5月26日はスーパームーンであり皆既月食。家のベランダから見ることができるので,楽しみにしていたのですが,残念ながら曇ってしまいました。
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それ以降も,連日,天気が悪かったのですが,5月29日は久々にいい天気になりました。
このごろは星を見るよりも,星を見にいくために深夜にドライブをすることや,だれもいない深夜の野原で星を見ることが楽しくなってきたので,特に何をということもなく,星見に行くことにしました。
現地に到着したのが午後7時30分過ぎでした。
まず,西の空に輝く金星と,金星に大接近している水星を写すことにしていたのですが,なんとか間に合いました。
ずいぶんと高度が低いので写るのか疑問でしたが,写すことができました。それが今日の1番目の写真です。
金星が沈むころ,次第に空が暗くなってきました。
昨年は立て続けに明るい彗星が接近していたのですが,今年は明るい彗星がほとんどありません。そんななか,現在はパロマ彗星(C/2020T2 Palomar)が10等星ほどでうしかい座に見えるということだったので,次に狙いました。
うしかい座はほぼ天頂です。天頂付近というのは,逆に大変です。私の使っているような古い望遠鏡では自動に星を導入してくれないので,ファインダーで探さなければなりません。首が痛くなります。
1等星アークトゥルスから追っていって,難なく場所が特定できたので写してみると,さすがに天頂付近は空も暗いので,小さな彗星状の天体が簡単に写りました。それが今日の2番目の写真です。写真の中央,ふたつある星のうち上のものです。
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パロマ彗星は,カリフォルニア工科大学天文学部のDmitry A. Duevさんの通報によると,2020年10月7日,パロマ天文台(Palomar)にある口径1.2メートル「サミュエルオシン」(Samuel Oschin)シュミット望遠鏡に新たに取りつけられた47平方度の広視野光学観測装置(ZTF=Zwicky Transient Facility)を利用したサーベイ(Zwicky Transient Facility's Twilight Survey)で得た画像から発見された彗星です。
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それ以外に明るい彗星もないので,そのあとは,おおくま座のメシエ天体を気の向くまま写すことにしました。
まずは,子もち銀河とよばれるM(メシエ)51。これが3番目の写真です。次に,回転花火銀河M101。4番目の写真です。そして,最後5番目の写真がフクロウ星雲M97とそのとなりにある銀河M108です。
おおくま座の北斗七星のまわりには,こんなおもしろい天体がたくさんあって,そのどれも,簡単に写すことができます。こうした天体を写しながら,数年前,メシエ天体をすべて写そうと何度も暗い場所をめざして走り回ったころのことを思い出しました。当時は苦労したのに,今では,簡単にピントも合わせられるし,場所も特定できるようになりました。
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そうこうしているうちに月が昇ってくる時間になったので,帰宅することにしました。
満天,とはいいがたい星空ですが,それでも,まったく人のいない野原で星空を眺めて過ごすのはとても楽しいことです。
こんな楽しみをもっていたことがうれしいこのごろです。
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やっと晴れたか?春2021⑨-こころゆくまで晴れない。
☆☆☆☆☆☆
このところ天気がさえません。
この時期は例年は五月晴れの日が続き,3月末から4月にかけての春霞やら黄砂から解放され,また,寒さからも遠のいて,夜は短いですが,星見には最適な季節となるのですが,今年はだめです。
さまざまな天文現象が報道されているのですが,果たして何人の人が実際に見るのだろうかと思うとかなり疑問を感じます。特に流星群のニュースなんて,晴れていても満足に星も見えないのに,何をいっているの,と私は白けてしまいます。
