しない・させない・させられない

Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.

USA50州・MLB30球場を制覇し,南天・皆既日食・オーロラの3大願望を達成した不良老人の日記

タグ:すばらしきノースダコタ

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 やがてツアーが終わり自分の席に着いた。平日にもかかわらず,9割くらいの座席が埋まっていた。
 開始時間までも飽きないようにと,さまざまな趣向があり,やがて時間になったので,国歌の演奏がありそれをみんなで歌って,いよいよミュージカルがはじまった。
  ・・
 ミュージカルの内容は,この地の歴史を劇にしたもので,難しい内容でなく,きっと,英語がまったくわからない人にも十分に楽しめたであろうというものだった。
 本物の馬やらムースも出てきた。日が沈み,だんだんと空が暗くなって,舞台はさらに感動を深めていく。途中に休憩があって,後半には,有名(であろうとおもわれる)コメディアンのジョージ・ケーシーの漫談もあった。
 出演した歌手は12人,それと,主役の女性と年配の男性だった。
 ステージの右手には,6人のメンバーからなるバンドがいて,特に,バイオリンを弾くアンベリー・ローゼンという名の女性がきわめてすてきだった。ずっと踊りながらバイオリンを弾き続けていた。
 最後に花火も上がり,ミュージカルは午後10時30分に終わった。
  ・・
 終演後は,本当に真っ暗なインターステイツ94を30分くらい東に走って,どうにかディキンソンのホテルに戻った。
 アメリカのフリーウェイというのは,郊外では,街灯もなく,本当に真っ暗なのだと思った。

 メドラに2泊すれば,そして,天候に恵まれれば,これら全てを十分に楽しめると思った。とてもすばらしいところだ。観光客はほどほどいるので,閑散としているわけではないし,かといって,ごった返しているということもない。全くストレスを感じないのだ。
 しかし,ここまでたどり着くには,ビスマルクから車で2時間走ってくるか,さもなければ,ラピッドシティから延々と車で3時間北上するか,それしか方法はないから,日本人が観光に来るには,えらく大変なところだ。

 しかし,もし,ラピッドシティを観光した人が,さらにディープなアメリカを知りたいのなら,日本では決して見ることができない,そして,アメリカでもほとんど見ることができない延々と続く大平原をながめながら3時間北上してメドラに行き,ここで2泊して,テオドア・ルーズベルト国立公園とサカカウェア湖とメドラミュージカルを堪能することをお勧めしたい。
 あるいは,2時間のドライブでビスマルクから来ることもできる。
 そうすれば,そして,幸いにも天候に恵まれるのなら,他の人が経験できない,そして,他のどこでも体験できない一生の思い出となる最高の旅が実現することになるであろう。そして,この旅は,人生感をも変えてしまうであろう。
 私がそうであったように。

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 やっとのことで,決心をして,山を下り,再び車に戻った。今だ興奮冷めやらぬ,という状況であった。
 国立公園のループドライブを走って,インターステイツ94を眼下に眺められるスカイラインビスタという展望台からの景色を楽しんでから,サウスユニットのゲートに戻った。ここにはビジターセンターがあって,展示やら少しだけだか土産やらを売っていた。
 結局2時間半以上を国立公園で過ごすことになった。
 国立公園のゲートを出ると,すでに午後6時を過ぎていたので,そろそろミュージカルを見るために,野外劇場にいくことにした。
 劇場は,メドラの町の西はずれにあった。チケットを購入したみやげ物店を過ぎたところを南に曲がると,町に沿って南側に鉄道が走っているので,その踏み切りをわたり,小高い山を登っていくと,広い駐車場に出た。
 そこの先がスキー場のゲレンデのように坂になっていてそこに客席があり,谷を見下ろすような形に野外劇場があった。
 その向こうには,国立公園で見たものと同じ景色が広がっているという,すばらしいロケーションであった。

 駐車場の反対側には,バーベキューをする一角があって,そこがピッチフォースステーキフォンデューの会場であった。
 すでに,肉が大きな棒に差されて焼かれており,準備万端であった。
 客は,フォークとナイフをもらって,自分で好きな付け合せをプレートによそって,最後に肉をもらい,好きな席で食事をする,という按配だった。 
 場内にはステージがあって,そこではカントリーの演奏が行われていた。すずしいこともあり,しかも,景色も美しく,最高の雰囲気だった。
 当日は,老人会の団体が来ていて,思い思いに食事を楽しんでいた。
 100歳になるというお年寄りが紹介されて,みんなで祝福した。
 アメリカでは,こういうことが頻繁に行われている。退役した軍人さんをたたえる,ということも頻繁に行われている。
 こういうのはとてもアメリカらしい。
 この国の人は,どうして,こうも人生を楽しんだり,人生の苦労をねぎらったりすることが上手にできるのだろうかと,いつも思う。

