近郊アロータウンに私は2泊したのですが,到着したのが夕刻で,しかも,最終日は帰国の日,そして,2日目は終日ミルフォードサウンドへ観光に出かけたから,わざわざクイーンズタウンに来たのに,クイーンズタウンを観光することもないだろうと思っていましたが,1日目と2日目の夜に短い時間とはいえクイーンズタウンに出かけて,さほど広くもないこの町を知ることができたのは望外のことでした。
人それぞれでしょうが,私は,こうした町の雰囲気や,何の目的もなく歩き回るのは嫌いではないけれど,だからといって,わざわざ観光をするような気持ちは起きません。結局のところ,こうした町にはレストランやお土産屋さんがあるだけだから,日本国内のモールを歩いているのとそんな違いを感じないからです。
それよりも,私が興味をもったのは,むしろアロータウンという町でした。アロータウンがこんなすてきな町だとも知らず,単にクイーンズタウンの近くに安い宿泊先を見つけたというだけで選んだのですが,この町は,かつて金の採掘で栄えたところで,今も,この町に流れる川では砂金が取れるというし,町の雰囲気も伝統を感じさせて,とてもよいところでした。また泊まってみたいです。

話は前後しますが,到着した日,私は一度クイーンズタウンに出かけてからアロータウンに戻って,宿泊したホテル兼タバーンで夕食を済ませた後に,アロータウンの町を散歩しました。この町一番の見どころというのは,19世紀に金の採掘者として労働をしていた中国人居住区を再現した公園でした。ここは宿泊先から5分くらい歩いた場所にあって,当時の住居跡がいくつか復元され,詳しい説明が書かれていました。
ニュージーランドというのは,どうやら,かつては,上流階級にニュージーランド人がいて,その下の労働者階級に中国人がいた,という社会だったらしく,今でも,北島のオークランドや首都のウェリントンには多くの中国人が住んでいるという話です。ここの中国人住居跡は住居というよりも掘立小屋といったほどの粗末なものでした。
ニュージーランドと日本は北半球と南半球の違いがあるだけで,同じような島国だし,共通する部分も少なくないように思えるのですが,もともと昔から多くの人が暮らしていた日本とは違って,ニュージーランドはマオリの人が住んでいた地に近年になって移民がやってきて開拓をしたという国なので,日本とはまったく異なっています。こうした初期の移民というのは,ずいぶんと大変な苦労をしてこの国を作ってきたわけです。

話は飛んで,最終日です。
アロータウンからクイーンズタウンまでは20分もあれば行くことができるし,今日のフライトの出発は11時過ぎなので,宿泊先をチェックアウトしてから,この町にある博物館に行くことにしました。博物館は午前8時30分から開館しているのです。
この博物館は外観からは想像できないほど,内部の展示が充実していました。このあたりの歴史がとてもよくわかりました。もし強度の地震が起きた時の安全が保障できないので自己責任で見てください。という表示が地震国ニュージーランドを思い起こさせました。要するに建物が耐震補強されていないということなのでしょう。
博物館を見終えて,私は空港に向かいました。

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ミルフォードサウンドからの帰路,すっかり天気が回復して,行きはずっと霧で見れなかった風景も,きれいに見ることができました。
バスはものすごいスピードで国道6を北上して走り,途中のテ・アナウで行きと同様に30分の休憩をしただけで,午後7時にはクイーンズタウンに戻ってきました。これだけの距離なのに,運転手さんはいつも走りなれているからであろうと思いました。一般に,ニュージーランドは道路が狭いのに,運転はかなり荒いのです。
バスは,行きに私をピックアップしたバスターミナルに戻って,私はバスを降りました。そこにはすでにタクシーが待っていて,それに乗り込んで宿泊先のアロータウンに戻りました。
これで,今回の私の旅はほぼ終わりで,明日は帰国です。この旅の目的であった,テカポ湖の満天の星空,マウントクックの山頂,そして,ミルフォードサウンド,そのすべてを十二分に堪能することができました。
アロータウンに着きましたが,まだ午後7時すぎで,日没前だったので,私はこの日の夕食はクイーンズタウンでと思って,再び宿泊先を出て,車でクイーンズタウンに行くことにしました。

クイーンズタウンは小さな町ですが,観光客が多く,駐車場を探すのがけっこうたいへんでした。それでも湖畔にある小さな公園の駐車場を見つけて車を停めました。夕方ともなると風が吹いて,けっこう寒くなりました。
南半球は季節が反対で,この時期,日本では4月中旬にあたる時期だったのですが,まだまだ冬が抜けておらず,この日は最高気温が8度,最低気温が1度でした。しかし,この次の日からは,最高気温が16度,最低気温が8度となるようです。
湖畔を歩いて,町の中心部,いわゆるダウンタウンに出ました。さてなにを食べようかと探していてみつけたのが日本料理店でした。そこに入ることにしました。シーフード弁当なるものを注文しましたが,なかなかおいしい食事となりました。
このクイーンズタウンはまだまだ拡大を続けているところで,しかし,平地がないものだから,山の上にまで住宅地が伸びていて,ちょうど,鎌倉のような感じのところでした。
ニュージーランドは現在住宅バブルです。面積は日本から北海道を引いたくらいで,人口はわずか400万人と日本の25分の1程度だから,住む場所などどこにでもありそうに思えますが,やはり,人が住みたいと思う場所はだれしも同じなのでしょう。そこでこうした風光明媚な場所に人が集まってしまうわけです。それは仕事という側面も当然あって,だれもいないような場所に住んでも仕事がなければどうにもなりません。
さて,食事を終えて,私は再びアロータウンに戻りました。この古きよき町の空には南十字星が美しく輝いていました。

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天気予報どおりミルフォードサウンドは晴れ渡っていました。ここは1年のうちで300日は雨で,年間降水量は6000ミリメートル以上なのだそうで,こうして晴れていたのは奇跡的だということでした。
波止場には数隻の船が停泊していましたが,私のツアーの船はまだ停泊していませんでした。やがて船が来て,さっそく乗船しました。船は私たちの乗ってきたバスを運行しているツアー会社のものでしたが,とても空いていました。
まず船の2階の客席に用意された昼食を食べました。
このツアーは,オプションで日本食の昼食を選ぶこともできるし,私のようなランチボックスを選ぶこともできるし,自分でテ・アナウで昼食を調達してきてもよいのでした。私たち6人のうちの2人は新婚旅行で,旅行全体がツアーでそのなかでミルフォードサウンドをオプショナルで加えたのだそうで,この2人だけが日本食のお弁当を食べていましたが,この広大な風景を眺める時間が惜しいので,十分に食事を味わう暇はなさそうでした。ちなみに,船にはバイキング形式のレストランもありました。
私は早々に食事を終えて,甲板の上に出ました。そこには写真などでよく見る風景が広がっていました。そのスケールはものすごいものでした。

ミルフォードサウンドは,ラドヤード・キップリングという作家が「世界で8番目の不思議」(Eighth Wonder of the World)と呼んだ場所です。「世界の七不思議」という言葉が昔からあって,それは,古典古代における7つの注目すべき建造物のことを指すのですが,それが転じて「世界の自然七不思議」というものがリストアップされていて,それは,グランド・キャニオン,グレート・バリア・リーフ,リオデジャネイロの港,エベレスト,オーロラ,パリクティン火山,ヴィクトリアの滝なのだそうです。このミルフォードサウンドはそれに次ぐもの,ということなのでしょう。
ミルフォードサウンドはフィヨルドランドと呼ばれる地域にあって,690ヘクタールに及びます。ここは世界遺産です。日本にあるようなチンケな世界遺産とは全く違っていて,正真正銘,これぞ世界遺産と呼べる場所です。
周辺の地層は古く,一部は4億5,000万年前のものだといいます。また,このあたりのフィヨルドの海は二層に分かれていて,上の部分は山から流れてきた淡水,それより下は海水で,それらは混ざり合うことなく層をなしているそうです。深さは400メートルに及びます。
船は1時間ほどでタスマン海まで出ました。この先にオーストラリアがあります。船はここでUターンをして再びミルフォードサウンドの波止場に戻ることになります。途中にレディ・ボーエンとスターリングというふたつの滝がありました。また,岩の上にはオットセイを目撃することもできました。
それにしても,何と雄大な景色だったことでしょう。ここを見ずしてニュージーランドを語ることはできないと強く感じました。それとともに,偶然,天気がよい日にこの地を訪れることができた幸運を感謝しました。

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迎えに来たタクシーはものすごいスピードで一挙に駆け抜け,私が走ってきた空港を通り過ぎたところにあったバスターミナルに着いて,私を降ろしました。どうやらそこは公営のバスの停留所であるらしく,日本と同じような時刻表があって,バスが停まったりしていました。それに加えて,ここは,ミルフォードサウンドに行く観光バスの集合場所でもあるらしく,けっこう多くの人が観光バスが来るのを待っていました。やがてバスが来ましたが,どうやらそれは私の乗るバスではなさそうでした。ミルフォードサウンドには数社のバスが走っているようでした。
それとほとんど同じくして,次に私の参加するツアーのバスが来ました。バスから日本人のスタッフが降りてきて,私をバスに案内しました。すでにバスには多くの人が乗っていて,私とそのほかに数人が最後の乗客でした。
このバスは,英語の案内を運転手がして,それと同時に日本語の案内を日本人がするのをヘッドフォンで聞くというシステムになっていました。すでに大勢が乗っていましたが,日本人は私を含めてわずか6人でした。現地のツアー会社に日本人が加わっているという形でした。後で聞いたところによると,もう1か月もするとハイシーズンになって,バス1台が日本人で埋まるということでした。
ミルフォードサウンドに行くにはほとんどこれしか手段がないわけで,そういった意味でも,どうやってミルフォードサウンドに行くのかさえ知らなかった私が偶然このツアーを見つけたのは正解でした。

