しない・させない・させられない

Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.

USA50州・MLB30球場を制覇し,南天・皆既日食・オーロラの3大願望を達成した不良老人の日記

カテゴリ: 星を見る

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【Summary】
On December 25, 2024, a Spica occultation was visible in Japan, following another on August 10. Though initially unmotivated, the clear night led to photographing the event. Spica disappeared abruptly behind the Moon's bright edge and reappeared dramatically at its dark edge, showcasing the unique beauty of such phenomena.

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 2024年12月25日の深夜,スピカ食が見られました。2024年に日本から見られたスピカ食は,8月10日の夕刻に次いで2回目でしたが,私は8月10日のほうはまったく印象にありません。天気が悪かったか,暑すぎてそれどころでなかったか…,と思ったのですが,調べてみると,このときのスピカ食もちゃんと写真に撮っていました。
 スピカ食は午前3時12分にはじまり,午前4時13分に終わるということで,深夜のことゆえ見るつもりもなかったのですが,天気がよかったので気が変わって,午前2時45分に起床して写真を撮りに外に出ました。

 去る2024年12月8日に土星食があったのですが,こちらは午後6時19分だったから,楽しく観望しました。
 土星はスピカに比べるとずいぶん地球に近いので視直径が大きいから,月に完全に潜入するまで,また,出現するまでに1分以上の時間がかかるので,のんびりと,隠れるのを,また,出てくるのを見ることができました。
 しかし,スピカは恒星だから非常に遠いので点光源でしかなく,突然消えたり現れたりするように見える,ということでした。実際,月の光っている側の縁(=明縁)から月に隠されたときは,月面の強い輝きに負けてすっと消えていったのですが,スピカが再び現れたときは,月の暗い縁(=暗縁)からなので,暗い場所から「忽然と」スピカが現れたのには感動しました。
 こういう感動は,実際に見てみないことには味わえません。

 地球の周りを公転している月は,地上から見ると星空を背景に東側へと少しずつ移動していくので,この黄道にある星々は月によって隠されます。しかし,黄道付近にある1等星は,おうし座(Taurus)のアルデバラン(Aldebaran=αTau),しし座(Leo)のレグルス(Regulus=αLeo),さそり座(Scorpius)のアンタレス(Antares=αSco),おとめ座(Virgo)のスピカ(Spica=αVir)しかないので,1等星が月に隠されるのはこの4つの星のみです。
  ・・・・・・
●アルデバラン食
 前回のアルデバラン食は2017年4月1日で,これは写真に撮りました。次回は2034年11月26日です。
●レグルス食
 前回のレグルス食は2018年2月2日だったのですが,これはまったく知りませんでした。次回は2026年1月7日ですが,2026年はレグルス食の当たり年で,1月7日のあとは3月2日,11月13日と3回も見られます。
●アンタレス食
 前回のアンタレス食は2024年6月20日でしたが,これはまったく記憶にありません。次回は2042年6月3日です。
●スピカ食
 次回のスピカ食は2032年4月25日です。つまり,今回のスピカ食はけっこうレアな現象だったのです。
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 月が背景にある天体を隠す現象を月による「掩蔽」(えんぺい occultation),あるいは「食」(eclipse)といいます。「掩蔽」は,見かけ上大きな天体が見かけ上小さな天体の間を通過する際にその天体を隠す現象をいいます。このとき,近いほうの見かけ上大きな天体は遠いほうの見かけ上小さな天体を完全に隠してしまいます。また,「食」は,ある天体が別の天体の影に入るような場合を指すので,「掩蔽」よりも広義です。つまり,「掩蔽」が起こっているときにはいつも「食」も起きています。


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アトラス彗星(C/2024G3 ATLAS)増光か

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2024年4月5日にチリの天文台で発見されたアトラス彗星(C/2024G3 ATLAS)が,2025年1月13日に太陽に0.09天文単位まで近づきます。計算上は-3等星まで明るくなるのですが,おそらくそれ以前に消滅するといわれています。
もし崩壊しなければ,夜明け前の東南東の地平線の近くで,すごい姿が見えるかもしれません。
図は1月12日午前6時40分の予想です。


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【Summary】
I observed the Comet Tsuchinshan-ATLAS (C/2023A3) on October 14, 2024, capturing its long tail with a 70mm lens. Despite some clouds, the comet was visible near Venus and Arcturus. They reflected on the difficulty of spotting comets, particularly for young people, due to the rarity of clear skies during significant comet events like Comet NEOWISE (C/2020F3)in 2020. I writer also noted the traditional beauty of the Thirteenth Night (October 15) Moon, though its brightness may make the Comet harder to see in coming days.

☆☆☆☆☆☆
 それにしても,紫金山・アトラス彗星(C/2023A3 Tsuchinshan-ATLAS)はいい時期に現れたものです。いくらすばらしい彗星といえども,天気が悪くては見ることができません。
 2024年10月14日。西の空低く雲があって,さすがに今日は,と思っていたのですが, 夕方になって,雲が切れてきました。昨日よりも高度が高くなるので,晴れていさえすれば,肉眼でも容易に見ることができるだろうと思いました。私のiPhone14手持ちでも簡単に写る大彗星なので,視野の広いものはiPhone14にお任せして,この日は,昨日よりも焦点距離を短く70ミリで写して,長~い尾を収めることにしました。

 10月14日に彗星の見える場所は,金星とうしかい座の1等星アークトゥルスの真ん中なので,見つけることはとても容易でした。昨日よりは少し空の状態が悪かったのですが,それでも,午後5時50分ごろには肉眼でも見えるようになり,思った通り,写真では長く尾を引いた姿を捉えることができました。
 とはいえ,慣れていないとなかなか難しいものです。流星群もそうですが,報道では「〇〇が見られる」と簡単に見ることができるかのように書いていますが,太陽や月が「見られる」のとは次元が違います。
 若い人の中には,はじめて肉眼で彗星を見た,という人も少なくはないようです。というのは,2020年7月に現れたネオワイズ彗星 (C/2020F3 NEOWISE)は,とても明るかったのですが,1週間ほどしか見ることができず,しかも,日本列島は沖縄と北海道を除いて連日天気も悪く,さらには,コロナ禍だったということもあって,見た人は非常に少なかったのです。
 そこで,彗星がどのように見えるか,という経験がないので,せっかく視野に入っていてもわからなかったり探せなかったりします。やはり,指導者が必要なのでしょう。せっかく天文ファンを増やすいい機会だというのに…。流星群もそうですが,一般のマスコミは自分で見てもいないのに記事を書くものだから,とてもいい加減なのです。
 とはいえ,今回の紫金山・アトラス彗星,肉眼では確認できなくても,スマートフォンを向けると,液晶画面で確認ができるのには驚きました。
 この日もまた,私は,彗星が地平線に隠れるまで見送りました。

 ところで,今日10月15日は十三夜。
 十三夜は,旧暦の13日の夜,主に旧暦9月13日の夜を指し,月見をする風習があります。
 中秋の名月である十五夜の後に巡ってくるので「後の月」, 栗や豆の収穫祝いを兼ねているので「豆名月」「栗名月」,また,中秋の名月とあわせて「二夜の月」(ふたよのつき)ともいいます。
 満月より少し欠けた十三夜の月が美しいというのは,極めて日本的な美意識だと思います。
 平安時代に書かれた「躬恒集」(みつねしゅう)の,旧暦・919年(延喜19年)9月13日に醍醐天皇が月見の宴を催し詩歌を楽しんだというのが十三夜の月見のはじまりといわれています。
 十五夜と十三夜のどちらか一方しか月見をしないことを「片見月」「方月見」といい,縁起が悪いとされています。さらに,旧暦の10月10日の十日夜(とおかんや)とあわせ,3日間月見ができると縁起がよいともいわれています。
  ・・
 十三夜の月は風流ですが,この先,月は満月に向けて明るくなっていくので,月明かりのために,彗星は見づらくなっていくかもしれません。

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【Summary】
On October 13, 2024, I successfully photographed the Comet Tsuchinshan-ATLAS(C/2023A3). At first, it wasn’t visible to the naked eye, but later, it became clear through binoculars and even visible to the naked eye, exciting me. This reminded me of the Comet Hale-Bopp(C/1995O1) in 1997, which was similarly impressive. The sky sometimes gives us incredible gifts.

☆☆☆☆☆☆
 昨日2024年10月12日,何とか写った紫金山・アトラス彗星(C/2023A3 Tsuchinshan-ATLAS)でした。翌10月13日は,昨日より高度が高くなり,昨日の撮影でどこに見えるのかという位置もはっきりとわかったので,ちょっと期待をもって,撮影に向かいました。
 とはいえ,どのくらいのものが見られるのかは見てみないことにはわかりませんでした。
 午後5時40分過ぎ,まだ双眼鏡でも見ることができない薄明のころに,すでに写真には捕えることができました。そして,午後6時過ぎ,次第に空が暗くなると,双眼鏡でも見えるようになり,カメラの液晶画面にもはっきりと彗星の像を見ることができるようになったので,撮影は楽でした。
 そして,彗星のいる位置を眺めていたら…。ついに,肉眼でもはっきりと見ることができるようになりました。これには興奮しました。おそらく,もっと条件のよい場所なら,よりすばらしい姿を見ることができたことでしょう。
 おふざけでスマホを取り出して,金星とうしかい座の1等星アークトゥルスが入るように手持ちで写してみると,それがまあ,ちゃんと写っているではないですか。すごい時代になったものです。

 午後6時20分を過ると,彗星は次第に高度を下げていったのですが,その核が沈むまで,肉眼ではっきりと見ることができました。さらに,核が沈んで見えなくなっても,尾だけが見られるという,とんでもない状態となりました。
  ・・
 ここで思い出したのが,今から27年ほど前の1997年春のことでした。
 明け方の東の空にヘール・ボップ彗星(C/1995O1 Comet Hale-Bopp)が見られるということで,空の暗い山に向かいました。そして目撃したのが,まだ核が昇っていないのにもかかわらず,尾だけが地平線からたなびくように見られた彗星の姿でした。やがて核が姿を現すと,何と,空がわずかに明るくなったのです。これには驚き,また,感動しました。
  ・・・・・・
 ヘール・ボップ彗星は1997年ごろに明るくなった大彗星です。
 近日点通過後には見かけの等級は-1等星にもなって,地球との位置関係がよかったために,肉眼で18か月も見ることができました。これは「1811年の大彗星」(The Great Comet of 1811= C/1811F1)の8か月を大幅に上回ったので,ヘール・ボップ彗星は「1997年の大彗星」(The Great Comet of 1997)といわれます。私が見た彗星の中でも最大のものでした。
  ・・・・・・
 ときどき,空は,予想もできないすばらしい贈り物をくれるようです。

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【Summary】
From October 11, Comet Tsuchinshan-ATLAS (C/2023 A3) became visible in the evening sky after sunset. While it was initially too close to the horizon and the sun to observe, it gradually rose higher. On October 12, after photographing near Venus as a guide, I successfully captured the comet with its tail. I now plan to take more photos in the coming days, hoping for clear skies.

