しない・させない・させられない

Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.

USA50州・MLB30球場を制覇し,南天・皆既日食・オーロラの3大願望を達成した不良老人の日記

カテゴリ:星を見る > 惑星

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☆☆☆☆☆☆
 2021年11月8日の白昼,月齢3.2の月が金星を隠すという金星食がありました。このときは天気が悪く,残念ながら見ることができませんでしたが,白昼の空に金星を見ることができるかどうか,という疑問が残りました。そこで,その翌日,天気がよかったので,白昼の金星が見られるかどうか挑戦してみた結果,肉眼でも見ることができることがわかりました。
 さて,2024年5月5日午前12時8分,今度は,火星食があるということでした。月齢は26.2,しかも,隠されるのが金星ではなく火星ということで,そんなものが見られるのかな? と思ったので,試してみることにしました。

 まず,午前7時15分ごろ,すでに太陽が昇って明るい空に,月が見られるのかを確かめてみました。 
 それが意外と簡単に見つかりました。双眼鏡で見つけると,今度は目を凝らせば,肉眼でも見られるのです。これには驚きました。月齢26.2が見られるなら,お昼間でも,ほぼ,月は見ることができるわけです。
 さて,火星食です。こちらはどうでしょうか。
 火星食が起きる20分ほど前,再び,月が見られるか,確かめてみました。やはり,簡単に月は見つかりました。これで,準備は完了,あとは火星食を待つだけとなりました。

 予報された時刻が近づいたので,シャッタースピードをいろいろと変えて,月を写しました。金星に比べて火星は暗いので,露出をかけなければならないのですが,そうすると空の明るさに負けてしまい,その塩梅がむずかしいのです。
 とにかく,写真を撮り終えて,後で,調べてみました。
 火星はなかなか判断が難しかったのですが,けっこう多くの写真の同じ位置にそれとわかる白い点が写っていました。
 そんなわけで,白昼の火星食も,何とか写せるということがわかって,私は,納得しました。
 それにしても,アストロアーツのウェブページにあったように,簡単に見つかるなら,さぞかし美しいのになあ,と思ったことでした。

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☆☆☆☆☆☆
 このところ,明け方の東の空に,水星と火星が接近しているということです。
 2024年1月8日から1月10日の早朝は,金星,水星,月の並びが美しく,多くの写真を撮りました。このときも火星が地平線ぎりぎりにあったのですが,確認できませんでした。
 現在も,火星の高度はそのときと同じくらいで,日の出30分前でも5度程度と非常に低いものです。すでに薄明が進んでいて「こんなもの見えるのかな? 写るのかな?」と疑問があったので,見えなければ見えなくてもよくてそれを確かめることが楽しいから,実行してみることにしました。

 火星と水星が最も近づいたのは1月28日だったのですが,あいにく曇っていて,見ることができませんでした。翌1月29日は晴れ渡ったので,挑戦することができました。
 70ミリレンズを使うと金星と火星と水星を同じ画面に入れることができて,金星を右上に配置すれば,左下に火星と水星が入るので,画角に入れるのは容易で,写すためには感度と露出時間の塩梅だけでした。露出時間が少ないと星が写らず,反対に多すぎると,すでに薄明がはじまっているので,空に被ってしまい写りません。その匙加減がむずかしいのです。
 午前6時に撮影をはじめました。
 はじめに露出時間4分の1秒,ISO1600で写した写真を確かめてみると,昇ってきた水星を捉えることができたので,うれしくなりました。よく確かめると,火星も写っていました。さらに時間を置くと,高度が高くなってきて,水星と火星はカメラのファインダーでも簡単に見えるようになり,写真では,火星は赤く,水星は白く写りました。その位置に双眼鏡を向けると,水星は簡単に見つけることができて,水星から目を凝らして右上に写すと,火星も見ることができました。
 さらに高度が高くなると,肉眼でも確認できるようになりました。
 しかし,わずか10分後には空が明るくなってしまい,その姿は視界から消えました。

 反対側の空に目をやると,薄明の中,有明の月が美しく輝いていました。
 1月の満月を「ウルフムーン」といいます。今年1月の「ウルフムーン」は1月26日だったので,1月28日は月齢17。この月を「立待月」といいます。
  ・・・・・・
 「立待月」とは,日没後に今か今かと立って待つうちに出てくる月,の意です。
 十五夜以後,月の出はしだいに遅くなり,十六夜の月は山の端にいざよい,十七夜「立待月」は立ち待つほどに出,十八夜「居待月」(いまちづき)は座し居て待ち,十九夜「臥待月}(ふしまちづき)は臥して待ち,二十日「更待月」(ふけまちづき)は夜半近く,というように出が遅くなっていきます。これらはそうした月の名称です。
 西洋では毎月の満月にニックネームをつけ,日本では,月の満ち欠けひとつひとつに名称を与えるという,この感性の違いがおもしろいです。
  我門をさしわづらひてねるをのこ
  さぞ立待の月もみるらん
    「新撰六帖」第一 衣笠家良
  ・・・・・・
 この日は夕方からずっと晴れ渡っていたので,前日の夕刻も,月が出る午後7時30分を過ぎたころ,東の空に昇ってきた赤く輝く月を見ることができました。明け方には,その月が位置を変えて,西の空に,まぶしいくらいに白く輝く姿を見ることができました。
 この月の「しおり」(Shioli)と名づけられたクレーターでは,今,日本が送り込んだ月探査機「SLIM」が,太陽の光を受けて眠から目を覚まし,活動を開始しました。 

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 このところ,やりたいことがどんどん増えてきて,ゆっくり星見に行く時間がありません。星は大概のものは見てしまったので,明るい彗星でも来ない限りは後回しです。なにせ,星雲や星団はいつ見ても同じで逃げていきませんから。とはいえ,夕暮れの「かわたれどき」と明け方の「かたわれどき」は非常に美しく,そこに惑星や月が共演すると,まことに興味深い姿を現すので,思わず見とれてしまいます。
 そんなわけで,このごろは,その時間ともなると,ほかにやりたいことがあるのにもかかわらず,近場に,三脚につけたカメラを持ちだして,そうした姿を写すことが楽しくなってきました。
 今のデジタルカメラはとても優秀なので,思った以上の写真が簡単に写せます。また,このごろは,ソフトフィルターなるものをつかうと,強い光を受けている場所ほど光が大きくにじみ星像が際立つのでこれを活用するようになりました。
 現在は,明け方の空には惑星がいないので,今日は,夕方の空,つまり「かわたれどき」に写した写真をいくつか載せることにします。

 まず,1番目の写真は2023年4月3日の午後7時5分ごろから5分間にわたって写した国際宇宙ステーションです。国際宇宙ステーションはとても明るくて,予報通りに動くので,写しやすいのですが,何度見ても感動します。ただし,長時間露出をすると空が「真っ白になってしまうので,適当な露出で何枚も写して,コンピュータで「比較明コンポジット」をしなければなりません。そこで,ところどころ軌跡が破線となっているわけで,国際宇宙ステーションが輝きを停めているのではありません。
 実は,この時期の夕刻に国際宇宙ステーションを見ることができることは知らなかったというか,気に留めていなかったのですが,4月1日に金星と天王星が近づいたのでその写真を撮ろうとして空を見たら国際宇宙ステーションが飛んでいてびっくりしました。そこで改めて調べると,4月3日にも見られることがわかったので,今度はそれを狙ったわけです。
  ・・
 2番目の写真は2023年3月24日の夜8時30分ごろに月と金星が大接近したのを旅先の佐渡島で写したものです。この日は南にいくほど月と金星は近くなり,沖縄では月に金星が隠されるという金星食が起きたので,それを見るためには,住んでいるところよりさらに北に旅するなんていうことをしていてはいけないのですが,そんなことはまったく頭になかったわけです。
 であったのに,この日,日本列島はほとんどの場所で曇ってしまったようで,私がいた佐渡島が晴れていたのが,まあ,いつものように悪運が強いというか何というか…。

 話が前後しますが,先に書いた4月1日に写した金星と天王星の写真が3番目のもので,4月3日に写したものが4番目の写真です。2日で少し金星の位置が変わっていることがわかると思います。天王星は6等星くらいなので,単独にいても,なかなかどの星がそうなのかわからないのですが,こうして,金星などの標的があると,簡単に見わけることができます。実際は3月31日に金星と天王星は最接近したのですが,あいにくこの日は曇りでした。
  ・・
 また,ちょうど同じ日に,水星が結構高く昇っていて見やすい位置にあって,雲さえなければ,これはどうでも写せるのですが,日没30分後の西の空ぎりぎりに木星があってすぐに沈んでしまうというので,なんとかこれが写せないものかとトライしてみたのが,5番目と6番目の写真です。結論からいえば,がっかりでした。明け方ならこの条件なら見ることができたと思うのですが,どうしても夕方はまだ街灯が明るく,また,春は空が濁っているので難しいのです。
 いつも書いているのですが,見えなければ見えないということがわかったことが意義のあることなので,それはそれで満足できます。

 そんなわけで,日々,さまざまな条件で見え方が違うのを確認するのは楽しいことです。
 こんなことをしているから,いつも,やりたいことだらけになってしまうのですが。

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 このところ,夕方の西の空で木星と金星が見かけ上どんどん接近していて,昨日2023年3月2日に離角が0.5度まで最接近しました。月の視直径(見かけの大きさ)も0.5度ほどなので,月の大きさ程度です。
 これを楽しみにして,連日写真を写していたのですが,当日の天気だけが心配でした。その前の日3月1日に前線が通過して,それまでのポカポカ陽気が一変して冬のような天気に変わり,そうなると,西の空に雲が出るので,見ることができるかな? と不安だったのですが,幸い,晴れ上がって,幻想的で美しい姿を見ることができました。
 今日の写真は,1番目のものが30ミリほどの広角で写したもので,ねらいどおり走っている新幹線も入れることができました。そして,2番目のものが,ここ3日載せたものと同じ300ミリで写したものなので,ここ3日間,次第に近づく様子を比べることができることでしょう。

 木星と金星が,見かけ上接近して見える現象自体はさほど珍しいものではありませんが,夕方,つまり,金星が宵の明星のときに木星が最接近した離角が0.5度以下であり,太陽が沈んで空が暗くなった30分後に高度が20度を超える見やすいものが起きたのは,実に8年ぶりのことでした。前回見ることができたのは,2015年7月1日で,日没30分後の高度は21度,木星と金星の離角は0.4度でした。しかし,このときの天気を調べてみると,やはり,梅雨末期で,全国的に雨だったので,実際は見ることはできませんでした。
 また,明け方,つまり,金星が明けの明星のときは,最接近した離角が0.5度以下であり,太陽が昇る30分前に高度が20度を超える見やすいものが起きたのは,ここ20年以上ありませんでした。条件を少し甘くして調べ直してみると,2015年10月26日は晴れで,高度は35度もありましたが,離角は1度も離れていたので,見栄えがしなかったし,2022年5月1日は雨だったので,離角0.25度,高度13度でしたが,見ることができませんでした。
  ・・
 そのようなわけで,ある意味,とても珍しい現象を,雲のない夕方の西の空に見ることができたのは幸運でした。
 このような天体現象は,文字で読んだりイラストを見るよりも,実際に見てみると印象がまるで違い,とても美しく,おもわず見とれてしまいます。特に,この季節は空が澄んでいるので,晴れさえすれば,「かわたれどき」の夕焼けの空に明るい星が浮かび上がるので,それはそれはすばらしいものでした。

 なお,2月28日には,月が火星と接近しました。これが今日の最後の写真です。以前にも書いたことがありますが,月と惑星の接近は月が明るすぎて,うまく写すことができません。月の模様を写せば露出が不足して火星が写らず,火星を写せば月が露出オーバーとなってしまいます。

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 異常な暑さの続く日々。わざわざ早起きしなくても午前3時に起きるようになったので,これを幸いに,涼しい時間に早朝散歩となりました。しかし,空を見上げれば,水星,金星,火星,木星,土星,さらには天王星,海王星まで並んでいるので,散歩どころでなく,魚眼レンズをつけたカメラを三脚に取り付けて持参するようになってしまいました。ところが,晴れていても,空には雲があったり,東の空低く雲が覆われていたりと,なかなか満足のいく写真が写せません。
 今日の2番目の写真は6月28日のものですが,水星がかろうじて雲の間から顔を覗かせて,それを狙って写ればそれで感動するような有様でした。
 さて,そんなこんなで1週間。すでに月は新月を越えてしまったので,この惑星揃い踏みに月が参加しなくなったのが残念なのですが,それでも,6月30日は,ついに雲がほとんどなく,星が輝いていました。こうなると,水星が地平線から顔を出したときからが勝負です。問題なのは,時間が経つにしたがって空が明るくなってきて,天王星と海王星が写らなくなることと,水星を写そうとすれば東の白んだ空に消えてしまわないように,露出を抑える必要があるということで,困難を極めるのです。
 そんな状況だったのですが,何度もシャッタースピードを変えながら,なんとか惑星すべてが写ったのが今日の1番目の写真です。水星は,写真でこそ写しにくいものですが,双眼鏡では思った以上にはっきり見えるので,一度場所がわかってしまえば,肉眼でも探し出せました。
 こうして,やっと,満足な写真が写せました。

