8月29日,14日目になりました。この日,私はオーロラを見たという興奮からほとんど眠らぬまま朝になりました。日本でも星を見にいくときも同じようなものなので慣れっこではあるのですが,ひとつだけ心配がありました。
私は,次の日の30日深夜1時にフェアバンクスを発って4時間余りのフライトでシアトルに行き,6時間ほどをシアトルの空港で過ごし,当日30日のお昼12時50分発のフライトで日付変更線を越えて31日午後4時前に成田に帰国して,さらに,夜7時ごろのフライトでセントレア・中府国際空港に戻ります。合計すると帰国には26時間もかかるわけです。その間ずっと寝て過ごせるのならいいのですが,空港での待ち時間が多く,そこで寝入ってしまって危うく乗り損ねる心配があったので,睡眠不足は危険なのです。
この旅は,半年前に成田からシアトル,シアトルから成田のフライトだけを先に予約しました。それは,皆既日食を見るためにとにかくアメリカ本土に着かなければどうにもならないから真っ先に手配をしたからです。そして,アラスカへの旅は後からくっつけたので,結果的にこうしたかなりの冒険的な帰国になりました。いつ寝られるのだろう? と思いました。
そんなわけで,この日は睡眠不足のまま朝食だけ食べて,午前中再び寝ようとごろごろしていましたが,ぐっすり寝られるというものではありませんでした。お腹も減ったので,昼過ぎに起き出して,車でこれまで走ったことのないB&Bから西側の住宅街の狭い道路を走っていったら,なんと,フロンティアパークの裏門に着きました。そこに中国人のやっていた店があったので,ラーメンを頼んでそれを昼食にしました。その後も,眠たいのと何もすることがないのと,オーロラをみた満足とで,だらだらと近くのモールでウィンドウショッピングをしたり,B&Bにもどりテレビを見たりして,意識的に無意味に過ごすことになりました。
カップヌードルのようだった昼食が胃にもたれて夕食を取る気もなかったのですが,このあとのことを考えると何か食べなければと思い,いやいや再び外に出て,売れ残っていたお寿司を買ってきて食べました。そして,夜の8時,チェックアウトをして空港に行き,レンタカーを返し,フライトの時間を待ちました。こうして,過酷な帰国がはじまったのですが,長い道中もどうにかつつがなく終了して,8月31日の夜10時には自宅に戻りました。
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この旅は,MLBを見て,皆既日食を見て,大農場でコンバインに乗り,NFLを見て,さらに,オーロラを見ました。そのどれひとつをとっても誰もが簡単に経験できるものではないので,自分のあまりの強運に驚いています。何せ,1週間のうちに皆既日食とオーロラの両方を見ちゃったんです。
昨年の夏はフロリダ州から北上してバージニア州フィラデルフィアまでドライブをして,もうこんな旅はしないだろなあ,と思ったのですが,今年もまたそれ以上の長い旅になりました。帰国して地図を見ると,よくもこんな遠いところにまで行ったものだというのが実感なのですが,今もなお,家から一歩外に出ると,そこにはフェアバンクスの街並みが広がっているような錯覚を覚えます。
旅は非日常であるからこその旅であり,思入れがあるからこその旅です。さあ,次は何をするとしましょうか?