☆☆☆☆☆☆
 以前,紫金山・アトラス彗星(C/2023A3 Tsuchinshan-ATLAS)について
  ・・・・・・
●10月11日ごろから
 彗星は日没後の夕方の西の空に,非常に明るい状態で見えるようになります。はじめは地平線ぎりぎり,次第に高度を上げてかみのけ座からうしかい座へ動いていき,ずっと見ることができるようになりますが,光度は下がり,暗くなっていきます。
  ・・・・・・
と書いたように,夕方の西の空に昇ってくるようになりました。
 どのくらい明るくなっているか,とても楽しみでした。10月11日ごろはまだ太陽に近いので,空が明るいうちに沈んでしまいます。いつから見ることができるのか,それもまた,楽しみでした。
 空の暗い北海道などへ遠征すれば,もっとすばらしい写真が写せるのでしょうが,今の私にはそんな気力もなくなってしまったので,できるだけ家の近くで,西の空が開け,かつ,暗い場所を探しました。で,何とかそんな場所を見つけたので,そこで写真を撮ることにしました。

 このところ,これまでの天気がウソのような晴れ渡った秋の空になりました。
 10月11日は写りませんでした。
 そして,10月12日。
 この日もまた,金星を手掛かりに彗星がいると思われる場所を狙って,写真を撮ることにしました。まだ双眼鏡でも確認できるような空の暗さでないので,彗星の位置もわかりません。そこで,金星と地上の風景を手掛かりにどの位置にいるかを,焦点距離35ミリのレンズで写して確かめてみました。それが今日の2番目の写真です。写真の左端に金星が写っていますが,APS-Cサイズの場合,焦点距離35ミリレンズの画角では,こうして金星を入れると右下の位置に彗星がいるのです。
 ただし,この空の明るさだと,彗星は,広角レンズでは写りません。
 おおよその位置がわかったので,焦点距離100ミリのレンズに変えて,位置を特定した場所に向けて,写しました。そして,立派な尾がある彗星を写すことができました。
  ・・
 これで,彗星がどこにいるか,どのくらいで写るかがわかりました。
 今日10月13日は,金星と同じ高度まで上がってきます。おそらく,この日よりも明確になると思うので,今度は,もう少し工夫して写真を写したいと思います。これからも晴れの日が続くといいのですが…。

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【Summary】
On October 1, after several cloudy days, I finally managed to capture the Tsuchinshan-ATLAS comet (C/2023 A3). Despite challenges with its low altitude and increasing daylight, I successfully photographed the comet alongside the moon. Capturing low-altitude comets is difficult without automated telescopes, and this may be my last chance to photograph it before it sets.

☆☆☆☆☆☆
 2024年9月26日に何とか写すことができた紫金山・アトラス彗星(C/2023A3_Tsuchinshan-ATLAS)。その後も毎朝,写そうと早起きをしては空を見上げていたのですが,毎日,同じように,厚い雲に覆われていて,星のひとつも見えない日々が続きました。それでも,10月1日は晴れそう… という天気予報だったので,期待して,この日も早起きをしました。
 午前4時ごろに起床して,今日は晴れているかな,とベランダに出て空を見上げると,雲がなく,ひさしぶりに北極星が輝いていました。すると,偶然,ものすごい火球が飛ぶのを目撃しました。あんなに明るい火球を見たのははじめてでした。写真を写せなかったことだけが残念でした。

 こうして,晴れていることを確認して,カメラと三脚をもって外に出ました。雲ひとつありませんでした。東の空低く月齢28.0の月が輝いていました。
 紫金山・アトラス彗星の位置は9月26日に確認済みなので,画角を135ミリにすれば,正確な位置がわからなくても容易に写せるものだと思っていたのですすが,写りません。あとで確認すると,午前4時52分に写した写真から写っていたのですが,その時点では確認できませんでした。彗星は,午前4時35分ごろに地平線から上ってきているのですが,あまりに高度が低く,写らなかったようです。つまり,淡い彗星は,午前4時50分過ぎ,空が少し白みはじめたころに,ISO1600では,1秒以上の露出をかけないと,彗星は写らなかったのです。
 どうして写らないのかな? と思いつつ,あきらめムードで,こうなったらズームレンズの焦点距離を300ミリにしようと思って,適当な場所を狙って写すと,何とはっきりと彗星状の天体が写っているではないですか。これには興奮しました。その後,位置を調節して,やっと,思い通りの彗星の姿をとらえることができました。
 最後に,焦点距離を70ミリにして,彗星と月を1枚の写真に収めることができました。
 名古屋市の明かりが煌々と空を照らす灰色の東の空でこれだけ写れば十分です。

 据付の望遠鏡があって,自動で彗星を捉えることできるならともかく,こうした高度が低い彗星のような天体を写真に収めるのは,簡単なことではないな,と思いました。
 この後の数日,紫金山・アトラス彗星は高度を下げていき,また,天気も悪いようなので,明け方の空で写真に収めることができるのは,おそらくこれで終わりだと思われます。果たして,10月11日すぎ,夕方の西の空に現れるときはどのようになっていることでしょうか?

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【Summary】
I attempted to photograph the Comet Tsuchinshan-ATLAS (C/2023 A3) from September 24-26, 2024, despite cloudy conditions. On September 26, they finally captured the comet under a brief clearing in the clouds. It appeared brighter than Mercury, around first magnitude, raising hopes for its visibility in the evening sky in October.

☆☆☆☆☆☆
 2023年2月22日に発見された紫金山・アトラス彗星(C/2023A3 Tsuchinshan-ATLAS)は,2024年9月末に太陽に0.4天文単位まで接近し,0等まで明るくなる,という予報でした。すでに,どのように見ることができるかはブログに書きました。
 これまで,「紫金山・アトラス彗星は,既に彗星核の断片化が進行しており,このままだと近日点通過(太陽に再接近)する前に消滅するという,最近の観測結果に基づいた非常に厳しい予想を立てた論文のプレプリントが公開さました」とか,「紫金山・アトラス彗星が10月9.4日ごろに-4等級よりも明るくなるとの予測」とか,接近前からいろいろと話題でしたが,ついに,接近を迎えました。

 見えようと見えまいと,体験してみなければわからない,ということで,まずは,私がブログに書いた
  ・・・・・・
●9月27日ごろから10月5日ごろ
 彗星は,明け方午前5時くらいに,太陽が昇る寸前の東の空低く,うみへび座に1等星から0等星の明るさで現れるのですが,高度が非常に低く,どのように見ることができるかはわかりません。
 彗星が大化けすれば,ひょっとして,ものすごく明るい彗星が薄明の中で確認できるかもしれません。
  ・・・・・・
にしたがって,9月27日より早い9月24日から彗星を写真に収めようと実験をはじめ,連日,午前4時に起きて,午前4時30分から午前5時まで,彗星が見られる方向にレンズを向けることにしました。しかし,9月24日も9月25日も,そしてまた,9月26日も,空は雲に覆われていて,どうしようもありません。

 もし,天気がよければ,少し遠出をしようと思っていたのですが,その気もすっかりなくなって,自宅の近くで,とりあえず写真を撮ってみることにしました。
 雲を通してシリウスは見えていたので,雲は薄く覆っているだけなのかな,もし,彗星が明るかったら写るかもしれないなあ,と期待しました。
 しかし,家に戻って調べてみても,9月24日も9月25日も何も写っておらず,がっかりしました。
 9月26日はさらに深く雲に覆われていたのですが,東の空の低空の部分だけなぜか雲が切れていたので,淡い期待をもってこの日も懲りずに写真を撮りました。そして,家に帰ってから調べてみると… 何と,彗星状の天体がはっきりと確認できました。毎日早起きをしていたので,神様がプレゼントをくれたようです。今日の写真は,9月26日の午前4時48分に,ISO1,600,露出時間1.3秒で写したものです。
 経験上,このような低空では,水星を写すのもやっとなので,その経験から,紫金山・アトラス彗星は水星よりも明るく,1等星くらはありそうです。この様子なら,10月11日ごろに夕方の西の空に現れるときが楽しみです。今度は早起きしなくてもいいし。

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【Summary】
The distance between the Earth and the Moon changes periodically and can be closest or farthest even when it is not a full moon. However, because these extremes often occur during a full moon, phenomena like supermoons and micromoons are frequently observed at that time.

☆☆☆☆☆☆
 昨日2024年9月17日は中秋の名月でした。土星がすぐ近くにあって,一緒に写真に収めました。また,明日9月18日は9月の満月「ハーベストムーン」(Harvest Moon)です。

 その1か月前の2024年8月20日は,8月の満月「スタージェンムーン」(Sturgeon Moon=チョウザメ月)でした。これは,8月は五大湖などでチョウザメの漁獲のシーズンを迎えることからついた名前です。また,「 ブルームーン」でもありました。
 「ブルームーン」にはふたつの意味があります。そのひとつは,1月に2回満月があるときの2回目の満月のことです。もうひとつは,ひとつの季節(6月21日夏至から9月22日秋分)に満月が4回あるときにそのうちの3回目の満月のことで,2024年8月20日は季節の「ブルームーン」でした。季節の「ブルームーン」は,約2.5年から3年に1度しかありません。
  ・・
 さらに,この日の月は「スーパームーン」とされて報道されていました。しかし,実際は,今日2024年9月18日の満月のほうが,地球からの距離が357,500キロメートルと近いので,この月のほうがむしろ「スーパームーン」となります。しかし,この翌月,10月17日の満月が地球からの距離が357,400キロメートルとなり,2024年の正真正銘の「スーパームーン」です。また,に最も地球から遠い月である「マイクロムーン」は2月24日満月で,地球との距離は406,000キロメートルでした。
 今日の写真は,1番目が昨日の中秋の名月と月,2番目が2024年8月20日の月と2月24日の月を並べたものです。「(ほぼ)スーパームーン」と「マイクロムーン」はこれだけ見かけ上の大きさが違うわけです。

 ということなのですが,私がずっと疑問に思っていたのは,地球と月の間の距離が最も近いときと遠いときが何も満月に限らないではないか,ということでした。この疑問について調べていて,国立天文台のサイトで見つけた表で納得がいきました。
 実際,月と地球との距離は周期的に変わっていて,やはり,私が思っていたように,満月でないときに最も近くなったり遠くなったりするようです。しかし,やはり,満月のときに最も近くなったり遠くなったりすることが多く,満月のときに限って,「スーパームーン」とか「マイクロムーン」というわけです。

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☆☆☆☆☆☆
 2017年8月21日にアメリカで皆既食を見ました。
 なるべく安価で軽いという条件で,どんな機材を持っていけばいいか探していたところ,ケンコーから「MIL TOL」という望遠鏡が発売されているのを見つけました。口径6センチメートル,焦点距離400ミリメートルで,EDレンズ1枚を含め1群2枚というだけのスペックで,定価だと68,000円でしたが,もっと安価に購入したと思います。焦点距離400ミリメートルの直焦点では画像が小さいので,持っていたニコンのテレコンバーターTC-200をダメもとでつけて焦点距離を800ミリメートルにしたら,いい像を結びました。また,対物レンズのキャップは,すでに持っていたペンタックスの75SDHFの52ミリメートルのフィルターが装着できる太陽観測用のものがちょうど合ったので,そこに,ND100000のフィルターをつけました。こうすることで,太陽が皆既状態になったとき,簡単にフィルターを取り外すことができるようになりました。これと中古で買ったGITZOの三脚,そして,ニコンD5300というカメラを持って渡米しました。皆既日食当日は快晴で,無事,多くの写真を収めることができました。

 なお,「MIL TOL」は現在発売終了で,これに代わるものもありません。しいていえば,銘匠光学 TTArtisan 500mm F6.3望遠鏡かな。細かい収差やオートフォーカスの性能など机上のスペックを気にする人が多いので,こういうものは売れないのです。とても残念なことです。とはいえ,自分に必要のない仕様のついた高いレンズを買う必要などないと私は思うのですが…。
 ということだったのですが,その後,使い捨てでいいやと思って買った皆既日食を撮るという目的だけの望遠鏡は,出番がなくなりました。捨てるのはかわいそうということで,太陽黒点と月を写すために役立てることにしました。何分にも非力な望遠鏡なので,大した作品はできませんが,所詮,趣味なんてものは自己満足のものなので,私にはこれで十分。これはこれで楽しいのです。
 問題は,太陽を望遠鏡の視野に入れるのがけっこう難しいということでした。肉眼であまり長く太陽を見るわけにもいきません。いろいろと試してみたのですが,結局思いついたのが,ビクセンの単眼鏡をファインダー代わりにすることでした。これをカメラのアクセサリーシューにつけて,単眼鏡のフィルターサイズが27ミリメートルだったので,27ミリメートルから52ミリメートルのフィルターが接続できるステップアップリングをつけ,そこにND100000のフィルターを接続しました。太陽を視野に入れるだけのわずかな時間ならこれで大丈夫です。

