しない・させない・させられない

Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.

USA50州・MLB30球場を制覇し,南天・皆既日食・オーロラの3大願望を達成した不良老人の日記

タグ:皆既日食

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 突然ですが…。
 2035年9月2日,何とこの日は日曜日なのですが,日本で皆既日食が見られます。
 日本国内で見られる皆既日食は,2009年7月22日以来26年ぶりであり,また,日本列島で見られるものとしては,1963年7月21日に北海道で見られて以来72年ぶり,さらに,本州では1887年8月19日以来148年ぶりとなります。
  ・・
 この皆既日食の皆既帯の幅は約100キロメートルですが,皆既継続時間は約3分と短いものです。皆既帯が日本を通る場所は,能登半島から長野,前橋,宇都宮,水戸といった都市です。また,皆既となるのは午前10時ごろで,夏なので太陽高度は53度もあります。また,皆既中は黒い太陽の左には明るい金星も肉眼で見えます。

 子供のころ,図鑑などでさまざまな天体現象を知ったのですが,皆既日食やら流星雨やら,日本ではそのほどんどが見られないんだなあと落胆したものです。それも当たり前の話で,それは面積が狭い国だからです。
 その後,私は日本にこだわる気持ちもなくなり,世界中,天体現象を求めて飛び回りました。
 皆既日食もまた,1999年のハンガリー,2017年のアメリカと,2度も見ることができました。皆既日食は,なにせ,その日の天気が悪いとそれでおわりです。そこで,皆既日食が見られるかどうかはすべて運次第ということになりますが,これもまた,自分でも怖いくらいの強運の持ち主の私は,いずれも晴れました。特に,2017年は雲ひとつない快晴でした。
 ところで,2009年に日本で見られたといっても,それは沖縄のことでした。多くの人が海外に出かけるより高価なツアーに参加して見にいきました。私とは違って,本人曰く「まったく運のない」という友人もそのひとりでした。私は,どうせ雨だろうと思ったので,この皆既日食には関心がなく静観を決めこんでいましたが,その予想は当たってしまいました。

 今日の話題は「見てみたいけれど」なのですが,実は,私は2035年の日本列島横断皆既日食を見てみたいわけではないのです。皆既時間も短いし、また,いつものとおり,この国で何がしかのイベントが起きると,日ごろはそんな趣味のない人までが殺到して,ごった返し,また,何事も金,金,金,… とばかりに,それに便乗したわけのわからないモノを売ろうとするビジネスやら,いいかげんな情報を書くマスコミが闊歩するのは間違いないからです。
 そんな騒ぎに巻き込まれたくない。ということで,私が「期待」しているのは皆既日食ではなく,それとは別のあることなのです。
  ・・
 地図を見るとわかるように,この皆既日食の皆既帯は,みごとに東京を外しているのです。それも,ほんのわずかだけ…。これが意味するのは,この日,東京から皆既日食を見ようと,大量の人たちがわずか数キロメートル北をめざして移動するということです。はじめに書いたように,この日は夏休み最後の日曜日なのです。
 1999年,ハンガリーで皆既日食を見たとき,そのときもまた,皆既帯は首都ブタペストを少しだけ外していたので,大量の人たちが首都脱出を試み,そのために,戒厳令が出たほどでした。高速道路は大渋滞,ペットボトルが高騰しました。おそらく,日本ならそれ以上のとんでもない大渋滞と混乱が引き起こされることでしょう。
 私が密かに「期待」しているのは,つまり,「見てみたい」のは,実は,その日,日本人が大騒動をする姿なのです。

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◆◆◆
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💛
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☆☆☆☆☆☆
 私はこの皆既日食観察の旅に出発する1月前くらいまではすっかりお任せで,現地のことはまったくわれ関せずでした。ところが,皆既日食の当日,皆既帯あたりの交通事情ががどのような状況になるのか意見が分かれ,ひょっとしたら大渋滞になって皆既帯にいくことすらできないののではないか,あるいは,こんなのどかなところのどこが渋滞するのか? といったさまざまな意見があって,予測不能でした。
 そこで,当日の渋滞を避け,2日前に皆既帯のどこかに到着して2日間キャンプをし当日を迎えることになったのですが,そのころにはすでにどこのキャンプ場も予約が一杯という有様で,かなり憂慮しました。やっとの思いで見つかったのが,アイダホ州ワイザーという町の広場,ここはもともとはキャンプ場ではなかなったのですが,皆既日食観察者のために,臨時に解放された場所だったわけです。

