Kitt-Peak-National-Observatory-59321

 「断捨離」をしてずいぶんと多くの本を処分しましたが,30年以上前に読んだ本は自分の原点なのでその対象外,ということで今でも大切にしているものです。
 その中からいくつかを紹介しましょう。今日は「ふたたびキットピークへ」です。

 この本を書いたのは出口修至さん。本が出版されたのは1982年で,当時34歳の新進気鋭の学者さんでした。その後は国立天文台野辺山宇宙電波観測所准教授になられて退職されました。専門は電波天文学,メーザー理論ということで,この本にもそうした内容がたくさん出てきます。電波天文台は現代の花形ですが,35年前の私には全く興味のない分野で,それが残念でした。
 この本は,アメリカで研究生活をする合間にアメリカの天文台巡りをしたときの紀行です。アメリカと天文学に憧れていた私にとっては最高の本でした。題名にある「ふたたびキットピークへ」というのは,23章のうちのひとつの題名です。私はこの本を読んで以来,ずっと,このキットピークという名前が頭からはなれなくなりました。
今となっては古くさい内容のところも多くあるのですが,その反対に,その当時は夢物語だったことが今では実現されていることもたくさんあって,とても興味深いものです。

 はじめて読んだとき,すごいなあ,自分もこんな旅がしてみたいなあと強く思ったことでした。アメリカなんて遠い世界でした。もうこのときはアメリカへ2回行っていたのですが,それでも,郊外の天文台に行くなんて思いもよりませんでした。そして今,この本の中のジョンソンスペースセンターにもケネディスペースセンターにも私はすでに行くことができました。そして,アメリカ各地の情景が頭に浮かぶようになりました。
 そのように,今の私には旅をしている様子が具体的にわかります。それが自分にはとてもうれしいことであるとともに,そのころの夢が蘇ってきました。そして,私も行くぞ,と改めて決意したことです。

 今日は最後にキットピーク天文台を紹介しておきましょう。
 キットピーク国立天文台はあまり天文台らしからぬ外観に反して世界最大級の光学望遠鏡群がある施設であり,一般公開されている天文台です。ガイド付きツアーに参加すると施設の沿革を学んだり,望遠鏡の見学ができますし,世界最大級の太陽観測望遠鏡であるマクマスピアス望遠鏡とキット ピーク最大の4メートル級光学望遠鏡であるメイオール望遠鏡が年中無休,入場無料で公開されています。
 キット ピーク国立天文台はアリゾナ州ツーソンから87キロメートルの距離にあって,山頂までの絶景を堪能しながらレンタカーで行くことができるということです。

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