しない・させない・させられない

Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.

USA50州・MLB30球場を制覇し,南天・皆既日食・オーロラの3大願望を達成した不良老人の日記

カテゴリ: 写真

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【Summary】
I purchased a printed guidebook for the Nikon Z50 II, which, though identical in content to the free digital version, is more convenient for me. With 796 pages and a 3 cm thickness, it rivals a dictionary. While daunting, this detailed manual embodies Nikon's dedication, rarely found in other brands.

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 前回書いたように,ニコンZ50Ⅱの詳しい説明書である活用ガイドの冊子版を購入しました。内容は,無料でダウンロードできる電子版と同じですが,電子版では不便なので,高価な冊子版を手にすることにしたのです。
 届いたものを見て,改めて驚きました。それは,ページ数が796ページあるので,本の厚さが何と3センチメートルと,辞書くらいもあったからです。他のメーカーには,こうした書籍は存在するのでしょうか? おそらく存在しないと思います。そこで,これだけ詳しい冊子が存在するというのが,武骨なニコンの良心ともいえます。ニコンのカメラの愛好者はこういうところにも惹かれるのでしょう。しかし,こうしたこことは,ほとんど知られていません。
 それにしても厚い。とはいえ,800ページ足らずです。調べてみたところ,ニコンZ9に至っては1,053ページにもなります。

 車もスマホもコンピュータも,そして,カメラも,今や,ものすごい性能です。しかし,カタログなどに載っているスペックを見るだけで,ああだこうだと言ったり,書き込みをしたり,あるは,雑誌の特集などで比較しているものは多いのですが,その多くが,実際に使っているのかな,と疑問に思うことが少なくありません。それは,検査結果だけを見て診断する医者とか,成績だけで進路指導をする教師と同様です。そこには最も大切なことが抜けています。
 私は,若いころは,ろくに説明書も読まず使っていたことが多いのですが,それでは私の手元にやってきた道具に申し訳ないと思うようになってきました。それは,旅でも同様で,訪ねた地の歴史とかさまざまな風土を知らずに感想を語っているようなもので,そうしたことを詳しく知ると,魅力が増すのです。

 これを操作しながら読んで理解しようとすると,どれだけの時間がかかるのか…。楽しみでもあり,大変でもありますが,やはり,電子版では不便なので,こうしたものがあると,とても助かります。私が古い人間だからなのでしょうか? 
 というわけで,時間を見つけて説明書を読んで,自分ができることを工夫していきたいものだと,この分厚い本を目の前に誓ったことでした。


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【Summary】
After initially struggling with short battery life on my Nikon Z50 II, I contacted support and learned that a setting was causing the issue. After adjusting it, battery performance improved significantly, allowing me to take around 300 photos. I realized that mastering such a complex camera requires time and effort, so I plan to keep learning to make the most of its capabilities.

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 発売日に購入したニコンZ50Ⅱを使いはじめました。そのとき
  ・・・・・・
 ニコンZ50Ⅱで,(ニコンZ50と)同じような使い方をしていたら,あっという間に残量表記が2目盛りになり,さらに,1目盛りの赤色になりました。しかし,一度電源を切ると,1目盛りが3目盛りに復活したりするので,訳がわかりません。実際のところ,どれだけバッテリーが持つのか,使い切っていないのでさっぱりわかりません。そして,不信感が残りました。バッテリー表示は正確なのか? これは個体差なのか? それとも?…。
  ・・・・・・
と書きました。

 以前なら,家の近くにカスタマーセンターがあったので,そこへ出かけて聞いてみるのですが,閉鎖されてしまったのでそれができません。そこで,ホームページから会社にメールで問い合わせてみると
  ・・・・・・
 SnapBridgeをご利用の場合は,「ネットワークメニュー> 「スマートフォンと接続」内にある「電源OFF中の通信」の設定をご確認いただき, 「する」にセットされている場合は,「しない」にセットして動作をご確認くださいますようお願いいたします。
  ・・・・・・
というていねいで詳しい回答をもらいました。
 そんな次第だったので,その回答のように設定を変えて,再び,名古屋市の東山動植物園へ出かけて,写真を撮ってきました。今度は,300枚程度写してみたのですが,バッテリーの持ちは格段に改善されて,300枚程度写したところで,やっと残量表記が2目盛になりました。

 以上の結果から,私の抱いていた「バッテリーの持ちが悪いのか?」という疑問は,カメラの設定の問題であったことがわかりました。これで,安心して使用できることになりました。
 いずれにしても,これだけ多機能のカメラを使いこなすのは容易なことではありません。何せ,説明書も800ページ近くあるし,これを読破しないと,そもそも,自分がどういう設定で写すのがいいのかさえわからないのだから,せっかくの高性能カメラも,宝の持ち腐れ,となってしまいます。
 それではニコンZ50Ⅱくんが気の毒なので,これから,いろいろと勉強して,私の手元にやってきたニコンZ50Ⅱくんを活躍させてやりたいと思いました。そうそう,活用ガイドという詳しい説明書がpdfファイルだけでなく,冊子として出版されました。かなり高価ですが,購入することにしました。

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【Summary】
I initially planned to trade in my Nikon Z50 after buying the Z50 II, but changed my mind due to its larger size and shorter battery life. Despite minor issues with the Z50, it works well for regular use. The Z50 II lacks a physical manual, offering an 800-page PDF instead, which is difficult to navigate on an iPad. Digitalization without searchable features or a better index makes finding necessary information challenging. Enhanced usability, like database functionality or interactive search and links, is needed.

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 はじめは,ニコンZ50Ⅱを購入したらニコンZ50を下取りに出すつもりだったのですが,気が変わりました。それは,思ったよりもニコンZ50Ⅱが大きかったことと,バッテリーの持ちが悪い? ことです。
 すでに書いたような,私の思うニコンZ50の欠点のうち「②⊕⊖ボタンが画面モニターにあって,独立したボタンでない。 ③リモートコード(従来のレリーズ)がない。」は,星を撮るようなときに問題になるだけで,「①接眼目当てDK-30がすぐ外れる」以外は,普通に使用するには何の問題もありません。また,「①接眼目当てDK-30がすぐ外れる。」については,接眼目当てを両面テープで固定すれば外れることもありません。
 ということで,結局,ニコンZ50にNIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRをつけたもののほうが,使い勝手がいいので,下取りには出さずこれからも使い続けて,主に,旅行に持っていこうと思うようになりました。そして,ニコンZ50Ⅱはマウントアダプター FTZ IIをつけておいて,AF DX Fisheye-Nikkor 10.5mm f/2.8G ED,AF-P DX NIKKOR 10-20mm f/4.5-5.6G VR,AF-P DX NIKKOR 70-300mm f/4.5-6.3G ED VRを使用するときの2台持ちか,あるいは,星を写すときなどに使用することにします。

 ところで,ニコンZ50Ⅱには説明書がついておらず,ニコンのサイトからpdf版の説明書をダウンロードすることになっています。これは,近ごろの他の製品と同様です。
 デジタル化については問題ないのですが,pdf版の説明書を見てみると,800ページほどもあって,ニコンZ50の500ページの1.6倍あります。これだけの分量を読むのは大変です。カタログには,〇〇ができる,などといろいろ書かれてあるのですが,カタログのようにするには,ずいぶんな勉強が必要です。
 とはいえ,pdf版を iPad で読むのには,ずいぶんと使い勝手が悪いのです。せっかくデジタル化してあっても,単に本にする予算を削って pdfファイルになっているだけで,デジタル化の利点がまったく活用されていません。外出時に参照できるように iPhone の中にマニュアルを入れてあったとしても,そこから必要な情報を探し出すのは不可能に近いのです
 これでは,この中から自分に必要な情報だけを取り出すのが大変です。せっかくデジタル化してあるのなら,その中から自分に必要な部分だけを取り出すことができるようにデータベース化しなければ意味がありません。
 もっとわかりやすい目次などを作るか,検索窓をつけて,そこからリンクできて,必要な情報がすべて見られる,あるいは動画がある,といった工夫が可能なのではないかと思います。

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【summary】
After purchasing the Nikon Z50 II, I tested it at Higashiyama Zoo and Botanical Gardens. Despite my satisfaction with its predecessor's battery life, the Z50 II's battery drained quickly, raising concerns. I now feel the need to carry spare batteries and a USB Type-C mobile battery, which is inconvenient.

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 ニコンZ50Ⅱを購入した数日後,名古屋の東山動植物園へ試し撮りに行きました。
 実は,私は,ニッコールZレンズは,NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRしか持っていません。それ以外の画角が必要なときは,マウントアダプター FTZ IIで,AF DX Fisheye-Nikkor 10.5mm f/2.8G ED,AF-P DX NIKKOR 10-20mm f/4.5-5.6G VR,AF-P DX NIKKOR 70-300mm f/4.5-6.3G ED VRを接続して使っています。ニッコールZレンズでこれに代わるものがないことと,私にはこれで十分だからです。
 今回は,このうち,AF-P DX NIKKOR 70-300mm f/4.5-6.3G ED VRを使いました。

 レンズは,画質がどうのこうの,といわれるのですが,特に大きく引き伸ばすこともないので,私には違いがよくわかりません。それよりも,大きくて重いのが苦手です。
 また,近ごろは,オートフォーカスがどうのとか露出がどうのとかいうスペックが話題になりますが,私のように,50年も前からカメラを使っていると,その当時はもちろんオートフォーカスもないし,露出もまた,自分で露出計を見ながら工夫していたから,焦点を合わせるとか露出を合わせるといったことは,むしろカメラを使う人間の腕次第だろうと,根本的には思ってしまいます。特に,プロのカメラマンがそういうことを言うのは情けなくなります。

 さて,それはそれとして,私が長年使っているニコンZ50のバッテリーの持ちが悪いというようなことが書かれたネットの記事があるのですが,私はそうは思いません。すごくバッテリーの持ちがいいです。特に,EN-EL25aは,1日中使ってもバッテリーを変える必要があったことがないのです。
 そこで,ニコンZ50Ⅱで,同じような使い方をしていたら,あっという間に残量表記が2目盛りになり,さらに,1目盛りの赤色になりました。しかし,一度電源を切ると,1目盛りが3目盛りに復活したりするので,訳がわかりません。実際のところ,どれだけバッテリーが持つのか,使い切っていないのでさっぱりわかりません。そして,不信感が残りました。バッテリー表示は正確なのか? これは個体差なのか? それとも?…。
 こんなにバッテリー表示に信用がないのなら,突然,動かなくなると困るから,今後は,予備のバッテリーとともに,ニコンZ50Ⅱで新たにUSB Type-C端子になったことで使えるモバイルバッテリーさえも持参する必要があるようです。これはかさばるなあ,とかなりショックでした。

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【Summary】
I upgraded from the Nikon Z50 to the Z50 II, released on December 13, 2024, as it addressed key shortcomings like the DK-30 eyecup detaching and lack of a remote release. While improved, it’s larger, partly for better video capabilities, which I don’t need. first, I took the Moon. Initial impressions were positive.

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 私は,何事も,自分に必要な機能さえあれば,それで十分です。
 そこで,カメラは,プロの写真家でないし,そんな腕もないので,小さくて,使いやすければそれでいいと思っていて,現在は,ニコンZ50を使い続けています。
 このカメラは小さくてとても便利なのですが,いくつかの欠点があります。それらは
  ・・・・・・
①接眼目当てDK-30がすぐ外れる。
②⊕⊖ボタンが画面モニターにあり液晶を押すことになっていて,独立したボタンでない。
③リモートコード(従来のレリーズ)がない。
  ・・・・・・
ことで,それ以外は満足していました。
 2024年12月13日に,ニコンZ50の後継機であるニコンZ50Ⅱ」が発売されました。
 上記に書いた欠点がすべて改善されるということだったので,早速,予約開始日に予約して,発売日に手に入れることができました。

 2024年にニコンから発売されたカメラはニコンZ6Ⅱの後継機であるニコンZ6ⅢとこのニコンZ50Ⅱの2機種でした。ニコンZ6Ⅲは持っていないので,本当のところはよく知らないのですが,書かれてあるものを読むと,性能はよいものの,ニコンZ6Ⅱユーザーが待ち望んていたものよりもオーバースペックでしかも高価格だったから,ニコンZ6Ⅱユーザーには期待外れだったということです。
 ニコンZ50Ⅱを手にして思ったのは,こちらもまた,ニコンZ6Ⅲと同じような位置づけで,ニコンZ50からずいぶんと性能がアップしたものだなあ,ということでした。しかし,ニコンZ6Ⅲのように高価格でなかったために,評判は上々のようです。
 メーカーは,それを知ってか知らずか,ニコンZ6ⅡはニコンZ6Ⅲ発売後も併売していますが,ニコンZ50はニコンZ50Ⅱの発売に伴って旧製品となりました。おそらく,この違いが,ニコンの考えているニコンZ6ⅢとニコンZ50ⅡのニコンZ6ⅡとニコンZ50のアップグレードに対する位置づけの違いなのでしょう。つまり,ニコンZ6ⅢはニコンZ6Ⅱの後継機ではなく,別グレードのカメラなのですが,すでにニコンZ9,ニコンZ8,ニコンZ7というカメラがあって隙間がなく,つける型番がないから,やむを得ずニコンZ6の名を引き継いだようなのです。

 はじめに写してみたのが月でしたが,上々でした。
 私の第一印象は,思ったよりも大きかった,ということでした。この大きさの増加の理由は,動画の性能がアップしたことで,断熱の必要があったというのが理由だそうですが,それでは,長時間の動画を撮らない私には,オーバースペックでしかないということになります。まあ,それは,単に私の問題です。
 後日,名古屋の東山動植物園に持っていって,試し撮りをしてみました。その感想は,次回。

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 近ごろ,2020年12月に行われたNHK交響楽団の公演で,諏訪内晶子さんがヴァイオリンを弾いたベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を録音したものをしっかり聴き込んでいて,私はえらく感動しました。
 いつもクラシック音楽を聴いているのに,何を今更… という感じで,おのれの愚かさが身にしみました。その原因は,私のクラシック音楽とのつき合い方にあるのでしょう。「ながら」が多く,聴き込んでいないのです。また,楽器の弾けない私は,自分の弾くという経験に照らし合わせてプロの演奏を聴くことができないのです。
 そんな私でも,しっかり聴き込んでみると,このときの演奏は,すごい,としかいいようがなく,今になって,諏訪内晶子というヴァイオリニストがいかにすばらしいかが,やっと理解できました。それは,はじめから終わりまで音程がしっかりしていてまったくぶれないし,音の強弱がきちんとしているし,それでいて,とても音色が,特に高音がとても美しく張りがあり,しかも,演奏に主張があって,オーケストラを引っ張るのです。そういう人だからこそ,優れたヴァイオリンであるグァルネリ・デル・ジェズ「チャールズ・リード」("Charles Reade" Guarneri del Gesù)を弾きこなすことができるわけで,ヴァイオリンを習いはじめたばかりの幼児が弾いたところで楽器が泣きます。
 とにかく,何事につけ真のプロはすごく,真のプロだからこそ,優れた道具が生きるのです。