バスは,クイーンズタウンから快調にワカティブ湖の東湖畔を南下していきました。あいにく天候があまりよくなくて,周りは霧で,景色はほとんど見えませんでしたが,唯一の頼りは,この日のミルフォードサウンドの天気予報が晴,ということでした。しかし,こんな状況で,本当に現地が晴れているのかなあ? と思いました。案内放送によると,気象条件が悪ければ現地まで行くことができず,途中で引き返すこともありえます,という話でした。そして,その確率は五分五分だということでした。
ワカティブ湖の南端にある小さな町がキングストンで,これは対岸のクイーンズタウンに対抗してつけられた名前です。さらに南下していくと,やがて,辺りはヒツジのたくさんいる牧草地となりました。そのうちに,ファイブリバーという小さな町に着いて,ここでバスは右折して,国道97に入りました。国道97はモスバーンという町までのわずかな距離の国道で,ここで南東からきた国道94に合流しました。さらに西に走っていくと,ついに,テ・アナウというミルフォードサウンドの玄関口にあたる町に着きました。ここで30分の休憩です。私はここで朝食をとりました。テ・アナウにあるドライブインは,ミルフォードサウンドに向かうバスから休憩で降りた観光客でいっぱいでした。
ここから先,国道94はテ・アナウ湖の東岸を北上して行きます。ときおり晴れ間が覗くこともあるのですが,すぐに天気が悪くなり,小雪まで舞っています。この先にゲートがあって,条件が悪いとこのゲートが締まっていて,そうなるとミルフォードサウンドには行くことができず,引き返すことになるそうです。祈る気持ちでいましたが,すんなりと通りすぎて,やった! と思いました。

さらに進んでいくと,テ・アナウ湖を過ぎて,今度は険しい山岳地帯になりました。途中,氷河で浸食したU字谷の美しい景色が見られたり,「ケア」と鳴くからケアと名づけらた鳥に遭遇したりと,ミルフォードサウンドに到着するまでにも,日本では見ることもできない絶景が次から次へと広がっていきました。こんな風景を見てしまうと,日本で「秘境」といわれる場所がすべてむなしくなってしまいます。
やがて,最後の難関であるホーマー・トンネルに差しかかりました。ホーマー・トンネルはこの国道94最大の難所で,1935年から1953年まで実に18年を要して作られたそうです。狭いトンネルなので一方通行で,運が悪いとずいぶんと時間待ちをする必要があるのだそうですが,すんなりと抜けることができました。
国道94はホーマー・トンネルを抜けるとやがて下りはじめ,ついに,ミルフォードサウンド観光船の出るターミナルに到着しました。
このターミナルには数台のバスが停まっていて,ここから観光船に乗り換えることになります。この険しい道路をクイーンズタウンから5時間以上ドライブすれば個人でここまで来ることもできるのですが,かなり大変なことだなあというのが実感でした。

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今日はこの旅で一番楽しみにしていたミルフォードサウンドの観光です。ミルフォードサウンドは2年前にニュージーランドに来たとき,行きたくとも行くことができなかった場所でした。ちなみに,サウンドというのは入り江のことです。ニュージーランドの英語というのは私には独特で,この「サウンド=入り江」とともに,「スタジオ=ホテルの部屋」というのもあります。
さて,今回の旅はテカポ湖に適当な宿泊先を見つけたことからはじまったのですが,せっかくニュージーランドに行くのなら、ぜひミルフォードサウンドにも寄ろうと考えました。ところが,行く方法がわかりません。クィーンズタウンが玄関口だということはわかったのですが,まず,クィーンズタウンにどうやって行くべきかで困りました。
クライストチャーチからテカポ湖を経由して車で行くことができないわけではないのですが,これを往復するにはちょっと距離がありすぎます。そこでテカポ湖から一旦クライストチャーチに戻って国内線で往復することにしました。
次はクィーンズタウンのホテルが高すぎて適当なところが見つからないという問題がありました。これはアロータウンというちょっと離れたところに安宿を見つけました。
最後の問題,そしてこれが最大の問題だったのが,クィーンズタウンからミルフォードにどうやって行くかでした。これほど有名な観光地であるにもかかわらず,行く方法がよくわからないのです。クィーンズタウンから直接距離は100キロメートルほどなのに道がありません。しかもミルフォードサウンドの近くには町らしい町すらありません。はじめは車を運転して行こうと思っていたのですが,道路はクィーンズタウンからUの字には迂回していて片道有に4時間かかります。しかも現地に到着してからどのように観光するのかさえよくわかりませんでした。

そうこうしているうちに,クィーンズタウンから日帰りの現地ツアーを見つけました。しかも私の泊まるアロータウンまで送迎してくれるというではないですか。
ツアーは早朝7時発で帰りは夜の7時ということで,しかもバスに乗っている時間が8割で現地の観光が2時間弱ということでしたが,これがミルフォードサウンド観光の一般的な方法のようでした。ということで予約をしました。
気がかりは天候でした。聞くところでは,天気が悪いと道路が閉鎖されていて行くこともできないのだそうです。これほど有名でありながらこれほど行くことが困難ということに驚きました。2年前にニュージーランドに来たのは11月の終わりで,当時まったく認識がなかったのですが,これは観光のハイシーズンだったようです。ルピナスは咲き誇り美しい風景が続きました。わずか1か月とはいえ,今回はまだ寒く観光シーズン前だったのもまた,私の認識不足でした。
この時期に来たのは新月で星がきれいであるというだけでした。さらに運が悪いことにここ数日寒波がやって来てとても寒いということでした。最高気温が8度ほどで来週になれば20度近くになるということですから不運にもほどがありました。
そんなわけで,テカポ湖からクィーンズタウンまで移動した昨日は雪こそ免れましたが,天気もはかばかしくなく落ち込みました。そして今日の天気予報ですが,クィーンズタウンは雨か雪。しかしどういうわけかミルフォードサウンドの天気予報は晴れなのでした。果たして私はミルフォードサウンドに行くことができるのでしょうか? 期待と不安のなか朝7時,ホテルの玄関前に送迎のタクシーが来るのを待ちました。

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やがて飛行機が高度を下げはじめました。山間にあるクイーンズタウンはまるで飛行機の尾翼が山にぶつかるほどのところを飛んでいてびっくりしました。空港に着きました。預けてあったカバンをとり,予約したあったレンタカーのカウンタに行くと,係員が出迎えてくれました。どうやらこの飛行機で予約をしてあったのが私だけだったようです。借りたのがカローラだったのですが,色があざやかなブルーでびっくりしました。
今日よやくしてあったのがクイーンズタウンから北に20キロメートルほどのアロータウンというところにあるホステルでした。クイーンズタウンの宿泊施設は高く,適当に選んだのがアロータウンだったというだけのことでした。
カーナビの案内にしたがって走っていくと,やがて,ちいさな風情のある田舎町につきました。わずか数十件ほどの商店街がアロータウンのすべてでしたが,その中央に私の予約したホステルがありました。しか,ホステルというよりも,そこはいわゆるタバーンという飲み屋(兼食堂)で,その店の裏に宿泊施設が6部屋ありました。
バーのカウンタでチェックインをしてキーを受け取りました。こういうところに泊まるのもおつなものです。
行くまでまったく知らなかったのですが,アロータウンはゴールドラッシュで栄えた町でした。当時の面影があって,その雰囲気を楽しむために,結構な観光客が来ていました。

私はここに2泊することになるのですが,このように到着は夕刻で,明日は1日ミルフォードサウンド観光,そして,明後日は朝チェックアウトしてそのまま空港に戻り帰国ということなので,せっかくクイーンズタウンに来ても,町の観光をする時間がありません。そこで,少しの時間だけでも,ということで,この晩,クイーンタウンを観光することにして,さっそく車で向かいました。
空港はクイーンタウンとアロータウンの中間あたりにあるので,約30分ほど走るとクイーンズタウンに到着しました。平坦な場所にぽつんぽつんと家があるといった町を想像していたのですが,それとはまったく違い,ワカティプ湖の湖畔,坂ばかりのところに町がさほどひろくなく広がっていて,ダウンタウンは多くの店やレストラン,そして多くの観光客でごった返していました。
どこも車を停めることができそうなところはすでにいっぱいで,やっと見つけた30分限定の駐車スペースに車を停めて,ともかく少しだけ町を歩いてみました。こんな場所にこんな観光地があることに驚きました。
その後,宿泊先にもどり,せっかくここの泊まるのだかからと,この日の夕食はここでとることにしました。

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夕方になって,将棋も佳境に入りました。ニュージーランドは今夏時間,日本とは時差が4時間あるので,勝負所を迎えるのが日本では午後5時でもこちらでは午後9時と遅いのです。この日の夕食は買ってきたサンドイッチとカップヌードルで済ませました。
将棋が藤井七段の完勝で終わったころから,当たらないと言われる天気予報の「降水確率100パーセント」が当たって小雨が降り始めましたが,もうじたばたしてもしかたがないので,運を天に任せて寝ることにしました。朝起きて雪が積もっていたら余裕を見て宿泊先を出て,ゆっくりと走るしか方法がありません。

