☆☆☆☆☆☆
本当に夜明けは美しい,と思うようになりました。これ以上のものは世の中にありません。
学生のころ,自由な時間,私は,お昼間に室内にいることができませんでした。なにか,家にいるのがもったいない気がしたのです。だから,日が沈んみ,世の中が寝静まった後の深夜だけが,机の前で集中できる時間でした。
しかし,この頃はその逆で,太陽が出てしまってからの世の中は醜く不快で,用事でもなければ外に出る気持ちがなくなってしまいました。その逆に,晴れた深夜の空には,輝きと魅力が一杯です。
そして,その中でも一番素晴らしいのが,夜明け前の東の空です。
2月の上旬は,水星,金星,火星,木星,土星,この太陽系の5つの惑星が,1等星であるしし座のレグルス,おとめ座のスピカ,うしかい座のアークトゥルス,さそり座のアンタレスの間にずらりと並び,そこを,月が毎日形と位置を変えて進んでいったので,天気が良い日は,毎晩,見飽きることがありませんでした。
中でも,2月7日の早朝は,月齢27.8の月が0等星の水星,マイナス4等星の金星と並んで見られるということで,楽しみにしていました。幸い快晴だったので,私は,地平線まで人工物のない場所を探して,木曽川堤防をさかのぼってみました。
午前5時30分過ぎ,すでに金星が明るく輝くその左側の地平線すれすれに,美しい月が昇ってきました。そして,月と金星の間には水星もはっきりと見えるようになりました。
それらの高度が次第に上がるにつれて日の出が近づき,空が青白くなって,さらに,朝焼けで赤く染まるようになってきました。それとともに,淡い光を放っていた星々が明るさの中に消えていきました。月や惑星が空に溶け込んでいく美しさは絶品で,私は時間も忘れて,その姿に見とれていました。
その帰り,そんな美しい姿があることさえ虚構だといわんばかりの俗世が,いつも以上にあわただしく活動を始めました。しかし,愚かな行為で近いうちに人類が滅んでも,この星たちは何も知らずそして変わらず輝き続けるのでしょう。
自然の神々しさと人間の愚かさを改めて実感した1日でした。
カテゴリ:星を見る > 惑星
星を見るのも大変だ。-夜明けの空に水・金・地・火・木星
連日の晴天で,月も暗く,オリオン座流星群の極大期で,しかも,明け方の東の空に惑星が四つ,さらに,国際宇宙ステーションが夕方の空に見られる。このように天界は大忙しでした。
天気予報は,夜だけ曇,という予報が続き,あまりの晴天続きで茶色く濁って,星を見にいくべきかやめるべきか,迷っているうちに,月齢12になってしまいました。
土曜日の夜は,午前2時くらいまでは雲がでるけれど,そのあとは晴れ上がるという予報だったので,どっちみち月が沈むのが午前3時だから,明け方の星を見にいくことにしました。
見たかったのは,2つのパンスターズ彗星と明け方の惑星,そして,おまけのオリオン座流星群でしたから,明け方の空さえ晴れてくれれば問題ありません。しかも,夜明けのドライブは,星を見るよりも楽しいので,うきうきと,深夜1時過ぎに家を出ました。
家を出るときはものすごい風が吹いていて,まさに前線が通過する感じ,これなら大丈夫と思ったのですが,いつもの場所に着いたら,もう風は止んで,代わりに,天気が変って,冬型になりました。そんなわけで,同じ快晴でも,昨日の濁った空とは違って,日曜日はまさしく秋晴れ,澄んだ青空が広がりました。
パンスターズ彗星2つ,そのひとつは「C/2014S2 PanSTARRS」というもので,前回北極星に大接近したときに写真に撮ったものです。その後,こいぬ座をゆっくりと動いています。もうひとつは「C/2013X1 PanSTARRS」で,こちらのほうが大物で,来年の夏に6等星になるといわれていますが,現在はまだ12等星。ぎょしゃ座のカペラ付近を動いています。
月が沈んだので,まず,パンスターズ彗星(C/2014S2 PanSTARRS)を狙いました。急激に増光して予報より明るいということでしたが,問題は天の北極に近く,望遠鏡を操作するのが難しかったことです。何とか視野に入れると,簡単にうつりました。それが1番目の写真です。しっかり尾も見えるし,このくらいの彗星はかわいくていいです。
次はパンスターズ彗星(C/2013X1 PanSTARRS)です。1等星カペラは天頂に輝いています。天頂というのは贅沢な話ですが最悪です。ファインダーが覗けないので位置が定まりません。なんとか彗星のある位置を探して1枚だけ写しましたが,写っているのやらいないのやら,写真を見て探す気も失せました。
