しない・させない・させられない

Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.

USA50州・MLB30球場を制覇し,南天・皆既日食・オーロラの3大願望を達成した不良老人の日記

タグ:やっと晴れたか!夏2020

DSC_1773s (5)nhawel 18inchcolorsm DSC_1792s2 (4)heowise DSC_1803t (4)lemmon

 このごろは,星見が目的でなくとも,日が暮れたあとにドライブをすること自体が楽しくなってきました。それは,この猛暑,お昼間に外出したくないことと,どこに行ってもきたないだけの日本のありのままの風景を見なくてもよいのが理由です。さらに,夕暮れや明け方は空が美しいことも魅力です。
 8月20日木曜日。
 しばらく続いた晴天もどうやらこの日まで。天気予報では来週はずっと曇りでした。そこで,お昼間はABEMAの将棋チャンネルで王位戦第4局を観戦し,念願の藤井聡太二冠達成を見届け,夕食をとったあと,星見に出かけました。
 しかし,日暮れどき遠くの山がかすんでいて空が澄んでいるとはいえなかったので,きれいな星空はまったく期待できませんでした。そこで,何を見るでもなく,夜のドライブを楽しむつもりで,今回は海岸に行きました。
 好きな音楽を聴きながら夜の海辺をドライブするのも,なかなかのものです。

 さて,星空の話です。
 このところ,立て続けに出現した明るい彗星もみな暗くなってしまい,空の上は特に見るべきものがなくなりましたが,私は,11等星より明るい彗星はみな写そうと思っているので,暗くなったとはいえ,この晩は,ネオワイズ彗星(C/2020F3 NEOWISE),ハウエル彗星(88P/Howell),レモン彗星(C/2019U6 Lemmon)を写そうと考えていました。
 しかし,観測場所に着いても,思った通り,晴れてはいても空は灰色で,とても満足な写真など撮れるようには思えませんでした。これには落胆しましたが,ともかく,写してみることにしました。
   ・・・・・・
 まず,一番先に沈んでしまうハウエル周期彗星(=1番目の写真)からはじめます。
 ハウエル彗星は,周期5.5年の周期彗星です。1981年8月29日,カリフォルニア工科大学(California Institute of Technology)のエレン・ハウエル(Ellen Howell)女史が,パロマー天文台の口径18インチ(46センチメートル)シュミット望遠鏡(=2番目の写真)で得られた写真用プレートで発見したものです。エレン・ハウエル博士の研究対象は,小さな太陽系天体である小惑星,彗星で,可視から電波までの範囲の波長でさまざまな観測ツールを使用して,これらの天体の体の組成,サイズ,形状,および表面構造を研究してきました。
 ちなみに,口径18インチのシュミット望遠鏡は,現在はパロマ天文台のビジターセンターでその余生をおくっているものです。
 ハウエル彗星は,地平線に近いため思ったより暗かったのですが,なんとか写真に写りました。
  ・・
 次は,おなじみのネオワイズ彗星(=3番目の写真)です。
 2020年3月27日,赤外線観測衛星「NEOWISE」の観測から発見されたこの彗星もまた,ずいぶん暗くなってしまいました。まだ,立派な尾が見えますが,そろそろ見納めです。せっかく明るくなったのに,明るかった時期が短かったことと,梅雨空で晴れず,多くの人が見ることができなかったのが残念です。
  ・・
 この日の最後はレモン彗星(=4番目の写真)。
 2019年10月31日,レモン山天文台のサーベイによって発見されたこの彗星もまた,けっこう明るくなったのですが,梅雨空でその時期に見ることもなく,暗くなってしまいました。
 前回8月14日,私が星を見にいったときに,ネオワイズ彗星とパンスターズ彗星は写したのに,レモン彗星がこのふたつの彗星の近くにいたのにすっかり忘れてしまっていたので,この晩,写しました。淡く,ぼんやりとした姿でした。
  ・・・・・・
 さあ,これで,ほとんど晴れなかったこの夏の星見も終わりです。来月は,空気が澄んで気候も安定する星の美しい秋がいよいよやっとやってきます。

cometsDSC_1764t (4)n2IMG_0683s (2)IMG_0665n (3)

