【Summary】
At the Kyoto Symphony Orchestra’s 705th Subscription Concert, conductor Pierre Dumoussaud and saxophonist Kohei Ueno performed Pierné’s Ramuntcho Overture, Tomasi’s Ballade, and Shostakovich’s Symphony No. 10. The program highlighted the vivid colors and emotional depth of French music, with Ueno’s expressive tone and Dumoussaud’s refined direction creating a brilliant, youthful atmosphere.
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2025年10月11日,京都市交響楽団第705回定期演奏会を聴きました。今回は,指揮をピエール・デュムソー(Pierre Dumoussaud)さん, サクソフォンの独奏が上野耕平さんで,曲目は,ピエルネ(Gabriel Pierné)の「ラムンチョ」(Ramuntcho)序曲,トマジ(Henri Tomasi)のバラードーサクソフォンと管弦楽のためのー,そして,ショスタコーヴィチの交響曲第10番でした。
前半は,これまで聴いたことがない,しかし,魅力的な曲,そして,後半は芯のある,なかなか凝ったプログラムです。
ピエール・デュムソーさんは,1990年パリ生まれのフランスの指揮者なので,現在34歳という若手です。パリ国立高等音楽院(コンセルヴァトワール)で指揮を学び,2017年にワロニー王立劇場オペラ指揮者国際コンクールで最高位を獲得後,パリ・オペラ座にデビューし,2022年にフランスの音楽賞「ヴィクトワール・ドゥ・ラ・ミュジーク」で新進指揮者賞を受賞したということです。
上野耕平さんは,1992年生まれのサクソフォン奏者です。私は,NHKFMの「(かける)クラシック」という番組で知っていました。風と光が踊るような自由さと深みがある音楽と評され,クラシックをベースにしながら,映画音楽,タンゴ,童謡,現代作品まで幅広いジャンルを取り入れ,息の長いフレーズをたっぷり歌い上げる「歌心」が魅力で,速いパッセージも軽やかに,しかも力強く響かせるといいます。
初秋にふさわしい若々しい組み合わせは,今回も,すばらしい時間をくれました。
●ピエルネの「ラムンチョ」序曲
ピエルネは,1863年生まれのフランスの作曲家・指揮者・オルガニストで,印象主義とロマン派の間を流れるような音楽を紡いだ人物です。古典的な技法とパリの最先端の管弦楽法が融合した流麗な橋渡し的存在だそうです。
「ラムンチョ」序曲1908年にパリのオデオン座で初演された劇付随音楽の冒頭を飾る,バスク地方の民俗的な色彩が詰まっている作品です。ピエール・ロティの小説「ラムンチョ」の舞台化のために書かれた音楽の一部で,後にふたつの組曲として再編されたうちの第1組曲の冒頭に位置しています。
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バスクの球技であるぺロタの名手で密輸で生計をたてているラムンチョは幼馴染のグラシューズと婚約をしていたのですが,反対され,3年間の兵役から戻ると,グラシューズは修道院に。修道院長から神と恋人のどちらかを選択するように迫られ,その重圧に耐えかね息を引き取るのでした。
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バスク音楽特有の8分の5拍子「ゾルツィコ」(zortziko)や,ファンダンゴなどの舞踊リズムが取り入れられているのが特徴で,タンバリンやピッコロなどの打楽器が活躍し,バスクの風景が音になって流れてくるような音楽です。終盤は,非公式バスク国歌「ゲルニカコ・アルボラ」(Gernikako Arbola=ゲルニカの樹)の旋律を使って爽快に締めくくられます。なお,ゲルニカ(Guernica)は,スペイン北部バスク地方のバスク文化の中心地だった小都市です。ゲルニカの樹は,バスクの自治を象徴する木で,昔はこの木の下でバスク議会が開かれていたそうです。
風が山を越えて谷に響くような音楽,と評されますが,実際,聴きやすいすてきな音楽でした。
●トマジのバラードーサクソフォンと管弦楽のためのー
トマジは1901年フランス・マルセイユ生まれの作曲家・指揮者で,地中海の光と風を音楽に変えた「メロディの詩人」といわれます。両親はコルシカ島出身で,バスクと同じく地域色の濃い文化に育まれました。旋律美を大切にした作風で,地中海の色彩やコルシカ島の民謡,戦争や人間の苦悩をテーマにした曲を作りました。
1950年代に作曲されたバラード ―サクソフォンと管弦楽のためのーは,で,サクソフォンの詩的な魅力を存分に引き出す,水が光を受けて揺らめくような繊細で奥深いフランス近代音楽の作品です。8分の6拍子を基調にしながら,内包された4分の3拍子の感覚が交錯し,まるで波に揺れる木の葉のようなリズム感が生まれます。
冒頭は静かで幻想的,霧の中を漂うような雰囲気からはじまり,徐々に情熱的で技巧的な展開へと移っていきます。中盤にはブルースの要素も感じられ,軽快になります。 演奏するには,ただ音を並べるのではなく,音楽の流れや感情の起伏をしっかりと掴む必要があって,音楽の「語り」をどう紡ぐかが鍵だそうですが,聴きごたえがある曲でした。
アンコールはP・ボノー(Paul Bonneau)の「ワルツ形式によるカプリス」(Caprice en Forme de Valse)でした。この曲は,無伴奏アルト・サクソフォーンのために書かれたフランスらしいエスプリと遊び心に満ちた作品で,演奏者の表現力とテクニックが試される曲だそうです。

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「Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.」とは
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