そんななかで,天気さえよければ,都会でもまあ満足に見られるのが惑星と月の接近,そして,国際宇宙ステーションです。
5月13日は月齢1.7の月が水星の下に,そして,5月14日は,月齢2.7の月が水星に追い越されて,西の空に見えました。また,午後8時30分ごろは,国際宇宙ステーションが天頂付近を通過しました。私は,いつものように,夕食後の散歩を兼ねて,西の空の開けたところにカメラと三脚を持ってでかけました。
5月13日。月の下にはさらに金星があるはずなのですが,まだ日没からまもなく明るくてまったく見られませんでした。そのうち,次第に西の空には雲が深くなってきて,何も見えなくなってきました。しかし,それはそれでおもしろいものです。…などと思うようになったのも不思議な話です。
しばらく見ていたら,雲の隙間から薄っぺらな月が見えました。そして,さらに待っていると,水星が見えました。月が見えるときは水星が雲に隠れ,その反対に,月が隠れると水星が見える,という状態だったのですが,やがて,ほんの一瞬,月と水星が見えました。そのときに写したのが,今日の1番目の写真です。
翌日,5月14日。天気予報では晴れということだったので期待したのですが,空一面に薄雲があって,がっかりしました。月と水星だけでなく,さらに上空には火星もあって,35ミリほどの広角レンズなら,水星と月と火星が写せるはずだったのですが,薄雲の奥に月だけが見えました。薄雲の向こうの月というのも,それなりに幻想的なものでした。また,国際宇宙ステーションは,薄雲に負けることもなく,明るく輝いて通過するのを見ることができました。
やっと晴れたか!春2021⑧-「ピンクムーン」の出
☆☆☆☆☆☆
4月の満月を「ピンクムーン」といいます。ピンクに見えるからピンクムーンではないのですが,27日の月の出のころ,薄い雲に覆われた月が実際ピンクに輝いていて,とても幻想的でした。
27日は曇るかも,ということと,実際の満月は今日のお昼12時過ぎだったということで,前日の26日にも写しました。26日の月の出は午後5時30分過ぎでしたが,その時間,太陽が西の空に輝き,雲ひとつない空は澄んでいて,それが災いとなって,なかなか月が見えてきません。やっと目を凝らすと東の空に月が見えはじめ,次第にはっきりと見えてきたころ,反対がわの西の空を見ると,沈みかけた夕日がきれいでした。
毎月,満月には名前がついています。それは,月の満ち欠けとともに生活していたネイティブアメリカンがつけたものですが,近年は,日本でもこのよび名が定着してきたように思います。
今日は,その名前を紹介します。
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●1月:ウルフムーン(Wolf Moon)
真冬の狼の遠吠えから。
●2月:スノームーン(Snow Moon)
雪の季節なので。
●3月:ワームムーン(Worm Moon)
春になって地面から虫が這い出してくる時期です。
●4月:ピンクムーン(Pink Moon)
春に咲くピンク色の「フロックス」(wild ground phlox)という花に由来。
●5月:フラワームーン(Flower Moon)
花の季節だから。
●6月:ストロベリームーン(Strawberry Moon)
野いちごの収穫の季節なので。
●7月:バックムーン(Buck Moon)
雄鹿(バック)の角が生え変わる時期より。
●8月:スタージャンムーン(Sturgeon Moon)
「スタージャン=チョウザメ」がたくさん捕れますようにとの願いを込めて。
●9月:ハーベストムーン(Harvest Moon)
収穫の時期。
●10月:ハンターズムーン(Hunter’s Moon)
鹿やキツネを狩る月だから。
●11月:ビーバームーン(Beaver Moon)
ビーバーを捕獲する罠を仕掛ける時期。
●12月:コールドムーン(Cold Moon)
寒さが本格的になる季節。
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ちなみに,「ブルームーン」は「同じ月に2回の満月があるときの2回目の満月」のことです。
「once in a blue moon=めったにない」という意味から「とてもめずらしい月」として使われています。
