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 NHK交響楽団第1931回定期公演の曲目はブラームスのピアノ協奏曲第2番とシェーンベルグが編曲したピアノ四重奏曲第1番(通称「ブラシェン」)でした。
 ピアノ協奏曲第2番は4楽章形式ですが,第3楽章の染み入るようなチェロがとてもすばらしく感じられる曲です。ピアノ四重奏曲第1番は,私はコンサートではじめて聴く曲でした。
 今回は交響曲のないブラームスのプログラムということです。

 私はブラームスが好きですが,これまでブラームスの作品がいつ作曲されたのかということはあまり気に留めていませんでした。
 今回演奏された2曲は,ブラームスの若いころと晩年のものということであるということと,このところ世界史に興味をもったので,ここでブラームスの作品の作曲年代について調べてみました。
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 まず,ヨハネス・ブラームス(Johannes Brahms)自身の生存年代ですが,ブラームスは1833年に生まれて1897年に63歳で亡くなっています。ウィーン会議が1817年,プロイセン・オーストリア戦争が1866年,ドイツ帝国が成立したのが1871年,日本では1833年は天保の飢饉が起きた年,1894年は日清戦争,そういう時代でした。また,ベートーヴェンは1770年生まれで亡くなったのが1827年なので重なっておらず,同時期に活躍したブルックナーは1824年生まれで亡くなったのが1896年,マーラーは1860年生まれで1911年に亡くなっています。
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 今回のコンサートで演奏されたピアノ四重奏曲第1番は1861年に作られたので,ブラームスが28歳のときです。ピアノ四重奏曲というはピアノ,ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロからなるものですが,それを1937年に管弦楽曲に編曲したのがシェーンベルクです。
 また,ピアノ協奏曲第2番は1881年に完成したので,そのときブラームスは48歳で,ピアノ協奏曲第2番のまえのピアノ協奏曲第1番は1857年の完成なのでピアノ四重奏曲より4年早く,ピアノ協奏曲第2番の22年前ということになります。
 ちなみに,交響曲第1番は1876年なのでブラームス43歳のときに完成したもので,交響曲第2番はそのわずか翌年の1877年,その次がヴァイオリン協奏曲で1878年,そして,ピアノ協奏曲第2番をはさんで,交響曲第3番が1883年,交響曲第4番は交響曲第3番完成の翌年1884年から1885年にかけて作曲されました。ヴァァイオリンとチェロのための二重協奏曲は,交響曲第4番のあと1887年に作曲したものです。このように,ブラームスの円熟期は43歳から54歳にかけてということになります。

 と,ここまでが前置きです。
 このコンサートはあとで書かれた交響曲のような大曲であるピアノ協奏曲第2番が先に演奏されて,「ブラシェン」と称されるピアノ四重奏曲第1番が後でしたが,「ブラシェン」が後というのは少し荷が重いのです。小気味よい曲ではあるのですが,ハンガリー舞曲のようなもので,メインプログラムの器ではありません。
 ピアノ協奏曲第2番のピアノの演奏はボディビルダーの肩書もあるツィモン・バルト(そういえば力士だった把瑠都もいました)という大柄な男性で,ちょっと変わった演奏家という評判でした。
 出だし,なかなか個性のある演奏だと思ったのが甘い考えでした。テンポは異常に遅く,進まず,さらに,ふらふら,進みだすと思えば立ち止まり,シンドイだけでした。これではオーケストラがたいへん,7割程度の入りのお客さんの私の周りにいた数人の人はみんな寝ているし,私は途中で帰りたくなりました。
 だいぶ前,NHK交響楽団の定期公演でピーター・ゼルキンというピアニストがブラームスのピアノ協奏曲第1番を演奏したのを聴いたのですが,このときもまた,えらくおそいテンポで今にも止まりそう,聴くほうもたいへんだったのですが,それはそれで芯があって,こころに残りました。それを思い出したのですが,それとも違いました。
 10年以上NHK交響楽団の定期公演を聴いていますが,こんなに私が不快になった演奏ははじめてでした。正直,せっかく期待したブラームスのピアノ協奏曲第2番がまったく別の曲になってしまって残念な気持ちでした。演奏時間約60分,これでは長すぎます。帰宅後,ツイッターの書き込みを読むと,なかには絶賛しているもの,あるいは,私と同じようなことを書いているものなどいろいろありましたが,まあ,何を聴いても絶賛する人の意見はさておいて,これほど賛否のわかれる演奏というのもそうはありません。
 そんな「毒気」にあてられたおかげで,後半の「ブラシェン」がきわめてさわやかな清涼剤となったのもまた,不思議なものでした。荷が重いと思った「ブラシェン」が後でむしろよかったわけです。

 ただし,ウィンナーワルツとか,多くのR・シュトラウスの作品のような,音楽を音として楽しむものと,音楽を媒体としてこころの琴線に触れる楽しみが違うように,私がブラームスという作品を聴く楽しみは後者のほうなので,期待に反して物足りないコンサートとなってしまいました。フィレ肉を食べに行ってテールを出されたようなものでした。
 帰宅後,NHKEテレで放送されていた第1923回の定期公演を見ました。ビゼーの交響曲第1番をはじめ,とてもNHK交響楽団らしいすてきなコンサートでした。指揮者のトゥガン・ソヒエフさんもノリがよく楽しそうで,私は,こうしたコンサートのほうがずっといいなあと思ったものでした。