生まれてはじめてひとり旅をしたのが20代のときで,山陰地方を1周しました。このときのことは,今でもずいぶんよく覚えているのに,その次にひとり旅をした東北地方のことはほとんど何も覚えていないのはずいぶんと奇妙なことです。そのとき,おそらく私は,角館と田沢湖に行ったと思うのですが,十和田湖には行っていないような気がしています。というか,田沢湖と十和田湖がごっちゃになってしまっています。
いずれにしても,十和田湖については何も印象がないのだから,今回,ぜひ,行ってみたいと思っていました。
奥入瀬渓谷に沿ってずっと走ってきたのですが,私は,奥入瀬渓谷というのはもっと山深いところだと思っていたので,車ならこんなに簡単にアクセスできることが驚きでした。
この時期は新緑が美しかったのですが,さほど混雑しておらず,快調に走ることができました。しかし,秋の紅葉のとき,この道路がまともに走れるのかどうかはわかりません。
やがて,眼下に十和田湖が見えてきました。十和田湖の湖水が奥入瀬川に注ぐ子ノ口というところで十和田湖畔に出ました。ここには観光地らしいドライブインがあって,駐車場に多くの車も停まっていました。ここから十和田湖の遊覧船が出ているらしいので,それに乗ろうと思ったのですが,チケット売り場で聞いてみるとどうやらそれは間違いで,十和田湖に沿ってさらに南に走っていったところにある休屋(やすみや)という場所が遊覧船の乗り場のようでした。いや,子ノ口からも遊覧船はあるのですが,子ノ口で乗船できる遊覧船は周遊するのではなくて,休屋に行ってしまい,周遊できるのが休屋という場所から出航する遊覧船でした。
そこで,子ノ口から休屋に車を走らせることになりました。
途中の景色を見ると,休業している店や,だれも宿泊していないような民宿,すでに退役したような観光船などが見られ,十和田湖は思っていたほどにぎわっておらず,というか,活気がなく,というか,寂れ感さえあって,私には意外でした。
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青森県と秋田県にまたがる十和田湖は,水深が326.8メートルで田沢湖,支笏湖に次いで日本3位,面積では日本で12番目の湖です。ちなみに面積の大きい順に,琵琶湖,霞ヶ浦,サロマ湖,猪苗代湖,中海(島根県),屈斜路湖,宍道湖,支笏湖,洞爺湖,浜名湖,小川原湖(青森県)と続きますが,風光明媚な湖となると,十和田湖はもっと上位になると思われます。
十和田湖を擁する山地は,カルデラを有する火山群で,約20万年前から約15万年前の十和田火山の噴火活動で中央部が陥没した地形となり,3万5,000年から1万5,000年ごろの巨大噴火で水が流入してカルデラ湖が形成されたものです。
中世は山伏が修行し,江戸時代には南部藩の霊場となっていましたが,1872年(明治5年)に廃仏毀釈運動により,霊山としての十和田湖は大打撃を受けました。
1905年(明治38年)に和井内貞行が十和田湖でヒメマスの養魚事業を成功させました。また,1908年(明治41年)に文人の大町桂月が十和田湖を訪れ,その後,1921年から1923年にかけて周辺を探勝してその素晴らしさを紹介して以降,風光明媚な観光地として知られるようになりました。
湖畔には1953年(昭和28年)に建てられた高村光太郎作のブロンズ像「乙女の像」があって,その台座には国立公園化の実現に寄与した大町桂月,武田千代三郎,小笠原新一の功績が刻まれています。
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2003年ごろには300万人の観光客がやってきたのですが,その後は減少を続けています。
その影響で,宿泊施設や土産物屋の休廃業が相次いで「廃屋通り」とさえよばれるほどの惨状を呈しているのです。それは,もともと団体旅行客が主力だった十和田湖は,観光が個人客に中心にシフトするにつれて施設が対応できないまま陳腐化したものです。
また,湖上には観光用の遊覧船が2航路運航していましたが,2013年に十和田湖観光汽船が経営破綻し,十和田湖遊覧船企業組合を設立しましたが,この航路も2016年に廃止となりました。このときの遊覧船が撤去されず放置されたままになっています。現在は,十和田観光電鉄が定期航路を開設しています。
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休屋に着いたのですが,どこの駐車場があるのかわかりません。みやげ物店で遊覧船のチケット乗り場があったので,店先に車を停めて中に入ってチケットを購入しました。車はそこに停めていいと言われました。あとで知ったのは,少しはなれたところに1日500円の有料駐車場があったのですが,私は得をしたことになります。
遊覧船の出発まで40分程度あったので,「乙女の像」まで歩いて行くことにしました。結構時間がかかったので,これだけ時間があったことで行くことができたのです。
戻ってきたら,乗船時間でした。遊覧船には,団体ツアー客が大勢乗ってきました。さらに,出航直前に修学旅行生が大量に乗船してきて,ちょっとうんざりしたのですが,特に問題はありませんでした。遊覧船が大きかったからです。
天気がよかったので,快適な船旅でしたが,案内はテープが流れるだけでした。海外でこうしたクルーズをすると,肉声で,しかも,アドリブあり,何らかのサプライズありというようにまことに楽しいのですが,日本の観光地には,そうした工夫が不足しているといつも思います。
50分程度の遊覧でした。
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火星,月,金星。
5月24日。
澄んだ夕方の西の空。
ふたご座に火星,月,金星が揃いました。
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「しない・させない・させられない」とは
「Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.」とは