朝になりました。この旅の5日目,滞在4日目です。
昨晩は雨は降ったものの,それも深夜にはやんだようで,雪はまったく降りませんでした。思えば,前回と今回で私はこのテカポには合計5泊しましたが,星が見られなかったのは昨晩だけでした。今回は満天の星空も,マウントクックの雄姿も見たからすっかり満足していたのに,その後の雪の予報を知ったときからその感動も吹っ飛んで,気が気でない時間を過ごしていましたが,これで安心しました。
あとはクライストチャーチまで行くだけです。
朝8時過ぎにチェックアウトしました。クライストチャーチまでの道も片側1車線なのに,ほとんどが100キロ制限です。私は午後2時過ぎのフライトに間に合えばいいから,せっかく観光に来たのに急ぐ必要もないので,80キロくらいでゆっくり景色を楽しみながら走ります。こちらの人の運転は日本のように荒いのですが,頻繁に2車線になって追い抜きができるし,ほとんど対向車も来ないからどこでも追い越しができるので,後ろから車が迫ってくると道を譲ります。
しかし,もっと天気がよければ景色もよく見られたのでしょうが,ずっと雨模様だったのが残念でした。道路の周りはほとんど人家もなく,ヒツジだけがやたらといました。ヒツジはちょうど出産期を過ぎたところで,かわいい子羊がウロウロする様があちらこちらで見られました。たいてい3頭の子ヒツジが一緒にじゃれていたり,母ヒツジにまとわりついていました。
ニュージーランドのヒツジは,以前は人口の20倍もいたそうですが,今は減って人口の6倍だそうです。ヒツジの数が減少した理由は,羊毛の需要が減ったこと,牛や馬や鹿を買う方が利益になるからだそうです。鹿は高タンパク低カロリーの高級な肉として,ヨーロッパに輸出されているということです。

途中の小さな町にあったカフェで朝食をとりました。ここでもまたフラットホワイトを飲みました。朝食はおいしかったのですがとても量が多く,今日の昼食は抜きということがここで決定しました。
クライストチャーチに戻り,レンタカーを返して国内線にチェックインしました。ここからクィーンズタウンまでのフライトはわずか1時間です。乗客は少なく,小さなプロペラ機でした。乗り込むゲートにはなんとセキュリティチェックがなく,そのまま乗り込めました。これでは村のバスターミナルと同じだなあと思いました。
機内では,わずかな時間のフライトだというのに,まず水が出て,次にお菓子とにコーヒーが出て,最後に飴が配られました。客室乗務員は恰幅のいいおじさんと若い女性のふたりでしたが,そんなに忙しく働かせなくてもいいのにと,気の毒になりました。

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旅行の4日目,ニュージーランド滞在3日目になりました。
今日は予定がありません。自然相手の旅行,特に星空やオーロラを見るためには,最低3回のチャンスを設定しておかないと実現できないことがあると思っているので,テカポ湖に3泊しました。2か月前に行ったアイスランドなど,6泊したのにすべて曇りでしたが,それは例外で,というか,アイスランドはもともと晴れない国でした。これまで,オーストラリアもアラスカもフィンランドもそれですべてうまくいきました。幸運なことに,今回は1日目の晩に晴れ上がったので,結果的には2日目さえなくてもよい日となりました。
昨日は晴れ上がり,マウントクックに出かけることができましたが,今日は天気予報が最悪で,終日雨ということだったので,1日中宿泊先のコテッジで過ごすことにしました。
幸いなことに今日は将棋新人王戦第一局があるので,ネットで観戦です。ニュージーランドまで来て将棋の観戦とは,なんだかおかしなものですが,ほかにすることもありません。AbemaTVは海外では見られませんが,ニコニコ生放送は見られます。

ところが,1日中雨という予報だったのに,午前中は晴れました。そこで朝食を取りにふらりと町に出かけました。そして,前回来た時からずっと気になっていたカフェにはじめて入りましたが,なかなかの朝食が食べられました。こちらの物価はアイスランドとは違って高くなく,しかもチップも要りません。ただし飲み物は別に注文でコーヒーつきセットというものはありません。ニュージーランドのコーヒー文化は独特で,私はフラットホワイトを飲むのを楽しみにしています。フラットホワイトというのはエスプレッソにたっぷりとミルクがのっているものです。
朝食後一度コテッジに戻り,再び散歩を兼ねてその後の「籠城」に備え,昼食と夕食を買いにマーケットに行きました。コテッジでは電子レンジをはじめすべてそろっているので,食材をマーケットで買えば食事は外食をせずともなんとかなります。
この日も続々と一見さんの観光客がやってきます。そのうちの多くが中国人です。現在,世界中の観光地は中国人であふれかえっていて,テカポ湖も例外ではありません。人の家の庭に入り込んで写真を撮ったり,列に割り込んだり,人のカバンの上に座ったり,その傍若無人さは有名です。彼らは,大挙してバスで現れ,スマホに自撮り棒をつけ,黒いサングラスをかけ,ブランド品のカバンを持ち,女性は厚化粧をし,大声で闊歩するといった共通の特徴があります。日本人の観光客もまた,いわゆる田舎モンの旅慣れていない人は同じようなものですが,数が少ないので目立たないだけかもしれません。日本国内でも,平気で横入りをし,公園では花を折るし,どこにいってもタバコをふかしているようなおじさんやおばんさんは今でもけっこう生存しています。

午後からは部屋に戻ってネットで将棋を観戦して過ごしました。
明日の朝は早朝テカポ湖を発ってクライストチャーチに戻り,ニュージーランド航空の国内線でクィーンズタウンに行く予定ですが,深夜の雪という天気予報が気がかりでなりません。雪が積もって,明日,クライストチャーチに戻れなかったらどうなるのでしょう。聞くところでは,こちらに人は雪でもスノータイヤなんてつけずに走っているよ,ということなのですが⁈

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念願のマウントクックの姿もはっきり見られて,目的のふたつ目も簡単にクリアして,再びテカポの町に戻ってきました。
テカポ湖畔にあるテカポの町は2年前に比べて様変わりしていました。まず,スーパーマーケットができていました。以前はよろず屋さんのような店しかなかったので便利になりました。この日の夕食はそこで買いました。2年前に来たときに星空観察ツアーに参加したアース&スカイという会社のオフィスも移っていました。来年には天文台つきの建物が完成するということで,スーパーマーケットのとなりのプレハブの仮の建物で営業していました。それ以外にもさまざまな新しい建物が建設中でした。
ここは星空の美しい町として世界中から観光客がやってくるのですが,正直いってこのままだと将来が心配です。それはあまりに明かりに対して規制がなさすぎるからです。

私が今回やってきた目的は,すでに書いたように,「善き羊飼いの教会」を入れた南十字星の写真を写すことだけだったので,持ってきた機材も最小限にしました。ここはちゃんとした天体写真を天体写真マニアが写しにくる場所ではないのです。「善き羊飼いの教会」のあたりは夜ともなるとすごい人の数で無作法者も多く,懐中電灯やら車のヘッドライトの隙間をぬって写真を写すのが精一杯です。そのほとんどの人は満天の星空といってもどの星がなんなのかもわかっていないものだから,単に教会を入れればいいとばかりに秩序もなくごった返しているわけです。しかし,おそらくほとんどの人はピントすら合わせられないだろうから,まともな写真は撮れないことでしょう。
私は,目的だった「善き羊飼いの教会」と南十字星を雲ひとつない夜空に写せたのでこれで満足しました。南半球でちゃんとした星野写真を写すのは,これからもまた,オーストラリアに出かけることにします。

滞在2日目の夜も晴れて星空が見えましたが,最悪なことに南十字星のあたりだけ雲が出ていたので,昨晩写すことが出来て本当によかったと思いました。それにしても,これまで通算4晩をテカポ湖畔で過ごしたことになりますが,天気予報は曇りだとあっても,そして,お昼間どんなに曇っても,夜はすべて晴れました。しかし,ここが本当に晴天率が高いのかどうかはわかりません。安定した晴天が続かないからです。
明日から寒くなり天気が崩れるという予報で,さらに,夜は雪になるということなので心配です。ここに住む多くの人に会うごとに尋ねてみたのですが,すべての人に共通だったのは,予報などあてにならないよ,雪など降らないから心配いらないよ,ということでした。本当にそうならいいのですが…。

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すっかり晴れ渡った昨晩は,思った以上の写真が写せて満足しました。考えてみれば,雲ひとつない星空なんて,オーストラリアならともかくニュージーランドではかなり無謀な期待だったのですが,奇跡的に実現しました。
お昼間は中国語しか聞こえなかったのに,この「善き羊飼いの教会」のまわりで写真を写していたのは意外とに本人が多くて,いたるところで日本語が聞こえてきました。
私は承知できたからいいものの,ここはあまりに有名になり過ぎていて,落ち着いて写真をとる場所ではありません。「世界で一度は見ておきたい絶景」とかいう写真集があって,この場所は必ずといっていいほど載っているのですが,それがこんなものだから,それ以外の場所もまあ,同じようなものなのでしょう。有名な話としては,ピラミットは反対から見るとカイロの大都会が借景となっているとかいうものもあります。

