しない・させない・させられない

Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.

USA50州・MLB30球場・47都道府県を制覇し,南天・皆既日食・オーロラ,空の3大願望を達成した「不良老人」の日記

タグ:小川響子

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【Summary】
On January 16, 2026, I attended Nagoya Philharmonic’s 541st concert mainly to hear concertmaster Kyoko Ogawa’s solo debut in Brahms’ Violin Concerto. Although I questioned the program’s conceptual theme, her passionate, dedicated performance proved deeply impressive and unforgettable.

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 2026年1月16日,久しぶりに名古屋フィルハーモニー交響楽団第541回定期演奏会に行きました。
 曲目は,ブラームスのヴァイオリン協奏曲,エルガーの「スルスム・コルダ」(Sursum Corda),そして,エニグマ変奏曲(Variation on an Original Theme for Orchestra "Enigma"=管弦楽のための創作主題による変奏曲「エニグマ」)。指揮は松井慶太さんで,私にははじめての名前でした。ヴァイオリンは,コンサートマスターの小川響子さんでした。松井慶太さんは八戸市出身だそうで,沖澤のどかさんと同郷です。3歳ほど年上で,接点はないみたいですが…。小柄な人が多い日本の指揮者ですが,長身で,なかなかかっこよかったです。
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 2024シーズン急遽代役として定期デビューを果たした松井慶太が満を持して再登場!
 川瀬音楽監督の友人でありよきライバル。英国の大作曲家エルガーが妻や友人をモチーフに描いた交友録「エニグマ変奏曲」。そして,我らがコンサートマスターの小川響子がソリスト・デビューする〈友人たちの肖像〉は会場を温かく包み込むでしょう。
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 私が出かけた理由は,小川響子さんのソロデビューを聴きたかったからで,エルガーの2曲のうち「エニグマ変奏曲」は,以前,NHK交響楽団の定期公演で聴いたことがありますが,特に興味はありませんでした。
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 名フィル第541回定期演奏会〈友人たちの肖像〉で,小川響子がついにソリスト・デビュー‼ 葵トリオのヴァイオリニストであり,名フィルのコンサートマスターとして普段はオーケストラを牽引する彼女が,ソリストとしてブラームスのヴァイオリン協奏曲を演奏します。
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とありました。
 ブラームスのヴァイオリン協奏曲をコンサートマスターの小川響子さんが演奏する,というのがこの演奏会最大のウリです。で,私もそれが動機で聴きにいったわけです。

 ところで,名古屋フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会はいつも何らかのテーマが提案されます。今回は〈友人たちの肖像〉。
 2曲目エルガーの「スルスム・コルダ」は,ラテン語で「心を上げよ」という意味で,聖別されたパンを高く挙げる「聖体奉挙」というカトリックの儀式を意味します。エルガーはこの作品を亡き友人の追悼のために書いたともいわれ,静謐さと祈りのような雰囲気が全体に漂っている「威風堂々」のような,いかにもイギリス,という曲でした。3曲目の「エニグマ変奏曲」の「エニグマ」は古代ギリシャ語の由来で「謎」という意味です。第1変奏は妻アリス,第14変奏はエルガー自身を描き,第2変奏から第13変奏はすべて友人たちが描かれているということです。そこで,この2曲は〈友人たちの肖像〉のテーマにふさわしい…,とのことです。
 そのような説明から,〈友人たちの肖像〉というテーマでエルガーの2曲が取り上げられているのは納得がいったのですが,そこにどうしてブラームス? と私は思いました。その理由は,この曲がブラームスの親友だったヨーゼフ・ヨアヒムの助言を受けながら作曲されたから,ということでした。とはいえ,何ゆえに,ブラームスとエルガーなの? しかも,これらのことは,Xに書かれていたことで,プログラムには何の説明もない。