 この旅は,8月16日にシアトルに到着しワシントン州を観光してから,19日の午前中までにワイザーに行くことにしていました。18日はアイダホ州のルイストンという町のホテルに泊まっていたので、そこから南に3時間かけて,ワイザーに向かいました。ルイストンからワイザーまでは国道95をひたすら走れば到着します。私はこの道ははじめて走ったのですが,とても風光明媚なところでした。ただし,数箇所工事をしていて,片側交互通行になっていましたが,まったく渋滞などしませんでした。
 こうして3時間ほどの快適なドライブでワイザーに到着すると,すぐにめざすキャンプ場が見つかりました。
 ここは日本のオートキャンプ場とはまったく違い,ものすごく広く,ここも予約で一杯になったという話だったのに,ずいぶんと余裕がありました。トイレも設置されていました。お昼間はさすがに日差しはきつかったのですが,湿度が低いので,日陰に入れば快適でした。テントも風通しさえよければまったく問題はありませんでしたし,アメリカのこうしたキャンプ場のよいのは,まったくごみがないことと,虫がいない,セミも鳴かないということです。さらに,ここは山の中のキャンプ場とは違い,町中の川辺りだから,車で5分も行けばワイザーの小さなダウンタウンにあるマクドナルドに行くことができるから,Wifiは繋がるし,ダウンタウンにはレストランさえありました。

 私は,こうした場所で2日間を過ごし,当日を迎えることになったわけです。
 連日,雲はあるものの,太陽が覗く天候が続いていました。到着した日の晩は星がとてもきれいでした。しかし,皆既日食前日の晩は一面雲が覆っていて星も見えませんでした。しかし,天気予報では皆既日食当日は午前4時ごろには雲もなくなり快晴という予報に,信じられない気持ちでした。こうして当日を迎え,私は今回の日食を楽しむことができたのでした。

 ところで,今回の皆既日食で私が持っていったのは,カメラ用の三脚に自由雲台,それにMILTOLという名の焦点距離400ミリf6.7の望遠レンズにニコンD5300 でした。
 アメリカまで持っていくので,重い機材は避けようと思い工夫しました。天文ファンの多くは,星を見ること以上に機材に凝っている人や,日食のために新たに機材を購入する人も少なくないのですが,私はそういう財力もなければ興味もありません。1999年にハンガリーまで皆既日食を見にいったときは,今も使っているPENTAXの75センチ屈折望遠鏡を持っていったのですが,重く,それにアメリカの乱暴な預け入れ荷物の扱いでどうなるか心配だったので,今回は,できるだけ軽くそして安く実用に耐える,また,普段でも太陽を撮影できる機材を探しました。そうして見つけたのが販売価格40,000円程度のMILTOLでした。皆既中はフィルターは不要なのでが,太陽が欠けていく間は減光フィルターをつける必要があります。フィルターは1999年の皆既日食で使ったものでしたが,ねじ込みだと脱着がたいへんなので,簡単に取り外しができるようにそこだけ工夫しました。

 使ってみて後悔したのが雲台で,自由雲台では追尾がたいへんでした。これはポラリエを持っていくか,あるいは,ポラリエを三脚に固定するための極軸微動雲台を持っていくべきでした。そこだけが失敗でしたが,それでもなんとか,思った以上の写真を写すことができたので満足しました。この失敗を「次回」に生かすにも,その「次回」というのががあるのやらないのやら……。

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☆☆☆☆☆☆
 では,今日からは,今回の日食について書いてみましょう。
 私は今回の皆既日食の皆既帯に近いアイダホ州マウンテンホームに親類が住んでいるので,何年も前からこの日食を見にいくのをとても楽しみしていました。そんなわけで,今回の皆既日食のアイダホ州での皆既帯あたりはなじみのあるところだったので,何の苦もなく,晴れさえすれば見ることができるはずでした。
 それよりも心配だったのは,現地がどれほど混雑するだろうか,そして,アメリカに行く航空券自体,皆既日食のころは世界中から観光客が殺到するから買うことができるだろうか,ということでした。そこで,ともかく,半年前,航空券の発売日当日に成田からシアトルまでのチケットだけ手に入れました。シアトルに着いてしまえば,あとは,車であろうと,飛行機であろうと,容易にアイダホ州まで行くことができるからでした。