 しかし,それよりも…。
 田んぼの用水路に何か生き物がいるのです。大きな音を立てて泳いでいます。これは毎朝のことだったのですが,はじめは魚だろうと思っていたので,気にも留めていませんでした。ところが,6月30日,ついに目撃してしまったのです。それは巨大なネズミでした。
 家に戻って調べてみると,ヌートリアでした。
  ・・・・・・
 ヌートリアは,南アメリカが原産のネズミ目ヌートリア科ヌートリア属の動物。頭胴長40センチメートルから 60センチメートル。
 ヌートリアの毛皮は,水に濡れても保温できる毛皮として,質が高いとされ,毛皮を目的に導入されたものが,養殖場から逃げ出したり放逐されたりした個体が,野生に定着。日本でも,1940年代後半から1950年代に毛皮の需要が減少したことで大量に放逐され,野生化。
 今後日本で広がった場合,生態系への影響が懸念される動物。
  ・・・・・・
とありました。
 さらに,新幹線の線路は,この日もまた,架線工事の車両が走っていました。
 このように,人々が活動を開始する以前の世界は,思った以上にさまざまな出来事が繰り広げられているのです。

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 梅雨明けだそうです。というより,今年は梅雨そのものがあったのでしょうか?
 前回も書いたように,惑星直列のせいか? 地球自体がいろいろとおかしいような気がします。いよいよ終末か! という気がしないでもないのですが。

 という悪い冗談はともかくとして,昼間は暑いので,早朝散歩を楽しんでいます。一向に晴れないので,星見に遠出する気もないのですが,散歩をするだけなら問題ありません。
 6月27日の朝も,午前4時まえに散歩に出かけようと外に出てみると,たくさん雲がありましたが,東の空には雲が切れていて金星と月齢27.6の薄い月がきれいでした。こうなると予定変更です。さっそくカメラと三脚を取りに行って再び行動開始です。
 とはいえ,どんな画角で写せるのか事前に下調べもしていないのでさっぱりわからず,広角から望遠まで,おまけに魚眼レンズも持参することにしました。
 今にも月を雲が隠してしまいそうだったので焦りましたが,なんとか写すことができました。

 雲がまったくないのなら,それなりに空の暗いところまで行って,7惑星をすべて収めた写真を写す気力も湧こうというものですが,こんな天気ではそんな気持ちにもならず,しかし,考えてみれば,雲がほどほどに空を覆っているのもまた風流です。
 前回にくらべて月齢がずいぶんと増して,惑星の間を移動していたのですが,その間,まったく晴れなかったので,ずっと何も見ることができませんでした。
 それにしても,惑星がすべて明け方の空に見えるというのは今日の最後の写真のような位置関係だからです。この図はステラナビゲーターからとったものです。

 さて,まだほとんどの人が目覚めていないこの時間,結構興味深いことが起きています。
 まず,これは毎晩のことではないようですが,新幹線の架線に,工事用の長い列車が通りました。さらに,月と金星の横を飛行機雲が流れていきました。望遠レンズで見てみるとジェット機でしたが,これは不思議なことです。こんな時間に旅客機が通るというのはどういうことなのでしょう。さすがに国内線ではないと思うので,海外からの帰国便でしょうか。方角的にはセントレア・中部国際空港に向かっているようでした。家に戻ってしらべても,この時間に到着する便はないので,おそらく貨物便なのでしょう。

 いずれにしても,深夜に車を走らせても,これまでは頭の中は星見でいっぱいだったので気づかなかったのですが,この時間,結構知らないことがたくさんあって,それなりにおもしろいものだと,近ごろ思うようになりました。
 おそらく,この夏は異常な猛暑になることでしょうから,しばらくは昼夜逆転で過ごすとしましょうか。

太陽系


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 6月14日の朝日新聞「語る・人生の贈りもの」というコラムに,囲碁棋士の小林光一さんが「3時に起床して囲碁の研究をしている」とありました。
  ・・・・・・
 3時に起きてます。昔から早寝早起きだったけど,さらに起きるのが早くなってね。
  ・・・・・・
 だそうですが,私も同じようなもの。歳をとると寝るのも体力がいるのです。そこで,早起きになった私は,早朝に星を見るのはまったく苦ではないのです。しかし,特に6月は夜明けが早く,午前4時にはもう明るくなるので,星を見るために早起きするとなると,午前4時ではすでに遅いので,若い人には困難な話です。

 そんな季節ですが,現在,明け方の空には,水星,金星,火星,木星,土星,天王星,海王星まで揃っています。これを「惑星直列」とかいうそうです。さらに,ここ数日は月までも参加です。
 しかし,あいにくの梅雨空なので,一向に晴れません。
 6月19日は午前3時30分に起床しました。今日も曇りだろう,とは思ったのですが,せっかく起きたのだからと窓を開けると,意外にも月や金星が明るく輝いていました。そこで,カメラを三脚に固定して,魚眼レンズを取りつけて,サンダル履きで近くの田んぼのあぜ道まで出かけました。寒くないので楽です。そして午前3時46分に写したのが,今日の1番目の写真です。
 こういった現象は,写真で見るより,実際に空を眺めたほうがずっと感動するものです。

 ところで,もう,6年以上も前のことになりますが,当時もまた「惑星直列」が話題となりました。そのときのバカげたニュースは次のものでした。
  ・・・・・・
【緊急警告】
 1月20日,5つの惑星が一直線に並ぶ「惑星直列」(The Parade of Planets)が起きる!  地球が無重力になり,自然災害も多発か!?
  ・・
 しかし実際のところ,地球が無重力状態となる現象は起きませんでした。
 ちなみに,過去に水星から海王星までの太陽系の全惑星が絡む「惑星直列」が起きた年の出来事を調べてみると,989年の新潟焼山の大噴火,1666年のロンドン大火,1982年の北海道浦河沖地震やフォークランド紛争など,世界を震撼させるような事件や災害が起きていることは確かです。
  ・・・・・・
 ということだったのですが,であるなら,このところの新型コロナウィルスの世界的な蔓延も,ロシアによるウクライナ侵攻も,異常な円安も,半導体の不足も,ジェネリック薬品の品薄も,みな「惑星直列」が原因なのでしょうか?

 ところで,この,2016年に起きた「惑星直列」は1月末から2月はじめのことだったのですが,このときに写した写真も載せておきます。3番目が2016年1月31日で5番目が2016年2月8日,ともに朝6時ごろです。このときは冬だったので,空が明るくなるのは遅く,さほど早起きしなくてもよかったのですが,最も寒いときでした。当時はすごい現象を写したと思っていたのですが,このときの「惑星直列」は現在とは違って,天王星と海王星は参加していなかったことを,改めて今回調べて知りました。
 ならば,今回のほうがずっとすごいです。でも,晴れないので,「惑星直列」は話題にもなりません。いや,それとも,世の中に星を見ているような余裕がないからでしょうか?

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 すでに冬は過ぎ,6月の夏至をめざして,夜がどんどん短くなっています。
 この季節,明け方の東の空に,土星,火星,海王星,木星,金星と5つの惑星が並んでいて見事です。この中でもひときわ明るい木星と金星の距離が日に日に近づいたり,また,離れていったりと,毎日見ても見飽きるものではありません。
 なのに,これらが見られるのは,早朝4時過ぎであり,5時ではすでに空が明るくなってしまうのです。
 また,夕方の西の空には,この5つの惑星から取り残された孤高の水星が,4月29日に東方最大離角となり,これもまた,最大高度でみることができます。そして,そこに,月が仲間入りしたりと,まことに美しいのです。
  ・・
 幸い,私の住むところからは,西の空も東の空も,ずいぶんと低いところまで見ることができるので,その点は,ビルや家々に隠れてこんなにすばらしい夜空を見ることができない都会に住む人が気の毒なくらいです。
 ということで,私は勝手に忙しくしていて,早朝からカメラと三脚を持参して田んぼのあぜ道で写真を写して楽しんでいます。

 ところが,きわめて残念だったのは,木星と金星が0.2度という月の大きさの4分の1もの大接近をした5月1日の早朝,そして,月齢1.6の月が水星の真下にあるという5月2日の夕方,ともに曇ってしまって,まったく見ることができなかったということでした。
 ただし,5月2日の夕方は,かろうして月齢1.6の月だけ,一瞬みることができました。
 すでに,5月1日のブログに4月30日の明け方の5つの惑星を写した写真と,5月4日のブログに5月3日の夕方の月と水星を写した写真を載せたので,今日は,その前後に写したものを載せておくことにしました。
 1番目の写真は5月2日の明け方に写したもの,これは薄曇りがあります。また,2番目の写真はすでにブログに載せた5月3日の別の写真,そして,3番目の写真はそのときの月齢2.6の月を拡大したものです。また,4番目の写真は,5月2日の夕方にかろうして見えた月齢1.6の月をなんと手持ちで写したものです。
 また,1月後の5月の終わりから6月のはじめにかけて惑星や月が同じような条件になるので,それを楽しみに待つことにします。

 ところで,ただひとつ残された惑星である天王星は今どこにいるのでしょうか?
 実は,天王星は,ちょうど太陽のうしろにあって,しばらくはまったく見ることができなのです。
 今はそんな天王星なのですが,今年は,2022年11月8日に皆既月食があって,皆既月食中に天王星食が見られる,という珍しい現象があります。つまり,皆既中の月が天王星を隠すのです。これを楽しみにしたいと思います。

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 やっと春らしい日がやってきました。2022年3月20日,明日は春分の日ということで,この日の日の出は5時56分,日の入は午後6時4分でした。
 寒くも暑くもない春の晴れた日の早朝,日の出前に散歩をするのは気持ちのよいものです。

 1月7日に太陽を追い越してからずっと明け方の空に見えている金星は,3月20日に西方最大離角となりました。
 最大離角というのは,地球よりも内側の軌道を公転している水星や金星という内惑星が地球からの見かけ上,太陽から最も離れることです。内惑星は地球から見て,太陽から大きく離れた方向に見えることはありません。最も離れるときが最大離角です。
 金星が日の出前の東の空に見えるのが「明けの明星」で,明け方に最も離れるときが西方最大離角,日の入り後の西の空に見えるのが「宵の明星」で,夕方に最も離れるのが東方最大離角です。
 ただし,地球の自転軸が地球の公転面に対して傾いている,つまり,寝ているので,最大離角のときが最も高度が高いというわけではありません。春の夕方や秋の明け方で起こる最大離角のときは高度が最も高く,金星では40度にも達するのですが,春の明け方は20度ほどでしかありません。
  ・・
 いわゆる「お受験」で,私立中学校入試の理科の問題集をやっている気の毒な小学生たちが,天体の動きを四苦八苦して学んでいますが,天体の動きは小学生レベルで理解できるようなものではないのです。先に観察してから知識を身につけることが大切なのです。
 観察をしたこともないのに,問題集などで丸暗記をするような知識は,実際に観察するとき,むしろ邪魔になることのほうが多いのです。 
 そもそも,教えるほうがそうした現象を見たことがない人が多いのが皮肉な話です。

 現在,金星の右下には火星が見えます。マイナス4.5等星の白い金星と1.2等星の赤い火星の対比がみごとです。
 3月16日に見かけ上は約4度まで近づきましたが,実際は1億9千万キロメートルほども離れています。火星は,今後,高度を次第に下げていく金星とすれ違うように移動していきます。
 また,金星の左下には土星が見えます。1か月ほど前はずいぶんと高度が低かったのですが,それを忘れるほど,高度が高くなりました。土星は火星よりも明るいのですが,これまで,高度が低いときは,大気の状態でとてもよく見えるときがあれば,目を凝らしてもなかなか見えないこともありました。しかし,これまで土星の隣にみえていた水星はずいぶんと高度が下がり,というか,太陽に近づいてしまい,この日は午前5時40分過ぎに姿を現します。その左隣には明け方の空に回った木星もいるのですが,夜明けが近く,空に埋もれてしまい,もう,見ることはかないません。
 いずれにしても,現在は,水・金・火・木・土,それに海王星までもが,明け方の空にいて,天王星だけが寂しく夕方の空に見えるのです。また,3月末になると,明け方の東の空は,これらの惑星に月が仲間入りした美しい姿を見ることができます。
 なお,この日の月は月齢17.1。西空高く,おとめ座の「スピカ」の右側4度のところに輝いていました。

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 2022年2月は,最悪でした。毎日天気が悪く,寒い日が続きました。昨年であれば2月上旬に咲いていた梅は,3月になろうとしているのに,ほとんど咲いていません。
 しかし,確実に春は近づいていて,夜明けが早くなってきました。この時期,早朝5時過ぎから6時ころは夜明け前の東の空がきれいです。そして,今年は,そこに明けの明星が明るく輝いています。

 都会では,金星だけが見えますが,よく目を凝らすと,その右下に火星が見えます。さらに,金星の高度が高くなったころ,水星,そして,さらにその下に土星が昇りはじます。
 そこに彩を添えるのが,日々形と場所を変える月です。
  ・・
 幸い,私の住んでいるところは高い建物がないので,地平線近くまで見通せます。あいにく空が明るくて満足に星は見られませんが,夜明けの空に惑星を見るだけならそれでもなんとかなります。
 ということで,ここ数日,早朝5時過ぎに三脚にカメラを取りつけて,東の空を写しました。それが今日の写真です。