 前置きが長くなりました。今日は,ヴァイオリンではなく,カメラです。
 楽器と同じように,カメラもまた,プロの仕様に耐えるニコンZ9のような機材は,真のプロでなければそれを使いこなすことはできないのです。私は真どころか偽のプロでもないので,当然,ニコンZ9は使いこなせません。しかし,このカメラはとても評判のよいカメラなので,そのどこがすごいかを知りたくなりました。カタログを読んでも私には謎で,まったくわかりませんでした。
 今回,ニコンZ50を購入して使ってみて,それと比較して,やっと,どういうことなのかがわかってきました。
 そこで,今日は,ニコンZ9のどこがすごいか,というお話です。
  ・・・・・・
●圧倒的なAF性能
 「すばやく被写体を認識し,一度つかんだらその後も追従していく性能は他のカメラとは全く比べ物にならないレベルなので,ピントはカメラに完全に任せることができる」といううたい文句は,動的なものを失敗なく撮る必要があるプロのカメラマンには非常にこころ強い味方でしょう。なにせ,カメラがディープラーニングをして,カメラマンが何を写したいかを判断するというのですから,すごいものです。
 さらに,「3D-トラッキング」という,撮影者が選んだフォーカスポイントで被写体にピントを合わせると,あとは,シャッターボタンを半押ししている間,構図の変化に合わせてフォーカスポイントを自動的に切り換えてピントを合わせ続けるという機能がついています。
 これらは,ニコンZ50で口惜しい思いをしている私には,うらやましい機能です。
●EVF「Real-Live Viewfinder」
 「「Real-Live Viewfinder」と名づけられたファインダーは,景色の遅延が無いといってもよほどのレベルで,連写をしてもブラックアウトフリー。また,新画像処理エンジン「EXPEED7」で,連写やAFなどカメラ全体の性能アップに繋がっている」というのは,私がニコンZ50 でとっさのときに起動のタイムラグが問題と,前回書いた,ミラーレス一眼最大の欠点を凌駕するものです。
 さらに,「プリキャプチャ」機能といって,シャッターチャンスを逃しても,シャッターを全押しした1秒前までさかのぼって記録ができるというものもついています。
●メカシャッターレス
 「Nikon独自のイメージセンサーは,高速読み出し,ローリングシャッターによる歪みをほぼゼロに。そして,メカシャッターがなく,電子シャッターのみなので,シャッターの耐久回数が存在せず,シャッターのトラブルとは無縁」というのは,カメラの信頼性に直結するわけです。ミラーレス一眼では光を直接受光体が受け止めるわけだから,ミラーの必要な一眼レフカメラとは,本質的に異なっているわけだから,耐久性に問題のあるメカシャッターは必要がないのです。
●4軸チルト式画像モニター
 「縦構図にカメラを構えてもモニタが上下に動かせるので,ハイアングルやローアングル撮影が容易」というのは,私の使っているニコンD5300のバリアングル式とZ50のチルト式の両方の欠点を克服しています。
●最大で6.0段分の手ブレ補正
 「望遠撮影や低速シャッタースピードでの静止画撮影,動画撮影の手振れの影響を効果的に補正」。いくら構図のよい写真を写しても手振れをしているとあとでがっかりです。
●ファイルサイズが1/3となる「高効率RAW」
 「毎秒20コマの高速連写が可能で,かつ,画素数を低下させれば毎秒120コマの超高速連写ができるが,RAWは極めて高効率」というのは,動きのある被写体を写すにはこころ強いものでしょう。
●動画カメラを超える動画性能
 「8Kで2時間超えの撮影が可能であり,十分な熱対策」。これまで,一眼レフカメラの動画撮影は機材が熱をもつために30分が限界で,これでは,超時間の動画を撮る必要がある場合,一眼レフカメラは,機材としては不満でした。
  ・・・・・・
 このようなことは,カタログに書かれてあっても,それがどういうことなのか,いまいちよくわかりませんでした。それが,実際,私がニコンZ50を使ってみて,ニコンZ9のこうした特徴が,どういうことを意味しているのかが理解でしたというわけです。つまり,このカメラは「何でもあり」だったのです。
 これらのほとんどは私には無縁の高性能であり,使いこなせないものばかりですが,プロのカメラマンが何を求めているのか,そして,それが反映されているのかがよくわかるようになりました。そこで,カメラ店に出かけて実際に触ってみたのですが,私の第一印象は,残念なことに「重い」「大きい」だけでした。

 巷のスペック好きのハイアマチュアとか,カメラおたくのなかには,このようなカメラの高性能を理解ができない人もいるのでしょう。しかも,そうでありながら,そういう人ほど,いろいろと批評をするから,メーカーにとってはいい迷惑に違いがありません。
 このことは,その道のプロでもない人が国務大臣をやっていい加減なことをいっているのに何かダブりますが,国務大臣の発言は,国の存亡がかかっているからより深刻であり,罪が重いのです。それは何ごとにいえることで,専門家でもないのに,単に聞いたことを書くいい加減なマスコミの記事やら,その道のプロでもないのに,政権の覚えめでたく有識者として無責任に軽率に批評をしたりコメントしたりする,自称専門家にも通じます。そのことが容易にわかるのが,将棋の解説です。藤井聡太竜王の将棋を解説してみれば,その棋士が真のプロなのかそうでないのかは容易にわかります。
 私は,プロの演奏やプロ用の機材とは何かを調べてみて,自分の愚かさが身にしみました。

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 私が欲しいのは,気楽に旅行に持っていくことができる邪魔にならない大きさで,しかも,不自由なく一応何でも写すことができるカメラです。
 プロのカメラマンでもないし,腕がいいわけでもないし,何かのコンテストに出すとかいうこともまったくないし,人と競うということもないし,あくまで自己満足と暇つぶしなので,高性能のカメラが多く発売されていても,それらはすべて,あの大きさと重さでは私には必要がありません。
 中でも,ニコンZ9はとても評価の高いカメラですが,私の選択肢には入りません。また,ニコンZ6Ⅱですら大きすぎるのです。私には,多くの人が通常だと思っているサイズのカメラでも手に余るのです。
 また,レンズ交換も頻繁にやりたくないので,多少性能を犠牲にしても高倍率ズームがいいし,とはいえ,馬鹿でかいものは要りません。
 さらに,新製品が出るたびに買いだ買いだという人もあり,実際に買い替える人もいるのでしょうが,私にはそういった趣味も物質欲もまったくなくて,多少時代遅れになろうと古くなろうと,愛着をもってできるだけ長く使いたいのです。
 それは,お金があるとかないとかいうことではなく,前にも書きましたが,100万円あったとしたら,カメラやレンズを買うより,3回海外旅行がしたいというのが私の価値観だからです。

 私がこれまでずっと使っていたカメラは,まずはニコンF3/TとニコンFMだったのですが,カメラがデジタル化になってフィルム代もバカにならないので使わなくなりました。その後は,ニコンJ3とニコンD5300だったのですが,ニコンJ3は大きさはよかったのですが,ピントの手動調整が即座にできないというように,写したいものが写せるカメラではなかったので,今回,引っ越しを機に断捨離をして,3台あったニコンJ3と交換レンズはすべて処分してしまいました。2台あるニコンD5300は使いやすいので手もとに残りました。
 そして,ニコンF3/T,ニコンFM,ニコンJ3を下取りに出した代わりに,久々に購入したのが1台のニコンZ50でした。それに加えて,今日の1番目の写真のように,FTZⅡというマウントアダプタを購入したのですが,それは,以前から持っていたFマウントのズームレンズと対角魚眼レンズを活用して,カメラ1台とレンズ3台で写したいものはすべて写そうと考えたからです。
 しかし,使いこなすにはそれなりに工夫が必要でした。今回は,その悪戦苦闘について語ります。

 私が写したいのは,日の出や夕暮れの写真,動いている列車が風景に入っている写真,飛んでいる鳥が風景に入っている写真,花がうまいこと何らかの景色に溶け込んでいる写真,さらには,特別に望遠鏡で写すのではなくて,手持ちで月や惑星が何らかの媒体と一体となっている写真などで,これらはスマホではうまく写せないものです。
 しかし,カメラの機能が多すぎて,カタログを見たり,説明書を読んでいてもさっぱり理解できないので,実践あるのみとばかり,散歩に行く際にカメラを持参してあれこれ設定を変えては試しているのですが,なかなかうまくいかないのが現状です。
 その理由のひとつ目は,メニューが多すぎるということです。ふたつ目は,ミラーレス一眼では,電源をONにしてからカメラが起動するまでのタイムラグが馬鹿にならない,ということですが,こちらのほうが大問題でした。
 そこで,今度は,以前のように,ニコンD5300にズームレンズをつけて写してみました。
 ニコンZ50を持ち慣れた今となっては,ニコンD5300さえ大きく,というか,肉厚に感じたのですが,先に書いたふたつの問題点がすべて解決するのに驚きました。つまり,ひとつ目のメニューについては,ニコンD5300程度の設定であるのが私には適切だったのです。つまり,わかりやすいです。どおりで,これまで,カメラの説明書などほとんど読んだこともないのに問題なく使っていた理由がわかりました。ニコンZ50のメニューの多さが私の理解できる能力を超えていたのです。
 何でもできるということと使いこなせるということは違うのです。
 ふたつ目のタイムラグについては,従来の一眼レフはファインダーが実像だから,当然ですが,電源が入っていなくても像が見えるのでストレスがなく,スイッチを入れてから像が見えるまでのライムラグがありません。写したいと思ったときにシャッターが切れる。これが実に快適なのです。だから,飛んでいる鳥とか,急に現れる列車のように,とっさに写真を写そうとするときは,はやり,このほうがずっと便利なのでした。
 だったら,ニコンD5300 だけでいいではないか,ということになるのですが,問題はレンズです。ニコンZ50とともに購入したズームレンズNIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRが大きさといい性能といい申し分なく,従来のNIKKOR DX 18-140mm f/3.5-5.6G ED VRではサイズも大きすぎ,また,機能的にも使いづらく,これに代わる代われないのです。

 結局,従来の一眼レフもミラーレス一眼も,それなりの長所があるということを再認識しました。
 メーカーもそんなことは当然知っているので,ソニーの悪影響? のおかげと,例のごとく,マスメディアのあおりのおかげで,消費者がミラーレス一眼になびいてしまっているのを口惜しく思っていることでしょう。なにせ,いいものであっても売れなければ仕方がありません。
 なお,次回書きますが,ニコンZ9では「Real-Live Viewfinder」という機能が搭載されていて,ふたつ目の弱点が克服されているようですが,このことはまた次回。

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ISS.

若田光一さんが降りたばかりの国際宇宙ステーション。
昨晩の夕方は火星を巻くように飛んでいきました。
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 先日購入したニコンZ50とNIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRは,私には理想のカメラとレンズでした。
 私がカメラを使う目的は旅行にいつも携帯することと星を写すこと。そのうちで,星を写すカメラは別にあるので,旅行に携行する理想のカメラを探していました。とにかく,大きいのはいくら性能がよくてもダメです。使いづらいのもダメです。レンズは,特殊な目的以外は交換する気はありません。そして,持っていて楽しいもの。そこで購入したこのカメラ,まさに,大きさといい,使いやすさといい,ダイヤルも知らないうちに回ってしまうということもなく,私には申し分がありませんでした。レンズもまた,自重で垂れ下がることもなく,フードもうっかり外れたり緩むこともなく,写りもボケ味もよく,手になじむ大きさでした。このように,カメラもレンズも,これまでの欠点がすべて改良されたしっかりとした作りで,ちょうどよい大きさでした。これらは,スペックだけをああだこうだと書き連ねるようなカメラ雑誌を読んていてもわからないことです。
 巷では,ニコンのミラーレス一眼カメラは,最高級のZ9を除いて,オートフォーカスが劣るだの,技術が古いだの,新しい機種がなかなか出ないだの,レンズの種類が少ないだのと散々ですが,私はプロのカメラマンでもないし,バスケットボールやサッカーなど動きの激しいスポーツを撮るわけでもないし,カーレースや飛行機を撮ることを目的とするものでもないし,頻繁にモデルチェンジなどされてはたまらないし,たくさんの機種やレンズを揃える必要もないし,そもそもオートなんてそれほど重視していないので,これでいいのです。むしろ,品質がよいニコンは持っていて気持ちがいいです。
 ということで,すっかりお気に入りで,このところ,旅に出かけるときだけでなく,普段も持ち歩いていて,いろいろと試しています。今日は,そのカメラの設定のお話です。

 以前書いたように,ニコンZ50には,U1とU2というユーザーセッティングがあります。これらには自分がよく使う設定を記憶しておくことができるのですが,何を設定するかが問題でした。そこで,旅をしながら試行錯誤を続けていたのです。
 私が写真を撮るときは,大きく分けて,ふたつの場合があることに気づきました。
 そのひとつは,思い立ったときにシャッターチャンスを逃さずに直ちに撮りたいという場合です。
 この場合は,シャッターを押す前に,あれこれと設定をいじる時間はなく,すぐにシャッターを切りたいのです。あるいは,あえて設定をする必要があれば,露出補正とレリーズモードだけが選択できればよいのです。私は,露出補正をして写すことが多いのですが,設定を変えたことを忘れてしまうことがよくあります。そこで,ユーザーセッティングモードU1では,①露出はプログラムオート ②ピント合わせはAFモード自動切り替え ③AFエリアはダイナミックAF ④測光モードはマルチパターン測光 ⑤コマンドダイヤルを回すだけで露出補正ができて,一度スイッチを切ればその露出補正がリセットされる ⑥Fn1ボタンにレリーズモードを割り当て,Fn2ボタンにフォーカスモードの設定を割り当てる,という設定にしました。
 もうひとつは,じっくりと撮りたい,という場合です。
 私が旅先で写す写真の多くは風景写真で,その場合,あえて逆光にして太陽を入れ,うまく露出を変えて光の加減を調整し,好きな場所にピント合わせ写す,といったものなのですが,そうした場合,カメラ任せでピント合わせをオートフォーカスにして露出もオートにしてあっても,そのあとで,いつも自分でなんらかの補正をしていることに気づきました。ならば,いっそのことカメラ任せなんてやめてしまって,すべてマニュアルでもよかったのです。そこで,ユーザーセッティングモードU2では,①露出はマニュアル ②ピント合わせもマニュアルフォーカス ③AFエリアはシングルポイントAF ④測光モードはスポット測光を割り当てる,という設定にしました。

 今回出かけた偕楽園と弘道館で写した今日の1番目から4番目の梅の花の写真は,ユーザーセッティングU2で,すべてマニュアルで写したものですが,自分でも再発見したのは,カメラがいかに自動化されようと,結局,50年前のカメラの機能で十分だった,ということです。つまり,私にはニコンF3の持っていた機能だけでよかったわけです。ならば,30年間,一体,カメラは何が進歩したのだろうか,と思いました。使いもしない機能のために余分なお金を払っていることになるのでしょうか。
 そうだ,忘れていました。毎回フィルムを購入して,あとで現像するまでどんな写真ができたかわからない,という銀塩フィルもの時代から,受光素子を使ったデジタル化の時代になって,フィルム代も現像代も要らず,写すたびに瞬間に写真が確認できるようになった,ということがありました。これだけでも,大いなる進歩だったのです。ほかの機能は? まあ,どうでもいいや。そのように考えると,やはり,フィルム時代の機能のままでデジタル化したライカMはすごい。

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 購入したニコンZ50は思った以上にとても使いやすいカメラでした。私には,この大きさのカメラが最適だし,かつ,この大きさが限界です。これで,これまで使っていて今回処分したニコン1と1 NIKKOR VR 10-100mm f/4-5.6レンズの代わりに,今回一緒に購入したNIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRをニコンZ50につけて,これからの旅のお供に,どこにも持っていくことができそうです。とても楽しみにしています。
 ただし,使いはじめるにあたって,私には数々の問題がありました。問題というのは,カメラの性能のことではありません。それは,現在のカメラは,自分で多くの設定ができるようになっているのですが,私がどのような設定をすればいいのかがわからない,ということでした。
 今の人たちは,ピントは自動で合うものだと思っているようだし,露出もまたしかりです。しかし,私のような不良老人は,ピントは自分で調整したいし,露出も補正したいのです。写真を撮るというのはそういうものだと思っているわけです。そして,それが「腕」。だから,カメラ雑誌に,このカメラはオートフォーカスで追えないとか露出が甘いとかカメラのせいにするような記事が書かれているのを読むと抵抗があります。
 先日ウェブサイトを見ていたら,ニコンFEというカメラが使いやすかった,という記事がありました。ニコンFEというのは,1978年に発売され,ニコンの一時代を築いたフィルムカメラです。私も使っていました。ニコンFEがなぜ使いやすかったかというと,それは,とても設定が簡単だったからです。オートフォーカスでないので,ピントはマニュアルで合わせます。露出のオート設定は絞り優先しかないので,絞りを設定するのですが,設定した絞りに適正なシャッタースピードをカメラが決めてくれます。そう,言い忘れました。現在のデジタルカメラではISOもカメラの性能の範囲で自由に決められますが,フィルムカメラでは使用するフィルムでISOは決まってしまいますから,工夫の余地があるのは露出補正だけなのです。そんな操作しかできないので,むしろわかりやすく,ピントが合っていないとカメラが判断するとシャッターが下りないなどということもないわけで,シャッターチャンスを逃しませんでした。

 今回購入したニコンZ50は,大きさはニコンFE程度ですが,その中身は比べ物にならないほど複雑です。値段も3倍くらいします。どうやら,45年の月日は,カメラをまったく別の機材と変えてしまったようです。
 オートに設定すれば,静止画も動画も,カメラ任せで写真はとれます。しかし,これまでのように,自分の好みの露出にするとか,ピントをねらったところに合わせたいとか,そういうことをしようとすると,オートには頼りたくないわけです。そのために,カメラを自分好みに設定にしようとすると,選択肢があまりに多いので,どうすればいいのか判断ができないということなのです。しかも,説明書を読んでも,根本的な仕組みがわからないから,〇〇ができる,とは書かれてあっても,カメラ初心者は,その設定によってどんな点が便利でどんな点が不便か,というようなことが不明なので,何を選択すればいいのかがわからないわけです。
 それでも,私は,静止画の撮影に関しては,自分が何をどう設定すればいいのかを知っているから,まだ何とかなるのですが,動画はさっぱりわかりません。フルHDとか4Kとか書かれてあっても,それが何を意味するのかわからないのです。また,フレームレートを自由に選べといわれても,どの設定にすればいいのか,通常はどのくらいが適正なのかわからないのです。これでは,スマホで写真の楽しみを覚え,ではカメラデビューをしようと購入したような人は,この時点でどうすればいいのか途方にくれてしまうことでしょう。
 それでも,以前なら,わかりやすい解説書がたくさん市販されていたので,それを購入して書いてあるように設定すればなんとかなりました。しかし,今はインターネットの発達によって情報が溢れているために,そうした本は売れなくなり,したがって,わかりやすい本が出版されなくなってしまいました。そんな事情で,現在の書籍は,カメラの使い方に限らず,ハウツー本は,内容が劣化してしまいました。というか,本が存在しなくなりました。売れないから作れない,ということなのだと思います。だからといって,インターネットで情報を探しても,そこは玉石混交で,初心者が信頼できる情報にたどり着くことはかなり困難です。