こうしている間も,オリオン座は南の空高く輝いていましたが,流星なんて,ひとつも見えません。今年のオリオン座流星群はだめです。広角レンズで時々オリオン座付近を写したのですが,ひとつも写りませんでした。その時の写真の1枚が2番目のものです。この写真に流星が写っていれば最高だったのですが…。
この夜,2時間で,ものすごく明るい流星を3個見たのですが,見たときにその視野を写していなかったのが不運でした。1番残念だったのが,3番目の写真を写した直前に,ちょうどその場所に流星が出現したときでした。
東の空には金星と,それに寄り添うように木星が昇ってきました。その下には火星が輝いています。
金星と木星は焦点距離750ミリ相当の画角に収まるほど接近していたので,露出時間をかけて写しました。ここに載せた4番目の写真は1分ほど露出したのもで,金星が派手に明るく写りましたが,木星の周りにあるガリレオ衛星のうちのひとつ・イオは木星の光に吸い込まれてしまいました。もっと露出時間の少ない写真には写っているのですが,難しいものです。
そして,午前5時。
東の空には,金星,木星,火星,そして,上ってきた水星,地上の風景は地球ですから,水・金・地・火・木星が見えるようになりました。
土星だけは,夕方西の空に見えていました。
家に帰る途中,高度を上げた水星が,夜明け前の東の空,山々の上に元気に輝いているのを肉眼でもはっきり見ることができました。
お金を出して,高性能の望遠鏡やカメラを買えば,もっとすばらしい写真が写せるのですが,私は,これまで40年以上長年付き合ってきた自分の持ち物を,恩返しのつもりで使い続けています。若いころにせっかく手に入れたものだから,その持って生まれた能力を十分に発揮させてやりたいものだと思っています。別に,学術的な研究をしているわけでもなく,自分の精神的な満足を手に入れることが目的だから,私にはこれで十分です。
それにしても,頭ではわかっていても,実際に写すのは本当に難しいものだと,いつも思います。だからこそ,楽しいのです。そして,夜明けはいつ味わっても気持ちのよいものです。
今日は十三夜。月も明るくしばらく星見もお休みです。
◇◇◇
The Beautiful Moon in the Chestnut Season.
The lunar calendar, the night of the Moon age 13 in September is "Ju-san Ya".
It is also called "Kuri Meigetsu" or the Beautiful Moon in the Chestnut Season.
If we don't watch both the Harvest Moon and this,
it is less favorable as single moon-viewing.
星を見るのも大変だ。-太陽系外惑星をさがせ。④




2013年,マイケル・リューさんは,彗星の発見で有名なパンスターズプロジェクトで,やぎ座の中の80光年先にPSO J318.5‐22という赤い惑星を発見しました。
この惑星は,質量は木星の6倍。ケイ素・鉄分を多く含んでいるのですが,なんと,この惑星は,中心となる恒星をもたず,宇宙区間を浮遊惑星としてさ迷い歩いているのだそうです。
どうしてこんな浮遊惑星ができてしまったかということは,恒星からはじきとばされたとか,もともと恒星になり損ねた星だとか推測されています。
・・
NGC1333星団の中の褐色矮星領域にも,質量が木星の6倍である浮遊惑星が発見されているのですが,木星よりも13倍から75倍重い惑星は,惑星でなく褐色矮星,また,さらに75倍以上のものを恒星と分類しているので,こうした浮遊惑星は,惑星というよりも,恒星のなりそこないではないかともいわれています。
こうなると,こんどは,惑星と恒星との線引きが難しい問題になってくるのです。
・・
特殊な星のまわりをまわる惑星というのもあります。
おとめ座の中,980光年先には,PSR B1257+12bという惑星があるのですが,この惑星は,なんと,パルサーのまわりをまわっています。
パルサーというのは,超新星爆発の残骸で,半径は太陽の5万分の1しかないのに,質量は太陽の1.4倍もあります。