 こうして,ときどき太陽黒点を写して楽しんでいるのですが,今日の写真は,1番目が2024年5月9日,2番目の写真が8月1日,そして,3番目の写真が8月14日に撮ったものです。こうしてみると,このところ,太陽は活動期ということで,大きな黒点がたくさん現れます。また,太陽の自転周期は25.38日なので,少しずつ位置を変え,また,姿も変わるので,写し甲斐があります。
 太陽活動は,およそ11年周期で繰り返します。喫緊の太陽極大期は2025年7月ころと予測されていて,太陽極大期には太陽表面の爆発(=フレア)が頻繁におき,その結果,強力な太陽風が放出されるので,これが地球に達すると磁気嵐などによってオーロラが発生します。そこで,このごろ,アメリカの北部地方や北海道でもオーロラが観測されています。特筆すべきは,2024年8月12日,北海道で,ペルセウス座流星群の流星とオーロラが同時に見られた,という出来事起きたことです。
 太陽の活動は,地球上に様々な影響を与えるのですが,私はそうした影響には何もできないので,せいぜい太陽黒点を写真に収めて,太陽のご機嫌をとることにしましょう。

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ペルセウス座流星群

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 毎年お盆休みのこの時期に話題となるのがペルセウス座流星群です。
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 ペルセウス座流星群(Perseids)はペルセウス座γ星付近を放射点として出現する流星群で,毎年7月20日ごろから8月20日ごろにかけて出現し,8月13日前後に極大を迎えます。2024年は8月12日の午後11時ころが極大期でした。
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 母天体はスイフト・タットル彗星 (109P/Swift-Tuttle)で,1862年にアメリカの天文学者ルイス・スウィフト(Lewis A. Swift)とホレース・タットル(Horace Parnell Tuttle)によって独立に発見され,イタリアの天文学者ジョヴァンニ・スキアパレッリ(Giovanni Virginio Schiaparelli)によってペルセウス座流星群の母天体ではないかと指摘されました。
  ・・・・・・

 ペルセウス座流星群の流星は,流れる速度が速く,また,明るい流星や火球が多いので,見ごたえがあります。私は,今から40年以上前に一度,この時期に星のきれいな山の中の旅館に泊まったことがあって,一晩中楽しんだことがありますが,それっきりです。ちょうどお盆の時期なので,多くの人が楽しめる,といいますが,実際は,旅行をしても混雑するし値段が高いので敬遠します。また,夏の空はきれいでないからです。とはいえ,家の近くで,満足に星が見られる場所はほとんどありません。特に,流星群は,望遠鏡で見るものではないから,空の暗いところがいいのです。
 今年は,晴れたこともあって,久しぶりに見にいくことにしました。あまりやる気はないので,ポラリエ という簡易赤道儀に対角魚眼レンズをつけたカメラを接続して持っていきました。これで,ひとつでもふたつでも流星が写っていればいいや,といういい加減な姿勢です。
 流星群の楽しめる場所を探して車で右往左往しました。やっと見つけても,遠くの都会の光で思ったより暗くなかったり,また,人のいない山の中だとクマが出てくる心配があったりするのです。やっと適当な場所を探しだしました。南の空は明るかったのですが,北の空は暗かったので,そこに陣取りました。近くには民家もなく,人もおらず,その点はよかったのですが,クマが怖いので音楽をかけて,イスに座って,空を見上げました。

 10分に1個ほどの明るい流星を見ることができました。意外と少ないな,と思いました。
 いくつか流星の写真も写すことができましたが,かえすがえす残念だったのは,最も明るかった流星が,ちょうどカメラのシャッターを閉じたときに流れたことでした。
 午後9時過ぎから見はじめたのですが,午後11時をすぎたあたりから曇ってきたので,引き上げました。明るい流星をいくつか見ることができたので,これで満足するとしましょう。

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「しない・させない・させられない」とは
「Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.」とは

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 岩手県奥州市水沢に国立天文台水沢VLBI観測所があります。国立天文台の中で,現存する一番古い観測所のひとつで,1899年(明治32年)に設置されました。
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 明治時代,天体観測の面でも欧米各国の科学技術を導入して,正確な緯度を測定する事業を行うために設置された緯度観測所が前身です。現在も,国際緯度観測事業を行いつつ,測地学観測の観測所として機能しています。
 緯度観測所では,日本及びアジアにおける国際測地学研究の拠点として,測地学に関連する研究及び測定を行いました。この観測事業の実施を行った木村栄教授が近代測地学の世界的業績であるZ項を発見した場所として有名です。
 現在,これらの観測に用いられた機材開発技術を応用して,月測地学探査に必要な機器開発を実施し,月探査計画での観測データ解析も行っています。また,相対基線法による超長基線電波干渉法(Very Long Baseline Interferometry=VLBI)観測で精密な銀河マップを作製することを目的に,日本各地にあるVLBI観測点を専用ネットワークで結んだ観測点の解析センターの役割を担っています。これらのデータ解析には精密な時刻測定が必要なため,国内では数少ない協定世界時(UTC)を刻む原子時計を運用し,データ解析に活用し,研究観測から得られたデータは,日本電信電話の時報(117),情報通信研究機構のJJY,NHKのラジオ放送の時報などに活用されています。

 2019年から,ブラックホールの影を世界ではじめて撮影に成功したチームに参加した本間希樹教授が所長を務めていますが,2020年度の天文台関連の予算が半分程度に減額されることとなって電波望遠鏡の停止や人員の補充が行われないなど研究への影響が懸念されていましたが,他の研究により予算が確保され電波望遠鏡の維持は可能となったそうです。また,2021年には必要最低限の研究が可能な予算要求がほぼ満額で決定されたといいます。

 私は,この観測所のことは昔から知っていましたが,光学望遠鏡があるわけでないからまったく興味もなく,どこにあるのかも知りませんでした。
 2019年,宮沢賢治にちなんだ花巻に興味をもち,また,ブラックホールの写真撮影に成功した本間希樹教授が所長ということで行ってみたくなって,東京から深夜バスに乗って出かけてきました。行ってみて,私はこの地が大好きになりました。また,水沢VLBI観測所で行っている研究にも興味をもちました。
 奥州市は遠いところでしたが,今は,県営名古屋空港から花巻空港までFDAが飛んでいるので,行くことは容易になったので,また,訪れてみたいものです。


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 花山天文台は京都市山科区の花山山山腹に位置する天文台。京都大学大学院理学研究科附属の施設で,1929年(昭和4年)に設立されました。 天文台のある山は標高221メートルの花山山で「かざん」あるいは地元では「かさん」とも読まれています。
  ・・
 京都大学における天文学研究は1897年(明治30年)に設立された京都帝国大学理工科大学にさかのぼります。当初は大学敷地内において観測を行っていて,佐々木哲夫によるフィンレー彗星 (15P/Finlay) の観測はこの時期のことです。
 1921年(大正10年)に理学部物理学科が分割されて宇宙物理学科が設置されましたが,大学付近における市電の開通などに伴い観測環境が悪化したので移転が検討されるようになりました。
 花山山にある土地が地主から大学に寄付されたので,2年の工事によって天文台が建設され, 1929年(昭和4年)に花山天文台が設立されました。初代天文台長は山本一清でした。
 京都帝国大学附属の花山天文台は,東京帝国大学附属の東京天文台(現・国立天文台)と並んで日本における天文学研究の拠点でしたが,京都と東京では天文学用語が異なっていることもしばしばでした。東京で「惑星」とよんでいたのに対して,京都では「遊星」,また,1930年(昭和5年)に発見されたPlutoについて,東京では「プルート」を用いたのに対し,京都では野尻抱影が提唱した「冥王星」を早くから受け入れていました。

 設立から長い間,観測施設施設として利用されてきましたが,京都市の人口増加に伴って光害や大気汚染などの環境の悪化により,1968年(昭和43年)に新設されたの飛騨天文台設立にその地位を譲りましたが,現在でも「教育施設」として重要な役割を果たしています。
 花山天文台は,2013年「京都を彩る建物や庭園」に選定され,2014年に「京都を彩る建物や庭園」に認定されました。

●口径45センチメートル屈折赤道儀
 この望遠鏡は,1927年(昭和2年)理学部宇宙物理学教室で購入し,1929年(昭和4年)に花山天文台が創設されたとき移設されました。
 当初は口径30センチメートルのレンズがついていましたが,1969年(昭和44年)に性能向上のため,カール・ツァイス製の45センチメートルレンズに換装され,これによって,焦点距離が675センチメートルと伸びたので鏡筒が長くなってしまいました。
 そこで,架台とのバランスが崩れるのを防ぐために,対物レンズから入った光を末尾の反射鏡で受けて折り返し,鏡筒の真ん中付近に接眼レンズを設けるというユニークな工夫がされているので,一般的な屈折式の望遠鏡とは少し違った外観となっています。
 これがまあ,京都らしいというか,私は好きです。
●口径70センチメートルシーロスタット
 1961年(昭和36年)に設立された太陽館に設置されて,太陽の分光スペクトル観測望遠鏡として活躍しています。現在は大学院生の研究指導や理学部学生に対して課題研究と課題実習の実習教育を実施しています。


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 日本の天文台について,これまで三鷹,飛騨,岡山と,3回書きましたが,その続きです。
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 木曽観測所は,長野県南西部に位置する木曽町三岳の標高1,120メートルの尾根伝いに広がった緑豊か な台地に建設されています。
 木曽観測所は,1974年(昭和49年)に東京天文台の観測所として開設されました。1988年(昭和63年)に国立天文台に改組されたのに伴って,国立天文台の組織から離れて,現在は,理学部附属天文学教育研究センターの観測所となっています。
 木曽観測所の設立目的は,口径105センチメートルシュミット望遠鏡による銀河系内外の諸天体の観測的研究,並びに夜天光の観測を行なうことでした。

●口径105センチメートルシュミット望遠鏡
 木曽観測所のシュミット望遠鏡は,補正板口径が105センチメートル,主鏡は150センチメートル,焦点距離は330センチメートルで,F比は3.1です。
 木曽観測所では,シュミット望遠鏡の広い視野を活かした様々な観測プロジェクトが実施されていました。
 木曽観測所におけるシュミット望遠鏡の観測プログラムは,パロマ天文台のシュミット望遠鏡である「サミュエル・オシン望遠鏡」(The Samuel Oschin telescope)のように全天域を隈無く観測するのではなく,掃天探査を要する研究テーマを主とし,個別の研究 テーマをこれに加える形で月ごとに編成されました。
 建設当時は写真乾板が観測の主流だったのが,最新の固体撮像素子技術を導入して微光天体を高感度かつ精密に測定する必要が生じたため,1987年にCCDカメラの開発が開始され,さらに,2012年には超広視野モザイクCCDカメラに置き換わりました。また,2019年からは,さらに超広視野のCMOSカメラ「Tomo-e Gozen」が本格運用を開始しました。
 私は,このシュミット望遠鏡にとても親しみがありました。そして,ついに,2019年の公開日に,その実物に触れることができました。

 こうしていろいろと書いていると,何もかも,このコロナ禍の前に夢が実現したことに幸運を覚えます。
 見学してわかったことは,この望遠鏡もまた,老朽化したものをなんとか生き延びさせて活躍の場を与えようと苦労していることです。しかし,シュミット望遠鏡という形式自体が今では古いことと,赤道儀という架台の形式もまた,時代に取り残されていることから,現状を維持することがたいへんだということです。
 そうしたことも,何だか,30年以上前に買って,今も使っている私の古びた望遠鏡と同じように,親近感を抱きます。

