今回の4泊6日のウィーン旅行はこれで終わりです。今回もまた,来るまえに思っていたよりずっと充実した旅になりました。しかし,昨年に比べると何かひとつ物足りません。それは,昨年は雪が降ったのでウィーンもザルツブルグもすっかり雪景色,今年はその美しさがないのでした。
朝,いつものように,6時30分にホテルで朝食をすませました。今回宿泊したホテルは昨年と違ってそれほど豪華なところではありませんでしたが,昨年泊ったホテルは部屋が豪華だっただけで朝食もついておらず,今年のホテルのほうがずっと居心地もよく朝食も豪華で快適でした。この夏に泊ったヘルシンキのホテルによく似ていました。数年前にニュージーランドのテカポ湖で宿泊したホテルは部屋だけはとても豪華でしたがWifiも別料金だったし,豪華なホテルというのは値段が高いだけで,実は最悪,何の意味もないものに余分なお金を払っているだけなのかもしれません。
食事を終えて一旦部屋に戻り帰る準備をして,ホテルをチェックアウトして,地下鉄,ジェットトレインと乗り継いで,ウィーン国際空港に向かいました。空港に行くには自動販売機で空港までチケットを購入すればいいので簡単です。
ウィーン国際空港のラウンジは,セキュリティを過ぎた後,進行方向と反対側にあって標示もほとんどないので場所がわかりにくく,そのために空いていました。なかはとても豪華でした。
やがて搭乗時間になったのでラウンジを出てターミナルに向かい,飛行機に乗り込んでトランジットをするヘルシンキに向かいました。行きで懲りたので,今度は早めに乗って,キャリーオンのカバンを収めるスペースを確保しました。ウィーンからヘルシンキまでの機内は,隣に,母娘ふたり連れの日本の人が座っていて,お話をしていたら,あっという間にヘルシンキに到着しました。
帰りはヘルシンキでのセキュリティもなく,ただ,帰国に際してコンコースの途中のゲートでEUシュンゲン圏から出るために顔認識をしてパスポートにスタンプを押してもらうだけです。ヘルシンキのヴァンター国際空港では,EUシュンゲン圏内乗り換えターミナルだけでなく,国際線ターミナルにもラウンジがあるのですが,そちらのラウンジは意外と知らないので,すごく広いラウンジはほとんど空いていて,とても快適でした。
ヴァンター国際空港のすばらしさは搭乗システムにあります。日本の空港のような,やたらとやかましい放送が一切なく,優先搭乗とかで延々と搭乗を待つ人の列もできません。ここのシステムは,まず,共通の広い待合室から,優先搭乗者と一般搭乗者が搭乗券をチェックして別々の待合室に三々五々入っていって,やがて搭乗時間になるとそれぞれの待合室の出口がそっと開くだけです。こういうシステムひとつをみても,日本人のやたらとうるさく騒ぎ立てるだけで非合理で無駄なことばかりをする思考能力が実感できます。
帰りもまた,エコノミーコンフォートの最前列の窓際をとってあったのですが,行きと同じエアバスA350なのに行きとは別の機体のようで,エコノミーコンフォートの最前列が3席ありました。フィンエアーのA350ではエコノミーコンフォートの最前例だけは通常2席なのです。室内のディスプレイに機体の外についているカメラから機体の外観が映し出されていたのでそれを見たら,この飛行機は幸運にも「マリメッコジェット」でした。2席であればとなりが空いていることも多いのですが,今回は3席ということで,ひとつとなりは空席でしたが通路側の席にはトヨタ自動車に勤めているというドイツ人の男性が座りました。
離陸前に,機体の主翼に付いた氷を溶かすために防徐雪氷液(ADF=Anti-/De-icing Fluid)が噴射されました。窓からそれを見ていてその迫力に圧倒されました。
やがて離陸。眼下にはヘルシンキの夜景がきれいに見えました。夕食を食べ終えて,コーヒーを待っていたら寝てしまい,目覚めたときはすでに眼下に愛知県の知多半島が見えて,着陸態勢に入っていました。おかげて,朝食を食べ損ねました。帰りもまた,400ユーロほど追加するとファーストクラスという勧誘があったので,少し迷いましたがパスしました。しかし,飛行中ずっと寝ていただけなので,これならファーストクラスにしなくて本当によかったと思ったことでした。このように,ホテルも飛行機も要は寝るだけだから,別にそれほど贅沢などしなくても,快適に旅はできるのです。
こうして私は日本に帰国したのですが,ヨーロッパに行っても東京へ行ってきたとさほど変わらず,私には日常のようになってしまいました。それよりも何よりも,海外に行かず世界を知らない人は未だに日本を先進国だと絶賛していますが,何度もこうして海外に足を運ぶようになると,それとともに,本当に,政治も教育もハイテク技術もすべて,めっちゃくちゃでぐっちゃくちゃでぼろぼろで,老朽化し形骸化し硬直し,モノを買うときにいつもわずらわしく思うその会計手段の複雑さを含めて,完全に世界から取り残されていることを私は強く実感します。そしてまた,公共交通に乗ればうるさく意味のない,だれも聞いていない放送が始終かかるのに,遅延したときには必要な情報は一切伝わらない,そうした日本の,マニュアルでしか行動できない人の姿など,要するに,責任を取りたくない金儲けがしたいというだけが本音の,本当にもう救いようがない国になってしまったと思っていたのですが,そうした気持ちが今は確固たる確信に変わってきました。
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帰国の日,フィンランドのヴァンター国際空港のコンコースをサンタクロースさんが歩いていました。何かの宣伝かと思って通り過ぎたのですが,日本に帰ってから,私の乗った名古屋行きのフィンランド航空便の2分後に出発した成田行きのフィンランド航空便にそのサンタクロースさんは搭乗し,来日したといういうことを知りました。つまり,私が出会ったサンタクロースさんは本物のサンタクロースさんだったのです。
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Farewell 2019