しない・させない・させられない

Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.

USA50州・MLB30球場を制覇し,南天・皆既日食・オーロラの3大願望を達成した不良老人の日記

カテゴリ:星を見る > 彗星

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【Summary】
I observed the Comet Tsuchinshan-ATLAS (C/2023A3) on October 14, 2024, capturing its long tail with a 70mm lens. Despite some clouds, the comet was visible near Venus and Arcturus. They reflected on the difficulty of spotting comets, particularly for young people, due to the rarity of clear skies during significant comet events like Comet NEOWISE (C/2020F3)in 2020. I writer also noted the traditional beauty of the Thirteenth Night (October 15) Moon, though its brightness may make the Comet harder to see in coming days.

☆☆☆☆☆☆
 それにしても,紫金山・アトラス彗星(C/2023A3 Tsuchinshan-ATLAS)はいい時期に現れたものです。いくらすばらしい彗星といえども,天気が悪くては見ることができません。
 2024年10月14日。西の空低く雲があって,さすがに今日は,と思っていたのですが, 夕方になって,雲が切れてきました。昨日よりも高度が高くなるので,晴れていさえすれば,肉眼でも容易に見ることができるだろうと思いました。私のiPhone14手持ちでも簡単に写る大彗星なので,視野の広いものはiPhone14にお任せして,この日は,昨日よりも焦点距離を短く70ミリで写して,長~い尾を収めることにしました。

 10月14日に彗星の見える場所は,金星とうしかい座の1等星アークトゥルスの真ん中なので,見つけることはとても容易でした。昨日よりは少し空の状態が悪かったのですが,それでも,午後5時50分ごろには肉眼でも見えるようになり,思った通り,写真では長く尾を引いた姿を捉えることができました。
 とはいえ,慣れていないとなかなか難しいものです。流星群もそうですが,報道では「〇〇が見られる」と簡単に見ることができるかのように書いていますが,太陽や月が「見られる」のとは次元が違います。
 若い人の中には,はじめて肉眼で彗星を見た,という人も少なくはないようです。というのは,2020年7月に現れたネオワイズ彗星 (C/2020F3 NEOWISE)は,とても明るかったのですが,1週間ほどしか見ることができず,しかも,日本列島は沖縄と北海道を除いて連日天気も悪く,さらには,コロナ禍だったということもあって,見た人は非常に少なかったのです。
 そこで,彗星がどのように見えるか,という経験がないので,せっかく視野に入っていてもわからなかったり探せなかったりします。やはり,指導者が必要なのでしょう。せっかく天文ファンを増やすいい機会だというのに…。流星群もそうですが,一般のマスコミは自分で見てもいないのに記事を書くものだから,とてもいい加減なのです。
 とはいえ,今回の紫金山・アトラス彗星,肉眼では確認できなくても,スマートフォンを向けると,液晶画面で確認ができるのには驚きました。
 この日もまた,私は,彗星が地平線に隠れるまで見送りました。

 ところで,今日10月15日は十三夜。
 十三夜は,旧暦の13日の夜,主に旧暦9月13日の夜を指し,月見をする風習があります。
 中秋の名月である十五夜の後に巡ってくるので「後の月」, 栗や豆の収穫祝いを兼ねているので「豆名月」「栗名月」,また,中秋の名月とあわせて「二夜の月」(ふたよのつき)ともいいます。
 満月より少し欠けた十三夜の月が美しいというのは,極めて日本的な美意識だと思います。
 平安時代に書かれた「躬恒集」(みつねしゅう)の,旧暦・919年(延喜19年)9月13日に醍醐天皇が月見の宴を催し詩歌を楽しんだというのが十三夜の月見のはじまりといわれています。
 十五夜と十三夜のどちらか一方しか月見をしないことを「片見月」「方月見」といい,縁起が悪いとされています。さらに,旧暦の10月10日の十日夜(とおかんや)とあわせ,3日間月見ができると縁起がよいともいわれています。
  ・・
 十三夜の月は風流ですが,この先,月は満月に向けて明るくなっていくので,月明かりのために,彗星は見づらくなっていくかもしれません。

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【Summary】
On October 13, 2024, I successfully photographed the Comet Tsuchinshan-ATLAS(C/2023A3). At first, it wasn’t visible to the naked eye, but later, it became clear through binoculars and even visible to the naked eye, exciting me. This reminded me of the Comet Hale-Bopp(C/1995O1) in 1997, which was similarly impressive. The sky sometimes gives us incredible gifts.

☆☆☆☆☆☆
 昨日2024年10月12日,何とか写った紫金山・アトラス彗星(C/2023A3 Tsuchinshan-ATLAS)でした。翌10月13日は,昨日より高度が高くなり,昨日の撮影でどこに見えるのかという位置もはっきりとわかったので,ちょっと期待をもって,撮影に向かいました。
 とはいえ,どのくらいのものが見られるのかは見てみないことにはわかりませんでした。
 午後5時40分過ぎ,まだ双眼鏡でも見ることができない薄明のころに,すでに写真には捕えることができました。そして,午後6時過ぎ,次第に空が暗くなると,双眼鏡でも見えるようになり,カメラの液晶画面にもはっきりと彗星の像を見ることができるようになったので,撮影は楽でした。
 そして,彗星のいる位置を眺めていたら…。ついに,肉眼でもはっきりと見ることができるようになりました。これには興奮しました。おそらく,もっと条件のよい場所なら,よりすばらしい姿を見ることができたことでしょう。
 おふざけでスマホを取り出して,金星とうしかい座の1等星アークトゥルスが入るように手持ちで写してみると,それがまあ,ちゃんと写っているではないですか。すごい時代になったものです。

 午後6時20分を過ると,彗星は次第に高度を下げていったのですが,その核が沈むまで,肉眼ではっきりと見ることができました。さらに,核が沈んで見えなくなっても,尾だけが見られるという,とんでもない状態となりました。
  ・・
 ここで思い出したのが,今から27年ほど前の1997年春のことでした。
 明け方の東の空にヘール・ボップ彗星(C/1995O1 Comet Hale-Bopp)が見られるということで,空の暗い山に向かいました。そして目撃したのが,まだ核が昇っていないのにもかかわらず,尾だけが地平線からたなびくように見られた彗星の姿でした。やがて核が姿を現すと,何と,空がわずかに明るくなったのです。これには驚き,また,感動しました。
  ・・・・・・
 ヘール・ボップ彗星は1997年ごろに明るくなった大彗星です。
 近日点通過後には見かけの等級は-1等星にもなって,地球との位置関係がよかったために,肉眼で18か月も見ることができました。これは「1811年の大彗星」(The Great Comet of 1811= C/1811F1)の8か月を大幅に上回ったので,ヘール・ボップ彗星は「1997年の大彗星」(The Great Comet of 1997)といわれます。私が見た彗星の中でも最大のものでした。
  ・・・・・・
 ときどき,空は,予想もできないすばらしい贈り物をくれるようです。

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【Summary】
From October 11, Comet Tsuchinshan-ATLAS (C/2023 A3) became visible in the evening sky after sunset. While it was initially too close to the horizon and the sun to observe, it gradually rose higher. On October 12, after photographing near Venus as a guide, I successfully captured the comet with its tail. I now plan to take more photos in the coming days, hoping for clear skies.

☆☆☆☆☆☆
 以前,紫金山・アトラス彗星(C/2023A3 Tsuchinshan-ATLAS)について
  ・・・・・・
●10月11日ごろから
 彗星は日没後の夕方の西の空に,非常に明るい状態で見えるようになります。はじめは地平線ぎりぎり,次第に高度を上げてかみのけ座からうしかい座へ動いていき,ずっと見ることができるようになりますが,光度は下がり,暗くなっていきます。
  ・・・・・・
と書いたように,夕方の西の空に昇ってくるようになりました。
 どのくらい明るくなっているか,とても楽しみでした。10月11日ごろはまだ太陽に近いので,空が明るいうちに沈んでしまいます。いつから見ることができるのか,それもまた,楽しみでした。
 空の暗い北海道などへ遠征すれば,もっとすばらしい写真が写せるのでしょうが,今の私にはそんな気力もなくなってしまったので,できるだけ家の近くで,西の空が開け,かつ,暗い場所を探しました。で,何とかそんな場所を見つけたので,そこで写真を撮ることにしました。

 このところ,これまでの天気がウソのような晴れ渡った秋の空になりました。
 10月11日は写りませんでした。
 そして,10月12日。
 この日もまた,金星を手掛かりに彗星がいると思われる場所を狙って,写真を撮ることにしました。まだ双眼鏡でも確認できるような空の暗さでないので,彗星の位置もわかりません。そこで,金星と地上の風景を手掛かりにどの位置にいるかを,焦点距離35ミリのレンズで写して確かめてみました。それが今日の2番目の写真です。写真の左端に金星が写っていますが,APS-Cサイズの場合,焦点距離35ミリレンズの画角では,こうして金星を入れると右下の位置に彗星がいるのです。
 ただし,この空の明るさだと,彗星は,広角レンズでは写りません。
 おおよその位置がわかったので,焦点距離100ミリのレンズに変えて,位置を特定した場所に向けて,写しました。そして,立派な尾がある彗星を写すことができました。
  ・・
 これで,彗星がどこにいるか,どのくらいで写るかがわかりました。
 今日10月13日は,金星と同じ高度まで上がってきます。おそらく,この日よりも明確になると思うので,今度は,もう少し工夫して写真を写したいと思います。これからも晴れの日が続くといいのですが…。

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【Summary】
On October 1, after several cloudy days, I finally managed to capture the Tsuchinshan-ATLAS comet (C/2023 A3). Despite challenges with its low altitude and increasing daylight, I successfully photographed the comet alongside the moon. Capturing low-altitude comets is difficult without automated telescopes, and this may be my last chance to photograph it before it sets.

☆☆☆☆☆☆
 2024年9月26日に何とか写すことができた紫金山・アトラス彗星(C/2023A3_Tsuchinshan-ATLAS)。その後も毎朝,写そうと早起きをしては空を見上げていたのですが,毎日,同じように,厚い雲に覆われていて,星のひとつも見えない日々が続きました。それでも,10月1日は晴れそう… という天気予報だったので,期待して,この日も早起きをしました。
 午前4時ごろに起床して,今日は晴れているかな,とベランダに出て空を見上げると,雲がなく,ひさしぶりに北極星が輝いていました。すると,偶然,ものすごい火球が飛ぶのを目撃しました。あんなに明るい火球を見たのははじめてでした。写真を写せなかったことだけが残念でした。

 こうして,晴れていることを確認して,カメラと三脚をもって外に出ました。雲ひとつありませんでした。東の空低く月齢28.0の月が輝いていました。
 紫金山・アトラス彗星の位置は9月26日に確認済みなので,画角を135ミリにすれば,正確な位置がわからなくても容易に写せるものだと思っていたのですすが,写りません。あとで確認すると,午前4時52分に写した写真から写っていたのですが,その時点では確認できませんでした。彗星は,午前4時35分ごろに地平線から上ってきているのですが,あまりに高度が低く,写らなかったようです。つまり,淡い彗星は,午前4時50分過ぎ,空が少し白みはじめたころに,ISO1600では,1秒以上の露出をかけないと,彗星は写らなかったのです。
 どうして写らないのかな? と思いつつ,あきらめムードで,こうなったらズームレンズの焦点距離を300ミリにしようと思って,適当な場所を狙って写すと,何とはっきりと彗星状の天体が写っているではないですか。これには興奮しました。その後,位置を調節して,やっと,思い通りの彗星の姿をとらえることができました。
 最後に,焦点距離を70ミリにして,彗星と月を1枚の写真に収めることができました。
 名古屋市の明かりが煌々と空を照らす灰色の東の空でこれだけ写れば十分です。

 据付の望遠鏡があって,自動で彗星を捉えることできるならともかく,こうした高度が低い彗星のような天体を写真に収めるのは,簡単なことではないな,と思いました。
 この後の数日,紫金山・アトラス彗星は高度を下げていき,また,天気も悪いようなので,明け方の空で写真に収めることができるのは,おそらくこれで終わりだと思われます。果たして,10月11日すぎ,夕方の西の空に現れるときはどのようになっていることでしょうか?

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【Summary】
I attempted to photograph the Comet Tsuchinshan-ATLAS (C/2023 A3) from September 24-26, 2024, despite cloudy conditions. On September 26, they finally captured the comet under a brief clearing in the clouds. It appeared brighter than Mercury, around first magnitude, raising hopes for its visibility in the evening sky in October.

