しない・させない・させられない

Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.

USA50州・MLB30球場を制覇し,南天・皆既日食・オーロラの3大願望を達成した不良老人の日記

タグ:やっと晴れたか!秋2021

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☆☆☆☆☆☆
 以前,ブログに次のように書きました。
  ・・・・・・
 それは,2021年1月3日,アリゾナ州のレモン天文台(Mount Lemmon Infrared Observatory)でグレゴリー・レナード(Gregory J. Leonard)さんが発見したレナード彗星(C/2021A1 Leonard)です。レナード彗星は毎秒約70キロメートルという,昨年のネオワイズ彗星(C/2020F3 NEOWISE)よりも毎秒6キロメートル速く移動しているので,2021年12月はじめから12日くらいまでのわずか数日間ですが,最もよく見えるようになり,明け方の東の空を飾ります。
 肉眼で見える5.0等星から4.0等星の光度になると予想されていますが,ひょっとすると1等星に達するかもしれません。
  ・・・・・・

 さあ,このレナード彗星(C/2021A1 Leonard)が地球に接近してきました。
 明け方の東の空です。
 冬は寒いのですが,夜明けも遅く,午前5時でも十分に暗いので,早起きすれば見ることが容易です。しかも,レナード彗星は東の空,今はまだ7等星ほどですが,結構高度が高いのでとても見やすいです。
 11月28日の朝は快晴でした。まだ月明かりがあるのですが,月明かりなどものともしない光度という話なので,見にいくことにしました。そして写したのが今日の写真ですが,すでにとても美しい彗星らしい姿に感動しました。
  ・・
 レナード彗星は,この後,次第に光度を増し,しかし,高度を下げていきます。
 おそらく12月12日が見ることができる最後となるのでしょうが,その日,どこまで明るくなるか,思った以上に明るいので期待大です。

◇◇◇



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 11 月19日の夕方「ほぼ」皆既日食が見られました。
 月食とは,月の一部または全部が地球の影に隠されて見えなくなる現象です。月は鏡のように太陽の光が当たると輝いて見えます。そこで,太陽,地球,月が一直線となって,太陽の光が地球に妨げられて月に当たらなくなると暗くなり,月が欠けて見えるとき,月食となります。
 地球の影には本影とそのまわりの半影という薄暗い部分があります。月が地球の本影に入らず半影にのみ月全体あるいは部分が入る場合を「半影月食」,本影にすっぽりと入る場合が「皆既月食」,そして,一部だけが本影に入る場合が「部分月食」です。
 半影は薄い影なので「半影月食」では月が欠けているかどうかはっきりとはわからず,写真に撮るとどうにかわかる程度です。
 月全体が地球の本影に隠れる「皆既月食」では,太陽からの光のうち赤い光が地球の大気により屈折して月の表面に届くため,月は完全に見えなくなるのではなく,暗い赤色となります。

 11月19日の夕方に起きたのは地球の本影に月の97.8パーセントが入る部分月食でした。「部分月食」とはいっても「ほぼ月全体が隠れる皆既月食に近い」状態ということだったので,私はとても興味がわきました。日食の場合は100パーセント「皆既日食」でないと鮮やかな姿は見えませんが,月食はそのようなことはないはずです。
 「皆既月食」は珍しい現象でないのですが,逆に,「限りなく皆既に近い部分月食」はめずらしく,これは140年前の1881年12月6日以来のことだそうです。
  ・・
 思ったよりも雲が多い日でした。月が東の地平線から昇ってきたとき,月出帯食とよばれるすでに欠けた状態になっていたのですが,そのころはまだ東の空だけ雲があって,がっかりました。その後は,雲で月が見えたり見えなくなったりと不安定だったのですが,次第に雲が少なくなってきて, 食のはじまりからおよそ1時間45分後の午後6時3分,欠けた割合が最も大きくなる「食の最大」のころは食はよく見えました。
 「皆既月食」では月全体が赤くなるのですが,それと同じように全体的に赤みを帯びながらわずかな部分だけが白く光るように見えました。今回は薄曇りのためか,思ったよりも暗い状態でした。月が赤く見えるのは,太陽光が地球の大気中を通過する際に屈折してわずかながらに月を照らし,光の成分のうちで青い光は大気に散乱させられるので月まで届かず,赤い光は散乱されにくいので月まで届いて月面を照らすことによります。
 食は,「食の最大」の約1時間45分後まで続きました。
 今回,私は,この食が終わるころがとても興味深く思えました。それは,普通の月の満ち欠けとはちがって,影の部分が半円状になっていたからです。何事も体験してみないとわからないものです。

