しない・させない・させられない

Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.

USA50州・MLB30球場を制覇し,南天・皆既日食・オーロラの3大願望を達成した不良老人の日記

カテゴリ:星を見る > 星雲・星団

ステファンquintet

 「ステファンの五つ子」はフランスの天文学者エドゥアール・ステファン(Édouard Jean-Marie Stephan)によって1878年に発見された銀河の集団です。5個の渦巻銀河と楕円銀河から構成されているように見えるのですが,この中でNGC7320という渦巻銀河は見かけ上仲間のように見えても実際にはその距離は約3,900万光年で,互いに重力を及ぼし合ってコンパクトな銀河群を作っている残りの4個の銀河までの距離が約3億光年であるのとは大きく異なっているので,別のものです。
 つまり,当初はNGC7317,NGC7318A,NGC7318B,NGC7319,NGC 7320の5個を「ステファンの五つ子」としたのですが,このうちNGC 7320は前景の渦巻銀河が重なって見えているものであって,NGC7317からNGC 7319までの4個が銀河群を作っているわけです。
 また,少しはなれたところにある6番目の銀河NGC7320CはおそらくNGC7319とつながっているのでこれも先に書いた4つの銀河団の仲間ではないかと見られています。

 「ステファンの五つ子」はハッブル宇宙望遠鏡の撮影対象となったことで一躍有名になりました。
 銀河同士の衝突・合体や星流の形成,銀河ガス同士の衝突やスターバーストなど,様々な現象を伴う銀河集団の進化を研究する際に典型的な天体となるのです。そこで,これまで,あらゆる波長の電磁波で広く観測され,複雑な数値シミュレーションの対象にもなってきました。
 はじめのうちは,NGC 7317には銀河同士の相互作用の影響があまり見つかっていなかったために,銀河自体が安定した状態にあるか,あるいは,ごく最近にこの銀河群の近くに移動してきたばかりだと考えられてきたのですが,赤色の星々がこの銀河の周囲に検出されたことで,NGC 7317は他のメンバー銀河と非常に長い期間にわたって相互作用し続けているという可能性がいわれるようになってきました。
 銀河群の中で大きい銀河が及ぼす重力によって小さな銀河がゆっくりと解体される相互作用現象は「銀河の共食い」(galactic cannibalism)といわれます。こうした「銀河の共食い」によって,大きな銀河の周りを軌道運動する星流やハローが形成されるのが特徴で,NGC 7317の周囲に見られる赤い星のハローもそのような構造に似ているといいます。大規模な共食い現象によって,銀河群は最終的にはひとつの巨大楕円銀河になるということです。

 このように有名なことからアマチュアの天文愛好家が多くの写真を写しているので,私もそれに手を出そうとしたのですが,所詮は無理な相談でした。この天体明るさが14等星ほどだったのです。それにしたらよく写ったものです。

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水星と火星の大接近。

11月11日。
水星と火星が大接近しました。
明け方の東の空低く,肉眼でも確認できました。 DSC_8086s2


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リングDSC_2156t小あれいDSC_2161txNGC7331 ステファンの五つ子nstephan

 彗星以外に,特に何を写したいということもなかったので,とても小さな惑星状星雲をふたつ写すことにしました。そのひとつがこと座リング状星雲M57,もうひとつがペルセウス座小あれい星雲M76です。
 惑星状星雲(planetary nebula)というのは超新星にならずに一生を終える恒星が赤色巨星となった際に放出したガスが中心の星の放出する紫外線に照らされて輝いているものです。中心の星は恒星の進化において白色矮星になる前の段階です。
 M57は地球からの距離が約2,300光年で,リング状の特徴的な姿をしていて,惑星状星雲の中では最も有名な天体のひとつです。M76は地球からの距離が約2,500光年で,メシエ天体の中では暗い天体ですが,口径10センチではよい対象となり,亜鈴の小型でなめらかな表面のノットが互いにくっついているように見え,口径20センチでは四角い形に見えて,中央のくびれ部分が次第にはっきりしてくるといわれます。

 このふたつの惑星状星雲を写しているうちに,ステファンの五つ子銀河(Stephan's Quintet)というものを思い出しました。ステファンの五つ子銀河というのは,ペガスス座の方角に見える近接した5つの銀河で,そのうちの4つは,1877年にマルセイユ天文台でエドゥアール・ステファンがはじめて発見したコンパクト銀河群です。
 ネット上にたくさん写真があって有名な割にどこにあるのか書かれたものが少なく,星雲星団のガイドブックにも記載がなく,私には謎の天体でした。何とか調べたのがNGC7331で,私はこれこそがステファンの五つ子銀河のひとつだと思い込んでいたのです。それが今日の3番目の写真なのですが,実際はNGC7331の左下の赤く囲んだ部分にかすかに写っている塊だったのです。これではよくわからないので,すばる望遠鏡で写した写真を載せます。それが4番目のものです。
 ということです,これをはっきりと捉えるには私の持っている望遠鏡では非力なのでした。とはいえ,私には謎が解けたので,すっかり満足しました。

 この晩は,望外に天気に恵まれたのですが,適当に持ってきた機材だったので,準備不足が否なめずバッテリーがなくなってしまいまい,午前1時には星見を終えました。非常に湿気が多く,そのためにレンズのヒーターに電源が必要だったことに加えて,新しく購入した赤道儀にもバッテリーが思った以上に必要だったのが原因でした。
  ・・
 さて,この晩はじめて使用したビクセンのAP赤道儀はこれまで使っていたペンタックスのMS-3N赤道儀に比べて華奢であることは疑いがなかったのですが,そのために軽く,思った以上に使いやすいものでした。ペンタックスのMS-3N赤道儀にも多くの欠点があり,また,ビクセンのAP赤道儀にはそれとは別の欠点が見つかったのですが,自分なりに工夫を加えれば,末永く使えることでしょう。
 それにしても,天体望遠鏡の業界というのは,どれほどの儲けがあるのか知りませんが,製品のどれもこれもいろんな欠点があります。実際に使いこなしている人たちはみなそれぞれ工夫をしてその欠点を補っているのですが,ある意味,それがまた楽しみなのでしょう。まあ,天体望遠鏡は星を見ること以上にメカに興味のある人たちのおとなのおもちゃのようなものなので,多くのマニアは私とは異なり必要もないようなスペックを求めたりしていて,そのためにやたらと高価になっているのが,私には最大の欠点に思えます。私はペンタックスのMS-3N赤道儀の後継機にはタカハシのPM-1という赤道儀がいいなあと思っていたのですが,売れなかったとみえ,早々と製造中止になってしまったのが残念でした。今,タカハシブランドの高橋製作所が製造している望遠鏡はすべて私にはオーバースペックです。PM-1,買っておけばよかった。


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 秋の夜,南の星空は都会では何も見えません。よく目を凝らすと,ポツンとみなみのうお座の1等星「フォーマルハウト」(Fomalhaut)だけが輝いている… ということなのですが,今年は,木星と土星が明るくきれいです。明るい惑星があると,ピントを合わせるのに便利です… というのは内輪の話ですが。
 空が暗い所だと,秋の南の空には,みずがめ座やくじら座という星座が見られます。都会育ちの私が,こうした星座をはじめて見たときは感激しました。
 この晩,私が目的としていたのは,前回書いたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P Churyumov-Gerasimenko)だけだったのですが,昇ってくるのが午後9時過ぎで,まだ早かったので,何となく,いろんな星団や銀河を退屈しのぎに写すことにしました。それが今日の写真です。たいして珍しくもないのですが,ご覧ください。上から,M45,M33,M74,そしてM77です。

 星の写真も,適当な望遠レンズをつけたカメラと赤道儀があって,空が暗いところに出かければだれでも写せるようになりました。
 お金を出せばそれだけいい機材を買うことができますが,晴天率の悪い日本でそんな投資をしても割の合わない趣味だと私は個人的には思っていて,10万円程度の赤道儀と300ミリ程度の望遠レンズ,そして,見る場所があれば,それで十分に自己満足の世界に浸れます。今はできませんが,高額の望遠鏡に投資するようなお金があるのなら,南半球に出かけて肉眼で満天の星をながめるほうがずっと理にかなっています。
 日本で星空を楽しむには,田舎に住んでいるならともかく,おそらく,一番の問題は場所でしょう。本当に,自然を楽しむには,この国は「どうにもならないほど救いようがないなあ」といつも絶望的な気持ちになります。
 私にはそんな程度の楽しみですが,私が星見をするために見つけた場所は,適度に暗く,かつ,人が来ないところなので,この晩のように,寒くも暑くもなく,かつ,雲がひとつもないとなると,何となく星空を見ているだけでも満ち足ります。

