しない・させない・させられない

Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.

USA50州・MLB30球場を制覇し,南天・皆既日食・オーロラの3大願望を達成した不良老人の日記

タグ:秋山和慶

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【Summary】
I first fell in love with Bruckner's Symphony No. 4 after hearing it in 2002. The piece, composed when Bruckner was 50, has a youthful energy. While there are different editions, such as the Haas and Novak versions, I enjoyed the familiar Novak version during this concert. Akiyama's conducting was clear and rhythmic, and despite initial worries about the brass, the performance was excellent. Sitting in the P section allowed me to appreciate the music in a unique way, and the concert concluded with a warm atmosphere celebrating Akiyama's 60 years as a conductor.

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 2002年の第1458回MHK交響楽団の定期公演で,スクロバチェフスキ指揮のブルックナー交響曲第4番をFMで聴き,テレビで見て以来,私はこの曲が大好きになりました。
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 ブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」(Die Romantische)は,ブルックナー50歳の1874年に第1稿(1874年稿)が完成しました。タイトルは,ブルックナー自身が「ロマン主義的(Die Romantische)とよんだことからきています。1878年に改訂に着手し,第3楽章が全く新しい音楽に置き換えられ(1878年稿),さらに1880年に第4楽章を大幅に修正したものが第2稿(1878/80年稿),それに1886年ニューヨーク初演のためにわずかな改訂が加えられ,その後1887年から1888年にかけて弟子たちがさらに改訂を施したものが第3稿(1888年稿)です。
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 1886年に第2稿に基づく楽譜の出版が企てられましたが実現せず, 実際に出版された楽譜は,1889年に第3稿に基づくものが最初でこれは初版,改訂版,改変版などとよばれています。さらに,第2稿に基づいて1936年に出版され,その後内容修正のうえ1944年に再出版されたものが原典版,ハース版と称されていて,それ以来,初版での演奏は廃れ,ハース版による演奏が主流となりました。
 戦後,まず1953年に第2稿に基づく楽譜が出版され(=ノヴァーク版第2稿),続いて1874年に第1稿に基づくものが出版されました(=ノヴァーク版第1稿)。
 さらに,2004年には第3稿が出版されたました(=コーストヴェット版第3稿)。
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 今日よく演奏されるのは,ハース版,または,ノヴァーク版第2稿です。ハース版とノヴァーク版第2稿は,本質的には同じものですが,①第3楽章のトリオ冒頭の管弦楽法,②第4楽章の最後で回想される第1楽章第1主題の管弦楽法に違いがあります。
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 私が交響曲第4番が好きなのは,第1楽章から第4楽章まで,極めてバランスがよいところです。どの楽章もすばらしい。そして,ところどころに,私の琴線にふれるところがあるのです。それらが今日載せた部分です。ブルックナーが50歳のときに作曲したものだから,決して若くはないのですが,それでも,ブルックナーにとれば「青春」の曲。交響曲には若さが感じられるのです。
 今回の演奏会で使われたのは,ノヴァーク版第2稿でした。第2稿でもハース版とノヴァーク版では,アレ,と思うことがあります。そして,このほうがいい,とか,これはちょっと,と思ったりするのですが,私は学者でないし,そういうことにはあまりわからないので,それはそれで楽しみとしていました。しかし,それは,同じ第2稿における些細な違いに過ぎないのです。
 というのも,ずいぶん前に書いたのですが,交響曲第3番の第1稿と第3稿を聴いたことがあって,その違いは歴然としていましたが,このときは,聴きなれていなかった第1稿に好感をもちました。また,これもすでに書いたように,1週間前にNHK交響楽団の定期公演で交響曲第8番の第1稿を聴いたのですが,これにはとまどったというか,私には交響曲の第8番は第1稿には肯定的な意味を見出せませんでした。
 そんなわけで,今回は,私の聴きなれた第2稿であることにホッとしました。そして,しっかりと私の大好きなこの曲と向き合いたいと思いました。

