●50州制覇最後の州は本当はアラスカだった。●
ところで,私がアメリカ合衆国50州制覇を目指していた2015年,最後に残った州が三つあった。それは,サウスカロライナ州,ノースカロライナ州,ハワイ州であった。残った3州の中で,ハワイ州を最後にしようと,ずっと思っていた。記念すべき50州目をハワイ州のホノルルの空港で迎えるというシナリオはすばらしいものではなかろうか,と思えた。ホノルルの空港で,ほかの人も巻き込んで,「おめでとう50州制覇」の横断幕なんか用意して写真を撮ろう,と考えていた。
しかし,どういうわけか気が変わり,2016年の春,サウスカロライナ州,ノースカロライナ州に行く前に,ハワイ州に行ってしまった。そのときの旅行記はすでに書いた。そして,2016年の夏にフロリダ州からバージニア州まで,アメリカの東海岸を縦断する旅をして,サウスカロラナイ州からノースカロライナ州に州境を越えて地味に50州制覇を達成した。そんなわけで,私の50州目はノースカロライナ州… ということになっている。
しかし白状すると,実は,この時点では,私は本当の意味でアラスカ州は行ったことがなかったのである。
私の若いころは,日本から空路アメリカの東海岸やヨーロッパに行くには,アラスカ州のアンカレッジで給油をする必要があった。そこで,ニューヨークやパリに行ったとき,一旦,アンカレッジの空港に降りたことがあったわけで,これをアラスカ州に行ったとみなしていたというのが真相であった。
つまり,インチキである。
アメリカ人の友人に50州を制覇したと自慢するといつも「アラスカも行ったのか?」と聞かれて,内心,後ろめたい気持ちになっていた。アメリカ人にとってもアラスカというのはそれほど縁遠いところのようだった。私は,正真正銘,胸を張って50州制覇と自慢するために,2017年の夏にアイダホ州で皆既日食を見たとき,その帰りにアラスカ州のフェアバンクスに行くことにした。遠いと思っていたアラスカ州だったが,シアトルからならアラスカに行くなんてちょろいことだった。国内線に乗るだけだったから…。
そんなこんなで行ってみたアラスカだったが,それは,とても楽しい旅になった。期せずして,というか,期待はしていたがおそらく無理だろうと思っていたオーロラも見ることができた。これを機会にオーロラに夢中になった私は,その翌年,フィンランドへ,そして,そのあとアイスランドまで行くことになってしまったのだから,ひとつの出来事がそのあと思わぬ展開をよぶものである。人生はこうだからおもしろい。ともかく,どんな金持ちだろうと,偉い人だろうと,オーロラも見ていない人よりは私のほうがずっと幸せである。と思うほど,オーロラを見るという経験はすばらしいものである。
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よって,私が正真正銘アメリカ合衆国の50州を制覇した最後の州は,本当は,アラスカ州なのである。それは,ノースカロライナ州に行った2016年7月31日ではなく,アラスカ州のフェアバンクスに降りたった2017年8月26日のことであった。
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アラスカの外輪船クルーズ①-2017夏アメリカ旅行記
●わずか数日の思い出が…●
☆13日目 2017年8月28日(月)
アラスカ3日目の朝である。
昨晩も天気がすっきりせず,そのまま朝になった。これほどフェアバンクスは天気が悪いとは思わなかった。旅というのは不思議なもので,まだ滞在3日目だというのに,フェアバンクスのことをもうすっかりわかったような気になるのが不思議なことだ。
若いころは何か月にもわたって旅をしたかったものだが,このごろは旅は1週間で十分だと思うようになった。それは,1週間の旅なら非日常をたっぷり味わうことができるが,これ以上長くなると日常になってくるからだ。