 食の終了後,何事もなかったかのように,「ビーバームーン」(Beaver Moon)とよばれる11月の満月が輝いていました。

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 「ステファンの五つ子」はフランスの天文学者エドゥアール・ステファン(Édouard Jean-Marie Stephan)によって1878年に発見された銀河の集団です。5個の渦巻銀河と楕円銀河から構成されているように見えるのですが,この中でNGC7320という渦巻銀河は見かけ上仲間のように見えても実際にはその距離は約3,900万光年で,互いに重力を及ぼし合ってコンパクトな銀河群を作っている残りの4個の銀河までの距離が約3億光年であるのとは大きく異なっているので,別のものです。
 つまり,当初はNGC7317,NGC7318A,NGC7318B,NGC7319,NGC 7320の5個を「ステファンの五つ子」としたのですが,このうちNGC 7320は前景の渦巻銀河が重なって見えているものであって,NGC7317からNGC 7319までの4個が銀河群を作っているわけです。
 また,少しはなれたところにある6番目の銀河NGC7320CはおそらくNGC7319とつながっているのでこれも先に書いた4つの銀河団の仲間ではないかと見られています。

 「ステファンの五つ子」はハッブル宇宙望遠鏡の撮影対象となったことで一躍有名になりました。
 銀河同士の衝突・合体や星流の形成,銀河ガス同士の衝突やスターバーストなど,様々な現象を伴う銀河集団の進化を研究する際に典型的な天体となるのです。そこで,これまで,あらゆる波長の電磁波で広く観測され,複雑な数値シミュレーションの対象にもなってきました。
 はじめのうちは,NGC 7317には銀河同士の相互作用の影響があまり見つかっていなかったために,銀河自体が安定した状態にあるか,あるいは,ごく最近にこの銀河群の近くに移動してきたばかりだと考えられてきたのですが,赤色の星々がこの銀河の周囲に検出されたことで,NGC 7317は他のメンバー銀河と非常に長い期間にわたって相互作用し続けているという可能性がいわれるようになってきました。
 銀河群の中で大きい銀河が及ぼす重力によって小さな銀河がゆっくりと解体される相互作用現象は「銀河の共食い」(galactic cannibalism)といわれます。こうした「銀河の共食い」によって,大きな銀河の周りを軌道運動する星流やハローが形成されるのが特徴で,NGC 7317の周囲に見られる赤い星のハローもそのような構造に似ているといいます。大規模な共食い現象によって,銀河群は最終的にはひとつの巨大楕円銀河になるということです。

 このように有名なことからアマチュアの天文愛好家が多くの写真を写しているので,私もそれに手を出そうとしたのですが,所詮は無理な相談でした。この天体明るさが14等星ほどだったのです。それにしたらよく写ったものです。

◇◇◇


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水星と火星の大接近。

11月11日。
水星と火星が大接近しました。
明け方の東の空低く,肉眼でも確認できました。 DSC_8086s2


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 11月8日は月が金星を隠す金星食でした。とはいえ,お昼間のこと,月も金星も見ることができるのかな? と疑問でした。
 子供のころ,名古屋市科学館の大きな望遠鏡で,お昼間の金星を見る,という集まりで見たことがあって,私は,お昼間の金星は望遠鏡を使わなければ見ることができないものだと思い込んでいました。
 しかし,私の持っている望遠鏡は自動導入でないから,視野の狭い,かつ,長い鏡筒を振り回してお昼間の金星を視野に入れるのも大変そうに思えました。
 