 午後7時30分になって,ステージツアーがはじまった。
 ステージツアーの参加者は20人くらいだっただろうか。
 ミュージカルがはじまる前の客席に集まって,まず,このミュージカルがはじまった歴史やら演目やらといったことの説明を受けた。そしていよいよステージツアーが開始された。
 ステージに案内されて,様々な舞台層装置やらを見ることができた。
 楽屋にも入ることができた。
 楽屋裏には,大道具とともに,当日登場する馬が数頭,おいしそうにえさを食べていた。ステージのあるか向こうの山の頂には,このミュージカルで重要な役割をする生きたムースが1頭いた。

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 ループドライブを少しはなれて,別の道を少し進み,この先までいけるのかな,というような山を登ると,広い駐車場に出た。そこに車を止めると,近くに山道があって,人がふたり降りてくるのが見えたので,彼らの下ったその道を5分くらい登ってみると,この国立公園のもっとも高い地点へ出た。
 突如,360度の絶景が広がった。
 ここが,この旅のクライマックスだった。
 自分がこの公園のなかで一番高いところにいるのだ。
 風が強く,飛ばされそうになりながら,夢中で写真を撮った。
 最高の景色だった。こんな絶景は今まで見たことがなかった。本当に360度の展望,なのだ。地球のてっぺん,なのだ。しかも,この景色は,あるところは地球創世記を思わせるような岩山が続いていて,また,あるところは渓谷がつらなり,また,別のあるところは,侵食した山々がつらなっており,人の創造物はまったく見えないのだ。
 この景色を知らずして,何を語ることができようか。
 この先も,これほどの絶景をみることはないであろう。
 地球が丸いことも実感する。
 以前,グランドキャニオンを見たとき,人間の作ったものは,これに比べれば,なんと情けないものか,と思ったが,ここは,それ以上だった。グランドキャニオンですら360度の絶景ではないし,人が多すぎる。
 どんな山でも,登れば,山頂で360度の絶景をみることはできるが,眼下に人工物のない,それも,これほど変化にとんだ,地球創世記のような,そんな風景は見られないであろう。
 もし,この場所で満点の星空を眺めたら,どんなにすごいことだろうか,とも思った。
 そうして,しばらくこの絶景に浸りきっていたけれども,最後まで他の人はだれも来なかった。
 本当に,地球を独り占めしていた。
 この景色を,いつまでもいつまでも見ていたかった。

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 メドラのダウンタウンを目指し,インターステイツ94を降りる。
 メドラの町は,ちょっとした高原のリゾートタウンのようで,町の端に予想以上にたくさんロッジが立ち並んでいたから,予約をしておけばここに宿泊できたのだ。そういえば,インターネットのメドラのサイトにここの宿泊施設が載っていて,結構手ごろな値段で予約できたので,日本でそうしようか迷ったことを思い出した。
 適当に車を止めて,まず,カーボーイ博物館へ入った。結構大きな博物館で面白かったが,時間がないので,早々に後にする。
 次に,近くに観光案内所があったので,中に入る。午後2時ごろだった。
 メドラの地図をもらい,メドラ野外ミュージカルと国立公園のことを聞く。
 まず,メインストリートの西端にあるチケットを売っているみやげ物店でチケットを入手して,その後,国立公園へ行き,夜,ミュージカルを見ればいい,と言われた。ミュージカルは夜8時半から。国立公園のサウスユニットは1周するのに2時間くらいだということだった。

 みやげ物店へ行って,チケットを購入する。すごく親切にいろいろと説明をしてくれて,ミュージカルは夜8時30分からで,終了するのが10時半。 -きょうのホテルが決まっていてよかった- その前の午後6時半から,ピッチフォースステーキフォンデュー,12オンス(340グラム)のステーキが食べられるのだという。そして,午後7時半からはステージの裏手に上がって,楽屋裏のツアーがある。そのセットを薦められたので,せっかく来たのでそれらをすべて予約することにした。全部で70ドルくらいだった。安い!
 ステーキを食べるのはいいけれど,レストランでひとりだけというのもどうかなあ,と日本で調べていたときに躊躇していたのだけれど,実際に来てみると,そういうものではなく,これは最高の選択だった。