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 現在の私は「Sky & Telescope」というアメリカの天文雑誌だけを愛読しています。以前,ときどき購入して読んでいた「月刊天文ガイド」「星ナビ」という日本の天文雑誌はまったく手にすることがなくなりました。それは,歳をとった私の興味を満たさなくなってしまったからです。
 そんなわけで,これまで知らなかったのですが,先日,ひさしぶりに書店でこれらの雑誌をパラパラ開いてみたら,高橋製作所の広告がないのに驚きました。調べてみると,ネット上ではすでにずいぶん前から話題になっていたようです。
 私がはじめて「月刊天文ガイド」を購入したのは,1968年3月号でした。昨年引っ越しをしたのを機会に,持っていた雑誌のほぼすべてを破棄してしまったので,今も手元にあるのは,はじめて購入した1968年3月号だけですが,久しぶりにそれを見てみたら,そのころは多くの望遠鏡メーカーがあって,たくさんの広告が載っていました。しかし,今思うと,現在のニコンである日本光学工業と五藤光学研究所以外は,どの会社も小さな企業で,ほとんどの部品は下請けから買い集めてそれを組み立てて製品にしていただけように思います。そんな業界に新風を吹き込んだのが高橋製作所でした。
 多くの小さな会社はなくなってしまいましたが,数々の荒波を乗り越えて,今も存在しているのが高橋製作所とビクセン,そして,中国製の望遠鏡を輸入して販売しているケンコーくらいです。

 今から50年ほど前,望遠鏡は子供たちの憧れの存在でした。現在のアマチュア天文愛好家のほとんどは,そのころの子供がそのまま齢をとった人ばかりなので,かなりの高齢となっています。そして,今の子供たちの多くは天文に興味がありません。そもそも,興味をもとうにも星が見えないのだから,どうにもなりませんし,星空が美しいという触れ込みで売っている観光地に出かけることはあっても,わざわざそのために天体望遠鏡を買おうという人はほとんどいないでしょう。
 そんな時代に,天体望遠鏡「なんて」商売になるのでしょうか?
  ・・・・・・
 高橋製作所は1932年(昭和7年)に創立された鉄鋳物の製造会社でした。第2次世界大戦後に望遠鏡の製造をはじめた当初は,SWIFTというブランドの望遠鏡を海外に輸出していたようですが,1967年(昭和42年)に,タカハシブランドの望遠鏡を発売し,これが当時連載されていた「月刊天文ガイド」の望遠鏡をテストするという記事に取り上げられて好成績を残したことで,脚光を浴びました。そして,P型というハンディで高性能の望遠鏡を発売したことで,トップメーカーに躍り出たのです。
  ・・・・・・
 そのころは,高橋製作所から新製品が続々と生まれて,私もずいぶん購入した覚えがありますが,そうした購買意欲は「月刊天文ガイド」あってこそで,この雑誌が存在していなければ,この会社は存在していなかったことでしょう。それが,恩人である雑誌から広告の掲載を撤退してしまうというのは…。

 あるころから,高橋製作所は,いったいだれが買うのやら… と思うような,高性能,かつ,高価な望遠鏡しか製造しなくなってしまいました。これでは,あこがれていても手が出ません。さらに,ここ数年は,ほとんど販売している製品が同じままです。かつてのような,新製品にときめくこともなくなりました。
 それでも,その昔「月刊天文ガイド」創刊当時に,天体望遠鏡に憧れていた人たちが,やがて,定年退職を迎え,お金持ちになったので,再び昔の趣味を取り戻し,高価な機材を購入する人も少なくなかったと思うのですが,そうした人たちも,このような趣味を卒業する歳になってきました。とはいえ,車1台もの値段がするのでは,若い人には手が出せるものではありません。
 そんな事情もあって,風の噂では,日本国内ではあまり売れていないとか。これが,雑誌に広告を載せるのをやめた理由のひとつなのでは,ともいわれています。

 そのような理由だけに限らず,今や,日本中,満足に星が見える場所すらなくなってしまったことのほうが大きいのかもしれません。私が星見をしていた場所も,年々明かりが増えてきたり,道路できたりして,撤退を余儀なくされています。
 しかし,オートキャンプ場や,満天の星が見られることを売りとするようなホテルや施設が作られていることを考えると,満天の星を見たいという願望は少なくないものと思われますが,そうした人たちの願望と,現在販売されている望遠鏡に対する期待とが一致していないように感じます。これでは,ほんの一部の,高齢化した往年の天文ファンだけが,今も変わらず天文雑誌の写真コンテストに応募するために,高価な機材を使っているわけですが,そうした人たちは,もう絶滅危惧種となりつつあります。
 今や,若い人の価値観はそんなところにはないのです。
 たとえば,スマホで制御できて,軽くて,持ち運びが簡単にできて,自動で極軸をあわせてくれるような架台や,デジタルセンサーとコンピュータで画像を見せてくれるようなものが必要なのです。また,たまに星がたくさん見えるところに出かけたとき,美しい星の写真を撮りたいと気軽に持っていけるような機材があるといいなあと思っても,ビクセンだけがかろうじてそうした需要を満たす製品を販売しているだけで,高橋製作所の製品には,そうした需要に応えることもないし,また,そんな技術力もないようなのです。

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 2021年11月8日の白昼,月齢3.2の月が金星を隠すという金星食がありました。このときは天気が悪く,残念ながら見ることができませんでしたが,白昼の空に金星を見ることができるかどうか,という疑問が残りました。そこで,その翌日,天気がよかったので,白昼の金星が見られるかどうか挑戦してみた結果,肉眼でも見ることができることがわかりました。
 さて,2024年5月5日午前12時8分,今度は,火星食があるということでした。月齢は26.2,しかも,隠されるのが金星ではなく火星ということで,そんなものが見られるのかな? と思ったので,試してみることにしました。

 まず,午前7時15分ごろ,すでに太陽が昇って明るい空に,月が見られるのかを確かめてみました。 
 それが意外と簡単に見つかりました。双眼鏡で見つけると,今度は目を凝らせば,肉眼でも見られるのです。これには驚きました。月齢26.2が見られるなら,お昼間でも,ほぼ,月は見ることができるわけです。
 さて,火星食です。こちらはどうでしょうか。
 火星食が起きる20分ほど前,再び,月が見られるか,確かめてみました。やはり,簡単に月は見つかりました。これで,準備は完了,あとは火星食を待つだけとなりました。

 予報された時刻が近づいたので,シャッタースピードをいろいろと変えて,月を写しました。金星に比べて火星は暗いので,露出をかけなければならないのですが,そうすると空の明るさに負けてしまい,その塩梅がむずかしいのです。
 とにかく,写真を撮り終えて,後で,調べてみました。
 火星はなかなか判断が難しかったのですが,けっこう多くの写真の同じ位置にそれとわかる白い点が写っていました。
 そんなわけで,白昼の火星食も,何とか写せるということがわかって,私は,納得しました。
 それにしても,アストロアーツのウェブページにあったように,簡単に見つかるなら,さぞかし美しいのになあ,と思ったことでした。

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 M31アンドロメダ銀河に接近したり,木星に接近したりと,話題もたくさんあったポンス・ブルックス彗星(12P/Pons-Brooks)も,そろそろ見納めです。夕方の西の低空,しかも春霞の中となると,条件は悪く,期待以下になってしまいました。天気が悪い日の多く,満足に見ることができませんでした。
 せめて,明け方の東の空だったら,少しはマシだったのに,と思いました。

 悪いコンディションだったポンス・ブルックス彗星でした。
 こうしたときに思い出すのは,オーストラリアで星を見たときのことです。日本とは違い,太陽が沈むや否や,澄んだ空に星が見えてきて,日没後1時間もすれば,地平線まで満天の星が輝いていました。そういう環境なら,さぞかし,肉眼でも,ポンス・ブルックス彗星のすばらしい姿を見ることができたのになあ,ということでした。
 日本の灰色の濁った空では,もちろん,双眼鏡でもその姿を見ることは無理で,写真を撮ると,かろうじて写るくらいのものでした。ならば,少しは空のきれいな山奥へ行こうとしても,高度が低いから山に隠れてしまって,姿を見ることはできません。では海岸に行けば,ということですが,2020年7月,ポンス・ブルックス彗星と同じように,夕方の西空に見えたネオワイズ彗星(C/2020F3 NEOWISE)は,世紀の大彗星だったので,私は,最高の条件で見ようと,北海道のサロベツ原野まで出かけたのですが,4等星程度の彗星ではそこまでの情熱も湧きませんでした。

 せめてもと,私が密かに最後の期待をしていたのは,2024年4月10日でした。
 この日は,ポンス・ブルックス彗星は木星の5度下にあって,その右横に月齢1.7が接近したことで,木星と月とポンス・ブルックス彗星を入れた写真を写そうと思っていたのですが,天気が悪くて見ることができず,落胆しました。
 もう,日本で美しい彗星の写真を写すなどということを期待すること自体,考えないほうがよいのかもしれないなあ,と感じたことでした。

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 2024年2月12日は,天気がよく,太陽やら月やら彗星を写すのに忙しい日になりました。というか,自分で勝手に忙しくしていました。
 まず,太陽です。
 現在,太陽の表面にすごくたくさんの黒点があります。そこで,何となく写したのが1番目の写真です。数年前には,まったく黒点がなかったのがうそのようです。
  ・・・・・・
 太陽の表面にあらわれる黒いはん点を太陽黒点とよびます。黒点はふつう中央の暗部とまわりの半暗部からなっており,暗部の温度は約4,000度,半暗部は5,500度です。光り輝く太陽の表面の温度は約6,000度なので,,温度の低い黒点の部分が暗いはん点として見えるのです。
 太陽全体では約11年の周期で,表面にあらわれる黒点の数は増減し,黒点周期とよばれます。
  ・・・・・・
 ということで,私は,特に太陽に興味があるわけでもないのですが,2017年に,アメリカで皆既日食を見るために持っていこうと購入し,太陽観測用に改造した,安価で軽いMILTOLという望遠鏡が役割を終え,そのままではもったいないで,自宅で太陽の黒点を撮影するために使っているのです。ちなみに,今年,2024年4月8日,再び,アメリカ横断皆既日食があります。

 次が月です。
 2月12日は月齢2.4。月の満ち欠けなど,珍しくもないのですが,この時期は空が澄んでいるので,とりわけ美しいのです。そこで,まだ,太陽が沈むまえに写したのが,2番目の写真です。その後,太陽が沈んだら,とりわけ美しい地球照が見えるようになったので,再び写したのが3番目の写真です。
  ・・・・・・
 地球照は,月が欠けて暗くなっている部分が地球に照らされてうっすらと見える現象です。英語には「the old moon in the new moon's arms」という慣用句があります。
 これは,地球が反射した太陽の光が再び月の夜の部分を照らし,その光がまた地球に反射して見えるのです。太陽が地球を照らして反射する明るさは,満月の70倍もあるので,青く輝く地球の光が月面の影の部分を照らすのです。
  ・・・・・・

 そして,最後がポンス・ブルックス彗星(12P/Pons-Brooks)です。午後7時25分に写しました。
 先月1月11日にも写しましたが,それから1か月過ぎて,かなり明るくなりました。2か月後には最も明るくなるので,楽しみです。
 しかし,夕方の西の空低い位置にいるので,よほど空の開けた,しかも暗い場所があるところでないと,捉えることが困難です。また,明け方の北東でも見られるのですが,こちらもまた高度が低く,さらにむずかしいでしょう。

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 このところ,明け方の東の空に,水星と火星が接近しているということです。
 2024年1月8日から1月10日の早朝は,金星,水星,月の並びが美しく,多くの写真を撮りました。このときも火星が地平線ぎりぎりにあったのですが,確認できませんでした。
 現在も,火星の高度はそのときと同じくらいで,日の出30分前でも5度程度と非常に低いものです。すでに薄明が進んでいて「こんなもの見えるのかな? 写るのかな?」と疑問があったので,見えなければ見えなくてもよくてそれを確かめることが楽しいから,実行してみることにしました。

