しない・させない・させられない

Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.

USA50州・MLB30球場を制覇し,南天・皆既日食・オーロラの3大願望を達成した不良老人の日記

タグ:パンスターズ彗星(C_2017T2_PanSTARRS)

cometsDSC_1764t (4)n2IMG_0683s (2)IMG_0665n (3)

☆☆☆☆☆☆
 2020年,梅雨の間はまったく晴れませんでした。
 梅雨が明けてもなかなか星空は戻らず,7月31日にようやく晴れたのを見て,月明かりの中,ネオワイズ彗星(C/2020F3 NEOWISE)を写しに行ったことはすでに書きました。そのそのときに写真に収めたのは,ネオワイズ彗星とレモン彗星(C/2019U6 Lemmon)でした。その後は,雨は降らねど,ほとんどが曇り空でした。そして,再び星空がもどった8月14日は月明かりもないので,気楽にネオワイズ彗星を写しにいくことにしました。
 レモン彗星は現在11等星ですが,前回写したので今回はパスしました。この晩は,パンスターズ彗星(C/2017T2 PanSTARRS)がネオワイズ彗星からわずか5度ほどの場所にあって,私が使っている360ミリ望遠鏡の直焦点で1枚の写真に収まります。

 久しぶりの快晴でした。透明度もよく,街灯りでいつもなら空が明るい南の空にもさそり座がきれいに輝いていました。天の川もよく見えました。まず思ったのが,月明かりがあるのとないのとではこれほど違うのか,ということでした。
 ネオワイズ彗星は西の空,うしかい座にあって,アークトゥルスから順に追っていくと簡単に探せます。また,前回探せなかったパンスターズ彗星もわかります。
 こうして写したのが今日の1番目と2番目の写真です。1番目の写真では,左側がネオワイズ彗星,右側がパンスターズ彗星です。
 ネオワイズ彗星は予報では7等星なのですが,予報よりはずっと明るく,双眼鏡でも尾までよく見えました。パンスターズ彗星は11等星。長い間楽しめたのですが,そろそろ見納めです。

 8月12日はペルセウス座流星群が極大になった日でした。しかし8月12日は天気がよくなく,この日に少しは見られるかな,と思って,カシオペア座からペルセウス座にかけて,ずいぶん写真を写してみた(=3番目の写真)のですが,残念ながら流星はまったく写りませんでした。それでも,これ以外の場所に目を移したとき,北斗七星のあたりを,北斗七星よりの長く星が流れたのは感動しました。
 私が星を見にいくと,毎回,結構明るい流星を見るのですが,いつも別の場所の写真を写していて,それを収めることができないのがとても残念です。帰宅して写真を整理していたら,試しにうしかい座の付近を写した1枚に,ネオワイズ彗星とともに流星が写っていましたので,これで満足することにします。
 いつも思うのですが,日本はどこも明るくて満足に星も見えないのに,都会でもこの日に限って流れ星がビュンビュン飛ぶような報道をしているのが,私にはよくわかりません。
  ・・
 このところ暑いこととコロナ禍で,お昼間に外出する気がまったくなくなってしまったのですが,そうでなくても,日が暮れたあとの世の中はとても落ち着きます。今や,星を見るのでなくても,深夜の人が少ない時間に車を走らせるほうが気持ちがいいです。
 それにしても,夜になっても気温は30度くらいあって,星を見ながら汗が出てくるような経験は珍しいことでした。

IMG_0465t2 (4)wIMG_0472s (2)nn

☆☆☆☆☆☆
 5月23日に,すでにブログに書いたように,薄曇りの中,念願だったパンスターズ彗星(C/2017Y4 PanSTARRS)とおおくま座の三つの銀河との接近を写すことができました。
  ・・
 その1週間後の5月29日から30日にかけて,それまで自粛閉館をしていた,いつもお世話になっている木曽駒高原のゲストハウスが再開したので,旧街道歩きと星見を兼ねて行ってきました。
 29日はお昼間はさわやかに晴れて,人のまったくいない旧中山道の鳥居峠歩きを楽しんだのですが,夕方になって,天気予報に反して小雨が降ってきたのには驚きました。しかし,調べてみると深夜には回復するということだったので,それまで仮眠をしました。午前1時ころに晴れ上がるとのことだったのですが,午後11時に目覚めたら,すでに晴れ上がっていたので,慌てて準備をして外に出ました。こうして,満天の星空も堪能できました。
 実は,今年の3月はいつものようにオーストラリアに星見に出かけるはずだったのですが,入国ができなくなったので,オーストラリア行きは断念せざるをえなくなりました。
 私がオーストラリアで星見をするときに泊まるゲストハウスは,ブリスベンから約3時間ほど車で走ったところにあります。そしてまた,木曽駒高原の定宿も,私の自宅から約3時間程度で行くことができます。同じようなシチュエーションなのです。そこで,オーストラリアのような景色の美しさやのどかさはまったくないのですが,それでも,信州の山々を眺めながら同じような気持ちに少しは近づけるので,海外に行くことができなかったその代わりとして,それなりに楽しい星見になりました。
 