その翌日3日目,滞在2日目。
2年前にも行ったカフェで朝食をとりました。食後,今日こそはマウントクックの姿を見ようと,出かけることにしました。テカポ湖からは100キロメートルの距離です。マウントクックはニュージーランド南島南アルプス山脈に位置するニュージーランド最高峰の山で,標高は3,724メートルあります。正式の名称は「アオラキ/マウントクック」といいます。
行く途中で,まず,マウントジョン天文台に寄りました。ここの天文台はカンタベリー大学と名古屋大学の共同運用です。テカポ湖を見下ろす山の上にあって,お昼間は誰でも山頂まで登ることができます。天文台自体は公開されていませんが,山頂にはアストロカフェという名のカフェがあって,コーヒーを飲みながらテカポ湖の姿を見ることができます。
お気に入りのフラットホワイトを飲みながら店員さんにマウントクックが見えるか聞くと,親切に教えてくれました。マウントクックは山頂まではっきり見えたので,これは是非急がねばということで,さっそく山を降りて出発しました。
テカポ湖からマウントクックまではプカキ湖沿いにものすごく美しい風景が広がります。はじめて見た2年前は大感動しました。マウントクックは少し遠くから見たほうがむしろよく見えます。
マウントクック国立公園の駐車場に着いてトレイルを歩きました。結構険しい登り坂でしたが,登りきったところには日本では絶対に見られない絶景が広がっていました。

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今回ニュージーランドにやって来た目的は3つでした。そのひとつは,テカポ湖にある有名な「善き羊飼いの教会」と南十字星を一緒に入れた満足のいく写真を写すことでした。ふたつ目は,マウントクックの山頂までの姿を見ることでした。そして3番目が,ミルフォードサウンドに行くことでした。
ひとつめの,写真を写したかった理由は,前回来たときは南半球で星空が見たいという一念だけだったのですが,テカポ湖まで行ったら「善き羊飼いの教会」を入れた星空の写真を撮ってこないと意味がないということをあとで悟ったためです。前回はそこまで気がまわらなかったので,教会を入れた写真は星空に雲がかかったものが数枚あるだけでした。それが私にはずっと不満でした。ふたつめのマウントクックは,前回行ったときには山頂付近だけ雲がかかっていて見えなかったので,ニュージーラドで最も有名なマウントクックの形すら私の記憶になかったことです。ませんでした。そして3番目のミルフォードサウンドは,ニュージーランドで最も知られた観光地だというのに,遠くて行くことができまなかったからです。
そこで今回は,テカポ湖に3泊,クイーンズタウンに2泊することにしました。テカポ湖に3泊もする必要はないのですが,自然相手では予備日も作っておかないとうまくいきません。ところが,出発前に調べた天気予報では,2年前のときと同様にずっと曇りか雨。日本とは違い,当たらない天気予報とはいえ,これでは今回もまた,2年前と同様にテンションが下がりました。

ブリスベンからクライストチャーチまでは3時間のフライトなのに食事が出ました。これでは食べてばかりです。
やがてニュージーランドが見えてきましたが,予想に反して天気がよくて驚きました。上空からはおそらくプカキ湖であろうと思われる湖が,雲で遮断されることもなく,鮮やかに見えました。
定刻にクライストチャーチに着きました。前回のことは忘れましたが,ニュージーランドの入国は結構大変で,いろいろ聞かれるので英語力が要ります。おそらく入国者が少なくて係員さんは暇だったのでしょう。
入国してすぐに予約したレンタカーを借りましたが,レンタカーもまた,オプションの保険だとか,返すときにガソリンを入れなくてもいいオプションだとか,そういうものの説明が長く,大変でした。きっとここもまた暇なのでしょう。

テカポ湖までゆっくり走っても3時間で到着しました。
予約してあったのは「善き羊飼いの教会の近くのコテッジでした。最高のロケーションでした。
アイスランドのゲストハウスとは違い,シャワーもトイレもついているし,チェックインのとき牛乳飲むかと言って牛乳くれました。
天気は晴れ。ほぼ快晴でした。夕方に着いたので,まずは歩いて「善き羊飼いの教会」に行き写真を撮り,そのあと湖畔という名の日本料理店でテイクアウトして部屋で夕食を取りました。
日が沈み再び外に出ると,先ほどの快晴はどこへやら一面曇っていてがっかりしましたが,やがて雲が切れてきて,しだいに雲ひとつない満天の星空となりました。
こうして,旅の目的のひとつ目は,簡単に達成できました。

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たった2年前のことなのに,ニュージーランドに到着するまでのことは断片的にしか覚えていないのが不思議です。どうやら記憶というのは印象に残るある部分だけがそのままの形で冷凍保存されていて,残りは消化され混ぜ合わされグタグタになってしまうからなのでしょう。
ということで,私が覚えていたのは,ブリスベンの空港でトランジット用のセキュリティを通ってニュージーランド向かったところと,セキュリティを越えた後で空港のターミナルビルのなかから見たブリスベンの景色と,ニュージーランド便の機内で出てきたギリシャヨーグルトの食べ方に戸惑ったこと,そして,クライストチャーチのレンタカーカウンタで予約した日を1日間違えていたことだけでした。
あのときはブリスベンにはじめて行ってトランジットしただけだったから,空港の外がどうなっているんだろうと,ターミナルビルの中からガラス越しに想像しました。おそらく旅というのはそうした想像をしているときが一番楽しいのでしょう。
その後私はブリスベンに3度も行ったので,もう外の様子は想像ではなく実態としてわかってしまいます。

オーストラリアとニュージーランドはすぐお隣の国のイメージがありますが,実際は日本と台湾くらいの距離があって,時差も3時間あります。ニュージーランドとハワイは時差が実質は1時間しかないのですが,その間に日付変更線があるというのが決定的な違いを生みます。つまり,ハワイは時差ボケに悩まされるのに対して,ニュージーランドは時差がないような錯覚におちいるのです。
しかし,実際は,行きはオーストラリアのブリスベンからニュージーランドのクライストチャーチまでは3時間ほどなのに,時間は6時間も経ってしまうから,早朝にブリスベンに到着してもクライストチャーチに着くのは午後の2時というように1日がかりなのです。反対に帰りは時間が経たないのですが…。そんなわけで,オーストラリアやニュージーランドへの旅は5泊8日というようになるので,8日もの休暇をとって旅行をしても,実質は4日ほどの時間しか使えないのです。

カンタス航空のおもしろいところは,座席のアップグレードが入札制であることで,いくらならアップグレードに応じますか? というメールがきました。うまくいけばかなり安くビジネスクラスに乗れるかもしれません。
今回は成田からブリスベンまでの機内でお話をしたのは,結婚してオーストラリアに住んでいて里帰りの帰りだという息子さん連れの女性と,ツアーでエアーズロックに行くという年配の女性でした。オーストラリアのブリスベンに住むという女性はオーストラリアがあまり好きそうにありませんでした。考えてみればブリスベンに住んだって,それほど行く場所もないし,オーストラリアから海外旅行に行こうとしても,ヨーロッパやアメリカは遠いから大変です。ツアー旅行の女性の方は総計11人のツアーだそうですが,機内ではバラバラに座っていました。
海外旅行をしていると,このようにツアー旅行ばかりで旅をしている年配の人によく会うのですが,こういう人たちは,カタログショッピングでブランド品を買い漁るように世界中の名所を脈絡もなく所構わず出かけているので,話を聞いているとたまげてしまいます。しかし,どこへ行っても結局はバスで名所を周りお土産を買って帰るというおきまりのコースなので,テレビの旅行番組を見ているようなものでしょう。旅行費用は私の3倍ほどだそうです。でも,機内でも座席は真ん中の窮屈なところが指定されていたり,空港からはバスで移動して名所の滞在時間はちょっぴりだけでみやげ物屋さんに連れて行かれたりします。スケジュール表を見せてもらったら目玉のエアーズロックの滞在もわずか半日でした。
はくちょう座の北十字と南十字の区別もつかないのに星空観察ツアーに参加したり,ベートーヴェンとモーツァルトの区別もわからないのにオペラを見にいったり,将棋のコマの動かし方も知らないのに藤井くんを追っかけているといった類の人たちです。それに加えて言葉もできないので現地の人と触れ合うこともないわけです。まあ,お金持ちの方は景気振興のためにも,こうしてどんどんお金を使っていただきたいものですが。

ブリスベンから乗り換えたクライストチャーチまでのフライトに乗っていた日本人は私だけで,そのほとんどはオーストラリア人やニュージーランド人でした。オーストラリアやニュージーランドの人にとってこの移動は何を目的としているのかなと思いました。
オーストラリアに比べればニュージーランドの方がはるかに自然が起伏に富ぶので,山歩きなどのトレッキングもできますから,そんな観光でしょうか。あるいは,オーストラリアは春休みが終わったところということですから,家に帰るのでしょうか? ともかく日本と季節が正反対の南半球は,今日本でいう4月のはじめですが,ニュージーランドはまだまだ寒そうです。

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出発の日は,台風25号の直撃ははずれたのですが,日本海を進む台風によるフェーン現象のために蒸し暑く,しかも風が強かったので,飛行機が通常運行しているか心配でしたが,定刻に成田に着きました。
セントレアから成田まではJALでしたが,ANAのようなめんどくさくばかていねいな優先搭乗のシステムもなく,単に優先搭乗の方は先に乗ってくださいという放送があっただけで,私には好感がもてました。客室乗務員の対応をみても,田舎っぽいANAに対して大人のJALという感じがしたのは,単に気のせいかもしれません。所詮社会全体が小学校のような日本です。海外に出かけるたびにそう感じます。
座席は,今回も富士山を見るために進行方向左の窓席を指定しておいたので,ずっと窓から富士山が見えました。となりに座った男性も海外旅行慣れしているみたいで,話が弾んでいるうちに,すぐに時間が経ちました。

