地球の隣にある惑星火星は2年2か月ごとに地球に接近します。
地球と火星の軌道は太陽を中心とした円ではなくて太陽を一焦点とする異なる楕円なので,最接近しても毎回その距離が異なります。今回は最近10年間では最も近い距離になっているということですが、2年後の接近のほうがずっと近いのです。私は,何をそんなに騒いでいるのやら… と思うのですが,概して,星の話題というのは,こうしたいい加減なものが多いのです。
例えば,彗星と流星は異なるのですが,彗星も流れ星のようにス~ッと流れると思っている人,金環日食を空が真っ暗になると思っている人,火星は最接近した日しか見られないと思っている人など,ニュースを流しているアナウンサーさえいい加減で,こういうニュースを見るたびに,ほかのニュースもその程度のいい加減なものなのか,と思ってしまいます。
火星最接近についてはテレビのニュースで次のような突っ込みどころ満載のわけのわからない説明がありました。
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最接近する火星は「スーパーマーズ」とも呼ばれ,日没とともに南東の空に現れ,夜遅くには南の空に赤く光る様子が観測できます。これから1週間程度は,天候に恵まれれば,いつもより明るく大きい火星が一晩を通して,都市部でも肉眼で見ることができるということです。
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今回の火星の接近で私が最も驚いたのは,なぜか「スーパーマーズ」という言い方をみんながしていることです。どうしてそういう言い方をするようになったのか不思議な話です。いつ頃から誰が言い始めたのでしょう? 調べてもよくわかりませんでした。
きっと「スーパームーン」からきた言葉だと思うのですが,それにしても,これもまた日本らしいというか,おかしな話です。
「スーパームーン」というのは英語から来た表現で,これは1年に何度もある満月のうちで一番地球に近づくものを指します。ならば,もし「スーパーマーズ」という言葉があったとしても,それは今回の接近のことではなく次回の接近のときに使うべき言葉でしょう。英語では「スーパーマーズ」などという表現はなく「Mars Opposition」と言います。地球から見て太陽と正反対側に火星があるという意味です。
いずれにしても,火星は地球の半分の大きさしかないので,大きな望遠鏡でないと表面の模様を見るのも難しいものです。高価な小さな望遠鏡を買って赤いぼーっとした塊を見るよりも,近くの公開天文台に出かけて見せてもらうほうがずっといいでしょう。
大きな望遠鏡なら火星人や彼らの作った運河もハッキリと見られるので(冗談),きっと,その美しい姿に感動することと思います。接眼レンズにカメラを向ければ写真も写せます。