 11月8日。
 残念ながら雲が空を覆い,探すこともできませんでした。今日の一番最後の写真は国立天文台が写したものです。
 そして,その夕方,依然として雲に覆われていたのですが,一瞬雲が切れて,月と金星を写真に収めることができました。それが今日の1番目の写真ですが,すでに,月と金星はずいぶんと離れてしまっていました。
  ・・
 11月9日。
 皮肉にもこの日は晴天でした。そこで,昨日の疑問を解決しようとお昼間に月と金星を探すことにしました。
 月は簡単に見つかりました。双眼鏡の視野に月を入れて,そこから金星を探すと,思ったより簡単に金星が視野に入りました。そして,その場所を眺めてみると,確かに肉眼でも金星が確認できました。 
  ・・
 11月10日。
 早朝,日の出30分ほど前に,東の空に水星と火星が接近しているということで,それが見られるかどうかを試してみることにしました。情報によると「11月上旬,明け方の東南東の低空に水星と火星が大接近して見える。最接近は11月11日で,1度未満まで近づくが,日の出30分前で高度が5度未満と非常に低く,しかも,火星が約2等級と明け方に見るには暗いため,観察の難度はかなり高めだ」とありました。
 双眼鏡を水星のあるべき位置に向けると,簡単に水星は視野に入りました。しかし,火星は見ることができませんでした。少しして再び探して見ると,確かに火星を双眼鏡の視野で見ることができました。そして,その位置を目を凝らして肉眼で探すと,火星を見ることができました。
 写真ではあまり露出をかけると露出オーバーで星が飛んでしまうし,露出をかけないと今度は星が露出不足で写らないのですが,いろいろと設定を変えて数コマ写してあとで確認すると,火星がちゃんと写っていました。

 いつも書いているように,何事も確かめるに限ります。
 こうしてまた,疑問がひとつ,いや,ふたつ解けました。

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 11月6日早朝,新月でかつ天気がよかったので,近くに星見に出かけました。ひとりで星を見ているのが一番落ち着きます。
 何を,という目的も特になかったのですが,先日も写した準惑星セレス(Ceres)とはじめてレナード彗星(C/2021A1 Leonard)を写すことにしました。
 新しく買い替えた赤道儀もそれなりに使いこなせるようになったし,楽しい時間となりました。

 まず,準惑星セレスです。
 準惑星セレスは7等星ほどなので,双眼鏡でも簡単に見ることができるのですが,普通の恒星と変わらないので,普段はなかなか区別がつきません。そこで,こうしたアルデバランに接近したときに容易に見分けがつくので,準惑星を見る絶好の機会となります。
 先日11月3日に写した写真と並べてみたのが今日の1番目の写真です。

 次がレナード彗星です。
 現在レナード彗星はおおくま座としし座の中間あたりで,明け方前の北東の空,結構高いところで見られます。周りに明るい恒星がないのですが,星の並びがわかりやすいので,容易に場所が特定できて,カメラに収めることができました。
 まだ10等星くらいですが,すでにかわいい尾が見えて,大物の風格です。
 レナード彗星は明るくなるといううれしい予報ですが,彗星の明るさは水物なので,果たしてどうなるか?
 いずれにしても,レナード彗星はあっという間に駆け抜けてしまうので,明るくなった彗星を見るチャンスは12月はじめからの2週間ほどだそうです。12月13日はちょっと辛いかも,ということで,12月12日まで明け方の東の空に美しく見えるということです。ちょうど月明かりもなく絶好です。東の空に低くうしかい座の1等星アルクトゥールスが見えるのですが,そのあたりを駆け抜けていきます。
 その後は,太陽を周って,12月16日くらいからは今度は夕方の空に見えるようになるのですが,あまり高度も光度も高くならないし,月明かりもあるので,夜明け前の東の空のほうがすばらしい姿が見られることでしょう。
 なお,レナード彗星が発見されたレモン天文台のあるアリゾナ州のレモン山はツーソンから車で1時間30分程度のところにあって,サボテンだらけの山だそうです。こんな状況でなければ行ってみたかったところです。