 秋山和慶さんの指揮は,奇を衒(てら)うものではなく,リズムも,私の体に染みついたものと同じで,とても好感がもてました。この交響曲はホルンの出来次第,という面があって,東京交響楽団は金管楽器が少し弱いと聞いていたので,少し心配でした。出だしがヒヤヒヤものでしたが,なんとか切り抜けて,そのあとは順調でした。
 このような大規模の曲ではP席では音がそろわないという話で,最後尾に陣取ったティンパニがはやり少しだけズレるのですが,私には何の問題もありませんでした。それ以上に,指揮者の指示がよくわかり,奏者がどのように聞こえているのか,といったことがつかめるので,興味深く聴くことができました。また,P席からは,会場すべてが見渡せて,その荘厳な雰囲気がとてもすてきでした。私はP席がとても気に入りました。これからもこの席を選ぼうと思いました。私の隣にP席マニアの人がいて,演奏前に話が弾み,それもまた楽しいものとなりました。
 今回の演奏会は,フライングの拍手もなく,すばらしいものでした。
 曲の終了後,秋山和慶さんの指揮者生活60周年メモリアルにちなんで,60と書かれたモニュメントにあしらわれた60本のバラがプレゼントされました。なお,「秋山和慶指揮者生活60年記念てぬぐい」なるものが販売されていて,カーテンコールでは客席でスポーツの観戦のようにそれを掲げる人がいたり,それを見たマエストロがほほえんだりして,とてもあたたかみあふれた雰囲気となって,私は幸せな気持ちになりました。

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【Summary】
Alban Berg's Violin Concerto, subtitled "To the Memory of an Angel", was composed in 1935 in memory of Manon Gropius, who died at 18. The work uses 12-tone technique, with its second movement depicting her struggle and ascent to heaven. Symbolism, like the number 22, is woven into the composition.

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 アルバン・ベルグ(Alban Maria Johannes Berg)のヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」(Dem Andenken eines Engels)については,以前,詳しく書いたことがありますが,ここで復習してみます。
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 1867年オーストリア・ハンガリー二重帝国が成立し,政治の混乱と凋落によって人々の関心が文化面に向かった結果,「世紀末ウィーン」(Die Wiener Moderne)が起きました。
 美術では,「ウィーン分離派」(Wiener Secession)が活動し,グスタフ・クリムト(Gustav Klimt)が出ました。また,グスタフ・マーラー(Gustav Mahler)の妻アルマ・マーラー(Alma Maria Mahler-Werfel)との愛欲を描いた「風の花嫁」で知られるオスカー・ココシュカ(Oskar Kokoschka)がいました。
 アルマはグスタフ・マーラーと知り合い,結婚しましたが,グスタフ・マーラーが亡くなり未亡人となったアルマは,画家のオスカー・ココシュカと関係を深めながらもヴァルター・グローピウス(Walter Adolph Georg Gropius)と再婚,ヴァルター・グロピウスとの間にもうけた娘がマノン(Manon Gropius)でした。そして,マノンのことをことのほかかわいがったのがアルバン・ベルクでした。
 1935年,マノンが18歳という若さで急死します。
 アルバン・ベルクは,この訃報を知ると,ルイス・クラスナー(Louis Krasner)から委嘱されていたヴァイオリン協奏曲を「ある天使の想い出に」捧げるものとして作曲にとりかかります。曲は完成しましたが,敗血症を起こしたアルバン・ベルクはそれから間もなく急逝。この曲は自分自身へのレクイエムになってしまいました。
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 この作品では,アルノルト・シェーンベルク(Arnold Schönberg)譲りの12音技法が使われています。第2楽章では,12音技法によってマノンの闘病が描かれ,やがて,激しい死神との戦いの音楽がふと消え失せて,古来の調性による昇天の音楽が演奏されます。
 コラールが過ぎ去ると,第1楽章で提示した基本の12音音階が美しく光を放ちながらあちらこちらで天へと昇っていき,最後にヴァイオリンの4つの解放弦の音が鳴り響くのです。
 この曲の2楽章の冒頭の死のダンスまでへのカデンツが22小節,コラールも22小節,曲の副題「Dem Andenken eines Engel」は22のアルファベット。22という数字は,マノンの命日から来ています。また,2楽章の最後の和音が18個の音で構成されているのはマノンがこの世を去った年齢を表しているといわれます。
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 私は,この曲を聴くのは2度目でした。はじめて聴いたときはよくわからなかったのですが,12音技法がなまめかしく響き,魅力的な曲だなあ,という感じはもちました。その後,ウィーンに行ったり,その折に,アルマやマノンのことを知るにつけ,この曲の深い意味がわかるようになりました。
 私はP席にいたので,ヴァイオリニスト竹澤恭子さんの様子がわからないのかな,と思ったのですが,さにあらず,P席というのは,席の勾配が急なので,ステージをよく見渡すことができて,前列の人の頭の影になることもなく,最高でした。音も,もっとバランスが悪く聴こえるのかな,と思っていたのですが,そんなこともありませんでした。それ以上に,臨場感があって,かなり魅力的でした。すばらしい演奏でした。竹澤恭子さんはモバイルの楽譜で見ていたのですが,どこかでだれかが操作しているのか,楽譜が自動的にめくられていくのも興味深かったです。
 アンコールは,J.S.バッハの無伴奏ヴァイオリンソナタ 第2番よりアンダンテでした。
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 ところで,私ははじめてP席に座ったのに,この感覚はじめてではない,と気づきました。考えてみれば,2023年5月12日に,名古屋フィルハーモニー交響楽団が井上道義さんの指揮でボレロを演奏したとき,ステージ上のオーケストラが指揮者を中央にしてそれをぐるりと取り囲むように配置されたので,一般席でもオーケストラの背後から見る形であったのです。あのときもおもしろかった。

