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●アメリカの格安バスに乗る。●
☆14日目 8月9日(火)
 今日はワシントンDCからフィラデルフィアに移動する日であった。いよいよ長いこの旅も最終章であり,フィラデルフィアの市内観光を残すのみとなった。
 フィラデルフィアからワシントンDCへ来たときは鉄道の「アムトラック」を利用したが,今回は「メガバス」を利用することにした。アメリカには「グレイハウンド」(greyhound)という老舗の長距離バスがあるが,「メガバス」(megabus)というのは現在売り出し中の長距離格安バスである。経営母体などは全く異なるが,イメージとしてはちょうど日本でいうJRバスと格安長距離バスのような感じであろうか。

 「グレイハウンド」はアメリカで最大規模のバス会社であるが,この会社の走らせる長距離バスそのものを「グレイハウンド」と称することも多い。アラスカ州とハワイ州を除くアメリカ本土とカナダ及びメキシコの一部の都市を結ぶ膨大な数の路線を持ち,3,100路線以上が存在する。
 「グレイハウンド」は1913年にミネソタ州ヒビングにて設立され,1926年にグレイハウンド・コーポレーションとなる。現在はテキサス州ダラスに本社を構えている。
 私もまだアメリカでは車を運転しなかった今から35年前,グレイハウンドを利用してニューヨーク,ワシントンDC,ボストンを移動した。当時はこのグレイハウンドに乗ってアメリカを横断するのが夢であった。
 思えば,若いというのはよいものよ! 大学に入ったばかりの大学生諸君,ともかく,英語ができないとか金がないとかいった言い訳をせずに,この夏は思い切って旅に出て,グレイハウンドでアメリカ横断をしてみるとよい。人生の何かが確実に変わり,自分に自信ができることであろう。当時もまた,お金のない若者や留学生はグレイハウンドに乗ってアメリカを旅した。谷村新司さんも若いころそうしたと聞く。

 アメリカではグレイハウンドのような長距離バスの停車場をバスティーボ(bus depot)という。日本ではバスターミナルを「バスセンター」と名乗るが「バスセンター」という言葉は和製英語である。また,「terminal」という語はターミナルケアのように人生の終点を連想させるので,アメリカでは嫌われている場合もある。
 バスティーボは都市によってその場所が非常に治安の悪いところであったりするので注意を要するが,比較的規模の小さい都市ではダウンタウンにあることが多く,たまたまそこに差しかかったとき,そこからバスに乗り込む人の姿を見ていると,ああ,アメリカだなあ,とけっこう感動する。
 旅はいいものだ。

 私はレンタカーで旅をしていることが多いので,こういう公共交通機関に疎かったのだが,近年,「グレイハウンド」に加えて「メガバス」とか「ボルトバス」といった格安バスがあるという話だったので,今回,ぜひ利用してみたいと思っていたのだった。
 「ボルトバス」(boltbus)というのはアメリカ北東部のバス事業者で,本社はニュージャージー州セコーカスにある。2008年に設立されたグレイハウンドとピーターパン・バスラインズの折半出資の事業で,グレイハウンドの営業許可を利用してニューヨークとアメリカ北東部の都市を結ぶバス路線を運行しはじめたという。

 ボルトバスもメガバスもグレイハウンドをスタイリッシュに改善したバスで,車内には無料Wifiやモバイル用の電源もあり快適だという話でだった。また,どれくらいの人々がチケットを購入したかによって運賃が決まり,最低1ドルの運賃が設定されているという。
 私は,インターネットでメガバスを予約した。予約したときに座席の選択ができて,席によって値段が若干違っていたのがまたアメリカらしい話であった。私はせっかくなので2階席の最前列を予約した。値段はアムトラックよりはるかに安く3分の1くらいであった。
 ワシントDCでは,バスターミナルはユニオンステーションの3階にあって,ここからはグレイハウンドもメガバスもボルトバスも発着していて,過剰に豪華な新宿は別として,日本の大都市のバスターミナルとほとんど変わらないところであった。