☆☆☆☆☆☆
 2020年,梅雨の間はまったく晴れませんでした。
 梅雨が明けてもなかなか星空は戻らず,7月31日にようやく晴れたのを見て,月明かりの中,ネオワイズ彗星(C/2020F3 NEOWISE)を写しに行ったことはすでに書きました。そのそのときに写真に収めたのは,ネオワイズ彗星とレモン彗星(C/2019U6 Lemmon)でした。その後は,雨は降らねど,ほとんどが曇り空でした。そして,再び星空がもどった8月14日は月明かりもないので,気楽にネオワイズ彗星を写しにいくことにしました。
 レモン彗星は現在11等星ですが,前回写したので今回はパスしました。この晩は,パンスターズ彗星(C/2017T2 PanSTARRS)がネオワイズ彗星からわずか5度ほどの場所にあって,私が使っている360ミリ望遠鏡の直焦点で1枚の写真に収まります。

 久しぶりの快晴でした。透明度もよく,街灯りでいつもなら空が明るい南の空にもさそり座がきれいに輝いていました。天の川もよく見えました。まず思ったのが,月明かりがあるのとないのとではこれほど違うのか,ということでした。
 ネオワイズ彗星は西の空,うしかい座にあって,アークトゥルスから順に追っていくと簡単に探せます。また,前回探せなかったパンスターズ彗星もわかります。
 こうして写したのが今日の1番目と2番目の写真です。1番目の写真では,左側がネオワイズ彗星,右側がパンスターズ彗星です。
 ネオワイズ彗星は予報では7等星なのですが,予報よりはずっと明るく,双眼鏡でも尾までよく見えました。パンスターズ彗星は11等星。長い間楽しめたのですが,そろそろ見納めです。

 8月12日はペルセウス座流星群が極大になった日でした。しかし8月12日は天気がよくなく,この日に少しは見られるかな,と思って,カシオペア座からペルセウス座にかけて,ずいぶん写真を写してみた(=3番目の写真)のですが,残念ながら流星はまったく写りませんでした。それでも,これ以外の場所に目を移したとき,北斗七星のあたりを,北斗七星よりの長く星が流れたのは感動しました。
 私が星を見にいくと,毎回,結構明るい流星を見るのですが,いつも別の場所の写真を写していて,それを収めることができないのがとても残念です。帰宅して写真を整理していたら,試しにうしかい座の付近を写した1枚に,ネオワイズ彗星とともに流星が写っていましたので,これで満足することにします。
 いつも思うのですが,日本はどこも明るくて満足に星も見えないのに,都会でもこの日に限って流れ星がビュンビュン飛ぶような報道をしているのが,私にはよくわかりません。
  ・・
 このところ暑いこととコロナ禍で,お昼間に外出する気がまったくなくなってしまったのですが,そうでなくても,日が暮れたあとの世の中はとても落ち着きます。今や,星を見るのでなくても,深夜の人が少ない時間に車を走らせるほうが気持ちがいいです。
 それにしても,夜になっても気温は30度くらいあって,星を見ながら汗が出てくるような経験は珍しいことでした。

Moon_age 10.5 2015_10_23 (3)DSC_1714s (5)DSC_1697s (3)

 2020年はおかしな年です。まるで,天が人類を試しているかのようです。
  ・・
 梅雨入りをしたら,まったく晴れなくなりました。日照時間は例年の3割だそうです。そしてまた,まったく台風が発生しませんでした。
 何かすべての歯車が狂っているようです。それはおそらく,世界を作った神様のプログラムにバグがあったからなのでしょう。
 そんな中,人類が慌てふためく姿を天が視察に来たかのように,突然,明るい彗星が立て続けに地球に接近しました。

 そのはじめがアトラス彗星(C/2019Y4 ATLAS)でした。4月に明るくなって肉眼でも見えるということで,大いに期待しましたが,予想に反して明るくなりませんでした。
 次がスワン彗星(C/2020F8 SWAN)だったのですが,この彗星の軌道から,南半球ではその明るい姿が見えたものの,北半球では明け方と夕方の,まだ空が暗くならないころに地を這って見えただけでした。しかも,月明かりが邪魔をしました。
 その次がレモン彗星(C/2019U6 Lemmon),そして,極めつけがネオワイズ彗星(C/2020F3 NEOWISE)でした。しかし,レモン彗星もネオワイズ彗星も,最も明るかったころはずっと天気が悪く,いずれも,雲がその姿を覆い隠し,見ることがかないませんでした。
 特に「2020年の大彗星」となったネオワイズ彗星は残念でした。私はその姿見たさに北海道まで足をのばすことになりましたが,幸い,北海道でその美しい姿を見てきたことは,すでに書きました。