 チケットを入手して,まだ,昼食をとっていなかったのを思い出して,メドラの街中にあった売店でハンバーガーを買って,急いで食べながら,国立公園を目指した。
 国立公園のサウスユニットは,ノースユニット以上にすばらしいところだった。
 ゲートを越えると,はじめにインターステイツ94をまたぐ橋を通る。インターステイツ94自体が国立公園の南端を駆け抜けているのだ。その後しばらく走ると道は二股に分かれてループになる。どちらから進んでも1周できるループドライブだ。道からはどこも見ても360度の絶景で,バッドランド国立公園と双璧だった。
 テオドア・ルーズベル国立公園のよいところは,なんといっても,ほとんど観光客がいないことだ。まさに,国立公園を独り占めにできる状態なのだった。
 途中に,バッファローの群れが住む平原があった。さらに,別のところでは,野生の馬に出会った。また,別のところでは野生の鹿に出会った。挙句の果ては,バッファローの親子連れが目の前に居座り,車が通過できなくなり,しばらくそれがとおり過ぎるのを待つという状況になった。
このときは,さすがに恐怖すら覚えた。いくら高速でバックしても,バッファローの速さにはかなわないであろうから。
 そうして,極めつけは,バックヒルというところだった。

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 テオドア・ルーズベルト国立公園は「地球の歩き方」のアメリカの国立公園編にも掲載されておらず,情報のほとんどなかったし,たいして期待もしていなかったが,実際は予想を絶する雄大さとすばらしい景観だった。
 テオドア・ルーズベルト国立公園は,ノースユニットとサウスユニットに分かれている。
 どちらのユニットもビジターセンターのあるゲートから,15マイルほど道が伸びていてドライブすることができる。
 ノースユニットに行くには,インターステイツ94を通るベルフィールドから北に国道85を数時間どんどんと走るか,私がそうしたように,ワットフォードシティから国道85を南に下るしかない。

 ノースユニットのビジターセンターに着いたが,道路ががけ崩れで,ノースユニットの道路はキャプロッククーリートレイルから先が閉鎖されているという。でもそこまでは行けるので,行って引き返してくればいい,とレンジャーに言われた。
 そこで,ともかく行ってみることにした。

 しばらく走っていくと,デイキャンプができるピクニックエリアがあって,それを過ぎると,今度は,ロングホーンという野生の牛の群れがいる平原があった。そのはるか向こうにはバッファローの姿もあった。そこで,望遠レンズでロングホーンの写真を撮っていたバイクに乗った2人組に出会ったので,私はこの地ではめずらしい日本人の観光客で,日本からわざわざノースダコタ州に観光で来たのだけれど,君たちの使っているキヤノンは私の国日本のカメラではないか,といったくだらない話をした。
 その後にすれ違ったのはわずかに数台だった。ここには,人がほとんど来ない。したがって,絶景を独り占めにできることになるのだ。
 これは限りなく贅沢なことに違いない。

 やがて,レインジャーに言われたとおり,道はクローズされ,途中までしかたどりつけなかった。
 ここの駐車場に1台だけ車が止まっていて,キャプロッククーリートレイルを歩いている人がいた。
 途中から先に行くことができなかったのは残念であったけれど,人がいない絶景を堪能したことに満足して,ノースユニットをあとにする。
 今度は,サウスユニットをめざして,国道85を南下した。
 国道85を走っていくと,右手には国立公園の壮大なバッドランド,左手には雄大な牧草地帯と真っ黒い牛の群れ,そして,ところどこに石油を掘る井戸が見えてきた。
 何度も思うが,なんというすごい景色だろうか。

 そんな状態が,この先もこの先も,延々と続いて,そうして,ついにインターステイツ94を通るベルフィールドに到着した。
 インターステイツ94に入ってしばらく西に進むと,メドラという小さな町に着いた。
 この町こそが,ノースダコタ州最大観光地であり,サウスユニットの入り口である。

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 道路はまだ延々と工事中ではあったけれど,それでも,相変わらず雄大なことに変わりはない景色を眺めながらさらに進んでいくと,州道22は,やがて行き止まりとなり,東西を通る州道23とぶつかった。
 この道を左折して西へ行かなくてはならないのだが,まだ,時間に余裕があったので,ひとまず反対側に右折して,ニュータウンという名前の町まで行ってみることにした。
 右折すると,すぐに大きな湖が現れて,長い橋がかかっていた。
 これがサカカウェア湖だった。
 湖畔には,野生動物保護区や公園やリゾート施設があった。橋の手前にはインディアンに関する役所があったり,湖畔にまで降りられる道があったりした。

