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前回はマスメディアについて書きました。振り返れば,世の中にあふれかえる情報,そのほとんどは,自分にはいらないものだということがわかりました。
今日取り上げるのは,生活必需品以外のモノについてです。
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昔,本屋さんで,男性向けの雑誌のコーナーに並んでいるのが車関係のものばかりであることに気がついて驚いたことがあります。私は,車は故障せず動けばいいと思っているので,車種とかメカにはまったく興味がなかったのですが,そんな人は例外で,多くの男の人は車が好きなんだということをはじめて知りました。
それは今も同じで,私には,狭く渋滞だらけの日本の道路を走るのに,車にこだわる気持ちがまったく理解できません。高価な車にこだわっているくらいなら,そのお金でほかにいろんなことができるのに,と思ってしまいます。狭い駐車場で大きな車を入れるのに苦労をしているのを見ると,何をしているんだか,と不思議な気がします。
その代わり,私は,子供のころからカメラと天体望遠鏡に興味がありました。これだって,理解できない人にとれば,どうでもいいことでしょう。
しかし,天体望遠鏡はともかく,カメラ好きの人も多いらしく,インターネット上には,やれ,どこの製品がすぐれているだの,新製品が出るだの今度は買いだのといった情報があふれています。天体望遠鏡は,カメラほどではありませんが,これもまた,星好きの人にとっては,関心の的のようです。天文雑誌には天体の話題よりも機材の話題のほうが多いくらいです。
私はお金もないので,趣味として不自由ない必要最小限のモノだけは持っていますが,それ以上のモノを購入したことがありません。新しい製品が出ても,もっぱらカタログを眺めていただけです。
このごろ,ディジタルカメラの売れ行きが芳しくないということで,カメラ業界の将来が心配されています。一応写真が趣味の私も,普段使っているのはスマホのカメラになりました。それで充分に事足りるということもあるのですが,それ以上に,カメラを持って旅に出るのがめんどうになったというのが理由です。これでは趣味失格です。
しかし,スマホのカメラでは写すことができない対象もあるので,カメラ持って出かけることもあります。特に,海外旅行をするときには,どんなカメラを持っていくか毎回悩まされます。なるべく小型でいろんなものが不自由なく写せるのが理想です。ところが,ディジタルカメラの売れ行きが芳しくなくなってきた今,メーカーは高級品に特化しはじめて,私の満足するカメラがどんどんなくなってきました。ほとんどのカメラメーカーは,ミラーレスカメラにシフトしたら,レンズはとんでもなく高価になり,また,ミラーレスになっても思ったほど小さく軽くなったわけでもありませんでした。高性能,高機能であっても,それは,私には必要がないのです。どうやら,カメラは,私の世界から,あちら側,つまり,私の手の届かない世界に行っていってしまったようです。
そうなると,カメラにはまったく興味が失くなりました。
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天体望遠鏡もまた,同様です。現在の天体望遠鏡はパソコンを利用して天体が自動で導入できたり,自働で追尾ができるといったように,確かに,非常に機能がすぐれ,また,光学性能がよいものになりました。もし,そんな機材を十分に活用できる場所に住んでいたら欲しくなってしまうかもしれません。しかし,満足に星も見えないところに住む私は,それを買っていったいどこで使うの? と思ってしまいます。
日本は,晴天率に恵まれず,また,空の暗いところもほとんどありません。これでは,海もないのに潜水艦を買うようなものです。今は行くことができませんが,たとえば,南半球やハワイなどの星のきれいなところに出かけたり,あるいは,国内でも,四国や信州,北海道など,わずかに残る星の美しいところに出かけて,旅先で星を見たり写真を写そうと思えば,三脚も含めて2キログラムほどのポータブル赤道儀で事足りるし,大きなものは持っていくことすらできないのです。
このように,現実を知らなかった子供ころには欲しいと思ったものも,そんな現実を知ってしまうと,いまさら新しいモノを欲しいとも思わなくなってしまいました。
私のような世代は,子供のころには,大人になったらなんとかに手に入る程度のほどほどの優れたモノががたくんあったので,いつかはそれを手に… と,恋に恋するように憧れていたものです。このような状況が一番幸せだったのかもしれません。それに比べると,今の若い人には,そうしたモノがまったくなくなってしまったので,気の毒です。
昔より性能は優れていても,一般の人が少し無理をすれば手に入れることができるほどの手ごろなモノがないのです。普通の車を買いにいったらトラックしか売っていなかったというような感じです。いくら性能がよいからといって,たかが趣味なのに,カメラも天体望遠鏡も,それが車1台ほどの値段がしては,車のように毎日使うモノとは違って,たかだか月に1,2度の使用頻度では手が出ませんし,それをいつも活用するような場所もありません。置き場所もありませんし,要らなくなったときに廃棄するにも困ります。また,そんな高性能のモノはプロでない限り必要がなく,もはや,アマチュアが楽しむ世界ではなくなってしまったのです。
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私には,何十年も前の,私でも手に届くころに買ったモノで今も十分満足だし,愛着をもって使えます。当然,今のモノにくらべたら性能も劣りますが,だからといって,困るほどのこともありません。仕事ならともかく,趣味であれば,その不便さこそが楽しいものです。だから,現在のような,新製品が高価で手に入らないという状況は,それを手に入れようという邪気が起きないだけより好ましいのです。その結果,お金を散財することもなく趣味に没頭できるというものだから,むしろ,心落ち着く日々が過ごせるのです。
今の若い人の多くは車にも興味がないというし,こんなことでは,ますますモノは売れますまい。