海外でよくどのくらいの期間旅行をしているのかと聞かれる。1週間と答えると気の毒そうな顔をされる。とはいえ,社会人にとってみれば1週間の休みすら取れないのがこの国である。日本で同じことを聞かれて1週間と答えると,そんなに長い期間!と,今度は逆に驚かれる,働き方改革を叫ぶなら,せめて,年に1度はお正月やお盆以外に1週間の連続した休みを与えることが先決だと私は思う。
この春,私が出かけたオーストラリア旅行は,緊急に帰国したためにわずか1泊であった。このアラスカ旅行もまた,この日が3日目だった。しかし,いずれの場合も,たった2日でずいぶんといろんなことができるもので,普段暮らしていると特に何もしない,何も思い出せないような1週間がほとんどだというのに,わずか数日の旅でも,人生に過大な思い出をもたらすというのが不思議である。
さて,この日のメインイベントは外輪船クルーズ(Steemwheeler Riverboat Cruises)であった。昨日,何か見どころがないものかと探した結果見つけたものだが,このクルーズはとても人気があるそうなので予約なしでは乗ることができないかもしれないと思って,ネットで予約をしておいた。
この外輪船クルーズのことはまた後日書くことになるが,これはフェアバンクスでは最高の見ものであった。しかも,外輪船クルーズは5月中旬から9月下旬までしか運航していないから,冬にやってくる日本からのオーロラツアーでは乗ることができないので,これは貴重な体験であった。
今日もまた,私の泊まっているB&Bではすばらしい朝食を食べることができた。朝食が一緒だったのはドイツから来た夫婦連れと日本から来た初老の夫婦であった。この初老の夫婦は,日本からツアーでバンクーバーから列車に乗ってアンカレッジに来て,そこでツアーをキャンセルしてフェアバンクスにバスを利用して来たという話だった。こういう方法はありだろう。旅でもっとも難しいのは移動手段だが,お金さえあれば,ツアーの「いいとこ取り」をすればいいわけだ。彼らは車を利用していなかったから,フェアバンクスでは公共交通を利用して観光をしていた。しかし,これではオーロラも見に行けないし,かなり行動に制限がある。
朝食を終えて,まずビジターセンターに行った。駐車場が広いからここに車を停めてダウンタウンを散策しようという計画であった。1日目もダウンタウンを散策しようとしたが,その日は雨に降られて中断をしたので,私はまだダウンタウンを十分に見ていなかったからだ。
ビジターセンターの隣にゴールデンハートプラザ(Golden Heart Plaza)という広場がある。この広場を通ってダウンタウンに行くのだが,そこで私が見たのは小さな子供を連れた若いおかあさんたちが体操をしている姿であった。指導をする人がいて,それに従って楽しそうにやっていた。
こういう姿に出会えることこそが,旅をしていて楽しいときである。この時期は夏だからこうした時間がもてるのだが,冬になったらどういう生活をしているのだろうとこのとき思った。
この広場の中央には彫刻があった。この彫刻は「知られざる最初の家族」(Unknown First Family)と題されたものである。その脇にはこの彫刻の作者であるマルコム・アレキサンダー(Malcolm Alexander)の詩が書かれてあった。
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Portraying the family of all mankind, the family of Fairbanks, and the nuclear family, let this statue symbolize, for families present and future, the pride and dignity of this great land.