さらに,さそり座M4球状星団の中,12,400光年の距離には「メトセラ」という惑星がありますが,この惑星は,パルサーPSR B1620-26と白色矮星の連星のまわりをまわっています。
この惑星は,木星の2.5倍で,公転周期は100年。きっとはじめは,白色矮星の周りをまわっていたのが,パルサーが白色矮星をその強力な引力で引きつけて,連星にしてしまったのではないか,ということです。
・・
前回のブログで取り上げたケプラー望遠鏡で発見された岩石惑星は,地球型の惑星なので,これらの惑星は「スーパーアース」と呼ばれています。そのひとつ,てんびん座の中,20光年先にあるグリーゼ581は,M型と呼ばれる暗くて小さい恒星のまわりをまわっています。
恒星の中でもM型の恒星は,銀河系にある恒星の7割から8割を占めているといわれています。
そして.この惑星は,地球の海のように水をもつ惑星です。
常に同じ面を恒星に向けて公転していて,表面から中心までの,なんと4分の1,つまり10万メートルの深さまで水の層からなっています。当然,水圧で水は圧縮されて100万気圧まで達するので,水は氷の固体になっています。
M型恒星は小さいので,「ハビタブルゾーン」,つまり恒星の周りの生命の存在できる地帯もわれわれの太陽系よりも恒星に近いところにあるわけですが,恒星から出る紫外線やX線が当たらないところには,生命の存在が期待できるのではといわれています。
・・
変わったところでは,かに座の先40光年にある55番星eという惑星があります。
この惑星は,酸素より炭素が多いことから,炭素を主成分とする惑星だといわれています。黄色い靄と黒いすす,炭素化合物から成る大気があって,メタン,ブタン,ベンゼンの雨が降ると推測されています。
そして,地下には,圧縮された炭素が液化したダイヤモンドとして存在し,地表にはダイヤモンドやグラファイトの山があるのではではないか,ということです。
ダイヤモンドだらけの惑星なんてすごいです。
このように,これまでに,数多くの様々な系外惑星が続々と発見されているのです。
ひょっとしたら,こうした惑星には生命がいるかもしれません。もう間もなく,そうした生命の存在するニュースが我々に伝わるかもしれません。
星を見るのも大変だ。-太陽系外惑星をさがせ。③
今,天文学が面白い! とは,様々な観測装置や観測方法の発達で,どんどん新発見が続いているからで,そうしたニュースに接するだけでも,私はわくわくします。
太陽系外の惑星の発見もそのひとつです。2009年3月6日にアメリカが打ち上げたケプラー宇宙望遠鏡によって,はくちょう座の方角に,2,000個あまりの恒星の周りを,2,700個以上の惑星候補が回っていることがわかったのです。また,その惑星候補の中には,地球サイズの岩石惑星が300個以上も見つかったと,このブログで書きました。
NHKBSプレミアム「コズミックフロント」という番組で,この系外惑星の不思議な性質を取り上げていたので,番組から紹介しましょう。
・・・・・・
はじめめて系外惑星が発見されたのは1995年でした。ミッシェル・マイヨールさんが恒星が揺れていることから,その周りに惑星が存在することを証明したのです。
それは,ペガスス座にある50光年先の恒星51番星の惑星で,「ベレロフォン」と名づけられました。表面温度1,000度,質量は地球の150倍,しかし,軌道は地球の20分の1と,ずっと恒星の近くをまわっているということでした。
こうした惑星を「ホットジュピター」とよびます。
この惑星は,恒星の近くを周回しているために,高温で灼熱地獄,常に同じ面を向けてまわっているらしいので,蒸発した鉄の雲があり,なんと,鉄の雨が降ったり,オーロラが出現していると推測されているということです。
その5年後,今度は,恒星の前を横切るときの光度の変化からペガスス座の150光年に「オシリス」という惑星が発見されました。質量は地球の220倍で,公転周期はわずか3.5日です。
惑星には,蒸発した水素とヘリウムガスの大気が雲を形成し,それが宇宙空間に尾のように広がっている姿が写真に写されています。また,大気にはナトリウムや酸素,炭素があると測定されています。
・・・・・・
実は,これほど巨大な惑星が恒星近くをまわっていることは,とても不思議なことなのです。
