私は,アメリカのテレビドラマでは,「ER」と「ザ・ホワイトハウス」(The West Wing),そして,「グッド・ワイフ」がおもしろいと思っています。
病院を舞台にした「ER」は,はじめのころは苦手だったのですが,このブログに以前書いたように,自分がアメリカの病院に入院した経験から非常に興味がわいて,それ以来, このドラマの虜になりました。この「ER」の最終シーズンは15ですが,このシーズン「ER XV」の作品には,数々の哀愁がただよっていて,いつ見ても,涙が出てきます。
今回,これを機にもう一度,このドラマを見直してみました。そして,自分のこれまでの様々な経験,入院していたモンタナ州の病院のこと,このドラマの舞台シカゴに行ったときのこと(写真)などを懐かしく思い出しました。それとともに,私は,自分の人生のこれからのあることを決意しました。それは,また,後日わかること…。
アメリカの映画やドラマは,「マジソン郡の橋」などとともに,アクション物よりも,こうした人間ドラマが特に素晴らしいと思います。
先日のブログで,「ヨブ記」を取り上げたとき,この「ER」について,少し書きました。また,現在NHKBSプレミアムで放送中の「グッド・ワイフ」の第4シーズンには,「ER」でヨブ記を朗読していたアビー・ロックハートを演じていたモーラ・ティアニーさんが登場しています。
そこで,ここでは,モーラ・ティアニーさんについて書いてみたいと思います。
テレビドラマ「ER」でアビー・ロックハートを演じたモーラ・ティアニー(Maura Tierney)さんは,1965年2月3日アメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストン生まれの女優さんです。彼女はニューヨーク大学に入学しましたが,卒業せずに演劇学校で演技を学びました。
アビーは「ER」の第6シーズンに産科の看護師として,はじめて登場しました。アビーは当初はERの中でもサブキャスト的な部分があったものの,シーズンを重ねるごとにメインキャストとして出演していくようになりました。
最終の第15シーズンまでの間に,アビーは離婚し,別れた夫が約束の学費を出してくれないので医学部の勉強が続けられなくなり,アルコール依存症に苦しみ,母マギーと弟エリックとの関係に悩み,アパートの隣人に顔の形が変わるほどボコボコに殴られ,アフリカの伝染病が持ち込まれたERに何日も隔離され,カーターには結局プロポーズされず,妊娠中に銃撃戦に巻き込まれ,ストーカーに家宅侵入されて夫コバッチュを拉致され,アルコール依存症が再発し,モレッティと一夜の過ちをおかし,コバッチュとは離婚寸前まで行き,救急車の爆破事件に巻き込まれる… という破滅的な人生を送ってきました。
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結果としてコバッチュとは離婚をすることなく復縁をすることになるのですが,コバッチュがカウンティーを去るときに一緒に来て欲しいといわれて,コバッチュの元へ行くことを決意するのでした。
こうして,アビーは「ER」最終第15シーズンの第3話でカウンティ―を去っていくのです。
アビーが第3話の冒頭のロッカーのシーンで引用していたのが,神に対する疑念を示したヨブの言葉でした。
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懸命に生きてきた私がなんでこんな苦しい目に遭うのか? という思いがアビーにあって,それがヨブの疑問の声に重なったのでしょう。
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そして,ヨブの疑念に対して神が語りかける言葉が,ドラマの終わりのほうで引用されます。
第15シーズンの第3話は,生きることを決してあきらめなかったアビーにふさわしい素敵な幕切れになりました。アビーがヨブ記を朗読することで,アビーのこれまでの人生が深く美しいものになっています。そして,これからの幸せな人生を予感させているのです。
モーラ・ティアニーさん本人は,「ER」を卒業後「Parenthood」というドラマシリーズへの出演を決めたのですが,パイロット版が完成したところで乳がんが発見されて「Parenthood」を降板せざるをえなくなりました。
乳がん治療を終えたモーラさんが次に出演を決めたのが,ジェリー・ブラッカイマー製作総指揮の法廷ドラマ「ジャッジメントNY法廷ファイル」でしたが,残念ながら視聴率がふるわず,第1シーズンの途中で放送は打ち切られてしまいました。
「グッド・ワイフ」第4シーズン。モーラ・ティアニーさんは,マディ・ヘイワード役でわれわれの前に再び姿を見せました。