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公園を通り,橋のたもとにあったがイマキュリッツコンセプション教会(Immoculate Conception Church)であった。この教会は1904年に造られたフェアバンクスで最初のものである。教会には自由に入ることができた。美しいステンドグラスや錫の細工で飾られた天井や壁が美しかった。
「父と子のアラスカ」-星野道夫のすばらしき生きざま
どうしようもない,見ているほうが恥ずかしくなるような興味本位の番組がたくさんあるなかで,時々,宝石のような番組に出会うことがあります。そうしたときには,とても幸せな気持ちになります。NHKBS1で放送された「父と子のアラスカ・星野道夫命の旅」という番組もそうでした。
星野道夫さんは知っていましたが,恥ずかしながらこれまでほどんど興味がありませんでした。それが,昨年アラスカに行ったことでこの番組に興味をもち見てみようと思ったのだから,旅というのはすごい力があるものです。
そうした理由から見はじめたのですが,それがなんと,予想以上のすばらしい番組でした。
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生涯アラスカにこだわり写真を撮り続けた星野道夫さんは,ロシアでヒグマに襲われて43歳で亡くなりました。星野道夫さんが亡くなったときわずか1歳だったひとり息子の星野翔馬さんには父の記憶がほとんどありません。これまで父の写真や本から目を背けてきたのですが,23歳になって,アラスカに父の思い出に出会う旅に出たのです。
その旅で,父がはじめてアラスカに触れた村であるシシュマレフ(Shishmaref)を訪れて,先住民の神話の語り部で父の親友だったボブさんに会います。自分探しをする星野翔馬さんは,この旅で父から大切なメッセージを受け取るのです。
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私は,この番組を見て,星野道夫さんの息子さんはすばらしい人だと思いました。この息子さんの姿を見ているだけで,父であった星野道夫という人のすばらしさもわかる気がしました。
失礼ながら,私はこの番組を見るまで,星野道夫という人は,アラスカなんかに行って,クマに食われた生涯なんて,なんと物好きなと思っていました。しかし,この番組を見終わった今の私は,まったくその正反対で,私が思っている理想の生き方そのものを貫いた人だったんだなあ,と思いました。そしてまた,人の心は時間と距離を,さらには世代をも超越するだということを強く感じました。
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星野道夫さんは千葉県市川市生まれの写真家であり探検家。慶應義塾大学時代は探検部で活動し,熱気球による琵琶湖横断や最長飛行記録に挑戦しました。
19歳のときに神田の洋書専門店で購入したアラスカの写真集に掲載されていたシシュマレフに惹かれ,その地を訪問したいと村長に手紙を送ってみたところ,半年後に村長本人から訪問を歓迎する旨の返事がきたのです。そこで翌年の夏,シシュマレフに渡航し,ホームステイをしながらクジラ漁についていったり写真を撮ったり漁などの手伝いをしたりしながら3か月間を過ごすことになったのです。
大学卒業後は動物写真家の田中光常さんの助手となったのですが,思いとはちがって雑用ばかりだったので職を辞し,アラスカ大学フェアバンクス校を受験するのです。入試の結果は英語の合格点が30点足りなかったのですが,学長に直談判して野生動物管理学部に入学します。その後,アラスカを中心にカリブーやグリズリーなど野生の動植物やそこで生活する人々の魅力的な写真を撮影しました。
やがて悲劇が襲います。1996年8月8日の午前4時ごろ,TBSテレビ「どうぶつ奇想天外!」という番組の取材のため滞在していたロシアのカムチャツカ半島南部のクリル湖畔に設営したテントでヒグマの襲撃に遭い死去してしまったのです。
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私は,星野道夫さんという人の生き方をきちんと知りたいと思うようになりました。そこで,星野道夫さんの本を読んでみようと思いました。そしてまた,もう一度アラスカに行ってみたくなりました。
アラスカは遠いです。ものすごく遠いのです。日本からは直行便がないので,飛行機で20時間以上もかかります。しかし,なぜか,私にとってアラスカというのはものすごく身近な気がする場所なのです。家の外にでると,フェアバンクスの町が広がっているような気がするくらいです。目を閉じると,はっきりとアラスカの風景が浮かびます。そうした私は,この番組で星野道夫さんの生きざまを知って,さらにアラスカへの思いを深くすることができたのです。
2018年がやってきた①-今年もオーロラを見よう。
Happy New Year 2018
◇◇◇
2016年夏,念願のアメリカ50州を制覇したのち,今後はどこに行きたくなるのかがそのときの楽しみでしたが,2017年にはわずか2か月の間に「星好きの三大願望」を再び達成することができました。では,私は2018年は何をしたいのでしょうか?