 まず1番目は2月25日です。
 この日はまだ月が惑星から遠かったのですが,空が澄んでいて美しかったので,超広角にして,月も加えて写しました。地平線近くに昇ったばかりの水星も写りました。もう少し後までいて土星も写せばよかったのですが,このときは土星は空が明るくなりすぎて写らないと思い込んでいました。
  ・・
 2番目は翌2月26日です。
 昨日の空の美しさでやる気になったのはいいのですが,空の低いところに雲が出ていて,残念な結果となりました。
  ・・
 3番目が2月27日ですが,この日の空は最悪でした。
 毎日観察していると,毎日,空気が澄んでいるかどうかで,まったく星の見え方が違うことを認識します。晴れていて空が澄んでいると簡単に見ることができる地平線ぎりぎりの星々ですが,それがまったく見られなくなるのです。 
 土星も写すぞ,と意気込んでいたのですが,土星どころか水星すらやっと写真で確認できたほどでした。
  ・・
 4番目が月齢26.9になった2月28日のものです。この日は最高の条件でした。空は澄み渡り,月と惑星が写真に最も魅力的に写る位置にありました。そして,念願の土星もなんとか写すことができました。
 まったくこの前の日まで眼中になかったのですが,以前に2度写したことがあったハッブル宇宙望遠鏡がちょうど明け方に南の空を通過することを知りました。そこで,どこに見られるかを急遽調べたら,この写真の右上の金星のあたりから左下の土星のあたりまでを横切ることがわかったので画角を合わせて通過する時間に写してみました。しかし,どういうわけか,まったく見ることも写真に写すこともできませんでした。


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 11月8日は月が金星を隠す金星食でした。とはいえ,お昼間のこと,月も金星も見ることができるのかな? と疑問でした。
 子供のころ,名古屋市科学館の大きな望遠鏡で,お昼間の金星を見る,という集まりで見たことがあって,私は,お昼間の金星は望遠鏡を使わなければ見ることができないものだと思い込んでいました。
 しかし,私の持っている望遠鏡は自動導入でないから,視野の狭い,かつ,長い鏡筒を振り回してお昼間の金星を視野に入れるのも大変そうに思えました。
 
 11月8日。
 残念ながら雲が空を覆い,探すこともできませんでした。今日の一番最後の写真は国立天文台が写したものです。
 そして,その夕方,依然として雲に覆われていたのですが,一瞬雲が切れて,月と金星を写真に収めることができました。それが今日の1番目の写真ですが,すでに,月と金星はずいぶんと離れてしまっていました。
  ・・
 11月9日。
 皮肉にもこの日は晴天でした。そこで,昨日の疑問を解決しようとお昼間に月と金星を探すことにしました。
 月は簡単に見つかりました。双眼鏡の視野に月を入れて,そこから金星を探すと,思ったより簡単に金星が視野に入りました。そして,その場所を眺めてみると,確かに肉眼でも金星が確認できました。 
  ・・
 11月10日。
 早朝,日の出30分ほど前に,東の空に水星と火星が接近しているということで,それが見られるかどうかを試してみることにしました。情報によると「11月上旬,明け方の東南東の低空に水星と火星が大接近して見える。最接近は11月11日で,1度未満まで近づくが,日の出30分前で高度が5度未満と非常に低く,しかも,火星が約2等級と明け方に見るには暗いため,観察の難度はかなり高めだ」とありました。
 双眼鏡を水星のあるべき位置に向けると,簡単に水星は視野に入りました。しかし,火星は見ることができませんでした。少しして再び探して見ると,確かに火星を双眼鏡の視野で見ることができました。そして,その位置を目を凝らして肉眼で探すと,火星を見ることができました。
 写真ではあまり露出をかけると露出オーバーで星が飛んでしまうし,露出をかけないと今度は星が露出不足で写らないのですが,いろいろと設定を変えて数コマ写してあとで確認すると,火星がちゃんと写っていました。

 いつも書いているように,何事も確かめるに限ります。
 こうしてまた,疑問がひとつ,いや,ふたつ解けました。

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☆☆☆☆☆☆
 明るい彗星が見られないこともあり,また,惑星や月の残る夕方日没後や明け方夜明け前の景色の美しさを知ってしまったこともあり,家の近くで十分に撮影できることもあり,しかも,実際に試してみないことには見えるのか見えないのかもわからいということが興味深く,このところ,惑星と月の風景写真を楽しんでいます。
  ・・
 ここ数日前から,水星,木星,土星が明け方の東の空に見えるようになったので,現在は明け方の東の空をずっと追っかけています。地平線低いところに昇ったところで日の出を迎えるので,本当に見えるのかということに興味をもったことと,このところ家の周りを散歩するようになって家から徒歩5分ほどのところで写真を撮ることが可能な場所を見つけたことが理由です。彗星や星雲・星団を写すのとは違って,身軽にカメラと三脚だけを持って出かければいいので,それもまた,やる気が起きるわけです。

 地球からの距離が遠いので木星と土星の位置関係はほとんど変わりませんが,水星は日に日に高度を下げていって,木星に追い越されました。月もまた次第に欠けていって,高度が低くなってきました。
 そこで,前回書いたように,水星,木星,土星と月の位置関係がもっとも接近する3月10日に狙いを定めて,その前後を合わせた3月9日から3月11日の3日間はぜひ見たいと思っていました。
 3月9日の朝は,まだ月がまだ少し惑星からは離れていました。しかし,雲が多く,満足な写真は取れませんでした。肉眼でもはっきりみることができませんでした。しかし,何とか写した写真を家に帰ってから調べると,奇跡的に月も3つの惑星も雲の間に写っていたのはうれしい偶然でした。それが今日の5番目の写真です。
 待望の3月10日は雲が多くまったくダメでした。かろうじて写った写真もあったのですが,ピントが甘く,がっかりしました。あれだけピントには気をつけていたのに…。まだまだ修行がたりません。それが6番目の写真です。
 そして,3月11日。この日の月齢は27.1。高度が低く薄っぺらな月が写ればもっけもの,という気持ちで,3度目の挑戦をしました。午前5時10分ごろに到着すると,すでに,木星と土星は肉眼でもはっきりと見えました。そして,待つこと約10分,目を凝らすと,薄く月が見えはじめました。これには感動しました。まだ水星は確認できなかったのですが,月と木星からあらかじめ位置がわかっているのでその場所を凝視すると,水星も肉眼で見ることができました。こうして写したのが今日の1番目の写真です。
 家に帰ってから調べると,4番目の写真のように,肉眼では確認ができなかったその5分ほど前に,すでに写真には月の姿が写っているのに驚きました。
  ・・
 この季節は,さほど早起きしなくても,ちょうど日の出も午前6時くらいなのでその1時間くらいまえの東の空には,このような美しい風景が広がっているのです。

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 2021年,早くも3月になりました。このところ明るい彗星も見えないし,寒いので,しばらく星見に遠出もしていません。その代わり,明け方の空が美しいので,日の出前,毎日のように散歩を兼ねて空を見上げています。
 3月3日の早朝は,前日の夜の強風も収まって,快晴となりました。前回,2月26日は東のそらには雲があったので,今度は雲ひとつない空で,木星,水星,土星を写真に写すことにしました。木星と土星の位置はほとんど変わらないのですが,水星が次第に高度を下げています。

 カメラと三脚を持って家から出てふらふらと歩いて5分,いつものように,街灯のない田んぼのあぜ道に着いたのが午前5時20分すぎでしたが,すでに東の空には,木星,水星,土星,3つの惑星が肉眼でもはっきり見えました。
 昨晩の風で空気が澄んでいたので,こんなに容易に見ることができました。
 写真は,露出を増やすと,むしろ薄明で星が消えてしまいます。それは都会で暗い彗星を写すときも同じで,星を写すのに,何も露出時間を増やすだけが芸ではないのです。
 なるべく肉眼で見たときとおなじような空の明るさになるように,何度も露出を変えて写しました。
 目を反対側に写すと,月齢19.1の月が見えました。この月があと1週間すると,3つの惑星に接近します。3月10日がベストで,その前後3日間がおもしろい構図になります。晴れるといいのですが…。

 そうこうするうちに,南の空から天頂を通って北の空に人工衛星が動くのが見えました。見慣れている国際宇宙ステーションより明るいほどでした。先日も,夕暮れ時に散歩していたら,やはり,空に人工衛星が飛んでいるのが見えました。この時期,国際宇宙ステーションは見えないはずなので,どんな人工衛星なのかな,と思いました。
 家に帰って,いろいろ検索してみると,明るい人工衛星が見られるリストの載ったホームページを見つけました。どうやら,私が見たのは,中国が打ち上げた「CZ₋4B R/B」というものだったようです。「Chang Zheng 4B」というロケットで,2006年10月23日に打ち上げられ,宇宙環境,放射線とその影響の調査,宇宙物理環境パラメーターの記録およびその他の関連する宇宙実験の実施に使用されているそうです。
 通常は約2.5等星くらいで地球上から見え,最も明るくなるときでマイナス0.1等星にまで達するということです。どおりで明るく見えたはずです。

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☆☆☆☆☆☆
 1月は夕方の西の空に土星,木星,水星が追いかけっこをしていましたが,1月の終わりには仲よく太陽の裏側に隠れてしまい,というより,実際は地球が動いたわけですが,今度は揃って明け方の東の空に見えるようになりました。
 2月23日に水星と土星が最接近するということでしたが,調べてみると,日の出1時間ほど前の低い空で,こんなものが見えるのかなあ,というのが正直な気持ちでした。ならば,実際に見てみるしかない,ということで,2月23日から午前5時30分過ぎに東の空を見ることにしました。
 ところが,雲が多く,なかなか見ることがかないません。しかも,すぐに空が明るくなってしまいます。2月24日はかろうじて土星が見つかりました。よく見るとその左に水星も見つかりました。しかし,その下に木星が昇ってくるはずなのに,曇っていて見ることができませんでした。

 そこで,翌2月25日。前日,土星と水星の位置がわかっていたので,この日ははじめからカメラを固定して木星が昇ってくるのを待ちました。
 次第に空が明るくなってきたのですが,思った以上に土星や水星は明るく,肉眼でもはっきり見ることができたのには感動しました。若干雲があったのですが,雲にさえぎられても星の光が見えました。そして,しばらくすると木星も肉眼で見えるようになりました。
 家に帰って確かめてみると,肉眼では確認できなかった昇ったばかりの木星が家の間に写っているのにはびっくりしました。条件さえよければ,こんなに高度が低くても1等星は写るのです。
 こんなことを確かめることも,星を見る醍醐味です。
 実は,私が狙っているのは,3月10日なのです。3月10日には,土星,木星,水星に月齢26.1の月が加わるのです。この日,3つの惑星を写したのは,その時の予行演習だったのです。

 今日の1番目の写真は2月25日午前5時45分,2番目の写真が午前5時39分,3番目の写真が午前5時50分に写したものです。そして,4番目の星図がこの日の2番目の写真と3番目の写真を写した時間のものです。また,この日の日の出は6時27分でした。
 3月10日の日の出は6時10分なので,2月25日より17分ほど早くなります。そこで,5番目に3月10日の午前5時22分と午前5時34分の星図を対比させてみました。これを見ると,天気さえよければ,3月10日は,十分に3つの惑星と月が並んだ姿を写せるということがわかったので,とても楽しみです。
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 何もないような毎日でも,実は,空の上にはこんな興味深い現象がいつも待ち受けているのです。また,それが見られるのか見られないのか,それを確認することも,それなりに楽しいことです。日常のささいなことに心配しているだけで,こうしたおもしろい現象を見ないで過ごすのは,もったいないというものです。

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Doctor Yellow.

2月24日,2月25日の両日,家の近くをドクターイエローが走りました。2日にかけて,いろいろな写真と動画を写そうと計画したのですが,すべてうまくいきました。すっかり満足したので,私はこれで「撮り鉄」は卒業です。

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☆☆☆☆☆☆
 昨年12月下旬,木星と土星が大接近をしましたが,その後はともに西空に低くなってきました。また,水星は明け方の空から夕方の空に移ってきました。そこで,2021年早々,1月上旬から中旬ごろ,夕方の西南西の低空に木星,土星,水星が大接近して見えるようになりました。最も接近するのは1月10日から11日ごろで,直径3度の視野の中に3つの惑星が収まってしまうほど近づきます。とはいえ,日の入り30分後の水星の高度はわずか5度ほどと低く,西南西の空が開けたところでないと見ることはできません。
 幸い私が住んでいるところは,東から南,南から西が開けているので,冬は日の出から日没まですべて見ることができます。また,西の空は,明かりがなく,山があるだけなので,3度くらいの高度以上なら見渡すことができます。ただし,冬場の西空は雲が出ます。

  ・・・・・・
 水星(Mercury)は太陽に最も近い公転軌道を周回している惑星です。岩石質の「地球型惑星」で,惑星の中で大きさと質量はともに最小のものです。直径は4,879.4キロメートルで地球のわずか38パーセントしかなく,木星の衛星であるガニメデ(Jupiter III Ganymede)や土星の惑星であるタイタン(Saturn VI Titan)よりも小さいのです。
 水星の見かけの明るさは,地球からの位置によってマイナス0.4等から5.5等まで変化します。また,水星は太陽に非常に近いために,ほぼ2か月ごとに日の出前と日没直後のわずかな時間しか観察できません。太陽の周りを88日で公転し,地球から見たとき太陽からもっとも離れても28.3度に過ぎないためです。
  ・・・・・・
 とはいえ,そんな知識がいくらあろうと,見えるか見えないかは実際に見てみないことにはわかりません。そこで私は1月8日から水星を探していたのですが,1月8日は西の空だけ曇っていて,水星どころか土星も見えませんでした。ただし,木星だけはかろうじて沈む直前に確認できました。
 そして,1月9日。太陽が沈むところは見えたので大いに期待して木星が見えるほど空が暗くなるのを待ちましたが,やはり,西の空には雲がありました。そのうちに木星,そして,土星が見えるようになってきましたが,やはり水星は雲に隠れているようで,確認できませんでした。
 やがて,水星が沈む直前,その姿が見えたときは感動しました。写真にもしっかり写りました。