 昨年の夏に車を変えたときもそうでしたが,多くの最新の装置がついてはいても,その使い方がさっぱりわからないから,宝の持ち腐れとなってしまうわけです。
 少し話は逸れますが,車といえば,実は最強なのはトヨタのプロボックス(ProBox)という商用車なのです。プロボックスの四輪駆動車を買えば,私のように星見に行く人には,悪路も走れるし,荷物も多く詰めるし,ファイルや飲み物を置くスペースもたくさんついているし,しかも,燃費もよくよく走り,また,値段も安い,というように,いいことづくめなのです。先日,プロボックスのカタログを見る機会があったのですが,それがまた,実にわかりやすいのです。
 ワークマンという,現場作業や工場作業向けの作業服や関連用品の専門店があります。この店の商品が若者や女性からもバカウケということです。それは,商品が,プロ向け作業着の品質を生かした激安で高機能でしかもオシャレだから,というのが理由だそうです。
 つまり,そういうことなのです。800万円の高級車よりも180万円のプロボックス。私はそういう価値観をもつ人を尊敬します。
 カメラもまた,しかりです。
 実用に徹すれば,安価で高機能なことが容易にできるのに,売らんがために,使いもしない付加価値をたくさんつけるのです。しかし,その理由は,趣味の雑誌などに,使わないような機能についてあれこれと言及し,いろいろなメーカーの機種を比較して評価をしているからです。これが,機材を使いにくくしている原因なのでしょう。カメラはピントと露出を合わせればいいだけなのに。
 スマホの普及でカメラが売れないといいますが,私は,買った人が使いにくく,しかも親切なマニュアルすらない,ということのほうが,ずっとカメラが売れない理由のような気がします。これでは,せっかくカメラを買っても,使いこなせないから飽きてしまうことでしょう。このように,本当にメーカーは売る気があるのか,私にはそれが疑問です。きれいな写真をたくさん載せたカタログもけっこうだけれど,そうした写真を1枚写すのに,どれだけ多くの設定をしなけばならいか? メーカーは,本当にカメラを売りたいのなら,もっと操作を簡単にするか,豪華なカタログよりも,初心者にもわかりやすいガイドブックを作る努力をすべきでしょう。

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 ついにニコンZ50を購入しました。
 以前,次のように書いたことがあります。
  ・・・・・・ 
 ニコンZ50の発表された次の日,ニコンのサービスセンターに立ち寄ったので,はやばやとニコンZ50に触れる機会がありました。魅力的なカメラではありました。(中略)[三脚座のない現行よりも小さなマウントアダプターnewFTZ]と,発表されたレンズのロードマップにも記載されている[18ミリから140ミリのズームレンズ]ができるだけ小さくて軽いものであること,そして,これがもっとも私には重要ですが,[天体撮影用にIR改造されたもの]が条件です。そうした条件を満たす,いわゆる「ニコンZ50A」が発売されるなら,そのときにやっと,私はこのカメラを欲しいと思うのになあと残念に思ったことでした。
  ・・・・・・
ということだったのですが,[三脚座のない現行よりも小さなマウントアダプターnewFTZ]と[18ミリから140ミリのズームレンズ]が発売されたのが,今回購入した動機のひとつではありました。[天体撮影用にIR改造された]カメラではないのですが,それは別に持っているので,今回の購入したZ50にその役割は与えないことにしました。

 年末の引っ越しで,私は大規模な断捨離を決行しましたが,このことはすでに書きました。そして,その際に,今から40年以上前から,たびたび新機種を購入しても,それまで使っていたものを売らなかったために,結果として使いもしないのにため込んでしまった,ニコンF3/TやニコンFMをはじめとする20台近い多くのカメラの,そのほとんども処分しました。そして,手元に残ったのは,今も使い続けている,天体写真を写すための[天体撮影用にIR改造された]ニコンD5100とキヤノンEOSKissX8iとX9,そして,通常の撮影に使っている2台のニコンD5300の合計5台となりました。
 新たなものは買う気がなかったのですが,処分したときの代償として手に入れた金額が想像以上だったことで気をよくして,そのお金で,旅行に持っていくための小さなミラーレス一眼を1台買うことにしました。
 私は,プロのカメラマンでもなければ,写真が上手なわけでもないので,性能がどうのとか,そういったこだわりよりも,いつも旅行に持っていくことができる,軽くて,しかも,レンズ交換をしないでも1本のレンズでほぼ事足りること,というのが機種選択の条件でした。まず,その候補となったのが,キヤノンのEOSR10とRF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STMというレンズで,ほぼ,これを購入することに決めていました。しかし,量販店で手に取っていろいろ試していて,どうもその安っぽさが気に入らなくなりました。そこで,もうひとつ上位機種のEOSR7にしようと思ったのですが,すでにその大きさがだめで,買う気が失せました。
 メーカーは,「軽量の機種=ビギナー,重量級で多機能な機種=ハイアマチュア,プロ」という考えを改めるべきです。

 そうこう考えていてやっと思い出したのがニコンZ50だったというわけです。そこで私は,ニコンZ50にNIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRをつけて購入することにしました。
 しかしまあ,いつもニコンという会社は不出来な息子というか,これまで長年つき合ってきたのでそんなことは承知しているのですが,相変らず商売が下手で,私の考えたレンズをつけたキットは用意されておらず,Z50には,NIKKOR Z DX 16-50 f/3.5-6.3 VRのレンズキットか,NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VRとNIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VRダブルズームキットしかないのでした。そこで,私のような買い方をしようと思えば,Z50のボディだけとNIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRを別途購入することになるのですが,ボディだけとレンズキットはの値段がさほどかなわないので割高なのです。
 私にはこれには理解ができません。
 ダブルズームキットというものがいつも設定されているのですが,レンズを1本いつも持ち歩くのは不便なのです。旅に出るときにレンズを1本持参するようなバッグのスペースはありません。それに,いざ使おうとなったときにレンズ交換をする手間は予想以上に大変なのです。おそらく,多くの人が使ってみるとおそらくそれを実感すると思うのです。
 とはいえ,ダブルズームキットを購入した人がその不便さゆえに,新たにNIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRを買おうとすると,すでに持っているレンズが粗大ゴミ化してしまうのです。しかし,現在のような価格設定では,NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRを買う人は限られてしまうことでしょう。つまり,NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRは冷遇されているのです。果たして売る気があるのかな? とさえ思えます。
 ともあれ,私は,こうしてニコンZ50とNIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRとすでに持っていたFマウントの対角魚眼レンズを使うために[三脚座のない現行よりも小さなマウントアダプターnewFTZ]であるFTZⅡ,そして,予備のバッテリーを手に入れたのでした。
 実際に使ってみての感想は,また,次回。

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 プロのカメラマンは写真を写してそれをなりわいとしているのだから,ここで書く対象ではありません。また,趣味なんて人それぞれがそれぞれの流儀で楽しめばいいので,何だっていいので,私がとやかくいうことではありません。
 そんな話ではなく,私が書きたいのは,同じ世界でも,別の見方があるよ,というお話です。

 私は,何でもカメラの性能のせいにする写真愛好家に抵抗があります。そんなことにこだわり続けると,日々,新しい製品が出るたびにそれを買い続けなければならなくなります。
 おせっかいな話ですが,わずかしかない休日に,車よりも高いような望遠レンズをつけて,全財産をカバンに詰め込んで公園に行って野鳥を撮っていた人をこれまでにもずいぶんと見かけたのですが,カメラがミラーレス一眼に代わって,カメラのマウントも変わった今,それまで使っていた機材を今どうしているのだろう,と心配してしまいます。すべて二束三文で売りはらって,また新たに機材を購入したのでしょうか?

 私が若いころに雑誌「アサヒカメラ」に毎月スナップ写真を連載していた名人・木村伊兵衛さんは,ライカと単焦点レンズをつけて,自分で露出を決め焦点を合わせ,いつ写したかわからないほどそっと1枚だけシャッターを切って傑作をものにしていたといいます。
 それは,1キログラム以上もある巨大なカメラに大きなズームレンズをつけて,1秒に何コマも連射して,焦点も露出も,さらには構図もカメラ任せ。そんな作業から,やれこのカメラは自動焦点が遅いだとか,露出が甘いだとか難癖をつけ,そうして写した何千枚ともなる写真からうまく写ったものを選び出す,というものとは真逆な世界です。
 結局,そんなものだったら,写真を写しているというより,札束が空を舞っているのと同じようなこと。つまり,写真を写す愉しみというより,メカをいじっては難癖つけていることが楽しい,ということになるのではないかと思ってしまいます。

 今は,売れなくなって,カメラ雑誌のほとんどは廃刊に追い込まれたけれど,今も残るわずかな月刊誌の記事では,毎月,相も変わらず,数社のカメラをずらりと並べて,やれ,どのカメラがもっとも味のよい写真が写せるだの,焦点が最も合うだの,といった記事を,懲りもせず掲載しています。かつて,同じような趣味だったオーディオは,すでに,ほんのわずかな愛好家だけのものとなりましたが,カメラも同じ道をたどっているようです。
 私が不思議に思うのは,多くの人が,いまや,カメラからスマホに持ち替えてしまい,それで十分に満ち足りた写真を写しているのに,カメラ雑誌には,スマホを並べて,どのスマホの写真が一番うまく写せるだの,焦点が合うだのといった記事がないのだろう,ということです。つまり,写した写真の価値は,カメラ雑誌が掲載しているようなスペックとは関係がないというとです。
 
 そんなわけで,写真の楽しみ方はさまざまだけれど,私は,かつて木村伊兵衛さんがやっていたように,小さなカメラを1台肩にかけて,そっとシャッターを切って写真を楽しむ,というのが,もっとも粋な姿なのではないかと今も思っているということです。

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 先行き危うかったニコンのミラーレス一眼カメラはニコンZ9によって,なんとか息を吹き返したようです。それにしても,スマホの台頭でカメラの売れ行きが悪くなったことに加えて,従来の一眼レフカメラがミラーレス一眼カメラに置き換わるという2重苦ではメーカーは大変です。
 スマホで何でも写せるとはいっても,カメラにはカメラのよさがあります。また,ミラーレス一眼カメラといったところで,フィルムがデジタルに変わったような根本的な違いがあるわけではないのです。しかし,一眼レフカメラが売れないものはどうしようもありません。
 カメラに限らず,何事も,持っていない人や使っていない人が,カタログだけを見てスペックにこだわりワイワイと騒ぐことや,新製品を紹介する雑誌などで適当な評論をする記事だけで,それが正しいものかどうかは別として,その製品の評価になってしまうわけだから,作っているほうはたまりません。

 そんなこんなで迷走状態だったニコンですが,売れ筋だった入門者用やライトユーザー用のニコンD3500とかニコンD5600といったカメラをあっさりと発売中止にしてしまったために,統計上のシェアが激減してしまいました。一般の人にはこれらのカメラで十分だったのです。しかし,もう,そうしたシェア争いとは縁を切り,プロやディープなマニア向けの製品に特化するといっていたのに,結局は,ニコンZ30というカメラを発売しました。しかも,ニコンZ30はニコンZ50からファインダーを切っただけのようなものでした。こんなことなら,ニコンZ50を発売したときに一緒にニコンZ30を出しておけばよかったのに,何年も経ってしまった今となっては,後追いです。Vlog カメラとかいう売りでアピールしていますが,もとから Vlog を意識して作ったわけでもなく,何がしかのアピールが必要ということでひねりだした宣伝文句のように感じます。いつもながら商売が下手です。
 私が時々見ている「デジカメinfo」というサイトには,次のようなコメントがありました。
  ・・・・・・
 ニコンは本気の製品は強いのに,片手間に出したような製品はとことん弱いように思います。
 一眼レフが主流の時に出したミラーレス・ニコン1やアクションカメラが流行り出したときの keymission のように尻切れトンボにならなければいいのですが…
  ・・・・・・
 これを書いた「たま」というペンネームの人,とてもよくわかっています。結局それに尽きるのです。

 いろんなことを語ってはいても,ニコンカメラの今のラインナップを見ると,単にFマウントの一眼レフカメラをZマウントに置き換えた品ぞろえになったのにすぎません。レンズの構成もまた同様です。何が違うかといえば,カメラのマウントが大きくなってレンズ性能が増したということらしいのですが,プロのカメラマンやディープな愛好家でなければ,写した写真の違いがわかるようなものでもないわけです。
 それよりも,Zマウントが大きすぎて,DXフォーマットの小さなカメラには不格好です。せっかくミラーレス一眼レフカメラになったのに,レンズが大きいから小型化できず,これでは意味がないというものです。
  ・・
 ニコンZ30のユーザーというのは,結局は従来のニコンD3500やニコンD5600を買っていたようなユーザーなのでしょう。だったら,すでにニコンD3500やニコンD5600をもっている人はそれを使っていればいいわけで,新たな出費をしてまで買い替えるほどの違いがどれだけあるのか,私にはわかりません。それでも,新しもの好きの人はいつものごとく「買いだ買いだ」と買い求めるのでしょうが,そうした人たちは,1年もすれば,また新しいものが欲しくなることでしょう。カメラ好きのみなさん,無駄遣いがお好きです。
 また,新たにスマホで写真の楽しさを知ってミラーレス一眼カメラに興味をもった人が購入するカメラとしては,レンズも少ないし,先行きの展望も不明だし,もうしばらくは静観でしょう。と,もう,新しいものは買わない私としては思ってしまうわけです。私は今使っているもので十分だし,私が最も使用している対角魚眼レンズがないのでは,マウントを変える意味もありません。
 プロやヘビーユーザーは別として,一般の人にとってカメラというのは危険な趣味です。それは,10万円ほどの出費で,新しいカメラやレンズがどんどんと手に入るので,限りなく欲しくなってしまうからです。それでも,昔のフィルムカメラは製品の寿命が長く,レンズだけを新しく増やしていくことが多かったので,こうして常に新しいレンズがほしくなるのをレンズ沼とかいっていました。しかし,フィルムカメラがデジタルカメラに置き変わると,製品の寿命が短くなりました。カメラ自体が昔のフィルムみたいなものだから,レンズとともに,常に新しいボディも次々と買いたくなるのです。つまり,カメラ沼です。実のところ,これは,少年のプラレール,少女のシルバニアファミリーの延長線上にあるものといえるでしょう。
 まあ,新しもの好きのみなさん,せいぜい,カメラメーカーが潰れないように貢献なさいませ。

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 私は50年来のニコンカメラ愛好者ですが,このごろのニコンの低迷をこころから心配していました。
 そんな折,ニコンZ9というディープラーニング系の人工知能が搭載されたすごいカメラが発売されます。予想を超える性能のカメラだったので,だれしもが,斜陽だと心配していたこの会社にこれだけの技術力が残っていたということに驚きました。「ニコンD3の再来」といわれているそうですが,ニコンD3のとき同様,先行き不安に陥ったとき,ニコンは突然豹変して画期的な新製品を出すのです。
 これだけの力量があるのに,その実力がまれにしか発揮されないのが不思議でなりません。
 同時に,Fマウント用のアダプターFTZも新しく三脚座がなくなって使いやすくなりました。はじめっからこのアダプターを出しておけばよかったのに,その間に多くのユーザーを失くしてしまい,本当に今まで何をやっていたのでしょう。商売が下手です。これまでの愛好者を大切にするのは最優先事項です。
 しかし,ニコンZ9のようなカメラが出てしまうと,プロの写真家は大変です。
 以前は,カメラより腕,だったのに,今や,使う機材によって撮れる被写体と撮れない被写体があるとなっては,新しい技術をもった機材を使わなければ,仕事を失くしてしまうからです。

 その一方で,趣味程度に写真を楽しんでいる人にとってみれば,カメラも高級品ばかりとなって,普通の車を買おうと思ったらジェット機しか売っていなかった,という感じのオーバースペックです。中には,こういう機材でも購入する人が少なからずいるのですが,多くのアマチュアは,週末に使うくらいしか時間もないから,使いこなすのがたいへんです。また,気軽に旅に持っていくには大きすぎます。
 私は,結局はスマホよりもカメラの方が「いい写真」が撮れるので,このごろ,ずいぶんとカメラを手にする機会が増えてきたのですが,そうなってはじめて,自分に必要なものが何かがわかってきました。しかし,多くの人は,カタログによるスペックばかりを気にしたり,使うより買うことが目的だったりします。「観る将」みたいなものです。
 私は,ここまですごくなくていいから,旅のお供に,気軽に持って歩ける,そして,安心して自分の撮りたい写真が撮れる,そんなカメラがあったらいいなあとつねづね思っているのですが,なかなか思い通りのものがありません。まあ,買いたくなる新しいカメラがないほうが私にはいいのですけれど。