 さて,7月31日。ついに晴れました。自宅で青空を見るのは1か月ぶりのことでした。すでに7月の新月はとうの昔に終わり,南の空には,1番目の写真のような月齢10の明るい月が星の光を隠していました。いつもなら,こんな月の明るい時期に星見などしません。しかし,久々にやってきた晴空だったので,ネオワイズ彗星を見にいくことにしました。
 ネオワイズ彗星は,2番目の写真のように,さすがにもうずいぶん暗くなっていたのですが,それでも簡単に双眼鏡で見ることができました。北海道で見てきたときとは位置も変わり,4番目の写真のように,今はかみのけ座にいるので,もし,月明かりがなければ,かみのけ座の銀河団とともに,その姿を美しく捉えることができたことでしょう。それがとても残念でした。また,3番目の写真のように,そのお隣にいるレモン彗星は,すでに9等星まで暗くなっていました。
 それでも,このふたつの彗星を,やっと自宅から1時間ほどの場所で写すことができて,この晩は満足しました。そして,月明かりを恨めしく思いました。おそらく,北海道に行っていなければ,この日がネオワイズ彗星を見る最初の晩となったことでしょう。そして,非常に残念に思ったことでしょう。

IMG_0645s (6)

2020-07-17_22-02-02_710 (3)IMG_0574 (4)s

☆☆☆☆☆☆
 梅雨の季節とはいえ,これほど晴れないものなのでしょうか? それとも,これほど晴れないのは今年だけのことなのでしょうか? 前回青空を見たのはいつのことなのだろうか,もう忘れてしまいました。
 楽しみにしていたネオワイズ彗星(C/2020F3 NEOWISE)でしたが,まったくその姿を見ないで終わってしまう人が少なくないことでしょう。ヘールボップ彗星(C/2015O1 Hale-Bopp)以来23年ぶりに0等星まで明るくなって,北斗七星よりも長い尾を引いた世紀の大彗星,それも,明け方でなく,夜9時ころの北西の空に見ることができたというのに,ずっと天気が悪く,晴れを待ちわびるうちに,すでに明るかった全盛期は過ぎ去り,今は,4等星ほどまで暗くなってしまったといいます。
  ・・
 子供の頃から星空に興味をもっていたとはいえ,大した機材も持たず,また,せっかく買った機材さえもほとんど使うことなく,ディジタル化の波にも乗り遅れていた私が,今のように,どうにか,実際に頻繁に星見をするようになった動機は,2013年の年末に地球に近づいたアイソン彗星(C/2012S1 ISON)でした。
 太陽に接近して消滅してしまい,期待外れに終わったアイソン彗星ではありましたが,それを機会に機材を整備し,星を見に行く場所も見つけたので,それ以来,私は,彗星の写真を撮る楽しみを覚え,日本から見ることができる10等星より明るくなった彗星はすべて写すという目標をもって,これまで,数多くの彗星を写真に収めてきました。しかし,明るくなってもせいぜい6等星くらいで,肉眼ではっきり確認できる彗星どころか,双眼鏡でさえ見ることがむずかしいような暗い彗星しか現れなかったのを,とても残念に思っていました。
 一度でいいから,1997年に明るく見えたヘールボップ彗星,までとはいわずとも,明るい肉眼彗星を再び見たいものだと思っていました。そして,ついにそれが現れました。ところが…。