 さて,銀河や星団だけでなく,天王星と変光星「ミラ」(Mira)も写してみました。
 天王星は簡単に見えるのですが,普通の恒星と何ら変わらないので,それだけです。しかし,変光星「ミラ」は赤く不気味でそれなりにおもしろいです。「ミラ」はくじら座のο星(ο Ceti)で,2.0等星から10.1等星の間を約332日の周期で変光するのですが,極大等級も周期も必ず一定になるとは限らないという変光星です。
  ・・・・・・
 「ミラ」は,有名な脈動変光星(pulsating variable)の一種でミラ型変光星(Mira variable)とよばれるものの代表選手です。
 脈動変光星というのは,星が膨張と収縮を繰り返すこと,または,形状が変化することによって明るさが変化する変光星のことです。また,ミラ型変光星には,非常に赤く,脈動周期が100日より長く,変光範囲が可視光で2.5等級より大きいという特徴があります。もともとは太陽質量の2倍よりも小さい恒星が膨張して非常に大きくなった赤色巨星で,数百万年で外層を惑星状星雲として吹き飛ばし,白色矮星になります。
 また,「ミラ」は連星で,赤色巨星の主星「ミラA」と伴星「ミラB」からなっています。「ミラA」は赤色巨星の中でも恒星の一生の最終段階である漸近巨星分枝に属していて,400万年で太陽1個分の質量を喪失するペースで質量を放出しています。「ミラB」も不規則に明るさを変化させる変光星で,降着円盤を伴う白色矮星だと考えられています。
 「ミラ」の後方には恒星の外層部の残骸が全長約13光年にわたって彗星の尾のように放出されています。
  ・・・・・・
 「ミラ」は,子供のころに見ていた星図に,変光星を意味する二重丸で書かれていてしかも変わった名前で強く印象に残ったのですが,実際は思ったよりも暗く,都会ではなかなか見ることができません。今は明るい時期なので,改めて写してみたわけです。今度暗くなったときに改めて写してみたいものです。

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 私が星に興味をもった今から50年ほど前にはカラーフィルムの性能が悪く,感度の高いものはモノクロフィルムしかなったので,星の写真はほとんどがモノクロでした。しかし,モノクロフィルムも赤色の感度が悪かったので,ペテルギウスのような赤い星は3等星くらいにしか写りませんでした。そこで今,ペテルギウスが減光しているといわれても,そして写された写真を見ても,当時の見慣れた写真よりもずっと明るく写るので,別に暗いとも思わないし,私は何か違和感すら感じます。
 それからしばらくして,カラーフィルムがISO400(当時はASA400といいました)という「高感度!」でも実用になりました。一般のフィルムで大きなシェアを握っていたのは「フジ」でしたが,当時フィルムを販売していたもうひとつのブランドであった「さくら」(小西六,のちのコニカ,そしてミノルタと合併してコニカミノルタ)のフィルムは赤色の発色がよいということで,天体写真マニアだけには定評がありました。
 その後,103aEというフィルムがコダックから開発されました。モノクロではありましたが「HⅡ領域」が写るということで,一部のマニアがそれを取り入れて以来,散光星雲が脚光を浴びるようになりました。
 散光星雲(diffuse nebula)というのは,かつては可視光によって観測できる比較的広い範囲に広がったガスや宇宙塵のまとまりである天体をいいました。今では散光星雲は古い用語となって,散光星雲はさらに輝線星雲,輝線星雲と反射星雲,さらには暗黒星雲や超新星残骸まで含めたり含めなかったりというように,用語が混乱しています。
 この,いわゆる散光星雲のうち輝線星雲は,近くに存在するスペクトル型がO型かB型の高温の恒星からの紫外線によって構成成分の水素ガスが電離させられてその原子核と電子の再結合によるバルマー系列の輝線を放射しているもので,電離水素原子を意味する「HII」が存在する領域ということで「HII領域」とよばれています。
 天文学では電気的に中性の原子にはその元素記号にローマ数字の I を,1階電離されている場合には IIを,2階電離では IIIをつけて表記します。そこで,電離された水素原子(陽子)を「HII」というのです。ちなみに学校で習ったように水素の分子は「H2」で,これとは違います。
 この「HⅡ領域」が赤いので,これまではなかなか写真に写らなかったわけです。

 現在はディジタルに変わったので,そうした過去のことはおとぎ話のような気がします。私は当時の最新技術を使って美しい「HⅡ領域」の写真をモノにしていた人たちをうらやましく思っていたものですが,今ではそんな苦労をしなくても,だれでも簡単に,同じような,というより,それ以上の写真をうつすことができるようになりました。ただし,それでもはやり「HⅡ領域」を写そうとすれば,市販のディジタルカメラでは写りが悪く「IR改造」が必要になるのですが,そうした技術的なことはここでは書きません。
 ちなみに,一般のディジタルカメラは撮影された画像のカラーバランスを人間の色感覚に基づいて自然に整えるために,撮像センサー自体のカラーバランスを調整するための特殊な色調整フィルターを内蔵させています。この色調整フィルターを取り除くと撮像センサーに入射する光がカットされなくなるので有効感度が上昇し,特に赤く輝く散光星雲などから放たれる「HⅡ領域」の感度が大幅にレベルアップし色彩豊かな美しい写真が撮れるようになります。これが「IR改造」です。
 このように,天体写真は,今も昔も赤色を写すために葛藤しているのです。
 特にオリオン座の近くには「HⅡ領域」が数多くあって,「IR改造」したカメラを使うと,おもしろいほど簡単に写すことができます。そこで,今日は,そうしたものからいくつか紹介します。
 1番目の写真はIC405,通称「まがたま星雲」(Flaming Star Nebula)です。IC405はぎょしゃ座にある散光星雲です。散光星雲の中心にあるのは不規則型の爆発型変光星であるぎょしゃ座AE星です。この散光星雲は約5光年にわたって広がっています。
 2番目の写真はIC2177,通称「わし星雲」です。IC2177はいっかくじゅう座とおおいぬ座の境界にある散光星雲です。翼を広げた鳥の姿に見えることから日本では「わし星雲」,英語では「Seagull(かもめ)Nebula」の愛称があります。ちなみに,これとは別のM16も「わし星雲」という名でよばれるので混乱します。
 そして,3番目の写真はNGC2237,通称「ばら星雲」です。ばら星雲(The Rosette Nebula)はいっかくじゅう座に位置する散光星雲で,写真に写すと真紅のバラの花飾り(ロゼット)のような姿に見えることからこうよばれています。中心にあるのはいっかくじゅう座12番星を中心とする散開星団NGC2244です。

 さて,こうした写真を撮っていて,これまでずっと気になっていたのは,1分ほどの露出でどのくらい暗い星が写るのだろうか,ということでしたが,特に調べたことはありませんでした。そこで,今回,それを調べるつもりで,北極星付近の星野写真を写してみました。それが4番目と5番目の写真ですが,白黒を反転させてあります。4番目の写真の左の明るい星が北極星で,その右側の「□」で囲ってある部分を拡大してみたのが5番目の写真ですが,この「□」で囲ってある範囲は,天文年鑑の「北極標準星野」(2020年版だと381ページ)に掲載されているのと同じ範囲です。
 これを調べてみると,15等星くらいまでは確実に写っています。私が天体の写真を写している場所は,北の空は本当に条件が悪く肉眼では北極星しか見えないくらいの場所です。南はかろうじて天の川が見えます。そうした場所で,しかも1分ほどの露出で,北の空で星がこれだけ写ってしまうというのが驚きです。これを見ると,14等級くらいの彗星も写るのかなあと思うので,今度,試してみたいと思います。すごい時代になったものです。