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 「ざんねんないきもの辞典」という本があります。
  ・・・・・・
 地球には,すごい能力をもつ生き物がたくさんいます。 でも一方で「どうしてそうなった! ?」 と思わずつっこみたくなるざんねんな部分をもった生き物も存在するのです。
  ・・・・・・
 というこの本の紹介文があるのですが,この「ざんねんな」というのは,欠点というより,何かほほえましい特徴のことです。
 人もそうですが「ざんねんな」というのは個性につながるもので,それを生かすも殺すもその人次第,ということなのでしょう。
  ・・
 これを私の大好きなカメラにあてはめてみようというのが,今日のお話です。
 お断りですが,私は,今や,自分の持っているもので十分事足りていて,しかも,物質欲がないので,新たにものを買うということはありません。たとえそれがどんなに高性能であろうと,魅力があろうと,買う気はまったくないのです。
 そんな無責任の私が今日取り上げるのが,ひさびさに売れるカメラを発売したとして,マニアの間で盛り上がっている「ニコンZfc」です。これを傍観者の目で見てみようというわけです。

 私は,ドイツのライカのディジタルカメラMをフィルムカメラMとおなじ形状で製品化していて,マウントも同じであることから,ニコンも往年の「ニコンFM」をベースにそれと同じようなカメラを発売すればいいのに,と以前から思っていました。
 ミラーレス一眼に代わったのを機に,「ニコンZfc」がそうした待望のカメラとしてやっと発売されたということだと思うのですが,カタログなどを見ると,このカメラは「ニコンZ50」というカメラの皮をクラシックなものに変えただけのもので,中途半端で,いつものように,潔くないなあ,というのが私の実感です。これが「ざんねんな」ということにつながります。
 名古屋にニコンのサービスセンターがなくなったこともあって,私は実物を未だに見ていません。このような製品は,写真などと実物はかなり印象が異なるものです。実物を見るとその質感から欲しくなるものでも,それはカタログではわかりません。先日も,カメラの修理をしようと思ったのですが,気軽に行くことができるサービスセンターがなく,スタッフに聞くこともできず,とてもめんどうでした。サービスセンターの閉鎖は,経費節減というメリット以上のかなりのデメリットだと私は思います。

 さて,私が「ざんねんな」と思う理由は,今日の1番目から3番目の写真のような赤丸で囲った部分のことです。
 そのひとつは,1番目の写真のように,ニコンのフィルムカメラとは違い,カメラの左側が長すぎることです。従来から,ニコンのカメラはレンズが中央でなく左寄りについていて,これがかっこよかったわけですが,バッテリーを入れるスペースを確保する必要があるために「ニコンZfc」は左側のスペースが若干長く不格好です。
 ふたつめは,2番目の写真のように,ボディの全面にダイヤルが飛び出ていることです。これこそが,私が「ざんねんな」と思う決定的な理由です。このカメラにこういうものがあってはいけません。
 そして,最後が,3番目の写真のようなFマウントレンズと互換性を保つためのアダプターが不出来だということです。現在発売されているのはFTZというマウントアダプターですが,これは,三脚座があることで不人気です。使い勝手が悪いし不格好です。これをGタイプのレンズ限定でもいいから三脚座をなくして,もっと小さく,そして,安価なものを販売すべきです。
 以前のニコンは,こうしたものこそ損得を度外視してこだわりがあったのです。それが信頼につながっていました。しかし,現在のアダプターでは,Fマウントのレンズが使えるといっても不便なので,古くからの多くのユーザーにそっぽを向かれてしまっている原因となっているのです。これまでに販売したすべてのFマウントのレンズが使えるものを希望しているユーザーもいるのですが,それはそれで別のアダプターを作ればいいわけで,1種類でそのすべてを賄おうとするから,どっちつかずで中途半端な存在と化しているのです。

 それにしても,こういうカメラが受けるというのは,ニコンにとっては,本音はうれしいことではないように思います。しかし,このメーカーは,こうした昔からのユーザーが会社を支えているので,先進性で勝負ができないのです。であるのに,ミラーレス一眼ではマウントだけは先進性と高性能を求めすぎたあげく,やたらと大きくなってしまっていて,Fマウントのクラシックカメラとは整合性が取れず,4番目の写真のように不格好となってしまうのです。
 私には,見かけだけのクラシックカメラである「ニコンZfc」より「ニコンZ50」のほうが機能的だしずっと使いやすいもののように思えますが,この会社の製品を求めるユーザーの多くはそうではないのでしょう。これでは,会社の悩みはつきません。
 しかし,これまでのこの会社の発売した製品から考えると,「ニコンZfc」のようなカメラはこの1代限りで,現在のブームが去ればそれで終わり。後継機もなく,そのうちになかったことにしてしまうことでしょう。そして,これを買ったユーザーがまたまた裏切られるのです。これこそがニコンのいつものパターンです。
 まあ,どっちにしても私は買わないので,心配する必要はありませんが…。


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 このごろは遠出もしないで,もっぱら家の付近を散歩しています。散歩のお供に,多くの人は犬を連れているのですが,長年,単に趣味で写真を楽しんでいる私は,犬を飼っていないので,その代わりにカメラを持っていきます。
 スマホで事足りるという理由からカメラが売れなくなってしまったということですが,実際はディタルカメラが発売される以前の水準に戻っただけのことでしょう。私はそんな流れとは逆に,魚眼レンズやマクロレンズ,さらには望遠レンズなどを使って,スマホでは写すことができないもの,そしてまた,暗くてスマホでは画像が荒れてしまうような被写体を写すのが楽しくなって,カメラを見直しています。
  ・・
 以前は,新しいカメラが発表されれば,カタログを手に入れて飽きるほど眺めたり,写真雑誌に載った記事を見てはそれを手にする思いを巡らせていました。そして,時には実際にカメラやレンズを買って満足していました。
 長年にわたって計画的に買いそろえてきたために,現在では,買いためたものを使えば,ほぼ,どんな被写体でも写すシステムができあがりました。しかし,そうして長年カメラに熱中した結果,写真はカメラではなく被写体で決まるものだなあと,改めて思うようになってきました。
 そんな折,各社のカメラが,従来の一眼レフカメラからミラーレス一眼レフカメラに変わり,それとともにマウントを変更しました。そんなことをされても,私は困るだけです。「インチキ富裕層」の私が今更新しいマウントのシステムを構築する気持ちなどありません。新しいシステムのほうが性能がいい云々といわれても,私にはその違いを引き出せるような腕はないし,スポーツの瞬間瞬間を失敗なく捉えなければならないようなプロのカメラマンでもありません。私は,今持っているもので楽しめればそれで十分なのです。大きくて重たくて高価なカメラなんていらないし。それに,写真はカメラでなく被写体で決まるのです。

 さて,先日,家の近くで花火大会がありました。
 これまで,私は,花火に限らず,春の桜も,秋の紅葉も,どうしてこの国の人は静かにそれを眺め,楽しむことができないのかな,と思っていました。何もかも,屋台が出たり酒がでたりしてお祭りにしてしまうのです。そうしたことが大嫌いな私は,コロナ禍の自粛ムードやらでそんな状態がなくなったので,むしろホッとしています。
  ・・
 花火は,すごい人混みが嫌で,私はこれまで写したことがありませんでした。それが家の近くで花火大会が行われるということだったので,それならよく見える場所まで歩いていくことができるなあと,そこまで行って写真を撮ってみることにしました。
 いい加減な私は,いつものように,事前に何も調べず,準備もせず,まあ,こんなもの写すだけだと高を括り,三脚も持たず,カメラを持って花火を写そうとしました。その結果,当然のこと,どうしていいかわからず,戸惑うことになってしまいました。
 結果的に,まあ,何とか自分なりに写せたのですが,これもまた,いつものようにあとで後悔し,どうしたら花火が上手に写せるか,終わったあとに調べることとなりました。そこで,「次回」があるかどうかわかりませんが,花火を上手に写す方法をまとめておくことにします。

  ・・・・・・
●露出
 花火の撮影は花火の開花に合わせて長時間露出をします。露出時間は,中型の単発打上花火だと4秒から6秒,大きな尺玉だと8秒から10秒間,また,三尺玉になると20秒から30秒間となります。ならば,三脚が必要です。
●感度
 感度は,ISO100またはISO200などの最低感度にするということなので,星を写すのとは,ここが異なります。また,絞りは,ISO100の場合はF13,ISO200の場合はF19が適当ということです。それは,花火が非常に明るい被写体なので,露出オーバーを防ぐためです。しかし,絞ると回析現象が出てしまうことがあるので,露出オーバーと回析現象を少しでも防ぐためにNDフィルターを使用するといいといわれます。
●ホワイトバランス
 花火の種類によってふたつのホワイトバランスを切り替えて撮影します。色鮮やかな花火は「電球」または色温度設定3,200ケルビン。錦冠菊や和火などは「晴天」または色温度設定4,500ケルビンから4,800ケルビンです。
●ピント合わせ
 ピントは,最初に上がる花火をオートフォーカスで合わせたのち,マニュアルフォーカスに切り替えます。
●シャッターチャンス
 単発打ち上げを撮るときのシャッターボタンを押すタイミングは花火が打ち上がると同時にシャッターボタンを押し,花火が上空で消えるのを確認したらシャッターボタンから指を離します。
  ・・・・・・
 このように,たかが花火でもそれを写すには,カメラの性能以前に,きちんとした写し方があるものです。私のようにぶっつけ本番ではだめです。
 やはり私にはカメラ云々などと機材のよし悪しを語る以前に,被写体を選び,それを写し止める「腕」を磨くほうが大切だと改めて思い知りました。


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 これから書くことは,プロのカメラマンやお金持ちのコアなアマチュアカメラマンを対象としたお話ではありませんのであしからず。
  ・・
 2015年2月というから今から6年以上も前になりますが,マクドナルドが不振でした。しかし,私がこうすればいいというようなことをこのブログに書いて,まさかそれを見たわけでもないでしょうが,おおよそ,私の希望どおりの改革をして,マクドナルドはV字回復を成し遂げました。マクドナルド愛好者としてはうれしい限りです。
 その年の12月,今度はニコンについて書きました。その後も何度か書いたのですが,こちらは,私の予想通り,いつまでたっても浮かび上がることなく,今や,会社の将来さえ心配されるほどの惨事となりつつあります。50年来のニコンカメラの愛好者の私としてはとても寂しい限りですが,悲観的要素ばかりが目について,将来に明るい展望が一向に開けません。
 その理由はすでにたくさん書いたので,ここで何を書いても繰り返しとなってしまいますが,どうして,そんな素人の私でも予測できるような失敗を繰り返しているのか,ただただ残念でなりません。私は使っていないのでわかりませんが,新しいZマウントのレンズはとてもできがよいのだそうです。であっても,高価だし,それに投資しても会社がなくなったら,宝の持ち腐れとなってしまいます。これでは,手が出ません。

 昔からあれだけ熱狂的なニコンカメラの愛用者がいたのにも関わらず,結構高価で大柄でしかも期待したほど互換性のなかったマウントアダプターFTZひとつを発売しただけで,さあさあ,従来のFマウントレンズも使えますから,これからは新しいZマウントのミラーレスカメラに移行しましょうね,でも性能がいいから新しいレンズも買いましょうね,とやってはいけません。これでは,それまでに多くのFマウントの交換レンズを購入した人が気の毒です。Fマウントカメラユーザーは,さらに,この先Fマウントのレンズを買う気にもなりません。
 Fマウントとの互換性というのは,要するに,ZマウントのカメラにマウントアダプターFTZをつければ,多くのFマウントレンズを従来のように使用することができるということです。そうであれば,これまでのFマウントユーザーのために,今日の2番目の写真のように,たとえばZ5のようなカメラにはじめっからマウントアダプターFTZを小型にしたようなものを固定してくっつけちゃった「Fマウントの」ミラーレスカメラ「Z5₋F」でどうしていけないのか,私にはわかりません。でもそうだったら,そもそも新しいZマウントなんて必要なかったのかもしれませんけれど。細かな性能は別として。
 Fマウントのミラーレスが作れないのはフランジバックの長さが違うからとかいう説明をする人がいますが,そんなことを言っている人は何もわかっていません。作れます。ただし,Fマウントのままではレンズ回りが飛び出て少し不格好にはなりますが,あくまで過渡期の製品であり,先に書いたように,はじめっからマウントアダプターFTZを小型にしたようなものをくっつけちゃったと考えればいいわけです。せっかく新しいシステムにするのだからマウントも新しくして,というのなら,せめて移行期には「Zマウント」の「Z5」とともに,「Fマウント」の「Z5₋F」も作って並行発売したらいいと思うのですが…。ならば,安心してこれまでのFマウントユーザーもボディだけを購入すればミラーレスカメラが使えます。そして,ミラーレスのよさがわかれば,次には新しいマウントのカメラを買うと思うのですが…。そんなことしなくてもマウントアダプターFTZがあるじゃないか,と反論する人もたくさんいるでしょうが,マウントアダプターFTZは大きすぎ高すぎ,しかも,生産が少なく手に入らないというではありませんか。

  ・・
 昔,この会社にまだ余裕があったころ,オートフォーカスへの移行時にF601というオートフォーカスカメラを発売した折に,オートフォーカスに抵抗があるユーザー用にと,3番目の写真のように,F601からオートフォーカス機能だけを取り除いたF601Mというマニュアルフォーカスのカメラを同時に発売したことがあります。あまり売れなかったけれど,それがニコンの他社にはないこだわりというものでした。移行期ならそれくらいの配慮があってしかるべきです,ニコンなら。さらに昔,ニッコールレンズの「ガチャガチャ」を廃止してAi レンズに変更したときに,4番目と5番目の写真のように,この会社はそれまでのレンズをAi レンズに改造するサービスまでやったのです。確かに新しいモノに比べれば性能は劣るのでしょうが,それで,古くからのニコンユーザーの信用を勝ち得たのです。いつまでも昔からのユーザーを大切にすると。しかし,今や,この会社にはそんな余裕はないのでしょうが,これでは,簡単にマウントを変える他社と同じ。企業にもっとも大切なニコンというブランドの信用をなくします。
 現状では,Fマウントユーザーを置き去りにしたような感じに受け取れます。冷たいのです。いくら互換性があるといっても,これではまったく別のマウントに代わってしまったのと同じことだから,そうであれば,いくらZマウントのレンズの性能が従来のFマウントのものよりもよくても,先行きの危ういこの会社にこだわるリスクを考えると,多くのカメラマンが,多少レンズの性能が劣ったとしても将来性の高い別の会社に鞍替えするのは容易に想像ができます。

 また,プロのカメラマンやハイアマチュアは別として,これからカメラを趣味としようとするような若い人やお金を十分にもった年配の人たちが,さあ,はじめて1台何かを買いましょう,興がのれば,その先発展させましょう,といって,ニコンのカメラで手が出せるものがまったくないというのが,そもそもの問題です。そのためにZ50を用意しました,ですって? DXフォーマットをこの会社がこの先どうしたいのかも語られず,また,発売されているDXレンズがわずか2本,という状況で,しかも,それもカメラとレンズで20万円也,なんていわれたら,そんなものを購入するでしょうか? みんながお金持ちではないのです。
 入門者用にと,広角16ミリから50ミリのズームレンズと50ミリから250ミリのズームレンズというような2本のレンズをつけたセットを発売しているのですが,旅に出るとき,交換レンズを1本余分に持って,それを必要に応じて交換して使うということは,かなりめんどうなことです。これでは入門者は食指が動きません。せめて,多少性能が劣っても,発売予定の18ミリから140ミリというズームレンズがすでにあるのなら,Z50とそのレンズ1本をつけて旅のお供にできるから買おうとも思うのですが,それさえいつ姿を現すのかもわかりません。OEMでも何でもいいからさっさと発売しちゃえばいいのに,きっとまた,満足する性能を出そうと凝りに凝っているのでしょうか。あるいは,高価な売れないレンズの開発が先とばかりに優先順位があとなんでしょうね,この会社の頑固な技術屋さんたちが考えているのは。
 しかし,一番の売れ筋だった入門機D5600やD3500を後継機もなくさっさと製造中止にしてしまった今となっては,Z50も将来はこれと同じ運命をたどるとしか庶民には思えませんから,これもまた買うことを躊躇させる要因となります。これまでにも,予告もなく突然やめちゃったニコン1や,発売さえできなかったニコンDLという悪しき前例もあることですし,もう,昔の「古くからのユーザーを大切にした」ニコンとは違ってだれも信用していません。
 今や,この会社はお金持ち以外は顧客とは思っていないのです。貧乏人が一生懸命にお金を貯めてカメラやレンズを買って長年ずっと大切に愛用している人なんて客として認めていないわけです。サービスセンターも次々に閉鎖しています。こうして,長年のユーザーを簡単に裏切っているのです。これでは安心して使えません。
  ・・
 端的にいえば,ニコンのカメラが売れないのは,カメㇻの性能以前に,会社の将来性が危ぶまれることと,会社が何を考えているのかわからないので手が出せないこと,そして,ユーザーを大切にしていないということなのでしょう。会社が売れるか売れないか様子見してから次の手を考えていてはいけません。そしてまた,他社とは違って昔からのユーザーを大切にしますよ,というアピールがなくてはいけません。せっかく古いフィルムカメラのメンテナンスをやる良心は今でも残っているのに,ディジタルカメラでこんなことをやっていれば,日に日にユーザーは別の会社に逃げていくでしょう。私が新しくカメラを買うならそうします。
 私は「写真はカメラで決まらない」と思っていて,この先,多少性能がよくても新しいカメラを買う気持ちはまったくないから,もはや会社がどうなろうとどうでもいいのですが,ニコンF3よりも昔からの長年にわたる愛好者として,今の状況は滅びゆく会社の終焉を見ているような気がして,残念でなりません。