それがまあ,自分でも不思議なことに,雄大な大自然にすっかり魅せられてしまい,そのほかの場所には急激に興味をなくしてしまったのです。雄大な大自然…そうした場所には特に何かがあるというわけではありません。旅行のガイドブックにもほとんど何の情報も載っていませんし,その場所に出かけても,特に見どころがあるわけでもなく,むしろ退屈なだけの場所が多いのです。
しかし,そうした場所は,帰ってから,なぜか,忘れられなくなってしまうのです。
これは以前にも書いたと思うのですが,はじめてグランドキャニオンに行ったとき,人の作ったものなんてそれに比べたら何とちっぽけなものだとしみじみと思いました。ニューヨークの摩天楼もカリフォルニアのディズニーラドも,むなしいものだと感じましたが,まさに,それと同じです。
私が忘れられなくなってしまったのが,ニュージーランドとオーストラリアで見る満天の星空であり,アラスカで見たオーロラなのです。
今日はそのなかでオーロラについて書きましょう。
2017年の夏,せっかくシアトルに行くのだからと,ふと出かけることにしたアラスカでした。夏でもオーロラが見られるということを知って思い立ったのですが,期待は淡いものでした。が,その夢がかなってしまいました。
今でもその旅で滞在したフェアバンクスの街並みをはっきりと思い出せるのですが,特に何があるか,といっても思い浮かぶものもないのに懐かしいのです。しかし,考えてみればアラスカは遠い,遠い,遠い,…… 遠いのです。今すぐにでも行けそうな気がするのですがそれは錯覚です。
と思っていたら,なんと,フィンランドという近い場所を見つけちゃいました。私はスカンジナビアなんてまったく眼中にありませんでしたし,行こうとも思っていませんでした。それにはひとつ誤解があって,それはフィンランド語がわからない,ということでした。しかし,フィンランドでは英語通じる(らしい)のです。ということを知って,急に行きたくなってきました。フィンランドならアラスカよりずっと近いのです。セントレア・中部国際空港からは直行便があって10時間足らずでヘルシンキに着きます。オーロラを見るにはそこから北にさらに800キロほど北上しなけらばなりませんが,その場所にあるロヴァニエミまではヘルシンキから空路で1時間ほどで行けるのです。ということで,さっそくこの春に出かけることにしました。さて,極間の地,どんな素敵なことが待っているでしょうか?
世界はいつもときめきに満ちているのです。
◇◇◇
今日の写真はアラスカで写したものです。
「星好きの三大願望」-個人旅行でオーロラを見る方法③
いきなりですが問題です。
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トナカイは英語でカリブー(caribou)とレインディア(reindeer)というふたつの言い方があるのですが,この違いは何でしょうか?
答え:レインディアは空が飛べるのです???
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というのを外輪船ツアーで聞きました。夢のある素敵なジョークです。レインディアの引くそりに乗るサンタクロースさんもさぞうれしいことでしょう。
さて,今回の皆既日食の旅では,欲張ってついでにアラスカまで足をのばして,オーロラも見てしまいました。
もともとは,アメリカ50州制覇をした後の行き先として,これからはハワイとアラスカとオセアニアを中心に旅をしようと思ったこと,オーロラは夏でも見られると知ったこと,さらには,この春にオーロラを見にいった知人が複数いてとても羨ましかったこと,そしてまた,これはすでに書きましたが,50州制覇とはえアラスカをまともに観光したことがなかったこと,アラスカは個人旅行では直行便がなくシアトル経由で行くことになるから,せっかくシアトルに行ったのならついでに行ってみようと思ったこと。それが,今回アラスカまで足をのばした理由でした。
しかし,この旅の主の目的は皆既日食だったので,オーロラについては事前に何も調べておらず,行けば何とかなるだろうと,そうしたいい加減さでフェアバンクスに降り立ったわけです。