 火星と水星が最も近づいたのは1月28日だったのですが,あいにく曇っていて,見ることができませんでした。翌1月29日は晴れ渡ったので,挑戦することができました。
 70ミリレンズを使うと金星と火星と水星を同じ画面に入れることができて,金星を右上に配置すれば,左下に火星と水星が入るので,画角に入れるのは容易で,写すためには感度と露出時間の塩梅だけでした。露出時間が少ないと星が写らず,反対に多すぎると,すでに薄明がはじまっているので,空に被ってしまい写りません。その匙加減がむずかしいのです。
 午前6時に撮影をはじめました。
 はじめに露出時間4分の1秒,ISO1600で写した写真を確かめてみると,昇ってきた水星を捉えることができたので,うれしくなりました。よく確かめると,火星も写っていました。さらに時間を置くと,高度が高くなってきて,水星と火星はカメラのファインダーでも簡単に見えるようになり,写真では,火星は赤く,水星は白く写りました。その位置に双眼鏡を向けると,水星は簡単に見つけることができて,水星から目を凝らして右上に写すと,火星も見ることができました。
 さらに高度が高くなると,肉眼でも確認できるようになりました。
 しかし,わずか10分後には空が明るくなってしまい,その姿は視界から消えました。

 反対側の空に目をやると,薄明の中,有明の月が美しく輝いていました。
 1月の満月を「ウルフムーン」といいます。今年1月の「ウルフムーン」は1月26日だったので,1月28日は月齢17。この月を「立待月」といいます。
  ・・・・・・
 「立待月」とは,日没後に今か今かと立って待つうちに出てくる月,の意です。
 十五夜以後,月の出はしだいに遅くなり,十六夜の月は山の端にいざよい,十七夜「立待月」は立ち待つほどに出,十八夜「居待月」(いまちづき)は座し居て待ち,十九夜「臥待月}(ふしまちづき)は臥して待ち,二十日「更待月」(ふけまちづき)は夜半近く,というように出が遅くなっていきます。これらはそうした月の名称です。
 西洋では毎月の満月にニックネームをつけ,日本では,月の満ち欠けひとつひとつに名称を与えるという,この感性の違いがおもしろいです。
  我門をさしわづらひてねるをのこ
  さぞ立待の月もみるらん
    「新撰六帖」第一 衣笠家良
  ・・・・・・
 この日は夕方からずっと晴れ渡っていたので,前日の夕刻も,月が出る午後7時30分を過ぎたころ,東の空に昇ってきた赤く輝く月を見ることができました。明け方には,その月が位置を変えて,西の空に,まぶしいくらいに白く輝く姿を見ることができました。
 この月の「しおり」(Shioli)と名づけられたクレーターでは,今,日本が送り込んだ月探査機「SLIM」が,太陽の光を受けて眠から目を覚まし,活動を開始しました。 

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 2024年はふたつの明るくなる彗星が接近するようです。
 そのひとつは,「紫金山・アトラス彗星」(C/2023A3 Tsuchinshan-ATLAS)で,この彗星についてはすでに書きました。もうひとつがポンス・ブルックス彗星(12P/Pons-Brooks)。今日はそのお話です。
  ・・・・・・
 ポンス・ブルックス彗星は周期70.06年の周期彗星です。有名なハレー彗星は周期75.32年なので,同じような周期で,しかも,ともに明るくなるのですが,ハレー彗星ほど知られていません。
 近日点通過,つまり太陽に最も近づくのは2024年4月20日で,その距離は0.7780天文単位,近地点通過,つまり地球に最も近づくのは2024年6月2日から3日で,その距離は1.546天文単位です。1天文単位は地球と太陽の平均距離をいい,約1億5千万キロメートル,正確には149,597,870,700メートルです。
  ・・
 ポンス・ブルックス彗星は,1812年7月21日にジャン・ルイ・ポン(Jean-Louis Pons),8月1日にヴィンセント・ウィズニフスキー(Vincent Wisniewski),8月2日にアレクシス・ブヴァール(Alexis Bouvard)によって発見され,それらは同じ彗星として,エンケ彗星(2P/Encke)で有名なヨハン・フランツ・エンケ(Johann Franz Encke)が70.68年の周期を持つ軌道を計算しました。
 その70年後の1883年,ウィリアム・ロバート・ブルックス(William Robert Brooks)によって再発見されたことで,ポンス・ブルックス彗星となりました。
  ・・・・・・

 今回の接近は,2020年6月10日にアメリカ・ローウェル天文台(Lowell Observatory)のディスカバリーチャンネル望遠鏡により,23等星で太陽から11.89天文単位離れていたときに検出されました。
 その後,順調に太陽に近づき,光度を上げ,春に4.5等星まで明るくなるといわれていますが,昨年2023年7月20日に5等級の爆発現象(アウトバースト)を起こして11.5等まで急増光,11月15日には再びアウトバーストを起こして,9.4等まで急増光したということです。
 彗星は,惑星を作った構成物質(planetesimals)の生き残りで,太陽系形成以降46億年間,太陽系の果てで冷凍保存されてきたものが何かのきっかけで太陽系の内側に入り込み,太陽の熱による氷の昇華で物質を巻き散らかしているものです。こうしたアウトバーストでは,放出されたエネルギーはマグニチュード7.0に匹敵し,彗星核の地下にあるエネルギーが爆発していると考えられますが,彗星は一旦アウトバーストを起こすと表面の不活性層が剥ぎ取られて活発に活動し,数年のうちに枯渇するといわれているので,ポンス・ブルックス彗星の将来が心配されますが,次の回帰は70年も先のことです。

 さて,ポンス・ブルックス彗星は現在ははくちょう座にあって,夕方の西北西の空に午後8時30分ごろに沈むまで8等星程度で見えます。今日の1番目の写真は,2024年1月11日午後7時35分に写したものです。
 1か月ほどははくちょう座を北に向かって進むので,彗星としては地平線からほぼ同じ高度を保ち続けながら西の方向に動いていき,それとともに明るくなっていきます。4月10日くらいが最も明るく4等星ほどになります。その後は日没が早くなって,見えなくなります。つまり,太陽に近づきます。

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ISS.

2024年1月15日午後6時15分。
国際宇宙ステーションが月の横を通過しました。


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 冬は空気が澄んでいるので空が美しく,特に,かわたれどきといわれる明け方の東の空は絶品です。一方,別の方向を見ると,雪を被った御嶽山,伊吹山などの山々も美しく輝いていて,神秘的に見えます。
 今年1月は,東の空に,月,金星,水星が揃い踏みです。また,さそり座が横たわっていて,さそり座の1等星であるアンタレスも明るく輝いています。月の位置が少しずつ変わるので,毎朝見ても飽きるものではありません。
 今日の写真は,上から順に,2024年1月7日,1月8日,1月9日,1月10日に写したものです。特に,1月10日は月齢が27.9という,見えたらもっけものの月の姿です。
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 明るく輝いている金星の西方最大離角は昨年2023年10月24日で,今は,次第に高度が低くなってきています。一方,水星は2024年1月12日に西方最大離角となるので,次第に高度が高くなってきています。この日まで金星と水星は近づいていくのですが,それを過ぎると,共に,ほぼ同じ間隔を取ながら,高度を下げ,太陽に近づいていって,1か月後には,明け方の空に見ることはできなくなります。
 また,月は2024年1月10日に新月となります。
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 地球よりも太陽の内側にある水星や金星は,地球からは見かけ上太陽からある角度以上離れることはありません。その角度が最大のときを最大離角といい,夕方の空に見えるとき,つまり,太陽の東側にもっとも離れるのが「東方最大離角」,明け方の空に見える,つまり,西側にもっとも離れるのが「西方最大離角」です。
  ・・・・・・
 水星の下には火星があって,火星,水星,金星がほぼ等間隔に並んでいるということなので,昇ってくる火星を見ようと工夫をしてみたのですが,火星が地平線から昇ってくるころには夜が白んできて,見ることができませんでした。

 以前載せたことがある歌ですが 
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 阿加等伎乃 加波多例等枳尓 之麻加枳乎 己枳尓之布祢乃 他都枳之良須母
 暁の かはたれ時に 島蔭を 漕ぎ去し船の たづき知らずも
 暁の薄明かりの時に島陰を漕ぎ去った船がなんとも心細く思えることよ
  「万葉集」巻20・4384 他田日奉得大理(おさだのひまつりのとこたり)
  ・・・・・・
 街灯もなく,空が暗いので,今よりも明け方の空は美しかったと思うのですが,「万葉集」には,夜が明ける前について,あまり詠んだ歌がありません。この歌を詠んだ他田日奉得大理は,奈良時代の防人にして下総海上郡の国造ということです。

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 12月の満月は「コールドムーン」。とはいえ,暖かい年の瀬です。
 月を見ていて思い出すのは,JAXAが2023年9月7日に打ち上げた無人月面探査機・着陸機「スリム」(SLIM=Smart Lander for Investigating Moon)です。
 高さ約2.4メートル,燃料を除いた重さは約200キログラムの小さな「スリム」は,H-IIAロケット47号機で鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられました。画像照合航法を利用して月面のクレーターを認識し,「かぐや」が収集した情報を活用しながら現在地を特定し,誤差100メートルを目標に「神酒の海」(Mare Nectaris)付近の「しおり」(Shioli)と名づけられたクレーター近傍への着陸をめざしています。成功すれば日本初の月面着陸機となります。

 当初は2018年度にイプシロンロケットで打ち上げる計画が示されたのですが,2019年度の打ち上げに変更されました。しかし,2016年のX線天文衛星「ひとみ」の喪失事故によって,再び変更されて,2021年にH-IIAロケットで打ち上げ予定のX線分光撮像衛星「クリズム」(XRISM=X-Ray Imaging and Spectroscopy Mission)との相乗りで打ち上げられることになったのですが,今度は,「クリズム」の開発が難航して,2023年の前半に再変更されました。 
 しかし,H3ロケットの打ち上げに失敗した影響からさらに延期され,8月26日に打ち上げ日が設定されたものの,天候の悪化で28日へと延期されたのですが,この日も強風のため打ち上げが中止となり,9月7日にようやく打ち上げられました。
 打ち上げ後は順調で,9月14日に地球周回運用期間に移行し,10月4日には地球を公転する月の重力を利用して軌道を変更する月スイングバイを実施し,12月25日に月周回軌道への投入に成功しました。

 現在のところ,2024年1月20日午前0時ごろに,月の高度15キロメートルから降下を開始し,約20分後に着陸をめざしています。
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 「スリム」にはLEV-1,LEV-2の2機の月面探査ロボットが搭載されています。
 LEV-1は, 月面をジャンプするように移動する月面探査ロボットで,2台の広角カメラを搭載し,直接地球にデータを送信することができます。また,LEV-2は,変形機構や動物の動きなどの玩具技術を応用した小型月面探査ロボットで,2台の広角カメラを搭載し,LEV-1を経由してデータを地球に送信します。
  ・・・・・・
 成功するといいなあと思います。

 ところで,着陸地点は,アポロ11号が1969年7月20日に月に着陸した「静かの海」(Mare Tranquillitatis)に近く,私は,このことのほうに想いがあります。1969年といえば,早いもので,今から54年も前のことになります。 アポロ17号が1972年12月19日に月に着陸して以来,人類は月の地を踏んでいませんが,アメリカは,2025年に再び人類を月に送ろうとしています。