 私はまったく興味がありませんでしたが,当然,日本からは日食観察ツアーが企画されていて,広告を見ると,それらは50万円から100万円といった法外な値段がつけられていました。しかし,アフリカや南極ならともかくも,アメリカごときに50万円も出して行くなんて,私には理解しがたいことでした。
 今回,行ってみてわかったのは,シアトルからレンタカーを借りてワシントン州を東にインターステイツ90を走り,途中のエレンスバーグでインターステイツ82に乗り換えてリッチモンド,そこから国道12を通ってワラワラまで行くと6時間,そこで宿泊し,当日の朝,ワラワラから州道11を経由して,インターステイツ84をひたすら南に2時間ほど走って皆既帯まで達すれば,簡単に皆既日食を観察できたことでした。
 ワラワラという美しい町はものすごくホテルが安くて,6,000円も出せばシアトルで20,000円ほどするホテルよりも立派な部屋が確保できました。そうすれば,シアトルまでの航空運賃とレンタカー代とワラワラでの宿泊代すべてを合わせてもツアー旅行で設定されたような4泊6日程度の日程なら15万円でお釣りがくるということでした。

 私は,偶然,結果的にそれとほぼ同じコースをとりましたが,ワラワラではなく,ワラワラからさらに2時間ほど東に行ったルインストンからアイダホ州に向かうことになりました。ルイストンから南に走ってアイダホ州のワイザーまでは3時間でした。そして,ワイザーで2泊3日,皆既日食のために開放されたにわかオートチャンプ場でキャンプをして,快晴のなかで皆既日食の観察に成功しました。
 このコースのよかったのは,付近に大きな都会がないので到着するまでまったく渋滞していなかったこと,そして,日本人のツアー客がいなかったことです。ワイザーという町は人口が7,000人ほどで,それでも,町のハイスクールでは日食を記念したフェスティバルが行われたりしていて,華やいでいました。アメリカではこういう小さな町が治安もよく,一番落ち着くわけです。それが今日の3枚の写真です。
 当日,どのくらい混雑するのかは全く予想ができなかったのですが,数日前に,テレビや新聞でオレゴン州では皆既日食を見にいく車で大渋滞という誤報が流れ,とても心配しました。しかし,実際には,それはオレゴン州で合法であるマリファナの販売が行われて,それを手に入れるための車の列でした。当日は,確かに車は多かったのですが,心配するような渋滞は起きませんでした。
 渋滞といえば,皆既日食後,私がワイザーの町を抜けるのに30分程度かかったことくらいでした。ワイザーを出てからワラワラまで戻るのにインターステイツ84を北上したのですが,さらに,この道路で2度ほど大渋滞に出会いましたが,それは,皆既日食観察帰りの車というよりも,道路工事による渋滞でした。アメリカではインターステイツの1車線をふさいで工事をするときには別に1車線が作られるのが普通ですが,それをしないオレゴン州はとんでもない州だということだけを私は認識することになりました。

 今日は最後にふたつ地図を載せましたが,上の地図は今回の皆既帯を示すものです。日本からカンザスシティなどに出かけて曇った人もいるみたいですが,この時期に天候が不安定で急変する中南部に行くなんて! と私は思いました。そんな場所を選ぶのは,よほどアメリカを知らない人でしょう。しかし,晴天率の高いアイダホ州やオレゴン州であっても,この皆既日食の翌日から山火事が起きて,太陽すらまともに見られなくなってしまったことを考えると,この日,真っ青な空が見られたのは幸運でした。
 また,下の地図は,2024年4月8日に,再びアメリカで見ることができる皆既日食の皆既帯です。今回の皆既日食を考えれば,さらにだだっ広いテキサス州が渋滞するとは思えませんから,私がこの皆既日食を見にいくとすれば,テキサス州のサンアントニオから北上するコースを選ぶでしょう。ジョンソン元大統領の生まれ故郷であるジョンソンシティという美しい町もあります。テキサス州は晴天率も高いし,このあたりの皆既帯帯はどこも大草原なので,どこでも観察することができることでしょう。幸い4月ならハリケーンも心配ないことですし。このあたり,すでに4月はかなり暑いんですが,真夏ほどではありません。