 2020年は大変な年になりました。人間はわずか100ナノメートルほどの小さなウイルスの餌食となりました。このちっぽけな地球から逃げだす場すらないということを,私は実感しました。
 しかし,そうした災いが起きても,依然として人間は愚かなままです。助け合うどころか,逆にいがみ合い,その災いを外交や政治の道具にしたり,金儲けの手段にしたりと,まったく懲りないのです。せめて,空の上の出来事くらいは,そうした人間社会の愚かさを離れて楽しむことができれば,と思っても,明るくなると予想されたアトラス彗星(C/2019Y4 ATLAS)もまた,そんな人間をあざ笑うかのように,期待外れに終わりました。しかし,もし,このアトラス彗星が明るく輝いたとしても,自粛とやらで,そんなことをしてもまったく無意味な屋外の広場でさえ閉鎖されていたので,それを見る場所もありませんでした。
 そしてまた,予想を超えて明るくなったネオワイズ彗星が近づきました。。昔なら,この災いを彗星=ほうき星のせいにしていたかもしれません。しかし,これもまた,人間の愚かさをあざ笑うかのように,天は低く垂れ込めた厚い灰色の雲でその姿を遮り,ほとんどの人は,それをまったく見ることができませんでした
  ・・
 私は,これまで10等星くらいの暗い彗星まですべて写してきたのにもかかわらず,これほど明るい彗星を見損ねることが自分にとても許せませんでした。そして,なんとかその姿をひとめ見ようと,急に思い立って出かけた北海道でした。願いはかない,このネオワイズ彗星の長い尾を引いた鮮やかな姿を,確かに,この目で見ることができたのは,とても幸福なことでした。
 今日の1番目と2番目の写真はそのときに写したものです。特に,2番目の写真に一緒に写った北斗七星と比べてみれば,尾の長さがわかるというものです。そして,3番目の写真は,国立天文台がハワイ島マウナケア山で写したものです。
 もし,この彗星の接近があと数か月早かったら,おそらく私は北海道に行くことすらできなかったことでしょうから,彗星が見られたのは幸運なことだったのかもしれません。しかし,北海道から帰っても,依然として連日天気は悪く,つい1週間まえに快晴の北海道でネオワイズ彗星を見たことがもはや夢のようで,彗星は再び雲の上のものとなってしまいました。
  ・・
 まもなく梅雨が明けます。そうしたら,また,青空はもどってくるのでしょうか?
 空の上には,暗くなったとはいえ,7月から8月の夜空には,まだ,ネオワイズ彗星を見ることができます。さらに,これもまた,暗くなりつつあるとはいえ,レモン彗星(C/2019U6 Lemmon)も輝いています。
 再び,こころ置きなく美しい星空が楽しめる日が来るようにと祈ります。星に願いを込めて。
2020-07-23_14-37-30_161

IMG_0569s (3)IMG_0628t

☆☆☆☆☆☆
 一向に晴れません。これでは世紀の大彗星「ネオワイズ」(C/2020F3 NEOWISE)を見ることもなく終わってしまいます。それが残念で仕方ありませんでした。これまでどれだけこうして世紀の瞬間を見損ねて後悔したことでしょう。こういうトラウマはずっと後まで尾をひきまます。
 運というのは自らつかみにいくものです。…ということで,何とかならないかと天気予報をにらむこと,日本でかろうじて晴れているのは北海道と沖縄くらいのものだと悟りました。ネオワイズ彗星は北斗七星に近く,北に行くほど高く見えるので,沖縄は却下して,北海道に狙いをつけました。週末は晴れるという天気予報を信じて,7月16日木曜日から3泊で行ってきました。そして,彗星をこの目で見てきました!
 旅の様子はまた後日書くことにして,今日は彗星の話です。

