5日目です。昨日行ったボールドロック国立公園へのアクセス道路のある町がテンターフィールドですが,この町があまりに素敵だったので,今日は1日ここで過ごすことにしました。一般に多くの日本人が訪れるオーストラリアはケアンズ,ブリスベン,シドニー,メルボルンといった大都市かゴールドコーストでしょう。私の宿泊したゲストハウスから車で30分から1時間くらい走ると,ウォリック,スタンソープ,ワランガラ,テンターフィールドといった小さな町がありますがそれらは日本人の観光客にはおそらくほどんと無縁です。
私は今回,こうした町に行って,子どものころにアメリカの西部の田舎町としてイメージしていたのは,本当はこうしたオーストラリアの小さな町であったような気になりました。そしてまた,どこも住んでみたいと思う町でした。ここは気候も厳しくなく,ゆったりと時間が流れ,気持ちが落ち着きます。そしてまた,こうした町にいると,日本とはあまりにも別世界で,日本では何をせこせことこだわって生きているのだろうかとほとほといやになってきます。
この町にはきれいな広い観光案内所があって,とても親切な女性が見どころを教えてくれて地図ももらいました。私がまず行ったのが鉄道駅の博物館でした。ここの鉄道は1989年まで運行されていて今は使われていないので,途中の橋はもろくも崩れていたりするのですが,駅のあたりを博物館として整備して往年の列車などが展示されています。私はこうした博物館は,実際は,捨てるに捨てられないガラクタ置き場だと思うのですが,それでも保存する価値と意義があります。これこそが人が生きてきた証だからです。
そのあと,町の美術館に併設されたレストランで昼食をとってから,薦められたマウントマッケンジーの展望道路を車で登りました。
さて,翌日は帰国です。早朝チェックアウトをして夜明け前3時間ドライブして朝7時過ぎにブリスベンに着きました。
私は今回,こうして念願の南天の星空を見るためだけが目的だったオーストラリア旅行を楽しんだのですが,この国の小さな町にも魅了されました。こうした町は特に何かがある,というものはないのですが,こうした町をきままに歩いたり,ホテルで音楽を聴いたり読書をしたり,そして,夜は満天の星空を楽しめば,それでもう十分に満足なんだ,ということに改めて気づきました。おそらく私はまたすぐにこの地に戻ってくることでしょう。この旅は私にとって夢のような日々になりました。
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特別編・2017夏オーストラリア旅行LIVE⑨
次の日はボールズロック国立公園へ行ことにしました。
ゲストハウスからずっと南に行けばボールズロック国立公園という道路標示があるということだったので走っていったのですが,一向に見つかりません。私はワランガラという町で国立公園に行く道路があると勘違いしていたのですが,ワランガラを過ぎても道路標示がなく,その先まで走っていったのですが,クイーンズランド州からニューサウスウェールズ州に入っても次の町がなく,私は何かの間違えだと思って途中で引き返してしまったのです。実はその先のテンターフィールドまで行く必要があったのです。
ワランガラの町に戻って,昔鉄道が走っていた駅に博物館兼レストランがあったので,そこで昼食をとりました。さらに戻って,ゲストハウスを過ぎ,さらに北に走って,私は,昨日行ったスタンソープの町にたどり着いて,そこのビジターセンターに入って,親切な係りの女性に詳しい道を聞いて,愕然としたというわけです。
ここでくじけないのが私のいいところ? で,再び南にテンターフィールドまで走っていって,やっとボールズロック国立公園に行く道路にたどり着いたときはすでに午後2時でした。
こうしてどうにか国立公園の駐車場に車を停めたのですが,この国立公園が大変でした。1時間30分ほど歩いて山頂にいく道があったものを私は直線距離で山頂まで行こうとして,なにせ,どこがどうなっているのかさっぱり知らないかったがためにこうしたことになってしまったのですが,エアーズロックを登るより大変だというその岩山を40分以上延々と登ることになってしまいました。途中で何度やめようかと思ったかわかりませんが,ついについに私は登りきったのです。山頂の景色が特に素晴らしい,というほどのこともなかったのですが,おそらくは人生で2度と登ることはないであろうと思われるこの岩山に登りきった満足感で一杯でした。ただし,写真ではこのとんでもない大変さが再現できていないのがきわめて残念です。