 知らなければ何も写っていないような写真ですが,私には見たとおりに木星と土星と水星を写すことができてとてもうれしいものでした。そしてまた,どのくらいのものが見られるのかということが実証できたことが,それ以上にうれしいことでした。
 1月10日はさらに水星の高度が高くなって木星と土星に接近するので,雲が切れるのを願っています。


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 天王星,海王星,冥王星の話題の最後は準惑星です。
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 太陽のまわりを公転する天体は,惑星(planet),小惑星(minor planet),彗星(comet),惑星間塵(interplanetary dust cloud)に分類されます。また,小惑星(minor planet)はさらに,準惑星(dwaft planet)と「それ以外のもの」からなります。「それ以外のもの」とは古典的な小惑星(従来小惑星(asteroid)とよんでいたもの)(classical asteroid)です。準惑星は冥王星と従来小惑星とよんでいたものの中から特別な条件をみたすものだけが格上げされて冥王星の仲間となったものです。
 日本語では,minor planet と classical asteroid をともに小惑星というので混乱が生じています。
 また,それとは別の分類として,準惑星(dwaft planet),古典的な小惑星(classical asteroid),彗星(comet),惑星間塵(interplanetary dust cloud)を合わせて太陽系小天体(small Solar System body = SSSB)といいます。
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●小惑星の発見
 1802年以降,「セレス」(「ケレス」ともいう)(Ceres)「パラス」(Pallas)「ジュノー」(Juno)「ベスタ」(Vesta)などの天体がメインベルト(main belt=火星と木星の間に軌道をもつ)に数多く発見されましたが,惑星ほどの大きさがなかったために,小惑星(asteroid)とされました。
●太陽系外縁天体の発見
 1992年代以降になると海王星軌道より外側の領域にも冥王星以外の天体が発見されるようになりました。
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 海王星軌道より外側の領域にある天体を太陽系外縁天体(trans-Neptunian object = TNO)といいます。
 太陽系外縁天体(TNO)には,エッジワース・カイパーベルト天体(Edgewaorth-Kuiper Belt object = EKBO)とその外側の散乱円盤天体(scattered disk object = SDO)があり,さらにその外側にはオールトの雲(Oort cloud)があるといわれています。
 エッジワース・カイパーベルト天体(EKBO)には,彗星(comet)と小惑星(minor planet)があります。小惑星(minor planet)は,先に書いたように,準惑星(dwaft planet)と古典的な小惑星(classical asteroid)に分類されます。
 従来は,エッジワース・カイパーベルト天体(EKBO)とその外側の散乱円盤天体(SDO)を合わせてエッジワース・カイパーベルト天体(EKBO)とされていました。また日本では,エッジワース・カイパーベルト天体(EKBO)のみを太陽系外縁天体(TNO)とよんでいたころもあり,ここでもまた用語の混乱を生じています。
  ・・・・・・
 さまざまな天体が見つかるようになって,それらの天体を定義して新しい名前をつけても,そのあとでそれが当てはまらないことが起きて…,ということがごっちゃごちゃになっている理由です。
 また,日本では,たとえば dwaft planet を小型の惑星とでもすればいいのにあえて準などという英語とは意味の異なる別の日本語名にするから混乱します。漢字の表現には言外の意味が生じるのでたちが悪いのです。また,日本語名をつけるならそれならそれで,minor planet に格上げされたとき新しい名前をつけず従来の「小惑星」のままにしておくことも問題です。だから日本語の小惑星にはminor planetとclassical asteroidが混在しています。そしてまた,これは余談ですが,高校生が習う英語の単語集には,従来のまま「小惑星=asteroid」などと書かれていて,さらに,天文学を知らない教師がそれを教えるものだから,誤解が生じます。

 では,準惑星と現在準惑星の候補となっている古典的な小惑星(classical asteroid)である太陽系小天体(small Solar System body = SSSB)を紹介します。
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●準惑星に格下げされた冥王星
 =太陽系外縁天体,エッジワース・カイパーベルトにある小惑星,準惑星,太陽系小天体
●「セレス」
 =メインベルトにある小惑星,準惑星,太陽系小天体
 1930年に惑星として発見された冥王星は,離心率や軌道傾斜角が大きく異なること,地球よりはるかに小さいことなど,他の8つの惑星と性質が大きく違っていました。
 1992年に発見され,のちに「アルビオン」(Albion)という名前のついた小惑星は,太陽系外縁天体(TNO)でした。それ以降,冥王星を惑星とよぶべきかどうかをめぐり様々な議論や論争がなされるようになりました。
 一方,1999年以降,マイケル・ブラウン(Michael E. Brown)博士がパロマ天文台にあるサミュエル・オシン望遠鏡(The Samuel Oschin telescope) で太陽系の新しい惑星を発見しようとする試みをはじめました。そして発見したのが,太陽系外縁天体(TNO)である「クアオアー」「セドナ」「マケマケ」「ハウメア」「エリス」でした。その中でも,「エリス」(Eris)は冥王星よりわずかに大きいと考えられ,冥王星を惑星とみなすことへの疑問の声が広まりました。
 2006年8月24日に開かれた国際天文学連合 (IAU)の 総会で惑星の定義を定めるとともにdwarf planet(日本ではこれを準惑星と名づけた)という分類を新たに設けることが採択されました。そこで,小惑星(asteroid)は小惑星(minor planet)と名称が変更になり,そこに類する天体から新たに準惑星(dwaft planet)が定義されました。
 これによって,これまで小惑星(asteroid)であったもののなかからも,「セレス」Ceres)が新たに準惑星(dwaft planet)に格上げされました。そして,格上げされなかったものはそのまま以前の小惑星(classical asteroid)という地位に残ります。また,冥王星は惑星の座から小惑星(minor planet)に格下げされ,新たに準惑星(dwaft planet)となりました。
 再分類されたのち,冥王星は小惑星(minor planet)の一覧に記載され小惑星番号134340番が与えられました。小惑星番号は小惑星(asteroid)から小惑星(minor planet)に引き継がれます。
 現在,冥王星は,太陽系外縁天体(TNO)であり,エッジワース・カイパーベルトにある小惑星(minor planet)であり,準惑星(dwarf planet)です。また,太陽系小天体(small Solar System body = SSSB)です。
  ・・  
●「クワオアー」(Quaoar)
 =太陽系外縁天体,エッジワース・カイパーベルトにある小惑星,準惑星候補,太陽系小天体
 「クワオアー」は現在準惑星(dwarf planet)候補です。エッジワース・カイパーベルトに位置し太陽の周りをほぼ円軌道で公転しています。2002年6月4日に発見されました。
 名前はロサンゼルス周辺のアメリカ先住民であるトングヴァ族に伝わる神話の歌と踊りで神々と生物を作った創世神クワオアーに因んで名づけられました。
●「セドナ」(Sedna)
 =太陽系外縁天体,エッジワース・カイパーベルトにある小惑星,準惑星候補,太陽系小天体
 「セドナ」も現在準惑星(dwarf planet)候補です。2003年11月14日に最初に観測されました。
 北米極北地方に住む原住民族カナダのイヌイットに伝わる海の女神セドナに由来しています。
 なお,「クワオアー」と「セドナ」が準惑星(dwarf planet)と分類されるには,「自身の重力が剛体力に打ち勝って静水圧平衡(球体に近い形)を保つのに十分な質量を持っていなければならない」ことが実証される必要があります。
●「マケマケ」(Makemake)
 =太陽系外縁天体,エッジワース・カイパーベルトにある小惑星,準惑星,太陽系小天体
 「マケマケ」は準惑星(dwarf planet)です。2005年3月31日に発見されました。
 イースター島の創造神マケマケにちなんで命名されました。
●「ハウメア」(Haumea)
 =太陽系外縁天体,エッジワース・カイパーベルトにある小惑星,準惑星,太陽系小天体
 「ハウメア」も準惑星(dwarf planet)です。スペインのシエラ・ネバダ天文台でホセ・ルイス・オルティスらのグループが2003年に行った観測を2005年に再分析したことによって発見し,2005年7月29日に公表しました。マイケル・ブラウン博士らのグループも,2004年5月6日の観測を元に12月28日にこの天体を発見しました。
 ハワイ諸島の豊穣の女神ハウメアに因んで命名されました。
●「エリス」(Eris)
 =太陽系外縁天体,エッジワース・カイパーベルトにある小惑星,準惑星候補,太陽系小天体
 「エリス」も準惑星(dwarf planet)です。2003年10月21日に撮影された画像に写っているところを2005年1月5日に発見され,同年7月29日に発表されました。
 発見当初,発見者チームはこの天体が惑星である可能性を考慮して,創世神話に由来する名前を提案しました。国際天文学連合 (IAU) は惑星かどうかはっきりするまで命名はしないと発表しました。やがて,2006年8月24日にIAUで惑星の定義が決定され,これによって準惑星(dwarf planet)とされたことから,「エリス」(Eris)と名づけられました。エリスはトロイア戦争の遠因となったギリシア神話の不和と争いの女神です。「Ellis」と綴られる小惑星「エス」とは別の天体であるので,注意が必要です。
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 今日は,冥王星の衛星の発見についてです。
 現在,冥王星には五つの衛星が発見されていますが,最大なものはカロン(Chron)です。カロンは冥王星の7分の1もの質量をもつ巨大な衛星です。
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●カロンの発見
 カロンは,1978年6月22日,ジェームズ・クリスティ(James Walter Christy)さんが,フラグスタッフ郊外のアメリカ海軍天文台にある口径61インチ(1.5メートル)の反射望遠鏡で写した冥王星の写真から発見しました。
 発見したジェームズ・クリスティさんは,この衛星の名前に,妻の名前 Charlene のニックネーム Char に当時元素の名前などの語尾に on をつけるのが流行していたことから,Chron とすることを思いつきました。Chron という言葉を調べてみると,それは,ギリシア神話の冥府の川・アケローンの渡し守カローンのことだったのです。偶然にも,冥王星が冥府の王プルート(Pluto)の名にちなむことから,この名前は冥王星の衛星にふさわしい命名だったわけです。
 この名前の由来を知っている人たちは,いまでもカロンをジェームズ・クリスティさんの奥さんの名前であるシャーロンとよんでいるのだそうです。
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 カロンは衛星にしては惑星に対する質量があまりにも大きく,また,冥王星とカロンの共通重心が冥王星とカロンの間の宇宙空間にあるため,冥王星とカロンは主従関係でなく,二重惑星であるとの解釈もされています。
 また,冥王星とカロンは互いに同期回転しているため,カロンは常に冥王星に同じ面を向け,冥王星もカロンに対して常に同じ面を向けています。よって,冥王星およびカロンから互いを見たら,空の1点から動かないように見えるそうです。

 なお,カロンの発見ののち,冥王星には,ハッブル宇宙望遠鏡によって,さらに四つの小さな衛星が発見されましたが,それらはカロンが生じるきっかけとなった冥王星への天体の大衝突で飛び散った氷の溶岩が、冥王星を公転する軌道に乗っかったものが起源であると考えられています。
 まず,2005年10月31日に発見されたのが「S/2005P1」と「S/2005P2」です。「S/2005P1」は後にヒドラ(Hydra),「S/2005P2」はニクス(Nix)と命名されました。ヒドラはギリシア神話の地下を守る怪物ヒュドラからつけられたもの,ニクス名はギリシャ神話の夜の女神ニュクスよりつけられたものです。これらの名前は冥王星探査衛星ニュー・ホライズンズの頭文字N・Hにも因んでいます。
 次に,2011年7月20日「S/2011P1」が発見され,のちに冥界の番犬であるケルベロス(Kerberos)と命名されました。さらに,2012年7月11日「S/2012P1」が発見され,冥界と現世の間を流れる川および女神であるステュクス(Styx)と命名されました。

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 私が子供のころ,太陽系の惑星のうちで,水星から土星までと比べて,どうして天王星,海王星,冥王星だけ名前が異質なのか疑問をもったということを書きました。それは,水星から土星までは肉眼で容易に見えたから発見された惑星ではなく,天王星から冥王星までは「発見」された惑星だったからですが,天王星と海王星の発見についてはこれまでに書いたような経緯でした。
 冥王星は14等級以下でアマチュアの望遠鏡でも見ることが困難なので,私の子供のころに読んだ天文書にはアマチュアには見ることができないと書かれていて,そのの知識のまま今もそう思っている私の知人がいます。
 私は,機会があれば,一度は写真に収めたいと思っているのですが,もし,写ったとしても,それが冥王星であるという見わけをすることはずいぶん困難なことでしょう。

