【Summary】
Alban Berg's Violin Concerto, subtitled "To the Memory of an Angel", was composed in 1935 in memory of Manon Gropius, who died at 18. The work uses 12-tone technique, with its second movement depicting her struggle and ascent to heaven. Symbolism, like the number 22, is woven into the composition.
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アルバン・ベルグ(Alban Maria Johannes Berg)のヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」(Dem Andenken eines Engels)については,以前,詳しく書いたことがありますが,ここで復習してみます。
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1867年オーストリア・ハンガリー二重帝国が成立し,政治の混乱と凋落によって人々の関心が文化面に向かった結果,「世紀末ウィーン」(Die Wiener Moderne)が起きました。
美術では,「ウィーン分離派」(Wiener Secession)が活動し,グスタフ・クリムト(Gustav Klimt)が出ました。また,グスタフ・マーラー(Gustav Mahler)の妻アルマ・マーラー(Alma Maria Mahler-Werfel)との愛欲を描いた「風の花嫁」で知られるオスカー・ココシュカ(Oskar Kokoschka)がいました。
アルマはグスタフ・マーラーと知り合い,結婚しましたが,グスタフ・マーラーが亡くなり未亡人となったアルマは,画家のオスカー・ココシュカと関係を深めながらもヴァルター・グローピウス(Walter Adolph Georg Gropius)と再婚,ヴァルター・グロピウスとの間にもうけた娘がマノン(Manon Gropius)でした。そして,マノンのことをことのほかかわいがったのがアルバン・ベルクでした。
1935年,マノンが18歳という若さで急死します。
アルバン・ベルクは,この訃報を知ると,ルイス・クラスナー(Louis Krasner)から委嘱されていたヴァイオリン協奏曲を「ある天使の想い出に」捧げるものとして作曲にとりかかります。曲は完成しましたが,敗血症を起こしたアルバン・ベルクはそれから間もなく急逝。この曲は自分自身へのレクイエムになってしまいました。
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この作品では,アルノルト・シェーンベルク(Arnold Schönberg)譲りの12音技法が使われています。第2楽章では,12音技法によってマノンの闘病が描かれ,やがて,激しい死神との戦いの音楽がふと消え失せて,古来の調性による昇天の音楽が演奏されます。
コラールが過ぎ去ると,第1楽章で提示した基本の12音音階が美しく光を放ちながらあちらこちらで天へと昇っていき,最後にヴァイオリンの4つの解放弦の音が鳴り響くのです。
この曲の2楽章の冒頭の死のダンスまでへのカデンツが22小節,コラールも22小節,曲の副題「Dem Andenken eines Engel」は22のアルファベット。22という数字は,マノンの命日から来ています。また,2楽章の最後の和音が18個の音で構成されているのはマノンがこの世を去った年齢を表しているといわれます。
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私は,この曲を聴くのは2度目でした。はじめて聴いたときはよくわからなかったのですが,12音技法がなまめかしく響き,魅力的な曲だなあ,という感じはもちました。その後,ウィーンに行ったり,その折に,アルマやマノンのことを知るにつけ,この曲の深い意味がわかるようになりました。
私はP席にいたので,ヴァイオリニスト竹澤恭子さんの様子がわからないのかな,と思ったのですが,さにあらず,P席というのは,席の勾配が急なので,ステージをよく見渡すことができて,前列の人の頭の影になることもなく,最高でした。音も,もっとバランスが悪く聴こえるのかな,と思っていたのですが,そんなこともありませんでした。それ以上に,臨場感があって,かなり魅力的でした。すばらしい演奏でした。竹澤恭子さんはモバイルの楽譜で見ていたのですが,どこかでだれかが操作しているのか,楽譜が自動的にめくられていくのも興味深かったです。
アンコールは,J.S.バッハの無伴奏ヴァイオリンソナタ 第2番よりアンダンテでした。
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ところで,私ははじめてP席に座ったのに,この感覚はじめてではない,と気づきました。考えてみれば,2023年5月12日に,名古屋フィルハーモニー交響楽団が井上道義さんの指揮でボレロを演奏したとき,ステージ上のオーケストラが指揮者を中央にしてそれをぐるりと取り囲むように配置されたので,一般席でもオーケストラの背後から見る形であったのです。あのときもおもしろかった。
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「しない・させない・させられない」とは
「Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.」とは
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