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 1年のうち,ある決まった時期に星空の中のある点の付近を中心として,流れ星が多く飛ぶことがあり,この現象を流星群とよびます。中でも,ふたご座流星群,しぶんぎ座流星群,ペルセウス座流星群は「三大流星群」といわれます。
 ふたご座流星群は,毎年12月14日前後に最も活動し,ほぼ期待どおりに流れ星を見ることができますが,今年は,ちょうど新月ということもあって,観望の好機となりました。
  ・・
 このところ,さまざまな事情で,星見から遠ざかっていました。しかし,ふたご座流星群の極大期の前日である2023年12月14日の早朝は,天気がよく,最高の条件だったので,流星を見にいくことにしました。翌日が極大期なのですが,天気予報では曇りです。
 私は,流星にはさほど興味がないのですが,だれもいない深夜に星を見ることがこの上もなく気持ちがよいことに加えて,明るく美しい流れ星が見られる,というので,午前3時に家を出て,木曽川の堤防に向かいました。
 写真の1枚でも写すことができればいいや,という気持ちで,ひさしぶりのことで戸惑いながら簡易赤道儀を組み立てていたときに,ものすごく明るい流れ星が飛んで,うれしいやらがっかりするやら…。いずれにしても,着いた早々,明るい流れ星をみることができて,興奮しました。
 ネットなどにある流星群の写真の多くは,何枚もの写真の合成なので,あのように見られるのかと誤解をします。しかし,流星群といっても,実際は,流れ星がビュンビュンと飛ぶわけでもないので,期待外れになってしまいがちですが,それでも,今回のふたご座流星群は,2,3分に1個ほど,明るい流れ星をみることができて,満足しました。

 流星群は,彗星や最近まで彗星だった小惑星(=彗星小惑星遷移天体)から放出されたダストが地球の軌道と交差する場合に見られます。ふたご座流星群の母天体は,「ファエトン」(3200 Phaethon)という名前の小惑星です。
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 アメリカ,オランダ,イギリスが共同で開発された,波長12,25,60,100マイクロメートルの赤外線バンドで全天を高感度で探査することを主な目的とし,液体ヘリウム冷却の容器に収められた口径60センチメートルの望遠鏡を載せた赤外線衛星「IRAS」(Infrared Astronomical Satellite)は,1983年に高度約900キロメートルの太陽同期軌道に打ち上げられました。
 「IRAS」の画像を調査していたイギリスのサイモン・F・グリーン(Simon F. Green)とジョン・K・デイヴィース(John K. Davies)が小天体を発見し,国際天文学連合回報(IAUC=International Astronomical Union Circulars)3878で仮符号1983TB として公表されました。また,アメリカの天文学者チャールズ・コワル(Charles Thomas Kowal)が,この天体は恒星状であると報告したことで,この小天体は,彗星ではなく地球近傍小惑星とされました。1983TB は,当時知られていた地球近傍小惑星の中で最も太陽に接近する天体であることから,ギリシア神話に登場する太陽神ヘリオス(Hēlios)の息子ファエトンにちなみ「ファエトン」と命名されました。
  ・・
 その後,国際天文学連合回報(IAUC)3881で,アメリカの天文学者フレッド・ホイップル(Fred Lawrence Whipple)が,「ファエトン」の軌道要素とふたご座流星群の軌道要素が一致すると報告し,「ファエトン」はふたご座流星群の母天体だと判明しました。
 21世紀初頭時点では,「ファエトン」からは,彗星の特徴であるコマ(coma)やダストテイルなどは観測されていませんでしたが,ふたご座流星群の母天体と確定したことやスペクトル分類がB型であることなどから,現在は,「ファエトン」は,塵を出し尽くした彗星の成れの果てであると考えられています。
 コマとは,彗星核の周囲を取り巻く星雲状のガスやダストのことで,彗星が長楕円軌道の近日点近くを通過するころに太陽エネルギーにより彗星本体が温められてその一部が昇華したものです。また,スペクトル分類がB型というのは,炭素質の小惑星のことですが,B型の小惑星は,小惑星帯の外側に多く,軌道傾斜角が大きいという特徴があり,太陽系初期のころの高揮発性の物体の残りが付着していると考えられています。
 日本では,惑星間航行中にダスト(固体微粒子)の組成をその場で分析し,「ファエトン」でフライバイ探査を行う「デスティニープラス」(DESTINY+ =Demonstration and Experiment of Space Technology for INterplanetary voYage with Phaethon fLyby and dUst Science)というミッションが進められています。

 しばらくぶりに星を見て,また,やる気が湧いてきました。
 なお,来年2024年は,ふたご座流星群の極大期は満月なので,条件は最悪となります。

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 「岡山の反射望遠鏡」というのも,子供のころの私には憧れの望遠鏡でした。
 国立天文台の岡山天体物理観測所は,岡山県浅口市と岡山県小田郡矢掛町にまたがる竹林山山頂付近にあります。1960年(昭和35年)に「東京大学附属東京天文台岡山天体物理観測所」として開所し,2018年(平成30年)に観測プロジェクトが終了しました。
 現在は,国立天文台ハワイ観測所岡山分室によって管理されていて,共同研究グループによって機器の保全及び利用がなされています。

 標高372メートルの竹林寺山頂に位置しているこの場所は晴天率が高く,また,気流が安定していて,光・赤外観測にはうってつけの場所であったというのが設営された理由でした。また,標高が低いために山頂への道路等も既に整備されていたために運搬や調整などにおいて支障をきたさない点が評価されたといいます。
 私は,こんな都会に近いところに作ったらすぐに空が明るくなってしまうのに,と思ったものですが,実際行ってみると,思ったよりも山奥でした。そして,この山頂は,実際,不思議なくらい雲が切れて晴天率が高いのです。
 しかし,それでも,今は空も明るくなって,標高が高くないのは,利点というよりも,今となってはそれはデメリットでしかないようです。
  ・・
●口径188センチメートル反射望遠鏡
 主砲はイギリスのグラブパーソンズ社製の口径188センチメートル反射望遠鏡で,クーデ焦点に置かれた高分散エシェル分光器 (HIDES=HIgh Dispersion Echelle Spectrograph) を使った恒星の分光観測が精力的に行われたそうです。
 今はどうか知りませんが,私が行ったときには,ガラス越しに望遠鏡の姿をみることができました。
  ・・
●口径91センチメートル反射望遠鏡
 口径91センチメートル反射式望遠鏡は日本光学工業(現在のニコン)製の国産1号機となる大型反射式天体望遠鏡でした。
 私は一度でいいからその姿を見たかったのですが,こちらは見学ができません。

 こうした施設が作られたころは,今とは違って海外に観測施設を作るなどというのは夢のことだったので,日本国内でなんとかと工夫を凝らしたのですが,結局,日本国内で満足に天体観測ができるような場所はほとんどなかったと思われます。
 そしてまた,今となっては,ここに設置されたような望遠鏡は古く,最新の観測には役に立たなくなってしまいました。
 現在は,この地に,民間からの資金援助により,京都大学大学院理学研究科宇宙物理学教室・附属天文台,名古屋大学大学院理学研究科光赤外線天文学研究室,国立天文台岡山天体物理観測所,および,ナノオプトニクス研究所との連携研究により,国内最大の3.8メートルの新技術天体望遠鏡が建設されて,京都大学理学研究科附属天文台が中心となって国内の大学連携により共同運用がされ,突発天体や星形成領域の観測をしているそうです。 


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 「三鷹の東京天文台」と並んで,「京都大学の飛騨天文台」もまた,若いころに,飛騨天文台に口径65センチメートルの屈折望遠鏡が設置されたという写真が「天文年鑑」の表紙を飾ったときに知って,それを見にいきたくなったものです。
 そのころ,というのは,今から50年ほど前のことですが,アマチュアの使う天体望遠鏡は,口径65ミリメートルの屈折赤道儀というのがポピュラーでした。その10倍の口径の,同じような形の巨大な屈折望遠鏡が存在するということに当時の私は興味をもったわけです。

 飛騨天文台は,京都大学大学院理学研究科附属です。高山市の大雨見山の山上にあります。
 それまで,京都大学の観測拠点は,京都市の花山天文台や生駒山太陽観測所だったのですが,京都市の近代化に伴って精密観測が困難になってきたために,1968年(昭和43年)に移設されたものです。
  ・・
●65センチメートル屈折望遠鏡
 65センチメートル屈折望遠鏡は,1972年(昭和47年)に完成しました。
 飛騨天文台の安定した空気層環境で,長焦点を利用して惑星や彗星の核など,太陽系天体の精密を要する目的で設置されたということです。
  ・・
●ドームレス太陽望遠鏡
 ドームレス太陽望遠鏡は太陽研究のための望遠鏡で,口径60センチメートルのドームレス・クーデ式太陽専用望遠鏡として,カールツァイスによって製造されました。国内では屈指の大きさの太陽像を得ることができるものです。
 太陽はその表面で起こる様々な高エネルギー爆発現象の物理構造を詳細に解析できる唯一の天体で,宇宙の天体活動を理解する基盤となります。
 1979年(昭和54年)に完成したドームレス太陽望遠鏡は,地上観測で望み得る最高の空間分解能が得られるように設計されていて,高分解単色太陽像の撮影などを通して太陽活動現象のメカニズムを解明すると共に,宇宙電磁プラズマ現象の謎に迫ろうとしています。

 飛騨天文台は国立公園内にあります。一般には公開されていないのですが,見学会が行われていて,2010年(平成22年),私もそれに参加して,待望の望遠鏡を見ることができました。
 いろいろと解説してもらったうちで,この天文台が太陽観測に力をいれていることがわかったのですが,それまでは,太陽なんてまったく興味がなかったので,知識もありませんでした。説明を聞いて,太陽もおもしろいものだということを知りました。
 しかし,見学会では,65センチメートルの屈折望遠鏡の実物は見られましたが,その時点で,その望遠鏡がどのように使われているのかは説明もなく,よくわかりませんでした。実際のところ,今の時代,こうした旧世代の望遠鏡の活躍する場は限られている,というか,全くないように思いました。
 この国では,昔から東京大学と京都大学はライバル関係にあって,その内情は私にはよくわからないし,それを書くことが目的ではないから深入りしませんが,現在,東京大学の天文台は国立天文台として広く研究が行われているのに対して,飛騨天文台などは京都大学の付属施設として研究が行われているわけで,その関係が私にはよくわかりません。


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 以前,諸外国の天文台について書きました。今日からは,日本の天文台についてです。まずは,三鷹市にある国立天文台です。

 私にとって,三鷹という地名は東京天文台と同等でした。
 子供のころに見た図鑑に載っていたのは,「三鷹の東京天文台」にある(あった)大きな屈折望遠鏡と電波望遠鏡でした。子供のころの憧れというのはずっと先まで大きな影響力を与えるものです。そこにいつかは行って,実物を見てみたいものだと念願していました。
 あれから機構が改革され,東京天文台は,国立天文台となりました。そして,星が満足に見えない三鷹に,現在あるのは,日本の天文学のナショナルセンターです。かつての私の憧れの機材は,今は文化財となりましたが,私は,研究用の現役機材よりも,こちらのほうに興味があるのです。

 三鷹というところにはじめて行ったときは,落ち着いた町だなあ,という印象でした。天文台はJRの三鷹駅からはずいぶんの距離がありましたが,歩いていると,天文台のあたりは,東京外国語大学,国際基督教大学,深大寺,植物園などがあって,すばらしいところでした。
 日本において,天文台は1878年(明治11年)に本郷で東京大学観象台としてはじまり,1888年(明治21年)には東京大学東京天文台として港区麻布板倉に移されました。現在の三鷹大沢への移転は1914年(大正3年)から1924年(大正13年)にかけて行われ,その後,1988年(昭和63年)に文部省所管の「国立天文台」と改められ,国際協力事業の積極的な推進をめざし,さらに国立大学の共同利用機関として位置づけられ現在に至っています。
 今では,研究用の観測基地は世界中に広がり,三鷹はそのセンター的な役割を担っています。