☆☆☆☆☆☆
 2023年2月22日に発見された紫金山・アトラス彗星(C/2023A3 Tsuchinshan-ATLAS)は,2024年9月末に太陽に0.4天文単位まで接近し,0等まで明るくなる,という予報でした。すでに,どのように見ることができるかはブログに書きました。
 これまで,「紫金山・アトラス彗星は,既に彗星核の断片化が進行しており,このままだと近日点通過(太陽に再接近)する前に消滅するという,最近の観測結果に基づいた非常に厳しい予想を立てた論文のプレプリントが公開さました」とか,「紫金山・アトラス彗星が10月9.4日ごろに-4等級よりも明るくなるとの予測」とか,接近前からいろいろと話題でしたが,ついに,接近を迎えました。

 見えようと見えまいと,体験してみなければわからない,ということで,まずは,私がブログに書いた
  ・・・・・・
●9月27日ごろから10月5日ごろ
 彗星は,明け方午前5時くらいに,太陽が昇る寸前の東の空低く,うみへび座に1等星から0等星の明るさで現れるのですが,高度が非常に低く,どのように見ることができるかはわかりません。
 彗星が大化けすれば,ひょっとして,ものすごく明るい彗星が薄明の中で確認できるかもしれません。
  ・・・・・・
にしたがって,9月27日より早い9月24日から彗星を写真に収めようと実験をはじめ,連日,午前4時に起きて,午前4時30分から午前5時まで,彗星が見られる方向にレンズを向けることにしました。しかし,9月24日も9月25日も,そしてまた,9月26日も,空は雲に覆われていて,どうしようもありません。

 もし,天気がよければ,少し遠出をしようと思っていたのですが,その気もすっかりなくなって,自宅の近くで,とりあえず写真を撮ってみることにしました。
 雲を通してシリウスは見えていたので,雲は薄く覆っているだけなのかな,もし,彗星が明るかったら写るかもしれないなあ,と期待しました。
 しかし,家に戻って調べてみても,9月24日も9月25日も何も写っておらず,がっかりしました。
 9月26日はさらに深く雲に覆われていたのですが,東の空の低空の部分だけなぜか雲が切れていたので,淡い期待をもってこの日も懲りずに写真を撮りました。そして,家に帰ってから調べてみると… 何と,彗星状の天体がはっきりと確認できました。毎日早起きをしていたので,神様がプレゼントをくれたようです。今日の写真は,9月26日の午前4時48分に,ISO1,600,露出時間1.3秒で写したものです。
 経験上,このような低空では,水星を写すのもやっとなので,その経験から,紫金山・アトラス彗星は水星よりも明るく,1等星くらはありそうです。この様子なら,10月11日ごろに夕方の西の空に現れるときが楽しみです。今度は早起きしなくてもいいし。

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 M31アンドロメダ銀河に接近したり,木星に接近したりと,話題もたくさんあったポンス・ブルックス彗星(12P/Pons-Brooks)も,そろそろ見納めです。夕方の西の低空,しかも春霞の中となると,条件は悪く,期待以下になってしまいました。天気が悪い日の多く,満足に見ることができませんでした。
 せめて,明け方の東の空だったら,少しはマシだったのに,と思いました。

 悪いコンディションだったポンス・ブルックス彗星でした。
 こうしたときに思い出すのは,オーストラリアで星を見たときのことです。日本とは違い,太陽が沈むや否や,澄んだ空に星が見えてきて,日没後1時間もすれば,地平線まで満天の星が輝いていました。そういう環境なら,さぞかし,肉眼でも,ポンス・ブルックス彗星のすばらしい姿を見ることができたのになあ,ということでした。
 日本の灰色の濁った空では,もちろん,双眼鏡でもその姿を見ることは無理で,写真を撮ると,かろうじて写るくらいのものでした。ならば,少しは空のきれいな山奥へ行こうとしても,高度が低いから山に隠れてしまって,姿を見ることはできません。では海岸に行けば,ということですが,2020年7月,ポンス・ブルックス彗星と同じように,夕方の西空に見えたネオワイズ彗星(C/2020F3 NEOWISE)は,世紀の大彗星だったので,私は,最高の条件で見ようと,北海道のサロベツ原野まで出かけたのですが,4等星程度の彗星ではそこまでの情熱も湧きませんでした。

 せめてもと,私が密かに最後の期待をしていたのは,2024年4月10日でした。
 この日は,ポンス・ブルックス彗星は木星の5度下にあって,その右横に月齢1.7が接近したことで,木星と月とポンス・ブルックス彗星を入れた写真を写そうと思っていたのですが,天気が悪くて見ることができず,落胆しました。
 もう,日本で美しい彗星の写真を写すなどということを期待すること自体,考えないほうがよいのかもしれないなあ,と感じたことでした。

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 2024年2月12日は,天気がよく,太陽やら月やら彗星を写すのに忙しい日になりました。というか,自分で勝手に忙しくしていました。
 まず,太陽です。
 現在,太陽の表面にすごくたくさんの黒点があります。そこで,何となく写したのが1番目の写真です。数年前には,まったく黒点がなかったのがうそのようです。
  ・・・・・・
 太陽の表面にあらわれる黒いはん点を太陽黒点とよびます。黒点はふつう中央の暗部とまわりの半暗部からなっており,暗部の温度は約4,000度,半暗部は5,500度です。光り輝く太陽の表面の温度は約6,000度なので,,温度の低い黒点の部分が暗いはん点として見えるのです。
 太陽全体では約11年の周期で,表面にあらわれる黒点の数は増減し,黒点周期とよばれます。
  ・・・・・・
 ということで,私は,特に太陽に興味があるわけでもないのですが,2017年に,アメリカで皆既日食を見るために持っていこうと購入し,太陽観測用に改造した,安価で軽いMILTOLという望遠鏡が役割を終え,そのままではもったいないで,自宅で太陽の黒点を撮影するために使っているのです。ちなみに,今年,2024年4月8日,再び,アメリカ横断皆既日食があります。

 次が月です。
 2月12日は月齢2.4。月の満ち欠けなど,珍しくもないのですが,この時期は空が澄んでいるので,とりわけ美しいのです。そこで,まだ,太陽が沈むまえに写したのが,2番目の写真です。その後,太陽が沈んだら,とりわけ美しい地球照が見えるようになったので,再び写したのが3番目の写真です。
  ・・・・・・
 地球照は,月が欠けて暗くなっている部分が地球に照らされてうっすらと見える現象です。英語には「the old moon in the new moon's arms」という慣用句があります。
 これは,地球が反射した太陽の光が再び月の夜の部分を照らし,その光がまた地球に反射して見えるのです。太陽が地球を照らして反射する明るさは,満月の70倍もあるので,青く輝く地球の光が月面の影の部分を照らすのです。
  ・・・・・・

 そして,最後がポンス・ブルックス彗星(12P/Pons-Brooks)です。午後7時25分に写しました。
 先月1月11日にも写しましたが,それから1か月過ぎて,かなり明るくなりました。2か月後には最も明るくなるので,楽しみです。
 しかし,夕方の西の空低い位置にいるので,よほど空の開けた,しかも暗い場所があるところでないと,捉えることが困難です。また,明け方の北東でも見られるのですが,こちらもまた高度が低く,さらにむずかしいでしょう。

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 2024年はふたつの明るくなる彗星が接近するようです。
 そのひとつは,「紫金山・アトラス彗星」(C/2023A3 Tsuchinshan-ATLAS)で,この彗星についてはすでに書きました。もうひとつがポンス・ブルックス彗星(12P/Pons-Brooks)。今日はそのお話です。
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 ポンス・ブルックス彗星は周期70.06年の周期彗星です。有名なハレー彗星は周期75.32年なので,同じような周期で,しかも,ともに明るくなるのですが,ハレー彗星ほど知られていません。
 近日点通過,つまり太陽に最も近づくのは2024年4月20日で,その距離は0.7780天文単位,近地点通過,つまり地球に最も近づくのは2024年6月2日から3日で,その距離は1.546天文単位です。1天文単位は地球と太陽の平均距離をいい,約1億5千万キロメートル,正確には149,597,870,700メートルです。
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 ポンス・ブルックス彗星は,1812年7月21日にジャン・ルイ・ポン(Jean-Louis Pons),8月1日にヴィンセント・ウィズニフスキー(Vincent Wisniewski),8月2日にアレクシス・ブヴァール(Alexis Bouvard)によって発見され,それらは同じ彗星として,エンケ彗星(2P/Encke)で有名なヨハン・フランツ・エンケ(Johann Franz Encke)が70.68年の周期を持つ軌道を計算しました。
 その70年後の1883年,ウィリアム・ロバート・ブルックス(William Robert Brooks)によって再発見されたことで,ポンス・ブルックス彗星となりました。
  ・・・・・・

 今回の接近は,2020年6月10日にアメリカ・ローウェル天文台(Lowell Observatory)のディスカバリーチャンネル望遠鏡により,23等星で太陽から11.89天文単位離れていたときに検出されました。
 その後,順調に太陽に近づき,光度を上げ,春に4.5等星まで明るくなるといわれていますが,昨年2023年7月20日に5等級の爆発現象(アウトバースト)を起こして11.5等まで急増光,11月15日には再びアウトバーストを起こして,9.4等まで急増光したということです。
 彗星は,惑星を作った構成物質(planetesimals)の生き残りで,太陽系形成以降46億年間,太陽系の果てで冷凍保存されてきたものが何かのきっかけで太陽系の内側に入り込み,太陽の熱による氷の昇華で物質を巻き散らかしているものです。こうしたアウトバーストでは,放出されたエネルギーはマグニチュード7.0に匹敵し,彗星核の地下にあるエネルギーが爆発していると考えられますが,彗星は一旦アウトバーストを起こすと表面の不活性層が剥ぎ取られて活発に活動し,数年のうちに枯渇するといわれているので,ポンス・ブルックス彗星の将来が心配されますが,次の回帰は70年も先のことです。

 さて,ポンス・ブルックス彗星は現在ははくちょう座にあって,夕方の西北西の空に午後8時30分ごろに沈むまで8等星程度で見えます。今日の1番目の写真は,2024年1月11日午後7時35分に写したものです。
 1か月ほどははくちょう座を北に向かって進むので,彗星としては地平線からほぼ同じ高度を保ち続けながら西の方向に動いていき,それとともに明るくなっていきます。4月10日くらいが最も明るく4等星ほどになります。その後は日没が早くなって,見えなくなります。つまり,太陽に近づきます。

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ISS.

2024年1月15日午後6時15分。
国際宇宙ステーションが月の横を通過しました。


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 数年に1度,肉眼でも見える彗星が地球に接近します。条件がよいと,長い尾を引いた美しい姿を見ることできます。今日の1番目から3番目の写真はこれまで私が写した大彗星の写真です,1番目は百武彗星(C/1996B2 Hyakutake),2番目はヘール・ボップ彗星(C/1995O1 Hale-Bopp),そして,3番目はネオワイズ彗星(C/2020F3 NEOWISE)です。

 今回は,2023年2月22日に発見された紫金山・アトラス彗星(C/2023A3 Tsuchinshan-ATLAS)が2024年9月末に太陽に0.4天文単位まで接近し,0等まで明るくなる,といううれしいニュースが飛び込んできました。
 私は,不快になるだけなので,マスコミや口コミなどの情報はすべて遮断しています。そこで,自分に必要な情報は,公式のものをインターネットから手にいれていますが,この情報は,2月28日の「CBAT」(=The Central Bureau for Astronomical Telegrams)#5228 が発信したものです。
  ・・・・・・
 小惑星地球衝突最終警報システム「ATLAS」(=Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System)では,全天を24時間カバーするために,110メガピクセルCCDアレイカメラを搭載した口径50センチメートル f/2のライトシュミット望遠鏡が世界中に8台あって観測を行っています。そのうち,南アフリカのサザーランド(Sutherland)にある南アフリカ天文台(South African Astronomical Observatory=4番目の写真)に設置した望遠鏡が2月22日に撮影したCCD画像から彗星を発見しました。
 中国の紫金山天文台(=5番目の写真)でそれ以前の2023年1月9日に撮影した写真に同じ天体が写っており,特定できたので,この名前がつけられました。
  ・・・・・・
 その後の観測で,彗星の軌道が明らかになって,いつ見ることができるかわかったので,今日はそれを紹介します。