惑星は形成領域(フィーディンング・ゾーン)が決まっていて,恒星に近いところでは岩石惑星,少し遠くには木星のような大気惑星,その外側には,海王星のような氷惑星ができるといわれています。だから,この惑星は,初めは大気惑星として誕生したものの,恒星の周りの円盤ガスの収縮で,惑星が次第に恒星に近づいていったのではないかと推測されるそうです。
恒星の周りを楕円軌道を描いて回る惑星もあります。
白鳥座の70光年にある16番星b という惑星は,質量が地球の530倍もあって,短軸は水星の距離,長軸は木星の距離といったいびつな楕円軌道をまわっています。こうした惑星を「エキセントリック・プラネット」とよんでいるそうです。
この楕円軌道は1週が26カ月で,恒星からの距離が変わることから四季があります。四季は気温が800度にまでなる夏が1か月,春と秋は3か月,そして,マイナス260度になる冬が17か月間もあるということです。
もし,この惑星の周りを岩石星の衛星が回っているなら,生命が存在可能な「ハビタブルゾーン」を通っていることから生命がいるかもしれないといわれています。
星を見るのも大変だ。-太陽系外惑星をさがせ。②
われわれの住む太陽系の惑星がどのように形成されたかということは,「京都モデル」とよばれる標準モデルで説明されています。
それは,はじめガスダストが微惑星となって,それがやがて原始惑星となり,その状態を経て現在の惑星になったというものです。
その説明を当てはめると,惑星形成の過程で,ガスがたくさんあったり恒星の周りの円盤が大きいときは灼熱巨大惑星が誕生するのですが,その巨大な惑星があまりに恒星に近い所に誕生すると,誕生後600万年くらい経つと軌道が不安定になって,それが偏心軌道惑星となるのではないかと解釈されます。
こうしてはじめに発見されたのは,特殊な惑星たちでした。
そこで,新たに地球型惑星を発見するために,「トランジット法」という方法を用いて,惑星を探すことが試みられるようになりました。
「トランジット法」は,惑星が存在して中心星のまわりを回っているとすると,惑星が中心星を横切るときの中心星の光度減少を観測すれば,惑星の直径がわかるというものでした。
そうした中心星を観測するために「ケプラー衛星望遠鏡」が打ち上げられました。「ケプラー衛星望遠鏡」は4年間で15万個の恒星を調べました。その結果,2,000個あまりの恒星のまわりを,2,700個以上の惑星候補が回っていることがわかったのです。また,その惑星候補の中には,地球サイズの岩石惑星が300個以上も見つかったのでした。
・・
今日では,こうした観測から推定すると,実際には,惑星をひとつ以上もつ恒星の割合は,地球サイズが16パーセント,スーパー地球サイズが21パーセント,小型海王星サイズが20パーセントほどあるのではないか,といわれています。
これを当てはめて,実際に計算してみると,天の川銀河には恒星が約1,000億個あるので,そのうちで太陽のような安定的な恒星が約30パーセント,そのうちで惑星を持つのは約50パーセント,また,その中で岩石惑星が約50パーセントとすると,地球サイズの惑星は,なんと天の川銀河だけで,75億個くらいあるということになります。
では,そうした地球サイズの惑星のうちで,生命環境が存在する地帯,つまり「ハビタブル・ゾーン」とよばれる地帯,それは太陽系に当てはめると金星・地球・火星の回っている軌道あたりになるのですが,そこにどれだけが存在しているのか,ということを調べることが,地球外生命が存在するかどうかにつながるので,現代の重要な研究課題となっているわけです。
そのように考えてみると,かつて火星に生命が誕生していたということがわかれば,こうした「ハビタブル・ゾーン」にある太陽系外惑星にも生命が存在する,ということにつながってくるのです。
火星に生命がいるかどうかが重要な意味をもっているのは,そうした理由によるものなのです。
・・
現在,2020年の完成をめざす30メートル望遠鏡TMTが待たれています。この望遠鏡で,太陽系外の地球型惑星に海と陸があるかどうか,そして,生命の痕跡があるかを探そうとしているのです。
星を見るのも大変だ。-太陽系外惑星をさがせ。①
近ごろの天文学の進歩は著しくて,数年前の教科書は使いモノになりません。若いころに勉強した知識から,どこがどう変わってしまったのか,とまどうことばかりです。
地球のような惑星も,太陽系以外にたくさん見つかるようになりました。ということは,地球以外にも生命がいるかもしれないということです。