 北海道,私が選んだのは留萌でした。しかし,16日は残念ながら夕方から曇ってしまい見ることができませんでした。翌日17日は午前中は曇っていましたが,午後から晴れてきました。せっかく来たからには少しでも条件のよい場所でと,留萌から2時間30分かけて,サロベツ原野まで行きました。そして写したのが1番目の写真です。
 サロベツ原野を北に北に走っていくと,街灯のない絶好の展望台を見つけました。空が暗くなるのを待っていると,現地在住のカメラマンの方が彗星を写しにやってきました。そこで仲よくなって,楽しい時間が過ごせました。
 北極星が見えだしたころ,まだ肉眼では彗星は確認できませんでしたが,おおよその位置を広角レンズで写してみると,彗星が簡単に写って驚きました。目を凝らすと次第に肉眼でも見えました。そして,空が暗くなると,あざやかな彗星の姿が浮かび上がりました。
 サロベツ原野からは利尻富士が見えます。そこで,魚眼レンズで利尻富士と彗星一緒に写すことにしました。この晩は流れ星がたくさん現れ一緒に写すことができました。3番目の写真です。また,ISS(国際宇宙ステーション)まで見ることができました。ISSも一緒に写すことができたのに,そのチャンスを逃したのが贅沢なこころ残りとなりました。
 翌日18日。その次の日19日は早朝に留萌を発って朝9時40分発の飛行機で新千歳空港から帰宅です。そこで,前日と同じようにサロベツ原野まで行ってしまうと,その次の日の朝がたいへんなので遠出はあきらめ,留萌から少し海岸線を北に走ったところで海岸に降りられる場所を17日の夕方に見つけておいたので,そこで写しました。それが2番目の写真です。前日の晩に彗星の様子はわかったので作戦を立て,この晩は彗星全体の姿を捉えることを目的としました。レンズの画角は55ミリ。ネオワイズ彗星はこんなに広い画角でも尾がはみ出てしまうほどの大彗星でした。

 こうして,私は北海道まで出かけ,ついに念願のネオワイズ彗星を見ることができました。この機を逃さず行ってみてほんとによかったと思いました。もし行っていなかったら,この先もずっと後悔しながら生きていくことになったことでしょう。
 彗星は思ったよりずっと明るくて,北斗七星ほどもある尾をひいた美しい姿を肉眼でもはっきり見ることができました。こんなに明るい彗星を見たのは「1997年の大彗星」とよばれるヘールボップ彗星(C/1995O1 Hale-Bopp)以来23年ぶりのことでした。感動しました。

IMG_0574s (3)a

IMG_1147HaleBopp6

 ネオワイズ彗星(C/2020F3 NEOWISE)は,赤外線観測衛星「NEOWISE」によって2020年に発見された彗星です。以前,このブログにかいたネオワイズ彗星(C/2016U1 NEOWISE)とは別物です。
 2020年3月27日,2009年アメリカ航空宇宙局(NASA)によって打ち上げられた赤外線観測衛星「NEOWISE」の観測から発見されました。こちらのネオワイズ彗星もまた,オールトの雲(Oort Cloud) から飛来してきた天体とされています。
 オールトの雲というのは,太陽系の外側を球殻状に取り巻いていると考えられている理論上の天体群で,1950年オランダの天文学者ヤン・オールト(Jan Hendrik Oort)が,水,一酸化炭素,二酸化炭素,メタンなどの氷が主成分である長周期彗星や非周期彗星の起源として提唱したことに由来します。

 ネオワイズ彗星は,発見当時は17等星でしたが,予想を越えて急激に明るくなり,6月30日には0等星にまでなったそうです。2020年7月3日に太陽に最も近い近日点を通過しました。地球上からは,夜明け前の空の低い位置に尾をなびく様子が肉眼でも観測されています(1番目の写真)。
 日本でも,現在は明け方の北東の空低くに見え,やがて太陽を回り込んで,7月中旬からは日没前の北西の低空で見えるようになり,7月23日に地球から約1億300万キロメートルまで接近します。
  ・・
 と,高らかに歌って,この彗星の私が写した写真をブログに載せる予定でしたが,
    晴れません。
 しかたがないので,国立天文台がハワイ島マウナケア山頂で写した写真を載せることにしました(3番目の写真)。

