しない・させない・させられない

Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.

USA50州・MLB30球場を制覇し,南天・皆既日食・オーロラの3大願望を達成した不良老人の日記

タグ:マウナケア

キャプチャ3DSC_1676sDSC_1741sDSC_3461sDSC_3474

 以前,アメリカの国立公園の紹介をしたので,今回からは天文台をとりあげます。天文台はアメリカに限らず,日本もオーストラリアも見学したところがあるので,順に紹介していくことにします。
 星に興味のない人に天文台を見学に行くというと,星を見にいくと思う人が多く,望遠鏡を見にいくというと,そのどこがおもしろいのかと聞かれるのですが,それも当然です。それは,車に興味のある人がクラシックカーの博物館に行くのと同じようなものでしょうか。
 とはいえ,どんな望遠鏡でも見たいわけではなく,子供のころに図鑑で見たものを中心として,そのころに憧れた,いったいどんな山奥にあるのだろう,とか,どんなに大きいのだろう,とかそういった好奇心からくるものです。
  ・・
 私がそうした興味をもつようになった原点の本が3冊あります。
 1冊目は学研から発行された「原色現代科学大辞典」の第1巻「宇宙」に載っていた世界中の天文台,2冊目はこのブログにもたびたび登場する「月刊天文ガイド別冊・日本の天文台」,そして,3冊目は出口修至さんの書いた「アメリカ天文紀行・ふたたびキットピークへ」です。
 こうした本に書かれてあった天文台に一度でいいから行ってみたいものだとずっと思っていたわけです。

 では,はじめます。
 話は矛盾しますが,上記にあげた本にはかかれていないハワイ島マウナケアの天文台から,まずは紹介します。
 私は,ハワイというのは日本人観光客ばかり,という先入観から,あまり気が進みませんでした。それでも行ったのは,アメリカ合衆国50州制覇の目的を達成するためだったのですが,せっかく行くならということで目指したのがオアフ島ではなくハワイ島でした。それはハワイ島にはすばる望遠鏡をはじめとする多くの天文台がマウナケアの山頂にあるからでした。
  ・・
 ハワイ諸島の中で一般の人が行くことができるのは6島ですが,そのうち最も東側のある大きな島がハワイ島です。
 この島の中央にそびえるのが標高4,200メートルのマウナケア。実際,私は,この場所にお昼間と早朝日の出前の2度行きました。マウナケアの山頂には,世界最大級の天文台が13基あります。この望遠鏡のあるあたりは,ハワイ島のどこからでも見ることができるように思われるのですが,実は,ハワイ島でも地図の①で示したワイメアからと②で示したヒロからだけ山頂の天文台のドームを見ることができるのです。

 マウナケアにある望遠鏡のひとつが,日本の誇る口径8.2メートル,世界最大級のすばる望遠鏡です。しかし,すばる望遠鏡のドームを外から見ることはできても,事前にアポイントを取らないとその内部の望遠鏡自体を見ることは簡単にはかないません。
 私も,すばる望遠鏡の本体を見ることはできなかったのですが,すばる望遠鏡のドームは,見てきました。その代わり,お昼間に行ったとき,そのお隣にあるケック望遠鏡はこの目で見ることができましたし,ビジターセンターにも行くことができました。明け方に行ったときは,マウナケアの山頂にある多くの望遠鏡が,ゴーゴーと音を立てて観測をしている姿に感動しました。また,雲海から昇る朝日の美しかったこと。
  ・・
 すばる望遠鏡の最大の発見は「すばるディープフィールド」といって,くじら座のあたり,何もなさそうな場所を写したときに見つかった銀河団です。この銀河団は距離が100億光年,約90,00,000,000,000,000,000,000キロメートル(900垓キロメートル)の向こうです。宇宙の年齢は138億年といいますから,宇宙ができてわずか38億年経ったときの姿を見ているということになります。

cd9fa36bb6ff16605ec4219e77eae8e432032ff1


◆◆◆
「しない・させない・させられない」とは
「Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.」とは