 この晩は,魚眼レンズや広角レンズで星空の写真を写すつもりでしたが,念のためにと300ミリの望遠レンズも持っていったのが結果的に正解でした。それは,今日の1番目の写真のように,300ミリ望遠レンズを使って写したパンスターズ彗星が,思った以上に長い尾をもった素敵な写真になったからです。やはり空が暗いというのはすごいものです。
 1週間前にあれだけおおくま座の三つの銀河に接近したパンスターズ彗星ですが,2番目の写真のように,この晩は銀河からはかなり離れてしまいました。北極星に近づいて一晩中見られたパンスターズ彗星も次第に暗くなっていき北極星方向からも離れていくので,そろそろ見納めです。
  ・・
 先に書いたように,この晩は深夜から晴れるという予報だったので,私は先に仮眠をとりました。予報より早く晴れ上がったのですが,準備をして望遠鏡をセットして星を見はじめたのは深夜の12時ころでした。この季節は夜が短く,午前3時には明るくなってきます。そこで,わずか3時間くらいしかなかったのですが,こうして,彗星の写真と,さらに,はじめの目的だった魚眼レンズや広角レンズによる星空の写真をたくさん写すことができました。その中の1枚が3番目の写真のような銀河の写真です。地平線に近いところに輝いているのは木星と土星です。
 午前2時30分過ぎ,空が白んでくる前に,この晩の締めとして,日周運動をはじめて写すことにしました。赤道儀のモーターを停止して,カメラを北極星に向けて20分露出したのが4番目の写真です。日周運動は簡単に写せるように思えるでしょうが,ディジタルカメラのような感度の高いものでは,実際は,都会のような空の明るいところだと1分も露出するとカブって真っ白になってしまいます。長時間露出してもカブらず大丈夫であるためには,空が暗いことが必要条件です。さらに,絞りやISOをどのくらいにすればいいかなど,試してみないとよくわからないし,試す時間もなかったのですが,なんとか写すことができました。これもまたやはり,空が暗いというのはすごいものだと改めて思いました。

IMG_0482 (4)snIMG_0495sn

DSC_1659s (5)cz DSC_1659s (6)n

☆☆☆☆☆☆
 地上のことはさておき,空の上ではおもしろい出来事が連日あって,この春は忙しい毎日です。月というものがなくいつも天気がよければ予定も立つというものですが,月明かりと雲が予定を阻害します。しかし,それもまたよしと思える歳になってきました。
  ・・
 さて,この春の見ものは,第一にアトラス彗星(C/2019Y4 ATRAS)でしたが,あえなく分裂して,期待に反して明るくならず,でした。そうこうするうちに,南半球ではスワン彗星(C/2020F4 SWAN)が明るく見えているという情報が伝わって,南半球なんて関係ないや,と思っていたら,彗星が太陽に近づいてくるにつれて日本でも地平線すれすれに見ることができるようになったのには,うれしいというより参りました。このことはすでに書きました。

 これらのことはパプニングとして,私がずっと楽しみにしていたのは,パンスターズ彗星(C/2017Y4 PanSTARRS)がおおくま座にある銀河M81,M82,NGC3077に大接近するということと,月齢2の月が金星と水星に接近するというふたつの出来事でした。
  ・・
 彗星は銀河M81,M82,NGC3077に接近したあとは次第に遠ざかるのですが,最も近づくのが5月23日で,その前後数日は同じ画角の写真の視野に入ります。また,条件最悪のスワン彗星とは違って,この時期は新月の前後なので条件もよく,また,彗星の位置も北極星に近いので,一晩中見ることができます。
 しかし,このごろはすでに梅雨空のようになってしまい,3月から4月にかけて毎日晴れ渡っていたのがなつかしく感じるようになりました。5月23日もまた,さえない天気でしたが,予報では明日以降も晴れそうになかったので,ダメもとで,曇ってしまったときは深夜のドライブを楽しむつもりで出かけました。
 現地に着いたとき,なんとか北極星とおおくま座が見える程度で空のほとんどは曇っていてがっかりしました。おおくま座のM81とM82はとてもわかりずらいところにあるので,晴れていても視野に入れるのが大変なのに曇り空では打つ手もなく,しかも,この日はおおくま座は天頂に近く望遠鏡を覗くのもまた大変でした。苦労のあげく,なんとかふたつの銀河M81とM82の近くにあるおおくま座24番星(4.5等星)をファインダーに入れることができたので,やっと場所が特定できました。
 おそるおそる写してみたのですが,はっきりと銀河と彗星が写っていました。それにしても,こんな曇り空でも8等星の彗星が写るのが驚きです。
  ・・
 こうして,私は,前回のスワン彗星に続いて,今回もなんとか写真に収めることができて,すっかり満足しました。

☆ミミミ
その翌日5月24日は,月と金星と水星の接近でした。
私が上に書いた彗星を写した23日は金星が午後8時ころには思っていたより高い位置に簡単に見つけることができたので,次の日も晴れていれば期待できそうかな,と思ったのですが,当日は雲があって絶望的でした。しかし,前日に金星の位置を確かめることができたのが幸いしたことと,幸運にも雲が切れて,沈む寸前に美しい姿を写すことができました。
これもまたツキにめぐまれました。
DSC_5431 (3)x

Star Cartアトラス DSC_1636s (2) DSC_1639s (3)DSC_1645s (2)

 桜が咲くまでは暖冬だったのに,桜が咲くころになって寒くなり,おかげで花の季節が長くなりました。例年と違って,せっかく咲き誇っていても見る人が少ないのは桜にとっても無念でしょう。
 私は花粉症でないので花粉のことはわかりませんが,春といえば,例年ならこの時期は大陸からのPM2.5と黄砂に悩まされるのに,PM2.5が少ないのはわかりますが,黄砂も少ないのはどうしてなのでしょう。よって,星がよく見えます。

