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「土井竹林」を見終えて,次は昼食です。尾鷲市は港町だから,おいしい魚が食べられると期待しました。イメージしていたのは,海岸沿いにあるこじゃれたレストランだったので,私は,そんな,空想上のレストランをめざして,国道42号線沿いを信号のある交差点まで歩いていました。信号を渡って,尾鷲市の市街地に行くつもりでした。が,信号の手前に「お魚いちば・おとと」という店を見つけました。
「お魚いちば・おとと」は,いわゆる道の駅のようなところで
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2013年(平成25年)の紀勢自動車道の延伸を見据え,2011年(平成23年)に名称に変更し店舗の改装を果たした尾鷲の玄関口にある「おわせお魚いちば・おとと」は,「地場の産品を提供し地域の皆さんに気軽に立ち寄ってもらえるお店」「地元に根ざしたものづくりを強く願う生産者を応援」「地元の観光・物産スポットと連携して情報を発信」の3つのコンセプトを掲げます。
「おわせお魚いちば・おとと」は,水産会社「尾鷲物産」の直売所で,鮮度抜群の魚介類がお値打ち価格で並んでいます。「売り場に並ぶ魚はその日の海の気分しだいです」ということです。また,店内奥にある「おわせ魚食堂」もオススメ! で,とれたて地物魚介類や季節の日替わり惣菜,尾鷲物産自慢の魚が食べられるセルフスタイルの食堂が人気です。
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だったのですが,この時点では,そんなことはまったく知りませんでした。
尾鷲市内には,もっとすてきなレストランがあるのでは? ここでいいのかな? という迷いがありましたが,これまでの旅の経験から,こういう機会を逃すとあとで後悔すると思ったので,食事ができるのならここですまそうと,海岸沿いにある(かもしれない)こじゃれたレストランのイメージを頭から消して,中に入りました。そして,「お魚いちば・おとと」の建物の一角にあった「おわせ魚食堂」で,一番いいものをと「地魚どんDX(デラックス)」を注文していただきました。
これだけのものを,もし,お寿司屋さんで食べたら,かなりの値段です。こうして,新鮮な魚の食事を,今回もまた,期せずして食べることができたのですが,この選択は大正解でした。というのは,尾鷲市内には,海岸沿いのこじゃれたレストランどころか,このような昼食が食べられる店すら1軒もなかったのでした。
昼食を終えて,尾鷲市街地に向かいました。市街地の中心に観光案内所があって,そこでレンタサイクルを借りることができることだけは調べてありました。観光案内所までは結構な距離がありましたが,歩いて向かい,中に入ると,私と同年代の女性の係員がいました。電動レンタサイクルを借り,地図をもらい,見どころを教えてもらいました。
尾鷲市内には何もないけれど,ということで,すすめられたのが「三重県立熊野古道センター」でした。尾鷲市街地からは自転車で10分くらいかかりました。県立の施設ということもあって,立派でした。
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木造建築等断面集積木材構造という世界初の技術で建築されたセンターの常設展示室には,熊野古道と周辺の歴史,自然,文化などの特徴や概要がわかりやすく展示されています。
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私は,野本宮大社,熊野速玉大社,熊野那智大社の熊野三山はすべて車で訪れたことがありますが,熊野古道というのは,名前だけは知っていても,旧東海道や旧中山道,また,四国霊場八十八箇所のようなわかりやすさとは異なって,漠然としていて,あまり興味がありませんでした。また,ものすごく距離が遠く,しかも,坂道や登山道のようで,歩いてみようと思ったこともありませんでしたし,今もそうです。
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古代から中世にかけて,熊野本宮大社,熊野速玉大社,熊野那智大社の熊野三山の信仰が高まり,多くの人々が熊野を参詣しました。現在では,田辺から熊野本宮大社に向かう「中辺路」(なかへち),田辺から海岸線沿いに熊野那智大社,熊野速玉大社へ向かう「大辺路」(おおへち),高野山から熊野本宮大社へ向かう「小辺路」(こへち)が「熊野参詣道」として世界遺産に登録されています。
それ以外の熊野古道である「伊勢路」(いせじ)は,伊勢神宮から熊野三山へ通じる参詣道です。伊勢神宮から熊野速玉大社までの総距離は170キロメートルあります。
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というように,一概に熊野古道といっても多くの道があり,それらは,和歌山県,奈良県,三重県にまたがっていることから,それぞれの県が独自に自分の県にある熊野古道の案内をしていることもあって,私は,これまで,なかかなその全貌がつかめないのでした。
今回訪れた「三重県立熊野古道センター」も,熊野古道センターとはいえ,ほとんどは,三重県に属する「伊勢路」に関する情報だけを提供している施設でした。そして,尾鷲市は「伊勢路」を歩く際の中継地点となっている町でした。しかし,「三重県立熊野古道センター」で解説映像や展示を見て,熊野古道全体についてもかなり理解ができたし,短い距離なら歩いてもいいかな,と思いはじめました。さらによかったのは,係の女性がとても親切だったことです。たくさん質問をしたのですが,わかりやすく教えてもらうことができました。
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「しない・させない・させられない」とは
「Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.」とは