 さて,今日は冥王星の発見についてです。今では,冥王星は惑星としての地位を追われてしまいましたが,私には,今も,冥王星はその後に発見され,準惑星とされるケレス,エリス,マケマケ,ハウメアなどとは一線を画す存在です。
  ・・・・・・
●冥王星の発見
 準惑星である冥王星(Pluto)は,かつては太陽系第9惑星とされた天体です。1930年にクライド・トンボー(Clyde William Tombaugh)によって発見されました。
 発見された新天体に「Pluto」という名前を最初に提案したのはイングランドのオックスフォード出身で当時11歳の少女ヴェネチア・バーニー(Venetia Katharine Douglas Burney)でした。トンボーは、偶然にも,冥王星の存在を予言したパーシヴァル・ローウェル(Percival Lowell)のイニシャル「P.L」ではじまるこの名前をいたく気に入ったといいます。
 日本語名の「冥王星」は日本人の野尻抱影が提案した名称です。1933年に中国でも「冥王星」(míngwángxīng)が使われるようになりました。
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 ウィリアム・ヘンリー・ピッカリング(William Henry Pickering)とパーシヴァル・ローウェル(Percival Lowell)は,天王星の軌道における摂動の分析からその存在が予測され発見された海王星と同じように,海王星の軌道もまた他の未発見の惑星「惑星X」によって乱されていると推測し,そのような惑星が存在する可能性のある天球座標をいくつか提唱しましたた。
 1905年,ローウェル天文台では「惑星X」を捜索するプロジェクトを開始しました。プロジェクトはパーシヴァル・ローウェルが1916年に死去するまでの11年間続けられました。
 1929年,プロジェクトが再びはじめられ,当時の天文台長であったヴェスト・スライファー(Vesto Melvin Slipher)がクライド・トンボーにこの仕事を預けました。
 クライド・トンボーは,ローウェル天文台の口径13インチ(約33センチメートル)の天体写真儀で空の同じ区域の写真を数週間の間隔を空けて2枚撮影し,その画像の間で動いている天体を探すという方法で捜索を行いました。そして,撮影した膨大な写真を丹念に精査した結果,ついに,1930年2月18日,同年の1月23日と1月29日に撮影された写真乾板の間で動いていると思われる天体を見つけました。
 なお,2枚の写真を比べて新天体を発見する方法は今も行われていますが,クライド・トンボーが行っていた当時とは違って,コンピュータが自動的にそれを行っています。
  ・・
 しかし,クライド・トンボーが発見した「惑星X」は,海王星の軌道の摂動の原因となるにはあまりにも小さすぎたのです。実際は,19世紀に天文学者が観測した海王星の軌道の計算との食い違いは「惑星X」によるものではなく,海王星の質量の見積もりが正確でなかったためのものでした。
 それにしても,パーシヴァル・ローウェルが予測した「惑星X」の位置は,クライド・トンボーが発見した実際の位置にかなり近いものでした。不思議な話です。イギリス人の天文学者アーネスト・ウィリアム・ブラウン(Ernest William Brown)はこれを「偶然の一致」だと結論づけました。
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☆ミミミ
この写真は,2018年5月にオーストラリアに出かけたときに私が写した写真から冥王星を探し出したものです。14.3等星です。
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金星_海王星 _20170112海王星海王星発見の位置海王星発見望遠鏡

 今日は海王星です。
 海王星は7.7等星より明るくなることはなく,肉眼では見えません。写真で簡単に写せますが,写っていても恒星に埋もれてしまって見わけがつきません。そこで,見わけがつくように,先日,私が,金星が接近したときを狙って写したのが,今日の1番目の写真です。
 天王星に比べて,海王星の発見には多くの物語がありました。
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●海王星の発見
 太陽系第8惑星である海王星(Neptune)は,1846年9月23日,フランス人のユルバン・ルヴェリエ(Urbain Jean Joseph Le Verrier)が予測した位置の近くに,ドイツ人のヨハン・ゴットフリート・ガレ(Johann Gottfried Galle)とハインリヒ・ルイス・ダレスト(Heinrich Louis d'Arrest)によって,望遠鏡を用いて発見したということになっています。
 ユルバン・ルヴェリエは,発見後すぐに「Neptune」という名称を提案,天文学者フリードリッヒ・フォン・シュトルーベ(Friedrich Georg Wilhelm von Struve)が支持することを表明し,国際的に受け入れられるようになりました。
 ローマ神話では、名称の元となったネプトゥーヌス(Neptūnus)はギリシア神話のポセイドーン(Poseidōn)と同一視される海の神です。中国語ではこの名称を「海王星」と訳し,日本でも用いられました。
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 海王星が望遠鏡を用いて観測されたもっとも初期の記録は,1612年12月28日と1613年1月27日にガリレオ・ガリレイ(Galileo Galilei)が,木星の観察中に偶然スケッチで描いたものです。しかし,ガリレオ・ガリレオは木星の近くにある恒星と誤って認識していました。
 1781年,アンダース・レクセル(Anders Johan Lexell)は,発見されたばかりの天王星の軌道を計算した結果,その不規則性に気づき,天王星の軌道に摂動を与える別の惑星があることを示唆しました。また,1821年,アレクシス・ブヴァール(Alexis Bouvard)はニュートンの万有引力の法則に基づいた天王星の軌道予想表を出版しましたが,実際に観測をするとこの表からかなりの逸脱があることが明らかとなり,摂動を与える天体を仮定するに至りました。
 イギリスのジョン・クーチ・アダムズ(John Couch Adams)も,天王星の軌道の不規則性から,天王星の観測データと万有引力の法則を用いれば,別の惑星の軌道を推定することができると信じていました。1844年2月13日,これを聞いたケンブリッジ天文台長のジェームズ・チャリス(James Challis)は,ジョン・クーチ・アダムズのために王室天文官のジョージ・ビドル・エアリー(Sir George Biddell Airy)に,天王星の位置のデータを要求しました。このデータをもとに,ジョン・クーチ・アダムズは1845年9月18日に計算を完了しました。一方,フランスのユルバン・ルヴェリエもまた,1845年11月10日,天王星はそれまでの理論ではその運動を説明できないことを示し,仮想の摂動天体についての位置を示しました。
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 イギリスでは,王室天文官のジョージ・ビドル・エアリーは,ジョン・クーチ・アダムズとユルバン・ルヴェリエの結果の類似性に気づき,秘密裏に惑星の探索を試みようと,1846年7月,ケンブリッジ天文台長のジェームズ・チャリスに,至急惑星を観測するように提案し,7月29日に捜索がはじまりました。ジョン・クーチ・アダムズは研究を続け,間違った空域を探していたケンブリッジ天文台長のジェームズ・チャリス率いるイギリスのチームに新たな解を提供しました。
 一方,フランスでは,ユルバン・ルヴェリエは,8月31日,位置のほかに質量と軌道の情報を得ましたが,フランスの天文学者は関心をもたなかったので,データをベルリン天文台のヨハン・ゴットフリート・ガレに郵送しました。ヨハン・ゴットフリート・ガレは,1846年9月23日に手紙を受け取りすぐに観測を開始し,指導する学生のハインリヒ・ルイス・ダレストとともに,探しはじめてからわずか1時間以内の午前0時直後に,予測された位置からわずか1度以内の場所に新惑星を発見し,新惑星の発見を公表しました。
 その後,ケンブリッジ天文台長のジェームズ・チャリス率いるイギリスのチームが,新惑星の発見が公表された1か月前の8月8日と8月12日に,すでに新惑星を観測していたことが明らかとなりましたが,最新の星表を持っていなかったために,それが惑星だと気づかなかったのです。
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 海王星の発見に用いられたのはベルリン天文台の口径9.6インチ(約25センチメートル)屈折望遠鏡でした。この望遠鏡は現在,ミュンヘンのドイツ博物館(Deutsches Museum)に移設され展示されています。

水金地火木土 月b天王星天王星ハーシェル望遠鏡

 2019年の6月,念願だったローウェル天文台に行って,冥王星を発見した望遠鏡を見てきたことは,すでにブログに書きました。
 ここで,天王星・海王星・冥王星について,私の知識を整理したいと思います。
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 私が子供のころの惑星の名前の覚え方は「水・金・地・火・木・土・天・海・冥」でした。その後冥王星が準惑星と新たに分類されて惑星から脱落してしまいましたが,それはともかくとして,水星から土星までは自然な名前なのに,どうして天王星,海王星,冥王星の三つだけ名前が異質なのか,子供のころ気味悪く思ったものです。
 ところで,この惑星の覚え方ですが,英語では「My Very Educated Mother Just Served Us Nine Pizzas.」と覚えたのだそうですが,現在は,冥王星に加えて,新たに準惑星となったケレスとエリスを含んで,「My Very Exciting Magic Carpet Just Sailed Under Nine Palace Elephant.」と変わったそうです。 ちなみに,準惑星は冥王星,ケレス,エリスの三つに加えて,さらに,マケマケとハウメアのふたつがあります。
 水星から土星までは肉眼ではっきり見えるので,古から惑星として認知されていたのに対して,天王星,海王星,冥王星はのちに望遠鏡で発見されたもので,そのとき名前がつき,それを日本語で別の表記をしたことから,異質なものになったというわけです。

 では,これからは,天王星,海王星,冥王星の発見物語を書きます。今日は天王星です。
 天王星は最大等級が5.6等なので,そのときは肉眼でも見えることができるといいますが,ほかの星と区別がつかないので,もし見えても,それが天王星だということは容易にはわからないでしょう。
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●天王星の発見
 太陽系第7惑星である天王星(Uranus)は,1781年3月13日,イギリス人のウィリアム・ハーシェル(Sir Frederick William Herschel)によって発見されました。「Uranus」という名前は,ヨハン・ボーデ(Johann Elert Bode)が提案しました。これは,ギリシア神話における天の神ウーラノス(Ουρανός=Ouranos)のラテン語形で,これを中国で「天王星」と訳したものが日本に広まったのです。
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 天王星は,1690年,ジョン・フラムスティード(John Flamsteed)がおうし座34番星として記録したものが最古の記録で,それ以後も何度も観測されていましたが,惑星とは認識されていませんでした。
 1781年3月13日,ウィリアム・ハーシェルが自宅でこの星を見て「新彗星」であると思いました。しかし,その後の観測から軌道を決めるとき,彗星であれば,まず,放物線と仮定するのですが,それではうまくいかず,アンデル・レクセル(Anders Johan Lexell)が円軌道と仮定して軌道を求めたところ観測結果を説明することに成功し,求められた軌道は長半径が土星のはるか遠方の巨大な天体であることがわかりました。これ以後、新天体は惑星と見なされるようになりました。
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 天王星を発見したと思われる,1781年にウィリアム・ハーシェルが自作した口径7フィート,約21センチメートルの反射望遠鏡のレプリカは,現在,ロンドンから電車で2時間ほどのバース・ニュー・キング・ストリート19番地にある彼の自宅を改築して作られたウィリアム・ハーシェル博物館(William Herschel Museum)にあります。一度見てみたいと思い続けているのですが…。

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 このブログは私が自分の記録用に書いているので,いささか「おたく」化しつつある懸念はあれど,今日もまた月と惑星の接近を書きます。
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 ことのはじまりは,すでに書いたように,3月19日,火星と木星と土星と月が接近するので,その写真を写したらどんなに美しいのだろう,というだけの動機でした。そのことを知ったのは,その少し前のことだったのですが,調べてみると,3月18日から3月20日までを観察して,月が惑星の間を動くのを観察しよう,とかいう記事がたくさんありました。学校も休みだし,望遠鏡もいらず,肉眼で見ることができるので,子供は早起きしてこんな観察でもすれば楽しかろうと思うのですが,そんなことをしている姿は見ませんでした。

 3月18日は曇り空で一応星見に出かけたのですが,薄い雲の間から時折月が顔を出すだけでまったく星は見えませんでした。
 結果として,幸い3月19日から3月22日まではすべて晴れましたが,はじめの目的のように,3月19日に我ながらイメージ通りの写真が写せたので満足しました。このときの写真はすでに載せました。
 この時点まで,私の関心は,月が火星,木星,土星の3つの惑星に接近することだけだったのですが,では,水星はどこ? とさらに調べてみると,なんと,水星も明け方の空に,水星としては高い高度で見られることがわかりました。
 水星はきわめて太陽に近いので,夕方か明け方の空低くしか見えません。太陽からもっとも東側に離れるときを「東方最大離角」,西側に離れるときを「西方最大離隔」といい,東側に離れたときは夕方,西側に離れたときは明け方見ることできます。そして,3月24日が「西方最大離角」だったのです。
 こうなると,3月19日に写した写真に水星を入れ忘れてしまったことを後悔しましたが,歳のせいであきらめがはやくなり,まあいいかと妥協しました。これでやめようと翌日3月20日は目覚ましもかけなかったのですが,目が覚めてしまい,外をみると,美しく惑星と月が輝いていたので,準備もそこそこ,起きたばかりの格好で防寒具だけ羽織って,カメラと三脚だけをかついで外に出て,自宅の近くで,水星は肉眼では見えなかったけれど,この辺りだろうと視野に入れて写しました。あとで確かめると,水星もちゃんと写っていました。
 
 家に戻って,さらにさらに調べて行くと,次第に月齢を上げて薄くなっていく月ですが,翌々日の3月22日には高度の低い水星よりさらに低く昇ることがわかりました。さすがに暗すぎ光度が低すぎ,これを見てみようと書いてあるものはありませんでしたが,こうなると,見えるかどうか確かめてみようと思うようになりました。こんなに低い月ではどこにあるか肉眼では探せません。そこで,月がまだ肉眼でもはっきり見える3月21日に月や水星の位置を確かめておいて,3月22日は同じ場所で同じ時間に地平線ぎりぎりの月を探してみることにしました。
 3月21日はとても空の条件がよく,きれいな朝焼けも見えました。今日の1番目と2番目の写真が3月21日に写したものです。
 そして,待望の3月22日になりました。19日から21日まで連日晴天だったので,さすがにこの日は天気が心配で半分期待はしていなかったのですが,東の空に木星が見えたのでどうやら晴れているようでした。しかし,空全体が灰色に濁っていて,最悪の条件でした。春は春霞といって,暖かい日の空はだめです。いつもの撮影場所に行っても,かろうじて木星と土星が見えるだけ,火星もやっと探し出せるいような空でした。
 前日確かめておいた月の昇ってくる場所を双眼鏡で何度も探しましたが何も見えないので,ともかく位置を決め,画角も決め,ピントをしっかり合わせて,単なる空の写真を撮りました。しかし,写した写真をモニターで何度確認しても,ここにあるはず,という場所なのにもかかわらず,何もわかりませんでした。がっかりしました。この日の月齢は27.2。私は過去に同じ場所で月齢28.4の月を写したことがあるので,写るはずなのです。私が期待したのは,今日の4番目のイメージ写真のような細く美しい月が水星と縦に並んだ姿だったのですが…。
 家に帰って,写してきた写真をコンピュータに取り込んで拡大しながらずっと眺めました。まず,かろうじて水星を見つけました。その位置から探していくこと30分,どうにか月を探し出すことができました。単なる自己満足ですが,それはそれで,やり遂げた感がありました。それが今日の3番目の写真ですが,果たして月がおわかりになるでしょうか?
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 ところで,水星,火星,木星,土星と4つの惑星が明け方の空に並んでいるのですが,残る金星はどこにいっちゃったのでしょうか。
 そう,金星は,夕方の空高く,ひときわ明るく,まるで孤独を楽しむかのように,4月1日の「東方最大離角」を目指して,輝いているのです。そして,その近くには天王星も寄り添っていることは,すでにブログに書きました。なお,海王星は水星と太陽の間にあって,3月22日は月よりさらに高度が低く,つまり太陽に近く,現在は望遠鏡を使っても,まったく見ることができません。
 次の日は新月なので,これで惑星と月を追いかける日々は終わりです。

