しない・させない・させられない

Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.

USA50州・MLB30球場・47都道府県を制覇し,南天・皆既日食・オーロラ,空の3大願望を達成した「不良老人」の日記

タグ:ヘルベルト・ブロムシュテット

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【Summary】
The concert featured Brahms’s Piano Concerto No. 2 and Symphony No. 3 conducted by Herbert Blomstedt. Despite high expectations, the slow tempos and lack of depth left the performances emotionally unconvincing. Only the encore brought quiet beauty. Overall, it was more about witnessing the elderly maestro than musical fulfillment.

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 NHK交響楽団第2047回定期公演Cプログラム。
 前半の曲は,レイフ・オヴェ・アンスネスさんがピアノを弾いたブラームスのピアノ協奏曲第2番。
 とても美しい,大好きな曲ですが,私は,これまで,なかなかすてきな演奏に出会えません。むしろ,がっかりしたことのほうが多いくらいです。今回もすごく期待したのですが,残念ながら,その期待通りにはいきませんでした。
 テンポが遅く,それだけならいいのですが,あまり深みが感じられませんでした。
 この曲は,珍しい4楽章構成で,ピアノつきの交響曲のようなスケール感ですが,その中でも第3楽章アンダンテは,チェロがまるで独奏楽器のように扱われ,ピアノと優しく対話するようにして進み,ここが最大の聴きどころです。その旋律は深い哀愁と温もりが混ざり合ったような響きで,こころに染みいるのですが,今回の演奏では,そこまでの感動を味わうことはできませんでした。
 アンコールで演奏されたのは,ブラームスの間奏曲イ長調。レイフ・オヴェ・アンスネスさんの端正で自然なタッチが静かな余韻を残しました。
  ・・
 前半が終了した時点で,すでに1時間以上が経過し,休憩が終わったときは,すでに,午後8時30分近くになっていました。私は,午後10時10分品川駅発の最終の新幹線に乗らなければ帰ることができません。

 後半は,ブラームスの交響曲第3番。
 前半では,座って指揮をするヘルベルト・ブロムシュテットさんがピアノに隠れてしまい,まったくその姿を見ることができなかったので,この曲が楽しみでした。
 前半同様,この曲も,ヘルベルト・ブロムシュテットさんの指示するテンポが遅く感じました。実際,一般的な演奏よりも遅めで,しかも,テンポをほとんど動かさず淡々とした指揮ぶり,ということでした。このテンポは,滋味深くて染みわたるような響きを目指し,まるで,水が岩を削るようにじっくりと音楽の本質に迫っていく感じを表現したかったからなのだそうですが,私には,マエストロが,これまで何度も指揮をしてきたこの曲の1音1音を確かめながら,その余韻に浸っているような気がしました。魂の不滅を謳うようにして指揮をする姿に,きっと,テンポ以上の深い意味が込められていたのでしょう。音楽を奏でるというより対話をしている感じでした。
 しかし,オーケストラが,そんなマエストロの想いを遂げるには少し消化不良だったような気がしました。そこで,音楽の流れがやや硬直し,演奏者たちが「深さ」を表現しようとしながらも,響きの柔らかさや推進力に欠けていたように感じ,2019年のときの感動までは至りませんでした。そんなわけで,せっかくの熱演も,98歳という高齢のマエストロの指揮する姿に立ち会う,ということが最大の目的となってしまったような演奏会だったことだけが残念でした。
 来年の10月は定期公演Aプログラムではブルックナーの交響曲第5番,さらには,NHK交響楽団創立100年記念でブラームスの交響曲第2番と第4番を指揮されるそうです。それまで,どうかお元気で。
 かくいう私は,無事,最終の新幹線に乗ることができました。

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【Summary】
At the NHK Symphony Orchestra’s October 24, 2025 concert, the true focus was 98-year-old conductor Herbert Blomstedt, whose appearance and leadership were deeply moving. Together with pianist Leif Ove Andsnes, he led an all-Brahms program, including the Piano Concerto No. 2 and Symphony No. 3, performed with dignity and emotional depth.