また,月は地球の周りを楕円軌道で動いているので,地球との距離が変わります。1年のうちで地球の中心と月の中心が最も近い満月を「スーパームーン」,その反対に最も遠い満月を「ミニマムムーン」といいます。
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今年2021年の「スーパームーン」は次の満月5月26日ですが,この日は皆既月食でもあります。
やっと晴れたか!春2021⑦-しし座η星の恒星食を写す。
掩蔽(occultation)とは,観測している天体と観測者の間を他の天体が通過するために,観測している天体が隠される現象のことをいいます。通常は,観測者から見て近い方の天体の方が見かけの大きさが大きく,遠方にある天体を完全に隠す場合のことをいい,その反対に,遠方にある大きな天体と観測者の間を小さな天体が移動することによって遠方にある大きな天体を部分的に隠す現象を通過といいます。たとえば,太陽の前を水星や金星が通過するものを太陽面通過といいます。
また,近いほうの天体が月の場合,つまり,月が星の前を通過する掩蔽を,特に星食(lunar occultation),また,恒星の前を通過する星食を恒星食といいます。
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月の軌道は一定しておらずふらついているので,毎月同じ恒星が恒星食になるわけではありません。恒星はたくさんあるので,恒星食は絶えず起きているように思われがちですが,暗い恒星は月の明るさに消されて月の近くにあると見えなくなってしまうので,観測できる恒星はおよそ9等星より明るいものに限られてそれは約3,500個あまりです。
しかし,1等星の恒星が隠される恒星食となると,可能性のあるのはしし座のレグルス,おとめ座のスピカ,さそり座のアンタレス,おうし座のアルデバランの4つしかありません。それも,まれにしか起きません。
4月22日の夕方午後7時前,月齢10の上弦過ぎの月が3.5等星のしし座のη(エータ)星を隠す恒星食が起きました。 恒星が月の暗い縁に潜入して隠れるのは午後5時30分ごろでしたが,まだ日没前なので見えませんでした。月が恒星の前を通過している間に日が沈み,空が暗くなってきて,月の明るい縁から恒星が出現する時点では日の入りの直後となって,空はまだ明るいのですが,なんとか見られるかも,ということでした。
今回月が隠したしし座η星は,月に隠されることがある恒星としては比較的明るい方ですが,日没後なので,当然,肉眼では見えません。望遠鏡なら見えそうです。そこで私は,写真でも写るだろうということで試してみました。恒星食の起きる時間は観測する場所によって異なります。私の住んでいるところでは,出現する時間は午後6時49分ごろでした。
幸いこの日は天気がよかったのですが,月はほぼ天頂に近く,望遠鏡を向けるのに苦労しましたが,なんとか月を視野に入れることができました。いつも月を写すのと同じようにして設定をし,月の背後から星が出てくる少し前の午後6時48分から10秒刻みで写すことにしました。
何枚も写し終えて,後で確認したら,幸運にも,写真のように,確かに恒星の姿を確認することができました。私は,これまで,恒星食など,興味もなかったし,写したこともありませんでしたが,それなりにおもしろいものでした。今回もまた,何事もやってみなければわからないと思ったことでした。
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なお,天文年鑑2021には,この恒星食については詳しい説明がありませんでした。その理由として「暗縁への潜入が昼間,明縁からの出現が日没前後と条件が悪いため,予報には示していない」と書かれてありました。
やっと晴れたか!春2021⑥-月齢27.3の月と夜明けの空
ここ数日すごく寒く,冬に戻ったみたいです。でも,初春の最大の迷惑である黄砂も飛来していないようで,春にしては珍しく星空がきれいです。
2日前に遠出してアトラス彗星(C/2020R4 ATLAS)の写真を写したので,連日遠出する予定もなく,しかし,あまりに空がきれいなので,早朝4時30分に起きて写真を写すことにしました。
2日前に星見に遠征したときには月齢25.4の月と木星と土星が美しく輝いていました。その2日後のこの日は,月の出はどんどんと遅くなり,月齢27.4の月が日の出直前に昇ってきます。早起きして写真を写した理由は,この月齢27.4の月がはたして見えるかということに興味があったからです。