☆ミミミ
今後は,明るくなるという前評判がどんどん高くなりつつあるアトラス彗星(C/2019Y4 ATLAS)を追いかけたいと思います。写真は3月23日に写したアトラス彗星ですが,すでにかなり明るくなって,尾も見えはじめました。

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 何がすばらしいかといって,明け方,太陽が昇る前の夜空ほどすばらしいものはほかにありません。それに比べたら,太陽が顔を出した後の世界は,たとえは悪いのですが,何か悪夢を見ているかのようです。特にこのごろは世界中が耐え難い不安に包まれています。
 今回とはまったく原因は違うのですが,リーマンショックのときの株価や為替の変動は,今とそっくりでした。あのときもまた,多くのマスコミや政治家やアナリスト,そして無責任なワイドショーのコメンテーターたちが言っていたことはまったくあたらず,冷静な少数の人たちの声なき声が語っていたように相場は動いていきました。おそらく今回もまた,そのときと同じ動きをするのでしょう。
 現在は,どんな対策を打ち出そうとそんなことには関係なく,まるで底なしの泥沼に土をくべていくような感じに思えます。であっても,多くの人が飽き飽きしてきたころになると,やっと入れていく土の量が泥を凌駕してすべてが解決するのです。そのころには,人々は今の危機的状況を忘れすっかりもとの生活に戻って,また,懲りもせず浮かれはじめるのです。
 私は,リーマンショックのとき,つくづくそう感じました。長く生きていると,世界はこんなことの繰り返しだということだけはわかってきました。

 さて,星空のお話です。
 明け方の空には,火星,木星,土星がずっといて,動きの速い -それは地球に近いからですが- 火星がほとんど位置のかわらない木星と土星の間を駆け抜けています。そして,火星よりもまたずっと動きの速い月がそれらを追い抜きながら,姿を変えていくので,それらの姿を毎日眺めていても,決して見飽きるものではありません。
 3月19日の早朝は,木星に接近した火星と,その間を縫って高度を下げた月が土星に接近して,月と3つの惑星を同時に写真に収める構図の写真が撮れるという状況になりました。
 月が昇るのは3時10分過ぎだったので,2時過ぎに東の空の開けた場所に向かいました。

 到着したときはまだ早く,月が昇るまで,アトラス彗星(C/2019 Y4 ATLAS)がM81,M82 銀河に接近しているというので,それを写しながら待ちました。
 やがて,東の空にいつの間にか月が姿を現しました。この朝はあまり大気が澄んでいなかったので,昇ったばかりの月は真っ赤で,その隣にあるはずの土星はなかなか肉眼では見えませんでした。20分くらい待って,月の高度が高くなると,土星も見えてきて,火星,木星,土星と3つの惑星と月,そして,背景に地上も入る角度の写真が写せるようになったときに撮ったのが,今日の1番目の写真です。
  ・・
 2番目の写真は,先に書いたアトラス彗星とM81,M82銀河を同時に収めた写真です。銀河を一緒に収めるために画角の広い180ミリ望遠レンズで写したので,彗星が暗くしか写っていないのが残念です。
 このアトラス彗星ですが,当初の予想からは大きくはずれ,3番目のグラフのように,このところの光度上昇の変化の度合いから,来月4月末には0等星,そして,5月末にはマイナス25等星といった,とんでもない予想がたちはじめました。おそらくそこまで明るくはならないでしょうが,久々の大彗星が見られるかも,といったうわさも聞こえはじめました。
 彗星は,軌道は決まれど,彗星本体がどれほどの大きさであってその組織がどうなっているかがわからないので,太陽に接近したときにどのくらい明るく輝くかという光度の予想は常に水モノです。多くの場合は期待外れに終わりますが,まれに大化けします。さて,今回はどうでしょうか?
 このまま順調にいけば,次第に太陽に近づいていって見えなくなる5月20日ごろまで,しだいに明るく大きくなっていって,北西の夕方の空に尾をひいた彗星が肉眼でも見られるようになることでしょう。

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☆☆☆
次の写真は3月20日午前5時20分の東の空です。昨日とはうって変わって,とても澄んだ空でした。月齢は25.2。月の位置がずいぶん変わったことがわかるでしょう。地平線ぎりぎりには水星も昇ってきました。

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金星と天王星_20200312s金星_海王星 _20170112C_2017T2_PanSTARRS_20200312

 コロナウィルス騒動が続いていますが,気がつけば3月,もう春です。そしてまた,3月も満月が過ぎて,星見の時期になってきました。
 私は人混みがきらいだし,スポーツジムもライブハウスも無縁で,誰も人がいない空の広い,そして暗い場所で星空を眺めるのがもっとも落ち着きます。しかし,こんなものが流行してしまうと海外旅行をする気にならないのだけが誤算です。
 現在,夕方の西の空に「宵の明星」とよばれる金星が高く輝やいています。実はその近くに天王星がいるのですが肉眼ではまず見えません。そこで,3月12日の夕刻は天気がよかったので,金星と天王星を同じ画面に収めようと,画角を調べてみると180ミリ望遠レンズなら一緒に撮ることができることがわかったので,そのレンズを持って,日没を待って写しにいきました。

 子供の頃,惑星の名前を「水・金・地・火・木・土。天・海・冥」と覚えました。今は冥王星は惑星の座から降りた(降ろされた)ので「水・金・地・火・木・土。天・海」です。
 これを英語では,
 My Very Educated Mother Just Served Us Nine Pizzas.
というように,惑星のスペリングの先頭の文字で覚えるのだそうです。ちなみに,
 水星=Mercury
 金星=Venus
 地球=Earth
 火星=Mars
 木星=Jupiter
 土星=Saturn
 天王星=Uranus
 海王星=Neptune
 冥王星=Pluto
です。しかし,冥王星を抜いてしまうと文書にならないので,新たな覚え方というのが発案されたそうです。
 それは,たとえば
 My Very Educated Mother Just Served Us Nachos.
 My Very Educated Mother Just Served Us Noodles.
の類ですが,最後の「Nine Pizzas」を別のモノに変えただけです。
 
 さて,水星から土星までは明るく,簡単に肉眼で見ることができるのですが,天王星と海王星は暗いので,簡単には探せません。とはいえ,天王星は意外と明るく,理屈では肉眼で見られないこともないのですが,海王星となるとお手上げです。たとえ,天王星や海王星を位置を調べて望遠鏡の視野に入れても,小さな望遠鏡では単に恒星のようにしか見えないので,それが天王星や海王星なのかはなかなか区別がつきません。そこで,金星が近くにあると,星の並びから容易に探しだせるというわけです。
 ということで,今日の1番目の写真は,この晩に写したものです。
 ちなみに,2017年1月12日に金星は海王星と接近しました。そのときに金星と海王星を同じ視野に入れて写したものが,今日の2番目の写真です。
  ・・
 この晩はこれで目的を果たしたので早々に帰ろうと思ったのですが,せっかくなので,機材を入れ替えて,いつもの望遠鏡でパンスターズ彗星(C/2017T2 PanSTARRS)も写してみました。それが3番目の写真です。この彗星は7月ごろまではまだ今よりも少し明るくなる予報なので,まだまだ写すことができます。
 また,この晩は写しませんでしたが,アトラス彗星(C/2019Y4 ATLAS)が5月ごろに,ずいぶんと明るくなるという予報が出ています。ひょっとしたら大化けするかもしれません!
 それに加えて,3月18日から19日にかけて,明け方の東の空に,火星と木星と土星,それに加えて月が大接近するので,今から楽しみです。午前3時30分ごろ,東の空が開けたところなら,3つの惑星と月が同じころに昇ってくる姿が見られます。晴れるといいなあ。

◇◇◇
私は,星を見ていると,もののスケールや時間のスケールがいつも気になりますが,多くの人はそういうことをほとんど考えません。たとえば,今流行しているコロナウィルスですが,愛知県で感染者が100人といっても,愛知県の人口は750万人あまりだから,感染者は7万人に1人。日本中では感染者が1,500人弱で日本の総人口は1億3,000万人弱なので,10万人に1人ほどです。これは,「年末ジャンボプチ」の1等1,000万円に当選するのと同じくらいの確率です。ちなみに,コロナウィルスほど騒がれませんが,2018年9月第1週から2019年2月第2週までのインフルエンザの累積予想患者数は10,448,891人(約1千万人)でした。
また,マスクを買うのに行列を作っていますが,私はこのご時世,人混みで行列を作っていることのほうがずっと危険だと思うのです。実際,マスクの目の大きさは約5μm,それに比べて,コロナウイルスの大きさは0.05μmから0.2μmで約50分の1ほどなので,マスクの目をすり抜けます。しかし,ほとんどの人は,こうしたことをまったく知りません。マスク洗って何度も使っているいる人,マスクを汚いポケットにしまったり,テーブルに置きっぱなしにして食事をしている人さえいます。屋外や車の中のように,マスクが必要でない場所で貴重なマスクを無駄遣いしている人もいます。さらに,マスクを顎に下げて,コロナウイルスよりよほど有害なタバコを吸っている人もいます。マスクを市販の布で自作している人もいますが,マスクはマフラーとは違います。目の粗い布で作っても,それは,形がマスクであるだけで,マスクの機能をみたさなけば意味がありません。それはたとえば,「倍率100倍の双眼鏡!」のような,双眼鏡の形をしているだけのマガイモノのようなものと同類です。
スギ花粉はマスクの目よりもずいぶん大きくて20μmなのでマスクで侵入を防げるのですが,正しくマスクを使わない人がマスクを買い占めることで,気の毒にも花粉症でマスクが本当に必要な人や,医療従事者のようにマスクの必要な人の手にゆきわたらないということにもなっています。
ちなみに,政治家など言わずもがな,「情報の信ぴょう性」を指導しなけらばならない教育者や「正しい情報の伝達」を最も重視しなけらばならない報道関係者でも,こんなことすら知らない人がいます。また,そうした人に限って,正しい使い方を知らず教えず単にマスクの着用をよびかけたりしているのは,「偏差値」の正しい意味も知らずに進路指導をする教師同様,きわめて嘆かわしい話です。
無題

水星 金星_2020_02_11火星木星土星月

 今日の1番目の写真は,2月11日の夕方,日没前の西の空を写したものです。この日の日没後の西の空には,地平線近くに前日東方最大離隔を迎えた水星,そして,かなり高いところに金星が輝いていました。そして,2番目の写真は,2月19日の明け方,日の出前の東の空を写したものです。日の出前の東の空には,月齢24.9の月と,火星,木星,土星が輝いていました。月のあるあたりはいて座で,写真の構図からははずれていますが,火星のさらに右にはさそり座が見えました。
 この2枚の写真を合わせると,太陽系の惑星のうち,水星から土星までがすべて写っています。さすがにこの写真には写っていませんが,1番目の写真の水星と金星の間には海王星もいます。残念ながら天王星は金星よりも高い高度にあって,写真の構図からははずれています。

 地球の軌道よりも外側にある外惑星とよばれる火星,木星,土星は一晩中見られるのですが,地球の軌道よりも内側にある内惑星とよばれる水星と金星は太陽からある角度以上は離れないので,深夜には見ることができません。そこで,このふたつの惑星の写真を写そうと思えば,このように,夕方あるいは明け方の空ということになります。
 夕方や明け方の空は,みごとな色に変化するので,とてもきれいです。そこで,そうした空に星が輝くのを見ていると時間が経つのを忘れますが,それもわずかな時間,夕方であれば暗くなってしまうし,明け方であれば,空が白んでしまいます。
 夕日が沈むのや朝日が昇るのを見にいくことに人は惹かれるのですが,実は,夕日は沈む前も沈んだ後も,しばらくは美しい空の色の変化を楽しむことができます。それに反して,朝日は,日の出前,しかも,日の出の1時間ほど前の空の変化が最も美しく,日の出を過ぎてしまうとまったく美しくなくなってしまうのです。しかし,太陽が昇る1時間ほど前の東の空は,夕焼け以上にほんとうにすばらしいものです。それだけでも美しいのに,そこに,こうして,惑星や月があると,まさに,これ以上すばらしいものがほかにあるのだろうかという気持ちにさえなります。
 この写真を撮った2月19日は,この写真を撮るわずか10分前はぎっしりと雲に覆われていて,ほとんど星が見えませんでした。しかし,明け方の空というのはあっというまに雲が消えたり現れたりするのです。そこで,日常生活で,朝起きて窓を開けたとき快晴であっても,その日に日の出がみられたかどうかはわからないのです。また逆に,星を見にいって明け方まで満天の星空が輝いていても,日の出を過ぎるとすっかり曇ってしまうこともよくあるのです。
 私は,これまで,いろんなところに出かけたり,星空を見てきたりしましたが,どこに行くよりも,また,深夜に満天の星空を見るよりも,家の近くであっても夕方や明け方の空の変化のほうがより美しいと,このごろ思うようになりました。