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 この国には,その建設の是非が問われながら,強硬され作られたものが数多くあります。そして,それらは,建設する目的やら建設することによって失われるものやらなどが,計画されたときには盛んに議論されつつも実際には聞く耳など全くもたず,常に建設が強硬されますが,一旦作られてしまうと,その後はどうなったか,一般にはほとんど報道さえされません。
 たとえば,そのひとつに長良川河口堰があります。
 長良川河口堰は,海水の逆流を防ぎ,貯めた水を愛知・三重両県と名古屋市の工業・上水道用水として取水することを目的として,長良川下流に設置された可動堰です。1988年に着工され,1995年に運用が開始されました。
 旧東海道・桑名宿からその巨大な不気味な姿を見ることができます。
 もうひとつは,徳山ダムです。
 徳山ダムは,岐阜県揖斐川町の揖斐川上流に建設された多目的ロックフィルダムです。1971年に着工され,2008年に完成しました。ダム湖の総貯水量は6億6000万立方メートルで,奥只見ダムをしのぎ日本最大の容量を誇ります。
 徳山ダムを建設したことで徳山村が水没しました。

 少しまえ,徳山ダムを見にいく機会がありました。そこで思い出したのが,増山たづ子さんのことです。
 増山たづ子さんは1917年(大正6年)に生まれ,2006年(平成18年)に亡くなったアマチュア写真家です。
 徳山村で農業のかたわら民宿を営んでいたのですが,徳山ダムの建設が計画されて徳山村が水没することを知ります。個人的にはダム建設に反対であったようですが,「国がやろうと思うことは戦争もダムも必ずやるから反対するのは大河に蟻がさからうようなもの」としてこの事実を受け止め,その後は徳山村の記録を残したいという思いから写真を撮りはじめ,消え行く村の人々の表情,四季,自然,家,建物,風景,祭り,風習,民俗などのありとあらゆるものを撮り続けました。生涯に撮影した写真は8万枚に及んだといいます。
 このことがニュースで取り上げられたとき,この愛称「カメラばあちゃん」が使っていたカメラが「ピッカリコニカ」であることに驚きました。写真を撮りはじめた当初はフィルムも入れられなかったのですが,民宿のお客さんに「素人の自分でも写せるカメラはないか」と相談したところ「猫がけっころがしても(蹴飛ばしても)写るものがある」と勧められたからといいます。

 スマホでだれでも写真が写せる今とは違って,その時代,写真を撮るのはカメラマニア以外には難しいことでした。コニカ・小西六写真工業(現コニカミノルタ)は,1968年にコンパクト35mmカメラ「コニカC35」通称「ジャ~ニ~コニカ」を発売しました。このカメラは自動露出機能により「手軽に撮影できるカメラ」として女性需要層を核とした新規需要創生に成功しました。それに次いで,1974年,室内撮影需要に応えるべく,世界ではじめて小型ストロボを搭載した「コニカC35EF」通称「ピッカリコニカ」を発売して,販売台数100万台超を達成しました。
 私が驚いたのは,たいそうな高級カメラでなくとも,これだけの写真を写すことができるということでした。それまでの私は,写真好きというよりカメラ好きで,カタログを眺めては満足し,高級カメラに憧れていたからです。
  ・・
 今,増山たづ子さんの残した写真はインターネット上で見ることができますが,その写真の上手なこと! 写真の中で,人が息づいています。私は,このとき,自分の愚かさに気づかされました。写真のよさはカメラのよさで決まるものではないのです。
 私を含めて,世に多くのにわかカメラマニアがいます。しかし,その多くは,昔の私のように,写真好きというよりカメラ好きで,インターネット上にもそうした話題で盛り上がるサイトが数多くあります。そして,新製品が出るたびに,やれ買いだ買いだと騒いでいます。しかし,私は,それ以来,写真はカメラでは決まらないという思いから,そうしたカメラ好きからは,一歩ひくことにしたのです。
 それにしても,私が一向に写真がうまく撮れないのは,増山たづ子さんとは違って,才能がないからでしょう。そしてまた,消えていく自分の故郷を思うようなひたむきさが足りないからなのでしょう。 

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Doctor Yellow.

3月5日,家の近くをドクターイエローが走りました。
あいにくの雨模様でしたが,動画を写しました。
今日3月6日も走ります。


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 「ニコニコ大百科」によると,「撮り鉄」(とりてつ)とは
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 「鉄道ファン」の中でも、とりわけ列車の写真撮影行為を趣味とする層の総称である。
 文字通り,鉄道の思い出を写真・画像・動画などとして残しておこうとする層で,鉄道車両を中心に,駅構内や線路沿いの風景など鉄道に関する風景を撮影するのがその活動内容。駅構内でカメラや携帯端末などの画像記録機器を構えている人がいたら,たいていその属性保持者だと認識して差し支えない。
 また,「撮り鉄」の場合は,駅間の線路脇,人里離れた山奥・海辺や雪山から線路が見通せる場所など,一般人はまず行くことのないような場所にも赴いて,鉄道の勇姿を写真に留めようとしている者も多い。誰でも見られる駅構内からの眺め(≒「駅撮り」)と異なり,鉄道を他の地域の風景と絡めて捉えたこれらの画像は,鉄道ファンにとって後世の貴重な資料となりうるため,実際に足を運んだ人の撮影品は重宝される。
 こうして鉄道の魅力を写真に捉え,他者が撮った写真と共にその趣や技巧を楽しむのが(本来の)「撮り鉄」である。
  ・・・・・・
とあります。

 私は決して「撮り鉄」ではない,と思っていましたし,今もそう思っています。
 それよりも,私は暇なのです。これまでは,暇があれば海外旅行をしていました。また,ふと思い立って,日本国内のいろんなところへも足を運びました。これまでさんざんいろんなところに行ったので,もう,この先,行きたいと思うような場所もなくなっていました。それに輪をかけて,このご時世,どこへも行く気がなくなりました。さらに,気晴らしで,お店に立ち寄ろうと思っても,やれ〇〇せよ,だの,体温測れ,だのと書いてあれば,まったく楽しくありません。それでは気晴らしにもなりません。欲しいモノはネットで買えるし,コーヒーなら家で飲めます。ということで,このごろは,人のいない早朝と夜に近くを散歩するのが唯一の楽しみと化してしまいました。手持無沙汰なので,カメラを持って歩いていると,自然と,家の近くを通る新幹線が被写体となってきました。
 私は,これまで,新幹線なぞ,まったく興味はありませんでした。あるとすれば,何とかいう寝台特急に偶然乗ったとか,その程度でしたが,それをわざわざ写真に収めるとかいうこともしませんでした。むしろ,よく線路の近くでカメラを構えている人を見ると,モノ好きな御仁だなあ,と半ば軽蔑気味に思うほどでした。

 それがどうでしょう。せっかく近くに新幹線が見られるのだから,と少し調べてみると「ドクターイエロー」とか,「最新型の新幹線N700S」だとか,いろいろ書かれていて,なんだかおもしろくなってきました。「ドクターイエロー」だって,これまで,見るともなく何度も偶然見かけましたけれど,実際に写真に収めようと思うと,それはそれで運行する時間も定かでないらしく,それを推測するだけでも奥が深いのだそうです。また,「最新型の新幹線N700S」は,以前,鉄道マニアの藤井聡太二冠が乗ってみたいというインタビューを聞いてその存在を知ったことはあれど,それが「ふつうの」(この「ふつうの」というものが「N700A」のことを指すことすら私には認識がなかったのですが)新幹線とどう違うのかということも知りませんでした。3月13日からは公表するそうですが,現在はこの「最新型の新幹線N700S」がいつ走っているかも問い合わせなければわからないということで,それを見ることができる時刻表を,毎日問い合わせてブログにあげている人がいることも知りました。
 という次第で,一旦興味をもってしまえばやり遂げないと気がすまない私は,ここ2日で,瞬く間に「ドクターイエロー」と「最新型の新幹線N700S」を適当にカメラに収めるのに成功したというわけです。
  ・・
 私は,いわゆる「撮り鉄」になってしまったのでしょうか?
 しかし,こんなことなら,これまで年に30回近くも乗っていた旅客機だって,もっと真剣にカメラに収めるんだった,とか,いろいろ後悔するようにさえなってしまったではありませんか。これは私には危険な前兆です。いやいや,今更,私は,多くの「撮り鉄」の人のように,日本中を歩き,多くの興味ある鉄道を上手に凝って写真に収めるような気持ちはありません。そういったことは鉄道写真家の中井精也さんにお任せして,私は,これまでどおり,散歩のついでに気晴らしに写真を写すだけの楽しみとしておきましょう。それこそが,万事適当でいい加減を旨とする「不良老人道」というものでしょう。もう飽きちゃったし。


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DSC_6136ssDSC_7613sF_Catalog(2)ミランダシーンモード

 以前ブログに書いたことのある雑誌「アサヒカメラ」の1975年5月号を改めて読んでみて,私は大変驚きました。それは,雑誌に掲載されていたものすごい数のカメラ会社の広告です。そして,そのほとんどが,今見ても欲しいと思う製品ばかりなのです。
 いつから,カメラにまったく魅力がなくなってしまったのでしょう? そしてまた,私が久々に購入した「アサヒカメラ」の最終号にはほとんど読みたい記事がないのに比べて,なんと,魅力に満ち満ちた記事が並んでいたことでしょうか。

 カメラの将来が危ういという意見がもありますが,スマホでは撮ることができない被写体は山ほどあるから,カメラがなくなるとは思えません。先日,ホタルを撮りに行ったときも,スマホでは写らない,とぼやいていた人が少なからずいたし,私が写した天体写真も,スマホじゃないよねえ,という人が結構いる,つまり,そうしたスマホでは撮れない被写体を写したいという人が少なくないのです。
 であるのに,カメラがまったく売れないのはどうしてでしょう。それはおそらく,カメラメーカーがそんなニーズに応える製品を出していないからなのでしょう。こんなことでは,本当に冗談でなく,プロのカメラマンや趣味として大金をカメラメーカーに貢いでいるアマチュアカメラマンでない人たちが,気軽に使えるカメラは,この世の中から消え去ってしまうかもしれません。
 簡単にいうと,一般の人には使いにくすぎるのです。

 一般の人が簡単にカメラが使えるようにと考えられているものにシーンモードがあります。シーンモードは,被写体やシーンに合わせてモードを選択するだけで,それに適した露出設定が自動で行われる機能です。初心者向きの撮影モードで,複雑な設定をしなくても被写体に合わせて最適な撮影ができるというものですが,多くの場合,撮影者が任意で絞りやシャッター速度,露出補正,ホワイトバランスなどの設定を個々に変更することができないという欠点があります。
 モードの種類はメーカーや機種によって異なっていますが,主なモードに「風景」「ポートレート」「スポーツ」「クローズアップ」「夜景ポートレート」などがあります。たとえば「風景」モードは,ピントの合う範囲が広く,緑や青の発色が鮮やかに,さらに遠くの景色を撮ることを前提とし,フラッシュは発光しないという設定だそうです。また,「ポートレート」モードは,絞り開放でぼかしやすく,ぶれないようにシャッター速度は速め,肌をきれに見せるため露出はやや明るく,少し赤みの強い発色になるそうです。また,「夜景ポートレート」モードはフラッシュを発光させた上で,シャッター速度を遅くして露光時間を延ばし,人物だけでなく背景の夜景も明るく写るというものだそうです。
 いわば,お任せ定食です。

 しかし,私のように,少しだけカメラの知識があると,これではむやむやします。それぞれのモードが実際にどういう設定を自動化しているのか知りたいし,知らないと,お任せする気にならないからです。つまり,つべこべ言わずに任せりゃいいという,上から目線を感じるわけです。あるいは,細かい設定はカメラメーカーの秘密だよ,という大人の事情なのかもしれません。
  ・・
 そんなわけで,私はこれまでシーンモードは無視してきました。しかし,前回書いたように,夜明けの空や鳥の飛ぶのをなかなかうまく写せないなあ,どうしたらいいのかなあとカメラの説明書を読んでいて,このシーンモードに興味をもちました。さらに,今どきのカメラには,シーンモードに限らず,それ以外にも多くの機能が搭載されていることをいまさらながら知りました。しかし,そのほとんどはまったく使っていなかったわけです。
 カタログには,〇〇ができる,〇〇ができる,と多くの機能がうたわれていますが,いざ,製品を購入すると,小さな字で書かれた簡単な説明書があるだけで,カタログにうたわれている機能をどう実現すればいいのかさっぱりわかりません。写真集やら豪華なパンフレットにも,そうした機能を使ってプロが上手に写した写真だけが並んでいるだけで,どうすれば同じように写せるのか見当がつきません。
 どうやら,カメラが売れない原因はそこにあるような気がします。多くの人はせっかく買っても使いこなせないから飽きてしまうのです。しかし,暇で,かつ,新たなものを買う気のまったく失せた私は,今持っているものの性能を十分に生かすために,今更ながら,こうした機能をひとつずつ覚えてみたいものだと,意欲がわいてきました。


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 私は,土日祝日はまず外出しません。それは自粛とは関係ありません。人混みがきらいなだけです。平日でも私が行動するのは,買い物をする以外は人のいない時間,つまり,夜明け前と日没後ですが,この時間に散歩をするのは,とても快適です。特に,夜明け前は最高です。
 このごろは日の出が午前6時50分ごろです。そこで,午前5時過ぎに起床して,食事をとり,準備をして,午前6時20分過ぎに家を出て,約1時間ほど,散歩をするのが日課になってきました。私は犬を飼っていないので,犬を散歩に連れていくということはないのですが,その代わりにカメラを持参します。小さな一眼レフに高倍率のズームレンズをつけています。画像がどうのとかそういったこだわりはないので,というより,そんな腕はないので,写せばそれで自己満足の世界に浸ることができます。こころがほっこり休まる写真を写すことができればそれで幸せです。
 そんなわけで,今日は,散歩のお供に連れていくカメラ,ではなく,カメラで写す写真のお話です。

 この国では,お昼間にカメラをお供に散歩しても,京都やら奈良のように,撮り甲斐のある被写体がある場所ならともかく,写すものがありません。海外旅行をしたときに,絶えず写したいものに出会うのとは格段の違いです。私はずっとそう思っていました。以前は,お昼間にカメラを持参して散歩をしていたこともあるのですが,何も写さずに帰ることばかりでした。
 しかし,日の出のころなら,写したいと思う対象がいくらでも「出現する」ことを知りました。まさに「出現する」のです。それは,暗いからです。欲しくない情報は隠すに限るのです。そうすると,単なる草花であっても,それなりに絵になることがわかりました。さらに,地上に姿を現したばかりの太陽の光を味方にすると,自分のイメージ以上の写真にすることさえできるのです。これには驚きました。

 しかし,難しいのはカメラの使い方です。
 まず,太陽の光を入れるときはその露出が問題となります。私は,子供のころから一眼レフカメラを使っていたので,その仕組みはそれなりにわかりますが,昔は,オートフォーカスもなかったし,TTLと言って,適正露出を測る露出計こそついていましたが,シャッタースピードか絞りを設定すると,それに見合った絞りやシャッタースピードになるというだけだったので,手動で補正することも簡単でした。それが,現代のカメラは賢こすぎて,カメラが自分で何とかしようとしてしまい,ピントは合わせてしまうし,露出も合わせてしまいます。普通の写真を写すのならこれで十分なのですが,それを補正しようとすると,逆に面倒なのです。
 また,鳥を写そうとするときはピントが問題となります。ピントもまた,手動で合わせるほうがむしろ簡単で,カメラに任せると,何か別のものにピントを合わせようと,自分の予期せぬ動きをしてしまったり,シャッターチャンスを逃してしまうのです。
 いつも失敗して,帰宅して写した写真をチェックしてはがっかりしています。そして,毎度毎度,説明書を眺めながら設定を変更することになっていまいます。こんなことなら,昔のように,すべてマニュアルで操作するほうがずっと楽だし正確ではないかと思ってしまいます。
  ・・
 最後にカメラのお話を少しだけ。そんなわけで,私にはオートなど不要だから,すべてマニュアル操作だけで,フィルムがディジタル画像素子に代わっただけのカメラ -高価なライカならあるのですが- たとえば,ニコンFM-D(仮称)が欲しいと思ったりしています。