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特別編・2017夏アメリカ旅行LIVE⑮-アラスカ州
到着した日の夜,外を見ると少し晴れ間が見えたので,オーロラを見ようとあてもなく走っても,予想以上にフェアバンクスは広く,しかも土地勘がないものだからどこを走っているのかわからなくなって,B&Bに戻れるかどうかさえ不安になり失敗したので,この日は「地球の歩き方」の244ページに書いてあったオーロラ観測ポイントの中からフェアバンクスに近いところに行ってみることにしました。書いてあった中で最もダウンタウンから近い場所が空港に近いパイクスランディングという場所だったので,昨日そこに行ってみると,そこにはリゾートホテルがあったのですが,駐車場には灯りがあって,夜は明るそうで,とてもここではオーロラは見られそうにないなあと思いました。こういうとき,私は日本で星を見に行く経験が生きるのです。日本で星見の場所を探す要領で考えればいいのです。その次に近そうな場所だったのが,フェアバンクス北東の郊外にあるチナホットスプリングリゾートでした。地図では一見近そうだったのですが,それでも100キロ以上先で車だと1時間30分くらいかかるということでした。
すでにこれまで,私はハワイ島やマウイ島でも深夜に星を見るために走っているので,深夜に走ることには問題ないのですが,私が恐れていたのは動物でした。これもまた,昨年モンタナ州でお昼間に巨大なシカが急に飛び出てきて車に激突されたことがあるのですが,深夜となるとそれ以上に大変です。オーストラリアでもカンガルーが飛び出してくるのが心配だったのですが,現実にカンガルーが道のまわりで飛び跳ねていたりしたのです。ともかく,まだ日が暮れる前に現地に着いて,様子を調べてこようと走り出しました。
それがチナホットスプリングリゾートは思った以上に山の中で,なかなか着きません。100キロと書いてあったのですが,まったく知らない道はそれ以上遠くに感じられました。途中,2,3箇所キャンプ場があって,別にそこでも夜になれば真っ暗だろうと思ったのですが,そんなただだだっ広い広場で数時間も車を停めてオーロラが出るのを待つ勇気がありません。しかも,オーロラは出現しないかもしれないのです。私が目指すチナホットスプリングリゾートは,リゾートというからにはおそらく立派なホテルがあって,そのホテルのロビーやレストランで暗くなるまで時間が潰せるのでなはいか,という期待がありました。なにせ,出るかどうかもわからにオーロラが見られるまで,ずっと時間を潰す必要があるわけです。
実際,オーロラを見ようとアラスカに出かける日本人のほとんどはツアー客で,私は,ハワイのように現地に行けばいくらでもオーロラ観測ツアーがあると思っていたのに,そんなものもほとんどありませんでした。フェアバンクスから出発するツアーがあるにはあるのですが,それらは9月にならないと開催されていなかったし,また,たとえツアーがあったとしても,それらは深夜の1時くらいまでが観察時間で,その時間になると現地を出発してフェアバンクスに帰ってきてしまうのでした。アラスカというのは,個人で旅行をするにはあまりに情報が不足しているのでした。「地球の歩き方」のアラスカ編も古く,内容は今では正しくないものがけっこうありました。日本人のやっている現地ツアー会社すらなくなっていました。
車はどんどんと山の中に入っていきます。行き交う車もほとんどありません。そのうちに,私の予想とは違って日本の信州の赤沢自然休養林みたいな感じのものが現れました。これこそがチナホットスプリングリゾートでした。立派というには程遠い体育館のようなところがあって,中に入ってみるとテーブルとイスが並べられていて,だれでもここでオーロラが出現するまで待機できるということでした。まわりは日本人ばかりでした。日本からはアラスカに直行する定期便がないので,個人でアラスカに行くにはシアトル経由ということになるのですが,日本からのツアー旅行ならばチャーター便があって,それだとアラスカは6時間程度で来ることができます。そうしたチャーター便は複数の旅行社からのものが一緒に利用していて,違いはアラスカでの日程とか滞在先でそれが料金に反映されます。