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☆☆☆☆☆☆
 では,皆既日食はいつ起きるのでしょう?
 皆既日食に周期性はありませんが,21世紀に起きる皆既日食を数えると75回あるので,平均すると1.33年に一度ほど起きることになります。しかし,皆既日食の中でも同じような皆既日食が約18年の周期で見られることが古くバビロニアの時代から知られていて,これを「サロス周期」といいます。その周期に属する次の皆既日食は経度において約120度西にずれた場所で起こります。
 今回,このブログを書く機会に,過去に起きた皆既日食とこれから起きる皆既日食を調べてみました。
 ところが,21世紀以降に世界で起きる皆既日食についてはさまざまな情報の書かれたサイトがたくさんあるのですが,過去に起きたものについては,「日本から見ることができた日食」といった限定の資料が多く,世界規模のものがなかなか見つかりませんでした。私は,今更,星の世界の話で日本限定でもないと思うのですが……。それととともに,過去に実際起きたとき,その場所の天気がどうだったかという資料となると,ほとんどありません。どの皆既日食も天気次第で,運のよい人は見ることができただろうし,運の悪い人はせっかく出かけても雲の上の日食に涙したに違いありません。しかし,残っている資料は,晴れた場所に行って撮ることのできた写真ばかりです。

 そこで,過去に起きた皆既日食を,手元にあった1968年からの天文年鑑で調べてみました。
 そこで私が最も驚いたことは,たとえどんなに辺鄙なところで皆既日食が起きても,そこに出かけていって写真を撮ってきている人がいるということなのです。私に言わせれば,「たかが皆既日食」で,しかも晴れるかどうかもわからないのに,決して安くない大金はたいてまでそこへ出かける情熱というか……,これもまた日本人らしい話です。
 おそらく,そういう人は,日食を口実に,めったに行くことのできない場所の観光旅行をも楽しんでいるのでしょう。それらの多くは,個人ではとても行けそうにないところであり,ツアー旅行すらなさそうなところだからです。
 次にあげるのは過去に起きた皆既日食です。
  ・・・・・・
  1968年9月22日・北極付近
  1970年3月8日・アメリカ合衆国東海岸線沿い
  1973年6月30日・アフリカ中央部横断    
  1974年6月20日・南極付近の海上
  1976年10月23日・南極海上,オーストラリア
  1977年10月13日・太平洋上
  1979年2月26日・カナダ
  1980年2月16日・アフリカ,インド
  1981年7月31日・ シベリア
  1983年6月11日・インドネシア
  1984年11月23日・南太平洋上
  1985年11月12日・南極
  1987年3月29日・大西洋上,アフリカ
  1988年3月4日・インドネシア
  1990年7月22日・シベリア北限
  1991年7月12日・ハワイ,メキシコ,南アメリカ ●
  1992年6月30日・大西洋上
  1994年11月3日・南アメリカ,大西洋上
  1995年10月24日・インド,タイ ●
  1997年3月9日・ロシア,アラスカ
  1998年2月26日・太平洋上,パナマ,大西洋上
  1999年8月11日・ヨーロッパ横断,インド ●
  2001年6月21日・アフリカ
  2002年12月4日・南アフリカ
  2003年11月24日・南極大陸
  2005年4月9日・南太平洋上
  2006年3月29日・ アフリカ,中央アジア,モンゴル
  2008年8月1日・シベリア,中国
  2009年7月22日・アジア,日本,ハワイ ●
  2010年7月12日・イースター島,南太平洋上
  2012年5月21日・(金環日食)日本 ◉
  2012年11月14日・南太平洋上
  2013年11月3日・アフリカ中央部
  2015年3月20日・イギリス西海上
  2016年3月9日・インドネシア,太平洋上
  2017年8月21日・アメリカ横断 ●
  ・・・・・
 この中で,私は1999年と2017年(このふたつはサロス周期だ!)に狙いを定めていました。このふたつの日食を前回書いたように数十年前から行くことにしていました。そして,実際出かけて,ともに美しい皆既日食を見ることができましたが,1999年の皆既日食はツアーで行きました。今の自分なら個人旅行をするのでしょうが,当時はそんな能力もなく,また,そのころの皆既日食ツアーは今のように高価ではありませんでした。
 このときにツアーに参加した人に聞くと,その多くは,1991年のハワイと1995年のタイの皆既日食にも出かけていたようです。今の私が考えれば,このふたつは個人でも手軽に行くことができるものでしたから,私がそれを見送ったのは単に無知だったということになります。そして,1991年のハワイは晴天の確率が高かったのにもかかわらず残念ながら曇り,1995年のタイは完璧に晴れたのだそうです。
 この一覧表で特筆すべきものは,2009年に日本でも見られたものです。しかし,日本とはいえ,皆既帯は鹿児島の南,南西諸島だけで,このときは雨になったので,地上からは見ることができませんでした。私は,はじめっからこの日食には興味がありませんでした。それは,雨季の南西諸島では条件が悪すぎたからです。この日食を見るためのツアーもありましたが,海外に行くのと値段が変わらず,私は,これでは日本で起きる意味がないなあ,と思ったことでした。
 また,この表は皆既日食だけを取り上げていますが,例外として,2012年のものだけは皆既日食ではなく金環日食です。それは,日本,特に私の住んでいるところで見られたという金環日食だからです。この日,早朝までの雨が奇跡的に上がり,金環日食が起きたときは晴れていて,私は,金環日食を生まれてはじめて見ました。
 こうして,私は,これまでに皆既日食を2回と金環日食を1回見る機会に恵まれました。