 私は,名古屋フィルハーモニー交響楽団自体は上手だし,地元のオーケストラだから贔屓にしたいし,演奏会にも行きたいと思っているのですが,演奏会のプログラム構成がどうも私には魅力がなくて,それが演奏会に行く気持ちを削いでいます。
 それは,コンサートにこうしたテーマを掲げることが,小難しく理屈っぽく感じるのもひとつの理由です。お前にわかるか,みたいな上から目線に感じるし,何だからこじつけのような気がします。でありながら,テーマについての説明がない。学校のお勉強でないのだから,もっと気楽に,次の演奏会は好きな曲だな,聴きたいソリストだな,この指揮者ならば行ってみよう,という動機で足を運びたいような曲やソリスト,指揮者の選択にならないものか。来年度のプログラムを見ても,何かひとつ物足りない。
 今回も,エルガーがやりたいのなら,エルガーのチェロ協奏曲を1曲目にして人気のチェリストを招聘してプログラムを組みたてればいいのだし,小川響子さんが演奏するブラームスのヴァイオリン協奏曲を目玉にしたいのなら,後半はブラームスの交響曲にすればいい。おそらく,名古屋フィルハーモニー交響楽団のプログラム作成の担当者がそうしたありきたりのプログラム編成にしたくない人なのでしょうが…。また,こうしたテーマを背景にしたいのなら,それを第一に掲げるのではなく,京都市交響楽団の定期演奏会のように,演奏会の前にプレトークをすればいい。私はそう思います。

 何はともあれ,小川響子さんのブラームスは,「正月返上で練習に明け暮れ,演奏者冥利に尽きる」と本人が言っていたように,曲に対する想い入れがこもっていて,圧巻でした。はじめのうち,かなり緊張しているように見えましたが,一生懸命さが伝わってきて感動しました。観客の反応を見ても「我らの地元・名フィルの愛らしきコンマス」という暖かな感じが伝わりました。アンコール曲は定番,バッハの無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番から第3楽章「ラルゴ」でした。
 カーテンコール時の写真撮影もできるし,終演後にお見送りもしてもらえるし,いい意味で「名フィル」も変わったな,と思いました。チケット代だけがうなぎ上りで,開演前のロビー室内楽もやめてしまって観客との接点がなくなり,お高くとまっているNHK交響楽団も少しは見習いなさい。「カーテンコール時の写真撮影可」を最初にはじめたことだけは評価するけれど,これも近ごろは撮影会の様相を呈してしまっているし。

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【Summary】
I began 2026 by attending a complete performance of Brahms’s violin sonatas at Munetsugu Hall in Nagoya, featuring violinist Kyoko Ogawa. The refined, deeply expressive music left a strong impression. The concert also highlighted the growing presence of outstanding female concertmasters in Japanese orchestras.

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 2026年1月10日は,コンサートのハシゴをしました。ひとつ目は,叶澤尚子さんの「サタデー・モーニング・コンサート vol.24」,そして,ふたつ目は小川響子さんのヴァイオリン演奏会でした。
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 次に聴いたのが,小川響子さんのヴァイオリン演奏会でした。
 場所は名古屋の宗次ホール。定員310人のホールですが,満席でした。ヴァイオリンが小川響子さんで,ピアノが稲生亜沙紀さん,曲目はブラームスのヴァイオリン・ソナタ全曲,といっても,3曲しかないのですが,それをすべて演奏する,というものでした。