惑星の誕生については,次のように説明されています。
・・・・・・
まず,超新星の爆発や赤色超巨星という恒星の終焉から,宇宙空間に分子ガスや星間ダストが放出されます。
分子ガスの成分は,暗黒星雲で発見される有機分子,直線炭素鎖分子など,すべて炭素原子を含んでいます。また,星間ダストの成分は,水の氷,砂粒,炭素ガスの氷など,こちらも有機物なのです。
これらが星の生成領域にあるということだから,宇宙空間には,惑星になる材料がすべて揃っているといえるのです。つまり,恒星の一生の活動によって,惑星のもととなる物質が作られるわけです。
・・
こうして宇宙空間に放出された星間物質が自己の重力でまとまっている系が平衡状態にある場合,それは「ビリアル定理」が成り立っていて,そのままの状態でいられるのですが,重力エネルギーが内部エネルギーより大きくなるとつぶれる,つまり,重力による収縮が起きて縮んでいき,やがては恒星になります。
これが新しい星の誕生です。
そのとき,縮んでいく過程で,乱雑な運動があるからすべての星間物質が縮まることにはならず,星の周りに原始惑星系が誕生,つまり,星間塵という固体微粒子を中心にして,原始惑星のもとが集積するのです。
こうした原始惑星系は,たとえば,オリオン星雲内の原始惑星系円盤とか,ハワイにある日本のすばる望遠鏡を使った観測で,GGTau星,SAO202462星など,惑星が生まれつつある様子が観測されています。
・・
最近は,こうした原始惑星系から進化した太陽系外惑星が発見されるようになってきたのですが,そうした太陽系外惑星はどのようにして見つけられてきたのでしょうか。
太陽系外惑星は,1995年に「ドップラー法」という方法ではじめて発見されました。
「ドップラー法」とは,次のようなものです。
中心星にあたる恒星に,もし,惑星が存在すれば,実は,その惑星が恒星の周りを回ってるのではなく,惑星と恒星の共通の重心の周りをお互いが回っているのです。しかし,惑星は恒星に比べれば非常に小さいので,地球から観測できるのは恒星(中心星)だけで,その恒星が惑星との公転によって運動するのを観測できるから,それがどのように周期的な運動をしているかを詳しく探ることで,見ることのできない方の惑星の存在を見つけようというものです。
この方法で,これまでに800個以上の木星大の惑星が見つかりました。
そうした惑星は,太陽に非常に近いところを回っていたり(灼熱巨大惑星),かなり偏心した楕軌道を回っていたり(偏心軌道惑星)と,太陽系とは異なった惑星でした。
どうして,こんな巨大で特異なものばかりが見つかったのでしょうか?
実は,これは,ドップラー法で見つけることのできる惑星の限界なのです。
私は,このニュースを知った時には,なんだ,惑星が見つかったといっても,太陽系とはずいぶん違って,生命の存在するような惑星ではないんだなあ,と失望したものでした。
・・・・・・
☆ミミミ
今日の写真は上から,火星,木星,土星です。天文台へ行って望遠鏡の接眼レンズにデジカメをくっつければだれもで写せます。
星を見るのも大変だ。-I love Pluto.②
ホセ・ルイス・オルティス・モレーノ (Jose Luis Ortiz Moreno) は,スペインの天文学者です。
1994年にグラナダ大学にて物理学の博士号を取得。NASAジェット推進研究所等を経て2000年よりスペインのアンダルシア天体物理学研究所太陽系部門の恒久スタッフに就任。同研究所が運営するグラナダのシエラ・ネバダ天文台技術次長として,研究グループを率いているということです。
私の卒業した大学の研究室も,昔の話ですが,教授たちの派閥争いや悪口は日常茶飯事でしたし,純粋に学問をするといっても,その裏には,そうしたありがちな人間の醜さがあるということを,この話を読んで思い出しました。
天文学というきわめてロマンに満ちた世界にも,こうした人間の姿があるのですね。
そういえば,これもずいぶんと昔のことではありますが,野辺山の電波天文台の研究室には,セクハラまがいのことがあって,女性研究者がその対応に苦慮していたことが書かれてあったのを思い出しました。確か「あこがれのあの大先生が…」みたいなことでした。
・・