夏とはいえ,機内からみたアラスカは雄大な大地が広がっていました。着陸後,空港も小さくのんびりしているところだなあ,というのが第一印象でした。他に到着した便もなく,バゲッジクレームも動いていませんでした。しばらく待ってカバンが出てきたので取り上げて,空港内のカウンタで予約しておいたレンタカーのキーを受け取って外に出ました。道路も空いていて,30分ほどでフェアバンクスのダウンタウンに着きました。
夏のアラスカは冬のオーストラリアのようなところでしたが,広くはないとはいえダウンタウンは夜は街灯が明るくてオーロラどころか星もほとんど見えませんでした。ダウンタウンから郊外に出れば真っ暗な場所ばかりですが,オーロラは深夜に現れるので夜通し起きている必要があるから,オーロラを見るにはどこに行けばよいかを事前に調べておく必要があるのでした。ただし,晴れていて空が暗ければオーロラが現れる確率は思っている以上に高いものでした。
すでに書いたように,私は偶然、チナホットスプリングスリゾートへ行き,結局オーロラを見ることができたわけですが,この私の行った日本からの団体ツアー御用達の場所が最適とはいえませんでした。結局,個人でオーロラを見にいくときは,私のようにフェアバンクスのダウンタウンに宿泊するのではなく,自由に車で移動できる夏の時期ならばフェアバンクス郊外に適当なロッジでも見つけてそこを定宿にするか,極寒の季節ならば,空港から送迎のあるロッジを予約しておくといった準備をする必要があったのでしょう。
それよりも今回私が印象に残っているのは,ニュージーランドのテカポ湖畔同様,アラスカのチナホットスプリングスリゾートもまた,日本から脱出した多くの若い人(特に女性)がそこに住み着いて日本人観光客相手の仕事をしている姿でした。彼らがこの先どういう人生設計を立ててそこにいるのかは知りませんけれど,そして,それがどういうことを意味しているのかはわかりかねますけれど,私にはそのことのほうがとても衝撃的でした。
しかし,考えてみれば,何年勤めてもキャリアアップもできず早朝から深夜まで仕事をするか,結婚して小さな家を買っても住宅ローンに追われるか,子供ができても何も身につかないのに他人と競うだけの教育に,そして,そんな子育てが終われば今度は親の介護にとお金と時間を浪費するかしかなく,若いうちから自分の老後の心配をして今の自分の夢に投資することもできず貯蓄に励み,日々の楽しみといっても仕事の後に飲みに行くか,大型連休になれば混雑する観光地で渋滞に巻き込まれるか,走る道路もないのに車を磨くのに精を出すしかない,そんな狭い日本で生きるよりはるかに幸せなのかもしれません。
外の世界を見たことのない,あるいは,ツアー旅行でしか行ったことのない人たちの多くはこの国の異常さを知らず,日本はすばらしい国だと信じていますけれど……。
「星好きの三大願望」-個人旅行でオーロラを見る方法②
今日はまずオーロラを写す方法を簡単に紹介しましょう。オーロラを写すには,一眼レフカメラにできるだけ広角のレンズを用います。私は魚眼レンズを使いました。ISOは1600程度の高感度にして,絞りをできるだけ開きます。シャッタースピードは2秒から20秒くらいまで段階的に写して,その中から一番いいもものを選べばいいです。もちろん三脚は必要です。
オーロラは簡単に写ります。肉眼で見えないオーロラも写りますし,肉眼で見えるものでも実際に見るよりも鮮やかに写ります。星空を写すのと同じ要領です。
前回書いたように,オーロラを見るにはアラスカに出かけるのがおすすめですが,団体ツアー旅行が利用するチャーター便でなければアラスカへの直行便はありません。シアトル経由のツアー旅行もありますが,それではツアー旅行のメリットがまったくないので論外です。
そこで個人旅行でアラスカ初体験をするにはまずシアトルまで行ってそこからアラスカに向かわなければいけません。そのとき,最ももよいのはシアトルからはアンカレッジに飛んで,アンカレッジからフェアバンクスまでドライブするかアラスカ鉄道に乗ってフェアバンクスに行くことです。帰りはフェアバンクスからシアトルに戻ります。アンカレッジからフェアバンクスに行く途中にはテナリ(マッキンレー)を見られます。
ただし,アラスカ鉄道は日本からの団体ツアー客の定番コースなので,たくさんの日本人が乗っていると思われますから,個人旅行では,紅葉の美しい9月ならドライブの方がおすすめです。
私は今回,残念ながら時間がなかったのでこのコースが取れず,直接フェアバンクスに行くことになったのが心残りです。