 現在,10等星より明るい彗星が3個,すべて北西の空にあって,日没から捉えることができます=1番目の星図。やっと月明かりの影響がなくなりつつあり,天気もよかったので,4月14日の夕方,彗星の写真を撮ることにしました。
 3個の彗星のうちアトラス彗星(C/2019Y4 ATLAS)が世紀の大彗星になるという思ってもみない朗報があって,大いに期待したのですが,月明かりで星が見えなかった時期に,どうやらアトラス彗星は分裂してしまっただの,もうすぐ消え去る運命だのといった残念なニュースが聞こえてくるようになりました=2番目のグラフ。そこで,実際はどうなのかという興味がありました。
 以前にも書きましたが,まずはこの3つの彗星についてのおさらいです。

●アトラス彗星(C/2019Y4 ATLAS)
 2019年12月28日にATLASサーベイによってハワイ・マウイ島のハレアカラに設置された望遠鏡 ATLAS-MLO で発見されたものです。5月にかけて世紀の大彗星になるかと予想された彗星で,現在はきりん座を動いています。
  ・・
●アトラス彗星(C/2019Y1 ATLAS)
 こちらのアトラス彗星は,先に書いたアトラス彗星(C/2019Y1 ATLAS)に先立って,2019年12月16日にATLASサーベイによってハワイ・マウイ島のハレアカラ(Haleakala)に設置された望遠鏡 ATLAS-MLO で発見されたものです。
 現在はカシオペヤ座にいて一晩中沈まないのですが,高度が低く,北極星の周りを日周運動で反時計まわりに半円を描いて動きます。時計の文字盤に例えると太陽が沈むと7時のあたりに見えはじめ,夜明けが近づくと4時の方向で消えていきます。つまり,ずっと地平線ぎりぎりの低い高度を這っていくのです。予想より明るく8等星ほどだそうですが,このように高度が低いので,写真に撮るのはあきらめていました。
  ・・
●パンスターズ彗星(C/2017T2 PanSTARRS)
 2017年10月2日にハワイ・マウイ島のハレアカラにある1.8メートル Pan-STARRS1望遠鏡で写したCCDの画像から発見されたものです。もっと明るくなるという前評判でしたが,どうやら8等星止まりというところです。しかし,彗星と地球と太陽の位置関係がずっとよく,長い間楽しめています。この彗星も今はきりん座にいます。

 この晩はとにかくはじめにアトラス彗星(C/2019Y4 ATLAS)を写すことにしました。きりん座というのは明るい星がないので,私の使っている古い望遠鏡では自動で導入することもできないので彗星のいる位置を探すのにも一苦労です。私にはめずらしく予習をして,事前にどうやって導入するかを調べておきました。おおくま座から順を追ってファインダーに次々星を入れていって場所を特定しました。写してみると,もっと暗くなっているかと思ったのですが,意外に明るく,しかもかわいい尾をひく姿を簡単に見つけることができました=3番目の写真。
 アトラス彗星を写しているときに,地平線ぎりぎりにカシオペア座が見えました。こんな低いところにカシオペア座がはっきり見えるのに驚きました。そこで高度が低くならないうちに急いでもうひとつのアトラス彗星(C/2019Y1 ATLAS)を写すことにしました。場所はカシオペヤ座のγ星の近くなので,すぐに探せました。この彗星の写真を撮ることができるとは期待していなかっただけに,写せてホッとしました=4番目の写真。
 そして,最後にパンスターズ彗星(C/2017T2 PanSTARRS)を写しました。この彗星もまたきりん座にあって,探すのに苦労するのですが,最初に写したほうのアトラス彗星の位置からとパンスターズ彗星の位置から簡単に探すことができました。この彗星はすでに何度も写していたので,この晩は後回しにしてありました。最も明るい時期は過ぎていますが,依然健在で,かわいい姿をとらえることができました=5番目の写真。
 こうして,この晩は写したかった3つの彗星を短時間ですべて写すことができました。5月に太陽に最接近するアトラス彗星(C/2019Y4 ATLAS)がどうなっていくかが今後の楽しみです。

◇◇◇

金星と天王星_20200312s金星_海王星 _20170112C_2017T2_PanSTARRS_20200312

 コロナウィルス騒動が続いていますが,気がつけば3月,もう春です。そしてまた,3月も満月が過ぎて,星見の時期になってきました。
 私は人混みがきらいだし,スポーツジムもライブハウスも無縁で,誰も人がいない空の広い,そして暗い場所で星空を眺めるのがもっとも落ち着きます。しかし,こんなものが流行してしまうと海外旅行をする気にならないのだけが誤算です。
 現在,夕方の西の空に「宵の明星」とよばれる金星が高く輝やいています。実はその近くに天王星がいるのですが肉眼ではまず見えません。そこで,3月12日の夕刻は天気がよかったので,金星と天王星を同じ画面に収めようと,画角を調べてみると180ミリ望遠レンズなら一緒に撮ることができることがわかったので,そのレンズを持って,日没を待って写しにいきました。