この日私が出会ったのはJTBとクラブツールズムのツアーで,聞いてみると,JTBは午前1時30分までここでオーロラ観察をし深夜にフェアバンクスに帰るというもの,クラブツーリズムはチナホットスプリングリゾートに数日宿泊するというものでした。当然,ここに滞在するほうが倍程度値段は高価の設定になっています。オーロラが見られる確率と料金が比例しているわけです。すでに書いたように,幸い,この晩オーロラが出現し見ることができたから,この日のツアー客は運がよかったのですが,私がこのリゾートでの観察を早めに切り上げての帰路にキャンプ場に車を停めてたったひとりで見たオーロラが一番鮮やかでした。それはJTBのツアーが観察を終えてフェアバンクスに帰るころの時間でした。
オーロラというのは,太陽からのプラズマ粒子の発光現象です。地球のまわりにはヴァンアレン帯というものがあります。ヴァンアレン帯は地球の磁場にとらえられた陽子と電子からなる放射線帯です。太陽風や宇宙線からの粒子が地球の磁場に捕らわれて形成されると考えられていて,地磁気の磁力線沿いに南北に運動しており,北極や南極では磁力線の出入り口であるため,粒子が大気中にまで入ってきて,これが大気と相互作用を引き起こすことによってオーロラが発生します。オーロラの発生する場所をオーロラべルトといい,北南極から少し離れた円形の地域です。粒子は地球の夜側にまわりこむためにオーロラは深夜に発生します。オーロラは冬だけでなく1年を通して見ることができるのですが,空が暗くないと見られないから,夜が短い夏は見ることができる時間が短いだけです。8月後半ともなれば夜も長くなってきて,しかも寒くないからオーロラを見るにはとても好都合なのですが,フェアバンクスは夏場は天気がよくないのです。
今回,私が見た日はたまたま晴れたからよかったものの,JTBのツアーのようにオーロラ観察がたったひと晩だけしかないという設定では,この時期はオーロラが見られないことが多いように思われます。また,フェアバンクスで宿泊してもダウンタウンはそれほどの見どころはありません。一方,クラブツーリズムのツアーはチナホットスプリングリゾートに数日宿泊するからオーロラを見ることができる可能性は高くなるのですが,山の中のリゾートはお昼間にすることはあまりないかもしれません。このようにオーロラを見るのも大変なのです。
私は,期待もせずフェアバンクスから車でひとりでやってきて,たまたま偶然オーロラを目撃し,しかも,帰路,たったひとりツアー客のいないキャンプ場でカーテンのようなオーロラに地球の神秘を味わうことができたのですが,こんなことは奇跡でしょう。しかし,深夜の道路は予想通り危険で,恐れていたように巨大なトナカイが目の前をのそのそと横切るのに遭遇しました。私はすぐに停車できる速度で走っていたので問題なかったのですが,ほとんど車が通らないとはいえスピードを出して走るのはかなり危険な行為です。私は慎重に運転して行きよりもかなり時間をかけてB&Bに戻ってきました。
まさかオーロラが見られるとは夢にも思ってもいなかったから様子見に来ただけだったで,せっかく日本から持参した防寒具をこのとき持ってくることも忘れそのためにチナホットスプリングリゾートで防寒具を買う必要になったり,また,せっかく日食を撮るためにもってきた三脚をも忘れてきたのでカメラの固定に手こずったりと,後悔するこことも多々あったのですが,それでも,このために日本から持ってきた魚眼レンズだけは忘れなかったので,オーロラを写すことができて満足しました。
団体ツアーで旅行をする気のない私にはチャーター便に乗れないのでアラスカは遠く,再びオーロラを見にくることができるかどうかわかりませんが,オーロラというのはどのように見られるか,そして,どこへ行けば見られるかということは今回よくわかったので,もし次回があればもっと素敵な写真を写そうと,夢がまたひとつ増えたことでした。とても素晴らしい得難い夜になりました。
特別編・2017夏アメリカ旅行LIVE⑭-アラスカ州
13日目。私にとっての長い旅も残すはあと3日です。今日は珍しく青空が見えます。