DSC_1296s (2)_NGC7293DSC_1302s (2)_NGC246DSC_1304_NGC247t (1280x848)DSC_1323s (3)_NGC253 NGC288 秋の南の夜空はまことに寂しいものです。やがて来る冬にはオリオン座をはじめとして明るい星々がたくさんあるのに,その数か月前の空には星がほとんど見られないのです。空の明るい都会ではみなみのうお座の1等星であるフォーマルハウトだけがかろうじて見えるありさまです。
 秋の星座になじみがないのは,明るい星がないということに加えて,秋の星座が深夜に南中してよく見えるのがちょうど夏至のころという理由もあります。つまり,夏至のころは夜の時間が短く,空が暗い時間は冬に比べて半分ほどしかないのです。
 そこで,私は,秋の星座といわれるみずがめ座,みなみのうお座,うお座,くじら座,ちょうこくしつ座にある星雲や星団を写す機会もこれまでほとんどありませんでした。
 今回出かけた木曽は空が暗いので,夜遅くならなくても満天の星空がみられます。あれほど都会では何も星が見えないと思われるところにも,たくさんの星々が輝いています。みずがめ座の星のつながりがわかるなんて,私には夢のようです。そこで,秋の星座にある多くの星雲や星団を写すことにしました。それが今日の写真です。
 順に紹介しましょう。
 
 まず,ふたつの惑星状星雲です。
 1番目の写真の天体が「らせん状星雲」(The Helix Nebula)と呼ばれるNGC7293,みずがめ座にある有名な惑星状星雲です。距離はおよそ700光年というからオリオン座のべテルギウス(Betelgeuse)ほどの近さで,太陽系に最も近い惑星状星雲です。猫のような目の形をしている中心部が「らせん」の名前の由来になっています。中心部に白色矮星が存在するようです。私はこの惑星状星雲をずっと写したかったのですが,やっとかないました。
 2番目の写真の天体はNGC246です。NGC246はくじら座の方角にある惑星状星雲で,距離は約1,600光年です。星雲の中心には12等級の白色矮星があります。中心の恒星とその周囲の配置から「Pac-Man Nebula」として知られています。
 こちらのほうはNGC7293に比べればずっと暗く,この空が暗くないと写すのも難しい天体です。

 次にふたつの銀河です。
 3番目の写真の銀河がNGC247です。NGC247はくじら座にあって,距離は約1,110万光年。ちなみにアンドロメダ銀河は240万光年です。
 最後の4番目の写真に写っている銀河がNG253で,その下にある球状星団がNGC288です。
 NGC 253はちょうこくしつ座にあるスターバースト銀河で,急激な星形成の過程にあります。距離はNGC247とほぼ同じで約1,110万光年です。
 NGC247はNGC253と重力的に結びついていて,NGC253は銀河系から最も近い銀河群のひとつであるちょうこくしつ座銀河群の中心に位置しています。NGC253 はその中で最も明るく,NGC247,PGC2881,PGC2933,UGCA15などと重力で結びついています。
 
 このように,このあたりにはおもしろい天体があるのですが,メシエ番号もついていないので,知名度も低く,はじめに書いたように,夜の短い時期に空にあるので,なかかな写真に撮る機会もありません。
 今回,こうした天体を写すことができたのものまた,うれしいことでした。

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 「ショーマス彗星」が昇ってくるまでにもうひとつ写したのがおとめ座の銀河です。彗星やこうした銀河は散光星雲とは違ってナローバンド撮影は無力です。
 子供のころ,買ってもらった「全天コ恒星図」という星図を見ていてしし座やかみのけ座あたりに非常に多くの銀河があるににびっくりしました。また,数年前,メシエ天体をすべて写そうと計画したときにはおとめ座の多くの銀河に途方をくれました。
 しかし,写してみるとかわいい銀河がいっぱい写るのに感動しました。そこで今回は構図を工夫してできるだけたくさんの銀河がうまく収まる構図を考えました。そうして写したのが今日の1番目と2番目の写真です。

 「おとめ座銀河団」(Virgo Cluster )というのは銀河系の近傍にある銀河団で,地球から約6,000万光年(5.6垓キロメートル)の距離にあり約2,500個の銀河をメンバーとして含むものです。「おとめ座銀河団」の銀河は渦巻銀河と楕円銀河がかなり不均一に混ざった構成になっていて,M87,M86,M49 銀河を中心に持つ3つの別々の小さな塊が一体に集まった構造になっています。
 この「おとめ座銀河団」はより大きな「おとめ座超銀河団」(Virgo Supercluster)の中核部分をなしています。天の川銀河が属する局部銀河群もこの「おとめ座超銀河団」にあり,さらに,アンドロメダ銀河,大マゼラン雲などからなる局部銀河群を含む超銀河団で「局部超銀河団」とも呼ばれています。「おとめ座超銀河団」の直径は2億光年で,およそ100の銀河群と銀河団からなり、その中心におとめ座銀河団が居座っています。

 この日は「おとめ座超銀河団」に属する「さんかく座の銀河M33」も久しぶりに写しました。これが3番目の写真です。M33はさんかく座に位置する渦巻銀河で,天の川銀河,アンドロメダ銀河 M31とともに、局部銀河群を構成する主要な銀河のひとつです。直径は約6万光年,距離はM31と同じく約250万光年(2,400京キロメートル)と推定されていて,M31とともに肉眼で見える最も遠い天体です。
 M33は天の川銀河に対して秒速約24キロメートルで接近しつつあります。天の川銀河とM31は約40億年後に衝突し,やがてひとつの楕円銀河「ミルコメダ」(Milkdromeda)になると予想されているのですが,このM33ともその前後に衝突する可能性があるのだそうです。

 最後におまけです。ユニークな形をした散光星雲をご覧ください。いっかくじゅう座の「わし星雲」(IC2177=Seagull Nebula)です。3,800光年(3.6京キロメートル)の距離にあり,翼を広げた鳥の姿に見えることから日本では「わし星雲」,英語では「かもめ星雲」の愛称があります。へび座にある散開星団M16と散光星雲IC4703もまた「わし星雲」というので注意が必要です。
 これで今月の星見はおしまいです。今月は南の空を中心に海の近くに出かけて写したので,来月は北の空を写しに山へ出かけようと思っています。

IC2177_SeagullNebura

DSC_0985sクリスマスツリー (8)DSC_0974s魔女の横顔 (6) (848x1280) カワイイ彗星を3つ写したあと,「ショーマス彗星」が昇ってくるのを待つ間にいくつかの天体を写しましたので,今日はそれをご覧ください。
 こうした天体は空の明るい日本の空では写すのが難しく,しかも私の使っているような古い望遠鏡ではオートガイダーもついていないので長時間の露出もできないのですが,それでもお金をかけなくても写すことができるというのが今回の趣旨です。

 1番目の写真は「クリスマスツリー星団」(Christmas Tree Cluster)です。クリスマスイブにぴったりでしょう。
 正確にはこのあたりの領域を「NGC2264」といいます。このHII領域は「クリスマスツリー星団」,「コーン星雲(日本名は「円錐星雲」)」(Cone Nebula ),「狐の毛皮星雲」(Fox Fur Nebula),「雪の結晶星団」(Snowflake Star Cluster)で構成されています。

 この写真の右上の明るい星(いっかくじゅう座S星)のあたりの明るい星が集まっている部分の様がクリスマスツリーのように見えることから「クリスマスツリー星団」と呼んでいるのですが,私はコーン星雲も含めてクリスマスツリーとした方がぴったりだと思います。

 そして2番目が「魔女の横顏星雲」(Witch Head Nebula)です。オリオン座の1等星リゲルの東側にあります。
 リゲルの光を受けて輝く反射星雲「IC2118」はその形が魔女の顔に似ていることから「魔女の横顔星雲」という愛称 がつけられています。この星雲は約40光年も離れたリゲルの光を反射して青く輝いているのですが,リゲルの強烈な明るさを、間接的に感じさせてくれる星雲だともいえます。
 数ある星雲の中でもかなり淡い対象でなかなか写すのが難しいこの「魔女の横顔星雲」は最近のデジタル機材の 発達に伴い星野撮影ファンに人気が出てきた星雲です。