 子供の頃,惑星の名前を「水・金・地・火・木・土。天・海・冥」と覚えました。今は冥王星は惑星の座から降りた(降ろされた)ので「水・金・地・火・木・土。天・海」です。
 これを英語では,
 My Very Educated Mother Just Served Us Nine Pizzas.
というように,惑星のスペリングの先頭の文字で覚えるのだそうです。ちなみに,
 水星=Mercury
 金星=Venus
 地球=Earth
 火星=Mars
 木星=Jupiter
 土星=Saturn
 天王星=Uranus
 海王星=Neptune
 冥王星=Pluto
です。しかし,冥王星を抜いてしまうと文書にならないので,新たな覚え方というのが発案されたそうです。
 それは,たとえば
 My Very Educated Mother Just Served Us Nachos.
 My Very Educated Mother Just Served Us Noodles.
の類ですが,最後の「Nine Pizzas」を別のモノに変えただけです。
 
 さて,水星から土星までは明るく,簡単に肉眼で見ることができるのですが,天王星と海王星は暗いので,簡単には探せません。とはいえ,天王星は意外と明るく,理屈では肉眼で見られないこともないのですが,海王星となるとお手上げです。たとえ,天王星や海王星を位置を調べて望遠鏡の視野に入れても,小さな望遠鏡では単に恒星のようにしか見えないので,それが天王星や海王星なのかはなかなか区別がつきません。そこで,金星が近くにあると,星の並びから容易に探しだせるというわけです。
 ということで,今日の1番目の写真は,この晩に写したものです。
 ちなみに,2017年1月12日に金星は海王星と接近しました。そのときに金星と海王星を同じ視野に入れて写したものが,今日の2番目の写真です。
  ・・
 この晩はこれで目的を果たしたので早々に帰ろうと思ったのですが,せっかくなので,機材を入れ替えて,いつもの望遠鏡でパンスターズ彗星(C/2017T2 PanSTARRS)も写してみました。それが3番目の写真です。この彗星は7月ごろまではまだ今よりも少し明るくなる予報なので,まだまだ写すことができます。
 また,この晩は写しませんでしたが,アトラス彗星(C/2019Y4 ATLAS)が5月ごろに,ずいぶんと明るくなるという予報が出ています。ひょっとしたら大化けするかもしれません!
 それに加えて,3月18日から19日にかけて,明け方の東の空に,火星と木星と土星,それに加えて月が大接近するので,今から楽しみです。午前3時30分ごろ,東の空が開けたところなら,3つの惑星と月が同じころに昇ってくる姿が見られます。晴れるといいなあ。

◇◇◇
私は,星を見ていると,もののスケールや時間のスケールがいつも気になりますが,多くの人はそういうことをほとんど考えません。たとえば,今流行しているコロナウィルスですが,愛知県で感染者が100人といっても,愛知県の人口は750万人あまりだから,感染者は7万人に1人。日本中では感染者が1,500人弱で日本の総人口は1億3,000万人弱なので,10万人に1人ほどです。これは,「年末ジャンボプチ」の1等1,000万円に当選するのと同じくらいの確率です。ちなみに,コロナウィルスほど騒がれませんが,2018年9月第1週から2019年2月第2週までのインフルエンザの累積予想患者数は10,448,891人(約1千万人)でした。
また,マスクを買うのに行列を作っていますが,私はこのご時世,人混みで行列を作っていることのほうがずっと危険だと思うのです。実際,マスクの目の大きさは約5μm,それに比べて,コロナウイルスの大きさは0.05μmから0.2μmで約50分の1ほどなので,マスクの目をすり抜けます。しかし,ほとんどの人は,こうしたことをまったく知りません。マスク洗って何度も使っているいる人,マスクを汚いポケットにしまったり,テーブルに置きっぱなしにして食事をしている人さえいます。屋外や車の中のように,マスクが必要でない場所で貴重なマスクを無駄遣いしている人もいます。さらに,マスクを顎に下げて,コロナウイルスよりよほど有害なタバコを吸っている人もいます。マスクを市販の布で自作している人もいますが,マスクはマフラーとは違います。目の粗い布で作っても,それは,形がマスクであるだけで,マスクの機能をみたさなけば意味がありません。それはたとえば,「倍率100倍の双眼鏡!」のような,双眼鏡の形をしているだけのマガイモノのようなものと同類です。
スギ花粉はマスクの目よりもずいぶん大きくて20μmなのでマスクで侵入を防げるのですが,正しくマスクを使わない人がマスクを買い占めることで,気の毒にも花粉症でマスクが本当に必要な人や,医療従事者のようにマスクの必要な人の手にゆきわたらないということにもなっています。
ちなみに,政治家など言わずもがな,「情報の信ぴょう性」を指導しなけらばならない教育者や「正しい情報の伝達」を最も重視しなけらばならない報道関係者でも,こんなことすら知らない人がいます。また,そうした人に限って,正しい使い方を知らず教えず単にマスクの着用をよびかけたりしているのは,「偏差値」の正しい意味も知らずに進路指導をする教師同様,きわめて嘆かわしい話です。
無題