午前4時40分ごろの東の空には木星と土星が美しく輝いていました。晴れているとこうして簡単に見られる惑星ですが,曇ってしまうと,それが夢だったように何も見えなくなります。これがまたおもしろいのです。それにしても,明け方,日の出前の空は,何度見ても本当に神々しいものです。
やがて5時を過ぎるころになると空が白みはじめて,木星より暗い土星は肉眼で見るのが困難になってきました。こうなると,月が昇るのと土星が見えなくなるそのどちらが早いかの競争になります。
東の空低く目を凝らすと,薄い月が地平線ぎりぎりに見えてきました。しかし,その一方で,土星は肉眼では見えなくなってしまいました。まだ,木星だけはなんとか見えました。しかし,写真なら,土星もまだ写ります。
月と木星と土星はけっこう離れているので,画面に入れるには30ミリレンズより広角であることが必要ですが,写真に写すための適正な露出がわかりません。カメラの露出計などまったくあてにならず,手動では,露出をかけると空が白くなってしまうし,露出をかけないと月や土星が写りません。
そこで,何枚も露出を変えて写真を撮りました。その後,ズームを望遠にして月の写真だけを写しました。家に帰って拡大して見たら,かろうじて月と木星と土星が写っていたので満足しました。
私は以前,月齢1から月齢28までの月をすべて写したことがあるので,月の写真を写すことには,もう,執着心はないのですが,明け方の細い月は,何度見ても美しいものです。おそらく事前に位置を調べておいて大口径のレンズで狙えば,月齢27といわず,月齢28のような,もっと月齢が過ぎた薄い月であっても写るのでしょうが,今の私にはそこまでの情熱はありません。それは,このごろは,お金をかけてそんなことをするよりも,気軽に小さなカメラと三脚だけをもって,散歩を兼ねて田んぼのあぜ道で日の出とともに消えていく星々を眺めていることの方に楽しみを見出してしまったからです。でも,これはこれで私には十分に幸せなことなのです。
やっと晴れたか!春2021⑤-アトラス彗星と夜明けの空
☆☆☆☆☆☆
どこへ行ってもたいした星空が見られない日本ですが,頻繁に海外に行くわけにもいかないので,住んでいる以上ここで何とかしようと,私は,多少空が明るくてもなんとなかなる10等星より明るい彗星の写真を写すことに目的を定めて楽しんでいます。
昨年は,シュワスマン・ワハマン第1彗星(29P Schwassmann-Wachmann),パンスターズ彗星(C/2017T2 PanSTARRS),アサシン彗星(C/2018N2 ASASSN),ふたつのアトラス彗星(C/2019Y1 ATLAS),(C/2019Y4 ATLAS),岩本彗星(C/2020A2 Iwamoto),スワン彗星(C/2020F8 SWAN),そして,真打の明るくなったネオワイズ彗星(C/2020F4 NEOWISE)と,数多くの彗星を見ることができました。
しかし,2021年ははずれ年のようで,これまで明るい彗星が接近していませんし,この先も,新しい彗星が発見されない限り,期待ができません。
そんなこともあって,今年は手持無沙汰な日々が続いています。
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そんな中,アトラス彗星(C/2020R4 ATLAS)が10等星まで増光したという情報が聞こえてきました。そこで,4月7日の夜から4月8日の朝にかけて天気がよいという予報だったことと,月明かりがなかったので,久しぶりに星見に遠出をすることにしました。
アトラス彗星(C/2020 R4 ATLAS)は,わし座にあって,明け方には高度も高くなり条件がよくなります。というわけで,深夜に家を出て,午前1時ころに現地に到着することにしました。
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アトラス彗星は,2020年9月12日,ハワイ島マウナロア(Mauna Loa)にある口径0.5メートルのシュミット反射望遠鏡を使って,小惑星地球衝突最終警報システム(Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System=ATLAS)調査プログラムで得たCCD画像から発見されたものです。