成田空港に着くと,まず,台風で国内線が飛ばないときのためにと,事前に送っておいたキャリーバックを受け取り,すぐにカンタス航空でチェックインして預けました。JALとカンタス航空は同じアライアンス「ワンワールド」なので同じ第2ターミナルで助かります。
カンタス航空は機内持ち込み制限が7キログラムときつく,これではまず持ち込めず,預けるしか方法がありません。成田空港の出国ゲートにも顔認証のマシーンが導入されていましたが,その先に,希望すると出国スタンプを押してくれるブースがあったのでそうしました。その流れがスムーズで,セントレアも見習って欲しいものだと思いました。
あとは搭乗までの時間を潰すだけですが,ラウンジが出国ゲートの手前にあるのをうっかりしてセキュリティを抜けて中に入ってしまったので,せっかく今回持ってきたプライオリティパスが使えず,がっかりしました。
仕方がないので,いつものように,第2ターミナルのふかふかのリクライニングチェアで時間を潰しました。

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今年のはじめに書いたように,再びニュージーランドに行きます。
前回行ったのは,今から2年前のことでした。そのときは,アメリカ以外の国に行くことも久しぶりだったし,南半球で満天の星空を見ることもはじめてだったので,期待と不安でいっぱいでした。
それがわずか2年しか経っていないというのに,その間に,私はオーストラリアに2回も行って南十字星もマゼラン雲ももう飽きるほど見たし,フィンランドに行ってオーロラも見たし,アイスランドに行って大自然の風景も見たしと,多くの国々を訪れることができました。そうしたら,不思議なことに,前回行ったときはニュージーランドなんてハワイより魅力に欠けると思っていたのに,再びニュージーランドに行きたいという思いが募ってきました。
そこで,前回行くことができなかったミルフォードサウンドにはぜひ行こうと,旅行の準備をはじめました。

いよいよ出発という1週間前,台風24号が日本列島を直撃し,しかも次の台風25号が台風24号と同じようなコースで後を追いそうになってあわてました。もし出発が1週間早かったら行くことすらできなかったかもしれません。10月ということで油断していました。出発までの1週間は毎日台風情報とにらめっこする羽目になりましたが,おかげで随分と気象に詳しくなりました。
幸いにして台風は直撃を免れて,無事出発となりました。まだまだ私の「モッている」幸運は逃げていなかったようでした。
今回は,セントレア・中部国際空港から珍しくJALで成田まで行き,そこからはいつものようにカンタス航空で乗り慣れたオーストラリアのブリスベンを経由して,ニュージーランドのクライストチャーチへ行きます。なんとブリスベンに行くのは今年3度目になります。南半球のニュージーランドは今は初春で,気温は夏に行ったアイスランドくらい? らしいのですが,天気予報では連日曇りか雨ということで天気が悪く心配です。
出発時間よりかなり早くセントレアに到着したのですが,成田までは国内線なのでセントレアの国際線のラウンジは利用できず,一般用のラウンジを昼食を挟んではしごする羽目になりました。この時期,中国がなんかの連休の終わりらしく,中国便のカウンタは中国人でごった返していました。
また,4階のイベント会場では中国展をやっていました。私もあやかって昼食に中華料理を食べました。お昼どきのセントレアのレストランはどこも混雑しているのですが,到着ゲートのある2階には中華料理店とサブウェイがあって,ほとんどの人はその存在をしらないので,穴場です。

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 いろんな場所を旅してみた結果,私は日本で「ランド」と呼ばれる3つの国,つまり,フィンランド,ニュージーランド,アイスランドに興味をもちました。日本語で「ランド」と呼ばれる国はこの3つの国のほかにアイルランドとスワジランドがあります(した)が,アイルランドには今のところは興味がなく,スワジランド(Swaziland)は2018年に国名を「エスワティニ」(eSwatini)」と改めることを宣言しました。スワジランドが国名を変えた理由は,英語ではさらにスイスもスイスランド(Switzerland=Swiss Confederation)といって,これと間違えるというのが理由だそうです。英語ではさらにタイもタイランド(Thailand)といいます。

 さて,この私が興味をもった3つの「ランド」ですが,恥ずかしながら,これらの国のことをほとんど何も知りませんでした。オーロラを見るためという理由だけで行ってみたフィンランドは,以前書いたように,調べれば調べるほど興味が増す国でした。特に,フィンランドの教育行政はすばらしく,それを見習おうと日本から多くの研究者が出かけているのですが,その結果として,フィンランドとは真逆の政策をはじめるという皮肉的な悪夢になっています。
 アイスランドは,フィンランドに行ったときに,オーロラを一番よく見ることができる国としてこの国のことを聞いて興味をもちました。それまではまったく私の意識にもない国でした。そこで,この夏にアイスランドに行ってみることにしたので,アイスランドのことは行ってみてからまた書きたいと思います。そこで,今回は,私が興味をもった3つ目の国であって,私の愛するニュージーランドです。

 ニュージーランドはこれまでに一度だけ行きました。この秋に2度目の旅行を計画しています。
 私のニュージーランドの印象は,なんと美しい国だろうか,ということです。日本ではオーストラリアとニュージーランドは一緒にして語られることも多いのですが,このふたつの国はずいぶんと違います。そしてまた,とても似ているところもあります。しかも,隣同士だというのに,このふたつの国はきわめて仲がよいといいううらやましい特徴があります。
 ニュージーランドは地震が多いということだけが憂いですが,その憂いを除けば,私がもっとも住んでみたい国です。
 ニュージーランドの面積は約27万平方キロメートル,ちなみにフィランドンが33万平方キロメートル,日本は38万平方キロメートルなので,ニュージーランドの面積は日本の約4分の3です。しかし,人口はわずか約430万人で,なんと日本の約3%なのです。つまり,日本と同じような島国で地震が多く,緯度も日本が北緯35度あたりでニュージーランドが南緯35度あたりと同じですが,人口だけが決定的に違うということなのです。

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 私は昨年の秋にニュージーランドへ行ったときにレンタカーを借りました。アメリカと日本以外でレンタカーを借りるのは初めてのことだったので,少しだけ心配しましたが,アメリカに比べたらニュージーランドは日本と同じ左側通行だし,何の問題もないように思えました。ただし,交通規則だけがよくわからず不安でした。例えば,アメリカでは右折(日本の左折)は赤信号でも通行できるのですが,そういったことができるのかできないのか,というようなことです。
 そこで,出かける前に調べてみたのですが,いまひとつ呑み込めませんでした。しかし,これもやはり習うより慣れろで,実際に走ってみたら書いてあったことはすぐに理解できました。
 今日は,そんなニュージーランドの運転事情を書いてみましょう。

 レンタカーを借りるときに,レンタカー会社の係員が「ニュージーランドで車を借りるのははじめてですか?」といって,道路法規の説明をしてくれました。その際に見せてくれた説明書は日本語でしたが,書かれてあった内容は日本との違いというよりもアメリカとの違いに重点が置かれていたのは,きっとアメリカ人がレンタカーを借りることが多いからでしょう。
 日本よりもアメリカのほうがはるかに走行する距離が長いような私にはとてもよく理解できましたが,逆に多くの日本人にはわかりにくいかもしれません。

 アメリカ人にとれば最も違うのは左側通行でしょう。これは日本人がアメリカで車を借りるときと同様に,重要なことです。
 借りた車の運転席に座ると,今日の1番目の写真のように,スピードメーターに左側通行だという「⇐」シールが貼ってありました。
 日本人にとればそれよりも1番の違いは2番目の写真の「ラウンドアバウト」(roundabout),つまり,ロータリーでしょう。
 日本にもロータリーが少しはあるのですが,めったにお目にかかりませんし,そうした場合の走行方法を把握しているとはいえません。
 私がニュージーランドでロータリーを走って思ったのは,ロータリーというのは確かに信号は必要ないのですが,このシステムは交通量が少ないからこそ有効で,日本の道路にこんなものを作ったらたちまち大渋滞になることでしょう。しかも,日本人の運転マナーだと一旦停車など守らずに事故が起きるかもしれません。すると,日本では名古屋駅前のロータリーのように,ロータリーなのに信号機があるという不思議なことになるでしょう。
 ロータリーはアメリカではボストンの郊外でよく見かけましたが,私がアメリカでこのロータリーに出会ったときに思ったのは,ロータリーを回っているうちに,方向がわからなくなってしまうということでした。
 このロータリーはたしかに交差点で信号待ちが要らないというメリットがありますが,直進するときにもそのまま直進ができないというデメリットもあって,交通量が多ければ不便だし少なければロータリーがなければそのまま直進できるのに一旦停車をしなければいけないというまどろっこしいことになります。

 「ロータリーにさしかかったら右側優先」と習うのですが,これはどういうことかというと,「ロータリーにさしかかったときに右から来る車」というのはロータリーのなかを走っている車ということです。つまり,右側の車が優先というよりもロータリーを走っている車の進行を妨げてはいけない,ということです。そう教えたほうがよくわかるのに!
 だから,逆に考えると,自分がロータリーに入ったら自分が優先,つまり停車することなく自分が向かう道路まで走れるということです。
 読んでいるとむずかしそうですが,すぐに慣れます。

 それよりも,私が初めに戸惑ったのは3番目の写真のような左折帯でした。
 アメリカでは右折(日本やニュージーランドの左折)は信号が赤でもほどんどの州や特に交差点で禁止でなければ車が来なければ走ってよいのですが,アメリカとは違って左折(アメリカの右折)も日本と同様に信号に従う必要があります。
 しかし,ニュージーランドの街中ではほとんどの場合左折帯があるのです。この左折帯は日本でもまれにあります。そして,この左折帯は信号に関係なく左折できるのです。しかし,私ははじめのうちそのことがよくわからず,左折帯の手前で停車して,後ろの車にクラクションを鳴らされました。