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 すばらしい芸術との出会いはこころを豊かにします。そしてまた,その作品が世界のすべてであるような感動を覚えます。
 私は,そうした感情をしばらく忘れていたようです。
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 愛知県稲沢市にある稲沢市荻須記念美術館で特別展「木村伊兵衛・パリ残像」が開催されているので,見にいきました。
 稲沢市荻須記念美術館は,稲沢市出身でパリを中心に活躍した画家・荻須高徳さんの業績を讃えるために1983年に作られたもので,館内には荻須作品の常設展示と復元されたアトリエがあって,落ち着く場所です。毎年秋に特別展が催されますが,今年は,パリにちなんで,木村伊兵衛さんの写真展となったようです。
 木村伊兵衛さんと荻須高徳さんは同じ年の生まれなのだそうです。
 朝日新聞に元気があったころ,新聞の文化欄には毎月,吉田秀和さんの「音楽展望」が,そして,雑誌「アサヒカメラ」には毎月,木村伊兵衛さんの「街角で」という写真が連載されていました。思えばいい時代でした。私はそうしたものにずいぶんと影響を受けたのですが,いまでも,そのころの評論や作品に接すると,こころが落ち着きます。

 木村伊兵衛さんは1901年に生まれ1974年に亡くなった写真家です。報道・宣伝写真やストリートスナップ,ポートレート,舞台写真などさまざまなジャンルにおいて数多くの傑作を残しました。演出のない自然な写真を撮ることで知られ,こよなく愛したライカを使ったスナップショットにおいては、生まれ育った東京の下町や銀座周辺とそこに生きる人々の日常を自然な形で切り取りました。フランスの世界的なスナップ写真の名手・アンリ・カルティエ・ブレッソンになぞらえられ,和製ブレッソンといわれました。
 今回の特別展で紹介された写真は,木村伊兵衛さんが1954年から1955年にかけて訪れたパリで写したものです。木村伊兵衛さんの作品にはモノクロが多いのですが,原風景がモノクロのようなパリだからこそ,カラーで写したといいます。そのころのカラーフィルムは今とは違って,とても感度が低く,撮影が大変だっだようです。もともと,木村伊兵衛さんの写真は,レンジファインダーの最高級カメラであったライカM3に,F値の明るいレンズを絞りを開放にして写すという手法だったので,切り取った写真はうまく風景がぼけ,遠近感が際立つものとなります。そしてまた,シャッター音の小さいレンジファインダーカメラをつかってさりげなく写すので,写された人物はカメラ目線にならず,自然の姿として写されます。そこで,写真に人物の息遣いが聞こえてくるのです。
 現在は,カメラも優秀になり,また,フィルムからディジタルとなったことで,当時とは比べようもないほど簡単に写真が写せるのですが,そこにあるのは,カメラ目線を意識した写真やら,きれいすぎて生活感の欠けたプラモデルのような町並みでしかなくなってしまいました。
 これらの写真を見て,私は,忘れてしまっていた大切なことを思い出しました。

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 プロのカメラマンでもない私は,単に趣味として写真楽しんでいるだけですが,それでも,昔からカメラというものにたいそう興味がありました。
 家には山ほどカメラがありますし,ずいぶんと長く人間をやっていると,カメラの歴史についても詳しくなります。
  ・・・・・・
 カメラは,昔,ドイツのライカに代表される距離計連動式のものでしたが,家1軒買えるほどの値段でした。やがて,1960年ごろ,日本で一眼レフカメラが実用化されて以来,それがカメラの標準形となって,ドイツに変わって日本のメーカーが世界を君臨するようになりました。
 やがて,オートフォーカスという技術が開発されました。今となっては当たり前ですが,カメラがピントを自由に合わせてくれるようになったのは,その当時は驚きでした。そして,その次がディジタルカメラで,フィルムというものがほとんど姿を消しました。
  ・・・・・・
 こうした新しい技術が開発されるたびに,それぞれのメーカーは,それに見合う製品の開発が急務となり,失敗したメーカーは生き残れず姿を消していきました。生き残ったメーカーは,それそれ,どのようにして新しい技術を採り入れた製品を開発して生き残って来たかを思い起こすと,その会社ごとの遺伝子のようなものがよくわかって興味深いものです。

 そんな経緯をたどって進化したカメラですが,現在は,ソニーが先頭を走るミラーレス一眼の人気が,今までの一眼レフカメラに変わろうとしています。そこで,今回もまた,それに乗り遅れんと,ニコンやキヤノンといったメーカーも新製品の開発をはじめました。
 ただし,これまでの技術革新と決定的に違うのは,スマホの台頭で,カメラ自身の存在が脅かされているということです。つまり,これまでと同じような方法で新しい技術を採りいれた新製品を開発しても,そもそもカメラ自体の存在が危うくなってしまっているので,これから先,生き残れるかどうかはわからないということです。
 ミラーレス一眼というのは,車でいえば,これまでのガソリンエンジンの車から電気自動車に変わるようなものと同じでしょう。しかし,車の場合は車という存在自体は今はまだ脅かされていません。

 そんな折,ニコンから新しいミラーレス一眼カメラ「ニコンZ50」が発表されました。ニコンZ6,ニコンZ7といったミラーレス一眼を発売したころにはまだ定かでなかったこの会社の将来展望が,この製品で明らかになってきました。おそらくは,フィルムからディジタルに変わったときと同じように,この会社は,これまでの一眼レフカメラを,プロ用の高級機以外は潔く切り捨てて,製品のほとんどをミラーレス一眼に切り変えようとしているのでしょう。しかし,カメラ本体もレンズも一眼レフカメラと比べるとかなり割高な価格設定ですし,価格の割に期待したほどでもないようです。こんなんで,果たしてうまくいくでしょうか? 
 私は,あと10歳若かったら,この状況に熱くなって,新しい製品に買い替えることを考えたかもしれません。しかし,今は,これまでに手に入れた機材を売り払ってまで新しいカメラに買い変える気持ちにはまったくならないのです。それは,歳をとったせいもありますが,そうまでして価格の高いミラーレス一眼カメラのシステムに変えるほどの魅力を感じないからです。
 そもそも,これまでの一眼レフカメラも新しいミラーレス一眼カメラも,旅行に持っていくには大きく重すぎます。性能の進化した現在のスマホで十分なのです。その一方,従来のように,写真を楽しむ目的で外出したり小旅行をするのなら,今使っているカメラで何の不満もないからです。特に,星の写真を写すには,どんな高性能のカメラであっても,私が使っている天体用にIR改造されたカメラに比べたら使いモノにならないから,食指が動きません。

 私は,ニコンZ50が発表された奇しくもその日に,新しいカメラを手に入れました。それは,天体撮影用にIR改造されたキヤノンの小型一眼レフカメラキヤノンEOSkissX9です。これまでに使っていた天体撮影用にIR改造されたキヤノンEOSkissX8i が古くなったのでその後継として購入したものです。
 通常,ディジタルカメラは撮像センサーのカラーバランスを調整するために色調整フィルターを内蔵させていますが,この色調整フィルターを赤外域まで透過するクリアフィルターに交換することで,赤く輝く散光星雲などから放たれるスペクトル領域(Hα領域)の感度がアップし,色彩豊かな美しい天体写真が撮れるようになります。これがIR改造です。改造カメラといっても,ホワイトバランスを調整すれば一般の撮影にも十分に使えます。EOSkissX9なら小さく軽いので海外に持っていくにも小型の赤道儀に載せるにも便利だし,それに安価だし,私には,このカメラのほうがニコンZ50よりずっと魅力的です。
 ニコンZ50の発表された次の日,ニコンのサービスセンターに立ち寄ったので,はやばやとニコンZ50に触れる機会がありました。ニコンZ50は,私の求める[モバイルバッテリーで充電しながら使用できて(とサービスセンターで言われたのですが,どうやらそれは間違いでした),Bluetoothで簡単にスマホと連動できる]といった機能がついた魅力的なカメラではありました。しかし,これだけでは使えません。こうした機能に加えて,さらに[三脚座のない現行よりも小さなマウントアダプターnewFTZ]と,発表されたレンズのロードマップにも記載されている[18ミリから140ミリのズームレンズ]ができるだけ小さくて軽いものであること,そして,これがもっとも私には重要ですが,[天体撮影用にIR改造されたもの]が条件です。そうした条件を満たす,いわゆる「ニコンZ50A」が発売されるなら,そのときにやっと,私はこのカメラを欲しいと思うのになあと残念に思ったことでした。

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 カメラの売れ行きが芳しくないそうです。その理由としていろいろなことが言われていますが,私は何をいまさら,そんなことは当然だろうと思います。
 ここでは,プロのカメラマンのようなカメラを商売道具としている人のことは除外するとして,一般の多くのカメラ好きのアマチュアのことを書きたいと思うのですが,そうした人の多くは,もう,今のカメラ業界にはついていけない世界になってしまったと考えているということがその理由です。
 第一に,わずか数年で新製品が出るので持っているものがすぐに古くなってしまうのにもかかわらず値段が高いということです。これまでもそういう傾向があったのですが,安価な製品の売れ行きが悪くなって,採算をとるためにさらに高級品ばかりになってしまったことで,容易に手が出なくなったのです。しかも,それほどの高級品が必要な人が多くいるわけもなく,また,こうした趣味のモノに高額のお金をかけたところで,では,何を写すの? ということがよくわからないのです。また,そうした高級品は重すぎ大きすぎで,主なユーザーである年配の人はわざわざ持って歩く気になりません。
 第二に,というか,これが最大の要因なのかもしれませんが,ソニーのミラーレス一眼カメラの売れ行きがよいのに影響されて,ニコンやキヤノンがその対抗馬として新しいマウントのミラーレス一眼レフを発売したことです。そこで,これまでのこのメーカーの愛好者が,この先何を買えばいいのかという先行きがさっぱりわからなくなってしまったのです。従来のマウントの交換レンズを新たに購入してこの先大丈夫だろうか? あるいは,新しいマウントの高い交換レンズを買っても,それがずっと存続するのだろうか? と不安なので,そうした投資が無駄になるかもしれないと心配で,みな買い控えです。これでは売れるわけがありません。
 実際,メーカーも新製品を出しては見たものの思ったほど売れないので二の矢が出せない,つまり,この先どうするか迷っているのです。

 ここからは私の話です。
 私がカメラを使うのは,このブログのように旅先での記録と星の写真が主な目的ですが,このごろは旅に出るときにカメラすら持たなくなってしまい,すべてスマホで済ませるようになりました。値段が多少高くとも,小さくて末永く使えるカメラがあればいいのに,1キログラムを越すような大きくて重たいカメラを持って海外旅行をしようとは決して思いません。私はこれまでニコン1を使っていましたが,何の説明もなく製造中止になりました。そして,新たに発売されたZマウントとかいうミラーレス一眼カメラもまた,いつ,同じ状況,つまり製造中止になるかわかりません。それに,大きくて重たくて,私の要求に合うようなものではありませんでした。
 また,星の写真を撮るカメラは天体が美しく写るように改造されたものを使ったほうがいいし,天体を写すためのレンズはオートフォーカスも手振れ防止も必要ないのです。このごろ発売される多くのカメラのカタログには見本として星空の写真が載っていますが,どの写真を見てもまったくたいしたことがなく,購買欲をあおるようなものではありません。むしろ,この程度かとがっかりする写真ばかりです。星空の写真は先に書いたように,天体用に改造したカメラを使って,撮影したあとで画像処理をするから見栄えがするのであって,どんな高級なカメラを使って写しても画像処理をしなければろくな写真にはならないのです。だから,カタログ用にそうした処理を施さない写真を載せてもがっかりするだけなのです。

 昔,日本の家電は現在パナソニックと名を変えたナショナル,そして,東芝,日立,三菱などの会社の製品が売られていたのですが,今はそうした会社の一般大衆用の製品を見かけなくなりました。たとえば,扇風機を買おうと思っても,そうした名の知れた会社の製品はほとんどないか,あったとしても意味のない機能をつけて高価にしたモノばかりになってしまいました。おそらく採算が取れないからでしょう。こうした現象は,将来のカメラ業界の姿を暗示しているかのようです。
 ある人が次のような書き込みをしていました。それは,今のカメラは「軽自動車では物足りなくなって普通乗用車を買おうと思ったのに,売っているのはバスやトラックしかないようなものだ」というのです。実際,メーカーの高級品志向で,おそらくあと数年もすれば,バスやとトラックのようなプロ仕様の高級品しかなくなってしまうでしょう。要するに,カメラが売れないのではなく,買う気の起きるようなものを売っていないのです。

 今から25年ほど前,私は,ニコンF3/Tという,当時はプロも使っていた最高級のカメラに単焦点の交換レンズを数本持って,シーズン外れの人の少ない京都などに出かけて,一日中気の向くままのんびりと写真を撮るのが極上の楽しみでした。それが今や,京都は人混みだらけになってしまい行く気もなくなり,さらに,カメラも高級品は持つことすらはばかられるほど重く大きく,持つ喜びもなくなってしまいました。
 どうやら,カメラ業界は根本的な間違いをして,迷路に入り込んでしまったようです。私のような50年以上も愛用しているニコンカメラのユーザーは,新しいマウントのカメラが出たためにこれまでずっと続けていたFマウントのレンズがこの先どうなるかもわからないから新しいレンズを買う気もなくなり,また,私が旅行に持っていくニコン1という小型のミラーレス一眼カメラを何の説明もなく製造中止にしたように,平気でユーザーを裏切ったことで信用をなくし,そしてまた,新規格のマウントをつけたミラーレス一眼カメラが思ったほど売れないものだから,会社自身もその将来を迷いに迷っているように感じられるのです。
 こんなことをしていては,この会社はこの先パイオニアとかオンキョーとかトリオとかいった昔のオーディオメーカーと同じ運命をたどっていくのでしょう。

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 いつも考え過ぎで凝り過ぎて失敗を繰り返すニコンから発売されたミラーレス一眼カメラもまた,予想通りの考え過ぎの製品でした。この新型カメラは,触れてみればわかるのですが,とても品質がよく,思ったよりも小さく,すばらしい製品です。私も無限にお金があれば欲しいカメラだなあ,と思いました。
 しかし,レンズマウントも今までのものとは違い,アダプタをつければ従来のレンズが使えるとはいえ,3種類を発売したキヤノンにくらべて1種類,オートフォーカスのモーターが内蔵されたものもないし,ニコン1のレンズもつかないので,思ったほど従来の製品との互換性もなく,さらに,保存メディアも異なり高価で,カメラ以外のものにそこまで巨額の投資をして買うほどの魅力は,私にはありませんでした。
 同じくして,間に合わせとしか思えないような製品を発売したライバル会社キヤノンからは,この程度のモノを出せば売れるという会社の読み筋通り,販売量ですでに大きく水をあけられています。同時に発売された新しいマウントのレンズの品ぞろえからして,キヤノンのほうに魅力を感じます。
 これでは,ニコンの新型カメラもまた,ひょっとしたらニコン1の二の舞になりそうな予感さえします。このニコンという会社の遺伝子は今回もまた変わるものではありませんでした。

 おそらく,キヤノンは,EOSが発売されたころのように,今後,ものすごい勢いで建てづづけに新しいミラーレスカメラを発売することでしょう。その多くはそれほど練られた製品ではないのでしょうが,それでも新しもの好きの愛好者は次から次へとそれを買い替えることでしょう。そのようにして知らぬうちにシェアのほどんどを奪うのです。これもまた,このキヤノンという会社の遺伝子です。そして,ニコンが,慎重に「満を期して」完璧な製品を発売するころには,もう,それを買うユーザーがいなくなってしまっているわけですが,これもまた,いつもと同じ,いつか来た道です。
 この会社のカメラに将来があるかどうかは来年発売されるであろう新製品でそのすべてが予測できることでしょう。
 …と冷静に分析しても,実は私は50年にわたるニコンユーザーで,家にはニコンのカメラやらレンズがごろごろありますし,愛着もあります。そんな私は,東京に来たついでに,久しぶりに品川のニコンミュージアムを訪れました。前回来たときは,このミュージアムができたころで,期待に反して望遠鏡の展示もなく,半分はステッパーの説明が占めていたのですが,その後,展示が変わったと聞いていたので,再び足を運んだわけです。

 ここで話が少し脇道に逸れます。
 私が東京で泊まるのは大井町の東横インです。以前はアワーズイン阪急に泊っていたのですが,そのころこのホテルは最上階に宿泊者専用の大浴場があって,とても快適でした。ところが,リニューアルされて,快適だったお風呂は宿泊者以外にも利用できるように改悪され,別料金になり,混雑してまったく快適でなくなってしまいました。
 そこで,私はそこから少しだけ遠いところにある東横インに定宿を鞍替えしたわけです。
 その大井町に,かつて,日本光学工業という名前だった今のニコンの本社がありました。東海道新幹線からもよく見えて,この工場が近づくと東京に来たと思ったものでした。工場はなくなったのですが,大井町からそこに続く道路は今も「光学通り」という名前になっています。
 今は,その駅から1駅北にある品川にニコンミュージアムがあることから,品川駅には大きなニコンの看板があります。