 大正,昭和に建設された施設のうち現存のものは,文化財として,常時,または,期日を決めて公開されていて,見学することができます。
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●第一赤道儀室
 1927年(昭和2年)に設置されたカール・ツァイス社製の口径20センチメートル,焦点距離359センチメートルの赤道儀は,速度調整機構付重錘式時計駆動といって重力により赤道儀内の錘が下に下がることを利用して天体を追尾するものです。
 この望遠鏡では,天気がいいと黒点を見せてもらえます。私も何度も見ることができました。
  ・・
●大赤道儀室
 私の憧れだったのが,1929年(昭和4年)に設置された有名なカール・ツァイス社製の口径65センチメートル,焦点距離1,021センチメートルの屈折望遠鏡です。この望遠鏡が大赤道儀室にあります。
 現役時代は,ドームの床全体がエレベータ式で昇降するつくりだったそうですが,退役後は固定されていて,もはや,星を見ることはできません。2001年(平成13年)に「天文台歴史館」となりました。
  ・・
●太陽塔望遠鏡
 1930年(昭和5年)に建設された地上5階、地下1階建ての建物で,ドイツのベルリンにある「アインシュタイン塔」と同じ目的で建造されたため「アインシュタイン塔」といわれます。
 一般相対性理論から予見される重力効果を観測する目的で作られたのですが,重力効果を観測することはできませんでした。しかし,太陽黒点観測や太陽スペクトル観測などに成果を挙げ,1968年(昭和43年)に研究観測を終了しました。
 通常は公開されていないので残念だったのですが,幸運なことに,私は2018年(平成30年)の特別公開で内部を見ることができました。
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●太陽電波望遠鏡
 先に書いたように,私が子供のころに見た図鑑に載っていた電波望遠鏡ですが,現在は存在しません。その跡地に案内板だけが設置されています。
 一度,見たかったものです。


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☆☆☆☆☆☆
 2023年10月29日の早朝,部分月食が起きました。
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 地球の影には本影とそのまわりの半影という薄暗い部分があります。月が地球の本影に入らず半影にのみ月全体あるいは部分が入る場合を「半影月食」,本影にすっぽりと入る場合が「皆既月食」,そして,一部だけが本影に入る場合が「部分月食」です。
 なお,半影は薄い影なので「半影月食」では月が欠けているかどうかはっきりとはわからず,写真に撮るとどうにかわかる程度です。
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 今回は,部分月食なので,欠けた月を美しく見ることができました。
 また,月食のはじまる時間は,日食とは異なり,日本の違う場所から観察しても同じになります。それは,月食では,日食のように,直接太陽が月によって隠されるのとは違い,月が地球の影に入ったときが月食のはじまる時間なので,日本時間を適用する場所であればどこで観察しても同じ時刻になるというのが理由です。

 午前4時30分ごろに西の空に輝く月を見たら,すでに,左下のあたりが欠けていました。思った以上に欠けていたので,驚きました。やがて,月の欠け具合が大きくなるにしたがって,月が西の空に低くなっていって,それとともに,空が白んできました。
 また,木星が月の左上に明るく輝いていました。
 月が欠けたまま山の中に沈む姿が見たかったのですが,残念ながら,雲があって,それはかないませんでしたが,それでも,気持ちのよい明け方の空に,幻想的な姿を見ることができて,満足しました。
 なお,10月の満月は「ハンターズムーン」(Hunter’s Moon)。部分月食の日は,満月の日でもあります。 

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  以前,オーストラリアの天文台を紹介したので,今日はニュージーランドにある天文台の紹介をしましょう。
 ニュージーランドの南島の中央マッケンジー盆地にテカポ湖という星空の美しい場所があります。テカポ湖は世界一星空が美しい場所という触れ込みで,通称・世界遺産ということになっていますが,実際は,そうした名目の世界遺産はありません。実際,とても魅力のあるところですが,観光地化されてしまい,観光客が多すぎです。

 そのテカポ湖のほとりのジョン山海抜1,031メートルの位置に所在するのがマウントジョン天文台(Mount John University Observatory=MJUO)です。
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 マウントジョン天文台には口径0.61メートル望遠鏡が2台,口径1.0メートル望遠鏡が1台,口径1.8メートル「MOA 望遠鏡」が1台,観光用の口径0.4メートル望遠鏡が設置されています。
 1960年,アメリカのペンシルベニア大学が南半球での天体観測を目的とする天文台の設置を決定し,1963年にカンタベリー大学と学術間協定を帰結し天文台の共同利用とニュージーランドでの研究拠点として,1965年開所しました。
 ペンシルベニア大学の研究者が定年退職を迎えたことによりアメリカとニュージーランドの共同研究は終わりを遂げ,1975年からはカンタベリー大学付属研究施設となりました。
 1982年にアメリカ空軍が設置した地上局は閉鎖され、建物はニュージーランド政府へ移譲されました。
 1996年,日本とニュージーランドの共同研究が開始され, 2005年には観光客用の望遠鏡も設置されました。
  ・・・・・・
 日本の名古屋大学の天文台もあるのですが,聞いてみると,この天文台を使用していた教授が定年で退職してしまったので… という話でした。

 私はテカポ湖には2016年と2018年の2度行って,南半球の星空を見ることができました。
 マウントジョン天文台は,テカポ湖を見下ろす山の上にあって,お昼間は誰でも山頂まで登ることができます。天文台自体は公開されていませんが,山頂にはアストロカフェという名のカフェがあって,コーヒーを飲みながらテカポ湖の姿を見ることができます。
 夜に登るには天体観望ツアーに参加する必要があって,個人で登って星見をすることはできません。 
 テカポ湖畔は夜になると観光客が集まってくるのでけっこう光があって,私は,そこから離れたいい場所がないかと探し回ったのですが,なかなか見つけることができませんでした。
  ・・
 現地の人が,どうしてこれだけの好条件なのに,多くの天文台が建設されないのか,といっていましたが,ここは観光地すぎることと,標高が低いので,専門的な高度な天体観測にはいまいちの場所です。そこで,天文台といっても,大学のいち研究者が設立したような設備しかなく,その研究者が退官してしまうと,どうやら,その後は,置き去りにされてしまったようです。
 南半球で本格的な研究をする施設をつくるとなると,標高の高い南アメリカのアンデス山脈がその場所となるのも当然の成り行きですが,一般の人が南半球の星空を一度でいいから眺めてみたい,というときは,テカポ湖畔はよい場所でしょう。

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 年に2度ほど訪れる木曽駒高原です。普通は平日に出かけるのですが,このところ何かと忙しく時間がとれなかったのと,来週はゴールデンウィークになってしまうことと,新月の関係で,何とか時間をひねりだし,4月22日から4月23日の週末に行ってきました。
 木曽駒高原は空が暗く標高が高いから星がきれいなので,星見が一番の楽しみです。どこに行っても空の明るい日本では,おそらく,この木曽駒高原の星空が一番でしょう。もうひとつの楽しみは,ついでに信州や奥三河などの,いままで行ったことがない場所に寄ることです。今回も,これまで行くことができなかった様々な場所を訪れることができました。
 旅のことは後日書くことにして,今日は,星空について書きます。

 木曽駒高原に行ったその1週間前,4月15日に東京へ行ったときは終日雨でした。それが原因で,自他ともに認める晴れ男の私はすっかり自信をなくし,木曽駒高原もどうせ天気が悪いだろうな,とテンション低めでした。しかし,今回は車で行くので,雨であっても,星が見られないだけで,それほど問題はありませんが,もし晴れたときのことを考えて,一応,望遠鏡などの機材は車に詰め込み,出発しました。
 私の悪い予想に反して,天気予報では週末は晴れでした。私が木曽駒高原に行くときは大概晴れるのです。実際,天気予報が当たり,確かに天気がよく,気持ちよくドライブしながら,夕刻,常宿であるペンションに到着しました。到着したときも快晴で,やっと咲いた満開の桜が出迎えてくれました。
 ところが,次第に雲が出はじめて,夕食をとったころには,一面雲に覆われてしまい,こりゃだめだとすっかりあきらめて,早々に寝ました。

 夜中の午前2時過ぎに目が覚めたので,念のため,と窓から外を見ると… 何と,星がいっぱい輝いているではないですか。これには驚きました。機材は持ってきたものの,期待していなかったために何の準備もなく,慌てて外に出て,望遠鏡を組み立てたあとで,今,何が見られるのか,下調べもしていなかったのでわからず,iPadで検索するありさまでした。しかし,手ごろな彗星のひとつもないことがわかり,魚眼レンズで星空を写すことにしました。こうした空の暗い場所では,星野写真がいいのです。
 写真を撮りながら気づいたことがふたつありました。
 そのひとつは,やたらと流れ星が見られることでした。しかも,かなり明るいのです。それは,後で知ったことですが,この日が,こと座流星群の極大だったからでした。
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 こと座流星群は,4月22日ごろに極大を迎える流星群です。普段の年の流星数はそれほど多くありませんが,ときおり突発的に流星数が増加することがあります。国内では1945年に1時間あたり約90個の記録があり,海外では1922年,1946年,1982年などに流星数の増加が観測されています。
 こと座にある放射点が空高く昇る4月22日午後11時ごろから翌朝までがおすすめの観察時間帯でしょう。母天体は1861年に出現し,太陽の回りを約400年の周期で公転するサッチャー彗星(C/1861G1 Thatcher)です。
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 ふたつめは,夜が明けるのが思った以上に早いことでした。考えてみれば,というか,考えなくてもわかることですが,4月も半ばを過ぎて,夏至が近づいてきたので,午前4時には東の空が白みはじめるのです。ということで,たっぷり星見をしようと思っていたのに,わずか2時間弱で星が見えなくなってしまったのは残念でした。
 でも,望外に楽しい夜になりました。

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 このところ,やりたいことがどんどん増えてきて,ゆっくり星見に行く時間がありません。星は大概のものは見てしまったので,明るい彗星でも来ない限りは後回しです。なにせ,星雲や星団はいつ見ても同じで逃げていきませんから。とはいえ,夕暮れの「かわたれどき」と明け方の「かたわれどき」は非常に美しく,そこに惑星や月が共演すると,まことに興味深い姿を現すので,思わず見とれてしまいます。
 そんなわけで,このごろは,その時間ともなると,ほかにやりたいことがあるのにもかかわらず,近場に,三脚につけたカメラを持ちだして,そうした姿を写すことが楽しくなってきました。
 今のデジタルカメラはとても優秀なので,思った以上の写真が簡単に写せます。また,このごろは,ソフトフィルターなるものをつかうと,強い光を受けている場所ほど光が大きくにじみ星像が際立つのでこれを活用するようになりました。
 現在は,明け方の空には惑星がいないので,今日は,夕方の空,つまり「かわたれどき」に写した写真をいくつか載せることにします。

 まず,1番目の写真は2023年4月3日の午後7時5分ごろから5分間にわたって写した国際宇宙ステーションです。国際宇宙ステーションはとても明るくて,予報通りに動くので,写しやすいのですが,何度見ても感動します。ただし,長時間露出をすると空が「真っ白になってしまうので,適当な露出で何枚も写して,コンピュータで「比較明コンポジット」をしなければなりません。そこで,ところどころ軌跡が破線となっているわけで,国際宇宙ステーションが輝きを停めているのではありません。
 実は,この時期の夕刻に国際宇宙ステーションを見ることができることは知らなかったというか,気に留めていなかったのですが,4月1日に金星と天王星が近づいたのでその写真を撮ろうとして空を見たら国際宇宙ステーションが飛んでいてびっくりしました。そこで改めて調べると,4月3日にも見られることがわかったので,今度はそれを狙ったわけです。
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 2番目の写真は2023年3月24日の夜8時30分ごろに月と金星が大接近したのを旅先の佐渡島で写したものです。この日は南にいくほど月と金星は近くなり,沖縄では月に金星が隠されるという金星食が起きたので,それを見るためには,住んでいるところよりさらに北に旅するなんていうことをしていてはいけないのですが,そんなことはまったく頭になかったわけです。
 であったのに,この日,日本列島はほとんどの場所で曇ってしまったようで,私がいた佐渡島が晴れていたのが,まあ,いつものように悪運が強いというか何というか…。