小惑星地球衝突最終警報システムというのは,地球に接近して衝突する可能性のある小天体を,数週間から数日前に検出するために最適化されたロボット掃天観測,および,早期警告のシステムです。NASAの資金提供を受けて,ハワイ大学天文学研究所(IfA))が開発・運用しています。現在は2台の0.5メートルシュミット反射望遠鏡をハワイ島のマウナロアとマウイ島のハレアカラに設置して,2015年に観測を開始し,2017年からは完全運用しています。
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しかし,実際には,このような探索をして,もし,本当に地球に衝突する小天体が見つかっても,おそらくはそれを回避するための手段もなく,人類が滅びるのを待つだけでしょう。そんなこと言っちゃうと予算もつかないので,ロケットを打ち上げて軌道を変えるとか,いろいろ考えられているように宣伝はしていますが,私は,実現不可能だと思っています。だから,このような観測をしても,おそらくは,人類の滅亡を先に知るかどうか,だけのことでしょう。
遠からぬ将来,かつて恐竜が滅んだように,人類も,隕石の衝突やらウィルスやら,はたまた核戦争による自滅やらが原因で,残念ながら,あっけなく滅び,地球は6回目の生物大量絶滅をむかえるのです。所詮,それだけのことです。宇宙の規模で考えれば,人類は別に選ばれた存在でもなけば,存在しなければならないならない理由もないのです。
私は,このごろは,がむしゃらに彗星や星雲・星団の写真を写す情熱もなくなったので,のんびりと気の向くまま,肉眼で星見を楽しみなが写しています。むしろ,星見よりも,深夜のドライブを楽しんでいるくらいです。
この晩もまた,彗星は簡単に写せたので,それ以外にも,計画もなく,いろいろと写してみました。
4月とはいえ,明け方の空に見えるのはすでに夏の星座です。さそり座やいて座あたりは肉眼で見ても美しいのですが,双眼鏡で眺めるとさらにとても魅力のある場所です。やたらと星雲や星団が視野に入ってきます。これらの場所を写した3番目の写真は,いて座の三裂星雲と干潟星雲,4番目の写真は,いて座のわし星雲とオメガ星雲,そして5番目の写真は,それ以外の小さな惑星状星雲と球状星団です。
星を見た帰り道, 明け方の東の空には月と木星と土星が昇ってきて,とてもきれいだったので,思わず道路際に車を停めて,再び見とれました。私は, いつも,明け方の東の空が世界で一番美しいと思います。
やっと晴れたか!春2021④-カシオペヤ座の新星
☆☆☆☆☆☆
亀山市の中村祐二さんが,2021年3月18日19時10分ごろに焦点距離135mmのレンズとCCDカメラを用いて撮影した画像からカシオペヤ座の中に9.6等の新天体を見つけたということです。これが今日の3番目の写真です。
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新天体の位置は散開星団M(メシエ)52の約0.4度南で,約5,500光年の距離にある新星類似型変光星(nova-like variable)「CzeV3217」が新星爆発によって急激に明るくなったものと考えられています。
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新星類似型変光星はこれまで新星爆発を起こしたことがない変光星,つまり,新星予備軍のことです。
通常,新星はそれほど明るくなく,彗星のように美しくもないので,私は撮影しないのですが,今回の新星は6等星から7等星と明るいので,写真に収めようと出かけることにしました。新星のある位置は,夕方と明け方3時以降なら結構高い高度にいることと,月が沈むのが午前3時過ぎなので,快晴だった3月24日の午前3時過ぎに,家の近くの河川敷にでかけて,焦点距離35ミリのレンズでカシオペア座を入れて写すことにしました。それが今日の2番目の写真です。
快晴とはいえ,また,月明かりがなくなった時間とはいえ,都会の光で空は明るく,やっとカシオペヤ座のWにあたる2等星が肉眼で見えるくらいだったのですが,帰宅してからコンピュータ処理をすると,写真のように多くの星が浮かび上がり,新星を特定できました。
なお,1番目は以前望遠鏡で写した新星の近くにあるM52です。当然,新星は写っていません。