 私が星に興味をもったずっと昔にはガイドブックにも紹介されていなかったこうした天体が近頃はずいぶんとあって,それにまたユニークな名前が付けられるようになってきました。
 ナローバンド撮影というような新しい技術が開発されて見事な写真が発表されるようになりました。こうした新しい技術というのは,フィルムカメラのころの103aとかその次の水素増感2415とか,まあ,将棋の新戦法と同じように流行をしていくので,その発達を知るのも楽しいものです。
 特に現代はコンピュータで画像を処理をすればわずかな光でもそれを画像化できるので,様々な工夫が可能になってきました。要するにいくら空が明るくてもわずかな光を手に入れさえすれば,あとはコンピュータを使って必要のない情報をカットし必要な情報を誇張して画像にしていけばよいわけで,そうすれば都会でも結構素晴らしい写真ができます。というか,これはお絵かきできます。すごい時代になったものです。

 こうしたことを追っかけて投資するのもまた趣味のひとつで,いつの時代も上手な人,そして熱中する人がいるものです。
 「断捨離」を旨とし,万事いい加減な私には無縁のものですが,私はそうした投資をするならそのお金で南半球に出かけて肉眼で満天の星空をみるほうがいいなあ,というのはやっかみです。

NGC5139M15M13

 私は,前回ブログに球状星団について書いたころは,球状星団はあまり面白くないものだと思っていました。しかし,その後に多くの星の写真を写した結果,球状星団は散開星団よりもずっときれいで美しく写せるので,次第に興味が増してきました。

 球状星団(globular cluster)とは100億歳を超えるような古い恒星が密集して,互いの重力によってつなぎ留められているために球状で存在している天体で,銀河の渦の外・ハローとよばれる領域にあります。
 天の川銀河最大の球状星団であるケンタウルス座のω星団は17,000光年の距離にあり,星の数は1,000 万個もあります。

 球状星団はどのようにして誕生したのでしょうか?
 138億年前に誕生した宇宙ですが,誕生して間もないころには小さな銀河がたくさんできて,これらが衝突・合体を通じて大きくなっていきました。その過程でガスが高密度になった場所ができて,そこに球状星団ができたというのです。
 現在でも銀河衝突は起きていて,近年その場所で球状星団が生れている様子が発見され爆竹分子雲(Firecracker cloud of molecular gas)と名づけられました。

 では,どうして球状星団は銀河の渦の外に存在するのでしょうか?
 それは,銀河衝突によって作られた球状星団なのですが,小さなものは破壊されてしまい大きなものは吹き飛ばされてハローの地で安住をえたからだというのです。
 しかし,球状星団のなかには銀河よりも若いものもあるのです。当然,それらの球状星団は銀河衝突によって作られたものとは考えられません。そうした球状星団は,母銀河の周囲を回る伴銀河が母銀河に呑み込まれたときに,伴銀河にあった球状星団が母銀河の球状星団になったものだといわれています。

 星は質量によって寿命が決まります。
 年齢の古い星々が集まった球状星団だから,そこにある星々の年齢は当然100億歳以上で,質量の小さいものは現在も主系列星として存在しますが,質量の大きなものはすでに老齢の赤色巨星や白色矮星になってしまっています。ところが,球状星団にある星のなかには,質量が大きいのにもかかわらず,現在も青く輝いているものもあるのです。それが「青色はぐれ星」(blue straggler)です。観測で,青色はぐれ星にもふたつの種類があって,そのひとつは明るく高温のもので,もうひとつはやや暗く低温のものがあることがわかりました。
 では,どうして星が若返ったのでしょうか?
 それは,ふたつの種類それぞれ別のメカニズムによるものです。低温タイプのものは近づいてきた別の星のガスを吸収して若返ったものであり,高温タイプのものはふたつの星が融合したことによって若返ったというものです。青色はぐれ星が星々の多い,つまり密度の濃い球状星団の核のあたりに存在することがその根拠となっています。
 人間もこのようにして若返れたら素敵ですね。近づいてきた若い人の生気を吸い取って若返るのです。あるいは,年寄り同士が融合して若返るのです。
  ・・
 このように,球状星団はさまざまなことを我々に教えてくれたり,楽しい想像ができるのです。
 そんなことを知ると,ますます,球状星団を見るのが楽しみになってきます。

◇◇◇
星を見るのも大変だ-星空の宝石・球状星団①

NGC55NGC247NGC253 NGC288

 前回「この秋は何も見るものがない。」と書きましたが,結局,天気も悪く,見るものがあろうとなかろうと,星を見る機会がほとんどありませんでした。
 この週末は珍しく天気がよく,おむすび型の気圧配置で日本列島の中央に高気圧が位置するという理想的な状況になって,しかも月明りがなかったので,久しぶりに星見に出かけました。

 よほどの山奥にでも住んでいなければかぞえるほとしか星の見えないこの国ですが,さらに秋の南の空には星がありません。
 夏ならさそり座,冬ならオリオン座の1等星や2等星が都会でも見られるので,星座の確認もできまが,秋は,フォールハウトというみなみのうお座の1等星が寂しそうに輝いているだけです。
 
 しかし,空の暗いところに出かけると,都会では単に灰色にくすんで何もないように見えるところには,くじら座やうお座,そして,みずがめ座の星々があります。
 特に,くじら座は大きな星座で,堂々としています。くじら座,うお座と順に天頂に目を向けていくと,夏には東の空に見えたはずのペガサスが天頂を駆けていてびっくりします。星座の配置というのは,実際に星を見ないとなかなか実感のわかないものです。

 昨年の冬から春にかけてはしし座やおとめ座の銀河を写そうと走り回っていましたが,夏から秋に見られるこのくじら座付近の銀河をこれまで写したことがないことに気づきました。メシエ天体がないので盲点になっていたようです。
 探してみると,この辺りにはかわいくて写真写りのよい銀河がいくつかあって,あたりの星の配置が単純なので,簡単に視野に入れることができました。そうして写したのが今日の写真です。

 1番目はNGC55です。この8等星の銀河はくじら座の南にあるちょうこくしつ座とそのさらに南のほうおう座の境にあって,地平線に近く高度が低いので写すのが難しいのです。
 2番目はNGC247です。この銀河はくじら座のβ星に近く,この次の写真のNGC2534とともにちょうこくしつ座の銀河団に属するものです。
 そして3番目がNGC253銀河とNGC288球状星団です。ともに見栄えのよい天体ですが,特にNGC253は南天のアンドロメダ銀河とでもいうほど明るくて大きなものです。

 写真を写しているうちに,東の空にはエリダヌス川を渡るようにオリオン座が昇ってきました。この姿を見るともうすぐ冬が来るんだなあと毎年感慨深くなるのですが,それよりも,今の私には,この秋の星空の地平線の下にはマゼラン雲があるんだなあ… と気持ちはすでに11月末に出かけるニュージーランドでいっぱいなのです。

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☆☆☆☆☆☆
 私が星見をしてつくづく思うのは,どうしてこれほど素晴らしいものが身近に手に入るのに,人はそれを台無しにして破壊するのか,ということです。まったく不思議でしかたがありません。私は,なくなりつつある満天の星空を求めて,北に南に西に東にと走り回らなければならないのです。
 すでに,全天が暗い場所などありません。だから,南の星空を見たいとき,北の星空を見たいとき,というように場所を変えるのです。

 2月18日の早朝は天気予報では快晴でした。前日の晩から移動性の高気圧がおにぎり型の等圧線で日本列島に張り出してきていたので,天気については何の心配もなく早朝起床しました。
 それが,どうしたことでしょうか。家の上空は真っ白に雲が覆いかぶさり,星のひとつも見えません。
 しかし,どう考えても天気は晴れでないといけないのです。きっと,我が家の上空あたりだけ少し気圧が下がっているのだと確信して,家を出発して,南に向かいました。
 目指すのは地平線から昇ったばかりのさそり座といて座でした。
 実は,16日は起きてみたもの雲が流れ晴れるとは思えずそのまま再び寝てしまい,17日の早朝は晴れていたので星を見に行ったのですが,天気予報通りいて座が昇る5時頃から雲に覆われてしまい,写せたのはM16=2番目の写真 だけでした。その前にM85も写したつもりだったのですが間違えてM99を写してしまい,帰って確かめるとM85は端っこにも写っていませんでした。このことについてはまたあとで書きます。