 このところ,ずっと雨です。この先もまたずっと雨です。久々にやってきた明るい彗星を写すこともなく月日が流れていってしまうのでしょうか。
 雲の間からのぞく彗星を写しても大した写真が写せるわけでもないのですが,なんとか少しでも星の見える日があれば写してみたいと準備だけはしているのですが,毎日,無残にもその期待は裏切られてしまいます。そしてまた,美しい写真を手に入れようと思うのなら,天気のよい日に空の暗い場所まで出かけて撮影したいものですが,その希望はかなうのでしょうか? どうしても,というなら,梅雨のない北海道か梅雨の明けた沖縄に行くより方法がないのかもしれません。
 私がこれまでに見た最も明るい彗星は,ヘールボップ彗星(C/1995O1 Hale-Bopp)でした(2番目の写真)。長く生きているとこういうものも一度くらいは見られます。ヘールボップ彗星はものすごく明るくて,これを見た経験があるので,もし,ネオワイズ彗星が見られなかったとしても,なんとか我慢ができるというものですが,明るい彗星を見たことのない人にとってはとても残念だろうと思います。
 もし,南半球でしか見られないというものなら,それでもあきらめがつくのでしょうが,晴れていれば簡単に見られるものが,雲があることで見られないというのは,悔しい限りです。
  ・・
 これまで何年もの間,消滅してしまったアイソン彗星(C/2012S2 ISON)以来,ずっと明るい彗星がみられなかったのに,突如このところ立て続けに明るい彗星が地球に接近しています。というのに,これもまた明るくなるという評判倒れに終わったアトラス彗星(C/2019Y4 ATLAS),条件最悪だったスワン彗星(C/2020F8 SWAN)など,そのすべてが満足に見られません。
 コロナ禍だけでなく,ついに,星空もまた,人間を見捨てしまったのでしょうか?

☆ミミミ

IMG_1155

七夕s

☆☆☆☆☆☆
 7月7日は七夕です。各地の七夕まつりが中止になり,また,この時期は梅雨空で星も満足に見られないので,今日は,私が先日,木曽駒高原で写した写真とともに,七夕のお話です。
  ・・
 天の川をはさんで,こと座のベガが織姫(織女星),わし座のアルタイルが彦星(牽牛星),そして,はくちょう座のデネブがふたりをとりもつカササギです。この3つの星を結んだものが「夏の大三角形」です。

  ・・・・・・
 天の川の西岸に織姫という姫君が住んでいました。織姫は機織りの名手で美しい布を織り上げては父親である天帝を大変喜ばせていました。そんな娘の結婚相手を探していた天帝は東岸に住む働き者の牛使い彦星を引き合わせ,ふたりはめでたく夫婦になりました。
 ところが,結婚してからというもの,ふたりは仕事もせずに仲睦まじくするばかりです。これに怒った天帝が,ふたりを天の川を隔てて離れ離れにしてしまいました。しかし,悲しみに明け暮れるふたりを不憫に思った天帝は,七夕の夜に限って天帝の命を受けたカササギの翼にのって天の川を渡って再会することを許しました。
 こうしてふたりは,年に一度の逢瀬をするようになりました。
  ・・・・・・・

 中国では,このふたりの逢瀬を祝って「乞巧奠」(きっこうでん)という行事が催されるようになりました。奈良時代,「乞巧奠」が遣唐使によって日本に伝わると,宮中行事として取り入れられるようになり,詩歌や裁縫の上達を願って星に祈りをささげ,梶の葉に和歌をしたためてお祀りをしていました。旧暦の7月はお盆です。この季節は,稲の開花期,麦などの収穫期にあたります。そこで,民間では,お盆の祖霊を迎えるために,乙女たちが水辺の機屋にこもって穢れを祓い,機を織る行事が行われました。
 水の上に棚を作って機を織ることから,これを「棚機」(たなばた)といい,機を織る乙女を「棚機つ女」(たなばたつめ)とよびました。やがてこの行事と乞巧奠が交じり合って,現在の七夕まつりとなっていき,7月7日の夕方を七夕(しちせき)とよばれていたものが棚機(たなばた)にちなんで七夕(たなばた)という読み方に変わりました。
 また,笹竹に短冊をつるして願い事をするようになったのは江戸時代からです。手習いごとをする人が星に上達を願うのです。また,五色は「青,赤,黄,白,黒」で,古代中国の「木,火,土,金,水」の五つの要素がこの世のものすべての根源である」という陰陽五行説にちなんで,「木=青」「火=赤」「土=黄」「金=白」「水=黒」を表します。
 私は子供の頃,七夕の話を聞きました。しかし,都会では満足に星を見ることもできず,さらに,七夕の季節は天気もよくないので,天の川というものすら見たこともありませんでした。上に書いた物語はカササギの翼に乗ってとありますが,そもそも星が天の川を越えて移動するなどということなどありえないから不思議は話だと思いました。それでも,当時の多くの子供は,本当に星が移動すると思っていたようです。今は,そんな話も聞きません。
 