●2024年5月末から7月25日ごろ(下から5番目の星図)
 5月末にには彗星は10等星くらいの明るさになって,夜,太陽が沈んだあとの西の空,おとめ座からしし座にかけて移動する彗星を確認できるようになります。
  ・・
●7月末から9月末
 地球から見たとき,彗星は太陽に近づくために2か月の間,彗星を見ることができなくなります。
  ・・
●9月27日ごろから10月5日ごろ(下から4番目の星図)
 彗星は,明け方午前5時くらいに,太陽が昇る寸前の東の空低く,うみへび座に1等星から0等星の明るさで現れるのですが,高度が非常に低く,どのように見ることができるかはわかりません。
 彗星が大化けすれば,ひょっとして,ものすごく明るい彗星が薄明の中で確認できるかもしれません。
  ・・
●10月6日ごろから10月10日ごろ
 見かけ上,再び彗星は太陽に近づくので,見ることができなくなります。
  ・・
●10月11日ごろから(下から3番目から1番目の星図)
 彗星は日没後の夕方の西の空に,非常に明るい状態で見えるようになります。はじめは地平線ぎりぎり,次第に高度を上げてかみのけ座からうしかい座へ動いていき,ずっと見ることができるようになりますが,光度は下がり,暗くなっていきます。

 今のところ,このような感じだと思われますが,最も明るい時期に見ることができないとはいえ,10月11日を過ぎると,長い尾を引いた鮮やかな姿を見せてくれることでしょう。
 来年が楽しみになってきました。

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 このところ,星見にあわただしく過ごしています。とはいえ,何事もさら~っと片づけたいと思っている私は,惑星や月がきれいならばすぐにカメラと三脚を持ち出して写真を写し,彗星が明るければ近くの暗いところに出かけて望遠鏡を組み立てて写真を撮ってくる,といったことを短時間ですまそうと考えているのです。それは,星見に限らず,旅行でも同じです。行きたいと思ったら躊躇せずサッと出かける。わざわざ,ということをしたくないのです。

 このところ明るくなったZTF彗星(C/2022E3)ですが,そろそろ月が明るくなって,彗星も全盛期を過ぎていくので,これが最後と,2023年2月1日の早朝,写真を撮りにいきました。もう月の影響が強く,沈むのが午前4時過ぎになってしまったので,その後の30分程度が勝負でした。
 遠出をしたくなくなったこの時期に出かけている近くの場所は,着いてみたらめずらしく先客がいたので,少し場所を変えることにしました。寒空の下,私以外にモノ好きがいるのだなあと感心しました。星見というのは複雑な楽しみで,人と交わりたくないのです。私は釣りをしませんが,釣りの場合はどうなのでしょう?
 望遠鏡を組み立てたときは,3番目の写真のように,まだ,西の空に月が幻想的に輝いていたので,沈むのを待つことにしました。月の光が川に反射してとてもきれいでした。この日はおそらく彗星が最も明るくなるころなのですが,調べてみて驚きました。前回写したのがわずか数日前だったのに,位置がずいぶんと変わっていて,つまり,彗星が動いていて,きりん座にいたからです。きりん座という地味な星座には明るい星がありません。前回はこぐま座にいたので,明るい星を手掛かりに簡単に見つけることができたのですが,これには困ったな,と思いました。私は,お金をまったくかけないので,というか,余分なものを一切もたないので,自動導入装置などはありません。
 しかし,案ずるより産むがやすし,というか,彗星が明るかったので,双眼鏡を使うと簡単に見つかりました。そこで,頭の中に双眼鏡で見た北極星から彗星までの星の並びを覚えて,それを手掛かりに望遠鏡のファインダーで彗星を導入しました。今回は30秒露出を30回行って,家に帰ってからコンピュータでメトカーフコンポジットしました。それが今日の1番目の写真です。

 せっかくなので,もうひとつ別の彗星を写すことにしました。それがパンスターズ彗星(C/2022 A2)です。この彗星もすでに前々回に写したのですが,今回は複数枚写してコンポジットすることにしました。こちらもまた,位置を調べてみて驚きました。前々回よりずっと高度が下がり,しかも,街明かりのある東の空に埋もれていました。なんとか位置を決めて写したのですが,カメラのプレビューを確認しても,確かにその位置に彗星があるはずなのに,一見,彗星状の天体が写っていません。よくよく探すと,実は思ったよりずっと小さいのでした。何とか確認して数枚写しました。それが今日の2番目の写真です。
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 パンスターズ彗星(C/2022 A2)は2022年1月10日に20.5等星で発見された彗星です。名前のとおり,ハワイ・マウイ島ハレアカラ(Haleakala)にあるハワイ大学の1.8メートルPan-STARRS2 望遠鏡を使用するパンスターズ・プロジェクトの大規模の天体捜査網で得た画像から発見されたものです。
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 ところで,以前書いたことがありますが,「かわたれどき」(彼は誰時)ということばがあります。人の見わけがつかないから「彼は誰」時なのですが,はっきりものの見わけのつかない薄暗い時刻のことを意味することばで,万葉集の時代からあります。一方,2016年の映画「君の名は。」で「かたわれどき」ということばが生まれました。それ以来,「かたわれどき」は夕暮れどきや夕方のことを指し,「かわたれどき」は明け方や朝方を指しているとされるようになりました。
 「かわたれどき」と「かたわれどき」。私は,何にも増して,このころの空の美しさが最高だと思っていますが,特に,その空に,水星や金星,さらに,薄い月が輝いていればもっときれいです。
 1月31日の「かわたれどき」には西方最大離角を終えたばかりの水星が高い高度で輝いていたので,これを朝6時前に写したのが今日の6番目の写真です。また,この日の「かたわれどき」のころから輝いていたのが月と火星でしたが,さらに少し時間が遅くなって空が暗くなると,そのバックにあるヒヤデス星団とプレアデス星団がかろうじて見えるようになりました。しかし,なにせ月が明るすぎるので,これをはっきり写すことができないのです。それは,露出をかけると月がどんどんと大きくなってしまい,その影響で空全体が明るく星が消えてしまうし,露出少ないと月の表面の模様ははっきり写りますが,今度は星が写りません。人の目には月の表面の模様も星団も両方見えるのが私には不思議です。そんな中,なんとか露出の塩梅を見つけて写したのが今日の7番目の写真です。
 まだまだ寒い毎日ですが,晴れていれば,このように,夜空にはこんなにたくさんのときめきがあるのです。

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 1度は写そうと思っていたZTF(ズィーティーエフ)彗星(C/2022E3)ですが,2023年1月17日の深夜に写すことができたので,すっかり満足していました。それから1週間ほどした1月末から2月はじめにかけて,5等星くらいまで明るくなり,しかも北極星に近い,一晩中沈まない周極彗星となるので,晴れていたら最も高度が高い午前4時ごろに見にいこうとずっと思っていたのですが,寒波が襲来して,星見どころか雪の心配が強くなっていました。それでも,1月28日の早朝は,昨日の雪も消え,快晴の予報だったので,寒さに打ち勝って再び見にいくことにしました。
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 ZTF彗星(C/2022E3)は,2022年3月にパロマ山で行われている観測プロジェクト「ZTF」で発見された,オールトの雲からやってきた彗星です。この彗星は発見からおよそ10か月後の今年2023年1月13日に太陽に最接近しましたが,その距離は太陽と地球間の距離よりも遠く,あまり明るくなりませんでした。その後,彗星は地球に接近し,2月2日の地球との最接近では約4,250万kmと,太陽と地球間の距離の30パーセントという近い距離になるので,現在,次第に光度を増しています。
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 午前3時に起床して,出かける準備をして,観測場所に着いたのが午前3時40分ごろでした。今回はZTF彗星(C/2022E3)を写すことだけが目的だったで,望遠鏡を組み立て,極軸を合わせ,彗星を視野に入れて,午前4時に撮影をはじめて,午前4時40分には帰宅していたので,その間わずか1時間でした。
 彗星はとてもわかりやすい位置にいて,望遠鏡のファインダ―でそれらしき位置を確認すると,簡単に彗星をファインダーで見ることができました。5等星くらいで,双眼鏡を向けると,感動的な美しさでした。彗星は地球に近い位置にいるので動きが早く,町に近く空が明るいので露出は30秒として,10枚程度撮影して,帰宅してからコンピュータでメトカーフコンポジットすることにしました。メトカーフコンポジットというのは,彗星の動きに合わせて写した複数枚の写真を合成してくれることで,天体画像処理ソフトウェアの「ステライメージ」を使うと,自動でやってくれます。便利な時代です。
 もっと暗いところで写せば長く尾が伸びた姿が写せることでしょうが,この寒さでは行く気になりません。
 ZTF彗星(C/2022E3)は,次第に地球から遠ざかります。見かけ上は,おうし座の方向に進み,次第に光度を落とします。また,月齢が増すので,明かりの影響で,見るのが困難になってきます。その先は太陽系の彼方に飛びさってしまうのですが,太陽に接近したことで離心率が小さくなりつつあり,現在の双曲線軌道から楕円軌道に変化し,将来的には,周期5万年程度の長周期彗星となるそうです。

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 天気がずっと悪かったことと,めぼしい彗星がなかったことと,引っ越しで忙しかったことで,しばらく星見に行くこともありませんでしたが,明るい彗星が近づいてきたので,2023年1月17日の早朝午前3時,家の近くに,彗星の写真を写しに出かけました。

 明るい彗星の名前は,ZTF彗星。ZTFはズィーティーエフと読むそうですが,変わった名前です。これまで聞いたこともありませんでしたが,調べてみると,すでに,2020V2,2021D2,2021E3,2021N1,2022P2,2022P3,2022E3と,7個の彗星にZTFの名前がつけられています。
 ZTFはウェイブページに
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 The Zwicky Transient Facility (ZTF) is a public-private partnership aimed at a systematic study of the optical night sky. Using an extremely wide-field of view camera, ZTF scans the entire Northern sky every two days. The resulting large area survey will enable the astronomical community to pursue a broad range of time-domain science ranging from near-Earth asteroids to the study of distant superluminous supernovae. ZTF is funded in equal part by the US National Science Foundation and an international consortium of universities and institutions.
  ・・
 (天文学者フリッツ・ツビッキー(Fritz Zwicky)にちなんで名づけられた)ツビッキートランジェント天体探査装置(The Zwicky Transient Facility=ZTF)は,光学を使って夜空の体系的な研究を目的とする官民パートナーシップです。ZTFは非常に広い視野カメラを使用して,2日ごとに北の空全体をスキャンします。広い領域を調査することで,地球に接近する小惑星から遠方の超新星に至る幅広い領域を天文学的に追求できる結果をもたらします。
  ・・・・・・
とありました。
 どうやら,この,ZTFによるサーベイもまた,地球接近天体の大規模検出プロジェクトのひとつのようです。使われる機材は,カリフォルニア州パロマ天文台にある「サミュエル・オシン望遠鏡」(The Samuel Oschin telescope)に取りつけられた新しいカメラです。「サミュエル・オシン望遠鏡」は,口径48インチ,126センチメートルのシュミットカメラで,9.75 インチのシュミット補正板と72インチ反射鏡で構成されています。ここに新しく取りつけられたのが,6,144×6,160ピクセルの16個のCCDで,1回の露出で47平方度の領域をカバーし,超新星,ガンマ線バースト,ふたつの中性子星の衝突,彗星や小惑星などの移動物体など,明るさが急速に変化する一時的な物体を検出するように設計されているということです。
 日本でも,木曽観測所にシュミット望遠鏡があって,少ない予算の中で現在はトモエゴゼンという名のついたCCDで天体の捜索をしていますが,さすがアメリカ,日々進化して,最新の装置に次々交換して成果をあげているようです。
 なお,フリッツ・ツビッキーは,1898年に生まれ1974年に亡くなった,アメリカで活動したスイス国籍の天文学者です。1930年代にウォルター・バーデ(Wilhelm Heinrich Walter Baade)とともに超新星が中性子星に移行する過程であること,超新星が宇宙線の発生源であることを示唆する論文を発表しました。また,パロマ天文台にサムエル・オシン望遠鏡の前身となる超新星探索用のシュミット望遠鏡を設置させるのに成功し,100個以上の超新星を発見しました。

 さて,私の目的は,ZTF彗星のうちC/2022E3という符号のついたもので,現在は北極星近くのうしかい座にいて,深夜に昇ってきます。やっと月明かりの影響がなくなってきて,しかも,天気がよさそうだったので出かけたのですが,午前3時の気温は2度でした。東の空低く,昇ってきたばかりの月齢25.4の月が赤く輝ききれいでした。このくらいの月齢だと星の光にはあまり影響はありません。街中だというのに,空は澄んでいて,うしかい座の星の並びが確認できたので,簡単に位置を特定し,写すことができました。約6等星で,彗星らしい姿が写りました。今日の1番目の写真です。
 さらに星図を見ていると,その下方,りゅう座に約9等星のパンスターズ彗星(C/2022A2 )が,そして,北極星を挟んで反対側のカシオペア座に約10等星で別のZTF彗星(C/2020V2)がいたので,これもまた,簡単に場所がわかって,写すことができました。それぞれ今日の2番目と3番目の写真です。
 C/2022E3は北極星を巻くようにして東から西に動いていって,1月下旬から2月上旬にはさらに明るくなるようなので,今後が楽しみです。