DSC_1580t (4)n星図b (3)DSC_1543snDSC_1559snDSC_1551n (3)n

☆☆☆☆☆☆
 2番目の星図にあるように,現在,夕方の北の空に暗い彗星がいくつか存在します。どれも暗いのですが,まず,西側にあるものから順番に紹介します。
  ・・
●アトラス彗星(C/2019Y1 ATLAS)
 2019年12月16日にATLASサーベイによってハワイ・マウイ島のハレアカラ(Haleakala)に設置された望遠鏡 ATLAS-MLO で発見された彗星です。
 ATLAS( Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System)サーベイは 地球に衝突する可能性のある地球近傍の物体を検出するために設置された口径0.5メートルのロボット望遠鏡で,ハワイ・マウイ島のハレアカラ の ATLAS-HKO とハワイ島マウナロア の ATLAS-MLO があります。
 明るさは10等星ほどで低空にあって,まもなく日本からは見ることができなくなります。
●シュワスマン・ワハマン第1彗星(29P Schwassmann-Wachmann)
 1927年11月15日にドイツ・ベルゲドルフ(Bergedorf)のハンブルク天文台(Hamburger Sternwarte)のアルノルト・シュヴァスマン(Arnold Schwassmann) とアルノ・ヴァハマン (Arno Arthur Wachmann)が発見した公転周期14.7年の周期彗星です。
 2月ころに増光したそうですが,今は暗くなっています。
●アサシン彗星(C/2018N2 ASASSN)(エイサスエスエヌ彗星という表記もあります)
 2018年7月11日,ASASSN(All-Sky Automated Survey for Supernovae)プロジェクトによって,南アメリカのセロロ・トロロ(Cerro Tololo)天文台にあるカシアス(Cassius)14センチメートルの探査ユニットで発見されたものです。
 ASASSNプロジェクトはオハイオ州立大学の天体検索プログラムで,北半球と南半球の両方に20個のロボット望遠鏡があります。望遠鏡といっても,ニコン(Nikon)の400ミリF2.8の望遠レンズに ProLine PL230 のCCDカメラをつけたものです。
 北極星近くにあるのですが,これからは暗くなって見ることが困難になります。
●パンスターズ彗星(C/2017T2 PanSTARRS)
 2017年10月2日,ハワイ・マウイ島のハレアカラにある1.8メートル Pan-STARRS1望遠鏡で写したCCDの画像から発見されたものです。
 明るくなるという前評判でしたが,8等星止まりというところです。しかし,北極星に近く最も見つけやすい彗星です。
●岩本彗星(C/2020A2 Iwamoto)
 アマチュア天文家の岩本雅之さんが今年の1月16日,自宅ベランダの400ミリの望遠鏡にカメラを取り付けて写した画像から発見したものです。
 14等星という予想より明るく11等星ほどまでになったようです。
●アトラス彗星(C/2019Y4 ATLAS)
 2019年12月28日にATLASサーベイによってハワイ・マウイ島のハレアカラに設置された望遠鏡 ATLAS-MLO で発見されたものです。
 現在は12等星ほどですが,これから5月にかけて太陽に接近して明るくなると期待されています。日本では5月の半ばころまで夕方の北から北西の空に見えます。

 ということで,満天の星空を堪能したハワイから帰国して,天気がよかった2月26日の夕刻,北の空が暗いいつもの山へ星見に出かけました。ハワイには望遠レンズを持っていかなかったので,こうした暗い彗星とは縁がありませんでした。
 現地に到着して慌てて望遠鏡を組み立て極軸を合わせて,西の空に見えている彗星から順番に写していきました。早くしないとどんどん沈んでいきます。
 まず,アトラス彗星(C/2019Y1)を写したのですが,低空で,かつ,空が明るく写りませんでした。次に,シュワスマン・ワハマン第1彗星をねらったのですが,写した位置を間違えました。ただ,うまくその位置を写すことができたとしても,写ったかどうかわかりません。
 気を取り直して,その次に,アサシン彗星を写しました。それが今日の3番目の写真です。かろうじて存在が確認できます。さらに,岩本彗星を写したのが4番目の写真です。この彗星もかろうじて存在が確認できますが,前回家の近くで写したときよりだめでした。やはり,夕刻の低い空に彗星を写すのは大変です。
 さて,いよいよ控えるは期待のふたつの彗星です。
 まずはパンスターズ彗星です。それが5番目の写真ですが,この彗星は他の彗星に比べれば明るく,今回もまた,尾をひいたかわいい姿を捉えることができました。この彗星はもっと明るくなるという予想だったので明るくならず残念ですが,このくらいの姿もまたかわいくていいものです。
 そして,最後がアトラス彗星(C/2019 Y4 ATLAS)です。おおくま座のβ星,つまり,北斗七星の柄杓の2番目の星「メラク」(Merak)の近くにあるので場所は簡単に特定できるのですが,13等星くらいなので写るかどうか,というのが問題でした。それに加えて,この彗星が M97惑星状星雲(ふくろう星雲),M108銀河 と同じ画角に入るということを写すまで知らなかったので,一緒に写せることにびっくりしました。これなら何としてでも写そうという気になってきました。この彗星を写すのは天頂に近いので最後にしていたのですが,なんと,写しだしたら曇ってきました。なんども雲に邪魔されましたが,これを写さなければ帰るに帰れないと祈っていたら雲が切れて,なんとかモノにできました。それが今日の1番目の写真です。
  ・・
 このようにして,この晩もまた,美しい星空を堪能することができました。
 日本の濁った汚い夜空は,星野写真を写すには向いていなくて望遠鏡を使って暗い彗星の写真を写すことが達成感があり,一番ストレスのない楽しみ方だなあといつも思います。