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 2025年10月24日,NHK交響楽団第2047回定期公演Cプログラムを聴きました。
 曲目は,ブラームスのピアノ協奏曲第2番と交響曲第3番で,指揮はヘルベルト・ブロムシュテット(Herbert Blomstedt)さん,ピアノはレイフ・オヴェ・アンスネス(Leif Ove Andsnes)さんでした。
 プログラムによると,聴きどころは
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 今回はピアノ協奏曲第2番と交響曲第3番というオール・ブラームス・プログラム。
 オーケストレーションは保守的と言われがちなブラームスだが,どちらも決してべったりと塗りつぶされた単色の世界ではないとすぐに気がつくはずだ。派手さは確かにないかもしれない。だが,明暗や濃淡の繊細な変化に満ちたその音楽には,独特の色調があり,じつに味わい深い。
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ということでしたが,何はともあれ,最大の聴きどころは,98歳になる指揮者のヘルベルト・ブロムシュテットさんがどう指揮をするか,でした。
 ピアノのレイフ・オヴェ・アンスネスさんは
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 1970年ノルウェーのカルメイ生まれ。
 50以上の録音をリリースし,グラミー賞に11回ノミネート。2011年に行われた1707回定期公演でラフマニノフのピアノ協奏曲第3番をヘルベルト・ブロムシュテットさんと共演しました。
  ・・・・・・
というピアニストです。

 NHK交響楽団,毎年10月の定期公演の指揮がヘルベルト・ブロムシュテットさん,というのがこのところの恒例ですが,これは,2020年からのことです。しかし,2020年はコロナ禍で来日ががなわず,翌年2021年が実質上はじめでした。2021年はすでに95歳でしたが,立って指揮をするほど元気でした。翌年の2022年は,来日直前に足を痛め,来日が危ぶまれました。それでもなんとか来日がかないましたが,さすがに立って指揮をすることはできませんでした。このとき異様な雰囲気ではじまったAプログラムで演奏したマーラーの交響曲第9番は,まさに神話でした。曲の終了後の長い静寂は感動ものでした。
 2023年は体調が悪く来日がかなわなかったのですが,2024年の公演は実現しました。そして,今年2025年です。2024年は,コンサートマスターに付き添われてステージに登場したのですが,今年は歩行器をつかっての登場でした。外見では,昨年よりも体調がよい感じでした。
 ヘルベルト・ブロムシュテットさんは,ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」と並び,ブラームスの交響曲第3番がお気に入りのようで,たびたび取り上げています。前回取り上げたのはは2019年11月のAプログラムで,このときの演奏は,すばらしいものでした。何と,定期公演なのに,カーテンコールの途中で,突然,アンコールがはじまり,第3楽章が演奏されました。これがすごいものでした。
 では,今回は…。

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 2023年10月14日に行われる予定だったNHK交響楽団10月Aプログラムが中止になりました。そろそろ「お元気に来日されました」というニュースがあるころだなあ,とこころ待ちにしていたところに飛び込んできた速報でした。
 2023年9月のNHK交響楽団の機関紙「フィルハーモニー」によると,マエストロ・ブロムシュテット(Herbert Blomstedt)に「N響100周年(2026年)を一緒にお祝いしたい」と言ったら「ウィーン・フィルとは,私の120歳のバースデー・コンサートを開く約束をしている」と述べたということだったので,今年もまた,お元気な姿を見ることができると楽しみにしていた桂冠名誉指揮者ヘルベルト・ブロムシュテットさんの10月の定期公演でしたが,残念ながら,健康上の理由で来日がかないませんでした。
 昨年は思わぬアクシデントがあって,直前に予定されていたヨーロッパでの公演が軒並みキャンセルになったことで来日が危ぶまれ,大変心配しましたが,無事,来日を果たし,マーラーの交響曲第9番を指揮されました。私には,忘れられないコンサートになりました。このときのコンサートはかなり衝撃的なものでしたが,この偉大なマエストロに悲劇性はふさわしくありません。その後はみるみる健康を取り戻し,明るく,さわやかなマエストロの姿に戻っていました。