私の泊まっているB&B ,今朝の朝食をともにしたのは日本人の上品な初老の夫婦とドイツ人の夫婦でした。日本の方はバンクーバーから列車でアンカレッジに来てそこからフェアバンクスにバスを利用してきたという話です。こうして海外旅行をしていると,ハワイやニュージーランドでもこうして退職後に自由に旅をを楽しんでいる人たちに結構出会います。このような個人で海外旅行をしている人に共通するのは,日本のツアー客とは交わりたいくないということです。海外旅行といっても,ツアーで行く人と個人で行く人は全く違う楽しみ方をしています。
今日は早朝,まず再びビジターセンターに行って,そこの駐車場に車を停めてダウンタウンを散策することにしました。来た日に同じようにダウンタウンを散策しようとして雨に降られて中断をしたので,その続きです。ダウンタウンではまず,ビジターセンターの隣にあるゴールデンハートプラザという広場と,そこにあるイマキュリッツコンセプション教会のステンドグラスを見学して,そのあとで,氷の彫刻博物館に行きました。フェアバンクスでは冬に氷でモニュメントを作るフェスティバル・氷の彫刻世界競技大会があって,そのフェスティバルの終了後に作品がここに展示してあるわけです。お客さんは私のほかにワシントンDCから来たという中国人夫婦のたった3人でした。モニュメントを見てからモニュメントの作り方を見せてくれるというアトラクションがありました。やっていたのは14年ここに住むという中国人でした。
午後は外輪船クルーズでした。これこそフェアバンクス一番のアトラクションであり,このツアーは夏だけ実施しているので冬に来ても乗ることができないのです。せっかくこの季節にここに来てオーロラが見られないのなら,オーロラを見るために冬に来る人たちのできないことをしなければ意味がありません。乗り場に着いた時すごく多くの人たちで溢れていました。それはアメリカ本土やオーストラリアから来た観光客の団体さんでした。駐車場には非常に多くのバスが停まっていました。日本の団体旅行みたいなものです。アメリカにもこういう団体ツアーがあるんです。ただし,日本からのオーロラツアーではこの外輪船クルーズには乗らないみたいです。乗りたいと希望すると予約がいっぱいで乗れません,と添乗員さんに言われます。そして,大したことないですよ,などと言われます。しかし,本当は大したことあります。自由の身の私は予約でいっぱいになるという情報を手に入れたので2日前にネットで予約がしてありました。
このクルーズは再現された外輪船に乗ってチナリバーとタナナリバーをゆっくり航海して,階上に離着陸するブッシュパイロットの演技を見たり,犬ぞりを飼育しているところを通ると犬ぞりレーズの演技を見たりネイティブの集落が模して造られた場所で上陸して,昔の家を見学したりします。この川沿いにある高級別荘にはナンシー・レーガン元大統領夫人のものもありました。こちらの高級住宅はシアトル同様,川(湖)に面しているプライベートビーチがあります。この外輪船クルーズはディズニーランドのアトラクションを規模をずっと大きくしたもののようで,おそらくフェアバンクスではナンバーワンの見ものです。これに乗らなければフェアバンクスに行った意味がないほどです。
クルーズがはじまるころになると,すっかり空が晴れ上がりました。午後2時からのクルーズは3時間で終了したのですが,下船後,オーロラを見にいくにはまだまだ時間が早かったので,まずフロンティアパークに寄って,その後モールで食事をして,午後6時過ぎ,オーロラが見られればいいなあという淡い期待をもって,ダメ元でチナホットスプリングスリゾートへ行くことにしました。これが思わぬ幸運を呼んだのです。
特別編・2017夏アメリカ旅行LIVE⑬-アラスカ州
12日目,8月27日日曜日です。曜日どころか日にちもわからなくなってきましたが,旅というのは結構曜日が大切です。アメリカでは日曜日が休館の博物館などがあるからです。この旅も今日を含めて実質あと3日となりました。帰りはなんと30日の深夜1時フェスバンクス発でシアトルと成田で乗り換えます。セントレア到着が20時5分なので,26時間かかるわけです。アラスカは遠いです。