 ニュージーラドの制限速度はアメリカのようにマイルではなくこれもまた日本と同じくキロメートルです。市内は50キロメートル,市外地は100キロメートルなのですが,市街地でも片側1車線なので,この一般道を100キロメートルで走るのははじめのうちは少し勇気が必要です。道路はところどころが2車線になっていて,そこで追い抜きができます。
 町に入ると町の入口に50という大きな表示があって,とてもよくわかります。この表示板の裏側には100と書いてあって,町を出ると今度は100キロメートルに戻るわけです。これが4番目と5番目の写真です。
 これはアメリカのシステムにとてもよく似ていて,アメリカでは郊外では60マイル(90キロメートル)だったのが,町が近づくと次第に制限速度が遅くなっていきます。この街中の結構遅い制限速度を車はきちんと守って走っているので,安全なのです。
 日本では街中にもかかわらず,制限速度をかなりオーバーして駆け抜ける頭がどうかしている車が結構たくさんあります,。私は,日本人の車の運転は,ものすごくマナーが悪いと思っています。郊外は100キロ制限とはいっても,カーブに差し掛かると,6番目の写真の「75」のように,そのカーブを安全に運転できるように減速した速度表示があるので,それに従えば間違いありません。
 ただし,ニュージーランドはアメリカとは違って,センターラインがイエローラインというような規則はありません。

 もうひとつ面白い道路標識があるので,それを紹介しておきましょう。
 ニュージーラドの市外では一般に片側1車線なのですが,橋だけ狭くなっているところがかなりあります。きっと,昔架けられたままなのでしょう。そこでは,どちら側が優先なのかということが7番目の写真のように矢印の大きさで示されています。
 これも初めはよくわからなかったのですが,マウントクックに向かうときにこの表示にずいぶんと出会いました。
 これも交通量が少ないからよいようなものの,多くの車が通れば当然渋滞します。もし複数台の車とすれ違わなければならないときに,交互に渡っていいのか,優先側の車がすべて通過してから渡るのか,私にはいまいちわかりません。

 日本との違いといえば,大体はその程度です。いずれにしても,日本よりも交通量が決定的に少ないということと,日本のように意味のない道路指示やら看板やら道路に色が塗りたくってあるということがないので,きわめて安全です。
 それよりも,私が今もってよくわからないのは,駐車でした。
 街中では無料で駐車できる場所が少ないのが不思議なのですが,駐車帯には最後の写真のように,「P」という文字とその下に数字が書かれています。例えば「30」とあれば,それは30「分」のことで,その数字までは無料で停めていいということなんだと思うのですが・・・??? よく知りません。

◇◇◇
「フラットホワイト」-ニュージーランドのコーヒー文化

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 若いころにはじめてイギリスに行ったとき,ミルクティーというものを知りました。このキャラメルのような飲み物を気に入って,その後もたびたび飲んでいるのですが,それまで紅茶といえばレモンティーしか知らなかったので,ところ変われば飲み物も変わるものだと実感したのを今でもよく覚えています。

 今年の秋,はじめてニュージーランドに行って,ニュージーランドでは「フラットホワイト」(flat white)という飲み物が好まれているのを知りました。
 アメリカには「アメリカンコーヒー」というものはなく,コーヒーといえば日本でいうところのアメリカンコーヒーなのですが,それを大きなマグカップに入れて,ミルクをあるいはクリームを自分の好みで入れたり入れなかったりして飲むので,味も素っ気もありません。
 日本では昔から喫茶店というのがあってそこで「ホット」と言って注文されるのはもっぱらブレンドコーヒーです。その一方で,スターバックスに行けばさまざまなコーヒーがあります。スターバックスはもともとはアメリカからやってきたのですが,それらはアメリカというよりもニュージーランドのコーヒー文化によく似たメニューです。
 私は特にこだわりもないので,ニュージーランドに行くまではスターバックスで注文するときメニューがよくわかりませんでした。もっと素人がわかるようにすべきだとも思っていたのですが,私のようなおじさんはもともとお呼びではないのでしょう。スターバックスに入ってきてメニューがわからずそのまあ帰るおじさんをたまに見受けます。
 私がこれまで日本のスターバックスに行っていたのは,まあ,要するに時間潰しが理由だったから,単なる「ホットコーヒー」が注文できればそれでよかったのです。その点,マクドナルドなら簡単でしたが,近頃はマクドナルドでもさまざまな種類のコーヒーメニューがあります。

 ニュージーランドでコーヒーを注文すると,まず,どの種類にしますか? と聞かれました。これに困りました。
 聞いてみると,どうやらニュージーランドのコーヒー文化は独特で,フラットホワイトとかラテとか,そういうものが主流みたいです。単なるブラックコーヒーもあるにはあるのですが,それを注文すると,今度はミルクをいれますか? と聞かれて,入れるというとはじめっから入れてくれます。
 ニュージーランドではマクドナルドでさえ同じです。
 ということで,いつものようにまったく不勉強で予備知識のなかった私はいきなりのカルチャーショックで困りました。「フラットホワイト」などという言葉さえ知りませんでしたが,適当に聞こえた単語が「ホワイト」だったので,「ホワイト」とかいったら通じました。で,出てきたのが今日の写真のものです。
 そこで,調べてみました。

 ニュージーランドのコーヒーはエスプレッソが主体で,それが「ブラック」(Black)です。ブラックに同量のお湯を加えると「アメリカーノ」(Americano)であり,同量のフォームミルクを加えたのが「フラットホワイト」(Flat White)で,倍量のスチームミルクを加えると「ラテ」(Latte)となり,フォームミルクとスチームミルクを加えると「カプチーノ」(Cappuccino)ということになるそうです。
 考えてみれば,ミルクはこの国ではいっぱいあるから,こうした文化になるのでしょうが,このコーヒーの表面に浮いたミルクで書かれた絵がとても素晴らしくて,食欲をそそります。というか,飲むのがもったいなくなります。

 今回私は星を見ること以外には何の関心もなくニュージーランドへ行ったのですが,滞在中もあまりニュージーランド自体には興味がありませんでした。しかし,帰ってからいろいろと調べるとおもしろいことがいっぱいあるし,懐かしさがこみあげてきます。
 このことは海外に限らず日本国内でも同じですが,出かける前にガイドブックを読んでもあまり実感がわかないので,とにかく,旅は予備知識なく行ってみるほうがずっと面白いというのが私の主張です。今回もまた,こうして,私はじわじわとニュージーランドの魅力にはまりつつあります。何より素晴らしいのは日本よりもずっと人が少なく景色が美しいことで,このことがこの国の最大の魅力です。
 ただし,行くのに乗り換え時間などを含めると20時間近くもかかるのが最大の難点です。もう少し近かったらなあ!
 私はハワイに行って「コナコーヒー」を覚えました。そして,ニュージーランドへ行って,様々なコーヒーに目覚めました。こうして私はますます若返るのです。おそらくまた近いうちにニュージーランドへ行くことになるでしょうが,それまではせいぜいスターバックスでさまざまなコーヒーを楽しみたいものです。

私の短いニュージーランド旅行も,いよいよ帰国の日が近くなりました。来る前はさっぱり状況がわからないところでしたが,わずか3日の滞在で,ニュージーランドというところがおぼろげにわかりました。そしてまた,星を見るという目的も達成できました。
ニュージーランドでは,道路の脇にルピナスという美しい花が咲き誇っています。これは,イギリスから来た女性が故郷を懐かしんで種を蒔いて歩いたことで自生した雑草ですが,外来種のためにマウントクックあたりでは一斉に駆除されたようです。また,イギリスから持ち込まれたものに狩りのためのウサギがいます。天敵がいないので増えすぎて,夜行性で夜になるといくらでも道路に飛び出してきます。車で走っていると道路には轢かれた姿を頻繁に目撃します。また,ウサギの肉は「game」と呼ばれレストランで味わうことができます。
ルピナスとウサギ,ともにイギリスからニュージーランドに持ち込まれたものがさまざまな問題を抱えているようです。

今日は,クライストチャーチに戻るだけの日程です。そして,1日目に宿泊したホテルに再び1泊して,明日は早朝6時過ぎのフライトで,オーストラリアのブリスベンを経由して成田に戻ります。
テカポ湖からクライストチャーチまでは特に行くところも,行きたいところもなかったのですが,時間がたっぷりあったので,ニュージーランドの南の海岸線を遠まわりで走ることにしました。いわば信州の諏訪湖から東京に帰るのに名古屋まで行ってさらに京都へ寄ってから東海道を東京に向かうような感じです。
テカポ湖を出発して,まず,ハイウェイ8を南東に海岸まで走り,ティマル(Timaru)という町まで行きました。そこからさらにクライストチャーチとは反対の南南西に海岸に沿って走り,オアマル(Omaru)まで行きました。
その途中の風景はどこもヒツジやウシが放牧されているのどかな田園地帯でした。
ティマルやオアマルという町は,ちっとしたダウンタウンのある小さな港町で,博物館や古い教会などがあります。この夏に行ったアメリカ・サウスカロライナ州のチャールストンに似ている,と言えなくもないのですが,それよりはずっと規模も小さく,歴史も浅いものです。車を停めて街を散策してもよいのですが,何か特別なものがあるというほどのものでもありません。その点でもハワイよりも魅力に劣ります。
オアマルにはブルーペンギンのコロニーがあるということだったので,そこまで遠出したのですが,海から巣穴に戻って来るペンギンの群れが見られるのは夜とのこと。私が見ることができたのは,卵から孵ったばかりのひなの様子だけでした。