新星と超新星は異なります。
超新星(supernova)は,新星よりはるかに明るく輝くもので,核爆発によって,白色矮星のすべてが吹き飛ばされる「Ⅰa」型と太陽の約8倍以上の質量をもつ恒星が一生の最後に起こすⅡ型,「Ⅰb」型,「Ⅰc」 型があります。
新星(nova)は,白色矮星と赤い恒星からなる近接連星において,赤い恒星から白色矮星の表面に降り積もったガスが起こす核爆発によって白色矮星が急激に明るく輝く現象です。つまり,新星というのは,新しい星が誕生するのではなくて,すでに一生を終えて白色矮星なった恒星が再び輝く現象です。
新星は,天の川銀河で 1 年に数個程度発見されていますが,発見されないものも含めると1年に数10個程度の新星が出現していると推測されています。新星は絶対等級約マイナス7等星からマイナス9等星ほどの明るさで輝き,数十日から数年かけて次第に暗くなっていきます。
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ところで,「Ia」型の超新星と新星の原因となる白色矮星ですが,白色矮星というのは、太陽の約8倍以下の質量をもつ恒星が一生を終えた後に残される白く小さい星です。大きさはせいぜい地球程度ですが,質量が太陽程度もあるため,表面の重力は地球上の数10万倍におよびます。白色矮星と赤い恒星から成る接近連星で,赤い恒星から白色矮星の表面に降り積もった主として水素とヘリウムからなるガスは,白色矮星の表面でその強い重力によって圧縮され,次第に温度が上がっていき,やがて,降り積もったガスの温度が1億度程度になると爆発的な水素核融合が起こり,その結果,急激に明るく輝き出します。この爆発現象が新星爆発です。
新星爆発によって降り積もったガスは吹き飛ばされ,白色矮星は次第に暗くなり元の状態に戻ります。こうした新星爆発では,白色矮星はそのまま残されるので,再び普通の恒星からガスが降り積もることにより,この新星爆発は繰り返されることになります。しかし,再び爆発を起こすまでの期間は数千年以上なので,同じ白色矮星が再び新星として観測されることはほとんどありません。
しかし,白色矮星の質量が太陽質量の1.3倍程度と大きく,また,となりの恒星が赤色巨星である場合,10年から数10年程度で爆発が繰り返されることがあります。これが回帰新星(反復新星)です。回帰新星(反復新星)の場合は,水素核融合によってつくられたヘリウムが白色矮星の表面に残り,少しずつ質量が増加します。やがて,太陽質量の約1.4倍に達すると,白色矮星全体が核爆発を起こして吹き飛ばされ,「Ⅰa」型の超新星,または,重力崩壊して中性子星になると考えられているのですが,はっきりしたことはまだよくわかっていないそうです。
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やっと晴れたか!春2021③-月と国際宇宙ステーション
☆☆☆☆☆☆
このところ,ドクターイエローと国際宇宙ステーションの動画と写真ばかりを写しています。お金もかからず,近場で楽しめ,人と会わないので,最高です。しかも,奥が深いのです。
ところで,私が「撮り鉄」が嫌いなのは,第一に群れること,第二に道徳心がないこと,それが理由です。ひとりで楽しめばいいのに,群れて行動しています。さらには,場所を占有したり,田んぼに入り込んだりと,傍若無人です。
幸い,私の家のベランダから新幹線が見えるので,家から写しているときは平和なのですが,いざ,近くで写そうと架線に近づけば,ドクターイエローが走る日は,カメラと三脚をもった人たちが群れていて気がめいります。私は地元なので,それでも,人が近づかないところを知っているからよいのですが,これには参ります。だから,私は,間違っても「撮り鉄」にはならないのです。
さて,今日の本題である国際宇宙ステーションです。
3月は日が沈んで暗くなってきたころに,ちょうど月がいい位置にあって,連日,月の近くに見ることができます。しかし,毎回なんらかの条件がちがうので楽しいです。しかし,予習もできず,どのように見えるのか皆目見当がつかず,いつもぶっつけ本番なので大変です。