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太陽面に黒点がいっぱい。

左下の最も大きなものは
日食グラスを使って
肉眼でも見ることができました。New1az


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 今年はずっと天気が悪いこととともに,これまで明るい彗星も現れず,星見に遠出することもありませんでした。また,海外に行くことができないので,毎年春に行っていたオーストラリアでの南天の星空とももすっかりご無沙汰です。
 さて,今見える10等星以上の明るい彗星はただひとつ,パンスターズ彗星(C/2017K2 PanSTARRS)です。
 長い間見えているのですが,現在は8等星ほどで,へびつかい座にあって,高度も高く,非常に見やすい位置にいます。これから太陽に近づくにつれてもっと明るくなっていきますが,日本からは高度が低くなっていくので,秋を過ぎると見ることができなくなります。
  ・・・・・・
 ハワイ・マウイ島のハレアカラで行われているパンスターズプロジェクト(Pan-STARRS=Panoramic Survey Telescope and Rapid Response System)は,4台の望遠鏡を使って全天をサーベイし,移動天体や突発天体を検出するものですが,このプロジェクトによって,これまで数多くのパンスターズ彗星が発見されてきました。このパンスターズ彗星(C/2017K2 PanSTARRS)は,2017年5月21日に確認されたものです。
 発見されたときは,まだ,太陽から約24億キロメートルも離れた土星の軌道を超えた距離にあって,太陽から非常に遠いのにもかかわらず,すでにかなりの活動を示していました。また,正式な発見以前にも多くの写真の中に写っていました。この活発な活動は,非常に明るくなったヘール・ボップ彗星(C/1995O1)と同じようなものだったのですが,残念なことに,このパンスターズ彗星は太陽にあまり近づかないので,ヘール・ボップ彗星ほどには明るくなりません。
 2022年7月14日には地球に2億7,000万キロメートルまで近づき,また,2022年12月19日に近日点に到達し,そのころには日本から見ることができませんが,5等星ほどになると期待されています。
  ・・・・・・

 私は,7月1日から1泊2日でいつもの木曽駒高原のペンションに避暑に行きました。毎年,5月の新月のころに行くのですが,今年は天気がすぐれなかったことや時間がなかったことで,この時期になってしまいました。
 しかし,このところ晴天が続いていた天気は下降気味だったのであまり期待もせず,星見はほぼあきらめていたのですが,念のためと望遠鏡とカメラを持参し,このパンスターズ彗星の位置だけは調べておきました。
 7月1日,到着したときはは雲が多く,時折,雷が鳴っていました。意外にも予報では午前2時を過ぎると晴れるということだったので,ひょっとしたらと,夕食後午後8時には寝ました。目覚めたのが翌日の午前1時でしたが,空を見上げると,満天の星が輝いていました。
 これには驚きましたが,晴れ男の私がこのペンションに行ったときに星が見られる確率はほぼ100パーセントなのです。
 ということで,午前1時過ぎから夜が白む午前3時過ぎまで,今回も星見を堪能することができました。

 とにかく,まず写したのがパンスターズ彗星(3番目の写真)でしたが,これは簡単に写せました。しかし,これまでの多くの星見で写したかった天体はほぼ撮り終えてしまっているので,それ以外には何も考えていなかったので,ならばと,写真映えのするM31とM33を写しました(4番目と5番目の写真)。
 それよりも,この晩に私が写したかったのは,空の暗い所でしか写せない夏の銀河の姿でした(1番目の写真)。
 この時期は,何といっても銀河,天の川なのです。天の川をはさんで,右の明るい星がこと座のベガ,つまり,織姫星,左下の明るい星がわし座のアルタイル,つまり,彦星です。そして,中央がはくちょう座のデネブ。つまり,夏の大三角です。
 また,自宅とは違って,空がそれほど開けていないので,7つの惑星をすべて写すことはできないのですが,土星,木星,火星,そして,海王星もはっきりと捉えることができました(2番目の写真)。
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 このように,久しぶりに空の暗いところで星を見ることができたことで,昔の情熱がよみがえってきました。やはり,だれもいない高原で,自然と一体となって星を見るのはことのほか楽しいものです。

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 名前だけは誰もが知るハレー彗星。最近の地球への接近は1986年でした。
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 ハレー彗星(1P/Halley)は太陽の周りを75.32年で1周する周期彗星です。楕円軌道を描き,近日点は水星と金星の間に位置し,遠日点は冥王星ほど遠い位置となります。
 1687年,アイザック・ニュートン (Sir Isaac Newton)によって天体の運動の法則が明らかにされました。1705年,エドモンド・ハレー (Edmond Halley)は,ニュートンが導入したこの法則を用いて,さらに,木星や土星の重力の影響を算出することで,1531年に観測された彗星と1607年に観測した彗星が同じであることに気づき,1758年にこの彗星が再び見えると予言しました。エドモンド・ハレーはそれを見ることなく亡くなりましたが,その予言どおりに彗星は発見され,これによって,この彗星はハレー彗星とよばれることとなりました 。
  ・・・・・・

 1986年の春に地球に接近したハレー彗星ですが,現在は地球からはるか遠く,遠日点をめざして動いていて,木星の軌道あたりに約33等星で存在しているらしいです。というのも,人類はその姿を見ていません。
  ・・
 前回1986年に地球に接近したときは,太陽とハレー彗星と地球の位置関係が悪く,特に北半球では最悪で,ほとんどの人はその姿すら見ることができませんでした。前評判だけが盛り上がり,天体望遠鏡が売れに売れ,しかし,落胆だけが残りました。増産しすぎた望遠鏡業界の多くがつぶれました。負の遺産だけが大きかったのです。
 私は,残念ながら,肉眼で見ることはかないませんでしたが,それでも,写真を写しましたし,双眼鏡で見ることもできました。
 75.32年という周期は象徴的で,人間の寿命に近く,ハレー彗星を2度見ることができる人はほとんどいません。あの「トム・ソーヤーの冒険」(The Adventures of Tom Sawyer)で有名な作家・マーク・トウェイン(Mark Twain)は,1835年に生まれ1910年に亡くなりましたが,奇しくも,それはハレー彗星地球接近の年に生まれ,次の接近のときに亡くなったということで,76年生きたのに,残念ながら一度もハレー彗星を見ることができませんでした。本人もハレー彗星が地球に接近したときに生まれ,しかも,次の接近のときに寿命が尽きると意識していた,といわれます。

 さて,ハレー彗星の次回の地球接近は,今から40年近く後の2061年7月から8月にかけてです。このときどのように見えるか知りたくなったので,ステラナビゲーターで調べてみたのが,今日の3番目と4番目の写真です。
 これによると,2061年7月末までは明け方の北東の空に明るく見ることができて,その後,太陽を周って,8月のはじめには夕方の西北西の空に再び姿を現すようです。条件が非常に悪く多くの人がほとんど見ることができなかった1986年とは違って,もし,そのころまで人類が滅亡せず,または,環境の悪化で満足な星空を見ることができなくならない限りは,鮮やかな雄姿が見られるらしいのです。
 ということで,なんとか私もこれを見てみたいものだと思うのですが,そのころは生きていたとしても100歳を越えていて,おそらく,というか,まず絶対に私には無理な話であるのが,とてもとても残念なことなのです。
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 1986年,地球への接近を終えたハレー彗星は,その後,1991年にアウトバーストを起こし,突然光度を増したことが知られています。どうして増光したのか,その原因は不明なのですが,おそらく,二酸化炭素や一酸化炭素のような揮発性物質が昇華して圧力によりアウトバーストが起こったと考えられています。当時は「すわ,ハレー彗星分裂か」ともいわれたのですが,どうやら無事であるようです。
 そのあとも観測は続けられましたが,私の知る限りでは,2003年,ヨーロッパ南天天文台(European Southern Observatory=ESO)が写真でかろうじて捉えたものが最後となっているようです。それが今日の最後の写真です。現在は,技術の発達で,遠日点でも観測できる周期彗星があるそうですが,さすがにハレー彗星の遠日点は遠く,その後は暗くなりすぎて,だれもその姿をみていません。
 2023年12月9日に遠日点を越え,再び太陽に向かい増光をはじめたとき,人類が再びこの彗星の姿を捉えることができるのはいつのことでしょう。逆算すれば,それは,2041年ころでしょうか。あと20年くらい先のことです。そのとき,果たして私がそれを知ることはできるのでしょうか?

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 自分の楽しみで日々空を見上げているだけなので,高価な機材を持っているわけでもなく,買う気もないのですが,それでも,長年楽しんでいると,安価であっても愛着のあるものがけっこうあります。
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 そのひとつが2017年8月にアメリカ・アイダホ州で皆既日食をみるために買った小さな屈折望遠鏡です。それだけで役目を終えるのも気の毒なので,写真用の三脚に微動装置のある架台に載せて,太陽や月を写すのに使っています。
 今日の写真は2022年1月9日の朝写した日の出ですが,大きな黒点があったので,ピントを調節して,少し高度が高くなった時に再び写してみました。
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 太陽活動領域(solar active regions)は太陽フレアなどが発生するコロナ中の局所的な発光領域のことですが, アメリカ海洋大気庁 (National Oceanic and Atmospheric Administration=NOAA)によって1972年以来,番号づけがされています。
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 この日の黒点は,上側のペアが12924で,下側の小さなほうが12925です。
 太陽には活動周期があって,2020年ころはほとんど黒点がなくなってしまったのですが,このごろは結構大きな黒点が見られるようになったので,それなりに楽しめます。

 ふたつめは,オーストラリアで南半球の星空を写すために購入した簡易赤道儀です。海外に持っていくためになるべく軽いものということで選んだのですが,こちらは広角レンズや魚眼レンズで星野写真を写すのが目的でした。
 この機材もまた,海外旅行ができないこのご時世,遊ばせておくのもかわいそうだと思っていたのですが,レナード彗星(C/2021A1 Leonard)が夕方の西空低く見られるようになったので,少し荷が重いのですが,180ミリの望遠レンズをつけたカメラをこの機材にとりつけて,1秒程度の露出で写るかを試してみることにしました。
 とはいえ,まったく恒星が見えない街中なので,頼るのは水星,土星,木星といった惑星です。まず,この3つの惑星が入る広角レンズで構図を決めてレナード彗星のある位置を特定してからレンズを交換して写すことにして,数日楽しみました。こうして数日写した結果,レナード彗星の位置が地上の景色を基準にしてわかるようになりました。
 今日の写真は2022年1月8日のものです。もう,ほとんど限界だったのですが,なんとか写りました。それが3番目のものですが,これではわかりにくいので,レナード彗星のあるあたりだけ拡大したのが4番目のものです。なお,3番目の写真には,レナード彗星の位置のめやすとなる2つの恒星が写っています。左側のものがつる座のガンマ星GSC7494.1748(γ Gru)で,上右がみなみのうお座のイオタ星GSC7490.1839(ι PsA)です。また,4番目の写真の右上の恒星はみなみのうお座の暗い恒星GSC7493.1118です。
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 GSCはガイドスターカタログ(Guide Star Catalog) といって,ハッブル宇宙望遠鏡が軸外の恒星を捉えるのを支援するために編集された星表です。15等星までの約2,000万個の恒星が含まれ,さらに,21等星までの9億4,559万2,683個の恒星が加えられました。これは,外宇宙の航行のために特別に作成された初の全天の星表です。
 また,昔からあるバイエル符号(Bayer designation)は,ドイツの法律家ヨハン・バイエル(Johann Bayer)が1603年に星図「ウラノメトリア」(Uranometria: Omnium Asterismorum Continens Schemata, Nova Methodo Delineata, Aereis Laminis Expressa =ウラノメトリア:新しい方法で描かれ銅版印刷されたすべての星座の図を集めたもの) で発表した恒星の命名法で,星座ごとに原則として等級順にギリシャ文字の小文字α, β, γ, …… と名づけたものです。
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月,木星,土星,水星。

1月10日。日没後の快晴の西の空。
月齢8.6の月は天頂に。
水星が地平線ぎりぎりに写りました。
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 西の空にある沈みゆく3個の彗星を写し終えたので,今度は天頂付近に望遠鏡の視野を移し,別の3個の彗星をねらいました。
 新たな3個の彗星は,アトラス彗星(C/2019L3 ATLAS),フェイ彗星(4P Faye),そして,チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P Churyumov-Gerasimenko)という,これまでに何度も写してきた彗星です。
 こちらはこれから高度が高くなるので時間に追われることもなく,いささかのんびりムードでした。この中で,チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星が明るくなって,長いダストの尾を見せているという情報だったので期待しました。