 さて,次にあげるのはこれから起きる皆既日食です。
  ・・・・・・  
  2019年7月2日・チリ,アルゼンチン
  2020年12月14日・チリ,アルゼンチン
  2021年12月4日・南極大陸
  2024年4月8日・メキシコ,アメリカ,カナダ ●
  2026年8月12日・アイスランド,スペイン
  2027年8月2日・アフリカ,アジア
  2028年7月22日・オーストラリア,ニュージーランド ●
  2030年11月25日・南アフリカ,オーストラリア
  2031年11月14日・パナマ
  2033年3月30日・アラスカ
  2034年3月20日・アフリカ北部,アジア,中国
  2035年9月2日・中国,韓国,日本 ●
  2037年7月13日・オーストラリア,ニュージーランド
  ・・・・・・
 これを見ると,手軽に行けそうなのが,2024年,2028年,そして,2035年(これは1999年,2017年のもののサロス周期です!)だと思われます。2024年の皆既日食は再びアメリカで見られるものです。晴天率の高いテキサス州のサンアントニオから北に行ったあたりはワイナリーばかりで,ジョンソンシティという素敵な場所が皆既帯にあります。また,2028年の皆既日食に私は大いに魅力を感じます。この皆既日食はオーストラリア北部から南東部へ抜けるもので,シドニーでは3分44秒の皆既日食を見ることができます。シドニーからでもブリスベンからでもレンタカーを借りて皆既帯に行けば,あたりはどこも大草原です。
 おそらく,日本に住む多くの人が最も期待しているのは,2035年に日本,それも本州で見られるものでしょう。しかも,9月2日は日曜日! なのです。この皆既日食は,石川県から富山県,長野県,群馬県,茨木県と皆既帯が続いていて,富山市,長野市,前橋市などは皆既帯にありますから,そこに住んでいるのなら,あとは天気だけの問題になります。この皆既日食の皆既帯は,少し前の文献には東京都心が含まれると記述されていたようですが,実際は通りません。そこで,当日は,皆既日食を見ようとものすごい人が東京から北に向かって殺到するものと思われます。私は,2035年の皆既日食そのものよりも,その日の大混乱がどういう状況になるかを見てみたいものだと思っています。それを目標に長生きしたいものです。