 私は,ここにあったガソリンスタンドで車を止めて小休止した。飲み物を買ってから再び出発して,橋を渡ってさらにしばらく走ると,ニュータウンという小さな町の賑わいに出た。
 道路の両端に駐車帯のあるこの場所が,ニュータウンのダウンタウンなのだろう。
 銀行やら,スーパーマーケットやら,ガソリンスタンドやらがあった。でも,ここもどうやらそれだけの町だった。
 ここで引き返し,州道23を西に進むことになった。
 改めて逆の車線から外を見ると標高が高いところから見下ろす形になって,橋が湖に溶け込んでいて,すばらしい景色だった。
 そのような州道23を進んでいくと,この道は,その後,一旦南下をして,ふたたび西に逆L字型にもどった。そのまましばらくしたら,ワットフォードシティという町に着いた。
 もう少し先まで行けば,今,シェール石油開発で人が押し寄せ,泊まるところもないと日本のNHKBSの番組で放送していたウィリストンという町にたどり着くはずだ。

 ワットフォードシティにも大きな石油会社があって,州道23は石油を運ぶトレーラーで一杯だった。
 このワットフォードシティで,さらにウィリストンをめさして西に進む州道23を離れ,左折して,進路を南に取り,今度は国道85を走る。
 そうして,しばらく行くと,右手西側に,延々と,バッドランド国立公園で見たのと同じような風景が広がり始めた。
 これがテオドア・ルーズベルト国立公園だった。

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 早朝,ここにホテルを確保したことは,結果的に大正解 -メドナに泊まればもっとよかったのだか- であった。
  ・・
 きょう1日でノースダコタ州のどこまで行くことが出来るかを地図を見ながら考えてみると,まだ朝早いので,ここディキンソンから州道22をそのまま北上して行けば,ノースダコタ州の中央部にあるサカカウェア湖畔にまで足を伸ばせそうだった。
 そうして,そのあたりまで行ったら進路を西にとってワットフォードシティという町まで行って,今度は南に進路を変更して,コの字型にルートをとり,州道85を下れば,ちょうど,テオドア・ルーズベルト国立公園のノースユニットのゲートに到着し,さらに南下して,インターステイツ94のベルフィールドまで戻ってくれば,その西にあるメドラに着く。
 メドラには公園のサウスユニットのゲートがある。
 …そうしたコースが作れることがわかった。

 そこで,ディキンソンからインターステイツ94を横切って,州道22をひたすら北上することにして,車に乗り込んだ。
 きょうは平日。ディキンソンはちょっとした通勤ラッシュの真最中だった。町の北側に大きな会社があるようで,車線を広げている工事中の州道22はただでさえ走りにくいのに,やたら会社の駐車場に入れるために右折する車があるようで,渋滞気味だった。
 それでも,その地点を過ぎると,あっという間に市街地は終わって,また,一面に牧草地が広がるようになった。遠くに見える黒い点の集まりは牛の群れだ。

 サウスダコタ州との大きな違いは,石油だった。
 一面の牧草地に時折見えるのは,石油を採掘する旧式の井戸。そして,ひときわ目立つのが,シェール層から石油を発掘する新型の掘削タワーと採掘した石油をストックするのであろう石油タンク群。
 ノースダコタ州の西部からモンタナ州,そしてカナダに広がるバッケン油田は,シェール層という岩盤に大量の石油が眠っているということだったが,石油の高騰と技術の革新で,不可能であるとされてきたシェール層からの石油の採掘が採算的にも可能になって,現在,オイルラッシュの真只中。
 労働者が全米から押し寄せ,ノースダコタ州は好景気に沸いている。失業率は1パーセント以下である。
 アメリカは石油の輸出国に転換するということだ。

 うわさには聞いていたけれど,本当に目の当たりにすると,なぜかものすごく感動する。
 そんなわけで,道路も拡張工事中ばかり。道路工事用のトレーラーと石油を積んだトレーラーが頻繁に通過する。とはいっても土地は広く,道も広いので,雄大な景色に変わりはない。
 さらに,なお,延々と平坦な景色が続いて,それでも,日本ではこんな景色は見たことがないので,いつまでもいつまでもずっと感動しながら走っていくと,やがて,本当にしばらくして,州道22がリトルミッスーリ州立公園に近づいたころ,急に景色が変わり,地層の連なりが脈々と見えるビュート,そして,奇妙な形の山並みが続く,まったく別の風景になった。この景色であれば,日本なら超一流の国立公園だ。