 まず,最も探しやすいアトラス彗星からです。場所はふたご座α星「カストル」の近くです。
●アトラス彗星(C/2019L3 ATLAS)
 これまでに何度も書きましたが,アトラスというのは小惑星地球衝突最終警報システム(ATLAS=Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System)のことです。この観測プロジェックはハワイ・マウイ島のハレアカラ (ATLAS-HKO)とハワイ島のマウナロア (ATLAS-MLO)に設置した口径0.5メートルのふたつの望遠鏡を使って,地球近傍小天体が地球に衝突する数週間から数日前に検出するために最適化されたロボット掃天観測システムで,これによって発見された彗星です。
 今回も簡単に写すことができました。

 次がフェイ彗星です。場所はふたご座の隣のいっかくじゅう座です。この時期,このあたりに見られるオリオン座やおおいぬ座などの冬の星座がきれいです。
●フェイ彗星(4P Faye)
 フェイ彗星は1843年にエルヴェ・フェイ(Hervé Auguste Étienne Albans Faye)によってパリ王立天文台で発見された周期7.54年の周期彗星です。
 この彗星,何度写しても私は苦手で,なかなかうまく写ってくれません。今回は楽勝モードだったのですが,写した写真を何度確認しても,彗星が特定できません。また,このあたりは天の川銀河で,ものすごく星が多いのです。自宅に帰ってから確認すると,どうやら9等星の恒星とほぼ重なってしまっていたようです。いずれにしても,この10等星から12等星という明るさの彗星は,等級と写り方が彗星によってまちまちで,写してみなければわからないものです。

 さあ,最後が,今日最も期待していたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星だったのですが,少しでも高度が高くなるまでと最後にしてありました。この晩は天気が回復基調だったのですっかり安心していたのですが,天気予報に反して,次第に東の空低いところから雲が出てきて,焦りました。
 それでも,なんとか写すことができました。長い尾があって,みごとでした。
●チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P Churyumov-Gerasimenko)
 これも何度も書いているのですが,チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は,1969年にクリム・チュリュモフ(Klim Ivanovich Churyumov)とスヴェトラナ・ゲラシメンコ(Svetlana Ivanovna Gerasimenko)によって発見された周期6.57年の周期彗星です。
 2014年,ヨーロッパ宇宙気候が探査機「ロゼッタ」を送り込んだこの彗星は,撮影した画像から,ふたつの彗星がゆっくりとぶつかってそのまま結合したような2重の構造を持つアヒルのオモチャのような奇妙な形状をしていることがわかりました。この彗星がそれなのか,と思うと,特別な感慨があります。

 これで終了です。
 2021年12月28日が終わるころ帰宅したら,すでに空一面雲で覆われていました。


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 このところ,レナード彗星(C/2021A1 Leonard)を追いかけていましたが,レナード彗星以外にも多くの彗星を見ることができます。私は星見の楽しみとして10等星より明るい彗星をすべて写そうと思っているのですが,2021年12月28日の夜はここ数日の寒波も一休み,天気も回復傾向にあったので,遠出して,そうした彗星を写しに行くことにしました。
 調べてみると,この晩写すことができそうな彗星が7個ありました。そのうちのひとつであるパンスターズ彗星(C/2017K2 PanSTARRS)は夜明け前直前の東の空に昇るので断念して,それ以外の6個の彗星を写すことにしました。
  ・・
 今日はそのうちの3個を紹介します。3個の彗星とは,ボレリー彗星(19P Borrelly),ダレスト彗星(6P d'Arrest),そして,コワル第2彗星(104P Kowal2)で,3個とも日没後の西の空,くじら座からみずがめ座にあります。
 私は自動導入などというしゃらくさいモノは持っていませんが,くじら座β星(βCeti)をファインダーで見つけることができれば,あとは赤経と赤緯のどちらかを固定したまま移動していけば簡単に見つかるというとても幸運な位置にありました。
 なお,くじら座のβ星は「ディフダ」(Diphda)といい,アラビア語で「二匹目の蛙」を意味する 「الضفدع الثاني」(aḍ-ḍafdaʿ aṯ-ṯānī )に由来しているそうです。

 くじら座β星は2等星なので簡単に見つかって,そこから経度だけ動かして,ボレリー彗星にたどりつきました。
● ボレリー彗星(19P Borrelly)
 ボレリー彗星は公転周期6.85年の短周期彗星です。1904年,フランス・マルセイユのアルフォンス・ルイ・ニコラ・ボレリー(Alphonse Louis Nicolas Borrelly)がマルセイユ天文台で定期的に天体を観測している間に発見しました。
 ボレリー彗星は,2001年,アメリカの探査機「ディープスペース1」(Deep Space 1)が2,171キロメートルまで接近してその姿を撮影しました。このときの画像が今日の最後のもので,当時の彗星の画像の中では最高の解像度でした。「ディープスペース1」は,アメリカ航空宇宙局(NASA)が1998年に打ち上げたもので,イオンエンジン,自動航法など12の新技術の実地試験を主な任務とし,小惑星ブライユ (9969) とボレリー彗星の近接探査も行いました。

 次がダレスト彗星でした。
 ボレリー彗星から再び経度を下げていくとたどり着き簡単に写せるはずだったのですが,撮影直後にカメラの画像を見ても彗星状の天体が見つかりません。あとで自宅でコンピュータ画像を確認して,何とか見つけ出しました。暗く淡いものでした。
●ダレスト彗星(6P/d'Arrest)
 1851年,ドイツの天文学者ハインリヒ・ダレスト(Heinrich Louis d'Arrest)によりライプツィヒで発見された周期6.56年の周期彗星です。
 ハインリヒ・ダレストは,1846年,べルリン天文台でヨハン・ゴットフリート・ガレ(Johann Gottfried Galle)のもとで助手として働いていました。ヨハン・ゴットフリート・ガレは,ユルバン・ルヴェリエ(Urbain Jean Joseph Le Verrier)から「天王星の摂動の原因として存在が予測される新惑星を見つけるために空のある領域を観測して欲しい」という依頼を受け取り,その晩にハインリヒ・ダレストとともに星図にはない天体を見つけたことで有名です。これが新惑星であることが確認されて海王星 (Neptune) と命名されたものです。

 西の空にある3個の彗星の最後がコワル第2彗星です。コワル第2彗星はダレスト彗星(のいるはずの場所)から緯度だけを上げていくと簡単に見つかりました。
● コワル第2彗星(104P Kowal2)
 1979年にチャールズ・T・コワル(Charles Thomas Kowal)によって発見された木星族の公転周期5.90年の周期彗星です。チャールズ・T・コワルは,太陽系での観測と発見で知られるアメリカの天文学者で,ウィルソン天文台とパロマ天文台で,多くの発見をしました。
 2003年,ゲイリー・クロンク(Gary Kronk)とブライアン・マースデン(Brian Marsden)が,1973年にレオ・ブーティン(Leo Boethin)が観測した物体がコワル彗星と同一のものであることに気づきました。フィリピン人司祭神父のレオ・ブーティンは,1949年,ルソン島アブラ州の牧師に任命され,ルソン島の非常に暗い空を利用して,口径8インチ(20センチメートル)の望遠鏡で彗星や流星群を観測しました。

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☆☆☆☆☆☆
 2021年1月3日,アリゾナ州のレモン天文台(Mount Lemmon Infrared Observatory)でグレゴリー・レナード(Gregory J. Leonard)さんが19.0等星で発見したレナード彗星(C/2021A1 Leonard)は,2021年12月12日に地球から約0.233天文単位(1天文単位は太陽から地球までの距離, 約1億5,000万キロメートル)まで接近しました。2022年1月3日には太陽に最接近します。
 予報では,最も明るくなる12月12日ころにレナード彗星は4等星ほど,ひょっとしたら1.5等星かも,といわれていました。夜明けの東の空に肉眼で美しく尾を引く姿が見えるのでは,と期待したのですが,残念ながらそれまでは明るくなりませんでした。それでも,12月9日には肉眼で確認できるほど明るくなりました。さらに,双眼鏡では尾を引いた姿を見ることができました。
 レナード彗星は秒速70キロメートルの速さで運動しているので,数分でものすごく早く動く姿を確認することができました。
  ・・
 レナード彗星の公転周期は約80,000年であったと考えられ,約3,700天文単位(5,500億キロメートル)の彼方から約4万年をかけてやってきました。2022年1月3日に太陽を周ったのちは双曲線軌道となって太陽系から飛び去っていき,二度と戻ってきません。

 私は,この1週間,天気がよければ早起きしてレナ―ド彗星を追いかけていましたが,12月11日はその数日前よりも明るくなったはずなのに,高度が下がってしまったことと霧が出たので,2番目と3番目の写真のようにむしろ暗くなってしまったように感じました。結局,今日の1番目の写真を写した12月9日のころの姿が最も美しいものとなりました。
 ちなみに,夜明け前に見ることができる最終日12月12日の早朝は曇っていたのですが,西の空から雲が切れてきたので急いで出かけて,午前5時30分ごろに広角レンズでレナード彗星の位置あたりを数枚写してみました。雲が切れるのがもう数分早ければよかったのですが,それでも薄雲の中にレナード彗星が確認できる写真を写すことができました。それが今日の4番目の写真です。
  ・・
 このあとレナード彗星は太陽を回り,12月15日過ぎには夕方西の空低く見ることができるようになるのですが,月が明るいのと高度が低いのと街灯の明るい夕方であることから,期待はできません。
 いずれにしても,この1週間,ずいぶん楽しむことができました。


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☆☆☆☆☆☆
 今週末は大阪に行って「メトロポリタン美術館展」を見て,その後,紀伊半島を下る旅をする予定でした。しかし,レナード彗星が接近するというので延期して,彗星の写真をできる限る写すことに変更しました。
 そうした経緯もあって,とにかく晴れていれば,早朝,レナード彗星を写しに出かけるのです。
 とはいえ,天気が安定しません。そんな状況では遠出する気にならず,空が明るいのは仕方がないと,近場で撮影をしていました。
 そんな中,12月9日は安定した晴天となりました。長年星見をしていると,天気の予測ができるよになります。
 そこで,この晩は久しぶりに遠出することにしました。
 午前3時に出発して1時間,現地に到着しました。私が今回星見をする場所は南はダメですが,東から北にかけては暗く,また,地平線まで開けているのです。

 さっそく望遠鏡を組み立てて,まずは双眼鏡で手持ちで彗星を探し,それをもとに,望遠鏡のファインダーで目的の天体を入れます。自動導入装置といったこじゃれたものは持ち合わせていませんが,これで大丈夫です。
 レナード彗星は非常に明るく,すぐに見つけることができました。今は双眼鏡でもはっきりと見ることができるようになりました。また,目を凝らすと,肉眼でも確認できます。
 こうして撮影したのが今日の写真ですが,わずか30分程度でみるみる動いていきました。
  ・・
 今回は口径10センチメートルの双眼鏡も持っていったのですが,意外とレナード彗星を見つけるのに苦労しました。視野が狭いからです。やっと見つけたのですが,非常に大きな綿菓子状の天体はとても美しいモノでした。
 さらに,焦点距離35ミリの広角レンズでも写しました。
 レナード彗星はうしかい座アークトゥルスよりはるかに下にまで動いていて,かんむり座の東にあるのが写真でよくわかるでしょう。
 この後,レナード彗星はさらに下り,へび座からへびつかい座に達します。この日の午前5時過ぎの状況ではやはり12月12日までは見ることができそうですが,高度は残念ながら4等星止まりでありそうなので,さすがに,12月13日以降の日の出前の明るくなった空で確認するのは難しそうです。

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☆☆☆☆☆☆
 今日の写真は12月4日早朝のレナード彗星(C/2021A1 Leonard)です。
 このような写真を写すことができるのはおそらく12月12日までなので,この1週間が勝負,ということで,晴れていれば毎晩でも写真を写しに行くことにしていました。
 太平洋岸の冬は天気に恵まれるのですが,どうもこの数年は,日本海側のような天気になってしまい,安定しません。絶えず雲が湧き,わずか数分ですっかり曇ってしまったり,また,その反対にすっかり晴れ上がったりします。こうなると,私のような観測所もない単なる愛好家は,わずかな晴れ間を狙うしかないので,早朝に起きて絶えず空とにらめっこです。レナード彗星は午前5時ごろの東の空で写すことができるので,さほど早起きをする必要がないのですが,なにせ寒いです。