 中止になってしまった今年の曲目は,ブルックナーの交響曲の中でも最高傑作とされる交響曲第5番でした。
 ブルックナーの交響曲第5番は,「対位法上の傑作」であるとともに,複数の主題を伸縮自在に組み合わせるポリフォニーの技術が駆使されていて,特に,第1楽章や第4楽章の展開部,第4楽章のフーガなど,その荘厳な響きに魅了されます。ブルックナーの交響曲は,オーストリアの雄大な大地を想像させるのですが,第5番はそれとは少し異質で,この長大な交響曲では,複数の旋律を重ね合わせ,そのおのおのの特徴を生かして調和させていきながら,音楽の中にヨーロッパの大寺院を思わせる壮大な音の建築物を出現させているものです。
 「レンガを一枚一枚ていねいにに積み重ねていくかのよう」と表現されるマエストロ・ブロムシュテットにとって,まさに,ブルックナー,特に第5番の交響曲はふさわしいものであり,それを味わうことができる喜びは,ほかの何ものにも代えがたい経験となるはずでした。しかし,聴くのもたいへんな大曲が無事に指揮できるのかという心配もありました。それもこれも,かなわぬこととなってしまいました。

 私は,これまでも,桂冠名誉指揮者だったヴォルフガング・サヴァリッシュ(Wolfgang Sawallisch)さんのキャンセルとなった最後の定期公演,エフゲニー・フョードロヴィチ・スヴェトラーノフ(Yevgeny Fyodorovich Svetlanov)さんが指揮をする予定だった最後の定期公演などのチケットを持っていたのですが,そのいずれも,代役が指揮をしました。今回は直前のキャンセルだったために代役もなく中止となってしまったのですが,コロナ禍のときのさまざまなコンサートでも痛感しましたが,私は,オーケストラのコンサートに指揮者の代役はふさわしいものではないと思っています。その指揮者だからこそ,聴きに行くからです。
 それよりも,どうかお元気になられて,再び,日本でその姿を見せていただけるようにこころから祈っています。

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 1年と何カ月かぶりに再開されたNHK交響楽団定期公演の10月の指揮者は,待ちに待った94歳の巨匠ヘルベルト・ブロムシュテット(Herbert Blomstedt)さんでした。コロナ禍でもなければ,私は東京に聴きにいったのですが,さすがに今回はFM放送での鑑賞となってしまいました。
 はじめの演奏会は第1939回。静寂の中でブラームスのヴァイオリン協奏曲がはじまりました。奏でられる1音,1音がすばらしく,私は感動して聴き入っていました。次が第1940回。この演奏会ではドヴォルザークの交響曲第8番がすてきでした。そして最後が第1941回で,この演奏会ではベートーヴェンの交響曲第5番がとりあげられました。
 ヘルベルト・ブロムシュテットさんは,このところベートーヴェンの交響曲を順にとりあげているのでうが,今回の第5番ははじめてでした。第6番「田園」も,数年前に演奏したのがはじめての定期公演でのプログラムということだったし,これまで第3番「英雄」は2度取り上げたのにもかかわらず,第5番は残ったままなのが私には気になっていました。それが今回の第1941回の定期公演でかなったわけです。
 ブロムシュテットさんが満を持して指揮した第5番なので,どんな演奏になるのか興味がありましたが,私の印象は,一点の曇りもない爽やかな水が流れるような,これほどさわやかな第5番を聴いたことがない,ということでした。ほんとうにすばらしい時間でした。荘厳な高級車というよりも,白髪の紳士が若々しいスポーツカーに乗った様のような感じでした。いつまでも続くカーテンコール,Twitterで見て泣けました。
 来年もまた来日されるのをこころから期待しています。
  ・・
 長く続くコロナ禍で,私はコンサートに行く機会が減りました。また,東京までわざわざコンサートを聴きにいくこともめっきりなくなってしまいました。昨年と今年,私は2回コンサートに行っただけでしたが,精神的な問題も手伝ってか,どちらも満足のいくコンサートではありませんでした。
 コロナ禍がゆえによくなった点は,曲の最後にその余韻に浸る前に無礼に「ブラボー」と叫んでコンサートが台なしになってしまうことがおきなくなったことだけです。
 このところ,パーヴォ・ヤルヴィさんに続いてヘルベルト・ブロムシュテットさんと,海外からの指揮者がようやく日本にやってくるようになって,改めて,そうした指揮者によるコンサートがすばらしいものだということを知りました。私は,わざわざ海外から指揮者を招いてコンサートを行うことの意味がわかった気がします。そしてまた,これまでそうしたことが当たりまえのようだったことがとても貴重なものだったことに気づきました。

