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11月の満月は「ビーバームーン」ですが,そんな満月の日の2022年11月8日,この日はおそらく今年で1番の天体現象であろう「皆既月食中に天王星食」が起きました。
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皆既月食はそれほど珍しい天体現象ではありませんが,皆既月食中に惑星食が起こるのは珍しいことで,何と前回1580年7月26日の土星食以来,442年ぶりということでした。1580年といえば安土桃山時代で,安土城の完成が1576年だから,織田信長の絶頂期でした。なお,次回は2344年7月26日に起こる土星食なので,322年後のことです。また,「皆既月食中の天王星食」に至っては,過去5,000年で1度も起きていなかった現象です。
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このように,大げさに報道されていたのですが,これは日本国内でのことで,世界規模では「皆既月食中の天王星食」は,それほどは珍しいものでもなく,8年前の2014年10月8日にシベリアで見られました。また,次の「皆既月食中の天王星食」は2235年6月2日で,これは南アメリカで見られますし,その次は,2304年3月23日に起き,南アフリカから南極で見られます。天王星以外では,1682年8月18日に海王星食が太平洋上で見られたのが最も新しく,この次は,世界規模でも上記に書いた2344年7月26日の土星食まで待たなければなりません。
果たしてそのころまで,人類は地球上に存在しているのでしょうか?
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月食のはじまる時刻や終わる時刻というのは日本全国どの場所でも変わらないのです。どうしてなのでしょう? それは,日食は月によって太陽が隠されてできる影が地球上の一部の場所に限られていて,それが月の動きとともに動くので場所によって起きる時間が異なるのに対して,月食は地球によって太陽が隠されてできる影の中に月が入るのを地球から眺めることによって起きるもので,影は月全体をすっぽりと隠してしまうので,地球上のどこから見ても同じだからです。ただし,月の高度や方位は異なっています。また,天王星食が起き,終わる時刻は地域によって異なります。
天王星の明るさは最大高度が5.6等星で,かろうじて肉眼で見ることができる明るさですが,木星のように衛星が見られるわけでもなく,土星のように輪があるわけでもないので,見えていたとしても,区別がつきません。そこで,こうした月食のときのように,標的となる天体があるときに,やっと区別がつくというものです。まして,それが食になる,というのはかなりの驚きです。
いつもいい加減な私は,事前に準備することもなく,何となく晴れたら写そう,と思っていただけでしたが,快晴となったので,ちょっとやる気になりました。とはいえ,空の暗いところに行くわけでもなし,家の近くで見ただけです。
月が明るいと,空の明るい場所で天王星を見つけるのは困難です。
この日も,月が欠けはじめるまえは,双眼鏡でも天王星は見つかりませんでした。しかし,月が欠けはじめると,次第に天王星がはっきり見えるようになってきました。
私がこの日,やりたかったのは,天王星が月に隠れる寸前と月から出た直後の写真を写すことでした。皆既月食はこれまでにも何度も写したことがあるので,特に興味はありませんでした。
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その中で,天王星が月に隠れるのを写すのはそれほど難しいものではありませんでした。あるものが消える瞬間は狙えます。適正な露出になるように,何度も試しに写しておけばなんとかなります。しかし,天王星が月から出た直後の写真は難しいのです。ないものが出てくるというのは予行ができないのです。それでも,皆既中であれば,月に隠れるときと同じ露出でいいのだから何とかなるのですが,今回は,月から出るときはすでに皆既は終わっていて,月の明かりがじゃまになるのです。露出を少なくすれば暗い天王星が写らず,露出を多くすると,月が明るくなりすぎて,天王星が消えてしまうのです。
そんなわけで,月から出るときの天王星を写すのは半ばあきらめていました。
ダメ元ということで,適当に露出を決め,何段階も露出を変えながら写していきました。
自宅に戻って調べてみたのですが,天王星を探すのに苦労しました。そして,ついに発見しました! 何と運がよかったことでしょう。露出を変えながら写したもののうち,もっとも露出が適切な写真にちょうど天王星の出が一致していました。
ということで,今回の,皆既日食中の天王星食を写すことは,完全に成功しました。大満足でした。
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「しない・させない・させられない」とは
「Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.」とは