 ということで,この日の朝,午前3時ころは曇っていて,まったく星が見られませんでした。ところが午前4時になるとすっかり雲がなくなったので,写しに行くことにしました。いつもの場所に着くと,次第に雲が湧き出てきます。焦りながら望遠鏡をセットしてなんとか雲が切れるときを待ってうつしたのが今日の写真です。
 非常に太陽に近く,動きが早いので,わずか数分でその位置が変わります。
 1番目の写真は球状星団M3と一緒に写したものです。そして,2番目と3番目の写真は動きがわかるように並べてみました。2番目の写真は4時36分,そして3番目の写真は午前5時6分,わずか30分でこれだけ位置がかわります。
 これからますます明るく輝くので,天気がよい日が続くといいなあと思います。

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 以前,ブログに次のように書きました。
  ・・・・・・
 それは,2021年1月3日,アリゾナ州のレモン天文台(Mount Lemmon Infrared Observatory)でグレゴリー・レナード(Gregory J. Leonard)さんが発見したレナード彗星(C/2021A1 Leonard)です。レナード彗星は毎秒約70キロメートルという,昨年のネオワイズ彗星(C/2020F3 NEOWISE)よりも毎秒6キロメートル速く移動しているので,2021年12月はじめから12日くらいまでのわずか数日間ですが,最もよく見えるようになり,明け方の東の空を飾ります。
 肉眼で見える5.0等星から4.0等星の光度になると予想されていますが,ひょっとすると1等星に達するかもしれません。
  ・・・・・・

 さあ,このレナード彗星(C/2021A1 Leonard)が地球に接近してきました。
 明け方の東の空です。
 冬は寒いのですが,夜明けも遅く,午前5時でも十分に暗いので,早起きすれば見ることが容易です。しかも,レナード彗星は東の空,今はまだ7等星ほどですが,結構高度が高いのでとても見やすいです。
 11月28日の朝は快晴でした。まだ月明かりがあるのですが,月明かりなどものともしない光度という話なので,見にいくことにしました。そして写したのが今日の写真ですが,すでにとても美しい彗星らしい姿に感動しました。
  ・・
 レナード彗星は,この後,次第に光度を増し,しかし,高度を下げていきます。
 おそらく12月12日が見ることができる最後となるのでしょうが,その日,どこまで明るくなるか,思った以上に明るいので期待大です。

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 11月6日早朝,新月でかつ天気がよかったので,近くに星見に出かけました。ひとりで星を見ているのが一番落ち着きます。
 何を,という目的も特になかったのですが,先日も写した準惑星セレス(Ceres)とはじめてレナード彗星(C/2021A1 Leonard)を写すことにしました。
 新しく買い替えた赤道儀もそれなりに使いこなせるようになったし,楽しい時間となりました。

 まず,準惑星セレスです。
 準惑星セレスは7等星ほどなので,双眼鏡でも簡単に見ることができるのですが,普通の恒星と変わらないので,普段はなかなか区別がつきません。そこで,こうしたアルデバランに接近したときに容易に見分けがつくので,準惑星を見る絶好の機会となります。
 先日11月3日に写した写真と並べてみたのが今日の1番目の写真です。

 次がレナード彗星です。
 現在レナード彗星はおおくま座としし座の中間あたりで,明け方前の北東の空,結構高いところで見られます。周りに明るい恒星がないのですが,星の並びがわかりやすいので,容易に場所が特定できて,カメラに収めることができました。
 まだ10等星くらいですが,すでにかわいい尾が見えて,大物の風格です。
 レナード彗星は明るくなるといううれしい予報ですが,彗星の明るさは水物なので,果たしてどうなるか?
 いずれにしても,レナード彗星はあっという間に駆け抜けてしまうので,明るくなった彗星を見るチャンスは12月はじめからの2週間ほどだそうです。12月13日はちょっと辛いかも,ということで,12月12日まで明け方の東の空に美しく見えるということです。ちょうど月明かりもなく絶好です。東の空に低くうしかい座の1等星アルクトゥールスが見えるのですが,そのあたりを駆け抜けていきます。
 その後は,太陽を周って,12月16日くらいからは今度は夕方の空に見えるようになるのですが,あまり高度も光度も高くならないし,月明かりもあるので,夜明け前の東の空のほうがすばらしい姿が見られることでしょう。
 なお,レナード彗星が発見されたレモン天文台のあるアリゾナ州のレモン山はツーソンから車で1時間30分程度のところにあって,サボテンだらけの山だそうです。こんな状況でなければ行ってみたかったところです。

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 天気のよい日が続いています。 
 11月2日の深夜,新しい赤道儀の試行を兼ねて,近くに星を写しに行きました。目的は,前回撮影できなかった周期彗星フェイ(4P Faye)を写すことと,現在おうし座のアルデバランに大接近している準惑星ケレスでした。
 まず,M45プレアデス星団を試しに写しました。新しい赤道儀は今まで使っていたものより使いやすいのですが,まだ少し改良するところが見つかりました。

 フェイ彗星(4P Faye)は1843年にエルヴェ・フェイ(Hervé Auguste Étienne Albans Faye)によってパリ王立天文台で発見された周期彗星です。周期7.54年。
 パリ王立天文台はルイ14世の時代の1667年にパリに開設された天文台で,19世紀の位置天文学の発展に大きい役割を果たしました。初代の台長は土星の輪の間隙を発見したカッシーニ(G. Cassini)です。
 フェイ彗星は思ったよりも暗いようで,予報にあった位置を何度写しても彗星らしい天体が確認できませんでした。家に帰ってから調べてみると,かろうじて尾を引いた彗星が写っていました。約12等星というところでしょうか。

 準惑星セレス(Ceres)は,火星と木星の間のメインベルトに位置する準惑星です。直径は945キロメートルと,メインベルトで最大の天体であり,メインベルト唯一の準惑星です。
 1772年,それまで知られていた水星,金星,地球,木星,土星の軌道から,ドイツの天文学者ヨハン・ボーデ(Johann Elert Bode)は,この,現在も科学的根拠が見出されていないティティウス・ボーデの法則(Titius₋Bode law)をもとに,火星と木星の間に大きな間隔があることから、火星と木星の間に未発見の惑星が存在していることを予測しました。その予測に沿って,シチリア島のパレルモ学会(Palermo)のカトリック司祭であったジュゼッペ・ピアッツィ(Giuseppe Piazzi)が1801年1月1日に発見したのがセレスです。
 ジュゼッペ・ピアッツィは,発見した天体にローマ神話に登場する農業の女神セレスとシチリア王国の国王フェルディナンド1世に因んで「Cerere Ferdinandea」という名称を提案しましたが,「Ferdinandea」は他の国々には受け入れられず省略されました。発見当初,セレスは惑星であると考えられていたのですが,その他に多くの同じような軌道を持つ天体が発見されるようになり,1850年代には小惑星として再分類されました。 
 このセレスがおうし座のアルデバラン(Aldebaran)の近くを通り過ぎるので,アルデバランと同じ視野で写してみたというわけです。
 なお,0.9等星のアルデバランはおうし座の眼にあたる位置にあって,太陽の直径の45倍もある赤色の巨星です。アルデバランとはアラビア語で「プレアデスにつづくもの」という意味で,いつも,プレアデス星団につづいて東の空から昇ってくるさまから名づけられました。ヒアデス星団の中にあるので,見た目にはヒアデス星団の中で輝いているように見えるのですが,距離は60光年と,150光年のヒアデス星団よりもかなり手前にあって,星団とはまったく関係のない星です。
  ・・
 この晩は天気が安定していなくて,頻繁に薄雲が湧いてくるので,目的を達成して,早々に引き上げました。東の空には月齢26.4の月が昇ってくるのが見えました。 

◇◇◇



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☆☆☆☆☆☆
 数年前とは異なり,旅をしなくなったことが理由なのか,齢をとったのか,さまざまなことに情熱がなくなりました。そこで,事前の準備をする気にもならず,たった1泊2日だというのに,手元にあるものを片っ端からみんな車に詰め込んで出発しました。
 常宿である木曽駒高原のペンションは晴れていれば満天の星が見られます。木曽は標高も高く安全だし,東京大学の天文台がある場所でもあることから,私は,日本でこの場所以外に遠出しても同じだろうと思うようになりました。いわば,日本一の星空です。ただ問題は晴れるかどうか,だけでした。今回は,赤道儀を新しくしたのですが,事前に試行もせず持っていきました。
 今回は晴れれはばいいなあ,程度だったのですが,快晴になったのには驚きました。1番目の写真のように,あとで確かめると水蒸気が多く,最高の条件ではなかったのでしょうが,肉眼で見る限り美しい星空でした。
 ということで,新しい赤道儀の試行を兼ねて,いくつかの暗い彗星と星雲,星団などを写すことにしました。
 まず,2番目の写真がシュワスマン・ワハマン第1彗星(29P Schwassmann-Wachmann)です。シュワスマン・ワハマン第1彗星は,ふだんは16等星ほどの暗い彗星ですが,突然アウトバーストを起こして12等星くらいまで明るくなることで知られています。アウトバーストは頻繁に起きて,1,2週間で16等星に戻ります。今回も9月25日に大きなバーストを起して明るくなっているそうです。
 これまで,最大で19等級から9等級まで変化したことがあるといいます。アウトバーストは揮発性物質が爆発的に蒸発して起こると推測されていますが詳しいことは不明です。
 3番目の写真がチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P Churyumov-Gerasimenko)です。10月はじめにも写したのですが,ふたご座の散開星団M35と同じ画面に写せるので狙ってみました。
 そして,4番目の写真がアトラス彗星(C/2019L3 ATLAS)です。この彗星もまた,すでに8月にも写しました。

 この晩は,新しい赤道儀に四苦八苦しながら,こうした暗い彗星を写していきました。このように,これまで写したことのある暗い彗星しか現在はみられませんが,うれしいニュースがあります。
 それは,2021年1月3日,アリゾナ州のレモン天文台(Mount Lemmon Infrared Observatory)でグレゴリー・レナード(Gregory J. Leonard)さんが発見したレナード彗星(C/2021A1 Leonard)です。レナード彗星は毎秒約70キロメートルという,昨年のネオワイズ彗星(C/2020F3 NEOWISE)よりも毎秒6キロメートル速く移動しているので,2021年12月はじめから12日くらいまでのわずか数日間ですが,最もよく見えるようになり,明け方の東の空を飾ります。
 肉眼で見える5.0等星から4.0等星の光度になると予想されていますが,ひょっとすると1等星に達するかもしれません。

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十三夜。

十五夜と対をなす十三夜。または,後の月。
このふたつをあわせて「二夜の月」。
どちらか一方の月しか見ないと「片見月」。
十三夜は栗の収穫の時期なので「栗名月」とも。
曇り空の向こうに月が一瞬顔を出しました。DSC_0261s


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 明るい彗星がまったく近づかない今年ですが,現在は,約11等星になったチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P Churyumov-Gerasimenko)がおうし座に見えるので,この彗星だけは写そうと考えていました。
 チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は,2014年にヨーロッパ宇宙機関 (ESA=the European Space Agency) の彗星探査機「ロゼッタ」(the Rosetta spacecraft)の着陸機「フィラエ」(Philae)が人類史上初の着陸を果たした彗星として有名なものです。
 しかし,今年は天気も悪く,月明かりの影響のない夜に晴れたのも数えるほどでした。10月1日は台風一過で,風が強いとはいえ,やっと晴れたので,待望のこの彗星を写しに行くことにしました。

 ところで,探査機「ロゼッタ」といえば,私はウィルタネン彗星(46P Wirtanen)を思い浮かべます。「ロゼッタ」の当初の計画では,この探査機は2003年1月12日に打ち上げられて,2011年にこのウィルタネン彗星に着陸機を降ろす予定だったのです。しかし,2002年12月11日のアリアン5ロケット爆発事故で,同型のロケットで打ち上げられるはずだった「ロゼッタ」の打ち上げが遅延したためにウィルタネン彗星を目指すことができなくなって,目標が別のチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に変更されたというわけです。
 私は,ウィルタネン彗星を2018年11月に写すことができたので,今回は,チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星をぜひ写したいと思っていたわけです。