 道も,これまではまっすぐだったのが,谷をぬうように曲がりはじめた。
 確か1年ほど前,このあたりは水禍に見舞われたところである。このあたりの道路工事は拡張工事か,はたまたその復旧か。
 その先も,延々と,そうした景色が続いていたが,やがて,しばらくして,ようやく,大きな川の見えるところまで来た。

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☆5日目 7月25日(水)
 朝5時起床。ホテルに朝食コーナーがあったので,とりあえず,シリアルとコーヒーをとる。他のお客さんが来て,雑談をする。彼女は,私を,時間をつぶしているホテルのフロントマンと勘違いしていたようだった。
 朝食を終えて,部屋に戻って,バッグを車に入れ,チェックアウトをする。とはいえ,フロントには誰もおらず,フロントの机の上には部屋のキーが一杯ちらばっていたので,同じようにキーを置いて,勝手にチェックアウトをした。

 まだ,午前6時だというのに,どの客もチェックアウトが早い。観光施設もほとんどない町でのんびりしていても,どうしようもないから,みんな先を急ぐ。給油地のような町だ。
 国道85に沿って進む。町の北のはずれに,博物館という小さな建物があったが,何が展示されていたのかは,行かなかったのでわからない。
 きょうは1日,ノースダコタ州をまわれるだけまわろう。そして,最終の目的地はノースダコタ州の一番の観光地だというメドラであるが,どういうところか想像がつかない。

 まず,ノースダコタを東西に走る主要道路インターステイツ94を目指すことにして,ともかくこの国道85をインターステイツ94の走るベルフィールドという町まで北上した。
 はじめは晴れていたが,しばらくして,あたり一面霧になった。車の窓からは何も見えなくなった。
 朝霧は晴れという。きょうも天気に恵まれそうだ。
 あたり一面真っ白な中を,道の黄色線だけを頼りに慎重に走る。
 時折,すれ違う車のライトと,前を走る車のバックライトだけが妖しく光る。
 本当に,ずっと真っ白いだけの不思議な世界が続く。時折,霧のはれたところにきて,一瞬,きのう見た大平原と牧草の緑色があざやかになるが,また,すぐに,真っ白な世界に舞い戻る。
 そんな,真っ白な世界が永遠に続いている。

 本当に本当にしばらく走っていくと,やっとのことで,霧が晴れわたる。すると,夢から覚めたように,緑色の色彩に目を奪われた。そして,牧草地に道だけがまっすぐに伸びる,そんな,これまでの風景に舞いもどった。
 この道を,また,しばらく走ったら,やがて,遠くにベルフィールドの町が見えてきて,右手前方にモーテルがあった。そして,そのはるか向こうに,ノースダコタ州を東西にまっすぐ横断するインターステイツ94が走っているのが見えてきた。
 インターステイツ94に沿った町で,きょうの宿泊先を探そうと思った。といっても,ホテルのありそうな町は,この国道85とインターステイツ94が交差するベルフィールド,その東のディキンソンくらいだった。その次は,もう,ビスマルクになってしまうので,きょうの目的地のメドナからは遠すぎる。
 確かにベルフィールドにはモーテルが存在したが,なぜか宿泊する気が進まず,次の大きな町であるディキンソンを目指し,インターステイツ94を東に走ることにした。

 午前8時ごろ,ディキンソンに到着した。この町も,例によって,インターの近くに数件のホテルやガソリンスタンド,そして教会や学校,住宅地がある町だった。町の中の道路はどこも工事で,車線の規制があって走りにくかったが,ともかく,一番手前にあった「スーパー8」に入る道を見つけてなんとか右折して,ホテルの駐車場に車を止めて,フロントへ行った。
 ノンスモーキングのシングルという条件の部屋が空いていないかと聞いたが,部屋がないということを言われた。親切なフロントのおばちゃんは,隣のホテルに聞いてみるといって電話をかけてくれた。
 道の向こう側に,「セレクトイン」というホテルがあって,そこには希望の部屋があるということだったので,そこまで道を横断して歩いて行って,ホテルに入ると,すでに連絡を受けていますといった顔をしたフロントの男性がチェックインの手続きをした。結構値段が高かったが,仕方がない。
 石油ブームでノースダコタ州はホテルが取れないという話は,まんざらうそでもないようだった。
 もう,部屋に入っていいということだったので,とりあえず,部屋にカバンだけ入れて,改めて出発だ。

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