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☆☆☆☆☆☆
 2016年6月21日ですから,早くも今から1年と少し前のことになりますが,私はその日のブログに次のように書きました。
  ・・・・・・
 天文ファンが一度は見たいという「三大願望」があります。それは,南十字星,皆既日食,そして,オーロラを見ることです。行くことができれば見られる,お金を出せばなんとかなる,ということなら,そうしたいという意志さえあればなんとかなるのですが,そこに「運」が必要なものは,そうしたいという願望があればあるほど,それがかなわないと本当に残念なものです。
 この「三大願望」のうち,1番かなえることが簡単なのは南十字星を見ることです。見えるところに出かけて晴れていさえすれば見ることができます。それに比べて,最も見ることが困難なのは皆既日食です。
 私は,幸いなことに,これまでに「三大願望」のすべてをかなえたのですが,それでも,ずっと昔のことであったり,なんとなくであったりするので,このごろになって,もう一度しっかり見てみたいと思うようになりました。その目的を果たすためにいろいろ計画を立ててはいるのですが,果たしてかなうことやら…。
 人生とは,かくも,したいことが多いのに,実現できる時間は短いのです。
  ・・・・・・

 このとき「いろいろ計画を立てている」と書いたのですが,それを具体的に書くと実現しないような気がしたので,あえて書きませんでした。そしてそのときの計画は,2017年の夏,6月にオーストラリアに行って再び南十字星を見ること,そして,8月にはアメリカ横断皆既日食を見に行くとともに,その後アラスカに飛んで,オーロラも見てくるということでした。この夢のような「三大願望」の実現,うまくいけばすべてがかない,最悪の場合はすべてがかなわないかもしれないものでした。
 そして……
 私は昨年のハワイ,ニュージーランド,そして,今年のオーストラリア旅行で南十字星を見,雲ひとつない晴れ渡るアイダホ州ワイザーで皆既日食を見,連日悪天候だったのにたった1日の晴れ間にオーロラを見と,それらをすべて実現してしまいました。今でも信じられない気持ちです。この幸運を何といってよいのか……。
 そこで,やっと,これまでこのブログで「星好きの三大願望」と題してはいても実際は南半球の星空の話題ばかりだったのが,ついに,すべての話題を書く資格を得たのです。
 では,「三大願望」から,今回は皆既日食について書いてみましょう。
 
 「一度は見たい皆既日食,もう一度見たい皆既日食,何度見てもまた見たい皆既日食」という言葉があります。一度この目で見てしまうと,このように何度でも見たくなるのが皆既日食なのです。
 先にお断りしておきますが,皆既日食を誤解している人が数多くいます。そういう人たちに皆既日食の話をすると,部分日食や金環日食と混同していて,こないだあったとか家から見たことあるといった反応を示す人が少なくありません。しかし,皆既日食と部分日食は全くの別物です。金環日食はそれなりに面白いものですが,これもまた,皆既日食の感動に比べたら,月とすっぽんの違いがあります。
 今回のアメリカ横断皆既日食でも「99%欠ける」という場所と「100%欠ける」という場所が決定的に違うということがわかっていない人たちがアメリカには大勢いました。「日食」は,皆既日食で,しかも,皆既帯といわれる幅にして100キロほどの帯状の場所で100%欠けたものを見ないとまったく意味がないのです。それを見たこともないのに,またそれがどいう現象であるかも知らないのに,「皆既日食なんて」という人を私は心から憐れみます。おそらく,そうしたことを言う人の人生は,ほかの多くのこともこれと同じような反応をし,多くの幸運を逃がしているのでしょう。運というものは誰もの身の回りに漂っているのですが,「運がいい人」というのは,それを招き寄せる人だというのが私の実感です。

 私は,子供のころから,いつの日かこの目で皆既日食を見たいものだと思っていました。1年から2年に一度は地球上のどこかで皆既日食が起きるのですが,自分の住んでいるところで見られるかとなると,それはほとんど希なこととなります。私が日食というものを知った子供のころ,この先日食が起きる予報の一覧表を見て,日本で見られる日食は部分日食ばかりだ,とがっかりしたことを覚えています。
 皆既日食が地球上のどこかで起きると,たとえそれが行くのにかなり大変なところであっても,そこに出かける日本人がいるのには敬服するとともに呆れます。しかし,私は冒険家ではありませんし,軟弱です。だから,辺鄙なところまで出かける気持ちはまったくありません。そんな私が,楽に行くことができて,しかも,晴れる確率が高いだろうとずっと以前から目をつけていた皆既日食が,1999年8月11日にヨーロッパからインドにかけて見られるものと,2017年8月21日にアメリカ大陸を横断して見られるものというふたつでした。そして,このふたつは絶対に行ってみようと何十年も前から狙っていたのです。
 そして,実際,私はこのふたつの皆既日食を見に行きました。そして,ふたつとも,文字通り「晴れて」,念願の皆既日食を見ることができたのです。