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 天気のよい日が続いています。 
 11月2日の深夜,新しい赤道儀の試行を兼ねて,近くに星を写しに行きました。目的は,前回撮影できなかった周期彗星フェイ(4P Faye)を写すことと,現在おうし座のアルデバランに大接近している準惑星ケレスでした。
 まず,M45プレアデス星団を試しに写しました。新しい赤道儀は今まで使っていたものより使いやすいのですが,まだ少し改良するところが見つかりました。

 フェイ彗星(4P Faye)は1843年にエルヴェ・フェイ(Hervé Auguste Étienne Albans Faye)によってパリ王立天文台で発見された周期彗星です。周期7.54年。
 パリ王立天文台はルイ14世の時代の1667年にパリに開設された天文台で,19世紀の位置天文学の発展に大きい役割を果たしました。初代の台長は土星の輪の間隙を発見したカッシーニ(G. Cassini)です。
 フェイ彗星は思ったよりも暗いようで,予報にあった位置を何度写しても彗星らしい天体が確認できませんでした。家に帰ってから調べてみると,かろうじて尾を引いた彗星が写っていました。約12等星というところでしょうか。

 準惑星セレス(Ceres)は,火星と木星の間のメインベルトに位置する準惑星です。直径は945キロメートルと,メインベルトで最大の天体であり,メインベルト唯一の準惑星です。
 1772年,それまで知られていた水星,金星,地球,木星,土星の軌道から,ドイツの天文学者ヨハン・ボーデ(Johann Elert Bode)は,この,現在も科学的根拠が見出されていないティティウス・ボーデの法則(Titius₋Bode law)をもとに,火星と木星の間に大きな間隔があることから、火星と木星の間に未発見の惑星が存在していることを予測しました。その予測に沿って,シチリア島のパレルモ学会(Palermo)のカトリック司祭であったジュゼッペ・ピアッツィ(Giuseppe Piazzi)が1801年1月1日に発見したのがセレスです。
 ジュゼッペ・ピアッツィは,発見した天体にローマ神話に登場する農業の女神セレスとシチリア王国の国王フェルディナンド1世に因んで「Cerere Ferdinandea」という名称を提案しましたが,「Ferdinandea」は他の国々には受け入れられず省略されました。発見当初,セレスは惑星であると考えられていたのですが,その他に多くの同じような軌道を持つ天体が発見されるようになり,1850年代には小惑星として再分類されました。 
 このセレスがおうし座のアルデバラン(Aldebaran)の近くを通り過ぎるので,アルデバランと同じ視野で写してみたというわけです。
 なお,0.9等星のアルデバランはおうし座の眼にあたる位置にあって,太陽の直径の45倍もある赤色の巨星です。アルデバランとはアラビア語で「プレアデスにつづくもの」という意味で,いつも,プレアデス星団につづいて東の空から昇ってくるさまから名づけられました。ヒアデス星団の中にあるので,見た目にはヒアデス星団の中で輝いているように見えるのですが,距離は60光年と,150光年のヒアデス星団よりもかなり手前にあって,星団とはまったく関係のない星です。
  ・・
 この晩は天気が安定していなくて,頻繁に薄雲が湧いてくるので,目的を達成して,早々に引き上げました。東の空には月齢26.4の月が昇ってくるのが見えました。 

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リングDSC_2156t小あれいDSC_2161txNGC7331 ステファンの五つ子nstephan