フェアバンクスは小さな町ですから,2日もあれば見どころはすべて回れます。少ない見どころのなかでは,3時間かけてチナリバーを往復する外輪船クルーズが一番のおすすめです。
これは5月から9月の間だけ運行していて,事前予約が必須という話です。私は現地に着いてからネットで予約しましたが,個人なら何とかなりそうです。
それ以外の見どころとしては,アラスカ大学フェアバンクス校にある博物館や,ファウンテンヘッドアンティークオート博物館があります。アラスカ大学フェアバンクス校の広さには驚きます。また,オート博物館はクラシックカーがたくさんあるのでお勧めですが場所が極めてわかりづらいです。
フェアバンクスはこれくらいしか行くところがありません。ただし,クリーマーズフィールドという野鳥公園では8月の終わりだけカナダヅルが渡ってきていて,すごくたくさんの野生のカナダヅルを見ることができます。また、パイオニアパークという古びた遊園地がありますが,子供向けです。ただし,ここは5月から9月ならば夕方に行くとサーモンベイクができます。
ダウンタウンは狭いのでぶらぶら歩きも楽しいのですが,食事どころは,タイハウス(Thai House),バンタイ(Bahn Thai)といったタイレストランが有名です。というか,それくらいしかありません。私も食事に行ってみましたが,なかなかでした。
このように,フェアバンクスは北海道の田舎町のようなところですから,もし,夏に行くのであれば車で遠出することも可能なので,4時間ほど北に走って北極圏まで行くとか,デナリを満喫するとかすれば可能性は無限にひろがります。また,冬に行くのであれば,スノーモービルとかアイスフィッシングとかスキーといったウィンタースポーツができるのでそれに挑戦すればオーロラ以外にも楽しみが広がります。
9月のこの時期。成田からフェアバンクスまでのデルタ航空の往復航空券は8万円でおつりがきます。とても安いです。ただし,先に書いたように直行便がないので乗り換えの待ち時間も含めると21時間もかかります。ツアーならその10倍の値段がしますが,チャーター便を利用すれば6時間で行くことができまます。このように個人で行くとなると,一旦シアトルまで行ってそこで乗り継ぐことになるのですが,何がくだらないかというと,フェアバンクスからシアトルに向かった同じコースを,再びシアトルから成田に向かうときに飛ぶことです。
こんなわけなので,アラスカに個人で行く人がほとんどいないのです。私も今回アラスカへ行ったのはシアトルに行ったついででした。したがって,アラスカについてはハワイと違って情報があまりありませんし,現地でも日本人の個人旅行者相手のツアーもほとんどありません。
このように,個人旅行でアラスカに行ってオーロラを見るのは日本から遠いという意味で大変です。確かにオーロラは魅力的ですし,ハワイとはまったく違った魅力がありますが,私ですら再び行くとなると二の足を踏みます。もし今回オーロラを見ることができなかったら,またいつか行かなければ…… といった大きなトラウマになることでした。
この夏シアトルに出かけてふと足をのばして寄っただけのアラスカで偶然オーロラを見ることができた,というのは,そういう意味でも非常に幸運なことでした。
「星好きの三大願望」-個人旅行でオーロラを見る方法①
オーロラが見られるのは北極点を中心としたベルト状の場所(オーロラべルト)で,そこに存在する町としてはアラスカ州のフェアバンクス,カナダのイエローナイフ,フィンランドのロバニエミ,スウェーデンのキールナ,ノルウェーのトロムソなどが有名です。南極点にも同様にオーロラベルトはありますが,海の上です。
オーロラは寒い冬にしか見られないと思っている人も多いのですが,実際は1年中見られます。ただし,一般のオーロラは天の川程度の明るさなので,空が暗くないと見えません。また,北極に近いと夏は夜がほとんどないので空が暗くならないから,夏至のごろは見られないというだけです。それとともに,街灯がある都会もだめです。
ただし,いくら空が暗くとも,晴れることが第1条件です。そこで,降水量を調べてみると,アラスカとカナダのほうがフィンランド,スウェーデン,ノルウェーよりも少ないです。また,降水量が少ないというアラスカやカナダでも,最も降水量が少ないのが3月と4月ですが,この時期はとても寒いです。
