宇宙の大地図帳宇宙の地図

 本屋さんで「宇宙の大地図帳」という本を見つけました。宇宙に関する本は,以前はずいぶんと手間暇のかかったよいものがたくさんあったのですが,このごろはインターネットで優れた情報が手に入ることや,あまりに学問の進展が早くて本を作る間もなく変わっていくからなのか,なかなか充実したものに出会わなくなってしまいました。
 そうしたなかで,久しぶりに私はこの本に目がいきました。

 宇宙の大きさはあまりに広く,歴史はあまりに深いので,それを実感できる方法がありません。私も,いろいろと工夫をして表を作ったり,書いてみたりもしたのですが,なかなかうまくいきませんでした。そうしたときに見つけたのがこの本でした。
 私が苦労してなんとかわかろうとしていた距離の感覚がとてもよく理解できました。
 ただひとつこの本の欠点は,というよりも長所といえるかもしれませんが,それは,
  100,000,000,000,000,000,000km
といった表示がされていることです。あえて,すごく大きな数字だというインパクトを与えるつもりなのでしょう。本文を読めば10の21乗と書いてあるのですが,こうも0を並べられてもあまりに桁が大きすぎてよくわかりません。ちなみに,10の21乗とは10垓であり約1億光年です。

 1光年は
  9,460,730,472,580,800メートル
  9,460,730,472,580キロメートル
  約9.5兆キロメートル
なので,1光年とは
  約10,000,000,000,000キロメートル
つまり,
  約10兆キロメートル
だと思えばよいでしょう。
 学校で習う化学の授業でアボガドロ数を「6.02×10の23乗」と覚えますが,これは6千20垓なんです。実際に
  60,200,000,000,000,000,000,000
のように書いてみたことがないから,その大きさの実感がわかないわけです。だから,学校ではじめて教えるときに一度はこういう表示を黒板に書いてみるのはすごく大切なことです。 
 この本の場合も,わかりやすくするには,この大きな数字の隣に,10の21乗とともに1億光年という併記もされていればよかったのになあ,と思ったことでした。

 いずれにしても,私が驚いたのはこの本の値段でした。たった700円だったのです。
 この本の隣に,「宇宙の地図」という本がありました。手に取ってみると,「宇宙の大地図帳」と瓜ふたつ。違いは天体の写真と距離の表示が10の○○乗であったことぐらいでした。そうそう,決定的に違ったのが値段で,朝日新聞の出版物らしくこちらは2,000円もしました。悪くいえば,「宇宙の大地図帳」は「宇宙の地図」のアイデアのパクリ,あるいはジェネリック薬品とでもいいますか。
 私には,前者のもので知りたい目的はかなったので,そちらを購入しました。装丁も安っぽくて薄っぺらいので邪魔にならないし。
 私はずっと興味があるからこれで事足りるのですが,星のことにあまりなじみのない人がこの本を購入したら読んでいてわかるのかな,と思いました。そういう人は,子供向けの学習事典も同時に購入するといいと思います。いずれにしても,この2冊,星好きには見ているだけで楽しい,しかもとても便利な本です。

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