以前,オーストラリアの天文台を紹介したので,今日はニュージーランドにある天文台の紹介をしましょう。
ニュージーランドの南島の中央マッケンジー盆地にテカポ湖という星空の美しい場所があります。テカポ湖は世界一星空が美しい場所という触れ込みで,通称・世界遺産ということになっていますが,実際は,そうした名目の世界遺産はありません。実際,とても魅力のあるところですが,観光地化されてしまい,観光客が多すぎです。
そのテカポ湖のほとりのジョン山海抜1,031メートルの位置に所在するのがマウントジョン天文台(Mount John University Observatory=MJUO)です。
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マウントジョン天文台には口径0.61メートル望遠鏡が2台,口径1.0メートル望遠鏡が1台,口径1.8メートル「MOA 望遠鏡」が1台,観光用の口径0.4メートル望遠鏡が設置されています。
1960年,アメリカのペンシルベニア大学が南半球での天体観測を目的とする天文台の設置を決定し,1963年にカンタベリー大学と学術間協定を帰結し天文台の共同利用とニュージーランドでの研究拠点として,1965年開所しました。
ペンシルベニア大学の研究者が定年退職を迎えたことによりアメリカとニュージーランドの共同研究は終わりを遂げ,1975年からはカンタベリー大学付属研究施設となりました。
1982年にアメリカ空軍が設置した地上局は閉鎖され、建物はニュージーランド政府へ移譲されました。
1996年,日本とニュージーランドの共同研究が開始され, 2005年には観光客用の望遠鏡も設置されました。
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日本の名古屋大学の天文台もあるのですが,聞いてみると,この天文台を使用していた教授が定年で退職してしまったので… という話でした。
私はテカポ湖には2016年と2018年の2度行って,南半球の星空を見ることができました。
マウントジョン天文台は,テカポ湖を見下ろす山の上にあって,お昼間は誰でも山頂まで登ることができます。天文台自体は公開されていませんが,山頂にはアストロカフェという名のカフェがあって,コーヒーを飲みながらテカポ湖の姿を見ることができます。
夜に登るには天体観望ツアーに参加する必要があって,個人で登って星見をすることはできません。
テカポ湖畔は夜になると観光客が集まってくるのでけっこう光があって,私は,そこから離れたいい場所がないかと探し回ったのですが,なかなか見つけることができませんでした。
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現地の人が,どうしてこれだけの好条件なのに,多くの天文台が建設されないのか,といっていましたが,ここは観光地すぎることと,標高が低いので,専門的な高度な天体観測にはいまいちの場所です。そこで,天文台といっても,大学のいち研究者が設立したような設備しかなく,その研究者が退官してしまうと,どうやら,その後は,置き去りにされてしまったようです。
南半球で本格的な研究をする施設をつくるとなると,標高の高い南アメリカのアンデス山脈がその場所となるのも当然の成り行きですが,一般の人が南半球の星空を一度でいいから眺めてみたい,というときは,テカポ湖畔はよい場所でしょう。
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「しない・させない・させられない」とは
「Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.」とは