この本は,マーク・ブラウンさんによって書かれたので,どうしても,彼に分があるように書かれていますけれども,マーク・ブラウンさんだって,発見したことをもっと早く公表していれば,このようなことににはならなかったわけで,やはり,本を読んだ限りにおいては,そこには非があるのではないかなあ,と私は思いました。
新彗星の発見にも,このような話はたくさんあります。
偶然写した写真の中に新彗星を見つけて,右往左往した人の話を聞いたことがあります。もし,実際にそういった状況におかれたとしたら,どうすればいいかというのは,いろいろと本には書いてあっても,実際は簡単で単純なものではありません。なにせ,新彗星を発見すれば,発見順に3人の名前がつくので,いつ発見したかということは大問題なのです。その発見をだれかに漏らしたら,その人がその功績を横取りして自分のものにしてしまうことだってありえます。逆に,天文台に通報しても,誤報で迷惑をかけるかもしれません。
だから,新天体の発見といっても,そう簡単な話ではないのです。
話を戻しまして…。
その後,マーク・ブラウンさんのチームは,冥王星よりも大きな「エリス」という天体を発見しました。そのことが,冥王星が惑星の座から追われる要因となりました。そこで,改めて惑星の定義がなされて,冥王星は準惑星に降格しました。
現在では,これまでに発見されていた冥王星とケレスに加えて,エリス,マケマケ,ハウメアの合計5個が準惑星とされています。この本には,こうした発見にまつわる人間臭いドラマに加えて,著者の結婚や長女の誕生なども書かれているのですが,私は,この本の内容は,単に,新天体発見に絞ったほうがよかったように思います。
この本には,それ以外にも面白いことがたくさん書かれてありました。
そのひとつは,パロマ天文台のシュミットカメラの操作の様子です。
木曽観測所のシュミットカメラよりも一回り大きいこの望遠鏡も,マーク・ブラウンさんが使いはじめたときは,乾板という時代遅れの装置を持て余していたこと,そして,その後,デジタル化によってよみがえったことなどが書かれてありました。
木曽観測所のシュミットカメラもデジタル化がされているのは,ドラマ「木曽オリオン」でも取り上げられていたので,ご存知でしょう。かつて,口径の大きな望遠鏡は視野が狭いので,広い視野を求めて,さまざまな工夫が行われていました。そして,シュミットカメラというものが発明されたのでした。そうした意味で,シュミットカメラは,30年くらい前には,まさに,憧れの望遠鏡でした。そのころには,アマチュア用のシュミットカメラも発売されていました。しかし,取り扱いが大変なことで,あまり普及しませんでした。当時それを購入して,現在も使いこなしている人がどれくらいいるのかなあと思います。それから時代も変わり,アマチュアにもディジカメが普及したので,苦労してシュミットカメラを使ったり,フィルムを水素増感したり,CCDを冷却したりしなくても,簡単に写真が写せるようになりました。
パロマ天文台のシュミットカメラに取り付けられた広視野カメラで撮影された写真から新天体を見つけるために,1年以上も費やしてプログラムを作成して実用化しているという話題も,また,大変興味深いものでした。ちなみに,このパロマ天文台のシュミットカメラは,現在,ニート・プロジェクトといって,地球に接近する天体を発見したり監視するためのNASAのプロジェクトに利用されていて,数多くの新彗星を発見していますが,このことは,また後日,書きたいと思います。
もうひとつは,1700年後半から1800年前半にかけて発見された惑星や小惑星の名前が,その発見の数年度に発見された元素と同じ名前が付けられたということで,これも私は知らないことでした。それらは,天王星(ウラノス)とウラニウム,小惑星ケレスとセリウム,パラスとパラジウム,海王星(ネプチューン)とネプチウム,そして,冥王星(プルート)とプルトニウムです。
☆ミミミ
私は冥王星やハウメアの写真は写したことがないので,今日は火星の写真をお目にかけましょう。
星を見るのも大変だ。-I love Pluto.①
惑星といえは,数年前に冥王星が惑星の座を追われたことが話題になりました。
「冥王星を殺したのは私です」(「How I Killed Pluto and Why It Had It Coming」マイク・ブラウン著)という本は,そのときの顛末について書かれたものです。
私は,この本の題名を初めて見たとき,それほど真面目な内容とは思わなかったのですが,読んでみて,よい意味で期待を裏切りました。