 彗星以外に,特に何を写したいということもなかったので,とても小さな惑星状星雲をふたつ写すことにしました。そのひとつがこと座リング状星雲M57,もうひとつがペルセウス座小あれい星雲M76です。
 惑星状星雲(planetary nebula)というのは超新星にならずに一生を終える恒星が赤色巨星となった際に放出したガスが中心の星の放出する紫外線に照らされて輝いているものです。中心の星は恒星の進化において白色矮星になる前の段階です。
 M57は地球からの距離が約2,300光年で,リング状の特徴的な姿をしていて,惑星状星雲の中では最も有名な天体のひとつです。M76は地球からの距離が約2,500光年で,メシエ天体の中では暗い天体ですが,口径10センチではよい対象となり,亜鈴の小型でなめらかな表面のノットが互いにくっついているように見え,口径20センチでは四角い形に見えて,中央のくびれ部分が次第にはっきりしてくるといわれます。

 このふたつの惑星状星雲を写しているうちに,ステファンの五つ子銀河(Stephan's Quintet)というものを思い出しました。ステファンの五つ子銀河というのは,ペガスス座の方角に見える近接した5つの銀河で,そのうちの4つは,1877年にマルセイユ天文台でエドゥアール・ステファンがはじめて発見したコンパクト銀河群です。
 ネット上にたくさん写真があって有名な割にどこにあるのか書かれたものが少なく,星雲星団のガイドブックにも記載がなく,私には謎の天体でした。何とか調べたのがNGC7331で,私はこれこそがステファンの五つ子銀河のひとつだと思い込んでいたのです。それが今日の3番目の写真なのですが,実際はNGC7331の左下の赤く囲んだ部分にかすかに写っている塊だったのです。これではよくわからないので,すばる望遠鏡で写した写真を載せます。それが4番目のものです。
 ということです,これをはっきりと捉えるには私の持っている望遠鏡では非力なのでした。とはいえ,私には謎が解けたので,すっかり満足しました。

 この晩は,望外に天気に恵まれたのですが,適当に持ってきた機材だったので,準備不足が否なめずバッテリーがなくなってしまいまい,午前1時には星見を終えました。非常に湿気が多く,そのためにレンズのヒーターに電源が必要だったことに加えて,新しく購入した赤道儀にもバッテリーが思った以上に必要だったのが原因でした。
  ・・
 さて,この晩はじめて使用したビクセンのAP赤道儀はこれまで使っていたペンタックスのMS-3N赤道儀に比べて華奢であることは疑いがなかったのですが,そのために軽く,思った以上に使いやすいものでした。ペンタックスのMS-3N赤道儀にも多くの欠点があり,また,ビクセンのAP赤道儀にはそれとは別の欠点が見つかったのですが,自分なりに工夫を加えれば,末永く使えることでしょう。
 それにしても,天体望遠鏡の業界というのは,どれほどの儲けがあるのか知りませんが,製品のどれもこれもいろんな欠点があります。実際に使いこなしている人たちはみなそれぞれ工夫をしてその欠点を補っているのですが,ある意味,それがまた楽しみなのでしょう。まあ,天体望遠鏡は星を見ること以上にメカに興味のある人たちのおとなのおもちゃのようなものなので,多くのマニアは私とは異なり必要もないようなスペックを求めたりしていて,そのためにやたらと高価になっているのが,私には最大の欠点に思えます。私はペンタックスのMS-3N赤道儀の後継機にはタカハシのPM-1という赤道儀がいいなあと思っていたのですが,売れなかったとみえ,早々と製造中止になってしまったのが残念でした。今,タカハシブランドの高橋製作所が製造している望遠鏡はすべて私にはオーバースペックです。PM-1,買っておけばよかった。