💛
過去のブログの一覧は ここ をクリックすると見ることができます。

DSC_3455 IMG_0234IMG_0243

●マウナケアに憧れたころ●
 それまでは,ハワイなんぞまったく興味もなかったのに,2016年の春にはじめて行ってからというもの,毎年ハワイに出かけるようになった。「よほどよかったんだねえ」と皆に言われた。しかし,私の場合はリゾートとは程遠く,ハワイについての自分の「謎」,つまり,行ったことがない場所がどうなっているんだろう? といったことを解明したいだけの理由で足しげく通ったようなものだった。
 そしてまた,ハワイに行ったもうひとつの大きな理由は星空であった。
  ・・
 20代のときに行ったオーストラリアで,シドニーで泊ったホテルの窓からかろうじて南十字星を見たのだが,それ以降は,2016年にハワイ島で南十字星を見るまで,まったくその機会がなかったから,私は,長年,南十字星を見ることに憧れていた。念願かなってハワイ島で南十字星を見ることができたのは,ある意味,幸運であったが,そのこともまた,すでにブログに書いた。
 その後,南半球に何度も出かけるようになると,ハワイは赤道に近いとはいえ北半球だから,地平線すれすれにしか昇らない南天の星を見るためにハワイに行く魅力はなくなってしまった。それでも,ハワイの空の暗さは今でも捨てがたいものがある。
 私がはじめてハワイに行ったころはそんな状況であったし,何といっても私が最も惹かれたのは世界で最も星空の美しいといわれるマウナケア山であった。マウナケア山の山頂は,一体どんなところだろうか? という興味が,私にはハワイ島へ行く最大の理由であった。

 はじめてハワイ島に行ったときのことの顛末はすでにブログに詳しく書いたので,ここでは書かない。ただいえるのは,2016年時点のハワイ島は,私のような一般人が星を見ようとマウナケア山に行っても十分に魅力的な場所であったということだ。マウナケア山の山頂は4,205メートルあって,個人がレンタカーで気楽に登れるところではないが,その中腹の2,400メートルの地点にはビジターセンターがあって,車さえあれば,そこまではだれでも簡単にアクセスできる。ビジターセンターあたりには広い駐車場があって,そこへ行けば,満天の星が広がっていた。多くの星空ツアーがその場所で開催されていたが,それらは夜の9時には終了するから,それ以降の時間なら,星と一体となって,しかも安全に楽しむことができたのだった。しかし,すでにそのころはもう,TMTについては触れてはならない話題となっていた。
 私が2度目にハワイ島に行ったのは2019年春のことだったが,このときも2016年と同じような気持ちで私はマウナケアのビジターセンターに行ってみた。ところが,わずか3年しか経っていないのに,ビジターセンターのあたりは大規模な工事によって様変わりしていた。これではもはや一般人が星見に訪れるところではないなあと思って,落胆した。
 ビジターセンターあたりの工事と関係があるのかないのかは知らないが,マウナケア山の山頂にある天文台群に新たにTMTを建設しようとする計画に伴う様々なトラブルが起きていて,それは星空のロマンとはまったく正反対の人間社会の大きなもめごとになっていた。
 そんなこともあって,私の抱いていた「ハワイ島=星空」という夢は,今では幻想と失望になってしまっている。

  ・・・・・・
 TMT (=Thirty Meter Telescope)というのは,アメリカ合衆国,カナダ,中華人民共和国,インド,日本の5か国が共同でハワイ島マウナケア山頂に建設中の口径30メートル大型光学赤外線望遠鏡のことである。主鏡は492枚の六角形の鏡を組み合わせた複合鏡で,492枚の鏡1枚1枚をコンピューターで制御し1枚の大鏡と同等の働きをさせる。観測装置として,可視光の多天体分光器WFOS,近赤外線の撮像分光装置IRIS,近赤外線の多天体分光器MODHISが取りつけられ,可視光及び近・中間赤外線を観測して,初期の宇宙,遠方銀河,太陽系外惑星などの詳細を観測する計画だ。
 建設候補地として,ハワイ島マウナケア山の山頂とチリのアンデス山脈が挙げられていたが,2009年にマウナケア山の山頂に建設されることが決定し,2021年度末に完成する予定で,2014年7月に建設が着工された。しかし,2013年,TMT建設反対派から建設を承認した手続きの妥当性について巡回裁判所への異議申立てが行われ,ハワイ州最高裁は異議申立てを認め許可が無効であるとの判決を出した。これを受けて工事は中断し,2016年から2017年にかけて公聴会を実施,TMT建設の承認を推奨する提言が提出され,保護地区利用が許可された。
 しかし,2019年7月建設工事が再開された直後,ハワイ人およびオハナがプウ・フルフル前のマウナケア・アクセス道路を封鎖するなどの実力行使に出たため,再び建設は中断した。
  ・・・・・・
 なお,オハナ(ʻohana)とは,ハワイ語で「家族」を意味することばで,もともとは経済的に結びつき精神的にも支え合う互助の関係にある血縁者や親戚の集合体を指していたが,血縁以外の親しい関係にある者などまで含む形に拡張されている。また,プウ・フルフル(Pu'u=丘,Huluhulu=毛深い)は,火山噴火でできた不毛の平原に残る古い火山性の丘に樹木などの植物が生えている場所を表し,ハワイ島の州道200(Saddle Road)の最高地点2,021メートルの脇にある樹木に覆われたスコリア丘の名称で,北のマウナケア山と南のマウナロア山の間の溶岩流によりつくられた植生の少ない平坦地にある。

