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●ジャコウウシやらトナカイやら●
 フェアバンクスのダウアンタウンから西に6キロメートルのところにあるアラスカ大学フェアバンクス校(University of Alaska Fairbanks = UAF)は広大な敷地のなかに50を超える建物がある。なかにはテレビ局,消防署,病院まであるし,学生会館の1階にはボウリング場やビリアード,パブ,そしてカフェテリアがある。

 前回書いたように,この日まず私が行ったのはアラスカ大学博物館(University of Alaska Museum of the North)であった。アラスカの自然と文化,歴史に関する展示で有名な博物館で,永久凍土から見つかった36,000年前のステップ・バイソンも展示されていた。
 また,第2次世界大戦当時の日系人に関する展示も充実していた。ハワイでもそうであるが,日本ではこうした日系人についてあまりに知らなさすぎて恥ずかしくなる。そもそも,日本の歴史教育はあまりに的がはずれているのではないだろうか。歴史は権力者の権力闘争や年号をを暗記することではなく,その国で生まれた人たちの生きざまを知ることであるはずで,そうなっていないのは,要するに人をリスペクトしていない,という根本的な問題がその根底にあるのだろう。

 大学の構内には,博物館のほかには,国際北極圏研究所(International Arctic Research Center = IARC)というオーロラ研究施設や,ポーカー・フラット・リサーチ・レンジ(Poker Flat Research Range)というロケット打ち上げ施設もあって,希望すれば見学もできるそうだ。また,ジョージソン植物園(Georgeson Botanic Garden)という植物園や大型動物研究所(Robert G. White Large Animal Research Station)といった動物園もあった。
 私は動物園が面白そうだったので行ってみることにした。大学の構内とはいえ,博物館から原野に続く道を延々と北に6キロメートルも走ったところにそれはあった。

 広い駐車場だったが,駐車していたのは1,2台の車であった。雨が降ってきたが,車を降りて,ともかくなかに入った。アウトドア・ウォーキングツアーというものがあるそうだが,めんどうだったのでそれには参加せず,歩いて構内をまわることにした。
 まず私が対面したのはジャコウウシであった。ジャコウウシ(Ovibos moschatus)はウシ科ジャコウウシ属に分類される偶蹄類であるが,現生種では本種のみでジャコウウシ属を構成する。全身は長く硬い上毛と柔らかい下毛で被われていて,雌雄共に基部から下方へ先端が外側上方へ向かう角があるのが有名である。夏季はツンドラ内の水辺や湿原に生息し,冬季になると積雪の少ない斜面などへ移動する。食性は植物食で、草、木の葉(カバノキ、ヤナギ)などを食べる。
 次に私はトナカイと出会って感動した。トナカイは後にオーロラを見にいったとき深夜の道路をのそのそと歩いているのを目撃した,というより,目の前で出会ってびっくりしたが,その6か月後,私がフィンランドでトナカイの悲しい生態を知ることとなったのを,このときはまだ知らない。