こうして,私は,オーストラリアへ星を見にいっただけのはずだったのに,連日,岩山登山に明け暮れる日々を過ごすことになったわけです。日本の百名山のような,山頂がラッシュアワーの人混みであるわけもなく,私は,この国の雄大さとすばらしさを改めて実感したのでした。
特別編・2017夏オーストラリア旅行LIVE⑧
今日はありがたくない予報が当たって曇り空でした。2日間心置きなく楽しんだので全く問題はないのですが,もし今日到着していたら落胆するところでした。
夜になっても一向に晴れません。しかし,面白いことには,夜,星が見えないと外は本当に真っ暗なことです。つまり,昨日までここでも夜は意外と暗くないんだなあと思ったのは全くの誤解で,明るさは星の光のせいだったことがわかったのです。この時期月の光はないのですが,星の光というのもかなり明るいのです。地面には日陰どころか星陰が見えるのです。信じられないでしょう。隣の部屋に今晩宿泊するのは,ゴールドコーストでツアーガイドをしている人とその友人でブリスベンでワーキングホリデーをしているという女性の3人組だったのですが,彼女たちは今晩だけの1泊とのことなので,晴れないと気の毒です。それでもなんとか少しだけ晴れ間が見えたので,土星や木星を見ることができたのが幸いでした。
話は前後しますが,今日のお昼はもうひとつの国立公園であるサンダウンへ行こうと予定していました。私は誤解していて,ボールズロック国立公園は舗装された道路でトレイルの入口まで行けるのですが,サンダウン国立公園は未舗装道路で,4WDでないとアクセスできないとのこと。途中のワイナリでそれを聞いて落胆しました。あきらめて,私は宿泊しているバランディーンから北にあるスタンソープという町まで大きく東側にユーキ―ロードという道を迂回して行ってみることにしました。舗装されてはいるのですが,車がぎりぎりすれちがえるだけ
の幅の道路でした。ほとんど車は通りませんでしたが,カンガルーの死体がありました。この旅で私は野生のカンガルーの姿を3度目撃しましたし,道路の死体も結構見ました。
道の両側はワイナリーばかりで,そのうちにストームキング・ダム湖に着きました。しばらくそこで休憩してからさらに走って,やっとスタンソープの町に着きました。スタンソープは小さいけれどとても素敵な町でした。ここで昼食に中華料理店に入りました。
町の公園には紅葉した木がとても美しく,そういえば晩秋なんだと,改めて思いました。白黒の鳥がたくさんいました。この鳥はツチスドリといいます。土で巣をつくるのだそうです。オーストラリア人はピーウィー(peawee)と呼びます。口ばしの周りが白いのがメスで口ばしの周りが黒くてサングラスをかけた様なのがオスだそうです。スタンソープは本当にのどかで住みたい町です。
特別編・2017夏オーストラリア旅行LIVE⑦
今日は私がこの旅で持ってきた撮影道具を紹介しましょう。これらはこれまでハワイ島,ニュージーランド,マウイ島へ持っていって試行錯誤しながら改良したものです。とにかく小型でなくてはなりませんが振動がなく真っ暗な中でも使いやすい必要があります。
露出時間は3分くらいなので,当然,赤道儀でないと星が流れてしまいます。そこでビクセンのポラリエという赤道儀を使っていますが,最も手間をかけたのが極軸合わせのための様々な工夫です。
カメラはキヤノンのEOSX8iを散光星雲が写るようにIRカットフィルターを天体写真用に換装した改造カメラです。南天の星空を写すには何といっても広角レンズに限りますが,その画角もまた問題です。そこで選んだレンズはニコンの対角魚眼と広角の35ミリですが,今回はタムロンの90ミリマクロレンズも持ってきました。いずれもニコンマウントなのでアダプタを使ってキヤノンのマウントに合わせてあります。
赤道儀の電源と夜露よけのヒーターはANKERのPowerCoreで賄っています。これで一晩保ちます。これまで多くの失敗をしてやっと落ち着いたこれらの道具は今回極めて快調でした。まるでこの日のためにこれまでがあったようです。写真は構図を合わせてあとはシャッターを押すだけで,それ以外の時間はこちらで借りた大型の双眼鏡や肉眼で星空を楽しみました。
今回しみじみ思ったのは星は目で見るものだということです。寝っ転がって天頂に横たわる天の川を眺めたときの喜びに勝るものは他にありませんでした。
特別編・2017夏オーストラリア旅行LIVE⑥
今日も晴れました。明日から天気が悪いということなので今日は心置きなく満天の星空を楽しみました。昨日の成果で極軸も難なく正確に設定できて星空の位置もよくわかります。月齢2の月がまだ西空に残っているのにすごい数の星が天の川とともに見えます。これまで南天の星空を見たくてハワイ,ニュージーランドと四苦八苦してきましたがここオーストラリアがベスト。ついにたどりついた感じです。