DSC_1499u (5)ns IMG_0069t (3)n2 2020-01-29_22-07-17_000 DSC_8629 (3)n

☆☆☆☆☆☆
 ペルセウス座の二重星団(Double Cluster)はふたつの散開星団が近接して見えるのでこの名でよばれています。2番目の写真のように,双眼鏡でカシオペア座のγ星とδ星を視野に入れてδ星の方向に視野ひとつ半だけペルセウス座に動かすとだれでも簡単に見るけことができますし,空が暗いところなら肉眼でも見ることができます。
 1603年,ヨハン・バイエル(Johann Bayer)によって,西側(カシオペア座に近いほう,経度の小さいほう)の星団にh (h Persei),東側(キリン座に近いほう,経度の大きいほう)の星団にχ (χ Persei) のバイエル符号が振られたため,「h+χ」(エイチカイ)ともよばれます。
 NGCカタログ(NGC Catalogue)=星雲目録を元にジョン・ハーシェル(Sir John Frederick William Herschel)が作った5,079個の星雲・星団を含む天体カタログであるジェネラルカタログ(General Catalogue)にジョン・ドレイヤー(John Louis Emil Dreyer)が追補して1888年に発表したもの= では西側の星団がNGC869,東側の星団がNGC884,Mel(メロッテ)カタログ(Melotte Catalogue)=フィリベール・ジャック・メロッテ(Philibert Jacques Melotte)がフランクリン・アダムズ写真星図から245個の星団を拾い出し1915年に作成したカタログ= では西側の星団がMel13,東側の星団がMel14となっています。
 このふたつの散開星団はペルセウス座OBアソシエーション =同じ起源を持ち重力的な束縛からは解放されているが,未だ宇宙空間を共に移動している恒星で構成される非常に緩やかな散開星団(アソシエーション)のうちO及びBのスペクトル型を持つ10個から100個の大質量星を含むもの= の中核を成していて,誕生してから約1,400万年が経過しています。しかし,二重星団にはメシエ番号がついていないので,「iステラ」のようなアプリにはこの星団が表示されず,とまどうことがあります。

 現在10等級より明るく見えている唯一の彗星であるパンスターズ彗星(C/2017T2)がこの二重星団に接近しているので,写真を撮ることにしていたのですが,いつものようになかなか晴れません。なんとか晴れ間が見えた1月29日,自宅から15分くらいの,暗くないのですが街灯がない場所へ出かけました。ところがにわかに曇りはじめて,大急ぎで極軸を合わせ終わったら北極星のあたりは曇ってしまい,それでも幸運にペルセウス座のあたりだけまだ雲がなかったので祈る気持ちで視野に入れて失敗したらもう写せない! と露出したのですが,1番目の写真のようにきれいに写りました。その間わずか10分でした。今日は私が星を写している機材の写真も載せましょう。これが3番目の写真です。
  ・・
 彗星の写真を写した日のお昼間,試し撮りで太陽を写してみました。太陽にはこのところまったく黒点がないので,写しても丸い円がうつるだけで何のおもしろみもありません。今日もだめだろうと思っていたのですが,4番目の写真のように,小さな黒点が写りました。


☆ミミミ
 2月1日の月齢は7.4。このとき,月のクレーターの影が文字「X」の形に浮かび上がるので,これを「月面X」とよんでいます。月齢も時間とともに変化します。この晩,午後6時ごろには「X」は浮かび上がっていなかったのですが,午後8時ごろにはあざやかな姿が浮かび上がりました。

DSC_8687s (5)x2

DSC_1485s (2)aIMG_0114t (3)DSC_1480t (3)

 今年は冬もめったに晴れません。星見というのはもっともコストパフォーマンスの悪い趣味で,もともと星に興味のない人が本に書かれたようにして写真を写そうとさまざまな機材をかったところで,お金をどぶに捨てるようなところがあります。また逆に,すばらしい星の写真を写している人のなかにも,星についてはまったく知らないという人もいます。趣味というのも人それぞれです。
 私は,晴れるという予報があれば星見に出かけるようにしていますが,私の目的は,とにかく,面倒なことはしない,お金をかけない,苦労をしない,そして,楽しむ,なのです。
  ・・
 1月21日の晩は,久々に晴れるという予報でした。天気図を見ると一晩中晴れそうでした。しかし,私は深夜には帰宅したので知りませんが,実際は明け方には曇っていたようです。
 私は,ここ数年,南半球に何度も出かけたり,ハワイに行ったり,信州に行ったりという機会がずいぶんあったので,すでに,満天の星空を心置きなく楽しみたいという夢は飽きるほど実現して,以前のような情熱はなくなっていて,それよりも,人のいない,しかも自宅からさほど遠くない場所で,空の条件がさほどよくなくてものんびりと星空を眺めることで満足できるようになってきました。 
 ということで,この晩は,昨年末にも写したパンスターズ彗星とオリオン座,そして,いくつかの散光星雲を写すことにして出かけました。

