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私の乗った只見線の列車は,午前6時8分定刻に会津若松駅を出発して,吹雪の中を遅れることもなく,ついに,午前9時7分に只見駅に到着しました。
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秘境ともいえる日本の原風景を残していて,「自然首都」をキャッチフレーズにしている只見町(ただみまち)は,福島県の最西端に位置し,日本有数の豪雪地帯です。また,只見川には水力発電のための「大鳥ダム」「田子倉ダム」「只見ダム」などがあって,広大な人造湖を造りだしています。特に「田子倉ダム」は貯水量が5億トンと国内屈指の規模を誇り,周囲の山々と織りなすコントラストは山紫水明の地として観光の拠点です。
町の面積は747.54平方キロメートルで,東京23区よりも広大な面積がありますが,その9割が山林であり,ブナ,ミズナラ,トチノキなどの広葉樹林帯です。
源流を尾瀬とする只見川の流域に集落と農地が集まっています。産業は農業と観光が主で,特に農業では,恵まれた自然条件による米作りと,昼夜の寒暖の差を利用したトマトと花弁栽培が盛んです。
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只見線の主要駅である只見駅は町の中心部にあって,昭和40年代後半まで蒸気機関車C11による貨物列車が運行されていたことから,駅構内には蒸気機関車の進行方向を切り替える人力による転車台が残されていてマニアの羨望となっています。また,臨時運行される観光列車の折り返し地点ともなっています。
2011年(平成23年)の夏に発生した集中豪雨によって,只見駅から会津川口駅までの区間が営業休止となり,代行バスが運行されました。このまま廃線になるのではないかと危惧されましたが,2022年(令和4年)秋,会津川口駅と只見駅間が復旧し,全線運転再開しました。
只見線が存続できるのは,只見線と並行して走る国道252号が,福島県と新潟県との県境付近の六十里越前後の区間で,冬の間は豪雪によって閉鎖となるため,只見線が新潟県に抜ける唯一の交通手段となることにもよります。
列車は,只見駅で午前9時7分から9時30分まで23分間停車します。
8人の乗客は外に出ました。私は,駅舎から外に出てみました。そのとき,列車が来たのを見計らって,只見駅前から,会津田島駅まで行くバスが出発しました。しかし,だれも乗る人はいませんでした。
このバスは商工会議所が運航しているとかで,おそらく観光シーズンであれば,今回の私の旅のように,小出駅まで行って上越新幹線で東京へ戻らずとも,只見駅で下車して,そこからバスを利用して会津田島駅まで行って,大内宿や湯之上温泉などを経由して,会津鉄道,東武鉄道と乗り継いで,東京に戻るのが,絶好の観光コースとなることでしょう。
駅前には家々があったのですが,この雪では,だからといって,どこかに遠出する気にもならず,また,行ってみたからといっても,何かがありそうに思えませんでした。
私は,特にすることも行くところもないので,再び,駅の中に戻って,雪と列車の美しい風景を写真に収めていました。他の乗客も時間を持て余していたので,持っていたお菓子を交換し合ったりして,交流が生まれました。
この駅で運転手が交代しました。さらに,これまではワンマンカーでしたが,只見駅で車掌さんも乗車しました。乗り込んできたのは,すごく元気のよい車掌さんでした。
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「しない・させない・させられない」とは
「Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.」とは