 私はプロの写真家でもなく,持っている機材も20年以上も前の旧式のもの。いろいろガタが来ていて,もう製品は販売されていないので,メーカー修理もできず,部品もなく,ホームセンターで代用部品を探してはなんとか使っています。
 最新式の機材のように自動で星を入れることもできないので,ファインダーを使って星を探します。結構難しいのですが,慣れてくるとこれが面白いのです。機材も使っているうちにいろいろ分かってきて,今や,到着後5分以内には撮影が始められます。
 写した写真は決してお見せできるようなものでもないのですが,趣味なんて所詮は自己満足。私にはこれで十分です。
 高速道路を走って行くと,次第に雲が切れていき,雲の切れ間から沈まんとする大きな月が地平線に横たわっていました。
 午前3時,観測場所に到着。思った通り快晴で満天の星空が迎えてくれました。

 昨日ひとつ写したので,メシエ天体全110個の撮影まで残り5個でした。
 しかし,実はこれまで写したものを再確認してみると,写していたと思っていたM4がM107の間違いだったり,かみのけ座の銀河団を写したこれまでのどの写真をさがしてもM85が写っていなかったりと,実際は,さらに2個増えて,残り7個でした。
 前回も書きましたが,メシエ天体110個のうち3個は欠番。その3個というのはM40,M91,M102です。そのうち,M40は単なる二重星,M91はNGC4548ではないか,そして,M102はNGC5866ではないかといわれています。私は,その中でまだM40は写していない(とはいえ単なる二重星!)ので,これも含めると残り8個になります。

 この日,まず,鬼門のM85を写しました。昨日も挑戦したのですが場所を間違えて,M99あたりを写してしまいました。しし座のデネボラからたどっていけばいいので,そんなに難しいわけではないのですが,何度挑戦してもM85の近くの5等星とM99の近くの5等星を間違えるのです。近くに明るい星がないことと同じような明るさの星が並んでいるので迷子になるです。
 そんな難物だった念願のM85もついに写すのに成功=3番目の写真 して,その次にさそり座のM4はアンタレスの隣だから簡単に写り=1番目の写真,残ったいて座とたて座の5個の球状星団を次々に写していきました。
 まだ地平線すれすれだったのですが,待っていると夜が明けます。なにせ,まだ2月です。球状星団などともかく写ればいいじゃないかとばかりに,M11,M26,M25,M24=4番目の写真 と次々に写して,最後にやっと昇ってきたM69をなんとか写しました。実はこの中でM24だけは球状星団でなく単なる星の密集地帯です。メシエ天体では他にもM73=5番目の写真 というのが単なる星の密集です。
 最後に写したのがおおぐま座・北斗七星のδ星メグルスの隣にあるM40,いや単なる二重星=6番目の写真。赤い丸の中の二重星がそれらなのですが,その下に白い丸の中のNGC4290という銀河があって,こちらこそM40という気がしますが,それだと暗すぎます。
 これで,晴れて110個すべて写すことができました。
 さそり座には,メシエ天体以外にも,魅力的な天体がたくさんあるので,その後はその中からいくつか写しました。7番目の写真はさそり座μ星あたりの散開星団,そして,8番目の写真はさそり座λ星あたりの散光星雲,通称・出目金星雲(西洋ではCat's Paw Nebula=猫の足星雲)です。

 このようにメシエ天体を写すことで,私は本当に多くのことを学びました。
 まず,どのくらい見えるのかそして写るものなのかが,とてもよくわかりました。星座の名前と位置関係をはっきりと覚えることもできました。
 写した後で様々なガイドブックを読んでみると,書いてあることがとてもよく理解できます。
 いわば,旅行のガイドブックを旅行から帰った後で読むようなものです。
 本当は,こんなことは40年前にやっておくことでしょうね。でも,私は,今,40年若返って,その時にできなかったことを実行しているので,感慨深いものがあります。
 いつも書いていることですが,何事もやってみなくてはわからないというのが実感です。
 そして,一番の宝は,星の美しさと魅力を再発見したことでした。

M8 M20 M21M1M5M6M42 M43_2 M84 M86 M87 M88a M80

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 私は,これまで,ガイドブックに載っている京都と奈良の寺社仏閣をすべて見るとか,大相撲の国技館・名古屋・大阪・九州に全部行くとか,そういう「全部やっちゃう」ことを楽しみとしてきました。現在進行中なのは,アメリカ合衆国50州制覇とMLB30球団のボールパークに全部行くことですが,50州制覇達成まであと3州,30球団はあと4つです。ともに,今年中には達成できそうです。
 これらのほかに,月齢0から29までの月を全部撮影するとかメシエ天体110個を全部を撮影する,というのがありますが,月は完了して,ついには,月齢0付近の月がどこまで写るか,などという意外な方向に…。自分でも呆れていますが,私の購読している「Sky & Telescope」誌の今月号の特集のひとつが,月齢0付近の月を写す! これにはびっくりしました。まるで私のための特集です。
 そして,メシエ天体は残り15個となっていました。

 メシエ天体(The Messier objects)とは,フランスの天文学者シャルル・メシエ(Charles Messier)が作成した星雲・星団・銀河のカタログに記載された天体のことです。
 シャルル・メシエはパリ天文台に勤務する傍ら,熱心に彗星を捜索していました。
 彗星は地球から遠いところにいるときは暗く尾もなく,普通の恒星より少しだけボーッと輝いているのですが,天空にはそうした彗星と見間違える雲状に広がった星雲・星団・銀河などがあります。そうした天体を彗星と間違えないようにしようと考えたメシエは,紛らわしい天体のリストを作って自分の名字の頭文字をとって,M1=2番目の写真,M2,M3…としました。そして,M1からM103までの天体を「メシエ天体カタログ」として一般に発表し,みんなが使えるようにしたのです。その後,彼の弟子がM104からM109を追加,さらに1968年にM31アンドロメダ銀河の伴銀河をM110として追加したので,現在,110個のメシエ天体があります。ただし,欠番が3個あるので,実際は107個ということになっています。
 なお,今日の3番目の写真はM5へビ座の球状星団,4番目の写真はM6さそり座の散開星団です。

 私は,M31とかM42=5番目の写真 といった有名で明るいものから写し始めたのですが,小さな望遠鏡でも結構写せることが分かったので面白くなって,全部写そうと決めたわけです。
 そこで一番はじめに壁にぶち当たったのはおとめ座とかみのけ座の小さな多くの銀河たち=6番目の写真 でしたが,このことはすでに書きました。そして,今年,最後に残ってしまったのが,さそり座,いて座,たて座の球状星団たちでした。
 このさそり座,いて座,たて座というのが「曲者」なのでした。
 見たくなくても見られるのが冬の星座であるオリオン座。その理由は,冬は夜の時間が長く,しかも,空が澄んでいてきれいだからです。それに比べて,夏の星座は,夜の時間が短いことに加えて,空が澄んでいないこと,そして,南の空低いところを通るので,地平線近くまで空が暗く見晴らしがよいところでないとなかなか見られないからです。
 しかも,昨年の夏は,5月から3か月あまりにわたってずっと天気が悪く,星が見えませんでした。
 そこで,今年,私は,なんとかさそり座が見られるようになる2月から,明け方の空に昇ってくるその姿を狙うことにしました。この後は次第に高度は高くなるのですが,夜が明けるのも早くなる,という悪循環。しかも,早く写さないと,黄砂と霞になやまされる春になってしまうのです。

 そんなわけで,2月11日の早朝,これも以前書いたように,移動性の高気圧に覆われて,絶対晴れるという天気図になったので,東から南の空の暗い,空の開けた海辺の高台に出かけました。
 この日,私は,残った15個のうち9個ものメシエ天体を写すことができました。
 予想以上の収穫でした。
 しかし,さそり座といて座のメシエ天体のほとんどがそれほど大きくない球状星団。単にノルマを果たして写しただけでここでお見せしても大して面白くありません=7番目の写真はその中のひとつM80。そこで今日は,その日の写した有名ないて座の散光星雲である三裂星雲(M20)と干潟星雲(M8)の写真=1番目 を載せることにしました。
 これは,すでに30年くらい前にも写したことがあるのですが,写真写りもよく,双眼鏡なら,肉眼でも素晴らしい姿を見ることができます。
 さて,メシエ天体の撮影も残り6個,そのほとんどはたて座といて座の球状星団です。