 話が前後しますが,先に書いた4月1日に写した金星と天王星の写真が3番目のもので,4月3日に写したものが4番目の写真です。2日で少し金星の位置が変わっていることがわかると思います。天王星は6等星くらいなので,単独にいても,なかなかどの星がそうなのかわからないのですが,こうして,金星などの標的があると,簡単に見わけることができます。実際は3月31日に金星と天王星は最接近したのですが,あいにくこの日は曇りでした。
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 また,ちょうど同じ日に,水星が結構高く昇っていて見やすい位置にあって,雲さえなければ,これはどうでも写せるのですが,日没30分後の西の空ぎりぎりに木星があってすぐに沈んでしまうというので,なんとかこれが写せないものかとトライしてみたのが,5番目と6番目の写真です。結論からいえば,がっかりでした。明け方ならこの条件なら見ることができたと思うのですが,どうしても夕方はまだ街灯が明るく,また,春は空が濁っているので難しいのです。
 いつも書いているのですが,見えなければ見えないということがわかったことが意義のあることなので,それはそれで満足できます。

 そんなわけで,日々,さまざまな条件で見え方が違うのを確認するのは楽しいことです。
 こんなことをしているから,いつも,やりたいことだらけになってしまうのですが。

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 数年に1度,肉眼でも見える彗星が地球に接近します。条件がよいと,長い尾を引いた美しい姿を見ることできます。今日の1番目から3番目の写真はこれまで私が写した大彗星の写真です,1番目は百武彗星(C/1996B2 Hyakutake),2番目はヘール・ボップ彗星(C/1995O1 Hale-Bopp),そして,3番目はネオワイズ彗星(C/2020F3 NEOWISE)です。

 今回は,2023年2月22日に発見された紫金山・アトラス彗星(C/2023A3 Tsuchinshan-ATLAS)が2024年9月末に太陽に0.4天文単位まで接近し,0等まで明るくなる,といううれしいニュースが飛び込んできました。
 私は,不快になるだけなので,マスコミや口コミなどの情報はすべて遮断しています。そこで,自分に必要な情報は,公式のものをインターネットから手にいれていますが,この情報は,2月28日の「CBAT」(=The Central Bureau for Astronomical Telegrams)#5228 が発信したものです。
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 小惑星地球衝突最終警報システム「ATLAS」(=Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System)では,全天を24時間カバーするために,110メガピクセルCCDアレイカメラを搭載した口径50センチメートル f/2のライトシュミット望遠鏡が世界中に8台あって観測を行っています。そのうち,南アフリカのサザーランド(Sutherland)にある南アフリカ天文台(South African Astronomical Observatory=4番目の写真)に設置した望遠鏡が2月22日に撮影したCCD画像から彗星を発見しました。
 中国の紫金山天文台(=5番目の写真)でそれ以前の2023年1月9日に撮影した写真に同じ天体が写っており,特定できたので,この名前がつけられました。
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 その後の観測で,彗星の軌道が明らかになって,いつ見ることができるかわかったので,今日はそれを紹介します。

●2024年5月末から7月25日ごろ(下から5番目の星図)
 5月末にには彗星は10等星くらいの明るさになって,夜,太陽が沈んだあとの西の空,おとめ座からしし座にかけて移動する彗星を確認できるようになります。
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●7月末から9月末
 地球から見たとき,彗星は太陽に近づくために2か月の間,彗星を見ることができなくなります。
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●9月27日ごろから10月5日ごろ(下から4番目の星図)
 彗星は,明け方午前5時くらいに,太陽が昇る寸前の東の空低く,うみへび座に1等星から0等星の明るさで現れるのですが,高度が非常に低く,どのように見ることができるかはわかりません。
 彗星が大化けすれば,ひょっとして,ものすごく明るい彗星が薄明の中で確認できるかもしれません。
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●10月6日ごろから10月10日ごろ
 見かけ上,再び彗星は太陽に近づくので,見ることができなくなります。
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●10月11日ごろから(下から3番目から1番目の星図)
 彗星は日没後の夕方の西の空に,非常に明るい状態で見えるようになります。はじめは地平線ぎりぎり,次第に高度を上げてかみのけ座からうしかい座へ動いていき,ずっと見ることができるようになりますが,光度は下がり,暗くなっていきます。

 今のところ,このような感じだと思われますが,最も明るい時期に見ることができないとはいえ,10月11日を過ぎると,長い尾を引いた鮮やかな姿を見せてくれることでしょう。
 来年が楽しみになってきました。

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 このところ,夕方の西の空で木星と金星が見かけ上どんどん接近していて,昨日2023年3月2日に離角が0.5度まで最接近しました。月の視直径(見かけの大きさ)も0.5度ほどなので,月の大きさ程度です。
 これを楽しみにして,連日写真を写していたのですが,当日の天気だけが心配でした。その前の日3月1日に前線が通過して,それまでのポカポカ陽気が一変して冬のような天気に変わり,そうなると,西の空に雲が出るので,見ることができるかな? と不安だったのですが,幸い,晴れ上がって,幻想的で美しい姿を見ることができました。
 今日の写真は,1番目のものが30ミリほどの広角で写したもので,ねらいどおり走っている新幹線も入れることができました。そして,2番目のものが,ここ3日載せたものと同じ300ミリで写したものなので,ここ3日間,次第に近づく様子を比べることができることでしょう。

 木星と金星が,見かけ上接近して見える現象自体はさほど珍しいものではありませんが,夕方,つまり,金星が宵の明星のときに木星が最接近した離角が0.5度以下であり,太陽が沈んで空が暗くなった30分後に高度が20度を超える見やすいものが起きたのは,実に8年ぶりのことでした。前回見ることができたのは,2015年7月1日で,日没30分後の高度は21度,木星と金星の離角は0.4度でした。しかし,このときの天気を調べてみると,やはり,梅雨末期で,全国的に雨だったので,実際は見ることはできませんでした。
 また,明け方,つまり,金星が明けの明星のときは,最接近した離角が0.5度以下であり,太陽が昇る30分前に高度が20度を超える見やすいものが起きたのは,ここ20年以上ありませんでした。条件を少し甘くして調べ直してみると,2015年10月26日は晴れで,高度は35度もありましたが,離角は1度も離れていたので,見栄えがしなかったし,2022年5月1日は雨だったので,離角0.25度,高度13度でしたが,見ることができませんでした。
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 そのようなわけで,ある意味,とても珍しい現象を,雲のない夕方の西の空に見ることができたのは幸運でした。
 このような天体現象は,文字で読んだりイラストを見るよりも,実際に見てみると印象がまるで違い,とても美しく,おもわず見とれてしまいます。特に,この季節は空が澄んでいるので,晴れさえすれば,「かわたれどき」の夕焼けの空に明るい星が浮かび上がるので,それはそれはすばらしいものでした。

 なお,2月28日には,月が火星と接近しました。これが今日の最後の写真です。以前にも書いたことがありますが,月と惑星の接近は月が明るすぎて,うまく写すことができません。月の模様を写せば露出が不足して火星が写らず,火星を写せば月が露出オーバーとなってしまいます。

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 このところ,星見にあわただしく過ごしています。とはいえ,何事もさら~っと片づけたいと思っている私は,惑星や月がきれいならばすぐにカメラと三脚を持ち出して写真を写し,彗星が明るければ近くの暗いところに出かけて望遠鏡を組み立てて写真を撮ってくる,といったことを短時間ですまそうと考えているのです。それは,星見に限らず,旅行でも同じです。行きたいと思ったら躊躇せずサッと出かける。わざわざ,ということをしたくないのです。

 このところ明るくなったZTF彗星(C/2022E3)ですが,そろそろ月が明るくなって,彗星も全盛期を過ぎていくので,これが最後と,2023年2月1日の早朝,写真を撮りにいきました。もう月の影響が強く,沈むのが午前4時過ぎになってしまったので,その後の30分程度が勝負でした。
 遠出をしたくなくなったこの時期に出かけている近くの場所は,着いてみたらめずらしく先客がいたので,少し場所を変えることにしました。寒空の下,私以外にモノ好きがいるのだなあと感心しました。星見というのは複雑な楽しみで,人と交わりたくないのです。私は釣りをしませんが,釣りの場合はどうなのでしょう?
 望遠鏡を組み立てたときは,3番目の写真のように,まだ,西の空に月が幻想的に輝いていたので,沈むのを待つことにしました。月の光が川に反射してとてもきれいでした。この日はおそらく彗星が最も明るくなるころなのですが,調べてみて驚きました。前回写したのがわずか数日前だったのに,位置がずいぶんと変わっていて,つまり,彗星が動いていて,きりん座にいたからです。きりん座という地味な星座には明るい星がありません。前回はこぐま座にいたので,明るい星を手掛かりに簡単に見つけることができたのですが,これには困ったな,と思いました。私は,お金をまったくかけないので,というか,余分なものを一切もたないので,自動導入装置などはありません。
 しかし,案ずるより産むがやすし,というか,彗星が明るかったので,双眼鏡を使うと簡単に見つかりました。そこで,頭の中に双眼鏡で見た北極星から彗星までの星の並びを覚えて,それを手掛かりに望遠鏡のファインダーで彗星を導入しました。今回は30秒露出を30回行って,家に帰ってからコンピュータでメトカーフコンポジットしました。それが今日の1番目の写真です。

 せっかくなので,もうひとつ別の彗星を写すことにしました。それがパンスターズ彗星(C/2022 A2)です。この彗星もすでに前々回に写したのですが,今回は複数枚写してコンポジットすることにしました。こちらもまた,位置を調べてみて驚きました。前々回よりずっと高度が下がり,しかも,街明かりのある東の空に埋もれていました。なんとか位置を決めて写したのですが,カメラのプレビューを確認しても,確かにその位置に彗星があるはずなのに,一見,彗星状の天体が写っていません。よくよく探すと,実は思ったよりずっと小さいのでした。何とか確認して数枚写しました。それが今日の2番目の写真です。
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 パンスターズ彗星(C/2022 A2)は2022年1月10日に20.5等星で発見された彗星です。名前のとおり,ハワイ・マウイ島ハレアカラ(Haleakala)にあるハワイ大学の1.8メートルPan-STARRS2 望遠鏡を使用するパンスターズ・プロジェクトの大規模の天体捜査網で得た画像から発見されたものです。
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 ところで,以前書いたことがありますが,「かわたれどき」(彼は誰時)ということばがあります。人の見わけがつかないから「彼は誰」時なのですが,はっきりものの見わけのつかない薄暗い時刻のことを意味することばで,万葉集の時代からあります。一方,2016年の映画「君の名は。」で「かたわれどき」ということばが生まれました。それ以来,「かたわれどき」は夕暮れどきや夕方のことを指し,「かわたれどき」は明け方や朝方を指しているとされるようになりました。
 「かわたれどき」と「かたわれどき」。私は,何にも増して,このころの空の美しさが最高だと思っていますが,特に,その空に,水星や金星,さらに,薄い月が輝いていればもっときれいです。
 1月31日の「かわたれどき」には西方最大離角を終えたばかりの水星が高い高度で輝いていたので,これを朝6時前に写したのが今日の6番目の写真です。また,この日の「かたわれどき」のころから輝いていたのが月と火星でしたが,さらに少し時間が遅くなって空が暗くなると,そのバックにあるヒヤデス星団とプレアデス星団がかろうじて見えるようになりました。しかし,なにせ月が明るすぎるので,これをはっきり写すことができないのです。それは,露出をかけると月がどんどんと大きくなってしまい,その影響で空全体が明るく星が消えてしまうし,露出少ないと月の表面の模様ははっきり写りますが,今度は星が写りません。人の目には月の表面の模様も星団も両方見えるのが私には不思議です。そんな中,なんとか露出の塩梅を見つけて写したのが今日の7番目の写真です。
 まだまだ寒い毎日ですが,晴れていれば,このように,夜空にはこんなにたくさんのときめきがあるのです。

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