【Summary】
In 2025, Japan's university entrance exam introduced the "Information" subject, featuring a programming question on identifying the member with the smallest value. The issue lay in oversimplified assumptions, reducing the challenge to comprehension over programming. The author critiques the limitations of multiple-choice tests, emphasizing the need for creative problem-solving skills in society, which future AI advancements might assess.
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以前(2024年1月13日),大学入学共通テストに加わった新しい教科「情報」について書きました。
2025年1月18日,1月19日に大学入学共通テストが実施され,2日目にはじめての「情報」のテストが行われたので,出題された問題を見てみました。
その第3問がプログラミングに関する問題でした。
問題は公表されているのでそれを見ていただくことにして,ここでは,要点だけを載せます。そして,予想通り,DNCL言語の穴埋め問題でした。今日は,私が,この問題で提示されたDNCLを Rythonでプログラミングをしてみたので,そのプログラムと出力結果を載せることにします。
報道されている講評では,プログラミングというよりも読解力次第だったと書かれていましたが,講評どおり,問題内容を理解することが難しいとすれば,それは,むしろ,出題者側の責任です。「情報」では,情報をわかりやすく発信できるようにするというのが教科のねらいだからです。
さて,そんな皮肉はともかく,今回の問題の趣旨は
・・・・・・
部員1から部員Nまで部員がN人いて,仕事が空いている部員に工芸品の制作を担当させるプログラムを作る,というものですが,要するに,これは,1からNまでの部員それぞれに,ある数値を与えたとき,最も小さい数値である部員はだれか?
・・・・・・
を調べるという問題に帰着します。
例えば,部員1から部員6まで6人の部員がいて
部員 1 2 3 4 5 6
数値 6 2 3 5 1 4
だったとしたとき,最も小さい数値である「1」をもつのが「部員5」だということを導くプログラミングを作るということになります。
やり方のアルゴリズムは
・・・・・・
①まず,部員1の数値が最小だと決める。
②次に,部員1と部員2を比べて,数値が小さいほうを最小と決める。
③②で最小と決めた部員と部員3を比べて,数値が小さいほうを最小と決める。
④③で最小と決めた部員と部員4を比べて,数値が小さいほうを最小と決める。
これを,部員6まで繰り返す
・・・・・
ということになります。
これを,部員がN人いたときは部員Nまで同じことを繰り返すだけなので,アルゴリズムに汎用性が保たれるのです。
しかし,残念なことに,この問題では,部員は3人しか想定していないので,この問題の趣旨が生かされておらず,このアルゴリズムを理解していなくても,問題は解けてしまうことにあります。ならば,この問題で正解できた生徒が,プログラムが作れるか? というと大いに疑問が残ります。
プログラミングに限らず,たとえば,英語の和文英訳にせよ,数学の証明にせよ,作者の意図に沿って半分完成した状態を提示して,残りの部分を穴埋め問題にして正解を探す,というテストにどれだけ意味があるのかな? と私はいつも思います。
プログラミングにせよ,英作文にせよ,証明にせよ,無から完成させなければ,何もできないのに等しいのです。そこで,これがマークシートで行うテストの限界であって,したがって,マークシートで成績を競うことの危険性となります。今の社会に必要なのは無から何かを作り出せる力を持っている人材であって,他人の意図に従って誘導されて,未完成な部分の穴埋めができるような人材ではないと思うのです。
しかし,憂えることもありますまい。おそらく,近い将来,人口知能の発達によって,無から完成させたものを評定できるようになる日がやってくることでしょう。
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「Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.」とは
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