M51M81とM82と超新星ふくろう星雲(M97)とM103M101 M33aM74s

 現在は,形状からの分類とは別に,その物理的な性質から,銀河を分類しています。
  ・・
 太陽のような恒星は,銀河内にある巨大な分子雲で作られる冷たいガスから生成されるのですが,この星の生成が例外的に活発である銀河というものがあって,それらを「スターバースト銀河」とよんでいます。
 「スターバースト銀河」では,なんと通常の100倍から1,000倍規模の星が生まれます。この過程で発せられる強い赤外線を観測できるものを「超光度赤外線銀河」といいます。
 しかし,このような状態が続くと銀河内のガスが急激に消費されるために,スターバースト状態は銀河の寿命から考えれば非常に短い1,000万年程度しか持続しないと考えられています。
 こうした「スターバースト銀河」は,塵やガスが豊富で,大質量の星々が電離した雲で囲まれたHⅡとよばれる領域を持っています。これらの大質量星が起こす超新星爆発が超新星残骸を撒き散らして,周囲のガスなどに強い作用を与えます。そして,ガス領域の至る所で新しい星の生成を連鎖反応的に起こすのです。
 「スターバースト銀河」はしばしば相互作用銀河と関係します。このひとつの例がM82であり,近接するより大きな銀河M81からの影響を受けています。

 銀河の中には,非常に活動的な種類のものもあります。こうした銀河から放出されるエネルギーの大部分は,星やガス・星間物質とは異なる部分を元にしていて,この銀河を「活動銀河」と呼んでいます。
 実は,このエネルギーの発生源というのは,銀河中心に存在する超大質量ブラックホールの周囲に形成された降着円盤なのでです。活動銀河中心核の放射現象は,降着円盤の物質がブラックホールに落ち込む際の銀河潮汐力に由来しています。そして,この物質のうち約10パーセント程度が,中心部から双方向に1組の宇宙ジェットとなり,光速に近い速度で噴出していきます。
 「活動銀河」には,高エネルギーの放射線を発するものもあります。放射線が検知される銀河は光度によって「セイファート銀河」とか「クエーサー」とよばれています。
 また,特に宇宙ジェットが地球の方向へ放たれている種類のものを「ブレーザー」,あらゆる周波数の電波を放出する銀河を「電波銀河」とよんでいるのですが,これらは本当は同じものです。単に観察者の視角に基づいた活動銀河の分類であって,見る位置が違うだけなのです。

 初期の宇宙では,銀河が合体することは一般的な出来事でしたが,今でもそうした銀河の合体は見られるのです。
 前回書いたように,天の川銀河は近傍のアンドロメダ銀河と秒速約130キロメートルで近づき合っていて,将来衝突するといわれています。この衝突では,活発な星形成が行われた後に,一度は通り過ぎると考えられていますが,その際に太陽系がアンドロメダ銀河側に移ってしまう可能性も3パーセント程度あるのだそうです。そしてふたたび近づいてきて,最終的にはひとつの楕円銀河「ミルコメダ」になると考えられています。
 なんとまあ,すごい話でしょう!
 また,さらに,1,000億年ほど時が経過すると,「ミルコメダ」はおとめ座銀河団の各銀河と合体して,超巨大楕円銀河に纏まってしまうと考えられています。その後も宇宙の膨張は続くので,他の銀河は見かけ上光速を超える速度で遠ざかるために,観測できなくなってしまいます。そして,最後には小さくより寿命が長い赤色矮星ばかりが銀河系の中心要素となって,もはや恒星が誕生しなくなるのは10兆から100兆年後と見られています。
 そのころになると,銀河は,コンパクト星,褐色矮星,より冷えた状態の白色矮星や黒色矮星,中性子星,そしてブラックホールによって作られている状態となってしまい,見かけの色も暗い赤色を経てやがて輝きを失います。最終的に,重力の緩和時間を過ぎれば,全ての星は超大質量ブラックホールに飲み込まれるか,あるいは衝突を繰り返して銀河間空間に放り出されるかの結果が待っているのです。
 これが宇宙の終焉です。

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 今日の写真は,私が写した銀河です。
 1番目の写真はM51子持ち星雲,2番目の写真は本文にも説明したM81(左)とM82(右),3番目の写真はM103(右),そして,4番目の写真はM101,5番目の写真はM33,そして,一番下6番目の写真はM74です。
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 写真を写して,こういったかわいい姿を見ると,とてもうれしいものです。

 これまで,球状星団,散開星団,惑星状星雲,散光星雲を,私の写した写真とともに紹介してきました。最後は,銀河です。
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 銀河は,恒星やコンパクト星,ガス状の星間物質や宇宙塵,そして重要な働きをするが正体が詳しく分かっていないダークマターなどが重力によって拘束された巨大な天体です。以前は系外星雲といいわれていましたが,銀河は星団や星雲よりも,もう1段階スケールの大きなもので,恒星や星団,星雲などがすべて集まった集団です。
 我々がすむ太陽系も銀河の中にあります。昔は,我々のいる銀河のことを銀河系といい,それ以外を系外星雲といっていました。現在は,我々のいる銀河を特に「天の川銀河」といっています。「天の川銀河」も銀河のひとつです。

 銀河は,1千万個程度の星で成り立つ小さな矮小銀河から,100兆個の星々を持つ巨大な銀河まであります。銀河にある星々は恒星系,星団などを作り,その間には星間物質や宇宙塵が集まる星間雲,宇宙線が満ちています。それに加えて,ほとんどの銀河では質量の約9割を「ダークマター」という未だよくわかっていない物質が占めているといわれています。また,ほとんどの銀河の中心には超大質量ブラックホールが存在すると示唆されています。
 写真に写すと,有名ないくつかのもの以外はとても小さくて暗くて,星々の中で米粒のようにしか写りません。でも,だからこそ,写ると嬉しいのです。
 普段,我々が見ている星々は天の川銀河の中にあって,比較的距離の近い星です。距離の遠い星は天の川として見えています。しかし,そのどちらも,天の川銀河に属するものです。そこで,それらの星々のずっと向こうに銀河があるわけなので,距離にすると,ものすごく遠いものを見ていることになります。何かとても奇妙な感じがします。また,銀河はいろんな形のものがあるので,とてもかわいいです。

 歴史的には,銀河は形状を元に次の三つに分類されてしました。それらは,楕円形の光の輪郭を持つ「楕円銀河」,細かな粒が集まった曲がった腕を持つ「渦巻銀河」,不規則でまれな形状を持つ「不規則銀河」です。
 「楕円銀河」の内部には何らかの構造がほとんど見られず,一般には比較的小さな星間物質で構成されています。したがって,この種の銀河は星形成が活発ではありません。そして,多くは古く寿命を経た星が任意の方角にある重心を回っている状態にあります。
 「渦巻銀河」は,薄い円盤状の回転する星々や星間物質で構成され,通常は中心部に近くなるほど古い星が多くなります。そして,中央の銀河バルジから比較的明るい渦巻き腕状の構造が伸びています。渦巻銀河の腕は,銀河を一様に回転する星の相互作用から,対数螺旋に近似した形状をもっています。星々と同様に,腕はバルジを中心に回転し,その角速度は一定です。星がこの腕の領域に入ると恒星系の宇宙速度が影響を受け,腕部分を抜けると元に戻ります。これは,自動車が道路で渋滞にはまると速度が落ち,抜けると早くなる現象と酷似しています。この高密度な状態が星形成を促進するため,腕は輝いて見えるのです。つまりは,腕部分には若い星が多く存在するということです。
 それ以外のものが「不規則銀河」です。他の銀河との相互作用によって異形の銀河になるもので,形態論上容易に分類できない銀河です。 

  ・・
 大きな楕円・渦巻銀河が最も目立つのですが,実際は,宇宙にある銀河のほとんどは規模が小さいものです。これらを矮小銀河といいます。矮小銀河は,天の川銀河の100分の1程度にあたる10億個の星をもつにとどまります。こうした多くの矮小銀河は,大きな銀河のまわりを周回していると考えられています。天の川銀河も,少なくとも12個ほどの矮小銀河を伴っていて,さらに未発見のものが500個程度あるものと思われています。