 さて,品川駅から歩いて7分,ニコンミュージアムは相変わらず閑散としていました。それでも中に入ると,少なからず見学の人がいました。
 前回と変わったのは,ひとつはステッパーの展示が減っていたことでした。それは無理もありません。ニコンのステッパーはオランダの会社にしてやられて,ユーザーをなくしてしまったからです。そして,もうひとつは望遠鏡のコーナーが増えたことです。しかし,実物はどこかの高等学校で昔使われていた大きな屈折望遠鏡が1台あっただけで,一般向けに売られていた小口径の屈折望遠鏡の1台も展示されていませんでした。私が行ったことのある四国の望遠鏡博物館から数台借りてきて展示すればいいのに,この会社は,自社の望遠鏡にはリスべクトがないのでしょう。
 それと比べて,カメラに関しては,そのほどんどのモノがずらりと並んでいました。さらに,レンズについても過去から現在まで,そのほとんどの製品が展示されていて,まさに壮観でした。しかし,会社が自社のカメラにリスペクトがあるとはいえ,実際には,この会社はFマウントのカメラ以外は常に失敗を繰り返しているのです。そして,評判の悪かったニコレックスのようなカメラは歴史からなかったことになっているし,ニコン1もまた,すでに触れてはならない失敗作。これもまた,この会社の遺伝子のなせる業でしょう。
 それでも熱烈な愛好者に支えらた不思議なこの会社は,いつも,そうした愛好者の求めるものとは少しずつずれがあって,それがまた不器用でかわいらしいとも思えるのですが,このミュージアムの展示もまた,そこに来る人の求めている姿からはちょっとだけずれがあるのが,私にはきわめて興味深いことに思えました。

◇◇◇
「ニコンミュージアム」-この会社はどこへ向かうのか?①

 予想通り,ニコンが新しいミラーレス一眼カメラを発売するのだそうです。そして,次いで,キヤノンも同じ時期に同じようなミラーレス一眼カメラを発売しますが,両者を比べたとき,どう考えてもキヤノンのほうが売れそうです。相変わらずニコンは商売が下手です。私はカメラ好きですが,私が必要なカメラは星を撮るための特別なものと旅に出かけたときに使う小さいものだけです。だから,今回発売されるカメラは残念ながらまったく必要がありません。買ったところでゴミとなるだけです。
 しかし,これまで50年来,カメラ業界の変遷を見てくると,今回もまた,相変わらず同じようなことを繰り返しているんだなあとつくづく感心させられます。それは,今から32年ほど前のオートフォーカスの一眼レフカメラの発売による変革期,そして,その次に起きた今から18年ほど前のデジタルカメラの発売による変革期,そして今回のミラーレス一眼です。こうしたことを考えてみると,今回もまた,今後もこれまでと同じことが繰り返されるのが容易に予想できます。
 それにしても,このミラーレス一眼という製品,とうの昔にドイツのライカが発売したものを今となって日本のメーカーが追随しているだけです。一眼レフカメラでドイツのライカを追い越した日本のカメラは,今度はドイツのカメラを模倣することになったのが皮肉なことです。これが今の日本の限界でしょう。

 このように,半世紀以上も生きていると,会社にも人間と同じように性格があるということがわかります。組織にいる人(社員)は変わっても,会社の遺伝子というのは変わらないもののようです。
 まずは,これまでの変革期を振り返ってみましょう。
 現在はキヤノン,ニコン,ソニー,オリンパス,フジ,ペンタックスというようなカメラを製造している企業がありますが,40年前もまた,ソニーの代わりがミノルタでしたが,それ以外は今と同じようなものでした。そのなかで,ミノルタ(ソニー)とニコン,そしてキヤノンが三つ巴の競争をしています。
 ミノルタが先行し,あわててニコンが不完全な製品を出して後を追い,それに次いでがキヤノンが画期的に新製品を出して追い抜いたのが一眼レフカメラのオートフォーカスへの変換期でした。デジタル化のときは,ニコンが先行し,これもまたキヤノンが満を持して新製品を出して追い越しました。ミノルタは変革に失敗して結局ソニーに会社ごと売られることになりましたが,その結果,苦し紛れに出したミラーレス一眼が結果的にニコンとキヤノンに先行することとなりました。そして,今回のミラーレス一眼カメラでは,オートフォーカス一眼レフカメラのときと同じように,ソニーが先行し,ニコン,そしてキヤノンが続いているわけです。
 その裏で,オリンパス,フジ,ペンタックスはいつも独自の路線を貫いています。というよりも,同じ土俵で戦うだけの体力がないのでしょう。

 私はニコンとキヤノンのカメラを使っていますが,両方を使ってみると,その両者の製品の長所と短所がよくわかります。簡単にいえば,ニコンは金と手間をかけて作り品質はダントツによいのですが,なぜか一見ヤワそうなキヤノンのカメラのほうが,地味な色を出すニコンに比べて,色彩鮮やかという意味でシロウト受けする写真が撮れます。天体写真用の改造カメラのほどんどがキヤノンのカメラであるのは作りがヤワいので改造がしやすいからだそうです。
 私が長年使っているニコンの不器用な製品作りを振り返ってみると,ひと言でいえば考えすぎということになります。そして受け入れられずよさが理解されずいつも失敗するのです。
 この会社はこれまでにもさざざまな新しい規格の製品を発売しては「常に」うまくいかず,その結果,ユーザーを無視して何の説明もなく撤退ということを何度も繰り返しています。このメーカーはずっと「Fマウント」以外の新製品はすべてうまくいっていないのです。にもかかわらず,未だに,ニコンという企業にブランドイメージがあってそれを信用している愛好者がたくさんいることの方が私には不思議です。

 しかし,プロカメラマンと一部のカメラマニア以外,写真を写す道具はすでにカメラからスマホに変わってしまった今,こんなことをこれからもやっていては会社の将来はないでしょう。私も普段はスマホで写真を写すようになってしまいました。そんな時代に,果たして,これからのカメラは生き残れるのでしょうか?
 いずれにしても,単なるユーザーである一庶民が,何の義理もないのに,どのメーカーであれ,その特定のメーカーをひいきにしたところで,その会社が製品を出しても採算がとれなければさっさと撤退をして裏切られるだけだ,ということだけは時代が私に教えてくれた真実です。
 もう,やれニコンだのやれキヤノンだのといったくだらない議論はやめにしましょう。新聞業界同様,カメラ業界の存続さえ危うい今,そんな会社同士のライバル争いなどといった古きよき時代は遠い昔のことなのです。

◇◇◇
「ニコンミュージアム」-この会社はどこへ向かうのか?①
「ニコンDL」発売中止-この会社はどこへ向かうのか?③

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 また,素晴らしい番組に出会いました。NHKBSプレミアム「白川義員”天地創造”を撮る」です。
 白川義員さんは「地球再発見による人間性回復へ」をテーマに原始の風景と聖地などを撮り続ける写真家です。私は1975年に発行された写真集「アメリカ大陸-白川義員作品集-」でその名を知りました。この本に出てくるアメリカ大陸の写真は,地球のものとは思えませんでした。ニューヨークやロサンゼルスの摩天楼でしか知らなかったアメリカに,本当にそんな場所があるのだろうか? と思いました。
 白川義員さんももう82歳になられたのですね。白川義員さんが最後の撮影旅行に出かけた姿をこの番組は追います。
  写真集「アメリカ大陸-白川義員作品集-」のあとがきから少し紹介します。

  ・・・・・・
 大自然の“神秘”とか“驚異”という言葉は簡単にだれもが使う。しかし,その実態をほんとうに認識している人間はいったい何人いるであろうか。
 私はアルプスやヒマラヤその他で得た深い感動と貴重な体験を,私のカメラを通してあらゆる人々に伝えたい。そして,すべての人々が,この美しいたった一つしかない地球をあらためて認識することによって,人間の良識や人間性の回復になんらかの道を見いだしえはしないであろうか,というのが私の念願である。
 私はアメリカの社会や国家としての体質については容赦なく批判するが,一方アメリカが,自国の自然を後世に残すべく傾注している,計画的,組織的かつ積極的な努力と,その実績については高く評価しているし,率直に賞賛をおしまない。
 宇宙の背後にある精神的な存在とのかかわりあいと,それに対する畏敬の感情がなかったら,人間は今日のような人間にならなかったであろうし,もし人間が単なる物質的存在にしか過ぎないならば,人間の尊厳や人権は根拠を失ってしまうことになるのである。
 人々の心の奥に浄土心象風景としてとらえられていたこの自然を,たたきつぶし略奪することに,日本人は快感を覚えたのである。欲求不満のエネルギーをも注ぎ込んで,自然破壊に猛進した。まさしく今日の世相にみる,神を忘れた精神の荒廃以外のなにものでもない。前後のみさかいもなく付和雷同するのが,哲学のない日本人の悲しい国民性だが,これほど急速に自国の環境を破壊した国家は,人類の歴史上日本以外になかろう。
 私の写真が,このたった一つしかない地球について,人々があらためて見直し,考え直す契機になればと願ってやまない。
  ・・・・・・

 私はこの番組を見て,多くを語る意欲をなくしました。それほど,大自然というのは言葉では表せない高貴なものだからです。人間が何を作ろうと,結局は大自然にかなうわけがないのです。
  「神の創った”天地創造”の姿」を撮る。
 人は,もっと自然に対して謙虚でなければなりません。これをぶっ壊すことが「文化」などではないはずです。
 …白川義員さんの写真は,私たちに改めてそのことを教えてくれるのです。それを教えてくれるために命をかけて写真を写してきたのです。

◇◇◇
月日が経って,私も若いころにあれほど憧れたコロラド高原の姿を見る機会がありました。そして,あの写真集にあったアメリカの大自然が確かに地球上に存在するということを実感しました。今日の写真はそのときに写したものの1枚です。

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 私はカメラを持って,春になれば満開の梅や桜,そして秋になれば紅葉の写真を撮りに行きます。また,旅行に出かけるときには当然カメラを持っていきます。
 しかし,現在では,普通の画角の写真はスマホで十分なので,カメラを使うときは,超広角だとか連射をするときとか,星を写すときとか,そうした用途に限られるようになりました。
 そんなわけで,カメラ業界も売れ行きが悪くて大変なのですが,そのために,販売する機種を高級品に特化しようとしています。しかし残念なのは「高級=大きく重い」ということです。

 プロならともかくも,私は重いカメラをもって旅行をしたいとは思いません。私が欲しいのは,シャッターチャンスを逃がさず,露出補正と連射の設定が簡単にできる小さいカメラです。
 観光地に行くと,写真を趣味としている人が必ずといってよいほど三脚をもっているのに出会います。また,重い機材をリュックに背負って,まるで全財産を持ち歩いているようなおじさんやらおばさんもいます。また,新製品が発売されると,すぐに「買いだ買いだ」と騒いでいる人もたくさんいます。
 趣味というのはひとそれぞれですが,私にはそれが理解できません。

 私が現在使っているのは次のものです。
 まず,海外旅行にも持っていくのはなるべく小さいほうがいいので「ニコン1 J3」に10ミリから100ミリのズームレンズと6.7ミリから13ミリのズームレンズです。35ミリサイズに変換すると,この組み合わせで18ミリから270ミリまで写せます。
 私が本当に欲しいのは,18ミリから85ミリくらいまでの50ミリまたぎのズームレンズなのですが,さまざまなメーカーから非常に多くの製品が出ているのに,多くの人が望むこうしたものがどこのメーカーにもないのです。開発するのが難しいのだそうです。
 また,普段は「ニコンD5300」という一眼レフに,様々なレンズをつけ代えて使っています。私にはこのカメラが大きさといい性能といい最も使いやすいカメラです。これより大きいとだめです

 星の写真を写すときに使っているのは「ニコンD5100」のローパスフィルターを取り払った改造カメラにIRフィルターを併用したものと「キヤノンEOSX8i」のIRカットフィルターを天体写真用に換装した改造カメラです。
 何事もいい加減な私でも,実はこうした秘密兵器を使っているのです。私は趣味といっても一部のマニアのように本格的に打ち込んでやっているわけではないのですが,それでもお星さまの写真は,こうした改造をしないとうまく写せないのです。

 このように,ニコンとキヤノンのカメラをともに使っているわけですが,世間ではライバルといわれる2つの会社のカメラをともに使ってみると,いろいろ本当のことがわかって興味深いものです。
 巷でいろいろと書き込まれていることの多くは,どちらか一方のメーカーの製品を使っている人がああだこうだと書き込んでることが多いのですが,その両方を使ってみてはじめてその優劣がわかるものだなあというのが私の実感です。私は,ニコンとキヤノン両方のカメラともレンズはニコンのものを使っています。それはキヤノンにはAPSサイズの魚眼レンズがないといったようにレンズには不便な面があるからです。キヤノンのカメラには,アダプターでニコンのレンズをつけることができますが,その逆はできません。

 ここで,この2つの会社のカメラの優劣について少し書いておきましょう。
 まず,カメラの出来と使い勝手は,ニコンのほうが圧倒的に優れています。特にカメラの出来はニコンのもののほうがいかにも製造にお金がかかっていると実感します。これこそが,ニコンが商売が下手といわれる所以でもあります。また,暗闇で操作したときにキヤノンのカメラはボタンが押しにくく混乱します。プレビュー画面や写した写真を液晶画面で拡大するのも圧倒的にニコンのほうが便利です。それに,先ほど書いたように,レンズは,APSサイズのカメラで星を写すには,ニコンのほうが種類が豊富です。APSサイズに特化した魚眼レンズや広角レンズ,そして,85ミリのマクロレンズなどはニコンにしかないのです。また,キヤノンのカメラにはシューカバーすらついていませんし,純正品もありません(ユーエヌという会社から専用品が発売されています)。バッテリーの持ちもニコンのほうがずっと優れています。
 このように,ニコンの製品のほうがずっと手が込んでいるし優位なのですが,カメラの作りが単純なだけキヤノンのカメラは改造がしやすいのです。実際に写真を写してみると,キヤノンのカメラは露出をバルブにしたときに露光時間が液晶ディスプレイに表示されるのに,ニコンのカメラにはそういった機能がないというような,そうしたちょっとした不便なことが結構あります。また,天体を写したときには,出来上がった写真もキヤノンのほうがきれいなのです。
 こうしたことから,多くの天体ファンの使うカメラがデジタルになったときにニコンからキヤノンに移行した理由がわかります。結果がすべてなのですから。そうしたちょっとしたことが,この二つの会社のカメラの売れ行きそのものを表しているのでしょう。
 いずれにせよ,これもまたいつも書いているように,走る道路もないのに日本で高級車を買っても意味がないように,カメラも,改造しないと星の写真も満足に写せなかったり,使いにくいところが改良されていないのなら,大きくて重くて高価なカメラを買っても使う機会がないから意味がないのです。

ogpkeymissiond810A ニコンが3月期の業績予想を予想を超えて下方修整したとか,DLというカメラの発売を中止にしたとかいって,株価が下がっていますが,今ごろになってそうしたことを騒いでいるのが,私にはとても不思議です。それは,このような状況はずいぶんと前に予想できたことだからです。
 私が大学を卒業した今から40年近く前,先輩や同期の学生たちは,ある者は東芝に就職をし,ある者はシャープに,そしてニコンに就職しましたが,それらの企業は,私が定年になるころにはどこも重い荷物をかかえてしまいました。こうした現在の状況を誰が予想できたことでしょうか。

 当時,私が一番印象に残っているのは,オリンパスとニコンに入社しようと受験をした先輩たちから,オリンパスは難しい入社試験の選抜があったのにもかかわらず,ニコンは単に大学の名前で入社する学生を決めていたという話を聞いたことです。所詮学歴だけの会社だったのでしょうか。
 それはともかく,私はそのころからずっとニコンのカメラを,EL,FM,FE,F3と使い続け,今も,D5300とD5100で天体写真を,ニコン1を持って海外旅行を楽しんでいるのですが,近ごろは本当にこれを使い続けていいのかな? と思いはじめていただけに,私の思っていた予感が的中してしまったようです。
 先ほど書いた40年近く前のこと,ニコンに就職した先輩が会社はカメラではない新しい分野に参入するとか言っていましたが,それがステッパーだったのです。しかし,この分野もまた,今は見る影がなくなりました。

