しない・させない・させられない

Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.

USA50州・MLB30球場を制覇し,南天・皆既日食・オーロラの3大願望を達成した不良老人の日記

タグ:名フィル演奏会を聴く

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 東京とは違って,大きなホールがあまりない名古屋では,オーケストラの演奏会のほとんどは,愛知県芸術劇場コンサートホールで行われます。以前書いたように,愛知県芸術劇場コンサートホールは,音はいいのですが,会場までの設計が非常に悪く,狭いエスカレータか込みあうエレベータしかありません。東京のサントリーホールとは段違いです。私はできれば行きたくないところです。
 愛知県芸術劇場コンサートホールができるまでは,金山にある名古屋市民会館しかありませんでした。今から40年ほど前,名古屋市民会館で定期演奏会を行っていた名古屋フィルハーモニー交響楽団の公演によく行ったものですが,今は,ここでは,市民会館名曲シリーズというものを開催しています。また,名古屋市民会館は日本特殊陶業市民会館フォレストホールというよくわからない名称になっています。

 土曜日の夕方,ちょっとのんびりとクラシック音楽を聴いてみたいなあ,ということと,曲目がブルックナーの交響曲第7番ということもあって,2024年5月25日,久しぶりに日本特殊陶業市民会館フォレストホールへ行って,演奏会を聴いてきました。ホールが古いのはいかんともしがたいのですが,それが逆に,昭和のころの演奏会を聴いているみたいで,楽しめました。入り口もロビーも階段も広くストレスがありません。
 開演前のロビーコンサートというものもあって,曲目は,ブルックナーの弦楽五重奏曲の第1楽章でした。
 ブルックナーの弦楽五重奏曲は,弦楽四重奏にヴィオラをもう1本増やした編成です。ブルックナーの弦楽五重奏曲は傑作のひとつで,こころに染み入るものでした。今度は,静かな会場で聴いてみたいと思いました。

 今回の演奏会の指揮は,マティアス・バーメルトさんで,以前,NHK交響楽団の定期公演や第九演奏会でも指揮をした人なので,よく知っています。はじめにNHK交響楽団が招へいしてきて,その後,日本の各地のオーケストラの常任指揮者になる,というパターンがよくあって,マティアス・バーメルトさんも2018年4月から2024年3月まで札幌交響楽団の首席指揮者でした。
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 現在81歳で,時代に流されない誠実さと剛直さを併せ持つ指揮振りと音楽性で「いぶし銀のマエストロ」と世界でたたえられています。
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 正直,カリスマ性はありません。我を出す,というタイプではないように思います。そこで,どういう演奏をしたいのか,という主張が軽薄な気がします。

 曲目は, ワルター・アウアーさんがフルートを演奏する尾高尚忠のフルート協奏曲とブルックナーの交響曲第7番でした。フルート協奏曲は第2楽章がきわめて日本らしい音階ですてきでした。
 ブルックナーの交響曲第7番は,美しい第2楽章,ブルックナーらしい第3楽章のカデンツァはいいのですが,第4楽章がちょっと弱いのが欠点だと私は思っていました。
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 他のブルックナー交響曲の最終楽章に比べると,軽快な親しみやすさにあふれている反面,終楽章が短いと否定的に評されることがあります。また,再現部の主題再現は逆に行われるのでわかりにくいという評価もあります。
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 今回,久しぶりにじっくりと聴いてみて,交響曲第7番は,第2楽章と第3楽章を入れ替えて,第4楽章をなくして,それで終わりにしたらいいのではないか,と思ってしまいました。
 一度,そうして聴いてみよう。

 いずれにしても,週末の夕方,こんな気楽なコンサートを聴くのも悪くありません。
 観客の入りは6割程度でした。
 日本特殊陶業市民会館フォレストホールは,終演後,愛知県芸術劇場コンサートホールのように,狭いエスカレータに乗る必要もないし,NHKホールのように,代々木公園や渋谷の雑踏をかきわけることもなく,帰ることができます。これがいい。
 日本特殊陶業市民会館フォレストホールは,近く建て替え工事をする計画があるそうです。しかし,そうなると,建て替えをしている間,ますます,名古屋でコンサートを聴く場所がなくなってしまうことでしょう。
 終演後,おいしいものを食べて帰宅しました。

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 ブルックナーの交響曲は,マーラーの交響曲に比べれば,形式は古典的なので,わかりやすいです。しかし,それぞれの楽章がかなり複雑で,つねに煮え切らず,だらだらとしていて,次にどんなメロディーがくるのか予測不能なところがあります。まるで,ぐずぐずしているモテない男のようで,女性にブルックナーが苦手,という人が多いのも納得がいきます。
 特に,第5番はそうした煮え切らなさが顕著です。
 私が,これまで第5番をほとんど聴かなかったのもそんな理由からでした。しかし,今回,はじめてまともに聴いてみて,こりゃすごい,ということがやっとわかりました。