オアマルからクライストチャーチに海岸線を国道1に沿って引き返しました。ニュージーランドの南島はどこもそんな感じなのだろうと思う単調な風景でした。
クライストチャーチも,到着した日に市内観光はすでに済ませたので,郊外にあるウィローバンク野生保護区へ行ってみることにしました。場所は空港の近くで,ハイウェイ1からアクセスできるはずだったのですが,道路は工事中で遮断されてしまっていて迂回する必要があり,到着するのにずいぶんと苦労しました。
この保護区はニュージーランドの固有種を中心とした動物園で,なかでも,タカへ(Takahe)という以前は絶滅したと考えれられていた鳥や,キウィ(Kiwi)が目玉です。特に,キウィは真っ暗にされた室内でまじかにみることができるようになっていました。ただし,探し出すのが大変でした。
ホテルに戻って,近くの日本料理店に夕食を食べに行きましたが,クライストチャーチの市内には日本料理の食べられるお店がずいぶんあって,しかもアメリカのように韓国人がやっているというのではなくて,正真正銘の日本と変わらないものを食べることができます。

こうして,私のニュージーランドの星空観察旅行は終了しました。帰国の日は出発が朝の6時ということで,早朝2時に起床。3時30分にホテルを出て,空港に向かいました。予定通りにクライストチャーチを離陸して,オーストラリア・ブリスベンで乗り換え,予定よりも30分早く,日本時間午後5時30分に成田空港に着きました。行きとは違い快晴のブリスベンからカンタス航空に乗った乗客のほとんどはオーストラリア人で,帰国のために乗っていた日本人はほとんどいませんでした。おかげで成田空港の日本人用の入国ゲートはガラガラでした。
ニュージーランド,今回はツキに恵まれすぎていて,毎日快晴で星空を堪能できましたが,私が思っていたほど晴天に恵まれるところでもないなあ,星を見る以外に何もすることがないところだなあ,というのが率直な感想です。ブリスベンから乗った飛行機で隣になった交換留学でブリスベンに1年滞在して日本に帰国する日本の大学生の女性の方とお話をしていて,オーストラリアのほうが晴天率が高そうなことがわかったので,今度はオーストラリアで星を見たいと思うようになってきました。いずれにしても,南十字星からマゼラン雲にかけて南天の星空はほんとうに素晴らしいもので,これだけは赤道を越えなければ見ることはできません。
南半球ではありませんが,次に私が南十字星と対面できるのは来年3月のハワイ旅行です。寒いニュージーランドに比べたら常夏の島ハワイのほうが,星を見るならともかく,観光地を求めるならずっと魅力的だというのが,今回の旅の私の結論でした。

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翌日,私はここにもう1泊して,再び別の星空観察ツアーに参加することにしていたので,お昼間はマウント・クックまでドライブを楽しむことにしました。天候が悪いときの予備日として2日間の滞在を予定していたのですが,天候に恵まれた結果,すでに目的は達成したので,この先はおまけの日程になりました。
朝は,昨日のお昼を食べた同じコーヒーショップでモーニングセットを食べました。私の宿泊したバカ高いホテルは,朝食も高価な別料金だし,Wifiは100MBまでしか使えないというこれもまたバカげた容量制限があって,まったくもって,単に暴利をむさぼるだけの悪徳リゾートホテルでした。私は宿泊しませんがハワイ島のリゾートトホテルも同じく,こういうホテルは大手旅行社とタイアップして集客をしているので,ツアーでやってきた団体旅行客はこういうところにお金を払っているわけです。こんな点は,ニュージーランドは私の嫌いな「せこい日本」に似ています。
ニュージーランドは車の運転も日本のように乱暴だし後ろから煽ったりするし,硬貨もやたらとでかくて重たいし,いろんな意味で私の日本の嫌いなところがありました。ニュージーランドは確かに人が少なく自然も豊かで美しいけれど,私は「せこい日本」が嫌いで海外旅行をしているのに,人の生活には日本にいるのと同じ感覚を味わったのでした。

マウント・クックまではプカキ湖の西の湖畔沿いを北に向かってきれいで雄大な風景を眺めながら往復4時間ほどのドライブでした。ものすごい展望と,緑色の美しい湖,そして,遠くに見える山々の雪をかぶった姿は,一見の価値があります。ただし,マウント・クック自体は雲がかかっていて,見ることができませんでした。
ニュージーランドの国立公園は,これもまた日本と同様に入園料が要るということもなく,アメリカとは全く違うのですが,いろんなサービスという点では,アメリカの国立公園のほうがずっと楽しいです。駐車場がほとんどなく車を停めるのに苦労します。
ニュージーランドではフィッシングをするとかトレッキングをするとか,そういったアクテビティを楽しまなければ,1週間も滞在するとすることがなくなります。星だって,毎日満天の星空が手に入ってしまうから,さしてすることもなくなります。
お昼過ぎにホテルに戻り,今日は日本料理店で昼食を食べました。食事も,日本と同じものが食べられます。午後は,近くのWifiのできる喫茶店でコーヒーを飲みながらゆっくりすごしました。なにせ,ホテルのWifiは容量制限を超えて,ネットすらできないありさま,とてもあり得ない話でした。

夜は,10時ずぎからの星空観察ツアー。今日はコーワンズ天文台ツアーというものですが,天文台といっても,実際は,近くの空き地に設置された望遠鏡で星を見ながら説明を聞くという,昨日と行き先が違うだけで内容は同じものでした。JTBのニュージーランド団体旅行ツアー御一行様の日程に組み込まれているオプショナルツアーらしく,それに参加した人と一緒でした。私は特に参加する必要もなかったのですが,事前に予約してあったし,満天の星空をみたいという目的をすでに遂げた私には適当な時間つぶしにはなりました。参加していたのは今日もまた無知丸出しのおばさんたち。こういう人たちには星空も京都で雑誌に載っているレストランでグルメを食べるのも同じ次元です。
ツアーが終わってから「善き羊飼いの教会」を風景に入れた星空の写真を写しにいきました。そこで写した写真が今日のブログの1番はじめに載せたものです。
しかし,世界でもっとも美しい星空の見られる場所といわれるそこにいたのは,これもまた,いつもの通り態度と声がでかく道徳心のかけらもない中国人の団体旅行ツアー御一行さんたち。彼らが大声で叫び雰囲気をぶち壊し,懐中電灯を振り回しせっかくの星空を光で照らしてしまうのです。
かくして,日本も含めた世界中の素晴らしい観光地は,彼らによってすべてが台なしにされていくのです。

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今日も夕方になると少しずつ雲が切れて来ました。私はニュージーランドに興味があったわけではなく,単に南半球の星空を見にきただけだから,少しでもチャンスがあれば星を見に行くことが最優先なのです。
アース&スカイのマウント・ジョン天文台のある山頂に行く星空観察ツアーの出発は深夜の0時過ぎです。太陽が沈んで空が暗くなるのが午後10時40分ごろと,南半球でもずいぶんと南に位置するこの場所は夏時間ということもあってかなり遅いのですが,それでも,日が暮れて空が暗くなってからツアーまでは1時間ほど星を見る時間がありました。日本とは違って車でほんの数分も町から郊外に走っていけばあたりは牧草地ばかりで真っ暗,どこでも満天の星空が広がっています。そこで,今晩もその間,星を見に出かけるとにしました。
ホテルを出てテカポ湖からハイウエイ8を少し西に走って行ったところに空き地があったので車を停めて外に出ると,ものすごく強い風が雲を蹴散らしはじめていて,今晩もまた,天気予報どおり本当に快晴になってきました。

寒いので一旦車に戻ると,車の窓からも鮮やかに星が輝いて見えます。運転席に座って,iPhoneにインストールしてあるステラナビゲーターを参考にしながら,日本では見られない星座を探していきます。まず天頂付近に小マゼラン雲が浮かんでいます。それを左にたどっていくと大マゼラン雲があって,南の空を地平線に向かって目を落としていくと,きしちょう座,みずへび座,くじゃく座,みなみのさんかく座,ふうちょう座,カメレオン座,はちぶんぎ座,みなみじゅうじ座… と面白いほど正確にステラナビゲーターどおりの南天の星空が目の前に見えるのです。明るい1等星はシリウス,カノーブス,アケルナル,リゲルケンタウルス,アクルックスなど,そのほとんどは日本では馴染みのないものばかりです。
再び外に出て,三脚に簡易赤道儀を乗せてカメラを設置し,極軸を合わせて写真撮影の開始です。時折,車がヘッドライトをつけて傍らのハイウェイを通り過ぎるので,その間だけ撮影を中止しながらも多くの写真を撮りました。
最も驚いたのは人工の光がないので,カメラのホワイトバランスを自動にしておいても星空のバックが赤や青ではなく黒く写るのです。こうして午後11時30分ごろまで夢中で写真を撮ってからホテルに戻りました。

