DSC_2411DSC_2408DSC_2409DSC_2417DSC_2414DSC_2418DSC_2421DSC_2428

●フィラデルフィア美術館所蔵の作品●
 館内は美術館の外とは違って閑散としていた。私は受付でみんなロッキーに夢中で館内まで来ないね,と話したらスタッフが困った顔をして同意した。ワシントンDCのナショナルギャラリーもそうであったが,世界からやってくる観光客の多くはこうした美術には興味がないようなのである。
 簡単に言えば教養がないのである。
 私はまず,レストランに行って昼食をとった。ここもまたとても空いていてゆっくりできた。フィラデルフィア観光では,この美術館の館内はお勧めである,というよりもぜひ行くべきである。

 では,今日はこの美術館で見ることのできる作品をいくつか紹介しよう。
 ます,3番目の写真はルノアール(Pierre-Auguste Renoir)の有名な「大水浴図」 (Les grandes baigneuses)である。この頃の画家の作品に不満を持っていたといわれるデュラン・リュエル(Paul Durand-Ruel)の好敵手的存在であったジョルジュ・プティ(Georges Petit)の画廊で展示された本作は「都会のダンス」(Dance in the City)でもモデルを務めたシュザンヌ・ヴァラドン(Suzanne Valadon)をモデルに女性らの地中海沿岸での水浴場面を描いたもので,ルノアールが印象主義から脱却し,古典主義またはアカデミズム的な表現への傾倒を示した集大成的な作品としてルノワールが最も力を注いで制作した作品である。
 輝くような生命力を感じさせる浴女の姿, 動きのある躍動的な人物の姿態の描写,入念に計算された写実的な人物の描写や構成,流麗な輪郭線,非常に明瞭ながら冷艶さや甘美性も兼ね備える色彩とともに,新たな表現・描写様式が至る所に感じられるという評がある。
 
 4番目の写真は不気味な目を描き続けたイタリアの画家モディリアーニ(Amedeo Clemente Modigliani)の「青い目の肖像」(Blue Eyes)である。まるで宇宙人を思わせる細長い顔と青い目が描かれた絵画がここにある。その絵からは興廃した雰囲気と同時に神秘的な雰囲気も感じる。
 モディリアーニの作品は描かれている人の体の曲線と長い首,そして尖った目,輪郭が特徴的だが,この作品ではしなやかで官能的な女性特有の曲線をモディリアーニ独特の表現法でうまく描き表しているという。
 ここに描かれているのは妻ジャンヌ・エビュテルヌ(Jeanne Hébuterne)である。彼女はモディリアーニが肺結核が悪化し35歳で亡くなったとき,子供を身ごもったまま21歳の若さで後追い自殺をした。

 そして,5番目と6番目はゴッホ(Vincent Willem van Gogh)の作品である。
 5番目のものは「カミーユ・ルーランの肖像」(Portrait of Camille Roulin) 。デトロイト美術館,ボストン美術館,そしてここフィラデルフィア美術館には5点のゴッホによるルーラン家の人々を描いた肖像画がある。カミーユ・ルーランはジョセフ・ルーラン(Joseph Roulin)の息子である。ジョセフ・ルーランは郵便配達夫で,ゴッホのアルル滞在中に変ることのない親切を示した。ルーランと彼の妻そして3人の子供達はこの時期のゴッホの肖像画に最も頻繁に登場したモデルだった。
 不思議なことに,ゴッホはこの時期、自画像も彼の家族の肖像画も描いていない。
 そして,6番目が有名な「ひまわり」(Sunflowers)である。「ひまわり」は1888年8月から1890年1月にかけて描かれた花瓶に活けられた向日葵をモチーフとする複数の絵画の名称である。ゴッホにとっての向日葵は明るい南フランスの太陽とユートピアの象徴であったと言われている。
  南仏のアルル滞在時に盛んに描いた向日葵だが精神が破綻し精神病院での療養がはじまってからは描いていない。
 「ひまわり」は7点が制作され,このうち6点が現存している。 フィラデルフィア美術館にあるのはアムステルダムにある作品と同時期にミュンヘンにある作品を模写したものとされる。

 最後7番目と8番目の2点はミロの作品である。私はミロが大好きなので取り上げた。私はミロの絵画を見るとショスタコビッチの音楽を思い起こすのだが,鮮やかな色彩のなかに几帳面さと上品さがあると感じる。
 ジョアン・ミロ・イ・ファラー(Joan Miró i Ferrà)は20世紀のスペインの画家である。ミロはパリでシュルレアリスムの運動に参加したことからシュルレアリストに分類されるのが通例だが,ミロの描く人物,鳥などを激しくデフォルメした有機的な形態,原色を基調にした激しい色使いあふれる生命感などは古典的・写実的描法を用いることが多い他のシュルレアリストの作風とは全く異なり20世紀美術に独自の地位を築いている。
 1930年代からはバルセロナ,パリ,マリョルカ島のパルマ・デ・マヨルカにアトリエを持ち制作した。
 7番目は「馬とパイプと赤い花」(Horse, Pipe, and Red Flower)。ミロが1920年夏の間に描いたものである。おもちゃの馬と長い粘土パイプが場面にカタロニアの味を添えるている。生き生きとした色,騒々しいパターニングと混雑した構成は彼の初期の絵に特有である。
 また,8番目の「男と女と子供」(Man, Woman, and Child)は1931年の作で,私が気に入ったものである。