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 誰彼 我莫問 九月 露沾乍 君待吾
 誰そ彼と われをな問ひそ九月(ながつき)の 露に濡れつつ 君待つわれそ
 誰だあれはと私のことを聞かないでください 月の露に濡れながら愛しい人を待っている私を
   「万葉集」巻10・2240 柿本人麻呂
  ・・・・・・
 「誰そ彼」は「黄昏(たそがれ)」。日暮れ時は精霊の跳梁(ちょうりょう)する禍々(まがまが)しい時。人の見分けがつかないので「誰そ」と問うが,男が女の名前を問うのはプロポーズの意味ももっていた。名を明かすのはそれをお受けしますということ。

  ・・・・・・
 阿加等伎乃 加波多例等枳尓 之麻加枳乎 己枳尓之布祢乃 他都枳之良須母
 暁の かはたれ時に 島蔭を 漕ぎ去し船の たづき知らずも
 暁の薄明かりの時に島陰を 漕ぎ去った船がなんとも心細く思えることよ
   「万葉集」巻20・4384 他田日奉得大理
  ・・・・・・
 夜明け前は「彼は誰(かはたれ)」。夜明け前も人の顔が判別できないので「あなたは誰」と問う。そんな「かはたれ」時に出ていく防人を乗せた船を不安げに見ているという歌。

☆ミミミ
2月20日の夜明け前の東の空です。
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 2019年2月18日の早朝,今度は金星と土星が大接近しました。
 金星(Venus)は、太陽系で太陽に近い方から2番目の惑星で,太陽との平均距離は108,200,000キロメートルで地球の約3分の2,地球に最も近い公転軌道を持つ惑星です。太陽系内で大きさと平均密度が最も地球に似た惑星であるため「地球の姉妹惑星」と表現されることもあります。地球よりも太陽側にあるので,地球から見ると金星は明け方と夕方にのみに見ることができます。明け方に見えるのを「明けの明星」,夕方に見えるのを「宵の明星」といいますが,現在は明け方,太陽が昇る前に東の空に昇ってくる「明けの明星」です。
 一方,土星(Saturn)は太陽から6番目,太陽系の中では木星に次いで2番目に大きな惑星です。太陽との平均距離は1,400,000,000キロメートルで地球の約10倍になります。また,巨大ガス惑星に属する土星の平均半径は地球の約9倍にあたりますが,平均密度は地球の1/8に過ぎないので軽く,水に浮くという説明がされています。私が子供のころに読んだ図鑑には土星が水槽に浮いている絵が描かれていたのですが,土星が入るような水槽などありえないし,土星の重さなどどうやって測るのだろうと,私は納得がいきませんでした。要するにこれを書いた大人は,土星の比重が1より小さいといいたかったのでしょうが,こういうたとえは子供の頭を混乱させます。土星といえば恒常的な環をもっていることで有名ですが,この輪ができたのは最近のことで,地球上では恐竜が闊歩していたころということが近ごろわかりました。土星の環は小さな望遠鏡でも美しく見ることができます。
 金星はマイナス4等星と明るく,土星は1等星ほどですが,現在は明け方の東の空,地平線に近いので,地平線付近まで晴れ渡っていないと,都会では土星が見にくいものです。また,写真に撮っても,輪のある土星を写すには露出を切り詰める必要があり,そうすると金星も暗く写っていまい,せっかくふたつの惑星を入れた写真を写してもほとんど小さな点になってしまいます。しかし,今日の写真のように十分な露出で写すと土星が露出オーバーになってしまうので,改めて土星の写真を別の露出で写して合成してみました。

 ところで,2月19日は「スーパームーン」でもあります。日本時間では午後6時3分に月が最も地球に近づきます。2019年は1月21日についで2回目の「スーパームーン」となります。月と地球との距離は1月の「スーパームーン」では357,700キロメートル,今回が356,800キロメートルなので,2月の「スーパームーン」のほうが若干近いです。
 「スーパームーン」というのは,もともとは天文学の用語ではなく占星術の用語です(今回もまた占星術が出てきてしまいました)。この言葉を広めたのは,NASAの研究所のひとつであるジェット推進研究所(JPL)で,地球と月の距離が近いときの満月が平均的な満月よりも大きくそして明るく見えるために,これを「スーパームーン」とよぶとしています。しかし,地球と月の距離がどれだけより近い満月を「スーパームーン」とよぶかという明確な定義はなく,概ね月と地球との距離が360,000キロメートル以内の満月を「スーパームーン」とよんでいるらしいというのが実情です。
 残念ながら明日2月の「スーパームーン」は雨で見ることができないという予報なので,その前日2月18日に左下がわずかに欠けた月を写しました。今日の写真はその月齢13.6の月です。

☆ミミミ
やっと晴れたか?冬2019④-火星と天王星の大接近

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 2019年2月13日,火星と天王星が大接近しました。
 火星(Mars)は太陽系の太陽に近い方から4番目の惑星で,太陽との平均距離は 227,936,640 キロメートルです。ちなみに,太陽と地球との平均距離は149,600,000 キロメートルなので,その約1.5倍です。直径は地球の半分ほどしかありません。また,自転周期は地球に近く,火星の1日は24時間39分35.244秒です。地球は780日,つまり2年と7週間と1日ごとに火星を追い越しますが,その時期に地球と火星は接近して,そのときの距離は約80,000,000キロメートルです。火星はオレンジ色や赤っぽい色に見え,地球に近いので明るく,肉眼で簡単に見分けることができます。
 一方,天王星(Uranus)は太陽系の太陽に近い方から7番目の惑星で,太陽系の惑星の中では木星,土星に次いで3番目に大きいのですが,太陽との平均距離が 2,871,000,000 キロメートルと火星の10倍以上も遠いので最大等級が5.6等と暗く,肉眼で見るのは困難です。なお,太陽の周りを84年かけて公転しています。
 そんなわけで,天王星は双眼鏡を使えば容易に見ることができるのですが,普通の恒星とかわらないために,双眼鏡の視野に入っても,それが天王星だとはなかなかわからないものです。

 子供のころに太陽の周りをまわる惑星の存在をはじめて知ったころ,土星までの惑星にくらべて,天王星,海王星,そして,今は準惑星に格下げされてしまった冥王星というのは異質な惑星でした。それは,日本語での名前の付け方がまったく違うことと,とても暗いということにありました。
 確かに,肉眼で見ることは困難ですが,天王星と海王星は思ったほど暗い星ではなく,双眼鏡を使えば容易に見ることができます。しかし,先に書いたように,なかなか見分けがつかないので,実際に見ていても,それが天王星だ,海王星だと判断するのがむずかしいのです。だから,火星を双眼鏡の視野に入れさえすれば簡単に天王星を見分けることができるこうした機会は貴重なのです。
 しかし,火星と天王星の接近は珍しいものではありません。天王星は遠いので,ほとんど位置を変えませんが,それに比べて,おおまかにいえば,火星は2年で天球を1周するから,2年ごとに天王星に接近してくるのです。であっても,実際に双眼鏡でこのふたつの惑星を同時に見ると,やはり感動します。

 今回,こうしたことを調べているうちに,私にはまったく興味のない「占星術」にこのふたつの惑星の大接近に関連する情報がたくさんあることに気づきました。曰く,
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おひつじ座の29度まで来ている天王星は3月6日のおうし座入りに向かっています。
火星も天王星も次元の切り離しの天体。古い次元への執着を断ち切り,新しい次元へ進化させる星たち。
火星とのタッグによって2011年から始まった天王星おひつじ座次元の切り離しがいよいよ始まり,戻れないポイントを越えます。
そしてこのエネルギーはやぎ座に集合している冥王星,土星,金星と響きあい,やり残した仕事を終わらせる力,新しい構造の創造作業をサポートします。
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 私には,なんじゃこれは? という感じですが,この大接近を「コンジャンクション」とかいう言葉で語っています。こういうのを読むと頭が痛くなるのですが,世の中にはいろんなことを考えている人がいるんだなあ,と改めて知ったことでした。
 ちなみに,私のブログでの天体の話題は,占星術とはまったくかかわりございません。

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 この季節は夜明けが遅いので,朝6時ころに東の空を見上げると,とても幻想的で美しいです。今年はそんな明け空に,さらに,金星,木星,土星が毎日位置を変えていって,そこに月が月齢を変えながら惑星の間をかけぬけていくのが見られるので,さらに幻想的で,どれだけ見ていても飽きません。

 今日の1番目の写真は2月1日(金)のものです。この日は金星と月齢25.8の月が大接近しました。
 そして,2番目と3番目の写真はその翌日2月2日(土)です。月は月齢26.8。あっという間に金星から遠ざかりました。この3番目の写真には右手上方にさそり座が写っています。月のさらに下には土星があるのですが,残念ながら雲に隠れて見えませんでした。
 さらに,4番目と5番目の写真は2月3日(日)のものです。月齢は27.8。月の出はさらに遅くなって,土星が月より先に昇りました。月齢27.8の細い月は肉眼で見ることができるのかな,と思ったのですが,予想以上に明るく輝いていました。
 これらの惑星いる位置はさそり座からいて座にかけてなので,ひょっとしたら,もっと空の暗いところに出かければ,夏の銀河のなかに惑星が輝いているという美しい写真が写せたかもしれません。一度,遠出をして写してみたいものです。

 以前このブログに書きましたが,月はどの月齢まで写せるのでしょう?
 地球を回る月の軌道は楕円なので,月齢がいくつまであるかは毎回異なります。また,今回は月齢が25.8,26.8,27.8というようにコンマ8のまま毎朝1ずつ変化するので,この時期に26.5のようなコンマ5の月を見ることはできませんから,どの月齢まで見ることができるかを確かめるには長い年月がかかります。
 今回の周期では,月齢は29.3までで0.0,つまり新月になりました。月齢27.8の翌日2月4日(月)は28.8でしたが,月が昇ってわずか10分もすれば日の出なので,果たして月齢28.8の月が見れらるのかどうか。それを確かめてみたいと思って,月が昇ってくる場所を調べて翌日を楽しみに待ちましたが,残念ながら曇ってしまっていて確かめることができませんでした。

 これまでに私が写した中で,最も月齢が小さいのは0.9で,反対に最も月齢が大きかったのは28.4でした。ともに今から3年前に確かめてみたものですが,その月齢の月はどちらも肉眼でもはっきり見えたので,もう少し月齢の小ささものと大きなものも写せるような気がします。
 今は当時よりも機材を整備したので,もう少し月齢が小さいものと大きいものにチャレンジしてみたいと思ったことでした。

☆ミミミ
月の写真を撮る②-月齢29と月齢1は写せるのか?
月の写真を撮る③-ついに撮ったぞ! 月齢0.9
月の写真を撮る④-ついに撮ったぞ! 月齢28.4
月・火星・木星・土星-小さな望遠鏡で惑星を写すと…

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 火星と地球は太陽をひとつの焦点とするそれぞれの楕円軌道を運動しています。それぞれ異なる周期で太陽のまわりを公転しているので,惑星どうしの位置関係はいつも変化しています。内側を公転している惑星ほど公転のスピードが速いので,火星の内側にある地球は公転周期が365日で,火星の公転周期687日に約780日,つまり約2年2か月の周期で追いつき追い越します。
 地球の楕円軌道に比べて火星の軌道はつぶれた楕円形をしているので,最接近時の距離が毎回異なり,近いとき(大接近)で約5,500万キロメートル,遠いとき(小接近)は約1億キロメートルと約2倍にもになります。
 大接近が起きるのは15年おきで,それが今年2018年7月31日というわけです。今回の大接近では火星と地球の距離は5,759万キロメートル,このころの火星はマイナス2.8等の明るさで輝きます。前回2003年には地球と火星は5,576万キロメートルまで接近したので,今回はこれには少しおよびませんが,いずれにしても,15年ぶりの大接近となります。

 何事も話題づくりとそれに付随したお金儲けが資本主義社会に生きる人々の目的なので,この火星の大接近もまた,月の大接近を「スーパームーン」ということに習って「スーパーマーズ」といって人々の興味を駆り立て,これを商戦とばかりに,望遠鏡をはじめてとした火星グッズを売ろうとさまざまな工夫をしています。
 しかし,古の昔より,というのは大げさですが,私の子供のころからずっと,望遠鏡というのはとかく誤解を招く商品のようです。人々はその形から望遠鏡というイメージをいだきこそすれ,それを購入して満足に使いこないしている人がなんと少ないことでしょうか。おそらくそのほとんどは買って一度か二度使っただけで,あとは部屋の飾り物と化していることでしょう。しかし置物にすれば大きすぎるし,決して安いものではありませんからもったいない話です。
 私は星を見ることを楽しみとしているのですが,30年も昔に買った小さな望遠鏡を1台もっているだけです。望遠鏡に限らず何ものも豪華な買い物をする人がいますが,そうしたノリで買っても望遠鏡は使っていないときの置き場に困る代表ではないかと推察します。
 私が持っているのは口径がわずか7.6センチの小さな屈折望遠鏡ですから,当然,性能もたいしたことはありません。しかし,おそらくこの望遠鏡を30年間使い続けている数少ないひとりではないかと自負しています。そして,今でもこの望遠鏡がもっている性能の限りが発揮できるように,様々な工夫をするのを楽しんでいます。