  ・・・・・・
 天漢 水左閇而照 舟竟 舟人 妹等所見寸哉
 天の川水さへに照る舟泊てて舟なる人は妹と見えきや
  ・
 天の川では水までが輝いている
 舟を泊め舟に乗っていた人は
 妻と逢えたであろうかな
   「万葉集」巻10・1996 柿本人麻呂
  ・・・・・・

IMG_0414s (2)s

1024px-(140)_Mountlemmonobservatorymtlemmon_skycenter_headerComet_Lemmon_Rolf_Wahl_Olsen_Auckland_New_Zealand_1-28-2013IMG_1117 lemmon

 梅雨になり,せっかく月明かりがなく星が見られる時期になったのにまったく晴れず,そのうちに,また,月が明るくなってきました。6月下旬からレモン彗星(C/2019U6 Lemmon)が夕方の西の空に,6等星という明るさで見られるみられるようになってきたのに,毎晩,空を眺めながら,残念に思っていました。
  ・・・・・・
 レモン山天文台(Mount Lemmon Infrared Observatory )はアリゾナ大学の北約73キロメートル,海抜2,800メートルのレモン山の頂上にあります。1970年までは北アメリカ航空宇宙防衛司令部のレーダー基地であったのをハイテク赤外線天文台に変換したものです。天文台には,40インチのカセグレン式望遠鏡とアメリカ航空宇宙局(NASA)と共同運用する60インチのカセグレン式望遠鏡などがあり,地球接近天体の捜索(レモン山サーベイ)を行っています。
 2019年10月31日,レモン山サーベイによって,放物線に近い軌道を持つ長周期彗星が発見されて,レモン彗星(C/2019U6 Lemmon)となりました。レモン彗星は2020年6月18日に太陽に最も接近し,現在は6.0等星です。
  ・・・・・・

 6月28日だけなんとか夕方に快晴となったので,レモン彗星の写真を写しに出かけることにしました。とはいえ,彗星は月に近く,かつ,地平線に近く,最悪の条件です。
 どうも今年は,先日の明け方の地平線ぎりぎりにしか見られなかった条件最悪のスワン彗星,雲が多く雲の隙間からなんとか見られた月と金星と水星の接近,まったくみられなかった半影月食,薄曇りのなかやっと形だけ捉えることができた部分日食と,なかなかうまくいかないことが続いています。しかし,こうした悪条件のなかで挑戦するのもなかなか悪くありません。
 15分ほどで家の近くの西空が地平線付近まで開けた場所に到着しました。月が明るいので,どこに行ってもたいして星は見えないから,空の暗いところに遠出しても意味がないのです。
 到着したのは午後7時30分ごろでしたが,夏至に近いこの時期は昼が長く,この時間でも空がまだ明るいのです。
 やがて,なんとか北極星が見えてきたので,まず,極軸を合わせました。
 私の旧時代の望遠鏡は自動導入装置などついていないので,彗星の近くの星がまったく見えない地平線近くの西の空では,長焦点の視野の狭いレンズでは彗星を入れることが困難です。そこで,今日は視野の広い180ミリの望遠レンズで写すことにしました。極軸を合わせた後で,このレンズを月に向けて,レンズの焦点を合わせました。
 さて,彗星の位置はしし座の1等星レグルスと同経度の円周と月と同緯度の円周との交点あたりです。そこで,まず,かろうじて見ることができるレグルスをガイド用の望遠鏡に入れて,そのまま経度線をたどっていきます。月のある位置と同緯度との交点辺りで望遠鏡を固定して,そのあたりを少しずつずらしながら写真を撮っていくのです。彗星は明るいので,ちゃんと画角に入ってれば写るはずです。露出しすぎると真っ白になってしまうので,露出時間を10秒,15秒,20秒と変えながら写真を写しました。
 帰宅して調べてみると,淡いながらもちゃんと彗星が写っていたので,ホッとしました。
  ・・
 スワン彗星とは違って,レモン彗星は,今後,さほど急激には暗くならず,次第に高度を上げていくので,7月下旬にはもっときれいな姿を見せるようになることでしょう。そのころになると,この夏の最大の期待であるネオワイズ彗星(C/2020F3 NEOWISE)が2等星ほどで北西の空に見ることができるようになります。スワン彗星とネオワイズ彗星は次第に接近していくので,夏の夜空が楽しみです。

