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無計画な旅ほど,得るものが大きいものはありません。と,これは,何事もいい加減な私の自己弁護にすぎませんが,それでも,あとで思うに,無計画であればこそ,これほど不思議で,かつ,運がいいとしか思えないこと起きるのです。
先日,家で,ある写真集を見ていて驚きました。それは図書館の写真でしたが,どうも,私はそこに行ったことがあるような気がしたのです。調べてみると,そこは,オーストリアにあるアドモンドベネディクト修道院の図書館(The library of Admont Abbey)でした。
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アドモント修道院図書館は,オーストリアのエンス川沿いの小さな町アドモントにある世界最大の修道院図書館です。
アドモント修道院は,1074年,ザルツブルクの大司教の指示によって建てられました。アドモント修道院が設立されたとき,聖ペテロ修道院から多数の本が保寄贈され,それらの本を収納するために,アドモント修道院に隣接して,1776年に,ウィーンの建築家ヨハンフーバーによって図書館が設計され,建てられました。
1865年の火事でほとんどが消失し,その後再建されましたが,火事の際に, 唯一,奇跡的に図書館は火災を免れました。
図書館の内部は美しく装飾されていて,白い2階建てのクローゼットスタイルの本棚にはハードカバーの本がたくさんあります。
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図書館の内部は,奥行き70メートル,幅14メートル,高さ11メートルもあって,約7万冊の本が収蔵され,また,修道院全体では20万冊もの本があります。
白亜の図書館は,窓から差し込む陽の光によって明るく照らされ,天井には聖書に記された場面を表した7つのフレスコ画が描かれています。また,中央には,オーストリア国立図書館の大広間「プルンクザール」を模した大広間があります。床のタイルは目の錯覚を利用した配色になっています。
2019年の初冬,私はアドモント修道院図書館に行くことができました。
といっても,私は,この図書館のことなど全く知りませんでした。では,なぜ行ったかというと,そのいきさつは次のようです。
私が行きたかったのはハルシュタットでしたが,ウィーンからはあまりに遠く,半ばあきらめていました。しかし,どうしてもあきらめきれず,そこで,見つけ出したのが,ウィーンから日帰りでハルシュタットへいく現地ツアーでした。ガイドさんの女性は英語とドイツ語を話しました。日本人の参加者は私しかいませんでした。
ハルシュタットはあまりに遠く,早朝に出発したのに,なかなか到着しません。それだけでもイライラしていたのに,私の乗った大型バスは,途中のこの修道院に到着したのです。しかし,そこがどこなのかさえわからず,しかも,当時の私は,どうしてこんなところで道草しているんだとさえ思いました。そして,自分の意思とは関係なく,私は,この図書館の内部を見学したというわけです。
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この図書館に憧れ,やっとのことで行くことができたという人のブログがありました。そして,我が身を恥じました。それは,この図書館は,オーストリアの観光案内ガイドブックにも掲載されておらず,また,あまりに辺鄙なので行くのがかなり大変な,「世界一美しい図書館」だったのです。
アドモントへ公共交通機関で行こうとすると,電車とバスの組み合わせでウィーンから片道約4時間かかります。しかも,午前中に訪ねると,図書館内に差し込む陽の光が多いことと,ほかにほとんど観光客がいないから,荘厳な雰囲気を体験できるとありました。
これでは,もし,私がこの図書館に憧れをもっていて,ぜひ行ってみようと思ったところで,おそらくは不可能だったことでしょう。
今では,期せずして,この図書館に行くことができたことを感謝せざるをえません。
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「しない・させない・させられない」とは
「Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.」とは