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 数年前とは異なり,旅をしなくなったことが理由なのか,齢をとったのか,さまざまなことに情熱がなくなりました。そこで,事前の準備をする気にもならず,たった1泊2日だというのに,手元にあるものを片っ端からみんな車に詰め込んで出発しました。
 常宿である木曽駒高原のペンションは晴れていれば満天の星が見られます。木曽は標高も高く安全だし,東京大学の天文台がある場所でもあることから,私は,日本でこの場所以外に遠出しても同じだろうと思うようになりました。いわば,日本一の星空です。ただ問題は晴れるかどうか,だけでした。今回は,赤道儀を新しくしたのですが,事前に試行もせず持っていきました。
 今回は晴れれはばいいなあ,程度だったのですが,快晴になったのには驚きました。1番目の写真のように,あとで確かめると水蒸気が多く,最高の条件ではなかったのでしょうが,肉眼で見る限り美しい星空でした。
 ということで,新しい赤道儀の試行を兼ねて,いくつかの暗い彗星と星雲,星団などを写すことにしました。
 まず,2番目の写真がシュワスマン・ワハマン第1彗星(29P Schwassmann-Wachmann)です。シュワスマン・ワハマン第1彗星は,ふだんは16等星ほどの暗い彗星ですが,突然アウトバーストを起こして12等星くらいまで明るくなることで知られています。アウトバーストは頻繁に起きて,1,2週間で16等星に戻ります。今回も9月25日に大きなバーストを起して明るくなっているそうです。
 これまで,最大で19等級から9等級まで変化したことがあるといいます。アウトバーストは揮発性物質が爆発的に蒸発して起こると推測されていますが詳しいことは不明です。
 3番目の写真がチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P Churyumov-Gerasimenko)です。10月はじめにも写したのですが,ふたご座の散開星団M35と同じ画面に写せるので狙ってみました。
 そして,4番目の写真がアトラス彗星(C/2019L3 ATLAS)です。この彗星もまた,すでに8月にも写しました。

 この晩は,新しい赤道儀に四苦八苦しながら,こうした暗い彗星を写していきました。このように,これまで写したことのある暗い彗星しか現在はみられませんが,うれしいニュースがあります。
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 肉眼で見える5.0等星から4.0等星の光度になると予想されていますが,ひょっとすると1等星に達するかもしれません。

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十三夜。

十五夜と対をなす十三夜。または,後の月。
このふたつをあわせて「二夜の月」。
どちらか一方の月しか見ないと「片見月」。
十三夜は栗の収穫の時期なので「栗名月」とも。
曇り空の向こうに月が一瞬顔を出しました。DSC_0261s


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 ☆☆☆☆☆☆
 私が細々と星見を楽しんでいるお供は30年以上前に買ったPENTAX 75SDHFという望遠鏡で,架台はMS3Nという赤道儀でした。
 経年劣化で,もう,ぼろぼろなのですが,私にはこれで十分なので,いろいろと直しながら使っていました。電源もUSBで使えるように改造しました。
 しかし,だんだんと調子が悪くなってきて,ついに,先日,追尾ができなくなってしまいました。修理が可能かどうかわからないのですが,できるとしても,けっこうな修理費が必要でしょう。
 この赤道儀が壊れたら星見はやめようと思っていたのですが,まだまだ未練があったので,後継機を探すことにしました。

 私には焦点距離が300ミリ程度の望遠レンズが2分ほど追尾できれば十分で,オートガイダーもいらないし,長年培った技でファインダーだけでねらった星を視野に入れることができるので,自動導入とかいうこじゃれた武器も要りません。そこで,最低限のものを探すのですが,どれもこれもオーバースペックなものばかりです。趣味なんて所詮自己満足の世界だし,多趣味な私は,赤道儀「ごとき」にたくさんのお金をかける気にもなりません。

 そこで,何とか見つけ出したのが,ビクセンのAP赤道儀でした。
 これまで使っていた赤道儀もアリ溝式に改良してあったので,赤道儀を変えてもそのまま鏡筒が接続できるし,極軸望遠鏡も,海外で使うためにポータブル赤道儀を買ったときのものが使えます。また,電源もUSBが使えるということで,これで十分だな,と思いました。
 ということで,わずか10万円程度で後継機が手に入りました。この先5年から10年くらいは何とか使えそうで,ひとまず安心しました。