 現在火星は夜8時ごろに東の空に見えるようになります。そのころは西の空には木星,南の空には土星も輝いています。
 明るい木星はすぐにわかりますが,それに比べれば土星は1等星とはいえ暗いものです。なかでも火星はひときわ明るく見られます。
 私は日ごろ,火星に明るい星というイメージがないので,この明るさを異常に感じるほどです。それだけ接近しているということなのでしょう。
 こういう姿を見ると,だれしも拡大して見てみたいとか写真に収めてみたいと思うわけで,そうした人をターゲットにして,望遠鏡売り場や文具売り場,はたまた書店にまで,大きなポスターが張られていたりします。 
 しかし,こんなことを書くと業界の人に嫌われますが,本にあるような立派な姿を見たければ,望遠鏡を買うよりも天文台の一般公開に出かけるのが一番です。天文台の大きな望遠鏡の接眼レンズにスマホを近づければ写真だって簡単に写せます。係りの人に聞くと写し方を教えてくれます。

 ということで,今日の写真の上から3枚はそうした天文台の望遠鏡を使って私がかつて写したものです。それと比較するために,私の小さな望遠鏡で昨日写したものが下の3枚です。いうまでもなくそれぞれ上から火星,木星,土星です。
 現在は写した写真をコンピュータで画像処理したり,ビデオ映像として記録してそれを加工したりして,すばらしいものに仕上げている人の写真が天文雑誌を飾っているので,だれでも簡単にそんな写真が写せると思っている人がいますが,それには手間と暇と財力が必要で,実際はこんなものです。しかし,手間と暇と財力をかけなくても,たとえ小さな像であっても,自分で工夫して写真を写したり時間を忘れて星を眺めるだけで老後の趣味としては十分楽しいものです。
 日本では,火星が地球に最も接近するその3日前,7月28日の明け方午前4時30分ごろから皆既月食が見られます。夜が明ける30分前の沈みそうな西の空の満月に地球の影が入ります。沈む赤い月に寄り添うような赤い火星! こんなもの見たことがありません。私は,実は火星よりもこの皆既月食のほうが楽しみなのです。

☆ミミミ
火星最接近-誰が「スーパーマーズ」などと言い始めたのか?

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 私の購読しているアメリカの天文雑誌「SKY & TELESCOPE」(電子版)の6月号に「7 Earth-Size Planets Orbit Dim Star.」という記事がありました。そしてまた,先日のNHKEテレの番組「サイエンスZERO」でもこの話題が取り上げらていました。
 記事にある「Dim Star」とは「赤色矮星」のことです。「矮星」というのは小さい星ということですが「赤色矮星」のほかにも「白色矮星」や「褐色矮星」というものがあるので間違いやすいのです。「白色矮星」(white dwarf)とは主系列星(main sequence star =恒星の一生において壮年期にあたる星)ではなく恒星の終末期にとりうる形態のひとつです。一方「褐色矮星」(brown dwarf)は、質量が木星のような惑星よりは大きく「赤色矮星」よりは小さな天体で,質量が小さすぎるために恒星になることができなかったものです。それに対して「赤色矮星」(red dwarf)は、太陽のような主系列星だけれども特に小さい恒星を指します。恒星は大きいほど寿命が短いので,太陽は100億年程度であるのに対して赤色矮星は数百億年以上と考えられています。

 もともとは,太陽系外に地球のような惑星を探すときに,太陽のような大きさの恒星のまわりをまわる惑星系を対象としていました。赤色矮星のまわりをまわる惑星系を探すという発想自体がなかったのです。それが,今回,やはり赤色矮星のまわりをまわる約4光年先の「プロキシマ・ケンタウリb」同様,約40光年先,みずがめ座(1番目の写真のなかの「+」の場所)にある「トラピスト1」という18.8等星の「赤色矮星」のまわりに7つの岩石でできた惑星が公転しているということがわかったのです。7つの惑星は,内側から b,c, d, e, f,g と呼ばれていて,大きさは地球くらいのサイズで岩石でできていると思われるのです。
 惑星に生命が存在する可能性のある恒星のまわりの領域を「ハビタブルゾーン」というのですが,太陽系では地球と火星がその領域にあります。今回発見された7つの惑星のうちでは e,f,g がそうです。
 「トラピスト」(TRAPPIST)とは「Transiting Planets and Planetesimals Small Telescope–South」という望遠鏡の頭文字からとったものです。「トラピスト」は,ベルギーのリエージュ大学とスイスのジュネーブ天文台が合同で南米チリにあるラ・シーヤ天文台(La Silla Observatory)に設置した彗星や太陽系外惑星の調査を目的とするリモートコントロールの望遠鏡です。函館に「トラピスト修道院」という施設がありますが,この「トラピスト」という呼び名は,フランス起源のカトリック修道会である「トラピスト会」へのオマージュでもあります。

 この「トラピスト1」をまわる惑星の発見は,地球と同じような大きさの岩石惑星がはじめて,それも同時に7つも発見されて,生命体の存在を確認できるかもしれないということで大きな話題となっているのです。
 しかし,私がずっと最も疑問に思っていて,しかも,ほどんど誰も指摘していないことがあります。
 このことを書く前に,地球上の生命について考えてみます。
 地球が誕生したのは45億6,700万年前といわれています。そして,はじめての「生命」である「マンガンカルシウムクラスター」が誕生したのが38億年前で,「シアノバクテリア」の発生は27億年前のできごとです。はじめて多細胞生命の誕生したのが6億3.000年前で,先カンブリア時代が始まったのが5億2,000万年前です。恐竜が2億年前から地球上に君臨して,6,600万年前に小惑星の衝突で絶滅しました。地球は誕生以来これだけの歴史のなかで何度かの全球凍結と生命の大絶滅期を経験しました。こうしたのち,人類の先祖が1億年前あたりに発生し,500万年前ごろに二足歩行を開始しました。原人はわずか60万年前,クロマニヨン人に至っては20万年前です。人類文化の発生などわずか5,000年前,地球の歴史の 1,000,000分の1 のできごとなのです。
 傲慢な人類のことだから,未来永劫人類は生き続けると思っていますが,実は,人類の歴史など恐竜の繁栄した期間とも比べものにならないほど短く,有史以来相も変わらず戦ごっこに精をだしているので,核戦争でまもなく自滅し放射能汚染で生命の存在できない惑星にしてしまうか,あるいは,そうでなくとも小惑星が衝突して,近々,といっても数千年から数万年後でしょうが,恐竜のようにあっという間に絶滅してしまうことでしょう。
 そう考えると,地球上に知的生命が存在している期間どころか,多細胞生物よりも高等な生命が存在している期間など,地球の寿命のうちのほんのわずかの間に過ぎないわけです。だから,もし,太陽系外に知的生命がいて,地球を観察していたとしても,その地球に高等な生命が存在しているほんのわずかな期間に遭遇することのほうがまれであると考えれらます。
 このように,太陽系外に生命がいたとして -おそらくいるでしょうが- 「シアノバクテリア」程度の生命の存在が確認できる可能性はあるでしょうが,その天体に知的生命の存在する期間に,同じように地球上のわずかの期間生息している知的生命である人類が偶然それを観察できることのほうが奇跡であるのではないか,と私は思うわけです。知的生命がずっと存在しているわけではないからです。
 地球外生命の発見といっても,そうした指摘がほとんどされないことを,私はいつも不思議に思うのです。もし,ある天体に,かつて知的生命が生存しそれが滅んだ残骸が見つかれば,傲慢な人類の未来への警鐘となることでしょう。

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地球は6回目の絶滅期に突入か?-生命の起源が面白い①
人類の生存期間はたかだかそれだけ-生命の起源が面白い②
小惑星衝突が人類の繁栄を作った-生命の起源が面白い③
映画「アバター」-「プロキシマ・ケンタウリb」に生命が?

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 地球の隣にある惑星火星は2年2か月ごとに地球に接近します。
 地球と火星の軌道は太陽を中心とした円ではなくて太陽を一焦点とする異なる楕円なので,最接近しても毎回その距離が異なります。今回は最近10年間では最も近い距離になっているということですが、2年後の接近のほうがずっと近いのです。私は,何をそんなに騒いでいるのやら… と思うのですが,概して,星の話題というのは,こうしたいい加減なものが多いのです。
 例えば,彗星と流星は異なるのですが,彗星も流れ星のようにス~ッと流れると思っている人,金環日食を空が真っ暗になると思っている人,火星は最接近した日しか見られないと思っている人など,ニュースを流しているアナウンサーさえいい加減で,こういうニュースを見るたびに,ほかのニュースもその程度のいい加減なものなのか,と思ってしまいます。

 火星最接近についてはテレビのニュースで次のような突っ込みどころ満載のわけのわからない説明がありました。
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 最接近する火星は「スーパーマーズ」とも呼ばれ,日没とともに南東の空に現れ,夜遅くには南の空に赤く光る様子が観測できます。これから1週間程度は,天候に恵まれれば,いつもより明るく大きい火星が一晩を通して,都市部でも肉眼で見ることができるということです。
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 今回の火星の接近で私が最も驚いたのは,なぜか「スーパーマーズ」という言い方をみんながしていることです。どうしてそういう言い方をするようになったのか不思議な話です。いつ頃から誰が言い始めたのでしょう? 調べてもよくわかりませんでした。
 きっと「スーパームーン」からきた言葉だと思うのですが,それにしても,これもまた日本らしいというか,おかしな話です。

 「スーパームーン」というのは英語から来た表現で,これは1年に何度もある満月のうちで一番地球に近づくものを指します。ならば,もし「スーパーマーズ」という言葉があったとしても,それは今回の接近のことではなく次回の接近のときに使うべき言葉でしょう。英語では「スーパーマーズ」などという表現はなく「Mars Opposition」と言います。地球から見て太陽と正反対側に火星があるという意味です。
 いずれにしても,火星は地球の半分の大きさしかないので,大きな望遠鏡でないと表面の模様を見るのも難しいものです。高価な小さな望遠鏡を買って赤いぼーっとした塊を見るよりも,近くの公開天文台に出かけて見せてもらうほうがずっといいでしょう。
 大きな望遠鏡なら火星人や彼らの作った運河もハッキリと見られるので(冗談),きっと,その美しい姿に感動することと思います。接眼レンズにカメラを向ければ写真も写せます。

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 2月の上旬の5惑星のそろい踏みは,1晩に明るい惑星がすべて写せるので,私の「2016観測機材整備」で作った拡大撮影アダプターの実験には最適でした。拡大撮影アダプターの詳細は後日書くことにして,今日はそれを使って写した写真のお話です。
 まずは,家から少しドライブして木曽川のツインシティー138の上空に輝く5惑星を写したので,この写真をご覧いただきましょう。2月8日の夜明け前に写したものですが,水星が昇るのを待って写したので,午前5時30分過ぎ,すでに,世の中は活動を始めていて,通勤する人がいたり,犬を連れて散歩している人がいたり,という時間でした。見上げればこれほど素晴らしい星空が輝いているのに,多くの人はそんなことも知らず,もったいない話でした。
 なお,この日は月齢28.8。昨日は水星の隣に美しい月が見られたのに,この日は,そんなことは夢だったかのように月の姿はなく,まだ地平線の下でした。
 その後,月が昇ったので探してみたのですが,全く見つかりませんでした。
 先月月齢28.4は容易に見ることができたのですが,どうやら月齢28.5くらいが見ることができる限界なのでしょうか?
 そういえば,私の愛読しているアメリカの天文雑誌「Sky & Telescope」誌の今月の特集のひとつに,新月前後の月を写すというのがあったのにはびっくりしました。まるで私のための記事のようでしたから。

 こうした惑星のそろい踏みを写すのならともかく,月や惑星を拡大撮影するだけなら,星が見られる遠い山の中に出かける必要もなく自宅からでもできるので,寒い冬には最適です。ただし,冬の夜空はシンチレーションが悪く像が安定しないのが難点ではありますが。
 そんなわけで,新しく作った拡大撮影アダプターを利用して望遠鏡にカメラを取り付けて写してみたのが,今日の2番目から5番目の写真です。
 順に,月,火星,木星そして土星です。
 天文雑誌や本には鮮やかで大きな写真しか載っていませんが,実際に小さな望遠鏡で写すとどのくらい写るものなのかという情報はほどんどありません。星に興味にない人や,興味があっても図鑑でしか見たことのない人,そして「ドリラー」の気の毒な少年少女たちは,だれでも大望遠鏡で写した写真のように見えたり写せたりすると思っているのでしょうが,そんなわけがないのです。
 だから,望遠鏡を買って一度惑星を見るとがっかりして,その後は押し入れの中になってしまいます。

 写真でお分かりのように,火星は,この程度にしか写せません。
 小さな望遠鏡で写しても面白いのは、木星と土星です。
 木星は,衛星を写しても模様を写しても面白いのですが,両方を同時に写すのは露出時間が違うので無理なのです。インチキ? をするなら画像処理という手段を講じましょう。それが今日の一番下の合成写真です?!
 土星は,フィルムカメラの時代には写すのが非常に困難だといわれました。なにせ有名なので期待が大きすぎるのですが土星は結構暗く感度が低い時代,ずいぶんと露出をかける必要があったのです。そうしたフィルムカメラの時代を知っている人ほど,口径75ミリの小さな望遠鏡では無理と思ってしまいますが,それが存外いけるのです。図鑑にのっている写真と比べたらがっかりですが。

 実際に写してみると,このように,お金のかからない暇つぶしとして十分に楽しめることがわかりました。この先もっと良い写真を写すには,画像処理を工夫する必要がある,ということでしょう。
 それはそれとして,惑星は,写真で写すよりも肉眼で眺めるほうが最高です。

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