星空の美しさは筆舌に尽くしがたいので今日はこの日に写した写真をお楽しみください。
1番目の写真が天頂にのびる天の川です。上が北で下が南,天頂にさそり座,北にはわし座,南には南十字座がいます。2番目が南の地平線付近の天の川です。マゼラン雲も見えます。この付近の星空が日本では見えないのです。3番目が南十字星からηカリーナ星雲にかけての最も魅力的な場所を写したもので,宮沢賢治「銀河鉄道の夜」の世界です。4番目はηカリーナ星雲です。ηカリーナ星雲は地球から6,500光年から1万光年離れているいくつかの散開星団に囲まれた大きく明るい星雲です。天の川銀河で最大級の重さと光度を持つふたつの恒星が星雲の中にあります。
5番目はさそり座,そして6番目はいて座のあたりを写したものですが,天の川が見事過ぎて星の並びがわかりません。宝石のような散光星雲がきれいです。そして最後の7番目は天の南極を中心とした日周運動を20分露出して写したものです。生まれてはじめて日周運動を写しましたがそれが南天とは! 中央のほとんど動いていない台形型の4つの星の並びを見つけることが南天の極軸あわせのコツですが,暗いので慣れが必要です。
特別編・2017夏オーストラリア旅行LIVE⑤
滞在しているゲストハウスの近くにはギラウィーン,ボールズロック,ブノブノ,サンダウンという4つの国立公園があります。今日はそのうちでギラウィーン国立公園に行ってみました。車で20分くらいの距離です。この国立公園は奇妙な岩が点在しているのが売りですが,それらを見るにはトレイルをずいぶんと歩く必要がありました。こちらは初冬だというのに汗をかきました。
オーストラリアの国立公園はアメリカの国立公園に比べたら未だ手つかずといった感じで観光地化されていません。何といってもオーストラリアの魅力は国立公園にも増して手つかずの日本では見ることができない星空なのです。
国立公園に3時間くらい滞在してゲストハウスのあるバランデーンに戻ってきました。ここにはタバーンというレストランが1軒あるのでそこで試しに昼食をとりました。ハンバーガーを注文したのですが,出てきたのはとんでもないビッグサイズでした。
その後,近くのスタンソープという街まで行ってみました。ここはとても素敵な街で住みたくなりました。こうした美しい街でゆったりとした時間の中で生きている人はとても幸せです。日本の人混みや満員電車なんて信じられないことでしょう。
特別編・2017夏オーストラリア旅行LIVE④
到着したときは晴れていたのですが夕方になったら一面の曇り空になりました。天気予報では今日明日は晴れて明後日からは曇りまたは雨。来るまでは連日晴れていたということなので最悪の展開です。どうしても今晩は晴れてもらう必要があります。でないと来た意味がありません。
ということだったのですが,願いが通じて陽が沈むころから快晴になりました。今晩晴れてくれれば,明日から天気が悪くてもあきらめがつきます。
そんなわけで夕方西の空に薄い月が沈むのを見届けてから開始です。しかし星の並びがさっぱりわかりません。それを承知で来たのですが,私がニュージーランドで覚えた南の空とは季節が違うので正反対,マゼラン雲は地平線ギリギリにあるし,天頂には天の川と南十字星が輝いています。天の南極がわからず極軸あわせに苦労しました。
空が暗くなってきて次第に星座もわかってきて,なんと天頂にさそり座が見え,そこから北に向かっていて座の凄まじい銀河を肉眼で見たときは興奮しました。やはり星は写真でなくこの目で見なくては! 大型の双眼鏡を借りて片っ端から星団や星雲を見ました。40センチの望遠鏡で木星と土星も見ました。
こうして,生涯最高の星空を深夜まで満喫しました。
特別編・2017夏オーストラリア旅行LIVE③
オーストラリアは2度目です。昨年はブリスベンに降りましたがそのままニュージーランドに行ったのでオーストラリアへの入国はしませんでした。今回オーストラリアに行くことになってから調べてみると,オーストラリア入国にもアメリカのようにESTA登録が必要なことを知ってびっくりしました。危うく忘れるところでした。ニュージーランドは要らないのに…。
成田空港の第2ターミナルを歩いていて,さな ざまな行き先の待合所を見ると,ホノルル行きだけは雰囲気がまるで違います。華やいでいます。アメリカのシカゴ行きもあったのですが,何だかピリピリしています。私はこれまであれだけ何度もアメリカ本土に行ったのに,ハワイやオセアニアに行くようになると,だんだんとアメリカ本土のピリピリ感に怯えてアメリカ本土が遠く感じられるようになってきました。