 パンスターズ彗星(C/2017T2)ははじめの予想ほど明るくならないのですが,それでも9等星くらいなので,簡単に写ります。しかし,この晩は存在するという場所を写した画像をいくら見てもなかなか彗星が確認できません。彗星は思っていたほど大きくも明るくもなく,拡大してやっと見つけました。
 彗星のいる位置が銀河の中で星が多く,見分けがつきにくかったのも理由でした。彗星はこの先もまだ当分見ることできるので,もう少し明るくなるのを期待したいものです。
 望遠鏡の直焦点での撮影を終えて,次に35ミリカメラにレンズをつけて写すことにしました。
 今回から写すシステムを変えたので,その実験も兼ねました。
 さて,ペテルギウスの減光で,明日にでもペテルギウスが爆発するのではないかと話題になっています。しかし,このところ減光も底を打ち,増光に転じたという情報があったので,また,写すことにしました。とはいえ,写真ではそんなことはわからないので,単に記念で写しただけです。オリオン座はちょうど50ミリレンズくらいの画角できちんと収まるので楽です。ただし,オリオン座全体に分布する散光星雲が美しいのですがこれを写すにはちょっとしたコツがあるので,これを捉えるのがまた,おもしろいのです。
 この時期,オリオン座は11時ごろに南中するので,冬の南の星空はとても賑やかです。夏の星空と違って冬は夜が長いので,これまでもずいぶんとこのあたりの写真を写しました。どれだけ写しても飽きないものです。オリオン座のあとは,180ミリの望遠レンズに変えて,いくつかの散光星雲を写してみることにしました。この続きはまた次回。

IMG_0079wDSC_8531PanSTARRS

 2019年もあと数日となりました。今年は本当に月明かりのない晩に晴れない日が多く,満足に星見をしたのも数えるほどでした。12月は26日が新月で日食だったのですが,今年は,こうした天体イベントのあるときも決まって天気が悪く見ることができませんでした。
 その2日前,12月24日のクリスマスイブはひさびさの快晴という天気予報だったので,星見に行きました。この日の目的はオリオン座とパンスターズ彗星(C/2017T2)でした。
 オリオン座が目的のひとつだったのは,オリオン座のα星「ペテルギウス」がこれまでにないほど減光しているという情報を知ったからです。また,パンスターズ彗星は2020年の5月ごろに6等星くらいまで明るくなるといわれていて,前回星見に行ったときは12等星だったのがどれだけ明るくなっているかが楽しみでした。

 「ベテルギウス」(Betelgeuse)はオリオン座α星で,おおいぬ座の「シリウス」,こいぬ座の「プロキオン」とともに「冬の大三角」を形成している1等星です。地球からの距離は約642光年です。
 「ペテルギウス」は非常に大きな恒星で,太陽系の中心に置いたとすると火星軌道を大きく超え木星軌道の近くまで達します。赤色超巨星で星自体の形状が半規則的に変化するSRC型の脈動変光星です。ガスが恒星表面から流出し表面温度が不均一になるなど星自体が不安定な状態にあり,その形状は球形ではなく大きな瘤状のものをもっていて,近いうちにII型超新星爆発を起こすであろうといわれています。超新星爆発すると,満月よりも100倍明るく数日間は昼でも輝いて見えるといわれています。また,爆発後はブラックホールにはならず,中性子星となると考えられています。
 この「ベテルギウス」の明るさがこのところ観測史上類を見ないほど低下していて,この現象が超新星爆発の兆候ではないかと指摘されています。
  ・・・・・・
 Betelgeuse, a bright, very large star in the constellation of Orion has been dimming since October suggesting it might go supernova, according to astronomers.
 Dozens of scientists from around the world have taken to Twitter to discuss the phenomenon and speculate over whether it will soon explode.
 The star has a very variable brightness and a pattern of regularly dimming, but astronomers say the latest dimming period appears to be different.
 Researchers from the Astronomer's Telegram - a place for experts to share astronomical findings - say it is the faintest it has been in 50 years of observations.
  ・・
 オリオン座の明るくて非常に大きな星であるベテルギウスが10月から暗くなってきており,超新星になる可能性を示唆しています。
 世界中の多くの科学者がTwitterでこの現象を議論し,間もなく爆発するかどうかを推測しています。
 ペテルギウスは非常に可変的な明るさと規則的な減光のパターンを持っていますが,天文学者は最新の減光パターンは通常とは異なっているように見えるといいます。
 天文学者の情報網-専門家が天文学上の発見を共有する場所-で,研究者はそれが50年間の観測で最も弱いといっています。
  ・・・・・・
 肉眼で見てもそれほど違いを感じないのですが,もし超新星爆発すれば,今の姿の写真が貴重になると思って写しました。生きているうちにぜひ超新星爆発を見てみたいものです。

 一方,パンスターズ彗星(C/2017T2 PanSTARRS)は現在ペルセウス座にあって,午後10時ころには天頂に近いことと近くに明るい星もないので,ファインダーを覗くのも大変だし彗星の位置をたどるのも困難で逆に探しにくいのですが,なんとか見つけて写真に撮ることができました。私は自動で天体を導入するなどという現代的な武器をもっていないのです。
 この彗星,発見当初は2020年の夏に1等星になるのではと予想されたのですが,どうもそういう状態でなないらしく,今は楽観的に考えても6等星,実際は8等星どまりでないかと思われています。今はまだ暗くて9等星くらいなのですが,それでも,すでに彗星らしいかわいい尾をもった姿をしています。彗星の明るさの予想はいつも外れるので,今後どのくらい明るくなるかが楽しみです。

◇◇◇


◇◇◇
 翌25日の早朝は月齢28.3。晴れ渡った明け方の東の空に,糸のような美しい月を見ることができました。

DSC_4142

DSC_1423t (3)M45DSC_1405t (3)2018N2106526_web (2)DSC_1408t (4)29PDSC_1426s (2)n2017T2DSC_1417t (3)DSC_1437t (3)pac