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 NHK交響楽団定期公演,今シーズン私はCプログラムの定期会員です。11月はAプログラム,Bプログラム,Cプログラムとも,ヘルベルト・ブロムシュテットさんの指揮でしたが, すでに終わったAプログラムとBプログラムはFM放送で聴きました。
 11月6日に聴いたBプログラムは,ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」がはじめに演奏されるという変わったものでしたが,いつものとおり,すごくテンポが速くて驚きました。
 現在,ヘルベルト・ブロムシュテットさんは,来日するたびにベートーヴェンの交響曲を演奏されていて,これで残るは第5番だけとなったのですが,実は,現在のベートーヴェン交響曲演奏シリーズでは数年前にもう第3番は取り上げられています。それ以前にも第3番を取り上げたことは多く,この曲がお気に入りのようです。
 来年はぜひ,第5番を聴きたいものです。
 11月16日にFM放送で聴いたAプログラムでは,ブラームスの交響曲第3番が演奏されました。ブラームスの交響曲は,現在のベートーヴェンシリーズの前に全曲取り上げられたことがあって,今もその録音は私の宝物となっているわけですが,今回,再び第3番が演奏されました。今回の極めつけは,なんと,定期公演にもかかわらず,アンコールとして,交響曲第3番の第3楽章が再び演奏されたことです。もう,これは涙腺が緩みます。私は,この演奏会に行けばよかったとしみじみ思ったことでした。

 そして,私が聴いたのが11月22日のCプログラムです。
 曲目はモーツアルトの交響曲第36番「リンツ」とミサ曲ハ短調でした。「リンツ」は久しぶりに聴きました。とても小規模な編成で,確か,第1ヴァイオリンが10人,第2ヴァイオリンが10人,ビオラが6人,チェロが4人,そして,コントラバスが3人でした。ヘルベルト・ブロムシュテットさんは,モーツアルトの交響曲の演奏で,いろいろな工夫をしていて,以前は,指揮台がなかったこともあります。
 ミサ曲ハ短調は,私はこの曲を2006年2月の第1560回定期公演で聴いたことがあります。第1560回定期公演では,モーツアルトの交響曲第34番も演奏されました。そのときのミサ曲のソリストは幸田浩子さんと半田美和子さん,福井敬さん,河野克典さん,合唱は国立 音楽大学でしたが,特に幸田浩子さんがすばらしかった印象があります。 このときの演奏はいまでも印象に残っているものです。今回は,クリスティーナ・ランツハマー(Christina Landshamer)さん,アンナ・ルチア・リヒター(Anna Lucia Richter)さん,ティルマン・リヒディ(Tilman Lichdi)さん,甲斐栄次郎さん,合唱は新国立劇場合唱団でした。
 今回もまた,前回と同様に,合唱団の人をミサの曲目によって配置換えをするのは同様でしたが,これにどれだけ効果があるのか,と前回のコンサートである評論家が書いていたのを思い出しました。このこだわりこそが,ヘルベルト・ブロムシュテットさんの若さの秘訣だと私は思います。
 家に帰ってから,録音してあったFM放送を聴いてみました。会場以上にバランスのとれたすばらしい演奏に聴こえました。感動で泣けてきました。特に,「リンツ」は,こんなに美しい演奏を聴いたのははじめてでした。
 ヘルベルト・ブロムシュテットさんは来年も11月に来日が予定されています。ぜひ,お元気で,また,演奏会が聴けるのを楽しみにしています。

 それにしても,こうして定期公演に接してると,月日の流れの早さを感じます。わずか10年程度でも,登場する指揮者や独奏者などの顔ぶれがすっかり変わってしまいます。そして,当時を振り返ると,懐かしもあり,寂しくもあります。音楽は時間芸術といいますが,どんなにすばらしい演奏であっても,月日とともに流れていってしまいます。また,当時,自分に知識がなかったために,かなり貴重な演奏であっても,その貴重さがわからなかったものも少なくありません。それがまた残念なことでもあります。
 一期一会といいますが,そのときそのときの音楽との出会いをもっと楽しまなくては,と思います。それとともに,このすばらしい芸術がわからない人を気の毒に思います。