3月17日は,なんと,月の欠けた部分の表面を通り,しかも,太陽と国際宇宙ステーションの位置関係で,月の表面に来るまではまったく見えず,月を通過するときだけ一瞬明るく見える,というとんでもないものでした。このときにどうにか写した写真はすでにこのブログに載せましたが,露出が不足だったので,国際宇宙ステーションが暗くしか写らず,悔いが残りました。
国際宇宙ステーションの撮影には,長時間露出して動く軌跡を写したり,拡大して写したり,動画で写したりと,いろんなパターンがあります。長時間露出で写す場合は,空の明るいところでは,露出オーバーで白くなってしまい,暗い星が写りません。そこで,短い時間の露出を繰り返して,あとでコンピュータで合成するという方法をとることにになります。拡大して写す場合は,その位置を正確に把握しておく必要があります。また,動画で写す場合,私の持っているカメラでは,1コマあたりのシャッタースピードを30分の1秒より遅くできないので,ISOと絞りを工夫して,なるベく暗い天体まで写るようにしなけばなりません。
さらに,今回の写真のように,月と一緒に写真に入れて写すには,月の模様が写る適性露出で,しかも,国際宇宙ステーションも写らなければならない,という条件になるので,結構きついです。
3月19日。この日はもともとは写す気がなかったのですが,「きぼうを見よう」というサイトを検索していたら,私の住んでいるところで,国際宇宙ステーションが月の表面を通るというのを見つけて,急にやる気になりました。しかし,「ステラナビゲータ」で詳細に調べ直すと,どうやら私の住んでいるところでは,月の表面からは少しずれているようでした。そこで,さらにより詳しく調べてみると,今回,月の表面を通過するように見える場所は,北緯35度20分から北緯35度22分の帯状のところだとわかりました。
これまで私は知らなかったのですが,月の表面を通るように見える場所というのは,これほど狭い場所に限るわけです。これには驚きました。そこで,その条件に適したところで写さなければなりません。Google Map を使って,緯度を特定して,しかも,なるべく空の暗いところをいくつか探しだして,下見までしてきました。そうして見つけたのが,家から車で30分行った河川敷のキャンプ場でした。
今回は,動画と拡大写真を写すことにして,機材を用意しました。
そして,現地に到着したのが18時39分。快晴でした。
国際宇宙ステーションは,予報通り18時56分20秒過ぎに月をかすめ,さらに火星に接近して飛行していきました。とてもきれいでした。
この日は,国際宇宙ステーションを動画で写すのに成功しました。中央右上の星が火星,左上端の星がアルデバランです。そして,同時に別のカメラで写真も写しました。私の持っているのは,安価で貧弱な機材でしたが,それでも,なんと国際宇宙ステーションの形も写りました!
本当は長時間露出をした写真も写したかったのですが,さすがに一人三役は無理なのであきらめました。 また,月の上を通過している国際宇宙ステーションもも捉えたつもりだったのですが,家に帰って写真を調べてみても写っていなくて,それだけがショックでした。
しかし,それはそれとして,今回はとても満足しました。大した機材もなく,お金も手間もかけないのに,結構いろいろと楽しめるものです。何事も机上の知識だけではなく経験が大切です。
やっと晴れたか!春2021②-夜明け直前の3惑星と月
☆☆☆☆☆☆
明るい彗星が見られないこともあり,また,惑星や月の残る夕方日没後や明け方夜明け前の景色の美しさを知ってしまったこともあり,家の近くで十分に撮影できることもあり,しかも,実際に試してみないことには見えるのか見えないのかもわからいということが興味深く,このところ,惑星と月の風景写真を楽しんでいます。
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ここ数日前から,水星,木星,土星が明け方の東の空に見えるようになったので,現在は明け方の東の空をずっと追っかけています。地平線低いところに昇ったところで日の出を迎えるので,本当に見えるのかということに興味をもったことと,このところ家の周りを散歩するようになって家から徒歩5分ほどのところで写真を撮ることが可能な場所を見つけたことが理由です。彗星や星雲・星団を写すのとは違って,身軽にカメラと三脚だけを持って出かければいいので,それもまた,やる気が起きるわけです。
地球からの距離が遠いので木星と土星の位置関係はほとんど変わりませんが,水星は日に日に高度を下げていって,木星に追い越されました。月もまた次第に欠けていって,高度が低くなってきました。