 それにしても,いろいろと探してみると,高価なものがあまりに多いのに驚きました。
 確かに性能はいいのでしょうが,望遠鏡1台が車1台くらいの値段がするのです。しかし,毎日使う車と違って,使えるのは月に1回か2回程度であり,しかも,重たければ,持ち運びも大変です。よほどのマニアでない限り,買ってはみたものの,それを十分に使っている人がどのくらいいるのかな,と私は疑問に思ってしまいました。
 次回は使ってみた感想を書きます。


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 秋の夜,南の星空は都会では何も見えません。よく目を凝らすと,ポツンとみなみのうお座の1等星「フォーマルハウト」(Fomalhaut)だけが輝いている… ということなのですが,今年は,木星と土星が明るくきれいです。明るい惑星があると,ピントを合わせるのに便利です… というのは内輪の話ですが。
 空が暗い所だと,秋の南の空には,みずがめ座やくじら座という星座が見られます。都会育ちの私が,こうした星座をはじめて見たときは感激しました。
 この晩,私が目的としていたのは,前回書いたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P Churyumov-Gerasimenko)だけだったのですが,昇ってくるのが午後9時過ぎで,まだ早かったので,何となく,いろんな星団や銀河を退屈しのぎに写すことにしました。それが今日の写真です。たいして珍しくもないのですが,ご覧ください。上から,M45,M33,M74,そしてM77です。

 星の写真も,適当な望遠レンズをつけたカメラと赤道儀があって,空が暗いところに出かければだれでも写せるようになりました。
 お金を出せばそれだけいい機材を買うことができますが,晴天率の悪い日本でそんな投資をしても割の合わない趣味だと私は個人的には思っていて,10万円程度の赤道儀と300ミリ程度の望遠レンズ,そして,見る場所があれば,それで十分に自己満足の世界に浸れます。今はできませんが,高額の望遠鏡に投資するようなお金があるのなら,南半球に出かけて肉眼で満天の星をながめるほうがずっと理にかなっています。
 日本で星空を楽しむには,田舎に住んでいるならともかく,おそらく,一番の問題は場所でしょう。本当に,自然を楽しむには,この国は「どうにもならないほど救いようがないなあ」といつも絶望的な気持ちになります。
 私にはそんな程度の楽しみですが,私が星見をするために見つけた場所は,適度に暗く,かつ,人が来ないところなので,この晩のように,寒くも暑くもなく,かつ,雲がひとつもないとなると,何となく星空を見ているだけでも満ち足ります。

 さて,銀河や星団だけでなく,天王星と変光星「ミラ」(Mira)も写してみました。
 天王星は簡単に見えるのですが,普通の恒星と何ら変わらないので,それだけです。しかし,変光星「ミラ」は赤く不気味でそれなりにおもしろいです。「ミラ」はくじら座のο星(ο Ceti)で,2.0等星から10.1等星の間を約332日の周期で変光するのですが,極大等級も周期も必ず一定になるとは限らないという変光星です。
  ・・・・・・
 「ミラ」は,有名な脈動変光星(pulsating variable)の一種でミラ型変光星(Mira variable)とよばれるものの代表選手です。
 脈動変光星というのは,星が膨張と収縮を繰り返すこと,または,形状が変化することによって明るさが変化する変光星のことです。また,ミラ型変光星には,非常に赤く,脈動周期が100日より長く,変光範囲が可視光で2.5等級より大きいという特徴があります。もともとは太陽質量の2倍よりも小さい恒星が膨張して非常に大きくなった赤色巨星で,数百万年で外層を惑星状星雲として吹き飛ばし,白色矮星になります。
 また,「ミラ」は連星で,赤色巨星の主星「ミラA」と伴星「ミラB」からなっています。「ミラA」は赤色巨星の中でも恒星の一生の最終段階である漸近巨星分枝に属していて,400万年で太陽1個分の質量を喪失するペースで質量を放出しています。「ミラB」も不規則に明るさを変化させる変光星で,降着円盤を伴う白色矮星だと考えられています。
 「ミラ」の後方には恒星の外層部の残骸が全長約13光年にわたって彗星の尾のように放出されています。
  ・・・・・・
 「ミラ」は,子供のころに見ていた星図に,変光星を意味する二重丸で書かれていてしかも変わった名前で強く印象に残ったのですが,実際は思ったよりも暗く,都会ではなかなか見ることができません。今は明るい時期なので,改めて写してみたわけです。今度暗くなったときに改めて写してみたいものです。