IMG_9706ss (2)

無題月食sMoon_age 14.2 tlunar-eclipse-reason-mDSC_6572 (4)DSC_6500 (2)

 2020年は半影月食が4回あります。日本で見られるのはそのうちの3回です。1回目は1月11日で,2回目が6月6日,そして,3回目が11月30日です。
 日食は,皆既日食,金環日食,部分日食がありますが,月食には皆既月食,部分月食,半影月食があります。不勉強な私は今年1月11日の半影月食まで,月食は皆既月食と部分月食だけだと思っていたので,半影月食というものがあることを知りませんでした。
  ・・
 月食(lunar eclipse)は,地球が太陽と月の間に入り地球の影が月にかかることによって太陽の光が月に当たらなくなることで地球から見たときに月が欠けて見える現象のことです。
 日食とは違い,月が見える場所であれば地球上のどこからでも同時に観測・観察できるるので,日食より敷居が低いです。
 月のすべての部分が地球によって太陽が完全に隠された部分(=本影)に入る場合を皆既月食(a total eclipse),一部分だけが本影に入る場合を部分月食(a partial eclipse),月が地球が太陽の一部を隠している部分(=半影)に入った状態を半影月食(a penumbral eclipse)といいます。私が以前に写した皆既月食の写真が今日の3番目のものです。

 半影月食は半影に入った月面の部分の減光が注意深く観察しなければわからない程度なので,肉眼で見てもほとんどわかりません。
 1月11日早朝に起こった半影月食は薄雲ごしに見られました。肉眼ではほとんどわからないのですが,写真で比べると左下の部分が暗くなっていて,半影が判別できました。これが今日の2番目の写真です。
 6月6日早朝の半影月食が今回のものでした。半影が最大になるのが午前4時25分ということでした。この晩(6月5日から6日)は月食が起きるので当然満月ですが,6月の満月をストロベリームーンといいます。
 薄雲があって,あざやかな満月は見ることができなかったのですが,なんとか写真に収めることができました。明け方3時以降は天気が回復して晴れるという天気予報だったので期待しました。半影月食が起きている4時過ぎという時間は,6月はすでに空はけっこう白んでいるのですが晴れれば月は見えます。しかし,早朝空を見ると,一面雲が出ていてがっかりしました。月は南南西の地平線から30度あたりにあって,月のあるあたりだけ時折薄く鈍く輝くので,そこに月があることだけはわかりました。
 そんなひどい状況でしたが,なんとかおぼろげな月の写真を写して,作晩にうつした満月の写真と並べてみたのが,今日の1番目のものですが,半影月食などまったくわかりませんでした。

 さて,6月といえば梅雨ですが,私には梅雨入りまえのアジサイとホタルです。毎年,この時期のアジサイはとても美しく,こころが洗われます。特に今年は,例年行われるアジサイ祭りもないので,静かに鑑賞ができ,私にはむしろ好ましいものます。また,ホタルも各地のホタル観賞会が中止となっていて,これもまた,静かな環境でホタルの乱舞を眺めることができます。
 ホタルは星空同様,見ることができる場所が限られているのですが,その場所がなかなかわかりません。これもまた星空同様,一般の人が知ってしまうとその場所はもうだめです。さらに,ホタルが飛び交うのを見ることができる期間は短く,また,毎年違い,さらに,見られる状況が異なります。
 6月4日の夜,ホタルを見に出かけました。今年はこの時期,あいにく月が明るく条件はよくなかったのですが,なんとかホタルが舞う姿を見ることができました。
  ・・
 梅雨空で晴れないかもしれませんが,6月21日には部分日食でもあります。さらに,6月下旬からはいくつかの明るい彗星も地球に近づいてきて見ることができるようになるというように,空の上はイベントが続きます。また,場所によってはもう2週間ほど後にホタルが見られるところもあって,そのころは月の光もないので,それも楽しみです。
 タイトル戦初挑戦も加わって,対局目白押しの藤井聡太七段の将棋中継も楽しまなくてはならないし,私には楽しい6月になりそうです。

IMG_0932 (2)

このページのトップヘ