そこで,前回書いたように,水星,木星,土星と月の位置関係がもっとも接近する3月10日に狙いを定めて,その前後を合わせた3月9日から3月11日の3日間はぜひ見たいと思っていました。
3月9日の朝は,まだ月がまだ少し惑星からは離れていました。しかし,雲が多く,満足な写真は取れませんでした。肉眼でもはっきりみることができませんでした。しかし,何とか写した写真を家に帰ってから調べると,奇跡的に月も3つの惑星も雲の間に写っていたのはうれしい偶然でした。それが今日の5番目の写真です。
待望の3月10日は雲が多くまったくダメでした。かろうじて写った写真もあったのですが,ピントが甘く,がっかりしました。あれだけピントには気をつけていたのに…。まだまだ修行がたりません。それが6番目の写真です。
そして,3月11日。この日の月齢は27.1。高度が低く薄っぺらな月が写ればもっけもの,という気持ちで,3度目の挑戦をしました。午前5時10分ごろに到着すると,すでに,木星と土星は肉眼でもはっきりと見えました。そして,待つこと約10分,目を凝らすと,薄く月が見えはじめました。これには感動しました。まだ水星は確認できなかったのですが,月と木星からあらかじめ位置がわかっているのでその場所を凝視すると,水星も肉眼で見ることができました。こうして写したのが今日の1番目の写真です。
家に帰ってから調べると,4番目の写真のように,肉眼では確認ができなかったその5分ほど前に,すでに写真には月の姿が写っているのに驚きました。
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この季節は,さほど早起きしなくても,ちょうど日の出も午前6時くらいなのでその1時間くらいまえの東の空には,このような美しい風景が広がっているのです。
◇◇◇
やっと晴れたか!春2021①-続・夜明け直前の3惑星
☆☆☆☆☆☆
2021年,早くも3月になりました。このところ明るい彗星も見えないし,寒いので,しばらく星見に遠出もしていません。その代わり,明け方の空が美しいので,日の出前,毎日のように散歩を兼ねて空を見上げています。
3月3日の早朝は,前日の夜の強風も収まって,快晴となりました。前回,2月26日は東のそらには雲があったので,今度は雲ひとつない空で,木星,水星,土星を写真に写すことにしました。木星と土星の位置はほとんど変わらないのですが,水星が次第に高度を下げています。
カメラと三脚を持って家から出てふらふらと歩いて5分,いつものように,街灯のない田んぼのあぜ道に着いたのが午前5時20分すぎでしたが,すでに東の空には,木星,水星,土星,3つの惑星が肉眼でもはっきり見えました。
昨晩の風で空気が澄んでいたので,こんなに容易に見ることができました。
写真は,露出を増やすと,むしろ薄明で星が消えてしまいます。それは都会で暗い彗星を写すときも同じで,星を写すのに,何も露出時間を増やすだけが芸ではないのです。
なるべく肉眼で見たときとおなじような空の明るさになるように,何度も露出を変えて写しました。
目を反対側に写すと,月齢19.1の月が見えました。この月があと1週間すると,3つの惑星に接近します。3月10日がベストで,その前後3日間がおもしろい構図になります。晴れるといいのですが…。
そうこうするうちに,南の空から天頂を通って北の空に人工衛星が動くのが見えました。見慣れている国際宇宙ステーションより明るいほどでした。先日も,夕暮れ時に散歩していたら,やはり,空に人工衛星が飛んでいるのが見えました。この時期,国際宇宙ステーションは見えないはずなので,どんな人工衛星なのかな,と思いました。
家に帰って,いろいろ検索してみると,明るい人工衛星が見られるリストの載ったホームページを見つけました。どうやら,私が見たのは,中国が打ち上げた「CZ₋4B R/B」というものだったようです。「Chang Zheng 4B」というロケットで,2006年10月23日に打ち上げられ,宇宙環境,放射線とその影響の調査,宇宙物理環境パラメーターの記録およびその他の関連する宇宙実験の実施に使用されているそうです。
通常は約2.5等星くらいで地球上から見え,最も明るくなるときでマイナス0.1等星にまで達するということです。どおりで明るく見えたはずです。