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 NHK交響楽団2019年11月の定期公演の指揮は,待望のブロムシュテットさん。Cプログラムの曲目はモーツアルトの交響曲第36番とミサ曲ハ短調でした。今年もまた,この巨匠の指揮で聴くことができたのをたいへんうれしく思いました。
 私は2002年のシーズンにNHK交響楽団の定期会員になって以来,足しげくNHKホールに通っているのですが,会員になったころは名誉指揮者としてウォルフガング・サバリッシュ,オットマール・スウィートナー,ホルスト・シュタインという名前があって,ブロムシュテットさんは4番手くらいの位置でした。
 当時は,コンサートもそれほど人気があったとはいえませんでした。しかし,月日が経ち,80歳を過ぎたあたりから定期公演でもっとも聴きたい指揮者とみなされるようになり,毎年の来日が待ち遠しくなりました。
 
 NHK交響楽団の桂冠名誉指揮者ヘルベルト・ブロムシュテットさん(Herbert Blomstedt)は1927年生まれなので92歳になります。最後の巨匠,ではないかと私は思います。
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 スウェーデン人の両親の元,アメリカのマサチューセッツ州に生まれたマエストロは,5歳のときにはフィンランドに移り,再びスウェーデンに戻りました。
 1954年にロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団で指揮者として本格的にデビューし,1975年から1985年までシュターツカペレ・ドレスデンの首席指揮者,1985年から1995年までサンフランシスコ交響楽団の音楽監督,1995年から1998年の北ドイツ放送交響楽団の首席指揮者を経て,1998年から2005年までライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の首席指揮者(=カペルマイスター)を務めました。
 1973年にシュターツカペレ・ドレスデンの公演で初来日し,その8年後の1981年NHK交響楽団にはじめて客演し,はやくも1985年に名誉指揮者となり,2016年には桂冠名誉指揮者の称号を贈られました。
 はじめのころはあまり評価されておらず,私もまた,リハーサルの長い指揮者というイメージしかありませんでした。何でも,リハーサルでは演奏よりも話が長かったということを聞きました。それが,歳をとるごとに音楽が若返り,生命力に富んだ弛緩することのない早めのテンポで無駄のないクリアかつシャープな響きを構築するようになってきましたが,これは,これまで巨匠とよばれた指揮者とはまったく反対の流れとなっています。
 徹底した菜食主義者としても有名です。徹底的なこだわりとして,リハーサルの後で出された昼食の蕎麦のつゆが鰹を出汁にしたものであると知って麺のみを食べたというエピソードがあります。
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 N響の定期会員を辞めて数年になりますが,土曜日に久しぶりにNHKホールに定期公演を聴きに行きました。
 この演奏会を聴きにいった動機というのが不純でした。年末の第9演奏会の指揮者がパーヴォ・ヤルヴィさんということで,そのチケットを優先予約で購入するために,定期公演のシーズン会員になったのでした。しかし,それだけではなくて,9月の指揮者は名誉指揮者の88歳になられるヘルベルト・ブロムシュテットさん,10月は新たに首席指揮者に就任したパーヴォ・ヤルヴィさん,とあれば,これを聴かない手はありません。そこで,定期会員に復活したわけです。

 開演は午後6時。NHKホールに向かうまでに時間があったので,両国の国技館へ行って,力士の場所入りを見ることにしました。
 大相撲は,相撲関係者すらその理由がわからない,というほどの人気回復で,このところ急にチケットが全く入手できなくなりました。私は,3月に大阪場所の千秋楽を見にいって以来「見るんだったら千秋楽」ということで,ずっと千秋楽ねらいで優先予約の抽選に応募しているのですが,当たったためしがありません。
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 両国の国技館の力士の場所入りは,車道脇に停めた車から降りてくる力士やら,部屋から歩道を歩いてくる力士などさまざざまで,すべての力士を見るのが大変です。
 名古屋場所では,最近は正面玄関から場所入りするようになったのですべての力士を見ることができますが,なにせ,真夏なので体力がいります。力士の場所入りを見るのに最高なのは,なんといっても大阪です。以前書きましたが,お相撲を見るのは大阪に限ります。九州は行ったことがないので知りません。