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 明るい彗星がまったく近づかない今年ですが,現在は,約11等星になったチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P Churyumov-Gerasimenko)がおうし座に見えるので,この彗星だけは写そうと考えていました。
 チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は,2014年にヨーロッパ宇宙機関 (ESA=the European Space Agency) の彗星探査機「ロゼッタ」(the Rosetta spacecraft)の着陸機「フィラエ」(Philae)が人類史上初の着陸を果たした彗星として有名なものです。
 しかし,今年は天気も悪く,月明かりの影響のない夜に晴れたのも数えるほどでした。10月1日は台風一過で,風が強いとはいえ,やっと晴れたので,待望のこの彗星を写しに行くことにしました。

 ところで,探査機「ロゼッタ」といえば,私はウィルタネン彗星(46P Wirtanen)を思い浮かべます。「ロゼッタ」の当初の計画では,この探査機は2003年1月12日に打ち上げられて,2011年にこのウィルタネン彗星に着陸機を降ろす予定だったのです。しかし,2002年12月11日のアリアン5ロケット爆発事故で,同型のロケットで打ち上げられるはずだった「ロゼッタ」の打ち上げが遅延したためにウィルタネン彗星を目指すことができなくなって,目標が別のチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に変更されたというわけです。
 私は,ウィルタネン彗星を2018年11月に写すことができたので,今回は,チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星をぜひ写したいと思っていたわけです。

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 チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は,1969年にクリム・チュリュモフ(Klim Ivanovich Churyumov)とスヴェトラナ・ゲラシメンコ(Svetlana Ivanovna Gerasimenko)によって発見された周期6.57年の周期彗星です。
 アルマアタ天体物理研究所(Fesenkov Astrophysical Institute = FAPHI)で働いていたスヴェトラナ・ゲラシメンコが口径50センチメートルのマクストフカセグレン式望遠鏡でコマス・ソラ彗星 (32P Comas Solá)を撮影していたのですが,その写真を調べたキエフ大学のクリム・チュリュモフが写真乾板の端近くに発見した彗星をコマス・ソラ彗星だと当初は思い込んだものの,キエフに戻った翌月の10月22日,その天体はコマス・ソラ彗星の予想位置から1.8度も離れていたと判明し,別の天体であることがわかったものです。
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 「ロゼッタ」が撮影したチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星はふたつの彗星がゆっくりとぶつかってそのまま結合したような2重の構造を持つアヒルのオモチャのような奇妙な形状をしていました。また,核の直径はは小さな側が約2キロメートル,大きな側が3キロメートルほどで,核全体の質量は約1,000キログラム,約12.4時間に1回の周期で自転しているということでした。
 なお,探査機「ロゼッタ」と着陸機「フィラエ」の名称は,ロゼッタ・ストーン解読の鍵となったフィラエ・オベリスク(Philae obelisk)=記念碑 が発見されたナイル川の島フィラエ島に由来するものです。
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 チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は暗いので写すのに手こずるかなと思っていたのですが,簡単に写りました。かわいい尾を引いた彗星は,暗いとはいえ,さすがに周期彗星の貫禄でした。調べてみたら,私は6年前にも回帰したチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星を写したことがあることがわかりました。
 いずれにしても,こんな淡い天体に人間が探査機を送り込んだと思うと,何か不思議な気がしました。

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