 第4番は自然の中を彷徨しているような感じがするのですが,第5番は古びた荘厳な教会を思わせます。奥まったところは暗く,不気味です。
 マエストロ井上道義は,この重厚な交響曲の第1楽章を,ゆっくりめのテンポでありながら重くならず,指揮をしていきました。第2楽章が緩徐楽章で,第3楽章がスケルツオというのは,ブルックナーの第7番までの流儀で,第8番と第9番は,ベートーヴェンの第9番と同じように逆になっています。
 この第5番の緩徐楽章の美しかったこと! まさに,井上道義さんが名フィルとの決別を惜しむかのように聴こえました。そして,第3楽章は,スケルツオとはいいながら,これはメヌエットでもあり,井上道義さんお得意の踊る指揮,ダンスが見られました。
 第1楽章と第4楽章は,同じようにはじまります。まず,これが驚きです。そして,第4楽章は,第1楽章,第2楽章,第3楽章の旋律が出てきてはそれが否定されながら,盛り上がっていくので,伏線回収,ベートーヴェンの交響曲第9番をほうふつとさせます。しかし,これまでの楽章を否定したところで,だから,歓喜の旋律が出てくるのかと,期待しても,何も起きないのです。これこそが,煮え切らないブルックナーなのです。
 しかし,何も起きずとも,これまでの旋律が複雑に絡み合いながら巨大な建築物ができ上って行くのです。そんな第4楽章の盛り上がりが見事でした。

 マエストロ井上道義は第5番をはじめて指揮をしたということなので,演奏し慣れた曲のような,力の入れ方や聴かせどころのツボはわかっていないと思うのですが,それがいい効果を生んでいました。曲の最初から最後まで緻密な演奏だったのです。
 私は,来週は東京で,マエストロ井上道義のマーラーの第3番を聴くことになるのですが,こちらは指揮し慣れたものです。この対比が,いまから楽しみです。

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 2024年3月2日,豊田市コンサートホールで井上道義さんが指揮する名古屋フィルハーモニー交響楽団の特別演奏会が行われたので聴いてきました。これは,井上道義さんが名古屋フィルハーモニー交響楽団を指揮するラスト・コンサートで,曲目は, モーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲とブルックナーの交響曲第5番でした。なお,「ドン・ジョヴァンニ」序曲は,豊田市ジュニアオーケストラとの合同演奏でした。
 このところ,井上道義さんの追っかけをやっているような感じになっていて,つい先日は東京のNHKホールでショスタコービッチの「バビ・ヤール」を聴いたばかりですが,今回はブルックナーです。演奏会のチケットは発売早々に手に入れたのですが,満員札止めとなっていました。私はこの日をとても楽しみにしていました。
 ブルックナーの交響曲は,ブルックナー指揮者という名前で語られるように,齢を重ねたマエストロに似合います。これまでにも,多くのすばらしい歴史的な演奏がありました。しかし,井上道義さんは,特にブルックナー指揮者という感じではなく,多くの作曲家の作品を取り上げています。そんなマエストロが,果たして,ブルックナーをいかように? と興味がありました。

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 ブルックナーの交響曲の中で,第5番は第8番と並んで規模の大きなものです。対位法の技法が活用されていて,音の横の流れを多層的に積み重ねて,壮大な音の大伽藍を築き上げていることに特徴があります。
 第5番は,第4番を完成させた翌年,ブルックナー51歳の1875年に作曲に取りかかり,紆余曲折ののち,1878年に完成しました。しかし,初演の機会に恵まれず,交響曲第8番完成後の1894年になって,ようやく初演されました。すでに老齢であったブルックナーは立ち会うことができませんでした。そして,ブルックナーが亡くなったのは,その2年後のことでした。
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という解説が載っています。

 私は,ブルックナーの交響曲の中では,第4番を最も好んでいて,第5番を聴くことはまれでした。ブルックナーの他の交響曲とは少し趣が異なっているなあ,と思っていたくらいのものでしたが,実は,これまで,根を詰めて聴いたことがないのです。昨年10月,NHK交響楽団の定期公演で,マエストロ・ブロムシュテッドがこのブルックナー交響曲第5番を取り上げるということだったので,そのときに勉強しようと思っていたのですが,演奏会は中止となってしまい,その機会を逸していました。
 さらに実は,何と,井上道義さんがブルックナーの交響曲第5番を指揮したのは,これがはじめてだったという話でした。本当かな? 引退を前にして,やりたいことはみんなやる,という感じでしょうか。
 そんなわけで,私には,とても刺激的な演奏会でした。
 感想は,次回。

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