いよいよ搭乗の時間になりました。少し遅い夕食を食べてなんとなく映画を見ていたら眠くなって,そのうちに早い朝食が出て,8時間あまりでブリスベンに到着しました。初冬ですが日本の10月のようなとても過ごしやすい気候です。
昨年はここの空港で時間待ちをしてニュージーランドに行ったのですが,今回はここが最終目的地です。手際よく入国を済ませ,レンタカーを借りて,私の宿泊するゲストハウスまでは3時間,なぁ〜んにもない道路を100キロで走り抜けて午前11時ころには着いてしまいました。ここに5日間滞在します。
特別編・2017夏オーストラリア旅行LIVE②
海外旅行は国際線に乗るまでがとにかくひと苦労です。特に日本からの出国が面倒な気がします。アメリカだと空港まで行けばそこで自動チェックインを済ませてセキュリティを抜ければあとは航空会社のラウンジで食事でもしながら搭乗時間を待てばよいのですが,日本ではセキュリティ以前にレストランなども多く,またチェックインカウンタもやたらと混んでいるし,空港も狭いうえにさらにテーマパーク化しているからです。ただし,実際は第2ターミナルはセキュリティを通ってしまったほうが広々としています。
すべてが定刻で運行するのならもっと時間ギリギリでもよいのですが,国際線に間に合わなければ話にならないから,どうしてもずいぶんと前に到着することになるのです。おまけに私の搭乗したANAの成田行きは定刻よりも早く離陸して定刻よりも早く成田に着いてしまったから,待ち時間が5時間以上もできてしまいました。私の搭乗したANAはフラワージェットで,外装はずいぶん派手な花柄でした。恐らくはこれに乗りたくとも乗れない人もいるに違いないでしょう。
チェックインまでも2時間以上あってすることもないのでカード会社のラウンジでだらだらと過ごすことになってしまったから,暇に任せてこれを書いています。カード会社のラウンジはセキュリティを過ぎてから存在する航空会社のラウンジほど居心地がよくありません。搭乗時間まであと少し。いまだ出国できずにいるわけです。
ところでセントレアから成田までは進行方向左側の窓際に座れば離陸からずっと富士山が眺められます。あいにく今日は雲が多かったけれど,それでもほどほど富士山を眺めることができました。機内誌「翼の王国」を読んでいたら,昨年行ったハワイ島に住む日系人のやっている店の特集があってとても面白く読めました。私はこれからオーストラリアに行くのにも関わらず,どうやら気持ちはハワイ島に飛んでしまったようでした。
特別編・2017夏オーストラリア旅行LIVE①
昨年の11月下旬にニュージーランドに行ってから,南天の星空の虜になりました。南半球は四季が反対なので,初冬であれば初夏です。このときは何も知らずに出かけたのですが,現地はすでに夏休みの行楽シーズンがはじまっていました。
私は,ニュージーランドのクライストチャーチまで,直行便ではなく,オーストラリアのブリスベンで乗り換えましたが,そのときまでブリスベンもクライストチャーチも知りませんでした。
帰国後,オーストラリアに日本の人が経営している天文台つきのゲストハウスがオーストラリアにあるという話をききましたが,その場所のが,ブリスベンの郊外ということ。それならば,南天の星空を見るためにブリスベンからさらに3時間もかけてニュージーランドまで行かなくてもブリスベンでいいじゃあないか,ということで,一度そこへ行ってみようと思い立ちました。
11月下旬の南天は天頂にマゼラン雲が輝いていて,銀河は地平線付近にありました。そこで,今回は銀河が天頂にある季節にしようと,6月に行くことにしました。
日本は梅雨なので,どっちみち星も見られない季節なので,海外に星見に出かけるのには好都合ですが,なにせ,現地は冬。どれだけ寒いかということと,晴れるかな? ということが不安材料ですが,ともかく,出発します。
セントレア・中部国際空港から午後2時25分発のANAに乗ってまずは成田まで。成田からはカンタス航空でブリスベンまでひとっ飛びです。時差はわずか1時間なので深夜バスで名古屋から東京に行くようなものです。
トランクはすでに成田まで送ったので小さなバックパックひとつで家を出ました。セントレアまでは名鉄ですが,毎度延着の心配があるので,お昼の12時過ぎに到着する特急に乗りましたが何事もなく予定通り到着しました。今日のセントレアはことのほか混雑しています。お昼のカレーを食べてからラウンジで時間待ちです。
では行ってきます。