あいうえお


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【Summary】
When the NHK Symphony Orchestra's regular concerts were canceled due to the COVID-19 pandemic, performances featuring mostly Japanese musicians were broadcast on FM radio instead. Among them, I was deeply impressed by a concert conducted by Kazuyoshi Akiyama. As a result, I decided to attend the Tokyo Symphony Orchestra's 724th regular concert, conducted by Akiyama this time.

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 コロナ禍で2020年度(2020年9月から2021年6月)のNHK交響楽団定期公演が中止となりました。その代わりに,毎月演奏会が行われましたが,私は聴きに行くことができなかったので,すべてFMで聴きました。その中で特筆すべきものは12月の演奏会でした。「ベートーヴェン生誕250周年特集」と題して,秋山和慶さん指揮で「エグモント」序曲,マーラー編曲の弦楽合奏版弦楽四重奏曲第11番「セリオーソ」,そして,ヴァイオリン協奏曲では諏訪内晶子さんがヴァイオリンを弾きました。
 このころは,外国人の入国ができなかったので,演奏会はほとんどが日本人の演奏家で行われました。そこで,これまであまりNHK交響楽団の定期公演には出演する機会のなかった日本人の重鎮や,これから売り出そうという実力派の若手が起用されたことで,新たな発見がありました。
 この演奏会はすばらしいもので,諏訪内晶子さんはもちろんのこと,秋山和慶という指揮者に感銘をうけました。そして,実際にライブで聴いてみたくなりました。それ以来,機会を探っていたところ,ちょうど,2024年9月21日,東京交響楽団第724回定期演奏会で,それがかなうことがわかったので,聴きに行くことにしました。

 この日の演奏会は「秋山和慶指揮者生活60周年記念」として,竹澤恭子さんがヴァイオリンを弾くアルバン・ベルグ(Alban Maria Johannes Berg)のヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」(Dem Andenken eines Engels)と ブルックナーの交響曲第4番 「ロマンティック」というもので,私には,最高の曲目でした。
 また,私は,これまで,コンサートをステージの反対側P席で聴いたことがなく,一度聴いてみたいものだと思っていたので,今回はP席を取りました。P席は「指揮者の顔を見,オーケストラのメンバーの背中を見,と,いつもと違ってすごくおもしろく,頭の中がよじれそう,耳が反転しそう」というような感想を耳にしたことがあります。それとは逆に「音よくないよ」とも聞いていたのですが,何事も試してみるに限ります。その結果は次回書きます。
 それにしても,考えてみれば,今回のプログラムの1曲目はヴァイオリン協奏曲だから,そんなときにP席とは…。

 指揮の秋山和慶さんは83歳。1963年に桐朋学園大学音楽学部を卒業し,1964年に東京交響楽団を指揮してデビューののち,音楽監督・常任指揮者を40年間にわたり務めたということで,京交響楽団はホームグランドです。現在は,桂冠指揮者です。
 また,竹澤恭子さんは,1977年に小学校5年生で全日本学生音楽コンクール全国大会小学生の部で第1位を受賞,1982年,桐朋女子高等学校音楽科在学中に日本音楽コンクールで第1位を受賞,アメリカ留学後の1985年,ジュリアード音楽院に入学し,1986年にインディアナポリス国際ヴァイオリン・コンクールで第1位を受賞したヴァイオリニストです。私は,これまで,何度か聴いたことがありますが,好きなヴァイオリニストのひとりです。

S724


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