今回アラスカに寄った本当の理由は,実は後ろめたさからなのです。声高らかにアメリカ合衆国50州制覇といったところで,私は本当はアラスカ州はアンカレッジのトランジットしか経験していなかったのです。今回の旅で,これで晴れて50州制覇と胸を張れます。さらには「星好きの三大願望」のひとつであるオーロラを私は飛行機の機内でしか見たことがないので,ついでにオーロラが見れたらいいなあと思っていました。しかし,来てみると,この季節は天気が悪く,おまけに市街地は明るくて,おそらくどうにもなりません。それにしてもアラスカ州第2の都市フェアバンクスは何にもないところでした。こんなところに,オーロラを見る目的で,それも極寒の冬に1週間も滞在するのは私には想像できません。
昨日は到着したばかりでさっぱりわからなかったこの町も今日走り回って大概のところはすっかり馴染みました。しかし,雪の積もる冬にオーロラを見に来るにはどうやらツアーに参加するしか選択肢がなさそうです。また,寒くないこの季節ならば個人旅行は可能ですが,もし天気がよくてオーロラが見られそうなときは,事前に,深夜に市街地の光のない郊外に行って,安心して車を停められる場所を調べておく必要がありそうです。
今日は素敵な朝食になりました。一緒になった人たち,フロリダからきた夫婦とニューヨークから来た夫婦と話が弾みました。その後,まずアラスカ大学の博物館に行って展示を見てからオーロラのビデオを見ました。幸運にも週末だったので大学の駐車場は無料でした。その後,大型動物研究所でジャコウウシやトナカイを見てからタナナバレーのファーマーズマーケットに行ったのですが,2,3件のお店が出ていただけでした。そして,クリーマーズフィールドという野鳥公園へ行きました。ここも幸運にもちょうどこの時期だけカナダヅルが渡ってきているということで,これもまたツイていました。この3日間だけフェスティバルなんだそうですが静まり返っていました。次にパイオニアパークに行きました。要するにここはテーマパークなんですが,ここもまた人がほとんどおらず,潰れかけのころの奈良のドリームランドみたいでした。
これだけ行ってもまだ時間がたっぷりあったので,郊外のアラスカ横断原油のパイプラインが見られるところがあるというので行ってみました。その次に,アンティークオート博物館へ行きました。ここにあったのは1890年代からの車のコレクションでした。フェアバンクスの見どころというのは大体これくらいのでものです。明日の午後は,一番人気の外輪船クルーズを予約しましたが,それ以外にすることも行くところもありません。フェアバンクスから北に200キロくらい走れば北極圏に行かれるので,行って行けないこともないのですが,行ってどうするの? という感じです。すでに書いたように,フェアバンクスの夏はなんだかオーストラリアの冬みたいなところです。私はここ数年,いろんなところに行きすぎて混乱してきました。この旅ではこれまで食事で贅沢したので,この日の食事はスーパーマーケットでケイタリングです。
特別編・2017夏アメリカ旅行LIVE⑫-アラスカ州
すでに8月31日に私は帰国していますが,このLIVEでは8月26日,11日目です。旅はまだまだ続いています。
私は別に冒険旅行をしているわけではないので,この歳になると楽しく旅をするには長くて6泊8日が限界です。今回はすでにそれすら超えていますが,何をどう間違えたのか,今回はここで帰国するのではなくて,さらにシアトルからアラスカ州へ行くのです。日食を見るための旅を考えたのは4年前のことで,当時こんな長い日程にしたことすらすっかり忘れていました。
目的地はアラスカ州中央部のフェアバンクスですが,シアトルからフェアバンクスまでは4時間ほどで,時差が1時間あります。そこで4泊します。というより最後の1泊は有名無実で,夜チェックアウトして深夜のフライトでシアトルに戻り,乗り継いで26時間かけて帰国します。
シアトルからフェアバンクスまでのフライトはエコノミーで予約したのがコンフォートにアップグレイドされ,さらにファーストクラスにアップグレイドになりました。あてがわれた座席は通路側でしたが,景色が見たいので窓際に変更しました。
朝はリトルサイゴンでファーという米で作られたラーメンのような朝食をご馳走になりました。そして,マウントレーニアの美しいインターステイツ5を走りシータックに到着。フライトのチェックインを済ませ,ここでたいへんお世話になったEさん夫妻とお別れをしてターミナルに入りました。航空機は午前11時20分にシアトルを発って午後2時過ぎにフェアバンクス到着しました。機内から見たアラスカは広大で眼下には荒涼とした原野が広がり,絶望的な気持ちになりました。