◇◇◇


☆ミミミ
19日の夕方,月が木星と土星に接近しました。雲に覆われていてあきらめていたのですが,幸いなことに一瞬雲が切れました。

DSC_7015 (2)n


◆◆◆
過去のブログの一覧は ここ をクリックすると見ることができます。

💛

DSC_3495 (1280x853)DSC_3464 (1280x853)DSC_3472DSC_8568DSC_4833

 もはや地球は自然科学の真理を追究するには狭すぎる場所となってしまったのかもしれません。
 素粒子論を実証する実験をする加速器を作る場所も,狭い地球上では加速器の大きさに限界があります。同じように,天文台を作るにも,ハワイや南アメリカくらいしか最適な場所は残っていません。そこで,現代科学の粋を集めた巨大望遠鏡がそうした場所に続々と作られ始めました。
 
 私は,これまでに書いたように,かつてアメリカに建設された今や旧式となったパロマ望遠鏡のような巨大望遠鏡は,未だこの目で直に見ていません。
 それに代わる現代の巨大望遠鏡については,南アメリカは遠く行く機会もありませんが,ハワイ島マウナケア山の山頂とマウイ島ハレアカラ山の山頂には行くことができました。
 マウナケア山には日本のすばる望遠鏡をはじめとする12基の観測装置があります。私は,すばる望遠鏡はドームしか見ていないのですが,そのお隣にあるアメリカのケック望遠鏡はガラス越しにその雄姿を見ることができました。マウナケア山は標高が4,200メートル以上もあって,しかも道路は途中が舗装されていないので登るのは困難です。
 一方,ハレアカラ山にはアメリカ海軍やハワイ大学の天文台があって,こちらは標高が約3,000メートルで,しかも,山頂まで道路が舗装されているので楽に登ることも可能で,環境的にはずっと恵まれています。
 有名なマウナケア山には中腹のビジターセンターで星を見る一般向けの多くのツアーがあるので観光客が押しかけるのですが,ハレアカラ山のほうはそうでもなく,現地ツアーと日本のツアーくらいしかないので,むしろ,アマチュアの人が満天の星をみたければ,ハレアカラ山のほうがずっと恵まれています。

 ……と,私はつい先日まではそう思っていました。しかし,南天で星を見てしまうと,その魅力に圧倒されしまい,ハワイでの星空には魅力をなくしました。おそらくそれはプロの学者さんも同じであるようで,日本の国立天文台でも,一時はあれほどすばる望遠鏡の話題が独占されていたのが,近頃の話題は南アメリカ・チリにあるアルマ望遠鏡ばかりです。
 しかし,一般の観光客には南アメリカは遠いので,南天の星空を見るには,ニュージーランドやオーストラリアに行くということになります。

 その中で,ニュージーランドは景色も美しく国自体も広くないので,数日の観光でほとんどの見どころに行くことができるので人気の観光地です。そこに加えて,テカポ湖という星を見るのに絶好の場所があって,星空観察ツアーが観光ツアーに組み込まれているので,脚光を浴びています。私はそうした事情を知らなかったのですが,偶然テカポ湖に行きました。
 テカポの町の近くの山の上にマウントジョンという天文台があります。これは日本の名古屋大学の天文台です。しかし,テカポ湖にはそれ以外にめぼしい天文台がありません。本当に条件がよければ,もっと世界中から多くの天文台が建設されるはずなのです。行ってみてわかったのですが,ここは,天気があまりよくなく,プロが天体観測をするにはあまり適していないのです。

 オーストラリアにも行ってみました。ニュージーランドよりもオーストラリアの方が近いから何もニュージーランドまで行かなくてもいいのではないか,というのがその理由でした。そして,満天の星空に感動しました。実際,一般の人が気軽に南天の星空を堪能するには,オーストラリアが最も適しているようなのです。そこで私も,これからは年に1度はオーストラリアで星を見ようと思っているこのごろなのです。オーストラリアというのは,西側の海岸線に沿ったいくつかの都会以外はめぼしい観光地がないのです。そういった意味では,オーロラを見るくらいしか楽しみのないという点でアラスカに似ています。
 夏のアラスカと冬のオーストラリアは似ているなあ,というのが,両方に行ってみた私の印象です。

このページのトップヘ