13年前,アメリカで交通事故に遭って骨折して,アメリカの病院に1週間入院,帰国の許可が出て日本の病院に転院したのが私の入院初体験でした。私はケガでの入院だったので,毎日がとても退屈でしたが,それでも落ち込みました。病気で入院している人たちはそれ以上に毎日が大変です。入院というのは精神的に参ってしまうのです。病院でなくても,足腰が弱って,なかなか外に出ることもできないお年寄りもまた,精神的に参ってしまいます。
そんな人たちの心の支えのひとつがテレビです。だから,テレビは楽しくなくっちゃだめ,と思うようになりました。
それにしても,これだけたくさんのチャンネルがあるのに,どうして同じような番組ばかりなのでしょう。そしてまた,同じ時間帯に同じような種類の番組ばかり流すのでしょう。緊急速報だって別のチャンネルでやっているのなら流さない局があってもいいのです。そんなときこそ子どもたちのお守りや老人が楽しめる局があったっていいではないですか。
私はまったく見ませんが,民放のワイドショーはさまざまなゴシップやら政治問題までを取り扱っていて,まるで週刊誌です。元気な人ならそれを見て,人とうわさ話をしたり,喫茶店で雑談のネタにするのにいいのでしょうが,気分のすぐれない人がそんなものを見ていても,元気になれるものではありません。
高校野球だって,NHKが総合放送で1日中やらなくてもよさそうなものです。BS朝日でも同じものをやっていますし,興味のまったくないお年寄りにとれば,楽しみにしている通常の番組が中止になって見るものがなくなります。私の87歳になる母親は,見たい場組がない,テレビを見ていると憂鬱になるだけだといつも言っています。
私は普段,テレビはNHK総合のドラマとブラタモリ,そして,EテレかあるいはNHKBSプレミアム,それ以外はBSの民放の旅番組くらいしか見ません。必要があってニュースを見る必要のあるときだけCSのCNNjを見ます。見ていて元気になる番組がないときは,あらかじめ録画してあるN響の定期公演か「コズミックフロント」,あるいは「旅するフランス語」や「旅するドイツ語」を見ています。
そんな毎日なのですが,今年は,朝ドラ「ひよっこ」と大河ドラマ「おんな城主 直虎」の両方とも,元気の出るドラマなので,私はとても気に入っています。特に「ひよっこ」は最高です。この番組を見るといつも元気になれるのですが,それにも増して8月15日に放送されたものは圧巻でした。おもしろすぎて涙が出てきました。そして,ものすごく元気になりました。こういう番組ばかりだと助かるのです。
視聴率だとか,評判ばかりが先行するテレビ業界に限らず,この国は,工業製品もまた,どの会社も同じような製品ばかりで,他社にないもの,その会社でなければ手に入らないものがほとんどないのです。それは,その予備軍である女子高校生のファッション雑誌のマネをしただけの服装と同じようなものです。
ニュースもスポーツも芸能人のゴシップももう沢山です。うんざりです。不快なセクハラやパワハラのあるドラマ,戦争やらドルが上がっただの株が下がっただのといった相場ばかりの報道番組,そんな話題はもう見たくない,そう思っている元気のない人も多いのです。そういう人のための,安心できる結末のドラマと,見ているだけでもう行くことのない地へも行った気になれる楽しい旅,そしてグルメ… そんな元気の出る番組ばかりを放送するテレビ局があってもいいのです。そういうものが必要な人,それだけが喜びである人がこの社会にたくさんいるのです。
テレビは楽しくなくっちゃ。そういうチャンネル作ってください。そうそう,年寄り向けの栄養食品のコマーシャルは抜きでね。