小さな空港に降り立ち,さっそくレンタカーを借りてホテルに向かいました。思った以上に何もないところで,町は北海道の田舎のようだし,気候は8月なのに晩秋,アラスカの夏はオーストラリアの冬のようでした。泊まるのはホテルではなくB&B,古い建物ですがきれいで気に入りました。スタッフが若い女性でびっくりしました。
まだこの町がよくわからないのでまずビジターセンターに行って主な見どころを聞きました。ダウンタウンが歩いてまわれるということなので散策していたら雨がひどく降ってきてあわてて車に戻りました。その後,フェアバンクスの老舗といわれるタイレストランで夕食をとってB&Bに戻りました。明日からの観光を思案中ですが,特に何も特筆すべき見どころはなさそうなところです。
夜11時過ぎ,少し星が見えたのでオーロラが見えるかもと外に出たのですが市街地は明るくどうしようもありませんでした。そこで車に乗って暗いところまで行こうとあてもなく走り出したのですが,位置関係がさっぱりわからなくなって戻ることさえ困難で恐怖を覚えました。その頃には空は一面雲ってしまいました。これではオーロラなんて絶望的だなあと,いつものように自分の考えの甘さを後悔しました。なんとかB&Bに戻って,失望感の中で就寝しました。
特別編・2017夏アメリカ旅行LIVE-速報・オーロラ
LIVEはまだワシントン州シアトルですが,その後私はアラスカ州フェアバンクスに行って,ついに,8月28日から29日の深夜,この旅であきらめていたオーロラを見ることができました。そこで今日はまた少し先回りしてオーロラの写真をご覧ください。
フェアバンクスに住んでいる人でもオーロラを見たことがない人も多いのです。それは日本の都会に住んでいて天の川を見たことがない人が多いのと同様です。どおりで到着した日に,チェックインしたとき宿泊したB&Bのスタッフにオーロラのことを聞いても見られるはずないよという顔をされた理由がわかりました。
フェアバンクスはずっと曇りか雨,しかも市内は明るくオーロラはすっかりあきらめていました。しかし,28日の夜は少しだけ晴れ間が見られたので,ダメ元で遠征することにしました。調べた結果,フェアバンクスから100キロばかり離れたチナホットスプリングリゾートなら見られるかもしれないという淡い期待を抱いて,現地の事情も知らず,車を走らせました。
夕刻,1時間半ほどかけて到着してみたら,そこにいたのはなんと日本人ばかりじゃあないですか。JTBとクラブツーリズムのツアー客を乗せた日本からのチャーター機で着いたという話でした。ニュージーランドのテカポ湖の星空観察ツアー同様,日本の教育の成果を象徴する,英語が使えず,主体性のない,安心・安全・快適,おまかせで生きている「人生全てパック旅行」という人たちの集団でした。彼らのすごいのは自分で写真を写したいのにもかかわらず事前にオーロラを写すために何も勉強してこないことで,全て人に言われたまま,挙げ句の果てはうまくいかないと私にさえ頼ることでした。ここには「最も騙しやすい」と陰口される日本人の姿がありました。
ここは日本人観光ツアー御用達の安扶持の観光施設でした。こんなところでも宿泊すると結構高価なんです。スタッフもまた日本人ばかりでしたが対応に忙しそうだったので,暇そうだった日本語のできない唯一のアメリカ人スタッフにオーロラの話を聞くと,昨日は天気が悪かったけれど,今晩は深夜2時過ぎになればきっと見られるよ,という話だったので,そんなに遅くてはとも思ったのですが,ともかくしばらく待機することにしました。それでも疑心暗鬼でしたが,午後10時を過ぎて空が暗くなって来たら ……見えました。オーロラです。本当に感動しました。
あまり遅くなると帰りが心配だったので ー動物が飛び出してきますー 午前1時に現地を出ました。帰路,時折,キャンプ地があるごとに車を停めて空を見ると,北から西の空にかけてまさにカーテンのようなオーロラが明るく輝いていました。私はツアー客のいない真っ暗な現地のキャンプ地でたったひとり地球の不思議に浸りました。結局,チナホットスプリングリゾートまで行かなくてもいいのでした。巨大な野生のトナカイに遭遇しながらもなんとか2時間かけて,B&Bに戻って来ました。奇跡の夜でした。
地球も夢を見るのです。