◇◇◇
「星好きの三大願望」-満天の星空のもとで南十字星を見る。
「星好きの三大願望」-南天の星空は明るい星のそろい踏み
「星好きの三大願望」-宝石をちりばめたような南天の星空
「星好きの三大願望」-マゼラン雲は偶然通りかった銀河①
「星好きの三大願望」-マゼラン雲は偶然通りかった銀河②
「星好きの三大願望」-南天の極軸をいかに合わせるか?
「星好きの三大願望」-海外で星を見るとは?
「星好きの三大願望」-天頂の天の川に溶け込むさそり座
「星好きの三大願望」-天頂の天の川に溶け込むいて座
「星好きの三大願望」-広大な超新星残骸・ガム星雲

8月21日・旅の6日目,いよいよ日食の日になりました。わずか2分のために何年も前から計画していたまさにその日が来ました。いくら先のことでもその日は来るのだなあという,妙な感想をもちました。
朝5時に起きてテントから出ると天気予報どおり満天の星空でした。東の方にはオリオン座が輝いています。あと6時間25分後に2分間のイベントが始まるのが夢のようです。
朝,日食後の渋滞の方が心配ですぐに帰れるようにまずはその準備をしました。朝食を食べ,再度撮影の確認をしていたら,10時10分,予報通り太陽が欠けはじめました。
食が進むにつれて次第に寒くなり,そしてあたりが暗くなりはじめ,いよいよ11時24分,皆既日食の開始です。ダイヤモンドリングの現れる少し前から太陽は肉眼でも欠けているのがわかりはじめて光の線が八方に伸びてきました。そして皆既。あっという間,ではなく,長い長い2分間に感じられました。私は1999年8月16日のヨーロッパ皆既日食に次いで2度目の体験だったので,肉眼で見ることが最も大切だと知っていました。へたをするとカメラをのぞいていて終わってしまいます。皆既終了後,渋滞を恐れてすぐに店じまいをするつもりでしたが思ったほどの混雑でないので,日食が完全に終了するまで見届けました。
私が日食を見た場所はアイダホ州の西の端の町,人口7,000人のワイザー。見にきた観光客は少なかったのですが,それでも帰りは町を出る車で大渋滞になりました。川を渡らなければ西に行くことができず,川を越す橋のある道路はたったの1本。何せ小さなダウンタウンを走る6本の道路からこの1本の道路にすべての車が流れ込むのですから3分で町から抜けられるところを30分かかりました。しかしその後は順調にインターステイツ84にたどり着きました。インターステイツ84を北上していくと2度ほど大渋滞に巻き込まれましたが,それは皆既日食のせいではなく,工事によるものでした。アメリカのインターステイツは普通,工事で1車線が閉鎖されれば別の車線が作られます。そうしていないオレゴン州はクレイジーです。それでも午後5時,出発から4時間後にはワラワラに着きました。
アメリカ人の多くは皆既帯でなくとも98%欠ければ一緒だと誤解していたようですが,日食は100%でないと全く意味がありません。おそらく翌日それを知って後悔した人も多いことでしょう。私が思っていたように,人口が多く,多くの人が押しかけたオレゴン州セーラム郊外のカニータあたりは薄雲が出たようですし,ワイオミング州では皆既の間雲が覆っていたようです。
日本からのツアーは60万円から100万円もするのに現地2泊から6泊程度の小旅行で,すでに多くの人は皆既日食終了後に帰国しています。私はツアーでないので,日食を見るために使った費用は成田からシアトルの往復航空運賃10万円程度と宿泊代だけでした。旅は自力でしなくちゃね。そしてまた,私の14泊16日の旅はまだまだ続きます。