深夜0時過ぎ,ホテルに星空観察ツアーの送迎バスが来ました。
参加者はものすごく多くて40人以上。来てみてわかったのですが,ここは団体の旅行ツアーがそのプログラムにこの星空観察ツアーを組み込んでいるのです。だから,日ごろ,まったく星なんかに興味のないおばさんたちがわけわからず参加しているのです。それにはげんなりしましたが,ともかく,これに参加しないと深夜の天文台には登れません。
山頂はかなり風が強く寒かったのですが,中止にもならず雲のない快晴の星空を堪能することができました。それにしても,この南天の星空が見たくて見たくて見たくてたまらない天文ファンも多いというのに,ほとんど興味もないようなこういう運のよいおばささんたちが満天の星空を見る機会があるのですから,天も罪作りです。なにせ,マゼラン雲を見ても単に雲が浮かんでいるだけだと思っていて感動のかけらもないし,南十字星を見ても「小さい!」と叫んでいるだけだし,宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を読んだこともないから石炭袋を見てもそれがなんだかわからないし,南半球まで来てアンドロメダ銀河や北斗七星が見たいだとか,わけのわからないことを言っているのですから困ったものです。
ともあれ,私は,夢にまで見た南天の星空を心ゆくまで堪能することができました。

この日,私の参加した星空観察ツアーより3時間ほど早い前の回のツアーは強風で中止になったそうです。私が牧草地で星を見ていた時間です。そのツアーには,私がクライストチャーチの空港で知り合った新婚さんが参加予定でした。彼らはもともとは偶然私と同じツアーだったのが,キャンセルがあって早い回になったのだそうです。
ここテカポ湖は晴天率70%で,お昼間に雲が出ていても夜になると風が雲を蹴散らして空が晴れるのだそうです。しかし,日本のように移動性の高気圧が覆うと2日ほど快晴が続く,という安定した天候ではないから,単に観光で星空を見るには適していても,天文台を建てて観測するには,あまり向いていない場所のように私には思えました。
また,ハワイ島でのマウナケア星空観察ツアーは,さすがに団体旅行のツアー客が押し掛けるということもないので,現地の日本語ツアーは少人数ですが,ここは完全に団体旅行のツアー客に占領されています。ただし,ハワイ島の星空観察ツアーよりもツアー会社自体はずっと良心的です。
しかし,自分で南天の天体写真を写したいという天文マニアは,ツアーに参加しなくても,私のように,近くの牧草地の空き地へ行けばどこでも写真を写すことができるので,そのほうがよいかも知れません。治安は問題ありませんし,日本と違ってクマもシカもいません。ただし夜は夜行性のウサギが飛び出てきます。

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私が当てもなく走っていったのは国道74で,着いたのはリッテルトン(Lyteiton)という港町だったのですが,そこからさらにほとんど車の通らなさそうな一般道を海岸沿いの高台まで走ったところにあった駐車帯に車を停めて,写真を写すことにしました。
空を見上げてはじめに目についたはひっくり返ったオリオン座でしたが,それ以外はどこに何があるのやら方角さえもさっぱりわかりません。さすがに南半球の星空はハワイとは違いました。しっかり予習して来たはずなんですがすべて消え失せました。南半球では日周運動は南の空が中心です。だから真南を見なくてはいけません。北の空には日本でも馴染みのある星座がひっくり返って見られます。
見上げること10分,だんだんと位置がわかって来ました。そうしたら南十字もマゼラン雲も確認できるようになってきました。すごい星空です。感動しました。私はこの日本では決して見られない南半球の星空が見たくて17時間も旅をして来たのです。
こうしてニュージーランド初日,テカポ湖へ行く前に,曲がりなりにも旅の目的を達成してしまいました。この旅で天気が悪くせっかく来たのに全く星が見られなかったらどうしようという心配はなくなりました。もう明日からは天気が悪くて星が見られなくても後悔することはありません。

こうして興奮冷めやらぬまま次の日の朝になりました。ぐっすり寝られたので時差ボケもありませんでした。
今日はクライストチャーチから車で3時間くらい走ってテカポ湖へ行くのです。クライストチャーチのホテルはそのままにして,テカポ湖の豪華なリゾートに2泊します。テカポ湖ではここしか空部屋がなかったのです。
実は,私はクライストチャーチとテカポ湖を毎日往復するつもりでいたのです。出発の数週間前に改めて調べてみて,そんなことは不可能だとはじめて知って,あわててホテルを探したのに,ほとんどが満室だったのです。もし,ここも満室だったら,私はどうしたというのでしょう?
途中,マクドナルドで朝食をとってハイウェイ1をずっと走りました。こちらのマクドナルドは自動注文マシーンがあるので便利です。
ハイウェイといっても片側1車線の一般道なのにここを100キロでビュンビュン走るのです。信号は皆無です。周りは森と牧草地とヒツジばかりなのですが,ときどき小さな町に着くと制限速度が50キロになります。
やがてテカポ湖に到着しました。
常になにかに怖じけづいたような無愛想な日本人と,ここでもまたずうずうしく声のでかい我が物顔の中国人がやたらと多いのです。みんなツアー客で,大型バスでやって来ます。さすが世界のリゾート地です。私は星を見るという目的がなければこんなリゾートには縁がありません。第一,テカポ湖がこんな有名なリゾートとは知りませんでした。
しかしここは湖のほとりに数件のお店とリゾートホテルががあるだけの小さな町です。お昼を食べに1軒のコーヒーショップに入って,サンドイッチとコーヒーを注文しましたが,店員さんが日本人でした。結構日本語が通じます。

数か月前まで,まさか私がテカポ湖に来るとは思ってもいませんでした。テカポ湖という名前は知っていましたが,ニュージーランドで星を見ると決めたときもテカポ湖に来るとは決めてなかったし,でもどういうわけか来てしまったことがとても不思議でした。
湖とその向こうに見える雪をかぶった山並みが美しいです。とはいってもここは美しい景色以外には見どころがあるわけでもなく湖岸の「善き牛飼いの教会」と山の上にあるマウント・ジョン天文台くらいです。そして極めつけが満天の星空です。と簡単にいうものの,それらがすべて日本では決して見られない,筆舌に尽くしがたいものです。
到着して早々車で天文台のある山の頂上に登ってみました。途中にゲートがあって5ドル払うとお昼間だけ登れるのです。夜は日本人の経営するアース&スカイという会社の行う星空観察ツアーでのみ登ることができます。標高1,500メートルくらいの山頂はものすごい風でした。ここにはニュージーランドや日本の大学が設置した4基の天体望遠鏡があります。その脇にガラス張りのカフェハウスがあってここが一般客に開放されています。カフェのなかは温室状態でした。コーヒーを飲んでいたら,日本から来た観光客の方と同席になりました。
山頂からのテカポ湖の風景を楽しんだあと,一度ホテルに戻り再び徒歩で夕食を食べに中国料理店に行きました。ほかのレストランは団体客の貸切でした。

空は到着したころは晴れていたのですがこの頃になるとすっかり曇ってきて絶望的に思えました。昨日は雨で,星空観察ツアーは中止になったそうです。iPhoneのアプリに「Wunderground」と「The Weather Channel」というのがあって現地の天気予報がわかるのですが,これが目まぐるしく変わるので,ほんとうのところあまりよくわからないのです。夕方の時点では空はどんよりと曇っているのに,そのとき,午後10時過ぎには晴れ上がるるという新しい予報に更新されました! それが本当なら,これを逃す手はありません。
今晩の予定は,深夜0時過ぎに出発するツアーに参加して,再びマウント・ジョン天文台に登ることになっているのですが,それまでどうしましょう? 本当に予報通り晴れるのでしょうか?

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ホテルにチェックインしてから,とりあえず車でダウンタウンまで行って,クライストチャーチの主だったところを観光しました。
行った場所は,ダウンタウンのカードボード・カセドラル,カセドラル・スクエア,リ・スタートでしたが,すべて震災の復興途中でした。この街は2時間もあれば歩いて観光できます。
ホテルに戻る前に夕食をと思っていたら,途中にデニーズがあったのでクラブサンドを食べました。この街には日本食のレストランもたくさんあるし,カルチャーショックは全く感じません。街を歩いていても日本にいるのとほとんど同じ感じです。決定的な違いは人が少ないことと自然が多いことだけですが,これこそが日本では手に入らない最大の魅力です。
しかし,これでは若い人が「遊学」に来るところではありません。言葉が英語ということを除けば,日本と全く変わりませんから生きる知恵は育めません。日本よりずっと楽に生活できるのです。アメリカをひとり旅するのに比べれば100倍は簡単です。

さて,ホテルに戻って,今度は近くにあるハグレイパーク(Hagley Park)へ歩いて行ってみたのですが,それがまた美しくむちゃくちゃ広いこと。しかも広場ではクリスマスコンサートをやっていて,すごく多くの人が集まっていました。街中の若者がみんな集まったような感じでした。他に楽しみもありませんから。
空を見上げると,ところどころ雲が切れて来ました。これなら少しは星が見られそうなので,急いでホテルに戻って星を見にいくことにしました。私はニュージーランドへ星を見にきたのです。
しかし,こちらはもうすぐ夏至ということで空が暗くなるのは夜11時過ぎだし,いかにニュージーランドの人口が少ないとはいえ,今日私がいるのは都会のクライストチャーチです。はじめて来た街で深夜にどこへ行って星を見たらいいのだろう?  しかも寝不足です。
ずいぶんと葛藤した結果,私のこの旅の目的は星を見ることなんだと言い聞かせ,ホテルに戻りシャワーを浴びて,カメラとレンズと簡易赤道儀と三脚を車に詰め込んで,あてもなく郊外の空が暗いところまで行ってみることにしました。ハイウェイを30分くらい走って海沿いの高台まで走っていって車を停めて外に出てみると,なんと快晴になった空には満天の星が!!!

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