 私はブラームスのヴァイオリン・ソナタはこれまで聴いたことがなかったので,聴く前に予習をしました。
 ブラームスは1833年に生まれ,1897年に63歳で亡くなりました。ピアノ協奏曲第1番の作曲が1858年,ピアノ協奏曲第2番が1881年,ヴァイオリン協奏曲が1878年,交響曲は第1番が1876年,第2番が1877年,第3番が1883年,そして,第4番が1885年なので,ヴァイオリン・ソナタは晩年の作品です。
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●ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」
 1879年の作曲で,優しくて抒情的。3楽章構成。
 避暑地で自然に囲まれて作曲した影響で,しっとりとした雨のような雰囲気があります。「雨の歌」とよばれるのは第3楽章に歌曲「雨の歌」(Regenlied)の旋律が使われているからということです。
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●ヴァイオリン・ソナタ第2番「愛の歌」
 1886年の作曲で,明るくて親しみやすい雰囲気。3楽章構成。
 ブラームスが恋をしていたときに書いたから,といわれ,甘くて優雅な旋律が魅力的です。だそうですが,恋をしていた相手はソプラノ歌手のヘルミーネ・シュピース(Hermine Spies)という人だそうです。ヘルミーネ・シュピースはブラームスのお気に入りの歌手で,彼女のために書かれた歌曲の旋律がこのソナタの中に織り込まれているということです。
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●ヴァイオリン・ソナタ第3番
 1888年の作曲で,ドラマチックで情熱的。4楽章構成。
 ブラームスのヴァイオリン・ソナタの最高傑作とわれます。第1楽章ではピアノとヴァイオリンがまるで火花を散らすように対話し,第2楽章ではピアノが深い呼吸のように歌いヴァイオリンがそれに寄り添うように奏で,間奏曲のような軽やかな第3楽章に続き,嵐のクライマックス第4楽章ではピアノが怒涛のように駆け抜けヴァイオリンがそれに食らいついていくという,リズムの切迫感ハーモニーの緊張というようにふたつの楽器がせめぎ合うすばらしいものです。
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 小川響子さんは,ブラームスが好きということで,ソナタ全曲を弾くのが夢だったそうです。私も,このごろ,渋くてこころに染みるブラームスの作品がどれもがとてもいいと思うようになってきました。とりわけヴァイオリン・ソナタは気品があり,すてきな曲なので,聴くのが楽しみでした。
 小川響子さんはのびやかで張りのある音色がすばらしい奏者です。曲に特別な想いがあるというのがにじみ出ていました。今回,一度に全曲聴くことができて,私もとてもしあわせでした。
 アンコール曲は,ブラームスのF.A.E.ソナタよりスケルツォと,シューマンの3つのロマンスより第2楽章でした。F.A.E.ソナタは,1853年にブラームスがシューマンとその弟子ディートリヒ(Albert Dietrich)と共作したヴァイオリン・ソナタで,ヨアヒム(Joseph Joachim)のために書かれたものです。F.A.E.とは、ヨアヒムのモットーである「Frei aber einsam」(自由にして孤独)の頭文字を取ったもので,音楽的モチーフとしてF-A-Eの音を作品に織り込んでいます。ブラームスがかいた第3楽章のスケルツォは,単独でも演奏されるほどの人気を誇ります。
 今回の演奏会の主役である小川響子さんは名古屋フィルハーモニー交響楽団のコンサートマスターです。1年前に愛知県稲沢市の市民会館で,名古屋フィルハーモニー交響楽団のメンバーによる室内楽の演奏会があって,そのときに出演したのを聴きました。
 何とまあ,美しい音をさらりと簡単そうに奏でる人なのだろう,と思っていたら,このごろはAoiTrio(葵トリオ)というピアノ三重奏団でも活躍しているようです。私は,AoiTrio(葵トリオ)は,まだ聴いたことがないので,一度聴いてみたみたいと思っています。また,来週1月16日と1月17日には,名古屋フィルハーモニー交響楽団でブラームスのヴァイオリン協奏曲を弾くということなので,こちらは聴きに行きます。とても楽しみです。

 ところで,近ごろ,オーケストラのコンサートマスターには多くのすばらしい女性がいます。調べてみると
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 京都市交響楽団と札幌交響楽団には会田莉凡さん,読売日本交響楽団には日下紗矢子さん,仙台フィルハーモニー管弦楽団には神谷未穂さん,山形交響楽団には犬伏亜里さん,群馬交響楽団には伊藤文乃さん,新日本フィルハーモニー交響楽団には立上舞さん,日本フィルハーモニー交響楽団には千葉清加さん,富士山静岡交響楽団には大森潤子さん,セントラル愛知交響楽団には島田真千子さん,大阪交響楽団には林七奈さん,関西フィルハーモニー管弦楽団には木村悦子さんと赤松由夏さん,日本センチュリー交響楽団には松浦奈々さん,広島交響楽団には四方恭子さん,北田千尋さん,蔵川瑠美さん,NHK交響楽団にはトゥールーズキャピトル国立管弦楽団から藤江扶紀さんがゲストで。
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という具合ですが,女性のコンサートマスター,華やかでいいです。
 ちなみに,以前は,女性の場合,コンサートミストレス(Concertmistress)とよんでいましたが,今では,性別に関わらずコンサートマスター(Concertmaster)とよぶことが多いです。英語圏では「master」が男性名詞であることから「mistress」が使われたものの,近年はポリティカル・コレクトネス(=政治的正しさ)の観点から「concertmaster」に統一する傾向があり,同様にして,日本語でも「女性でもコンマス」というケースが増えているということです。

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