しない・させない・させられない

Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.

USA50州・MLB30球場を制覇し,南天・皆既日食・オーロラの3大願望を達成した不良老人の日記

タグ:松田華音

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 私が神奈川フィルハーモニー管弦楽団のことを知ったのは,コンサートマスターが石田泰尚さんであることからでした。以前,神奈川フィルハーモニー管弦楽団はさまざまな問題をかかえていたようでしたが,現在はとても人気があって,企業努力をしているというか,好きだという人が少なくありません。そこで,今回,聴くことを楽しみにしていました。できれば,この日のコンサートマスターが石田泰尚さんだったらいいなあ,と思っていたので,そうであることを知って,やったー,と思いました。
 今回の会場は横浜みなとみらいホールというところでしたが,はじめて行きました。というより,横浜に久しぶりに行きました。もっと気候のよい時期なら,コンサートのついでに時間をかけて街歩きを楽しむのですが,この時期ではその気もなく,単に演奏会を聴くだけにしました。
 新幹線を新横浜駅で降りましたが,そこからどう行くのかがわかりません。何とかiPhoneの情報で乗り換えながら,みなとみらいにたどり着きました。この日は土曜日だったので,すごい人でうんざりしました。ともかく人の少ないカレー屋さんで昼食をとり,会場に行きました。なんだか,いつも昼食でカレーを食べているようです…。

 みなとみらいホールはすばらしい会場でした。東京やその近郊にみなとみらいホールに限らずすばらしい会場が多くあって,うらやましい限りです。しかし,もし東京に住んでいたら,コンサート三昧で金欠病になってしまうから,気に入ったものだけを聴きに出かける今の状況のほうがいいのかもしれません。
 演奏会では,まず,プレイベントがありました。打楽器奏者の平尾信幸さんが今回で最後で,新しく金井麻里さんが入団したということで,このふたりでの演奏でした。これだけでもお得感がありました。
 そのあとではじまった演奏会もまた,本当にすばらしいものでした。こんなに興奮したコンサートはこれまでにありませんでした。曲によって照明の明るさを変えたり,いろいろと工夫が凝らされていました。
 最後,恒例になったカーテンコールでは,ピアノを弾いた松田華音さんまで引っ張り出してきたり,あげくには,ステージ上で打楽器奏者たちと記念写真を撮ったりと,そのお茶目ぶりが楽しかったです。
 実は,その裏では,井上道義さんのブログに
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 今回神奈川フィルとのコンサートは40年前からの持病の尿路結石を引き金とする諸々の体調不全で風前の灯,でも自分でも意味不明な情熱があり何とか無事終わることが出来た
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とあって,私は,この演奏会がキャンセルになるのではないかと心配していたのですが,聴くことができてほっとしました。マエストロは病院からやってきて演奏会が終わってまた病院に戻っていったらしいです。まさに命懸けだったのです。

 すっかり満足して会場を出ると,団員さんたちのお見送りまでありました。
 今回神奈川フィルハーモニー管弦楽団の演奏会に来て,その人気の秘密がわかったような気がしました。神奈川フィルハーモニー管弦楽団の演奏会のチケットはシニア割もあるし,楽しかったなあ,また来たいなあ,と思うものでした。NHK交響楽団もお高く留まっていないで少しは見習ってほしいものです。
 余韻冷めやらぬ中,横浜駅で夕食をとって,新横浜駅から新幹線に乗って帰宅しました。新横浜駅のホームで列車が来るのを待っていると,突然の雷雨。しかも,これまで体験したことがないような豪雨がホームの屋根や反対側に停車した新幹線を叩きました。まるでこの日に聴いた伊福部昭の音楽のようでした。
 この日に乗った新幹線は,行きも帰りもN700Sでした。

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 選曲のいきさつは知りませんが,井上道義さんは,様々なオーケストラとの最後の共演に際して,そのオーケストラにもっともふさわしい曲を当てているような気がします。神奈川フィルハーモニー管弦楽団との最後の共演は,フランスものを2曲と伊福部昭が作曲したものを2曲選びました。

 前半の,だれもがきっとどこかで聞いたとこがあると思われる馴染みのフランスものは,夢見心地になるファンタジーあふれた音楽ですが,こういう曲こそ,どれほど味のある演奏をするか,それとも,単にスコアをさらっているような味も素っ気もないものになるかで,聴く側が曲に入り込めるかどうかが決まるというものです。だから,こういう曲をアマチュアのオーケストラがやってはいけません。
 今回の演奏は,やはりプロというか,まことにすばらしいものでした。
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●管弦楽のための狂詩曲「スペイン」(España, rapsodie pour orchestre)
 シャブリエ(Alexis-Emmanuel Chabrier)が1883年に作曲した管弦楽曲です。
 シャブリエは作品の数が極めて少なく,演奏されるのはこの狂詩曲と「楽しい行進曲」など若干の作品のみです。この作品はシャブリエがスペインを旅行した際の情熱的な音楽の印象をもとにして作曲されたといわれています。
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●ドビッシー「夜想曲」(Nocturnes)
 ドビュッシー(Claude Achille Debussy が1897年から1899年にかけて作曲した管弦楽曲です。 
 「雲」「祭」「シレーヌ」の3曲からなる組曲となっています。