 さて,話を戻しまして,N響です。
 東日本大震災後,開演前のロビー室内楽が中止になったので,1時間前に並ぶ必要がなくなって,のんびりと歩いてインドのフェスティバルで大賑わいの代々木公園を横切って,開演50分前にNHKホールに到着しました。通いなれたところなので,勝手知ったるという感じですが,近年,ずっとサービスがよくなってきましたし,内装が綺麗になりました。
 以前定期会員だったときは,ずっとS席だったのですが,今回は2階のC席の会員です。
 このホールは,どこで聴いても,ラジオで聴くほうが音がいいという変わったところです。だから,NHKホールへ聴きにいくのは雰囲気を味わうためで,どこの席でもいいのです。座ってみて思ったのは,C席は最高だということです。S席は,何か,混雑した電車みたいなのです。聴きに行かれる方は,団員さんのお顔を見るためでなければC席,それも一番後ろをお勧めします。
 私は,年に1回,N響名古屋定期公演を聴きにいくのですが,名古屋の愛知県芸術劇場コンサートホールは音もよく,優先予約で簡単に特等席を手に入れることができるので,NHKホールはこれでかまわないのです。

 この日の曲目は,ベートーヴェンの交響曲第2番とピアノ協奏曲第5番でした。ただし,ピアノの独奏者がお目当てでないのなら,むしろ,交響曲2曲の方がよかったように思います。ブロムシュテットさんを聴きにきた人には物足りないプログラムだったかもしれません。
 確かに ,NHKFMの「きらクラ!」のベートーヴェン祭りで1位に輝いたこのピアノ協奏曲はすばらしい曲ですが,指揮者の裁量が出る,というものではないからです。ただし,ブロムシュテッドさんは,そうした,巨匠じみた扱いを望んておられませんから,こうしたプログラムになるのでしょう。いつまでも謙虚で若々しいままです。

 ラジオの解説でも話されていたように,ブロムシュテットさんの指揮ぶりもどんどんと若返ってきているということです。それは,メリハリの利いた,そして,速度の早い演奏,ということなのですが,それを味わうには,今回の演奏会よりも,前回のBプログラムの第1番と第3番のベートーヴェンの交響曲のほうがその特徴がよくわかりました。
 それでも,第2番の,第1楽章の出だしの堂々とした序奏,ベートーヴェンの緩徐楽章で一番美しいといわれる第2楽章,そして,交響曲にはじめてスケルツオを取り入れた第3楽章,最後の第4楽章の盛り上がりと,至福の時間を過ごすことができました。
 1曲目であって,しかも,交響曲第2番という地味な曲で,カーテンコールが4回,というのも,この指揮者ならでは,でした。
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 ずっと昔は,ベートーヴェンの交響曲というのは,権威の象徴のようなところがあって,管楽器も2管を4管にして,弦楽器もステージ一杯で,堂々とゆっくりと演奏するものでした。そのころは,スコアどおりの速度指定では演奏不能だといわれたのを,私は習いました。
 しかし,近年は,どんどんとテンポが早くなり,ステージ上の演奏者も小規模になってきました。私は,このほうがずっと好きです。
 来年も来日されて,引き続き新解釈のベートーヴェンの残りの交響曲を取り上げていただだいて,いよいよ,90歳を迎えられる2年後には,第9をブロムシュテットさんで聴くことができれば最高だと思います。
 いつまでも,お元気で来日されるのを念願しています。

 それにしても,私は,日本のコンサートを2年前の夏に行ったボストン郊外タングルウッドで聴いたボストン交響楽団の演奏会や,今年の6月に行ったサンフランシスコのオペラなどに比べてしまうので,どうもいけません。コンサートの前に注意事項の放送をしないとお行儀よくできない観客や,休憩時間が短いことなど,もっとゆったりと,そして,気を使うことなく,しかも,正装した紳士淑女が上品に夜遅くまで楽しむとことができるアメリカのコンサートの世界とはほど遠いのが,とても残念なことに思います。

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浪速の春の大相撲観戦②-大阪場所は最高だった。
N響名古屋定期公演-パーヴォ・ヤルヴィさんへの期待
「おわらない夏」-おとぎの国タングルウッド
「想い出のサンフランシスコ」⑪-2015夏アメリカ旅行記


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The Harvest Moon 2015.

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