  ・・・・・・
 チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は,1969年にクリム・チュリュモフ(Klim Ivanovich Churyumov)とスヴェトラナ・ゲラシメンコ(Svetlana Ivanovna Gerasimenko)によって発見された周期6.57年の周期彗星です。
 アルマアタ天体物理研究所(Fesenkov Astrophysical Institute = FAPHI)で働いていたスヴェトラナ・ゲラシメンコが口径50センチメートルのマクストフカセグレン式望遠鏡でコマス・ソラ彗星 (32P Comas Solá)を撮影していたのですが,その写真を調べたキエフ大学のクリム・チュリュモフが写真乾板の端近くに発見した彗星をコマス・ソラ彗星だと当初は思い込んだものの,キエフに戻った翌月の10月22日,その天体はコマス・ソラ彗星の予想位置から1.8度も離れていたと判明し,別の天体であることがわかったものです。
  ・・
 「ロゼッタ」が撮影したチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星はふたつの彗星がゆっくりとぶつかってそのまま結合したような2重の構造を持つアヒルのオモチャのような奇妙な形状をしていました。また,核の直径はは小さな側が約2キロメートル,大きな側が3キロメートルほどで,核全体の質量は約1,000キログラム,約12.4時間に1回の周期で自転しているということでした。
 なお,探査機「ロゼッタ」と着陸機「フィラエ」の名称は,ロゼッタ・ストーン解読の鍵となったフィラエ・オベリスク(Philae obelisk)=記念碑 が発見されたナイル川の島フィラエ島に由来するものです。
  ・・・・・・

 チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は暗いので写すのに手こずるかなと思っていたのですが,簡単に写りました。かわいい尾を引いた彗星は,暗いとはいえ,さすがに周期彗星の貫禄でした。調べてみたら,私は6年前にも回帰したチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星を写したことがあることがわかりました。
 いずれにしても,こんな淡い天体に人間が探査機を送り込んだと思うと,何か不思議な気がしました。

◇◇◇

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 1994年に木星に衝突したことで有名なシューメーカー・レビー第9彗星(D/1993F2 Shoemaker-Levy9)は,1993年3月24日にパロマ天文台で観測中のユージン・シューメーカー,キャロライン・シューメーカー夫妻とデイヴィッド・レヴィさんによっておとめ座に発見された彗星です。
 1917年に土星に接近し軌道が変わり,木星に捕獲され核が砕けていたので,発見当時,彗星の核は棒状に見えました。
 彗星の分裂核は,1994年7月16日から7月22日までの間に相次いで木星の大気上層に衝突しましたが,これは史上はじめて人々が目撃した地球大気圏外での物体の衝突でした。
  ・・
 この彗星の発見者のひとりキャロライン・シューメーカー(Carolyn Jean Spellmann Shoemaker)さんが8月13日に亡くなりました。
 私は2019年にカリフォルニア州のパロマ天文台を見学したとき,シューメーカー・レビー第9彗星を発見したという望遠鏡を博物館で見て,ここで発見したということをはじめて知って感動したこともあって,この訃報は感慨深いものがありました。

 彼女は1929年ニューメキシコ州ギャラップ(Gallup)生まれの天文学者で,32の彗星と800を超える小惑星を発見して,個人での彗星の最多発見記録をもっています。
  ・・
 1980年,51歳のときから、パロマ天文台で地球近傍小惑星や彗星の観測をはじめ,1980年代から90年代にかけてパロマー天文台で撮った広域写真を立体視することにより、恒星に対して移動している星を探しました。
 1997年に,オーストラリア・アリススプリングス(Alice Springs)で,乗っていた車の衝突事故によって夫ユージン・シューメーカー(Eugene Merle Shoemaker)さんを失い,彼女も肋骨を折る重傷を負いました。アリススプリングスといえば,私が2018年にオーストラリアのエアーズロックに行ったときに途中で飛行機を乗り替えた砂漠のど真ん中の町です。

 彼女はもともとは科学に興味がありませんでしたが,夫ユージン・シューメーカーさんが地質学の経験を与えたことで夢中になりました。学校の教師として結婚生活をはじめましたが,その職業は退屈でした。3人の子供を育てたのち,地球に脅威を与える可能性のある小惑星を探すための新しいプログラムに参加することを提案します。パロマ天文台の口径18インチ・シュミット望遠鏡を使用して,異なる時間に同じ位置を撮影した2枚のフィルム画像を同時に見ることができる実体顕微鏡を使って小惑星を見つけるという方法で開始し,すぐに専門家になりました。また,同じようにして彗星を発見するようになりました。
  ・・
 ある夜のこと,パロマ天文台の北の地平線から4本のオーロラが昇っているのを見たといいます。
 北緯33.3度のパロマ天文台からオーロラが見られるのは非常にまれなことです。
 キャロライン・シューメーカーさんにとって,オーロラのきらめく光は,彼女が夜空を愛した理由と世界有数の天文台で夜空を探索する威厳を思い出させたことでしょう。

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☆☆☆☆☆☆
 8月5日は早朝というか深夜の午前1時30分ごろに家を出て午前3時前には現地に到着しました。
 昨年はネオワイズ彗星(C/2020F3 NEOWISE)という大物がいたのに,今年はまるで見るべきものがありません。調べてみると,10等星だか11等星だか12等星だかの私が写せそうな明るさの彗星がいくつかありました。 それらは,昇ってくる順に,おとめ座にいるパロマ彗星(C/2020T2 Palomar),おうし座にいるフィンレー彗星(15P Finlay),ぎょしゃ座にいるアトラス彗星(C/2019L3 ATLAS),そして,ふたご座にいるタットル彗星(8P Tuttle)と西村彗星(C/2021O1 Nishimura)です。
 パロマ彗星は以前写したことがあり,また,この日到着する時間にはすでに沈んでいるので,残りの4つに狙いを定めました。

●フィンレー彗星(15P Finlay)=1番目の写真
 フィンレー彗星は,1886年9月26日に南アフリカの天文学者ウィリアム・フィンレー(William Henry Finlay)が発見した周期彗星です。1910年,木星のそばを通り過ぎて軌道周期が6年から7年に変わり,また,軌道が予測から外れ,「新しい」彗星として1919年10月25日に京都天文台の佐々木哲夫さんによって再発見されたことで有名です。
 前回2014年の回帰ではバーストして7等星まで明るくなりましたが,このときに写した写真がありました=2番目の写真。
 フィンレー彗星は2060年10月25日に地球に約0.04天文単位,つまり6,000,000 キロメートル,地球から月までの15倍の距離まで接近すると予測されています。
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●アトラス彗星(C/2019L3 ATLAS)=3番目の写真
 2019年6月10日に小惑星地球衝突最終警報システム(ATLAS=Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System)の観測で発見されたものです。
 小惑星地球衝突最終警報システムは,ハワイ・マウイ島のハレアカラ (ATLAS-HKO)とハワイ島のマウナロア (ATLAS-MLO)に設置した口径0.5メートルのふたつの望遠鏡を使って,地球近傍小天体が地球に衝突する数週間から数日前に検出するために最適化されたロボット掃天観測システムです。
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●タットル彗星(8P Tuttle)
 タットル彗星は1858年1月5日にアメリカの天文学者ホレース・タットル(Horace Parnell Tuttle)が発見した太陽系の周期彗星で,12月末のこぐま座流星群の母彗星です。
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●西村彗星(C/2021O1 Nishimura)
 静岡県掛川市の西村栄男さんが2021年7月22日にぎょしゃ座に10等級で発見したものです。
 西村栄男さんは同郷の池谷薫さんの彗星の発見に触発されて,彗星の発見に取り組んでいるアマチュア天文家です。

 フィンレー彗星とアトラス彗星は写すことができたのですが,タットル彗星と西村彗星,この日ふたご座のθ星は見えたので,1週間前なら写せたのですが,日に日に高度が下がってあまりに低くなってしまいました。なんとかならないかな,とも思ったのですが,こんな暗い彗星,夜明けの白みはじめた空で地平線ぎりぎりとなると写せないなあとあきらめて帰宅しました。特に西村彗星は日本人の発見した彗星なので写したかったのですが,残念でした。
 しかし,久しぶりの星見に満足して,すっかり元気になりました。
 帰りがけに見た夜明けの空の美しかったこと!


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☆☆☆☆☆☆
 このところまったく晴れず,星を見にいくこともできません。そこで,今回もまた余談というか昔話です。

 NHKは地上波とBS1 はオリンピック中継ばかりだし,BSPは再放送ばかり。私はオリンピック中継は興味がないので,もともと見たい番組も少ないのに,さらに,見るものがありません。オリンピックの視聴率が高いとかいって悦に浸っていますが,そもそも国民の4人にひとりは高齢者のこの国で,外出するな,といわれて家にいても多くの人はすることもなく,テレビをつければオリンピック中継ばかりなら,それを見るしかないというだけのことです。
 これで多額の受信料を取っているなんて,ぼったくりです。NHKもすべての番組をPPVにすればいいのに…。今の状態はまるで徴用です。この受信料から IOCに多額のお金が流れ,バッハ何某の懐に入っているかと思うとはらわたが煮えくり返ります。
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 そんな再放送ばかりのBSPでは,大河ドラマ「麒麟がくる」総集編の,これもまた再放送をやっていました。
 思い起こすに「麒麟がくる」はおもしろいドラマでした。このブログに何度も書いているように,私の大河ドラマの原点は「国盗り物語」ですが,どうやら私の大河ドラマ経験は「国盗り物語」ではじまり「麒麟がくる」でおわりだな,と,今年の大河ドラマを1,2回だけ見て思いました。それは,もう今は,時代劇どころか,多くの日本のドラマを見るのがしんどくなってきて,しかも,私にはおもしろくないからです。
 そんなことを思っていたら,私の星見もまた「アイソン彗星」ではじまり「ネオワイズ彗星」でおわりだな,と思うようになって,なんだか寂しくなってきました。

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 アイソン彗星(C/2012S1 ISON)は,2012年9月21日にロシアのキスロヴォツク天文台(Kislovodsk Observatory) でヴィタリー・ネフスキー(Vitaly Nevsky)とアルチョム・ノヴィチョノク(Artem Novichonok)によって発見された彗星で,発見者が所属している国際科学光学ネットワーク (International Scientific Optical Network=ISON)に因んでなづけられました。
 発見されたときは地球から約10億キロメートルも離れていたのに19等星と明るかったことから,地球に接近すると最大級の彗星になると予想されました。
  ・・・・・・
 2013年の12月,アイソン彗星が地球に近づいてきました。そのころまでの私は,長年,ほそぼそと星見をしていたのですが,まったく熱心でなく,星を見る場所も定まらず,ハレー彗星が接近した1986年のころに買った望遠鏡もまた,ほとんど使うことがない状態でした。それが,このアイソン彗星で目覚めてしまったのです。
 あいにくアイソン彗星は期待に反して太陽に接近して分裂してしまい,満足な写真すら写すことができませんでした。しかし,その後の私は,使っていた機材を手入れし,使いやすいように改造し,不足した部品を買いそろえ,毎月2,3回は星を見にいくようになりました。買った望遠鏡が30年近く経って蘇り,活躍の場を見つけたわけです。
 そこでやる気が起きてしまい,オーストラリアやニュージーランド,そしてハワイまで星を見にいくようになったのは,何度もこのブログに書きました。しかし,そんな星空を見て以来,美しい海外の星空に比べるとまったくそれに劣る日本の星空だと知ってしまったので,それからは,空が多少は汚くても写せる10等星より明るい彗星をできる限り写真に収めようと,それを趣味にしていたのですが,それから7年間,暗い彗星は現れても肉眼で見られるような明るい彗星がひとつも接近しないので,なにか物足りなさを感じていました。
 それがコロナ禍の2020年,突如としてネオワイズ彗星が現れたのです。

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 ネオワイズ彗星(C/2020F3 NEOWISE)は,2020年3月27日にアメリカ航空宇宙局(NASA)が2009年に打ち上げた赤外線観測衛星「NEOWISE」での観測から発見した彗星です。
 発見当時17等星だった彗星は6月ごろにには肉眼で見えるほど明るくなり,7月3日に太陽に最も接近しました。このころの明るさは最大3等星と予想されていたのですが,予想以上の増光を起こして0等星程度にまで明るくなり,尾をなびく様子が肉眼でも観測されるようになりました。しかし,日本列島は天気が悪く,見ることができたのは北海道と沖縄だけでした。
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 私は,幸いこの彗星が最も明るいときに北海道で見ることができて,私はこれで念願がかなったと思いました。そしてまた,これで熱が冷めてしまったのも否めませんでした。
 とはいえ,星見は楽しいので,これからは,気の向くまま,天気のよい日に星を見にいこうと毎日空を見ているのですが…。

☆ミミミ
アイソン彗星以前に私が見た彗星のなかで印象に残っているのが,1996年に相次いで地球に接近して大彗星となった百武彗星(C/1996B2 Hyakutake)とヘールボップ彗星(C/1995O1 Hale-Bopp)です。
ヘールボップ彗星は地球に接近するまえから大彗星の呼び声高く,そのとおりに明るくなってずいぶんと長い間見ることができました。
それに対して,百武彗星は,この明るくなった百武彗星のそのわずか1か月前に発見した別の百武彗星(C/1995Y1 Hyakutake)があって,今とは違いインターネットもほとんど普及していない時代にその情報を探しているうちに存在を知り,慌てて見にいきました。明るく輝いていたのが,そのわずか1週間だけで,しかも曇り空に彗星のいるあたりだけが晴れていたというという幸運にめぐまれて,その幻想的な長い尾を見ることができたものでした。