この本は題名で損をしていると思います。この題名では,よくある天文に関した興味半分の読み物みたいです。たとえば,アポロの月着陸はなかった,みたいな…。原題はもう少しマシですが,大差ないです。
著者のマイク・ブラウンさんはアメリカの天文学者で,彼のチームは,今世紀になって太陽系を回る惑星級の天体を三つ発見しました。そして,後に「エリス」と名づけられたそのうちのひとつの天体が冥王星よりも大きかったことがきっかけとなって,惑星の定義が再検討されました。
その結果,惑星とは,①太陽の周りを公転し②ほぼ球形で③衛星を除いてその軌道周囲に他天体がいないものと改めて定義され直されたことから,③を満たさないものとして,冥王星が準惑星と降格にされてしまったのです。
このことについて,少し詳しく書いてみましょう。
まず,2002年と2004年に,マーク・ブラウンさんのチームは,後に「マケマケ」と「ハウメア」とよばれるようになった,冥王星の発見以後もう惑星は発見できないといわれていた当時,太陽系を回る惑星級の天体をふたつ発見しました。しかし,これらは冥王星よりも小さかったので,まだ,冥王星の地位を脅かすほどのものではありませんでした。
このうち,「ハウメア」と呼ばれるようになった天体は,別の意味で注目を浴びました。この天体は,発見したのが2004年のクリスマス直後だったので、彼らはそれにちなんで「サンタ」とよんでいたのですが、チームの一員でイェール大学のデイビッド・ラビノウィッツさんが「ハウメア」と名づけることを提案して、ブラウンさんもそれに同意したことで,その名がついたということです。
ハウメアとはハワイの神話で石を象徴する女神です。細長く、およそ冥王星の3分の1の大きさを持つハウメアは、大部分が岩でできていると考えられています。天文学者たちは、この天体が,過去に他の天体と衝突して衛星が分離したと考えていて、その点からも,ハウメアという名に適しています。
ブラウンさんはブログの中で,「ハワイの神話では,女神ハウメアはさまざまな神々の母であり,その体の各部位から神々が分離して誕生したと言われている。カイパーベルト天体のハウメアの場合も,ハウメアを中心としてその破片が周囲に散らばってカイパーベルト天体の一群を形成している」と説明しています。
では,「カイバー・ベルト天体」とは何でしょうか。実は,海王星の外側には周回軌道を持つ岩や氷でできた天体が集まる円盤状の領域があるのです。この領域のことを「カイパー・ベルト」とよんでいるのです。カイパーベルトには冥王星の仲間が数多く存在していることが判明しています。このことが,後に,冥王星は惑星の条件③衛星を除いてその軌道周囲に他天体がいないものという条件を満たさない根拠となったわけです。
ところが,マイク・ブラウンさんのチームが発見したハウメアは,今では,発見したのは、スペインのホセ・ルイス・オルティスという天文学者ということになっているのです。
この本によると,どうやら,ホセ・ルイス・オルティスは,ブラウンさんの発見を盗んだということなのです。そして,その「盗んだ」手口を明かしたくだりが,この本の読みどころのひとつになっているのです。
ホセ・ルイス・オルティスは,とあるデータベースを検索してマイク・ブラウンさんの狙いを知り,とりあえず最低限の情報だけを発表して「発見者」の栄誉をかっさらったというわけです。
星空のロマンに中にも,このような俗世間のお話が存在しているのです。
☆ミミミ
2014年1月21日に,イギリス・ロンドン大学天文台のSteve J. Fosseyさんが,当日,学生にCCDカメラの使い方の簡単なデモをしようとおおぐま座の銀河M82に望遠鏡を向けたところ、偶然11等の超新星を発見しました。今後どれだけ明るくなるか注目されています。
この超新星(スーパーノバ)を2月11日に写しましたので,ご覧ください。写真の中央下に写っている渦巻き星雲がM81で,その右側の少し小さい星雲がM82です。この星雲M82の中の中央下あたりに明るい星がありますが,これが超新星です。
この写真には,左上にも小さな星雲NGC3077も写っています。
写真に写っているたくさんの星は,みな,銀河系内の恒星(遠くて3万光年)ですが,この超新星だけは,それらよりはるかに遠い(1,400万光年!)M82という別の銀河の中にある恒星が爆発した姿なのです。