冬の最低気温は,フェアバンスが-28度,イエローナイフが-31度,ロバニエミが-15度,キールナが-19度,トロムソが-7度となります。したがって,寒さからいえばノルウェーのトロムソほうが温度は高いのですが先に書いたように晴天率が低いのです。
このように,フェアバンクスの真冬は降水量が少ないのですがかなり寒いので,オーロラを見るには決死の覚悟が必要になるわけです。
そんな理由で,軟弱な私は,オーロラは見たいけれど寒くない季節にしようと,シアトルに行ったついでに8月の終わりにフェアバンクスに足を伸ばしてみることにしました。
しかし,行ってみてはじめて知ったのは,アラスカの中でも晴天率が最も高いと聞いていたフェアバンクスだったのに,実際は8月は雨ばかりでした。曇っていても突然雨が降ってきます。9月になれば8月よりは晴れる確率が高くなるらしいのですが,本当のところは知りません。
私が滞在した4日間で1日だけとはいえ晴れ上がり,その晩にオーロラが見られたのというのはかなり幸運だったといえるでしょう。
宿泊したB&Bで聞いてみると、フェアバンクスでは9月の下旬にはすでに雪が降りはじめるということですから,オーロラを見るには,寒くてもよければ3月から4月,寒いのを避けたいのなら9月の中旬まで,ということになります。
当然,10月から2月もオーロラは見ることができますが,10月になると雪が積もりはじめるし,フェアバンクスでは一番の見ものである外輪クルーズのようなアトラクションが休止になります。また,3月よりも晴天率が幾分低いということで,どちらをとっても中途半端な感じです。でも,この季節は日本からの観光客が少ないので穴場ともいえます。
さて,アラスカ第二の都市であるフェアバンクスですが,市内は明るくてオーロラの観察には不向きです。しかし,市内はさほど広くないので,30分も走れは真っ暗な郊外に出ることができます。
フェアバンクスの近郊では1年で300日程度オーロラが出現するということなので,そうした暗い場所に行って晴れれば,おそらく90%以上の確率でオーロラは見られます。ただし,オーロラはいつ出現するかわからないので,空を眺めながら出現を待たなければいけないことと,また,どこにオーロラが出たかは慣れていないとわかりづらいので,個人でフェアバンクスに宿泊して深夜に郊外に出かけるのはあまり得策ではありません。
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フェアバンクスから出発する現地オーロラツアーがあるとガイドブックなどに書いてありますが,オーロラツアーの開始は9月からです。また,ツアーで郊外に出かけても,深夜1時ごろには観察は終わり帰ってこなければなりません。こういうのがツアーの欠点です。それはハワイ島の星空観察ツアーも同様です。オーロラが出現するのは午後の10時頃から深夜の2時くらいが多いそうなので,それでは楽しくありません。したがって,フェアバンクスの市内に宿泊するよりも,郊外に数日(3~4日程度)泊まってオーロラの出現を暖かい室内で待ち,お昼間にフェアバンクスに観光で出てくるほうがいいと思われます。
フェアバンクス郊外の宿泊先は,フェアバンクスから30キロほど行ったところにいくつかログハウスやロッジのような宿泊施設があるとガイドブックには書かれています。そうした本には私がこの夏に偶然行ったチナホットスプリングス(China Hot Springs)もよく紹介されていて,そこには1泊300ドルもするロッジがあります。しかし,ここは日本人団体ツアー客御用達のところで,ツアーで来た日本人が山ほどいるので,個人で行くにはおすすめしません。また,マウントオーロラスキーランド(Mt.Aurora Skiland)も定番スポットということですが,やはり,シーズン中は混み合うそうです。
そんな有名なところでなく,フェアバンクスの郊外には安価なホテルやロッジが結構あって,フェアバンクスの郊外なら晴れさえすればオーロラは高い確率で見られます。しかも9月は空いていますし,まだ雪がないのでレンタカーを借りれば車で空港からホテルへ移動できます。この時期は成田からフェアバンクスまでの航空券も安く容易に手に入るので,オーロラとアラスカ観光をするのなら,まずはこうしたホテルやロッジを予約して気候のよい9月にとりあえず出かけてみるのがおすすめです。