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 今日の写真はM31,有名なアンドロメダ大星雲です。
 地球から見てこれほど大きく見える銀河はほかにありません。カシオペア座からアンドロメダ座に目を移すと,肉眼でもみることができると本に書いてあるのですが,私は,最近まで,本当にこの銀河が見られるのかよくわかりませんでした。今は,空の暗いところなら肉眼でも容易に区別がつきます。
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 将来,といっても40億年以内のことらしいのですが,アンドロメダ大星雲が天の川銀河と一緒になってしまうといわれます。この合体で形成されるであろう新しい銀河は,すでに「ミルコメダ」(Milkdromeda)と命名されています。

M31 M32 M110

Hyakutake4aPerseus Double ClusterM45M29M103

 散開星団は恒星の集団です。分子雲から同時に生まれた星同士がいまだに互いに近い位置にある状態の天体を指します。
 通常,星団は年齢が若くて,高温で明るい星を多く含んでいます。
 散開星団の生みの親である分子雲が星団のそばに存在していて,星団の星によって分子雲の一部が輝いてひとつまたは複数の星雲として見えています。
 散開星団に属する星は全てほぼ同じ年齢,同じ化学組成を持っているために,星同士の違いはその質量の違いです。
 最も近い散開星団はおおぐま座の星々なんです。おおくま座の北斗七星(=1番目の写真)というのは,実は,ほとんど散らばってしまった古い散開星団で,宇宙の中で1,000光年以上にわたって広がっています。そして,太陽は,ちょうどこの星団の近くを通り過ぎているところなのです。
 銀河系の中での位置を考えると,太陽の運動速度は非常に奇妙なのですが,太陽は数十億年前に他の星と接近遭遇して,このときに重力を受けて加速したのかもしれないといわれています。
 ダイナミックで壮大な話です。
 なお,この写真は,北斗七星を横切る百武彗星です。
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 散開星団の中の星々は,生まれたころは強く密集していて,同じ速度で銀河中心の周りを回っています。約5億年くらい経つと,プレアデス星団やヒアデス星団といったよく知られた散開星団は,外部の要素によって擾乱を受けて,星々はわずかに異なった速度で動き出して,やがて,おおぐま座の北斗七星のようにばらばらにずれて動いていくのです。そうして,10億年ほど経つと,星団は完全にその姿を失ってしまいます。

 では,まず,代表的な大きな散開星団を2つ紹介しましょう。
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 ペルセウス座の2重星団(=2番目の写真)はふたつの散開星団が接近して存在しているものです。 当初は,単独の恒星と誤認されていたので,西側の星団にはh,東側の星団にはχのバイエル符号が振られました。そのため現在でもh+χ(エイチカイ)とよばれます。
誕生してから約300万年から2,000万年程度経過しているとされています。
 8月から9月の午後9時頃,北東の空を見るとカシオペア座の南にはたくさんの星々が見えているのですが,その中に,この2重星団もぼーっと肉眼でも確かめることができます。また,写真でも,簡単に美しい姿を写すことができます。
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 プレアデス星団(=3番目の写真)は,おうし座にある有名な散開星団です。M45,和名は「すばる」で,車のエンブレムにも使われています。地球から440光年の距離にあって,肉眼でも輝く7個の星の集まりを見ることができます。
 星団を構成する星の周囲には青白く輝くガスが広がっているので勘違いしますが,これは,星々とは関係のない星間ガス(IC349)が,星団の光を反射しているためで,幼い星たちを覆っている繭ではありません。
 肉眼でも非常によく見えますが,双眼鏡を使えば暗い星々まで美しく見ることができます。逆に,大きな望遠鏡では星団としてのまとまりを見ることができなくなります。こちらも簡単に美しい姿を写すことができます。
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 次に,小さな散開星団を2つ紹介しましょう。
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 M29(=4番目の写真)は,はくちょう座の散開星団です。はくちょう座には,前回紹介した北アメリカ星雲や網状星雲など天体写真でおなじみの美しい天体が多いのですが,この散開星団は小さなぱっとしないものです。はくちょう座γ星のすぐ南に位置していて,発見者メシエは「7,8個の小さな星の集まりで星雲状あるいは彗星のように見える」としています。
 約4,000光年のところにある星の赤ちゃんの集まりです。
 この写真の左上の明るい星はγ星です。
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 M103(=5番目の写真)は,この星団を発見したフランスの天文学者メシャンが「カシオペアの足のδ星とε星の間にある星団」と記しています。距離は8,000光年。当初,メシエカタログはこのM103までだったので,この星団はそのトリをとっています。散開星団ということになっていますが,偶然同じ方向に星が集まっているのではないかとする説もあるのだそうです。このδ星とε星の間には,他にも多数の散開星団があって,特にNGC663という散開星団は,M103よりも立派で,何気なしに双眼鏡を向けただけでも,散開星団とわかります。
 わたしも,こっちかなと思ったのですが,書籍やポスターにもよく間違えて記載されているということです。この写真の右上の明るい星はδ星です。
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M8 M20 M21Pelican Nebula North America Nbula_bVeil NebulaNGC281M42 M43

 散光星雲は,広い範囲に広がったガスや宇宙塵のまとまりで雲のようにみえる天体のことです。
 自ら発光している輝線星雲と近くにある恒星の光に照らされて見える反射星雲の二種類があります。また,この2つが混在している領域をまとめて散光星雲と呼んでいたり,輝線星雲だけを散光星雲と呼んでいる場合もあります。
 輝線星雲は,近くに存在する高温の恒星が発する紫外線によって水素ガスが電離して,その原子核と電子の再結合による輝線を放射して光っています。このために,電離水素原子を意味するHⅡ域ともよばれています。肉眼では感度の低い領域なので,天体写真でしか存在が確認できない輝線星雲も多くあります。
 また,暗黒星雲から恒星が誕生すると,その恒星が周囲に残るガスを輝線星雲へと変えます。そのために輝線星雲には誕生したばかりの散開星団が共存して見られることも多くあります。

  ・・・・・・
 いて座の南斗六星の柄の先端に位置する干潟星雲M8と三裂星雲M20(=1番目の写真)は,夏に見られる代表的な散光星雲です。
 干潟星雲は,南北に横切る帯状の暗黒星雲が存在していて,その姿が干潟に似ていることからその名がつけられています。約3,900光年のところにあります。星雲の所々にグロビュールと呼ばれる小さく丸い暗黒星雲の塊が見えるのが特徴です。肉眼でも確認でき,双眼鏡で楽しめます。
 三裂星雲は,星雲が3つの部分に裂けて見えるところからこうよばれています。しかし,実際に星雲が3つに分割されているわけではなく,散光星雲の手前に位置する暗黒星雲の姿により,後ろの散光星雲が分割されているように見えているものです。距離は5,200光年程と推定されています。北側と南側で性質が異なっており,北側は青い反射星雲,南側は赤い輝線星雲となっています。
 いて座のあたりは地球から見て銀河の中心になるので,非常に濃い天の川が見られます。また,たくさんの星があるので,写真を写すと,驚くほどの星々が写ります。その中に,こうした美しい散光星雲を入れると,見ていて楽しい写真になります。
  ・・
 北アメリカ星雲NGC7000,ペリカン星雲IC5067~IC5070(=2番目の写真)は, はくちょう座の1等星デネブの近くにある散光星雲です。18世紀の天文学者ウィリアム・ハーシェルによって発見されました。
 ペリカン星雲と北アメリカ星雲とは、電離した水素からなる同一の星間雲の一部です。
 北アメリカ星雲は,形が北アメリカ大陸にそっくりなところから名づけられました。また,ペリカン星雲も,形がペリカンに似ているところから名づけられました。
 見かけの大きさは満月の十倍もあるのですが,暗いため肉眼でみることはほぼ不可能だといわれています。広い視野角を持つ双眼鏡を使えば星雲の姿を観測することができるということですが,私は見たことがありません。星雲までの距離はわかっていなくて,この星雲はが発光している原因となる恒星が分かれば距離を特定できるということです。それがデネブであれば,距離はおよそ1,800光年です。
 フィルムのときは,赤い色をうまく写すことが難儀だったのですが,デジタルカメラになり,画像処理が可能となった今では,この星雲の姿は写真をとればきれいに写すことができます。私も,やっと写すことができました。
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 網状星雲NGC6992₋5(=3番目の写真)は,はくちょう座ε星とζ星,つまり,白鳥の翼を広げた右手のところにある散光星雲です。東西に3度離れて「い」の字のように向かい合っています。この写真はそのうちの東側のものです。
 この星雲は,よくグラビアで取り上げられているので有名ですが,お恥ずかしい話,私は,この星雲がどこにあるのか,長い間知りませんでした。
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 NGC281(=4番目の写真)は,カシオペア座のα星の近くにある散光星雲です。この星雲は、活発な星形成が行われている領域で,中央の明るい星の紫外線によって輝いているのです。この中心星IC1590は2重星です。
 かわいい姿で,しかも,あまり有名でないので,私は好きです。カシオペア座にこんな星雲があるなんてご存知ない人が多いでしょうね。
  ・・
 オリオン大星雲M42(=5番目の写真)はオリオン座の三ツ星の南の小三ツ星の中央にある冬の代表的な散光星雲です。肉眼で見える星雲の中では,干潟星雲と並び最も明るいものの一つです。地球から約1,600光年の距離にあって,肉眼でも通常緑がかった色に見えます。
 オリオン大星雲の中心部には,「トラペジウム」とよばれる4重星を構成メンバーとする,非常に若い星からなる散開星団がありますが,これらの星は周囲に惑星系が形成される非常に初期の段階にあるものと考えられています。
 こちらも,簡単に美しい写真を写すことができます。また,見栄えがよいので,絶好の写真の対象です。また,いて座のような夏の星座に比べて,冬は空もきれいなので,写真写りも最高です。寒いですけれど…。
  ・・・・・・