☆☆☆☆☆☆
 以前書いたことがありますが,日本は空が明るく水蒸気が多く,満足な星空は望めません。そこで,多くの愛好家はお金と時間をかけて,高級な機材を使いコンピュータを駆使して写真を仕上げます。
 私は,所詮,趣味というのは自己満足と割り切って,お金をかけて高い機材を買う気にもならず,30年前に買った古い望遠鏡で満足しています。そのお金でオーストラリアに出かけて美しい星空を見るほうがいいと思っているからです。コンピュータを使った画像処理も凝ったことがあるのですが,時間ばかりがかかるので,そんなことに手間暇かけるなら,旅行をしたほうがいいと思っているので,それもしません。
 晴れた晩に,往復約2時間,そして現地で2時間ほど,つまり合計4時間ほどかけて出かけて,10等星より明るい彗星を2分の露出で写したり,満天の星空とはいえなくても,双眼鏡で星雲や星団を眺めることに楽しみを絞っています。

 しかし,そんな明るい夜空でも,私が思っているよりも暗い彗星が写せるようです。便利な時代になったものです。
 今日の1番目の写真はこの日試しに写した散開星団「プレアデス」(Open cluster ”Pleiades” M45)ですが,この写真でも14等星くらいまで写っています。そこで,これからはどのくらい暗い彗星まで写せるかを試してみようかなと思うようになりました。
 そんなわけで,この晩は,アフリカーノ彗星以外に,10等星よりも少し暗い彗星がいくつか地平線上にあったので,それらを順に写してみることにしました。
 2番目写真がアサシン彗星(C/2018N2 ASASSN)です。アサシン彗星は,2018年7月11日,ASASSN(All-Sky Automated Survey for Supernovae)プロジェクトで,南アメリカ・チリのセロロ・トロロ(Cerro Tololo)天文台にあるカシアス(Cassius)14センチメートルの探査ユニット=3番目の写真 で発見したものです。
 4番目の写真がシュワッスマン・ワハマン第1彗星(29P Schwassman-Wachmann)です。シュワスマン・ワハマン第1彗星は1927年11月15日にドイツ・ベルゲドルフ(Bergedorf)のハンブルク天文台(Hamburger Sternwarte)のアルノルト・シュヴァスマン(Arnold Schwassmann) とアルノ・ヴァハマン (Arno Arthur Wachmann)が発見した公転周期14.7年の周期彗星です。 シュワスマン・ワハマン第1彗星は,ふだんは16等星ほどの暗い彗星ですが,突然アウトバーストを起こして12等星くらいまで明るくなることで知られています。アウトバーストは頻繁に起きて,1,2週間で16等星に戻ります。これまで,最大で19等級から9等級まで変化したことがあるといいます。アウトバーストは揮発性物質が爆発的に蒸発して起こると推測されていますが詳しいことは不明です。
 そして,5番目の写真がパンスターズ彗星(C/2017T2 PanSTARRS)です。パンスターズ彗星は2017年10月2日,ハワイ・マウイ島のハレアカラ(Haleakala)にある1.8メートルPan-STARRS1望遠鏡で写したCCDの画像から発見されたものです。

 パンスターズ彗星はおうし座にあるので昇ってくるのが遅く,写すことができるまで少し時間があったので,その時間を利用して,みずがめ座とくじら座のふたつの惑星状星雲 NGC7293=6番目の写真 と NGC246=7番目の写真 を写しました。
 惑星状星雲は美しいのですが,小さいので,私の持っているような小さな望遠鏡ではなかなかうまく写りませんが,この写真のように,けっこうマシに写すことができました。
 NGC7293 通称らせん星雲(The Helix Nebula)は,みずがめ座にある有名な惑星状星雲です。距離は約700光年で,太陽系に最も近い惑星状星雲のひとつです。猫のような目の形をしている中心部が「らせん」の名前の由来ですが,最近の研究ではその周囲に淡い環状のガスが広がっていることがわかっています。全体の大きさは満月の約半分くらいまで広がっているという大きなもので,中心部に白色矮星が存在します。
 NGC246は,くじら座にある淡い惑星状星雲です。こちらは地球から約1,600光年離れています。星雲の中心の恒星は12等級の白色矮星です。中心の恒星とその周囲の配置から,この星雲はカシオペヤ座にある NGC 281 とともに,「パックマン星雲」( Pac-Man Nebula) というニックネームがあります。
 「パックマン」(Pac-Man)というのは,ナムコ(後のバンダイナムコ)より1980年に発表されたアーケードゲームのタイトルでキャラクターのことです。

  ・・・・・・
 ずっと天気がよくなくて,半年以上,日本では満足のいく星空を見る機会がなかったのですが,この晩はめずらしくずっと晴れていて,しかも,寒くも暑くもなく,最高の晩になりました。
 それにしても,こんな晩も1日だけ,また次の日からは曇り空,しかも,10月だというのに台風が接近するとあっては,またしばらく星空を見ることもできません。そのうちに冬になってしまうことでしょう。冬もまた,以前は太平洋岸は快晴の日が続いたものですが,今は,日本海側のような天候が多く,満足のいく星空を見る機会が少なくなってしまいました。

このページのトップヘ