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 5月26日はスーパームーンであり皆既月食。家のベランダから見ることができるので,楽しみにしていたのですが,残念ながら曇ってしまいました。
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 それ以降も,連日,天気が悪かったのですが,5月29日は久々にいい天気になりました。
 このごろは星を見るよりも,星を見にいくために深夜にドライブをすることや,だれもいない深夜の野原で星を見ることが楽しくなってきたので,特に何をということもなく,星見に行くことにしました。

 現地に到着したのが午後7時30分過ぎでした。
 まず,西の空に輝く金星と,金星に大接近している水星を写すことにしていたのですが,なんとか間に合いました。
 ずいぶんと高度が低いので写るのか疑問でしたが,写すことができました。それが今日の1番目の写真です。
 金星が沈むころ,次第に空が暗くなってきました。
 昨年は立て続けに明るい彗星が接近していたのですが,今年は明るい彗星がほとんどありません。そんななか,現在はパロマ彗星(C/2020T2 Palomar)が10等星ほどでうしかい座に見えるということだったので,次に狙いました。
 うしかい座はほぼ天頂です。天頂付近というのは,逆に大変です。私の使っているような古い望遠鏡では自動に星を導入してくれないので,ファインダーで探さなければなりません。首が痛くなります。
 1等星アークトゥルスから追っていって,難なく場所が特定できたので写してみると,さすがに天頂付近は空も暗いので,小さな彗星状の天体が簡単に写りました。それが今日の2番目の写真です。写真の中央,ふたつある星のうち上のものです。

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 パロマ彗星は,カリフォルニア工科大学天文学部のDmitry A. Duevさんの通報によると,2020年10月7日,パロマ天文台(Palomar)にある口径1.2メートル「サミュエルオシン」(Samuel Oschin)シュミット望遠鏡に新たに取りつけられた47平方度の広視野光学観測装置(ZTF=Zwicky Transient Facility)を利用したサーベイ(Zwicky Transient Facility's Twilight Survey)で得た画像から発見された彗星です。
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 それ以外に明るい彗星もないので,そのあとは,おおくま座のメシエ天体を気の向くまま写すことにしました。
 まずは,子もち銀河とよばれるM(メシエ)51。これが3番目の写真です。次に,回転花火銀河M101。4番目の写真です。そして,最後5番目の写真がフクロウ星雲M97とそのとなりにある銀河M108です。
 おおくま座の北斗七星のまわりには,こんなおもしろい天体がたくさんあって,そのどれも,簡単に写すことができます。こうした天体を写しながら,数年前,メシエ天体をすべて写そうと何度も暗い場所をめざして走り回ったころのことを思い出しました。当時は苦労したのに,今では,簡単にピントも合わせられるし,場所も特定できるようになりました。
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 そうこうしているうちに月が昇ってくる時間になったので,帰宅することにしました。
 満天,とはいいがたい星空ですが,それでも,まったく人のいない野原で星空を眺めて過ごすのはとても楽しいことです。
 こんな楽しみをもっていたことがうれしいこのごろです。


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 どこへ行ってもたいした星空が見られない日本ですが,頻繁に海外に行くわけにもいかないので,住んでいる以上ここで何とかしようと,私は,多少空が明るくてもなんとなかなる10等星より明るい彗星の写真を写すことに目的を定めて楽しんでいます。
 昨年は,シュワスマン・ワハマン第1彗星(29P Schwassmann-Wachmann),パンスターズ彗星(C/2017T2 PanSTARRS),アサシン彗星(C/2018N2 ASASSN),ふたつのアトラス彗星(C/2019Y1 ATLAS),(C/2019Y4 ATLAS),岩本彗星(C/2020A2 Iwamoto),スワン彗星(C/2020F8 SWAN),そして,真打の明るくなったネオワイズ彗星(C/2020F4 NEOWISE)と,数多くの彗星を見ることができました。
 しかし,2021年ははずれ年のようで,これまで明るい彗星が接近していませんし,この先も,新しい彗星が発見されない限り,期待ができません。
 そんなこともあって,今年は手持無沙汰な日々が続いています。
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 そんな中,アトラス彗星(C/2020R4 ATLAS)が10等星まで増光したという情報が聞こえてきました。そこで,4月7日の夜から4月8日の朝にかけて天気がよいという予報だったことと,月明かりがなかったので,久しぶりに星見に遠出をすることにしました。
 アトラス彗星(C/2020 R4 ATLAS)は,わし座にあって,明け方には高度も高くなり条件がよくなります。というわけで,深夜に家を出て,午前1時ころに現地に到着することにしました。

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 アトラス彗星は,2020年9月12日,ハワイ島マウナロア(Mauna Loa)にある口径0.5メートルのシュミット反射望遠鏡を使って,小惑星地球衝突最終警報システム(Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System=ATLAS)調査プログラムで得たCCD画像から発見されたものです。
 小惑星地球衝突最終警報システムというのは,地球に接近して衝突する可能性のある小天体を,数週間から数日前に検出するために最適化されたロボット掃天観測,および,早期警告のシステムです。NASAの資金提供を受けて,ハワイ大学天文学研究所(IfA))が開発・運用しています。現在は2台の0.5メートルシュミット反射望遠鏡をハワイ島のマウナロアとマウイ島のハレアカラに設置して,2015年に観測を開始し,2017年からは完全運用しています。
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 しかし,実際には,このような探索をして,もし,本当に地球に衝突する小天体が見つかっても,おそらくはそれを回避するための手段もなく,人類が滅びるのを待つだけでしょう。そんなこと言っちゃうと予算もつかないので,ロケットを打ち上げて軌道を変えるとか,いろいろ考えられているように宣伝はしていますが,私は,実現不可能だと思っています。だから,このような観測をしても,おそらくは,人類の滅亡を先に知るかどうか,だけのことでしょう。
 遠からぬ将来,かつて恐竜が滅んだように,人類も,隕石の衝突やらウィルスやら,はたまた核戦争による自滅やらが原因で,残念ながら,あっけなく滅び,地球は6回目の生物大量絶滅をむかえるのです。所詮,それだけのことです。宇宙の規模で考えれば,人類は別に選ばれた存在でもなけば,存在しなければならないならない理由もないのです。

 私は,このごろは,がむしゃらに彗星や星雲・星団の写真を写す情熱もなくなったので,のんびりと気の向くまま,肉眼で星見を楽しみなが写しています。むしろ,星見よりも,深夜のドライブを楽しんでいるくらいです。
 この晩もまた,彗星は簡単に写せたので,それ以外にも,計画もなく,いろいろと写してみました。
 4月とはいえ,明け方の空に見えるのはすでに夏の星座です。さそり座やいて座あたりは肉眼で見ても美しいのですが,双眼鏡で眺めるとさらにとても魅力のある場所です。やたらと星雲や星団が視野に入ってきます。これらの場所を写した3番目の写真は,いて座の三裂星雲と干潟星雲,4番目の写真は,いて座のわし星雲とオメガ星雲,そして5番目の写真は,それ以外の小さな惑星状星雲と球状星団です。
 星を見た帰り道, 明け方の東の空には月と木星と土星が昇ってきて,とてもきれいだったので,思わず道路際に車を停めて,再び見とれました。私は, いつも,明け方の東の空が世界で一番美しいと思います。

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 前回11月9日の早朝,アトラス彗星(C/2020M3 ATLAS)とエラスムス彗星(C/2020S3 Erasmus)を写しに行ったことはすでに書きました。この季節,まだあまり寒くなく,空も澄んでいるので,星見には最適な季節です。そしてまた,夜が長いので,夕方は午後6時を過ぎれば,また,明け方は午前6時ころまで星が見られます。そこで,明け方の星を見るにも,春のように無理して深夜の2時に起きる必要もありません。
 私の,10等星より明るい彗星をすべて写す目標も,現在見えている3つの彗星・ハウエル彗星(88P/Howell),アトラス彗星(C/2020M3 ATLAS),エラスムス彗星(C/2020S3 Erasmus)は達成したこともあって,そのとき以来,次第に月も新月となりさらに条件がよくなったのに,星を見にいく情熱が以前ほどなくなったのか,はたまた歳のせいか,静観を決め込んで2週間以上が過ぎました。

 あまりによい天気が続いているので,少しやる気がでて,あれ以来彗星はどうなったのかと調べてみると,何と,エラスムス彗星が6等星ほどまで明るくなったということを知りました。そして,まもなく太陽に接近して見られなくなるとかかれてありました。
 そこで,こりゃ1度は写しておかねば,ということになって,11月26日の早朝,午前4時に起きることにして,晴れていれば近場に写しに行くことにしました。
 午前4時よりも少し早く目覚めて空を見上げると… 快晴でした。いつものように手際よく準備をして出かけました。
 南西の天頂近くにはオリオン座が美しく輝いていました。目的はエラスムス彗星だけだったので,写してすぐに帰るつもりでした。この時期,南西にはオリオン座,おおいぬ座,こいぬ座と明るい星々のある星座が輝いています。しかし,南東の空には本当はうみへび座があるのですが,空の明るい場所では星がほとんど見えません。かろうじて見えるのはもう少し天頂に近いところにしし座やおとめ座の1等星スピカがあるくらいです。
 いつも書いているように,私の古い望遠鏡には自動導入装置はついていないので,自力で天体を入れる必要があるのですが,それがおもしろいのです。目盛り環を利用するという方法もあるのでしょうが,ファインダーで探せるし,そのほうがさらにおもしろいので,ほとんど使ったことはありません。所詮は趣味の世界です。

 ということで,今回もまた,ほとんど星の見えない空で,エラスムス彗星を探していきます。すでに金星が東の空に昇っていました。その右上にスピカが見えます。このふたつの星を1辺として,右下,金星とほぼ同じ高度に3番目の頂点を仮定して正三角形を作ると,そこにエラスムス彗星があるのですが,エラスムス彗星は6等星とはいえ双眼鏡でも見えません。しかし,その近くにうみへび座のγ星があって,これは3等星,双眼鏡で見えるので,これを探すとすぐに見つかりました。今度は同じようにして,望遠鏡のファインダーで探します。
 しかし,ファインダーの視野は双眼鏡の視野より狭いので探しにくく,バカなことに私は,からす座のβ星をうみへび座のγ星と間違えたのです。そこで,写真を撮ってもうみへび座のγ星のあたりとは星の並びが違いました。改めて調べなおすと,望遠鏡を固定した高度が違うことに気づいて,改めてうみへび座のγ星を見つけてその付近の写真を写すと,かわいい彗星が写っていました。これが今日の1番目の写真です。地平線の向こうは名古屋なので空が明るく,しかも地平線に近いので,6等星とはいえ,この程度しか写りませんでしたが,立派な尾がついていました。

 これで目的は達成したので帰ろうと思ったのですが,調べてみると,これもまた前回写したアトラス彗星がおうし座のメシエ1の近くに9等星で輝いているのを知りました。天頂近く,空もそれなりに暗いので,9等星とはいえ簡単に写ります。そこで写したのが2番目の写真です。こんなことなら,メシエ1と同じ視野に写るような画角の望遠レンズを持ってくればよかったと後悔しました。事前に調べもせずこうしてなんとなく楽しんでいるから,このようなことになるわけです。せっかくなので,別の写真でメシエ1も写しました。これが3番目の写真です。アトラス彗星とメシエ1は同じくらいの明るさでした。
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 メシエ1(=M1・通称「かに星雲」)は1054年,天の川銀河内に出現した超新星の残骸です。爆発した星の中心核は16等の中性子星として残っていて,約30分の1秒の周期で電波やX線を出すパルサーとして知られています。
  ・・・・・・

 最後に,記念に望遠鏡を iPhone で写して終了です。それが4番目の写真ですが,何と金星も写りました。
 家に帰って改めて調べると,2,3日前に,ハウエル彗星(88P/Howell)が夕方の西の空に木星と土星に接近していて,一緒に写真に収めることができたのを知って,ずいぶんがっかりしました。逃がした魚は大きいといいますが,いつも,写せた満足より,写せなかった残念のほうが記憶に残ってしまいます。
 さて,これで2020年の秋の星見も終了です。いや,11月30日に半影月食が残っているのを忘れていました。そして,いよいよ12月。冬です。12月下旬におもしろい天体現象があるのですが…。それはまたそのときに。

☆ミミミ
お昼間,太陽には大きな黒点が見えています。

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