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5日目。
キャンプも2日目になりました。今日は何も予定はありません。朝昼晩と食事をするだけが日課です。私は何もできないのでご馳走になるだけですが,こちらの人のアウトドアがよくわかって興味深いです。ここは日食を見るために解放した芝生広場でキャンプ地ではないのでただだだっ広いだけ。そこに多くの人がそれぞれキャンピングカーやテントを持ち込んでいて見ていると楽しいです。
私のいるのはキャンピングカーが1台と荷台を引いたピックアップトラックと私が乗ってきたジープ。テントは私が泊まっているものと子供たちそれぞれ,そして親のものと食事スペースの4つ。そこで8人で過ごしています。
日本からの皆既日食観測ツアーが行くのは日本からの直行便のあるポートランドに近いオレゴン州の州都セーラムの近郊かアイダホ州でもイエローストーン国立公園の近いアイダホフォールズです。私が来たワイザーはワシントン州とアイダホ州の州境ですが大きなホテルや観光地がないので,日本からここに来るような日本人は私くらいしかいないので非常に快適です。ちなみにセーラム近郊なんて晴天率がよくないし,アイダホフォールズあたりは日本人多すぎです。
明日は日食の終了後解散して,私はEさんと再び合流するためにワラワラに行くので,その道順を覚えるためにインターステイツ84まで行ってみることにしました。この閑散とした道が日食の終了後に渋滞するのかどうか,予測不能です。昼間は望遠鏡のピント合わせなどをして過ごし,夜は地元ワイザーの高校でやっている日食フェイスティバルに行きました。
さあいよいよ明日です。今晩の空は曇りで,昨晩は見えていた星も全く見えません。もしこれが日食の時間ならば絶望的ですが,明日は午前4時くらいから一日中快晴という天気予報になっています。

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4日目。
今日は午後Eさんと一旦別れて,ルイストンを出発して4時間南下し,モンタナ州ワイザーで親類のMファミリーと合流して2泊3日目のキャンプに行く予定です。目的はウザったい日本人ツアー客のいないベストロケーションでの皆既日食観察でした。
人口7,000人のワイザーは皆既日食の皆既帯にあたるので 当日の人口が20,000人に達するということです。既にオレゴン州では大渋滞がはじまっているというニュースに恐れをなして朝5時にホテルを出たのですが,全く渋滞もなく午前10時前にキャンプ地に到着しました。オレゴン州の渋滞は皆既日食のせいではなくマリファナ(オレゴン州では合法)を買うためにほかの州から押しかけたせいだったそうです。
Mファミリーに連絡を取ろうとWifiの通じるワイザーのダウンタウンにあったマクドナルドに行ってiPhoneを見るとすでに到着したという連絡が入っていて,買ったばかりのハンバーガーとドクターペッパーの入ったカップを持ってマクドナルドを出てキャンプ地に向かうと,すぐに合流できました。
ワイザーの町はすでに日食モードで土産物屋さんあり看板ありでした。夜は今日もBBQ。あとは寝るだけです。もちろんキャンプサイトではWifiはできないのですが,ダウンタウンにマクドナルドがあってそこでつながります。こんな便利なのは日本ではともかくアメリカではキャンプでありません。

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現地のWifi事情から4日ほど遅れてLIVEをお届けしていますが,現地時間2017年8月21日午前11時25分,アイダホ州ワイザーの雲ひとつない青空に皆既日食を見ることができました。
そこで,今日は数日先回りして,皆既日食の写真をご覧ください。皆既になると寒く星も見えます。また,あたりは静寂に包まれて異様な雰囲気になります。これだけは体験しないとわかりません。
太陽が欠けはじめてから戻るまで2時間30分,皆既の時間が2分,生涯最高のショーに大感動しました。
次に皆既日食が手軽に見られる場所に起こるのは,アメリカは2024年4月8日,オーストラリア,ニュージーランドで2028年7月22日,日本では2035年9月2日です。しかし,日食が起きても晴れなければ,といっても皆既の時間に太陽のあるところにたまたま雲があってもダメなのです。
今回の日食のように,アイダホ州の砂漠地帯で晴天率が高くても雲ひとつないというのは稀だから,この日食がいかに好条件だったかは後になるほどわかることでしょう。見そこねた人,逃した魚は思った以上にでかいですよ。

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