【Summary】
In 1018, Fujiwara no Michinaga recited the famous poem about the "moon at its fullest" during a banquet celebrating his daughters as empresses. While interpretations vary, from expressing transient glory to referencing the completeness of the moment, some argue Michinaga’s intent was simple: admiring the beauty of the moon, akin to his joyous mood, without deeper meaning.
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今日2024年11月17日に放送されるNHK大河ドラマ「光る君へ」の第44回「望月の夜」。
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此世乎は我世と所思望月乃虧たる事も無と思ヘハ
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この世をばわが世とぞ思ふ 望月のかけたることも無しと思へば
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1018年(寛仁2年)10月16日,藤原道長の娘の威子が後一条天皇の中宮になりました。
宴席では,彰子が太皇太后,妍子(きよこ)が皇太后と,后の席がすべて娘で満たされた藤原道長が詠ったのち,公卿たちが数度この歌を唱和したと藤原実資の「小右記」に記録されています。
1018年10月16日は,新暦に換算すると11月26日です。その日の月齢は16。今年2024年では11月17日の月が月齢16となります。 写真は月齢16の月です。世間では,11月16日がまさにその日と同じ月だと騒いでいるようですが,実際は11月17日,ちょうど「光る君へ」が放送されるその日です。
この歌の意味として,従来は「おのが望みの皆かなひたるを十五夜の満月にひき比べて此の世はおのれひとりのものぞ」とされてきました。
また,このときの月が満月でなく少し欠けたものであることを指摘して,この歌自体は「栄華のはかなさ」を示したもので,藤原道長自身はそのはかなさを知っていることを示したものであるとか,「月は少し欠けているが后となった娘は満月のように欠けていない」という意味だという解釈もあります。
さらに,京都先端科学大学教授山本淳子によると,この歌は「今夜のこの世を私(藤原道長)は心ゆくものと思う。目前の月は欠けているが、私の月 -后となった娘たち,宴席の皆と交わした杯- は欠けていない」という意味だといいます。
それは,まず,「わが世」の解釈では,「世」は「夜」と掛けられていて,藤原道長が,「私の世界」と言ったわけではなく,ただ「今夜の状況」という解釈が自然だというのです。
また,「望月」では,「月」は「后」だけでなく「杯」という意味も含んでいて,「小右記」には,宴では,藤原道長は,藤原実資に,藤原頼通に酒を注ぐように頼み,次に藤原頼通頼通は左大臣の藤原顕光に,そして藤原道長,さらに,藤原公季に酒を注いだとあることから,このように,「望月」というのは「だれひとり欠けることなく酒を交わし合った杯」と詠ったという意味も重ねられているというのです。
さらに,1008年(寛弘5年)に彰子が敦成親王を生んだ際「誕生を寿ぐ歌を」と急に指名された際,困らないように紫式部が準備した
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めずらしき光さしそう盃は もちながらこそ千代もめぐらむ
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という歌がありました。この歌では,「さかづき」に「月」,「持ち」に「望月」が掛けられていて,藤原道長の望月の歌にとても近いものだったといいます。
このように,さまざまな解釈ができるわけですが,私がひとつ感じるのは,藤原道長が詠った月が満月ではなく少し欠けた月だと解釈している人に感じる言葉に酔っている危うさです。
以前「有明の月」について
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多くの歌で詠まれる「有明の月」がどういう月か,実際に体験したことがあるのでしょうか。見たこともないのに,単にイメージに,あるいは,言葉に酔っているとしか思えない解釈をする人を言葉に酔っている危うさと同じだと私は思うのです。
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と書きました。
それと同じように,写真を見ればわかっても,実際,肉眼で月齢16のまぶしいほど明るい月を見たとき,その月が満月に比べて少し右上が欠けている,などと気づくのでしょうか? ということです。だから,少し欠けた月を見て詠んだ,など言う解釈は言葉に酔っているだけだと私は思うのです。
そうしたことから,この歌は,単に,満月を見て,きれいな月だなあ,この宴の状況と同じだ,と,ほろ酔い加減に詠んだだけで,あまり深読みするようなものではないのではないか,と私は感じます。
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「Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.」とは
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