 いつも思うのですが,この会社は販売している製品がちぐはぐなのです。
 D5,D500といった高級カメラはともかく(とはいえD500はユーザーの要望がなければ作らなかったカメラです),それ以外は何かひとつずれているのです。D810Aという天体写真用のカメラがありますが,あれはD810でやっと天体用の画質が写せるカメラを開発できたことに気をよくして念願の天体用カメラとしてD810のボディを流用してHα領域がよく写るフィルタをつけて発売したもので,天体用といいながら液晶モニターが固定であったり内蔵フラッシュがあったりと,高価な割にまがいもので,こだわりがあるようでずさんです。
 Dfは昔のフィルムカメラに比べたら大きすぎますし,D610は要りません。フルサイズの低価格のものを販売したいのなら,もっと性能を絞って安価にしなくてはD750と差別化できません。D7200もD500があるなら不要です。
 一般アマチュア用にはD5300,D5500,D5600,D3400 と4機種もありますが,D5500もD5600も要りません。D5300だけで十分です。D5600には「SnapBridge」というスマホと連動する機能がありますが,サービスセンターで説明を聞きながら操作してみたところ,私の用途には使い物にならずがっかりしました。
 それよりも私が欲しいのは,D5300AといったD810Aよりも安価な天体写真用のカメラです。どっちみちD810AだってD810の流用だから,D5300Aは単にD5300にHα領域がよく写るフィルタをつけただけのもので充分です。今や,一眼レフカメラの利点はスマホでは写せないものが写せるということだけなのですから,自然を写すアマチュアカメラマンの興味が星好きでなくても天体を入れた風景写真にシフトしているのなら,この分野に他社にはない美しい星空の画像が写せる安価なカメラを出せば,多くのアマチュアカメラマンは飛びつきます。そうすれば,一般の撮影用としてもう1台一般のD5300の方も購入するはずです。しかしもしそうなったとしてもD5300はボディーのみでは売っていないのです。今の販売体制では,同じレンズを2本も必要としないほとんどのユーザーは2機目が買えません。

 アクションカメラを発売しましたが,あんな後追いの既存の製品を超えていない中途半端なものでは売れません。今や「ニコンだから売れる」そんなブランド力は会社が思っているだけで,一般にはありません。実際評判もよくありません。もともと,この会社,これまでもアマチュア用の天体望遠鏡やらアンドロイドOSを内蔵したコンパクトカメラやらメディアポートやらといった新しい分野の製品に突然参入しても「ニコンようかん」以外にうまくいった試しがないのです。そして,売れないとなると,そんな製品はなかったことのように簡単に退散してしまうのです。だからそれを買った人はバカをみるのです。
 きっとニコン1も同じことになるのでしょう。第一,このニコン1というカメラ,後継機種はバッテリーも互換でなければSDカードもミニに変わってしまうというように,過去のユーザーを見限っているのです。買い替えられるものなら買い替えてみろ… みたいな感じです。
 ペンタックスやミノルタ同様,もう,創業100年を期して店じまいしてどこかと合併するしか生き残る道はないでしょう。今や「さえないけれど三菱」系だから三菱電機とか,あるいは,系列は違えどJVCあたりと一緒になって,動画の分野も一緒にしないと施しようがありません。ドローンをはじめとして,これまでは写せなかった映像が誰にも簡単に写せる身近なものになった今,映像機器メーカーにとってもっとも「ウリ」の時代なのに,スマホに勝てる魅力的な製品が出せないなんて,根本的な戦略が間違っています。
 私は,今後,どこのカメラを使えばよいのでしょう?

◇◇◇
「ニコンミュージアム」-この会社はどこへ向かうのか?①

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 昔,日本ではふたつのものが競い合うのが常でした。たとえば,トヨタと日産とか,朝日新聞と読売新聞とか,さらには,プロ野球の巨人と阪神とか,相撲の大鵬と柏戸とか,将棋の大山と升田とか,そういったものです。
 武田信玄と上杉謙信というのもありました。

 昨年の夏にアメリカに行ったとき,「日本って,車以外に何か誇れるものあるの?」と聞かれました。今や,アメリカでは,そういうふうにしか見られていないということに,私はショックを受けました。
 リーマンショックのときに,日本の企業もすべて窮地に追い込まれました。そして,韓国製品の台頭は,日本の電化製品をアメリカ市場から追いやりました。今や,テレビをはじめ,日本の会社の名のついた製品はアメリカではほとんど目にしなくなってしまいました。
 次は車か? と心配したのですが,私が思っていた以上に,日本車は安泰でした。
 しかし,リーマンショックのときにはアメリカでも売れたハイブリッド車は今やアメリカでは見る影もありません。実は,「プリウス」はアメリカではまったく売れていないのです。2050年までにエンジン車をやめるとトヨタは宣言したのですが,それもまた,その先が問題なのです。そのとき,フィルムからデジタルに変わったときのカメラ業界のように,電気屋さんが車産業に参入して,その結果日本製品が全滅する日が来るのでしょうか?

 このように,車だけでなく,オーディオにせよ,テレビにせよ,かつては日本の工業製品が世界を席捲していたのが,今や車以外は見る影もありません。スマホも日本国内「だけ」はまだSONYブランドが残っているようですが,海外では,アップルとサムソンばかりです。
 車以外で今でも日本の会社の製品が世界でほとんどのシェアを握っているのはカメラなのです。カメラこそ,日本の会社の「最後の砦」なのです。しかし,すでに,そのカメラさえ存在が危ういのです。

 一眼レフの時代が到来してドイツ製品を追い越してからというもの,ずっと日本のカメラ業界は,世界に君臨してきました。映像技術は今後もますます進化して,今まで以上に必要不可欠なものになっていくでしょう。しかし,そのことと日本のカメラ業界が安泰であることとは無関係なのです。
 それは,もはや一般の多くの人はスマホで十分な写真が写せるのでカメラが不要になってしまったことにあります。

 カメラにおいても,ニコンとキヤノンというように,日本製品が競い合っていたのはすでに古きよき時代のことで,今となっては,業界全体で協力しあって共存を図っていかないと,業界全体がつぶれていってしまう危機的状況になってきているのです。
 しかし,足の引っ張り合いと囲い込みが大好きなこの国のこと,乱立する多くのメーカーが,今もなお,縮小する少ないパイを求めて,競って新製品を次から次へと出していますし,未だにメーカーにこだわって敵対意識をむき出しにしているユーザーもいますが,そのうちにほとんどのメーカーが撤退して,ユーザーは裏切られ嘆き悲しむことになるでしょう。これもまた愚かな日本の「いつか来た道」です。
 「最後の砦」カメラ業界は,今後どこへ向かっていくのでしょうか?

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 今日は,新製品が続々発表になっているカメラの話です。
 「手に余る大きすぎる服」という言葉があるそうです。人の時間には限りがあり,他に仕事をもつアマチュアは多くの時間を趣味に割くことができないのですが,カメラ好きにとっては,写す時間がなくても,お気に入りのカメラを手に入れて,いつも眺めているだけで満足している人も多いものです。
 カメラに限らず,アマチュアというのは,プロからしてみれば奇特な人達で,メーカーにしてみれば上得意さんです。お金を貰わなくても,それに身も心も捧げることができるという不思議な人種だからです。
 好きだけの一心でやっているアマチュアには,プロは勝てません。

 先日,ニコンミュージアムを訪れたとき,「せっかく訪れたこのミュージアムで,過去の輝かしい栄光に比べて,全く将来の夢と展望が語られていない展示を見て,私は落ち込んでしまうのでした」と書きましたが,その後,この会社は,私の杞憂を捨てるかのように「画期的な」新製品「ニコンD5」と「ニコンD500」を開発して,将来の夢と展望を語りました。
 「ニコンD5」の常用感度がISO102,400,増感すると3,280,000(328万)というのにはびっくりしました。カタログに「,」が書いてないので,桁数が読めないくらいでした。そして,4K動画の導入です。こうした従来からの一眼レフの規格で,この先動画にも対応する製品を開発し続けるという宣言なのでしょう。
 同じような製品を発売しているキヤノンがシフトを動画に写して,静止画カメラはほどほどにお茶を濁して(それでも一流の性能を誇るのですが)いるのとは対照的です。キヤノンといえば,毎年元日の新聞に全面広告が掲載されて,それを毎年見比べると,この会社が映像の将来をどう見ているかという夢と展望を語っていて興味深いものです。今年は8K動画でした。
 将来,この夢が実現して動画が4Kから8K… となったとき,ニコンがプロ用の機材として現状の規格のままで静止画と動画をこなす製品を開発し続けることは私にはかなりの無理筋のような気がしますが,はたしてどうでしょうか。

 それにしても,プロというのは大変です。
 人からお金を貰う「仕事」は,人がしたくないことをするか,人のできないことをするか,あるいは,ひとりの力ではできないことを大勢で,したい時はもちろん,したくない時もする必要があるからです。中でも,人のできないことをする仕事というのは,才能が第一条件ですが,才能があっても,それに加えて道具を使う必要があるときはなおさら大変です。絶えず高性能の道具を持っている必要があるからです。
 それでも,ストラドを使うバイオリニストなら新製品が出るたびに買い替える必要はありませんが,カメラマンは,次々と新しいものを手に入れないと,確実に仕事をなくします。そしてまた,メーカーも,新しい技術を導入した新製品を開発し続けなければならないので,こちらも大変です。しかし,映像機器がこれだけ高性能になってしまうと,プロだけが相手では利潤があげられないので,それを奇特なアマチュアにも大いに買ってもらわないと商売にならないのです。

 こうした話題を楽しみにしているカメラ雑誌や話題にするブログが数多く存在しているから,そうしたアマチュアはまだ相当数いるのでしょうが,彼らがこれからもメーカーを支え続けていく購入層でありつづけるかとなると,疑問が残ります。ブログなどを読んでみると,本当によくわかっている人も多いのですが,中には,机上の知識だけでちんぷんかんぷんな意見を書き込んでいる人もいます。しかし,メーカーにとれば,そういう人も貴重なお客さまですから大変です。
 残念ながら,奇特なアマチュアではない私には,こうした最新技術の詰まったカメラはまさに「手に余る大きすぎる服」です。私が欲しいのは,星を写すために使うマニュアルできちんとピント合わせができる液晶画面とノイズのない高感度特性のカメラと,旅行に持っていくためのできるだけ小さくシャッターチャンスをのがさないタイムラグのないカメラ,それだけです。
 しかし,それでもまだカメラを使っているのは「マシ」な方で,旅先で目にするのはほとんどが「スマホ」です。そんな状況をなんとかしようと,カメラメーカーはカメラを高性能化して,必要のない性能までてんこ盛りにしています。私は買わないけど,奇特なアマチュア愛好家にそうしたカメラを大いに購入して頂いて,その利潤でメーカーがなんとか立ち直ってくれるのを祈っていますが,残念ながらその将来はやはり悲観的にしか思えません。

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「ニコンミュージアム」-この会社はどこへ向かうのか?①

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IMG_0626DSC_7696FSCN0156 DSC_7705 DSC_7702DSC_7703 DSC_7706 ニコンようかん

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 「N響の第九」を聴いた12月22日,渋谷に行く前に,一度行きたかった品川インターシティにできた「ニコンミュージアム」に行ってきました。
 この博物館は,2017年に創立100年を迎えるニコンがこれまでに発売したカメラやこの会社の他の製品を一堂に展示しているところです。入場は無料で,広いフロアは黒を基調にして,日本の精密機器の代表であるカメラがずらりとならんでいるその様は,まさに圧巻でした。
 きっと,数年前であれば,この展示を見ただけで,私は深く感動したことでしょう。私には,ニコンという会社はカメラと天体望遠鏡,というイメージなのですが,天体望遠鏡に関するものはほとんどありませんでした。その代わり,カメラの展示と並んでその存在を誇示していたのが,半導体製造装置である「ステッパー」に関する展示でした。それは,現在のこの会社の有り様がそのまま表されているようでした。

 私には,この会社は,現在,ずいぶんと迷っているように思えます。
 ここ数年,映像機器は転換期を迎えているようで,その変化は,こうした巨大企業の根底を揺さぶっています。そうした時代になっても,この会社の基幹製品が,昔は眼鏡とカメラ,現在はステッパーとカメラ,では,あまりに弱くなさけないように思えます。もれ聞くところでは,医療機器分野に活路を求めているといった話ですが,そんな後追いがうまくいくとも思えません。
 おそらく,今後は,映像機器というのは動画が中心となっていくのでしょう。そして,その技術革新は予想をはるかに超える勢いで進んでいます。それなのに,いつまでも静止画を中心とした映像機器しか一流の技術がないのでは,この会社は八方ふさがりでしょう。本当は,どこかの会社を吸収するなりして,もっと早く映像分野を充実させべきだったのでしょうが,それも,すでに後手となっています。
 魅力的な新製品がしばらく発売されていないのが,それを物語っています。これでは,買うほうは何に投資をすればいいのか分かりません。会社自体が方向性を決められず何も新製品が発売できないので「ニコンD5を開発中」などという当たり前の発表で時を稼いでいる始末です。

 たとえば,アメリカに建設された新しいアメリカンフットボールのスタジアムには21台もの8K動画カメラが常時ゲームを記録していて,再生したいシーンがあれば,たちどころに3D画像に加工されて,スタジアムの大型スクリーンで再現されるということが行われています。また,冥王星探査衛星は,高度11,000キロという非常に遠い距離から撮影された高精度の画像を送ってきます。すでに時代は,ソフトウェアを駆使した4K,8Kといった動画の時代なのです。動画から静止画が切り出せるのです。もう,根本的に考え方が違うのです。
 こういう時代になったのに,日本の得意としていた静止画カメラは昔の技術を引きづったまま,革新性を持つことができずにいます。それはこれまでの遺産が大きすぎるからなのです。おそらく,近い将来,というよりも早ければ次の東京オリンピックでは,現在のような日本製の光学ファインダーを搭載した一眼レフカメラがずらりとスタジアムに並ぶという姿は消滅してしまうことでしょう。

 これまでの遺産が大きければ大きいほど身動きができず,会社はそうした新しい動きについていけないというジレンマを抱えてしまっているのです。
 フィルムカメラからデジタルカメラに転換した時には非常にうまく新しい技術に移行したように見えたのですが,それも,結局はフィルム時代の交換レンズという遺産を同じマウントのまま延命させるための過去の技術の土台の上のデジタルカメラだったから,本質的には革新性がなく,これらの矛盾の積み重ねが沸点に達して,ついには障害となりかねない状態なのでしょう。
 今や,一般の人はコンパクトデジカメからスマホに移行して,コンパクトデジカメのユーザーをなくしました。そして,業界では,映像表現の世界自体が静止画から動画に変わってきているのです。だから,ニコン1という新しいマウントのカメラを出した時に,どうせ新しいマウントを出すくらいなら,ライカSLやSONYα7のような,もっと徹底的に最新技術を取り込んだ拡張性の高い,そして,動画を強力にした将来を見据えたものを開発して,ユーザーに映像機器の未来を語り,業界の主導権を握るべきだったのです。それが中途半端なものを出してしまったものだから,従来の保守的なユーザーからはそっぽを向かれ,逆に先進性を主張しようにもニコン1マウントでは発展性が低いので,すでに,この先どうしていくべきか困り果てているようにみえます。かつてAPSフィルムカメラを発売した時と同じ失敗を繰り返すのです。
 ミラーレスブームに乗り遅れるのが心配でお茶を濁すつもりだったのなら,CXフォーマートなんていう猫ダマシのような下手な自己主張をしないで,いつ撤収しても他社のレンズやカメラと互換性があるから大丈夫であるように,とりあえずはマイクロフォーサーズで堂々と他社のカメラに対して横綱相撲をとればよかったのです。今や,会社ごとに別のマウントでシェアを競うほど,一般のカメラユーザーはいないのです。
 そうすれば,それでもなお他社と異なるマウントで勝負したいのなら,時期を見て,先進性を主張した新しいマウントを使った本格的なフルサイズのミラーレスカメラを開発することもできたことでしょう。

 今日,カメラのヘビーユーザーとして残っているのは一部のプロのカメラマンと昔からの熱いカメラ愛好者だけ。
 従来からニコンカメラを愛好し興味を持っている人たちが集うブログやホームページには,さまざまな意見が寄せられているのですが,その多くは「ニコ爺」と揶揄されるほどとても保守的で,新しい進化を望んではいないようです。つまり,今でも,電車の中で紙媒体の新聞を読み,伝達手段にFAXを使い,喫茶店で煙草をくゆらせながら雑誌を読み,百貨店の包み紙に価値観をもつ,といった昭和時代の生き残りです。
 彼らは,業界全体が危機なのに,今でも,やれニコンだのキヤノンだのとライバル意識を燃やしています。時代錯誤もはなはだしいのですが,この会社はそうした人たちが愛好し,支えてきたのです。しかし,このままではそうしたユーザーが一番の足枷となって沈んていってしまうでしょう。
 ちなみに,私は,40年以上ニコンカメラの愛好者ですが,持っている株式はキヤノンです。
 きっと,そんなことはこの会社の偉い人たちはとっくにお見通しなのです。だから,迷っているのだと思います。
 それとも,「ニコンようかん」を主力製品とする和菓子屋さんにでも転換するのでしょうか? 「カメラ屋が和菓子を売っている」から「和菓子屋がカメラも売っている」に変わるのかな?
 同じような技術革新は,カメラと並ぶ日本の基幹産業である自動車からガソリンエンジンがなくなる日。
 かくして,この国の基幹産業は全滅するのでしょうか?
 せっかく訪れたこのミュージアムで,過去の輝かしい栄光に比べて,全く将来の夢と展望が語られていない展示を見て,私は落ち込んでしまうのでした。

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