 後半は,「ゴジラ」で有名な伊福部昭のふたつの作品です。
 前回書いたように,2021年12月に井上道義さんが指揮をしたNHK交響楽団の公演の曲目は,前半がショスタコーヴィチの交響曲第1番で,後半が松田華音さんがピアノを弾いた伊福部昭の管弦楽のための「リトミカオスティナータ」と「日本狂詩曲」で,この日の後半の曲目がこれと同じものでした。
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●ピアノと管絃楽のための「リトミカオスティナータ」(Ritmica ostinata per pianoforte ed orchestra)
 伊福部昭が1961年に完成し,1969年に最初の改訂,次いで1971年に改訂した1楽章形式のピアノ協奏曲です。
 「リトミカオスティナータ」とは「執拗に反復する律動」という意味で,五拍子や七拍子といった日本語の韻文の奇数律動の反復を基礎として六音音階による旋律が展開するという楽曲。中国で見た四方の壁全面に仏像がはめ込まれた堂の迫力と感動が創作のヒントとなったといいます。
 かなり高度なピアノの技法が必要であり,体力が必要であるとしろうとの私は思うのですが,これを楽しそうに弾きこなしてしまう松田華音さんがすてきでした。また,いつものように,ソリストと対決するような井上道義さんの指揮がすごい迫力でした。
 この曲は,どこかしこに「ゴジラ」が潜んでるみたいで,それが突然現れてくるのです。
 松田華音さん,華音と書いて「かのん」とはなんとすばらしい名前でしょう。それにしても,先日聴いたヴァイオリンの服部百音さんもそうですけれど,生まれたときから親の期待を一身に受けて音楽家をめざしたような名前ですが,その重責たるやいかに…。
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●日本狂詩曲(Japanese Rhapsody)
 伊福部昭はじめての管弦楽曲で,1935年に完成した2楽章形式の曲です。狂詩曲というのは自由奔放な形式で民族的または叙事的な内容を表現したものです。演奏時間は約15分と短く,かつ,ノリのよい曲で,ピアノと管絃楽のための「リトミカオスティナータ」の酔い覚ましとして,また華々しいフィナーレには最適な曲でした。ビオラのソロがなまめかしく魅力的でした。
 外山雄三が1960年に作曲した「管弦楽のラプソディ」という曲がありますが,日本らしいという点でよく似ています。「管弦楽のラプソディ」のほうが作られたのは後ですが…。
 私は若いころは,このような曲がクラシック音楽といえるのかな,と思ったのですが,若気の至りでした。スメタナの「わが祖国」やシベリウスの「フィンランディア」などと同様,日本人の作曲するものは,こうした日本らしさがあるべきだと,今は思います。

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Buck Moon 2024.

55年前人類が月を歩いた日です。
写真は7月20日の月とスミソニアン航空宇宙博物館に展示されている月着陸船です。
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 2024年7月20日。神奈川フィルハーモニー管弦楽団みなとみらいシリーズ第397回を聴きました。
 この演奏会は,井上道義さんと神奈川フィルハーモニー管弦楽団との最後の「狂」演で,曲目は, シャブリエの狂詩曲「スペイン」,ドビュッシーの夜想曲,松田華音さんがピアノを演奏する伊福部昭のピアノとオーケストラのための「リトミカオスティナータ」,そして,伊福部昭の「日本狂詩曲」でした。
 この演奏会に出かけた理由は,指揮が井上道義さんということと,一度聴いてみたかった神奈川フィルハーモニー管弦楽団ということと,曲目に以前NHK交響楽団の演奏会で取り上げられたのと同じ伊福部昭のピアノとオーケストラのための「リトミカオスティナータ」と「日本狂詩曲」だった,ということでした。
 演奏会のことは次回書くとして,今年2024年12月30日で引退する井上道義さんですが,私は,この先,井上道義さんの指揮をする演奏会に行く予定はなく,これが私にとっても最後ということで,今日は,これまでに聴いたさまざまな演奏会についてまとめておくことにします。

 1986年(昭和61年)に放送されたNHK教育テレビ「NHK趣味講座・第九をうたおう」という番組の担当講師が井上道義さんで,私はテキストを購入して興味深く見ました。それまで井上道義さんのことは知っていましたが名前くらいのものでした。
 「第九をうたおう」というのは,もちろん,ベートーヴェンの交響曲第9番の第4楽章のことで,私も多くの人と同じように,一度は第九を歌ってみたいと思ってこの番組を見ました。しかし,この番組で,第九を歌うというのは並大抵のことではないということがわかって,それ以降,歌ってみたいという願望は大それたことだと悟り,その夢をあきらめました。だから,番組がアダになった,ともいえるのですが,決してそうではなく,クラシック音楽のすばらしさと奥深さ,井上道義という指揮者の偉大さ,そして,こうした高貴なものに私のようないい加減なしろうとは足を踏み入れてはいけないということがわかったというだけでも,見る価値がありました。

 その後,井上道義という指揮者のことは忘れていたのですが,すばらしいマエストロであると私が意識したのは,2020年12月5日に行われたNHK交響楽団 12⽉公演,指揮井上道義さん,ピアノ松田華音さんで,伊福部昭のピアノとオーケストラのための「リトミカオスティナータ」を演奏したものを翌年3月7日にNHK Eテレクラシック音楽館で放送されたものを見てからでした。これは,今回私が聴いたものと同じ曲目です。
 これ以降,井上道義という指揮者にすっかりはまってしまい,何とかライブで聴いてみたいと思っていたのですが,2022年NHK交響楽団の定期公演11月のAプログラムでやっとそれが実現しました。そして,それを機会に,NHK交響楽団の定期公演を越えて,井上道義さんの指揮する様々な演奏会を聴くために,西に東に通いはじめたのです。
 これまで私が聴いた演奏会は,そのどれもが話題となるすばらしいものでした。

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