M13DSC_2761x2_M56

 前回紹介した惑星状星雲が星空の小悪魔なら,球状星団は宝石です。
 球状星団は数十万個の齢をとった恒星が互いの重力で球形に集まった天体で,銀河の周りを軌道運動しています。我々の銀河系には現在約150個が知られていますが,他の銀河にも同様に存在します。

 天の川銀河の直径は約10万光年で,わが太陽系は中心部から約3万光年の円盤状のはずれに位置しています。実は,太陽系がはずれに位置しているということが明らかになったのは球状星団の研究を通じてだったのです。
 1930年代までは、太陽は銀河系の中央近くにあると考えられていました。しかし,地球から見たときに,球状星団の分布はきわめて非対称だったのです。そこで,球状星団が銀河中心の周りにほぼ球対称に分布していると仮定してみると,太陽から見た天の川銀河中心の方向と,太陽から銀河中心までの距離が推定できるようになって,このようなことがわかったのです。
 球状星団は非常に星の密度が高いため、星同士が接相互作用や衝突を起こしたりしていると考えられています。また,近年,ハッブル宇宙望遠鏡を用いた球状星団の観測で,その中心にブラックホールが存在していることが明らかになりました。

 このように,天文学の発展に非常に役立った球状星団ですが,きょうは,私の写した写真からメシエ天体の球状星団の中で最大のものと最小のものの2つを紹介しましょう。
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 最大のものはM13(=1番目の写真)です。
 M13は,ヘルクレス座にある球状星団で,光度5.7等,距離は26,000光年のところにあります。この球状星団は北天最大で,美しさでは全天一といわれています。大きさは満月の3分の1ほどで,この星団は50万個もの星を含んでいて,実直径は約100光年にも及びます。
 双眼鏡では周辺がにじんでボーッとして見えるので明らかに普通の恒星とは違うことがわかります。
 この球状星団は,写すレンズによって,星が細かく分かれたりそうでなかったりするので,レンズの性能を調べるのにうってつけです。
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 最小のものはM56(=2番目の写真)です。
 M56は,こと座にある球状星団で,光度8.2等,距離45,000光年のところにあります。
 メシエ天体の球状星団の中では一番小さいものですが,先日紹介した惑星状星雲M57環状星雲やM27あれい状星雲など有名な天体が近くにあるために,それらを観察しようとすると,自然と望遠鏡の視野に入ってきます。
 暗いので,メシエ自身は星に分離することができなかったようで,「星のない星雲で,ほとんど輝いていない」と記録しています。双眼鏡で眺めると,メシエさん同様,星の周辺部がボーッとしてみえます。写真に写すと,かわいい星々がまあるく群がっている姿を写すことができます。

☆ミミミ
ただし,実際に星の写真を写しているとわかるのですが,球状星団って,私には,あまり面白くありません。形が似ていることと,やたらたくさんあることが理由です。そんなこと思うのは私だけかなあ?

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 天体写真で最も魅力のあるものは彗星ですが,その次は,星雲・星団です。 
 星雲には,散光星雲・暗黒星雲・惑星状星雲。銀河があります。また,星団には散開星団・球状星団があります。そのうち,私が最も魅力を感じるのは惑星状星雲です。
 恒星の末期は,その質量によって異なります。
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 質量が太陽の8倍以上の星は超新星爆発を起こして華々しい死を迎えます。このときの残骸が,超新星残骸といわれるもので,かに星雲M1が有名です。
 0.5倍以上8倍以下の恒星は,外層が膨張して赤色巨星となり,外層のガスは徐々に周囲に放出されていき,中心核は自分自身の重力で収縮し白色矮星となります。そのときに放射した紫外線が外層のガスに吸収されたときに光を放って輝くのです。これが惑星状星雲です。
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 惑星状星雲の名は,望遠鏡で観測したときに緑がかった惑星のように見えるところから,ウィリアム・ハーシェルによって名づけられました。このように,他の星雲・星団とは違って,惑星状星雲はたったひとつの星から作られたものなので,とても小さくて,そして,個性に富んでいて,かわいいのです。
 きょうは,有名な3つの惑星状星雲を私の写した写真と共に紹介しましょう。
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 環状星雲M57(=1番目の写真)は,こと座にある惑星状星雲です。地球からの距離は約2,600光年。リング状の特徴的な姿をしていて,惑星状星雲の中では最も有名な天体のひとつです。
 ウィリアム・ハーシェルは,「穴の開いた星雲で,中心部に暗い星があり,おそらく星からできたリングであろう」と記しました。小口径の望遠鏡でも,想像以上に小さな姿を見ることができます。
 写真で写すとリングの内と外で異なった色をしていることが分かります。星雲の中心には白色矮星が存在していて,この星から数千年前に放出されたガスが白色矮星からの紫外線を受けて蛍光灯のように輝いているのです。
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 ふくろう星雲M97(=2番目の写真の左上の緑色のまるいもの)はおおぐま座にある惑星状星雲です。地球からの距離は同じく約2,600光年。丸い星雲の中にやや暗い部分がふたつ並んで存在していて,これがフクロウの顔のように見えることからその名がつけられています。
 星雲の実際の形は円柱状のトーラスで,地球からはこのトーラスを斜めから見ていると推定されています。物質の少ないトーラスの両端の穴がフクロウの目に相当しているわけです。
 なお,同じ写真の右下の細長い天体は,銀河M108です。
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 あれい星雲M27(=3番目の写真)はこぎつね座にある惑星状星雲です。地球からの距離は約820光年。その形が鉄亜鈴に似ていることから名づけられています。
 あれい星雲は惑星状星雲として最初に見つかった天体です。
 双眼鏡でも容易に見ることができるので,非常に人気があります。

 環状星雲は,こと座のβ星とγ星のちょうど真ん中にあるので,容易に視野に入れることができます。また,ふくろう星雲は,北斗七星のβ星の近くに,M108と並んで存在しているので,これも容易に視野に入れることができます。しかし,あれい星雲は,環状星雲とは白鳥座のβ星についてちょうど点対称になる位置にあるのにもかかかわらず,この3つの惑星状星雲の中では,私には一番視野に入れにくいものでした。しかし,苦労して写真に写すことができたときに,一番大きくてきれいだったことに,私は感激しました。
 この環状星雲からあれい星雲のあたりには,M56,M71という2つの球状星団もあるのですが,M56は小さく,M71は球状星団らしくないのが,なかなか憎い演出だと,私は思いました。

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